図1は、実施の形態による電力変換装置の構成を示すブロック図である。図1において、この電力変換装置は、入力端子T1、出力端子T2、変圧器1、電流検出器2,5、コンバータ3、直流ラインL1,L2、コンデンサC1、インバータ4、および制御装置6を備える。
入力端子T1は、交流電源7から供給される交流電圧Viを受ける。出力端子T2は、負荷8に接続される。負荷8は、電力変換装置から供給される交流電圧によって駆動される。変圧器1の一次巻線は入力端子T1に接続され、その二次巻線はコンバータ3の交流ノード3aに接続される。変圧器1は、交流電源7から供給される交流電圧Viをコンバータ3の交流ノード3aに伝達する。
交流電源7から供給される交流電圧Viの瞬時値は、制御装置6によって検出される。電流検出器2は、変圧器1の二次巻線とコンバータ3の交流ノード3aとの間に流れる電流Iiを検出し、その検出値を示す信号Iifを制御装置6に出力する。
コンバータ3の正側直流ノード3bは、直流ラインL1を介してインバータ4の正側直流ノード4aに接続される。コンバータ3の負側直流ノード3cは、直流ラインL2を介してインバータ4の負側直流ノード4bに接続される。
コンデンサC1は、直流ラインL1,L2間に接続され、直流ラインL1,L2間の直流電圧VDCを平滑化させる。直流電圧VDCは、制御装置6によって検出される。コンバータ3は、制御装置6によって制御され、交流電源7から変圧器1を介して供給される交流電圧Viを直流電圧VDCに変換する。
インバータ4の交流ノード4cは、出力端子T2に接続される。出力端子T2に現れる交流電圧Voの瞬時値は、制御装置6によって検出される。電流検出器5は、インバータ4の交流ノード4cと出力端子T2との間に流れる電流Ioを検出し、その検出値を示す信号Iofを制御装置6に出力する。
インバータ4は、制御装置6によって制御され、コンデンサC1の端子間電圧VDCを所望の周波数の交流電圧Voに変換して負荷8に供給する。制御装置6は、交流入力電圧Vi、交流入力電流Ii、直流電圧VDC、交流出力電圧Vo、交流出力電流Io(負荷電流)に基づいて、コンバータ3およびインバータ4を制御する。
図2は、制御装置6のうちのコンバータ3の制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。図2において、制御装置6は制御回路10(第1の制御回路)を含み、制御回路10は、参照電圧発生部11、電圧検出器12,17、減算器13、直流電圧制御部14、リミッタ15、無効電流指令部16、電流制御部18、およびPWM(Pulse Width Modulation)制御部19を含む。
参照電圧発生部11は、直流電圧VDCの目標電圧である参照電圧VDCrを生成する。電圧検出器12は、直流ラインL1,L2間の直流電圧VDCを検出し、検出値を示す信号VDCfを出力する。減算器13は、参照電圧VDCrと電圧検出器12の出力信号VDCfによって示される直流電圧VDCとの偏差ΔVDC=VDCr-VDCを求める。
直流電圧制御部14は、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになって偏差ΔVDCが0になるように有効電流指令値Iic(第1の電流指令値)を生成する。直流電圧制御部14は、たとえば、偏差ΔVDCに比例する値と、偏差ΔVDCの積分値に比例する値とを加算して有効電流指令値Iicを求める。
リミッタ15は、直流電圧制御部14からの有効電流指令値Iicを最大値Imax以下に制限して有効電流指令値IicL(第2の電流指令値)を生成する。有効電流指令値Iicが最大値Imaxを超えると、コンバータ3の装置能力の限界値を超え、コンバータ3が破損する恐れがある。Iic≦Imaxである場合は、IicがそのままIicLとなる。Iic>Imaxである場合は、ImaxがIicLとなる。Iic,IicLは、インバータ4の制御にも使用される。これについては後述する。
無効電流指令部16は、所望の無効電流指令値IicQを生成する。電圧検出器17は、交流電源7から供給される交流入力電圧Viの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Vifを出力する。電流制御部18は、リミッタ15によって生成された有効電流指令値IicLと、無効電流指令部16によって生成される無効電流指令値IicQと、電流検出器2の出力信号Iifによって示される交流入力電流Iiと、電圧検出器17の出力信号Vifによって示される交流入力電圧Viとに基づいて、正弦波状の電圧指令値Vicを生成する。
図3は、電流制御部18の構成を示すブロック図である。図3において、電流制御部18は、減算器21,22、演算制御部23、逆dq変換部24、加算器25、正弦波発生器26、およびdq変換部27を含む。正弦波発生器26は、電圧検出器17の出力信号Vifによって示される交流入力電圧Viと同位相の正弦波信号cosθi,sinθiを生成する。dq変換部27は、正弦波信号cosθi,sinθiを使用し、電流検出器2の出力信号Iifをdq変換して有効電流検出値IifPおよび無効電流検出値IifQを生成する。
