JP7279838B1 - 容器及びその予備成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】リサイクル性に優れ、リサイクル後の再生樹脂を用いた場合に高品質な再生容器を得ることができる容器の提供。【解決手段】容器本体21と、容器本体の表面の少なくとも一部に設けられた保護層23と、容器本体と保護層との間に設けられたバリア層22と、を備えた容器において、容器本体は、容器内側から容器本体の表面の赤外線全反射測定法による赤外線吸収スペクトルを測定した際の、1340cm-1の吸収度をA1340、及び1720cm-1の吸収度をA1720が、下記関係式(1):A1340/A1720≧0.15(1)を満足するポリエステルを含み、保護層は、容器外側から保護層表面の赤外線全反射測定法による赤外線吸収スペクトルを測定した際の、A1340及びA1720が、下記関係式(2):A1340/A1720<0.15(2)を満足する共重合ポリエステルを含み、バリア層は、水溶性又はアルカリ可溶性樹脂を含む。【選択図】図1

Description

本開示は容器及びその予備成形体に関する。
近年、二酸化炭素排出削減等の環境負荷低減を目的として、使用済みプラスチック製容器のリサイクルが行われている。リサイクルは、同種の材料にて行う必要があるため、例えば、使用済みペットボトルをリサイクルする場合に、回収されたペットボトルは、ラベル、キャップ及びボトル本体に分別する必要がある。また、ボトル本体が、多層構造を有する場合、例えば、支持体と、支持体表面に設けられたコーティング層とを備える場合には、支持体とコーティング層とに分離する必要がある。
特許文献1には、ボトル本体の外表面にバリア層としてポリビニルアルコールコーティングを有し、該ポリビニルアルコールコーティング上に保護層としてポリビニルブチラールコーティングを有する、プラスチックボトルが開示されている。ポリビニルアルコールは水溶性を有するため、特許文献1に開示されているプラスチックボトルは、リサイクルの際に、支持体と保護層との間のバリア層を溶解でき、この結果、支持体と、バリア層と、保護層とを分離できる。
特許第6037879号公報
特許文献1において提案されているような容器をリサイクルする際、容器を粉砕して水洗等を行うことで容器本体と保護層とを分離することができるが、完全に分離できるわけではなく、ごく一部(数%程度)は容器本体に保護層が付着したままの状態で、容器のリサイクルが行われる。その場合には、容器本体の樹脂(ポリエステル)に保護層を構成する樹脂(ポリビニルブチラール)が添加された再生樹脂としてリサイクルされる。そのため、再生樹脂を用いて再び容器を製造すると、黄変といった品質劣化を生じる場合がある。
従って、本開示の目的は、リサイクル性に優れ、リサイクル後の再生樹脂を用いて再生容器を製造した場合に高品質な再生容器を得ることができる容器、及び当該容器の予備成形体を提供することである。
本開示の一実施形態による容器は、容器本体と、前記容器本体の表面の少なくとも一部に設けられた保護層と、前記容器本体と前記保護層との間に設けられたバリア層と、を備えた容器において、
前記容器本体は、容器内側から前記容器本体の表面の赤外線全反射測定法による赤外線吸収スペクトルを測定した際の、1340cm-1の吸収度をA1340、及び1720cm-1の吸収度をA1720とした場合に、下記関係式(1):
1340/A1720≧0.15 (1)
を満足するポリエステルを含み、
前記保護層は、容器外側から前記保護層表面の赤外線全反射測定法による赤外線吸収スペクトルを測定した際の、A1340及びA1720が、下記関係式(2):
1340/A1720<0.15 (2)
を満足する共重合ポリエステルを含み、
前記バリア層は、水溶性又はアルカリ可溶性樹脂を含む。
一実施形態による容器において、前記保護層は、容器外側から前記保護層表面の赤外線全反射測定法による赤外線吸収スペクトルを測定した際の、1225cm-1~1255cm-1の範囲にある吸収ピークが二峰性ピークを有する共重合ポリエステルを含む。
一実施形態による容器において、前記バリア層は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む。
一実施形態による容器において、前記バリア層は、カルボキシ基含有樹脂を更に含む。
一実施形態による容器において、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを備え、前記保護層及びバリア層は、少なくとも前記肩部、前記胴部及び前記底部に設けられている。
一実施形態による容器において、前記胴部における保護層の厚さが、1μm以上、100μm以下である。
また、本開示の他の一実施形態による予備成形体は、上記容器の予備成形体である。
本開示によれば、保護層が特定の共重合ポリエステルを含むことにより、リサイクル性に優れ、リサイクル後の再生樹脂を用いた場合に高品質な再生容器を得ることができる容器とすることができる。
本開示の容器の一例であるボトルの一実施態様を示す模式半断面図である。 本開示の容器の一例であるボトルの一実施態様を示す模式半断面図である。 本開示の容器の一例であるボトルの一実施態様を示す模式半断面図である。 本開示の容器の一例であるカップの一実施態様を示す模式半断面図である。 本開示の予備成形体の一例であるプリフォームの一実施態様を示す模式半断面図である。 本開示の予備成形体の一例であるプリフォームの一実施態様を示す模式半断面図である。 本開示の予備成形体の一例であるプリフォームの一実施態様を示す模式半断面図である。 実施例1の容器の赤外線吸収スペクトルである。 実施例2の容器の赤外線吸収スペクトルである。 実施例3の容器の赤外線吸収スペクトルである。 比較例1の容器の赤外線吸収スペクトルである。
<容器>
本開示の容器は、容器本体と、前記容器本体の表面の少なくとも一部に設けられた保護層と、前記容器本体と前記保護層との間に設けられたバリア層と、を備える。
なお、本明細書において、「容器」とは、物品を収容する成形体を意味する。容器としては、例えば、圧縮成形体、射出成形体、ブロー成形体及び熱成形体等の成形体が挙げられる。具体的な容器としては、例えば、ボトル、バイアル瓶、カップ、トレー及びパック等が挙げられる。
以下、本開示の容器が備え得る各構成要素について説明する。
(容器本体)
本開示の容器において、容器本体は、容器の形態を維持できるものであり、ポリエステルから構成される。本明細書において、「ポリエステル」とは、エステル結合によって高分子化されたポリマーを意味する。このようなポリエステルは、通常、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合することに得られる。
本開示においては、容器本体を構成するポリエステルとして、容器内側から前記容器本体の表面の赤外線全反射測定法(ATR法)による赤外線吸収スペクトルを測定した際の、1340cm-1の吸収度をA1340、及び1720cm-1の吸収度をA1720とした場合に、下記関係式(1):
1340/A1720≧0.15 (1)
を満足するポリエステルを含む。1340cm-1の吸収は、エチレングリコールのCH(トランス構造)の変角振動による吸収であり、1720cm-1の吸収は、カルボニル基に由来する吸収とエステル構造に基づく吸収の総和によるものである。
なお、本開示において、ATR法による赤外線吸収スペクトルは、容器を5×5mmの大きさに切り出したものを試験片として、試験片にGeプリズムを押し当てて、フーリエ変換赤外分光計(サーモサイエンティフィック社製のNicolet6700)を用いて、下記の測定条件にて測定したものである。
(測定条件)
入射角:45度
分解能:4cm-1
測定波数範囲:700~4000cm-1
積算回数:64回
容器本体が、ATR法による赤外線吸収スペクトルにおいて、A1340/A1720≧0.15となるようなポリエステルから構成される。このようなポリエステルとしては、ジカルボン酸成分がテレフテル酸でありジオール成分がエチレングリコールであるポリエステル、すなわちポリエチレンテレフタレートを主成分とするものである。但し、本開示においては、容器本体が純粋なポリエチレンテレフタレートのみからなる必要はなく、上記式(1)を満たすものであれば、ジカルボン酸成分及び/又はジオール成分の一部が他の成分と置換されていてもよい。
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸及びエチルマロン酸、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸及びこれらのエステル誘導体等が挙げられる。
また、エチレングリコール以外のジオール成分としては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノール、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオール、パラキシレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、スチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)等が挙げられる。
本開示の特性を損なわない範囲において、ポリエステルは、ジカルボン酸成分及びジオール成分以外のモノマーを含んでいてもよいが、その含有量は、全構成単位に対し、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることが更に好ましい。
ポリエステルは、重合触媒を用いて重合されたものであってもよい。重合触媒としては、マンガン(Mn)触媒、チタン(Ti)触媒、アルミニウム(Al)触媒、リチウム(Li)触媒、ゲルマニウム(Ge)触媒、アンチモン(Sb)触媒等が挙げられる。
上記したポリエステルは、上記式(1)を満たす限り、バージンポリエステルだけでなく、環境負荷低減の観点からはリサイクルポリエステルを使用してもよい。なお、本明細書において「バージンポリエステル」とは、上記リサイクルがされていないポリエステルを意味し、「リサイクルポリエステル」とは、市場に出荷された使用済みの容器等の製品を回収してリサイクルされたポリエステルを意味するものとする。
また、リサイクルポリエステルとしては、回収した使用済みポリエステル容器をモノマーレベルまで分解して、再度重合することにより得られたポリエステル(以下、「ケミカルリサイクルポリエステル」という)、及び、回収した使用済み製品を選別・粉砕・洗浄して汚染物質や異物を除去し、フレークを得て、フレークを更に高温・減圧下などで一定時間処理して樹脂内部の汚染物質を除去することにより得られたポリエステル(以下、「メカニカルリサイクルポリエステル」という)が挙げられる。メカニカルリサイクルポリエステルは、二種以上の触媒を含むものであっても良い。この場合、メカニカルリサイクルポリエステルは、例えば、Sb触媒ポリエステル、Mn触媒ポリエステル、Ti触媒ポリエステル、Al触媒ポリエステル、Li触媒ポリエステル及びGe触媒ポリエステルのうちの二種以上を含んでも良い。
メカニカルリサイクルポリエステルでは、アンチモン(Sb)元素、ナトリウム(Na)元素、カルシウム(Ca)元素及び/又はマグネシウム(Mg)元素の含有割合が、バージンポリエステル及びケミカルリサイクルポリエステルと異なることが知られている。具体的には、メカニカルリサイクルポリエステルは、Sb元素を20mg/L以上54mg/L以下の割合、Na元素を12mg/L以上の割合、Ca元素を4mg/L以上の割合及び/又はMg元素を2.5mg/L以上の割合で、含有することが知られている。従って、これらのいずれかの含有割合を1つ以上満たすポリエステルか否かで、メカニカルリサイクルポリエステルをバージンポリエステル及びケミカルリサイクルポリエステルと区別できる。
また、メカニカルリサイクルポリエステルにおいて、Sb元素の含有割合は25mg/L以上50mg/L以下が好ましく、Na元素の含有割合は14mg/L以上が好ましく、Ca元素の含有割合は4.5mg/L以上が好ましく、Mg元素の含有割合は3mg/L以上が好ましい。
容器本体がメカニカルリサイクルポリエステルを含む場合、メカニカルリサイクルポリエステルの含有量は、容器本体を構成する樹脂材料の総量100質量部に対し、20質量部以上、100質量部以下であることが好ましく、60質量部以上、90質量部以下であることがより好ましい。
リサイクル性の観点から、容器本体における1種類の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは97質量%以上である。
容器本体は、本開示の特性を損なわない範囲において、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、酸素吸収剤、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、及びイオン交換剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
容器本体は、単層構造でも、2層以上の多層構造でもよい。また、容器本体が多層構造である場合には、各層は、同一の組成であってもよいし、本開示の特性を損なわない範囲において、異なる組成であってもよい。
容器本体の断面の厚さは、容器の用途にもよるが、好ましくは0.01mm以上、0.35mm以下であり、より好ましくは0.05mm以上、0.25mm以下である。
なお、容器本体の断面の厚さは、例えば、容器の胴部において測定できる。容器本体の断面の厚さは、断面の厚さが最も薄くなる箇所を意味する。
容器本体は、その表面が処理されていることが好ましい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、低温プラズマ処理、及びフレーム処理等が挙げられる。このような表面処理を施すことにより、容器本体の表面のぬれ性が向上し、容器本体と、後述するバリア層との密着性を向上できる。
(バリア層)
バリア層とは、ガスバリア性を有する層である。このようなバリア層を備える容器は、酸素等のガスの透過を抑制できるため、内容物の劣化を抑制できる。
本開示による容器において、バリア層は、水溶性又はアルカリ可溶性を有する。これにより、リサイクル性に優れる容器とすることができる。その理由は以下の通りである。
使用済みの容器のリサイクルでは、まず、容器を粉砕してフレーク状とし、次いで、水及びアルカリ溶液等の液体を使用して洗浄する。水溶性又はアルカリ可溶性を有するバリア層が容器本体と保護層の間に存在すると、この洗浄工程において、バリア層が溶解し、容器本体から保護層を剥離させて容器本体を分離できる。従って、このような容器はリサイクル性に優れる。なお、バリア層は、水溶性及びアルカリ可溶性の両方を有する層であってもよい。
なお、本明細書において、「水溶性」とは、バリア層が、20℃の蒸留水に対して、3質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上溶解することを意味する。また、「アルカリ可溶性」とは、バリア層が、90℃の1.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液に対して、3質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上溶解することを意味する。
一実施形態において、バリア層は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む。ポリビニルアルコール系樹脂は、水溶性又はアルカリ可溶性を有する樹脂であると共に、凝集力が高いため酸素や水蒸気を遮断する効果が高い。バリア層がポリビニルアルコール系樹脂を含むことにより、水溶性又はアルカリ可溶性を有するバリア層とすることができると共に、容器のガスバリア性を向上できる。
一実施形態において、バリア層は、カルボキシ基含有樹脂と、ポリビニルアルコール系樹脂とを含む。上記した通り、バリア層がポリビニルアルコール系樹脂を含むことにより、水溶性又はアルカリ可溶性を有するバリア層とすることができると共に、容器のガスバリア性を向上できる。
また、バリア層がカルボキシ基含有樹脂を含むことにより、バリア層の水溶性又はアルカリ可溶性が向上し、容器のリサイクル性を向上できる。更に、カルボキシ基含有樹脂のカルボキシ基が、ポリビニルアルコール系樹脂や、バリア層の形成に使用される塗工液の溶媒(例えば、水及びヒドロキシ基を有する有機溶媒等)の「-OH」と水素結合を形成し、塗工液の粘性が高くなる。これにより、少ない塗工回数でバリア層の厚さを厚くできるため、容器の生産性を向上できる。
以下、ポリビニルアルコール系樹脂及びカルボキシ基含有樹脂について説明する。
ポリビニルアルコール系樹脂(「PVA系樹脂」とも称する)は、ポリマーの構造中にアルコール性ヒドロキシ基を含有する樹脂である。PVA系樹脂は、通常、ビニルエステル系重合体をケン化することにより得られるものである。
ビニルエステル系重合体は、通常、ビニルエステルモノマーを重合成分として重合することにより得られる。ビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル及びモノクロロ酢酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル、並びに安息香酸ビニル等のアレーンカルボン酸ビニル(例えば、C7-12アレーンカルボン酸-ビニルエステル)等の芳香族カルボン酸ビニルエステル等が挙げられる。これらのモノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ビニルエステル系重合体は、他の重合性モノマー(ビニルエステルと共重合可能なモノマー)由来の単位を有していてもよい。他の重合性モノマーとしては、例えば、エチレン;プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有ビニルモノマー;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;イタコン酸アルキルエステル類等を挙げることができる。これらのモノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
PVA系樹脂は、ビニルアルコール単位の一部が、アセタール化、エーテル化、アセトアセチル化、カチオン化等の反応によって、変性されたものであってもよい。
PVA系樹脂の重合度は、好ましくは1000以上、4000以下であり、より好ましくは1500以上、3500以下であり、更に好ましくは2000以上、3000以下である。
PVA樹脂の平均重合度は、JIS K 6726:1994に準拠して測定できる。
PVA系樹脂のケン化度は、溶媒への溶解性や組成物の保管安定性が優れる等の観点から、好ましくは70モル%以上99.9モル%以下であり、より好ましくは90モル%以上99.5モル%以下であり、更に好ましくは95モル%以上99.5モル%以下である。
PVA系樹脂のケン化度は、JIS K 6726:1994に準拠して測定できる。
PVA系樹脂は、PVA系樹脂を4質量%となるように純水に溶かした際に、その水溶液粘度が、好ましくは3mPa・s以上、70mPa・s以下であり、より好ましくは50mPa・s以上、68mPa・s以下であり、更に好ましくは54mPa・s以上、66mPa・s以下である。なお、塗工液の粘度は、JIS Z 8803:2011に準拠して、20℃の温度において測定できる。
PVA系樹脂は、1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
カルボキシ基含有樹脂は、既存のカルボキシ基含有樹脂を使用できる。既存のカルボキシ基含有樹脂とは、ポリマーの構造中にカルボキシ基を含有する樹脂の総称である。カルボキシ基含有樹脂は、カルボキシ基含有不飽和モノマーの単独重合体、カルボキシ基含有不飽和モノマーの共重合体、カルボキシ基含有不飽和モノマーと他の重合性モノマーとの共重合体、及び分子内にカルボキシ基を含有する多糖類(「酸性多糖類」とも称する)が挙げられる。これらのカルボキシ基含有樹脂は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
なお、カルボキシ基には、遊離のカルボキシ基のみならず、酸無水物基(具体的には、ジカルボン酸無水物基)も含まれる。酸無水物基は、部分的に開環してカルボキシ基となっていてもよい。カルボキシ基含有樹脂において、カルボキシ基の一部は、アルカリで中和されていてもよい。
カルボキシ基含有不飽和モノマーは、好ましくはα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸である。従って、カルボキシ基含有樹脂には、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体、2種以上のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体、及びα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と他の重合性モノマーとの共重合体が含まれる。他の重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和モノマー等が挙げられる。
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらの酸は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸の1種又は2種以上から選択され、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の1種又は2種以上から選択される。
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能な他の重合性モノマー、特にエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、エチレン;プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有ビニルモノマー;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;イタコン酸アルキルエステル類等を挙げることができる。これらのモノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
カルボキシ基含有多糖類としては、例えば、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシ基を有する酸性多糖類等が挙げられる。これらの酸性多糖類は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸性多糖類をα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体と組み合わせて使用できる。
本開示の容器において、カルボキシ基含有樹脂が、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体である場合には、その共重合体の組成は、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸モノマーの組成を、好ましくは60モル%以上とし、より好ましくは80モル%以上とし、更に好ましくは90モル%以上とする。
カルボキシ基含有樹脂は、好ましくは、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみの重合によって得られる単独重合体又は共重合体である。ポリカルボン酸系重合体がα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる(共)重合体の場合、カルボキシ基含有樹脂は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸の1種又は2種以上から選択されるカルボン酸によって得られる単独重合体、共重合体、及びそれらの2種以上の混合物であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸の1種又は2種以上から選択されるカルボン酸によって得られる単独重合体、共重合体、及びそれらの2種以上の混合物である。
カルボキシ基含有樹脂は、好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びマレイン酸重合体の1種又は2種以上から選択される。カルボキシ基含有樹脂は、入手が比較的容易であると共に、リサイクル性及びガスバリア性の観点から、好ましくはポリアクリル酸である。
カルボキシ基含有樹脂の数平均分子量は、好ましくは2,000以上、10,000,000以下の範囲であり、より好ましくは5,000以上、1,000,000以下の範囲であり、更に好ましくは10,000以上、500,000以下の範囲である。なお、数平均分子量は、定法に従いゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより算出される値を意味する。
バリア層において、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、バリア層に含まれる全成分に対して、好ましくは20質量%以上、99質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上、98質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以上、95質量%以下である。
ポリビニルアルコール系樹脂の含有量を20質量%以上とすることにより、容器のガスバリア性がより向上できる。ポリビニルアルコール系樹脂の含有量を99質量%以下とすることにより、容器のリサイクル性がより向上できる。
バリア層が、カルボキシ基含有樹脂とビニルアルコール系樹脂とを含む場合、カルボキシ基含有樹脂の含有量は、バリア層に含まれる全成分に対して、好ましくは1質量%以上、80質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上、70質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以上、60質量%以下である。
カルボキシ基含有樹脂の含有量を1質量%以上とすることにより、容器のリサイクル性がより向上できる。カルボキシ基含有樹脂の含有量を80質量%以下とすることにより、容器のガスバリア性がより向上できる。
バリア層が、カルボキシ基含有樹脂とビニルアルコール系樹脂とを含む場合、ポリビニルアルコール系樹脂に対するカルボキシ基含有樹脂の質量比(カルボキシ基含有樹脂/ポリビニルアルコール系樹脂)は、1/20以上、10/1以下であることが好ましく、1/15以上、5/1以下であることがより好ましく、1/10以上、2/1以下であることが更に好ましい。
上記質量比を1/20以上とすることにより、容器のリサイクル性がより向上できる。上記質量比を10/1以下とすることにより、容器のガスバリア性がより向上できる。なお、上記質量比は固形分比である。
バリア層は、本開示の特性を損なわない範囲において、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸素吸収剤、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤及びイオン交換剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
バリア層は、単層であっても、2層以上の多層であってもよい。また、バリア層が多層である場合には、各層が、同一の組成であっても、異なる組成であってもよい。
バリア層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、200μm以下であり、より好ましくは1μm以上、50μm以下である。
なお、バリア層の厚さは、例えば、容器の胴部において測定できる。バリア層の厚さは、厚さが最も薄くなる箇所を意味する。バリア層が多層である場合には、バリア層の厚さは、全ての層の厚さの合計である。
バリア層は、赤色、青色、黄色、緑色、茶色、茶褐色、橙色、黒色、及び白色等の色に着色されていてもよく、更に透明であっても不透明であってもよい。バリア層が着色されていることにより、バリア層を着色する場合と同様に、日光等の外部から容器内に進入してくる光を吸収でき、容器の内容物の味及び色の変化を抑制できる。波長400nm以上、500nm以下の可視光線を効果的に吸収できるため、バリア層は、好ましくは茶褐色又は橙色等に着色されている。バリア層の着色は、例えば、着色剤を使用できる。
(保護層)
保護層は、バリア層を保護するためのものである。容器が保護層を有することにより、容器の製造時及び使用時において、バリア層の破損や剥離等の物理的要因から、あるいは吸湿や溶解等の化学的要因からバリア機能の劣化を抑制できる。
本開示の一実施形態による容器において、保護層は共重合ポリエステルを含む。本開示において、共重合ポリエステルは、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸と主たるジオール成分としてエチレングリコールとを重縮合したものであり、共重合成分として、テレフタル酸及びエチレングリコール以外のモノマーを含むものである。本開示においては、このような共重合ポリエステルとして、容器外側から前記保護層表面の赤外線全反射測定法による赤外線吸収スペクトルを測定した際の、A1340及びA1720が、下記関係式(2):
1340/A1720<0.15 (2)
を満足する共重合ポリエステルを使用する。即ち、カルボニルやエステル構造に由来する吸収に対してCH(トランス構造)の変角振動による吸収(1340cm-1の吸収)が所定割合未満であるような共重合ポリエステルを使用する。本開示においては、上記式(2)を満足する共重合ポリエステルを保護層の構成材料として使用することにより、容器のリサイクル性をより向上させることができる。保護層として上記した特定の共重合ポリエステルを使用することで、本開示の容器をリサイクルに付した際に、仮に容器本体に保護層が数%レベルで含まれていた場合であっても、得られる再生樹脂の変色が少なく、再生樹脂を用いた容器(リサイクル品)の品質を担保することができる。
保護層を構成する好ましい共重合ポリエステルとして、上記式(2)を満足し、且つ容器外側から前記保護層表面の赤外線全反射測定法による赤外線吸収スペクトルを測定した際の、1225cm-1~1255cm-1の範囲にある吸収ピークが二峰性ピークを有する共重合ポリエステルが好ましい。このような共重合ポリエステルとしては、エチレングリコール以外のジオール成分が含まれるものであり、例えば、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジエタノール等の脂環式ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール等のジオール成分が挙げられ、これらのなかでも、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコールが好ましい。ジオール成分中のエチレングリコール成分以外の成分の割合は、上記式(2)を満足すれば特に制限されるものではないが、ジオール成分中のエチレングリコールの割合は50モル%以上であることが好ましい。
また、共重合ポリエステルは、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含むものであるが、ジカルボン酸共重合成分として、イソフタル酸、ナフタレン-1,4-もしくは-2,6-ジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が含まれていてもよい。これらの中でも、本開示の効果の観点からは、イソフタル酸が好ましい。
保護層を構成する共重合ポリエステルは、重量平均分子量が1,000超、20,000以下であることが好ましい。共重合ポリエステルの重量平均分子量(以下、Mwと表記する場合がある)が1,000以下であると、保護層にタックが発生して容器の取り扱い性が悪化する場合がある。また、Mwが20,000を超えると、容器をリサイクルして再生樹脂を得た際に透明性が低下し、再生樹脂から容器を製造した際に着色の問題が生じる場合がある。共重合ポリエステルのMwの好ましい範囲は、10,000以上、18,000以下である。なお、重量平均分子量は、定法に従いゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより算出される値を意味する。
一実施形態において、共重合ポリエステルは、ガラス転移温度が35℃以上、100℃以下であることが好ましい。上記したような共重合成分が含まれることによりポリエチレンテレフタレートよりもガラス転移温度(以下、Tgと表記する場合がある)が下がり、保護層の膜質等が向上する。一方、ガラス転移温度が低すぎると耐熱性が劣ったり、リサイクル時の容器本体から保護層を剥離する際の取り扱い性が悪化する場合がある。好ましいガラス転移温度は、65℃以上、90℃以下である。なお、ガラス転移温度は、定法に従い、示差走査熱量計を用いてガラス転移に伴う吸熱ピークの変曲点から算出された値を意味する。
保護層は、本開示の特性を損なわない範囲において、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、酸素吸収剤、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、及び着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
保護層は、単層でも、2層以上の多層でもよい。また、保護層が多層である場合には、各層が、同一の組成でも、異なる組成でもよい。
保護層の厚さは、好ましくは0.5μm以上、1000μm以下であり、より好ましくは0.7μm以上、500μm以下であり、更に好ましくは1μm以上、100μm以下である。これにより、バリア層の耐劣化性をより向上できる。
なお、保護層の厚さは、例えば、容器の胴部において測定でき、厚さが最も薄くなる箇所を意味する。また、保護層が多層である場合、保護層の厚さは、全ての層の厚さの合計である。
保護層は、赤色、青色、黄色、緑色、茶色、茶褐色、橙色、黒色、及び白色等の色に着色されてもよく、更に透明でも不透明でもよい。保護層が着色されていることにより、バリア層を着色する場合と同様に、日光等の外部から容器内に進入してくる光を吸収でき、容器の内容物の味及び色の変化を抑制できる。波長400nm以上、500nm以下の可視光線を効果的に吸収できるため、保護層は、好ましくは茶褐色又は橙色等に着色されている。保護層の着色は、例えば、着色剤を使用できる。
(蒸着膜)
本開示の容器は、ガスバリア性をより向上するために、蒸着膜を有してもよい。
蒸着膜としては、例えば、アルミニウム等の金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の無機酸化物、ヘキサメチルジシロキサン等の有機珪素化合物、DLC(Diamond Like Carbon)膜等の硬質炭素膜から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
なお、DLC膜からなる硬質炭素膜とは、iカーボン膜又は水素化アモルファスカーボン膜(a-C:H)とも呼ばれる硬質炭素膜のことで、SP結合を主体にしたアモルファスな炭素膜のことである。
また、蒸着膜の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、150nm以下とすることができる。
なお、蒸着膜の厚さは、例えば、容器の胴部において測定でき、厚さが最も薄くなる箇所を意味する。
蒸着膜の形成は、従来公知の方法により行うことができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法及び光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
以下、ボトル及びカップを例示して、本開示による容器の構造の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施できる。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用できる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含めて解釈することとする。
図1乃至図3は、本開示の容器の一例であるボトルの一実施態様を示す模式半断面図である。ボトル10は、図1~図3に示すように、口部11と、口部11の下方に設けられた首部12と、首部12の下方に設けられた肩部13と、肩部13の下方に設けられた胴部14と、胴部14の下方に設けられた底部15とを備えている。
口部11は、図示しないキャップが螺着されるネジ部16と、ネジ部16の下方に設けられたカブラ17と、カブラ17の下方に設けられたサポートリング18とを備えている。口部11の形状は、従来公知の形状でもよい。
なお、本明細書中、「上」及び「下」とは、それぞれボトル10又はカップ30を正立させた状態(図1乃至図4)における上方及び下方のことをいう。
首部12は、サポートリング18と肩部13との間に位置しており、略均一な径をもつ略円筒形状を有している。また、肩部13は、首部12と胴部14との間に位置しており、首部12側から胴部14側に向けて徐々に径が拡大する形状を有している。
胴部14は、全体として略均一な径をもつ円筒形状を有している。しかしながら、これに限られるものではなく、胴部14が四角形筒形状や八角形筒形状等の多角形筒形状を有してもよい。或いは、胴部14が上方から下方に向けて均一でない水平断面をもつ筒形状を有してもよい。また、胴部14は、凹凸が形成されておらず、略平坦な表面を有しているが、これに限られるものではない。例えば、胴部14にパネル又は溝等の凹凸が形成されてもよい。
底部15は、中央に位置する凹部19と、この凹部19周囲に設けられた接地部20とを有している。なお、底部15の形状についても特に限定されるものではなく、従来公知の底部形状(例えばペタロイド底形状や丸底形状等)を有してもよい。
ボトル10は、図1乃至図3に示すように、容器本体21と、容器本体21の一方の面側に設けられた保護層23とを備える。また、ボトル10は、図1~図3に示すように、容器本体21と保護層23との間にバリア層22を備える。
一実施形態において、ボトル10は、図1に示すように、口部11が、容器本体21により構成され、首部12、肩部13、胴部14及び底部15が、容器本体21と、バリア層22と、保護層23とにより構成されている。図1に示すように、首部12、肩部13、胴部14及び底部15において、バリア層22は、容器本体21を取り囲むように、容器本体21の外側全域に設けられている。図1に示すように、保護層23は、バリア層22を取り囲むように、バリア層22の外側全域に設けられている。
一実施形態において、ボトル10は、図2に示すように、口部11及び首部12が、容器本体21により構成され、肩部13、胴部14及び底部15が、容器本体21と、バリア層22と、保護層23とにより構成されている。図2に示すように、肩部13、胴部14及び底部15において、バリア層22は、容器本体21を取り囲むように、容器本体21の外側全域に設けられている。図2に示すように、保護層23は、バリア層22を取り囲むように、バリア層22の外側全域に設けられている。
一実施形態において、ボトル10は、サポートリング18の下端から下方に1mm以上、10mm以下の範囲にバリア層22及び保護層23を備えていなくてもよい。ボトル10に内容物を充填する際には、サポートリング18の下端より下の部分(首部12等)を掴んで運搬するところ、該部分にバリア層22及び保護層23が設けられていると、掴み不良が発生する恐れがある。サポートリング18の下端から下方に1mm以上、10mm以下の範囲にバリア層22及び保護層23が設けられていないボトルは、このような掴み不良を抑制できる。該範囲は、好ましくは2mm以上、5mm以下である。
なお、該範囲は、ボトル10を平面上に自立させたときに、この平面に垂直な方向におけるサポートリング18の下端からの距離である。
一実施形態において、バリア層22及び保護層23は、首部12、肩部13、胴部14及び底部15から選択される1以上の全域又は一部領域に設けられてもよい。
一実施形態において、ボトル10は、好ましくは胴部14の外側全域にわたってバリア層22及び保護層23が設けられている。ボトル10は、より好ましくは肩部13及び胴部14の外側全域にわたってバリア層22及び保護層23が設けられている。
一実施形態において、ボトル10は、図3に示すように、口部11の下端を「0L」とし、接地部20を「1L」としたときに、少なくとも0.4L以上、0.6L以下の外側全域にわたってバリア層22及び保護層23が設けられている。このような構成とすることにより、ガスバリア性を効率よく向上できる。
ボトル10は、好ましくは、少なくとも0.1L以上、0.8L以下の外側全域にわたってバリア層22及び保護層23が設けられ、より好ましくは、少なくとも0.05L以上、0.95L以下の外側全域にわたってバリア層22及び保護層23が設けられている。
バリア層22及び保護層23は、ボトル10の内側に設けられてもよい(図示せず)。
ボトル10は、ボトル10の内側及び外側を含む群から選択される少なくとも1つに蒸着膜を備えてもよい(図示せず)。
図4は、本開示の容器の一実施態様であるカップを示す模式半断面図である。カップ30は、図4に示すように、口部31と、口部31の下方に設けられた胴部32と、胴部32の下方に設けられた底部33とを備えている。
口部31は、フランジ形状を有しているが、口部31の形状は、特に限定されず、従来公知の形状でもよい。
図4の胴部32は、全体として略均一な径をもつ円筒形状を有しているが、これに限られるものではなく、胴部32が四角形筒形状や八角形筒形状等の多角形筒形状を有してもよい。あるいは、胴部32が上方から下方に向けて均一でない水平断面をもつ筒形状を有してもよい。また、図4の胴部32は、凹凸が形成されておらず、略平坦な表面を有しているが、これに限られない。例えば、胴部32にパネル又は溝等の凹凸が形成されてもよい。
底部33は、中央に位置する凹部34と、この凹部34周囲に設けられた接地部35とを有している。なお、底部33の形状についても特に限定されるものではなく、従来公知の底部形状(例えば丸底形状等)を有してもよい。
カップ30は、図4に示すように、口部31が、容器本体36により構成され、胴部32及び底部33が、容器本体36と、バリア層37と、保護層38とにより構成されている。図4に示すように、胴部32及び底部33において、バリア層37は、容器本体36を取り囲むように、容器本体36の外側全域に設けられている。
一実施形態において、バリア層37及び保護層38は、口部31、胴部32及び底部33から選択される1以上の全域又は一部領域に設けられてもよい。
バリア層37及び保護層38は、カップ30の内側に設けられてもよい(図示せず)。
カップ30は、カップの内側及び外側を含む群から選択される少なくとも1つに蒸着膜を備えてもよい(図示せず)。
なお、カップ30内に物品を収容する際には、ガスバリア性を有する蓋材を使用してカップ30を密閉する(図示せず)。これにより、ガスバリア性を有するカップとすることができる。
本開示の一実施形態による容器は、予備成形体のブロー成形体でもよい。予備成形体としては、後述する本開示の予備成形体を使用してもよい。本開示の容器がボトルである場合、予備成形体としてプリフォームを使用してもよい。
ボトルがプリフォームのブロー成形体である場合、プリフォームに対するボトルの容積増加率は、好ましくは2以上、45以下であり、より好ましくは5以上、40以下であり、更に好ましくは8以上、35以下である。
なお、プリフォームに対するボトルの容積増加率は、ブロー成形された部分の容積増加率を意味し、例えば、プリフォームの口部以外の容積をVとし、ブロー成形後のボトルの口部以外の容積をVとしたときの容積増加率「V/V」を意味する。
ボトルにおいて、酸素透過度は、好ましくは0.100cc/day・bottle・0.21atm以下であり、より好ましくは0.070cc/day・bottle・0.21atm以下であり、更に好ましくは0.050cc/day・bottle・0.21atm以下であり、更により好ましくは0.040cc/day・bottle・0.21atm以下である。
なお、本明細書において、酸素透過度は、JIS K 7126-2:2006に準拠して、酸素透過度測定装置(例えば、MOCON社製、商品名:OX-TRAN 2/20)を使用して、23℃、湿度40%RHの条件により測定される値であり、口部を治具で塞いだボトル全体において測定し、口部を除いたボトル全体の表面積で除した値である。
本開示の容器の断面の厚さは、好ましくは0.1mm以上、0.4mm以下であり、より好ましくは0.15mm以上、0.3mm以下である。
なお、容器の断面の厚さは、例えば、少なくとも、容器本体と、バリア層と、保護層とを有する容器の胴部において測定できる。容器の断面の厚さは、断面の厚さが最も薄くなる箇所を意味する。
本開示の容器は、容量/質量が、好ましくは5mL/g以上、50mL/g以下であり、より好ましくは8mL/g以上、45mL/g以下である。容器の容量/質量を5mL/g以上とすることにより、容器の軽量化を図ることができる。また、容器の容量/質量を50mL/g以下とすることにより、容器の強度を向上できる。
本開示の一実施形態による容器は、満注容量が、例えば、100mL以上、2000mL以下のものでもよい。容器の満注容量は、好ましくは280mL以上、750mL以下である。また、一実施形態による容器は、満注容量が、例えば、10L、以上60L以下の大型のものでもよい。
一実施形態による容器において、波長400nm以上、500nm以下の可視光線の透過率は、好ましくは20%以下である。これにより、内容物の味及び色の変化を抑制できる。特に、内容物がビールである場合には、日光臭が発生する不具合を抑制できる。該透過率は、より好ましくは15%以下であり、更に好ましくは5%以下あり、更により好ましくは1%以下である。このような透過率は、保護層及びバリア層を含む群から選択される少なくとも1つの層を適宜着色することにより調整できる。
波長400nm以上、500nm以下の可視光線の透過率は、分光光度計を使用して、波長0.5nm間隔において可視光線波長の光線透過率を測定することにより得ることができる。分光光度計としては、(株)島津製作所製の紫外可視分光光度計を使用できる。
なお、容器の透過率は、例えば、少なくとも、容器本体と、バリア層と、保護層とを有する容器の胴部において測定する。
本開示の一実施形態による容器は、その表面に印刷が施されてもよい。印刷により形成される画像は、特に限定されず、例えば、模様及び文字等が挙げられる。容器の色調に影響されないという観点からは、印刷は、好ましくは容器の外側表面に施されている。
印刷は、公知の方法により行うことができる。印刷法としては、例えば、インクジェット法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、熱転写法、シルクスクリーン法、パッド法、ホットスタンプ法、コールドスタンプ法等が挙げられる。
また、印刷が施された予備成形体をブロー成形することによって、印刷が施された容器を得ることができる。
<容器の製造方法>
以下、ボトルを例示しつつ、本開示の一実施形態による容器の製造方法を説明する。
一実施形態において、図1に示すボトル10は、以下の手順により製造できる。
まず、従来公知の方法により、口部11と、首部12と、肩部13と、胴部14と、底部15とを有する容器本体21を作製する。
次いで、バリア層22を構成する材料と、溶媒とを含むバリア層用塗工液を準備する。
次いで、バリア層用塗工液を、容器本体21の首部12、肩部13、胴部14及び底部15に塗工して、塗工膜を形成する。
次いで、塗工膜を乾燥して溶媒を除去することにより、バリア層22を形成する。
次いで、保護層23を構成する材料と、溶媒とを含む保護層用塗工液を準備する。
次いで、保護層用塗工液をバリア層22の表面に塗工して、塗工膜を形成する。
次いで、塗工膜を乾燥して溶媒を除去することにより、保護層23を形成し、図1に記載のボトル10を製造できる。
なお、図2及び図3に記載のボトル10は、バリア層用塗工液及び保護層用塗工液の塗工箇所を適宜選択することにより製造できる。
一実施形態において、図1乃至図3に記載のボトル10は、後述する図5乃至図7に示すプリフォーム40をブロー成形することにより製造できる。ブロー成形は、従来公知の方法により行うことができる。
バリア層用塗工液に使用する溶媒は、バリア層を構成する材料を溶解又は乳化分散できるものである。溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の極性有機溶剤等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
溶媒は、好ましくは、水、アルコール類、又はこれらの混合物を使用し、より好ましくは、水及びイソプロピルアルコールとの混合溶媒を使用する。これにより、バリア層用塗工液の粘性が向上し、塗工回数を少なくすることが可能となるため、容器の生産性を向上できる。
バリア層用塗工液において、バリア層を構成する材料の固形分の合計濃度は、好ましくは2質量%以上、15質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上、10質量%以下である。これにより、厚さの均一なバリア層を形成できる。
バリア層用塗工液の粘度は、好ましくは150mPa・s以上、4000mPa・s以下であり、より好ましくは200mPa・s以上、2500mPa・s以下である。これにより、容器の生産性をより向上できる。
バリア層用塗工液の粘度は、JIS Z 8803:2011に準拠して、20℃の温度において、回転式粘度計を使用して測定できる。
バリア層用塗工液の塗工は、従来公知の方法により行うことができる。塗工方法は、例えば、印毛等により塗布する方法、バリア層用塗工液に容器を浸漬する方法、容器の表面にバリア層用塗工液を噴霧する方法等が挙げられる。
バリア層用塗工液から形成された塗工膜の乾燥温度は、溶媒を除去できる温度である。乾燥温度は、好ましくは20℃以上、80℃以下であり、より好ましくは40℃以上70℃以下であり、更に好ましくは50℃以上、70℃以下である。
保護層用塗工液に使用する溶媒は、保護層形成用材料を溶解、乳化分散できるものであれば特に限定されず、例えば、水、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸nプロピル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサン、へプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等を使用できる。これらの中でも、重合体成分を良好に溶解又は乳化分散できることから、保護層用塗工液に使用する溶媒は、酢酸エチル、メチルエチルケトン又は酢酸エチルとメチルエチルケトンの混合溶媒が好ましい。
保護層用塗工液の塗工は、従来公知の方法により行うことができる。塗工方法は、例えば、印毛等により塗布する方法、保護層用塗工液に容器を浸漬する方法、容器の表面に保護層用塗工液を噴霧する方法等が挙げられる。
保護層用塗工液から形成された塗工膜の乾燥温度は、溶媒を除去できる温度である。乾燥温度は、好ましくは40℃以上、80℃以下であり、より好ましくは50℃以上、70℃以下である。
一実施形態による容器の製造方法は、容器の表面に、模様及び文字等の画像の印刷を施す工程を含んでもよい。
印刷は、公知の方法により行うことができる。印刷法としては、例えば、インクジェット法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、熱転写法、シルクスクリーン法、パッド法、ホットスタンプ法及びコールドスタンプ法等が挙げられる。例えば、インクジェット法により印刷を行う場合には、容器にUV硬化型インクを塗布し、これにUV照射を行い、硬化することにより印刷を行う。また、熱転写シートを使用して印刷を施してもよい。
<予備成形体>
本開示の一実施形態による容器は、上記したように、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、熱成形等の種々の方法より得られた容器本体の表面にバリア層及び保護層を形成することでも製造できるが、特にブロー成形により容器本体を得る場合には、ブロー成形前の予備成形体の容器本体の表面にバリア層及び保護層を形成しておき、それをブロー成形して容器とすることもできる。本明細書において、予備成形体とは、本開示の容器をブロー成形する前の成形体であり、本開示の容器の製造に使用されるものである。予備成形体の形状は、ブロー成形後の容器の形状に応じて適宜選択できる。本開示の予備成形体は、本体と、前記本体の少なくとも一方の面側に設けられた保護層と、前記本体と保護層との間に設けられたバリア層と、を備える。
以下、本開示の一実施形態による予備成形体が備える各構成要素について説明する。
(予備成形体本体)
一実施形態による予備成形体において、予備成形体本体を構成する材料は、本開示の容器における容器本体を構成する材料と同様のものを使用できる。予備成形体本体にこのような材料を使用することにより、本開示の容器を得ることができると共に、ブロー成形性に優れた予備成形体とすることができる。
予備成形体本体は、単層構造でも、2層以上の多層構造でもよい。容器本体が多層構造である場合には、各層は、同一の組成でも、異なる組成でもよい。
予備成形体本体の断面の厚さは、好ましくは1.3mm以上、4.3mm以下であり、より好ましくは1.9mm以上、2.9mm以下である。
なお、予備成形体本体の断面の厚さは、例えば、予備成形体の胴部において測定でき、断面の厚さが最も薄くなる箇所を意味する。
予備成形体本体は、好ましくは表面処理を施す。表面処理としては、例えば、コロナ処理、低温プラズマ処理、及びフレーム処理等が挙げられる。このような表面処理を施すことにより、予備成形体本体表面のぬれ性が向上し、予備成形体本体と、予備成形体本体と接する層との密着性を向上できる。
(バリア層)
本開示の一実施形態による予備成形体において、バリア層を構成する材料は、本開示の容器におけるバリア層を構成する材料と同様のものを使用できる。バリア層にこのような材料を使用することにより、本開示の容器を得ることができると共に、ブロー成形性に優れた予備成形体とすることができる。
バリア層は、予備成形体により製造される容器の用途に応じて、好ましくは、遮光性、光沢性、色彩、ガスバリア性等を有する層である。
バリア層は、特に好ましくは、ガスバリア性を有する層である。
バリア層は、単層でも、2層以上の多層でもよい。また、バリア層が多層である場合には、各層が、同一の組成でも、異なる組成でもよい。
バリア層の厚さは、好ましくは2μm以上、1000μm以下であり、より好ましくは20μm以上、500μm以下である。
なお、バリア層の厚さは、例えば、予備成形体の胴部において測定できる。バリア層の厚さは、厚さが最も薄くなる箇所を意味する。バリア層が多層である場合、バリア層の厚さは、全ての層の厚さの合計である。
バリア層は、赤色、青色、黄色、緑色、茶色、茶褐色、橙色、黒色、及び白色等の色に着色されてもよく、更に、透明でも不透明でもよい。このようなバリア層とすることで、着色されたバリア層を備える容器を製造できる。バリア層の着色は、例えば、着色剤を使用できる。
(保護層)
本開示の一実施形態による予備成形体において、保護層を構成する材料は、本開示の容器における保護層を構成する材料と同様のものを使用できる。保護層にこのような材料を使用することにより、本開示の容器を得ることができると共に、ブロー成形性に優れた予備成形体とすることができる。
保護層は、単層でも、2層以上の多層でもよい。また、保護層が多層である場合には、各層が、同一の組成でも、異なる組成でもよい。
保護層の厚さは、好ましくは0.5μm以上、1000μm以下であり、より好ましくは0.7μm以上、500μm以下である。更に、保護層の厚さは、ブロー成形時に保護層及びバリア層の割れを抑制できる等のブロー成形性の観点から、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
なお、保護層の厚さは、例えば、予備成形体の胴部において測定できる。保護層の厚さは、厚さが最も薄くなる箇所を意味する。保護層が多層である場合、保護層の厚さは、全ての層の厚さの合計である。
保護層は、赤色、青色、黄色、緑色、茶色、茶褐色、橙色、黒色、及び白色等の色に着色されてもよく、更に透明でも不透明でもよい。このような保護層とすることにより、着色された保護層を備える容器を製造できる。保護層の着色は、例えば、着色剤を使用できる。
以下、プリフォームを例示して、本開示の一実施形態による予備成形体の構造の一実施形態を説明する。
図5乃至図7は、本開示によるプリフォームの一実施態様を示す模式半断面図である。プリフォーム40は、図5乃至図7に示すように、口部41と、口部41に連結された胴部42と、胴部42に連結された底部43とを備えている。このうち口部41は、後述のボトル10の口部11に対応するものであり、口部11と略同一の形状を有している。また、胴部42は、ボトル10の首部12、肩部13及び胴部14に対応するものであり、略円筒形状を有している。底部43は、ボトル10の底部15に対応するものであり、略半球形状を有している。
口部41は、図示しないキャップが螺着される後述のボトル10のネジ部16に対応するネジ部44と、ネジ部44の下方に設けられ、ボトル10のカブラ17に対応するカブラ45と、カブラ45の下方に設けられ、ボトル10のサポートリング18に対応するサポートリング46とを備えている。口部41の形状は、従来公知の形状でもよい。
プリフォーム40は、図5乃至図7に示すように、予備成形体本体47と、予備成形体本体47の一方の面側に設けられた保護層49とを備える。また、プリフォーム40は、図5乃至図7に示すように、予備成形体本体47と保護層49との間にバリア層48を備える。
一実施形態において、プリフォーム40は、図5に示すように、口部41が、予備成形体本体47により構成され、胴部42及び底部43が、予備成形体本体47と、バリア層48と、保護層49とにより構成されている。図5に示すように、バリア層48は、予備成形体本体47を取り囲むように、予備成形体本体47の外側全域に設けられている。図5に示すように、保護層49は、バリア層48を取り囲むように、バリア層48の外側全域に設けられている。
一実施形態において、プリフォーム40は、図6に示すように、口部41と、胴部42の一部とが予備成形体本体47により構成され、胴部42の残りの部分と底部43とが、予備成形体本体47と、バリア層48と、保護層49とにより構成されている。図6に示すように、バリア層48は、予備成形体本体47を取り囲むように、予備成形体本体47の外側全域に設けられている。図6に示すように、保護層49は、バリア層48を取り囲むように、バリア層48の外側全域に設けられている。
なお、上記において、「胴部42の一部」とは、図2に示すボトル10の首部12に対応する部分であり、「胴部42の残りの部分」とは、図2に示すボトル10の肩部13、胴部14及び底部15に対応する部分である。
一実施形態において、プリフォーム40は、サポートリング46の下端から下方に1mm以上、10mm以下の範囲にバリア層48及び保護層49を備えていなくてもよい。これにより、内容物の充填する際の運搬において、掴み不良が抑制されたボトルを製造できる。該範囲は、好ましくは2mm以上、5mm以下である。
一実施形態において、バリア層48及び保護層49は、胴部42及び底部43を含む群から選択される少なくとも1つの部分の上下方向の全域又は一部領域に設けられてもよい。
一実施形態において、プリフォーム40は、図7に示すように、口部41の下端を「0L」とし、底部43の下端を「1L」としたときに、少なくとも0.4L以上、0.6L以下の外側全域にわたってバリア層48及び保護層49が設けられている。プリフォームをこのような構成とすることにより、ガスバリア性が効率よく向上された容器を得ることができる。
プリフォーム40は、好ましくは、少なくとも0.2L以上、0.7L以下の外側全域にわたってバリア層48及び保護層49が設けられ、より好ましくは、少なくとも0.1L以上、0.9L以下の外側全域にわたってバリア層48及び保護層49が設けられている。
バリア層48及び保護層49は、プリフォーム40の内側に設けられてもよい(図示せず)。
予備成形体の断面の厚さは、好ましくは1.4mm以上、4.5mm以下であり、より好ましくは2mm以上、3mm以下である。
なお、予備成形体の断面の厚さは、例えば、少なくとも、予備成形体本体と、バリア層と、保護層とを有する予備成形体の胴部において測定できる。予備成形体の断面の厚さは、断面の厚さが最も薄くなる箇所を意味する。
一実施形態による予備成形体において、波長400nm以上、500nm以下の可視光線の透過率は、好ましくは20%以下である。これにより、容器の内容物の味及び色の変化を抑制された容器を製造できる。該透過率は、より好ましくは15%以下であり、更に好ましくは5%以下あり、更により好ましくは1%以下である。このような透過率は、保護層及びバリア層を含む群から選択される少なくとも1つの層を適宜着色することにより調整できる。
波長400nm以上、500nm以下の可視光線の透過率は、分光光度計を使用して、波長0.5nm間隔において可視光線波長の光線透過率を測定することにより得ることができる。分光光度計としては、(株)島津製作所製の紫外可視分光光度計を使用できる。
なお、予備成形体の透過率は、例えば、少なくとも、予備成形体本体と、バリア層と、保護層とを有する予備成形体の胴部において測定する。
一実施形態による予備成形体は、その表面に印刷が施されてもよい。印刷により形成される画像は、特に限定されず、例えば、模様及び文字等が挙げられる。予備成形体の色調に影響されないという観点からは、印刷は、好ましくは、予備成形体の外側表面に施されている。
印刷は、公知の方法により行うことができる。印刷法としては、例えば、インクジェット法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、熱転写法、シルクスクリーン法、パッド法、ホットスタンプ法及びコールドスタンプ法等が挙げられる。
<予備成形体の製造方法>
以下、プリフォームを例示しつつ、本開示の一実施形態による予備成形体の製造方法を説明する。
一実施形態において、図5に記載のプリフォーム40は、以下の手順で製造できる。
まず、予備成形体本体を構成する材料を従来公知の装置を使用して射出成形することにより、口部41と、胴部42と、底部43とを有する予備成形体本体47を作製する。
次いで、バリア層48を構成する材料と、溶媒とを含むバリア層用塗工液を準備する。
次いで、バリア層用塗工液を予備成形体本体47の胴部42及び底部43に塗工して、塗工膜を形成する。
次いで、塗工膜を乾燥して溶媒を除去することにより、バリア層48を形成する。
次いで、保護層49を構成する材料と、溶媒とを含む保護層用塗工液を準備する。
次いで、保護層用塗工液をバリア層48の表面に塗工して、塗工膜を形成する。
次いで、塗工膜を乾燥して溶媒を除去することにより、保護層49を形成し、図5に記載のプリフォーム40を製造できる。
なお、図6及び図7に記載のプリフォーム40は、バリア層用塗工液及び保護層用塗工液の塗工箇所を適宜選択することにより製造できる。
予備成形体の製造方法におけるバリア層用塗工液及び保護層用塗工液は、容器の製造方法におけるバリア層用塗工液及び保護層用塗工液と同様のものを使用できる。
バリア層用塗工液及び保護層用塗工液の塗工は、従来公知の方法により行うことができる。塗工方法は、例えば、印毛等により塗布する方法、バリア層用塗工液に予備成形体を浸漬する方法、予備成形体の表面にバリア層用塗工液を噴霧する方法等が挙げられる。
一実施形態による予備成形体の製造方法は、予備成形体の表面に、模様及び文字等の画像の印刷を施す工程を含んでもよい。
印刷は、公知の方法により行うことができる。印刷法としては、例えば、インクジェット法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、熱転写法、シルクスクリーン法、パッド法、ホットスタンプ法及びコールドスタンプ法等が挙げられる。例えば、インクジェット法により印刷を行う場合には、予備成形体にUV硬化型インクを塗布し、これにUV照射を行い、硬化することにより印刷を行うことができる。また、熱転写シートを使用して印刷を施してもよい。
次に実施例を挙げて、本開示を更に詳細に説明するが、本開示は、これら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ペレット状のポリエチレンテレフタレート(PET)を準備した。
上記PETを溶融して、射出成形機を使用して射出し、口部と、胴部と、底部とを備えるプリフォームの予備成形体本体を作製した。予備成形体本体の口部は、口部の上方からネジ部、カブラ及びサポートリングを順に備えている。
次いで、18.75gのPVA((株)クラレ製、商品名:PVA-124、重合度:2400、ケン化度:98~99%)を、水440.8g及びイソプロピルアルコール(IPA)21.7gの混合溶媒に加え、続いて18.75gのポリアクリル酸((株)日本触媒製、商品名:AS-58、数平均分子量:106,000)を加えて撹拌し、固形分濃度が7.5質量%であるバリア層用塗工液(粘度:195.5mPa・s(20℃))を調製した。このバリア層用塗工液を上記予備成形体の胴部及び底部に塗工して、塗工膜を形成し、塗工膜を50℃で10分間乾燥した。この塗工膜の形成及び乾燥を合計3回行い、バリア層を形成した。なお、PVAに対するポリアクリル酸の質量比(固形分比)は1/1である。
次いで、バイロン200(ジオール共重合成分としてエチレングリコールとネオペンチルグリコールとを含み、ジカルボン酸共重合成分としてテレフタル酸とイソフタル酸とを含む共重合ポリエステル、Tg=67℃、Mw=17,000、東洋紡株式会社製)を、酢酸エチルとメチルエチルケトンの混合溶媒(1:1混合溶液)に溶解し、保護層用塗工液を調製した。この保護層用塗工液を上記バリア層の表面に塗工して、塗工膜を形成し、塗工膜を50℃で10分間乾燥した。この塗工膜の形成及び乾燥を合計3回行い、保護層を形成し、図5に示すようなプリフォームを得た。
プリフォームの胴部における断面の厚さは3mmであり、バリア層の厚さは50μmであり、保護層の厚さは110μmであった。プリフォームの目付量は18.3gであった。
次いで、上記プリフォームを110℃に加熱し、ブロー成形金型内において、二軸延伸ブロー成形を行い、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを備える内容量500mLの、図1に示すようなボトルを得た。バリア層及び保護層は、ボトルの首部、肩部、胴部及び底部の外側表面に形成されている。ボトルの胴部における断面の厚さは0.2mmであり、バリア層の厚さは5μmであり、保護層の厚さは10μmであった。
[実施例2]
実施例1で用いた保護層用塗工液において、バイロン200に代えて、エリーテルUE9800(ジオール共重合成分としてエチレングリコールとプロピレングリコールとを含み、ジカルボン酸共重合成分としてテレフタル酸を含む共重合ポリエステル、Tg=85℃、Mw=13,000、ユニチカ株式会社製)を酢酸エチルに溶解した保護層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にしてボトルを作製した。
[実施例3]
実施例1で用いた保護層用塗工液において、バイロン200に代えて、エリーテルUE3203(ジオール共重合成分としてエチレングリコールとネオペンチルグリコールとを含み、ジカルボン酸共重合成分としてテレフタル酸とイソフタル酸とを含み、一部がエチレンオキサイド変性された共重合ポリエステル、Tg=60℃、Mw=20,000、ユニチカ株式会社製)を酢酸エチルに溶解した保護層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にしてボトルを作製した。
[比較例1]
実施例1で用いた保護層用塗工液に代えて、Mowital B30H(ポリビニルブチラール、平均重合度400~650、Mw=28,000~38,000、Tg=68℃、株式会社クラレ製)を酢酸エチルに溶解した保護層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にしてボトルを作製した。
<ATR-IR測定>
上記のようにして得られた各ボトル容器から、5×5mmの試験片を切り出し、試験片にGeプリズムを押し当てて、フーリエ変換赤外分光計(サーモサイエンティフィック社製のNicolet6700)を用いて、下記の測定条件にて赤外吸収スペクトルの測定を行った。ATR-IR測定において、試験片の表側(容器外側にある保護層表面)と、裏側(容器内側にある容器本体表面)のそれぞれについて赤外吸収スペクトルの測定を行った。
(測定条件)
入射角:45度
分解能:4cm-1
測定波数範囲:700~4000cm-1
積算回数:64回
実施例1~3及び比較例1の各ボトル容器における容器本体表面及び保護層表面の各赤外線吸収スペクトルを図8~11に示す。なお、赤外線吸収スペクトルは、700~2000cm-1の範囲を拡大したものである。図8~10の保護層表面の赤外線吸収スペクトルにおいて、1225cm-1~1255cm-1の範囲にある吸収ピークが二峰性であることがわかる。一方、図8~11の容器本体表面の赤外線吸収スペクトルにおいては、1225cm-1~1255cm-1の範囲にある吸収ピークが単峰性であることがわかる。
また、当該赤外線吸収スペクトルから算出されるA1340/A1720の値を下記表1に示す。
<リサイクル性評価>
上記実施例及び比較例において得られたボトルを粉砕してフレーク状態にした後、90℃の1.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液にフレークを投入し、15分間撹拌した。その後、洗浄液からフレークを回収し、容器本体と保護層とが分離されているかを目視にて確認した。リサイクル性の評価基準は以下のとおりとした。
○:保護層が、容器本体からほぼ完全に剥離している
×:保護層の一部が、容器本体から剥離している
評価結果を表1に示す。
<リサイクル後の再生容器評価>
実施例1で使用したPET製プリフォームを110℃に加熱し、ブロー成形金型内において、二軸延伸ブロー成形を行い、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを備える内容量500mLの、図1に示すようなボトルを得た。得られたボトルの口部において、色差計(株式会社 村上色彩技術研究所)を用いてJIS Z 8729に規定されるL表色系におけるLを測定した(測定された各値を、L とした)。
また、実施例1で用いたペレット状のポリエチレンテレフタレート(PET)に、PET100質量部に対して0.105質量部の割合となるように各共重合ポリエステルを加えた混合樹脂を準備し、当該混合樹脂を溶融して、射出成形機を使用して射出し、口部と、胴部と、底部とを備えるプリフォームの予備成形体本体を作製した。次いで、混合樹脂製プリフォームを110℃に加熱し、ブロー成形金型内において、二軸延伸ブロー成形を行い、口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを備える内容量500mLの、図1に示すようなボトルを得た。得られたボトルの口部において、上記と同様にしてLを測定した(測定された各値を、L とした)。測定した値から、b とb の差分の絶対値Δb(Δb=|b -b |)を算出した。
結果を表1に示す。
Figure 0007279838000002
10:ボトル
11:口部
12:首部
13:肩部
14:胴部
15:底部
16:ネジ部
17:カブラ
18:サポートリング
19:凹部
20:接地部
21:容器本体
22:バリア層
23:保護層
30:カップ
31:口部
32:胴部
33:底部
34:凹部
35:接地部
36:容器本体
37:バリア層
38:保護層
40:プリフォーム
41:口部
42:胴部
43:底部
44:ネジ部
45:カブラ
46:サポートリング
47:予備成形体本体
48:バリア層
49:保護層

Claims (6)

  1. 容器本体と、前記容器本体の表面の少なくとも一部に設けられた保護層と、前記容器本体と前記保護層との間に設けられたバリア層と、を備えた容器において、
    前記容器本体は、ジカルボン酸成分がテレフテル酸を含み、ジオール成分がエチレングリコールを含むポリエステルから構成され、前記ポリエステルは、容器内側から前記容器本体の表面の赤外線全反射測定法による赤外線吸収スペクトルを測定した際の、1340cm-1の吸収度をA1340、及び1720cm-1の吸収度をA1720とした場合に、下記関係式(1):
    1340/A1720≧0.15 (1)
    を満足し、
    前記保護層は、ジカルボン酸成分がテレフテル酸を含み、ジオール成分が50モル%以上のエチレングリコールと50%未満の他のジオール成分とを含む共重合ポリエステルから構成され、前記共重合ポリエステルは、容器外側から前記保護層表面の赤外線全反射測定法による赤外線吸収スペクトルを測定した際の、A1340及びA1720が、下記関係式(2):
    1340/A1720<0.15 (2)
    を満足し、且つ1225cm-1~1255cm-1の範囲にある吸収ピークが二峰性ピークを有し、
    前記バリア層は、水溶性又はアルカリ可溶性樹脂を含
    前記保護層が、前記容器本体から剥離可能に設けられている、容器。
  2. 前記バリア層は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む、請求項1に記載の容器。
  3. 前記バリア層は、カルボキシ基含有樹脂を更に含む、請求項2に記載の容器。
  4. 口部と、首部と、肩部と、胴部と、底部とを備え、
    前記保護層及びバリア層は、少なくとも前記肩部、前記胴部及び前記底部に設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の容器。
  5. 前記胴部における保護層の厚さが、1μm以上、100μm以下である、請求項4に記載の容器。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の容器の予備成形体。
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