減算器21は、有効電流指令値IicLと有効電流検出値IifPとの偏差ΔIiP=IicL-IifPを求める。減算器22は、無効電流指令値IicQと無効電流検出値IifQとの偏差ΔIiQ=IicQ-IifQを求める。演算制御部23は、有効電流検出値IifPが有効電流指令値IicLになって偏差ΔIiPが0になるように有効電圧指令値ViPを生成するとともに、無効電流検出値IifQが無効電流指令値IicQになって偏差ΔIiQが0になるように無効電圧指令値ViQを生成する。
演算制御部23は、たとえば、偏差ΔIiPに比例する値と、偏差ΔIiPの積分値に比例する値とを加算して有効電圧指令値ViPを求めるとともに、偏差ΔIiQに比例する値と、偏差ΔIiQの積分値に比例する値とを加算して無効電圧指令値ViQを求める。逆dq変換部24は、正弦波信号cosθi,sinθiを使用し、有効電圧指令値ViPおよび無効電圧指令値ViQを逆dq変換して電圧指令値Vi*を生成する。加算器25は、逆dq変換部24によって生成された電圧指令値Vi*と、電圧検出器17の出力信号Vifによって示される交流入力電圧Viとを加算して電圧指令値Vicを生成する。
図2に戻って、PWM制御部19は、たとえば、電圧指令値Vicと三角波信号とを比較してPWM制御信号φ19を生成し、コンバータ3に与える。コンバータ3は、PWM制御信号φ19によって駆動され、交流電圧Viを直流電圧VDCに変換する。
図4は、制御装置6のうちのインバータ4の制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。図4において、制御装置6は制御回路30(第2の制御回路)を含み、制御回路30は、有効電流指令部31、減算器32,34、補償器33、無効電流指令部35、電流制御部36、およびPWM制御部37を含む。
有効電流指令部31は、負荷8に応じて所望の有効電流指令値Ioc1を生成する。減算器32は、制御回路10から電流指令値Iic,IicL(図2)を受け、電流指令値Iicと電流指令値IicLの差ΔIic=Iic-IicLを求める。Iic≦Imaxである場合は、Iic=IicLであるので、ΔIic=0である。Iic>Imaxである場合は、ImaxがIicLとなるので、ΔIic=Iic-Imax>0となる。
補償器33は、コンバータ3の電流制御応答とインバータ4の電流制御応答の差に応じて設定された伝達関数に従って、入力信号ΔIicを出力信号Ioc2に変換する。たとえば、コンバータ3の電流制御応答とインバータ4の電流制御応答にほとんど差が無い場合は入力信号ΔIicをそのまま出力信号Ioc2として使用することができる。
減算器34は、有効電流指令部31によって生成された有効電流指令値Ioc1から、補償器33によって生成された電流指令値Ioc2を減算して、有効電流指令値Ioc3(第4の電流指令値)を生成する。減算器32,34および補償器33は、有効電指令値Ioc1を補正する補正部を構成する。
無効電流指令部35は、負荷8に応じて所望の無効電流指令値IocQを生成する。電流制御部36は、減算器34からの有効電流指令値Ioc3と、無効電流指令部35によって生成される無効電流指令値IocQと、電流検出器5の出力信号Iofによって示される交流出力電流Ioとに基づいて、正弦波状の電圧指令値Vocを生成する。
図5は、電流制御部36の構成を示すブロック図である。図5において、電流制御部36は、減算器41,42、演算制御部43、逆dq変換部44、加算器45、正弦波発生器46、およびdq変換部47を含む。正弦波発生器46は、所望の周波数の正弦波信号cosθo,sinθoを生成する。dq変換部47は、正弦波信号cosθo,sinθoを使用し、電流検出器5の出力信号Iofをdq変換して有効電流検出値IofPおよび無効電流検出値IofQを生成する。
減算器41は、有効電流指令値Ioc3と有効電流検出値IofPとの偏差ΔIoP=Ioc3-IofPを求める。減算器42は、無効電流指令値IocQと無効電流検出値IofQとの偏差ΔIoQ=IocQ-IofQを求める。演算制御部43は、有効電流検出値IofPが有効電流指令値Ioc3になって偏差ΔIoPが0になるように有効電圧指令値VoPを生成するとともに、無効電流検出値IofQが無効電流指令値IocQになって偏差ΔIoQが0になるように無効電圧指令値VoQを生成する。
演算制御部43は、たとえば、偏差ΔIoPに比例する値と、偏差ΔIoPの積分値に比例する値とを加算して有効電圧指令値VoPを求めるとともに、偏差ΔIoQに比例する値と、偏差ΔIoQの積分値に比例する値とを加算して無効電圧指令値VoQを求める。逆dq変換部44は、正弦波信号cosθo,sinθoを使用し、有効電圧指令値VoPおよび無効電圧指令値VoQを逆dq変換して電圧指令値Vo*を生成する。
加算器45は、逆dq変換部44によって生成された電圧指令値Vo*と、電圧指令基準値Voeとを加算して電圧指令値Vocを生成する。電圧指令基準値Voeは、たとえば、所望の負荷電流を流した場合の負荷電圧の推定値(または検出値)である。
図4に戻って、PWM制御部37は、例えば電圧指令値Vocと三角波信号とを比較してPWM制御信号φ37を生成し、インバータ4に与える。インバータ4は、PWM制御信号φ37によって駆動され、直流電圧VDCを交流電圧Voに変換する。
次に、この電力変換装置の動作について説明する。図1に示すように、交流電源7から供給される交流電圧は、変圧器1を介してコンバータ3に供給され、コンバータ3によって直流電圧VDCに変換される。直流電圧VDCは、コンデンサC1によって平滑化され、インバータ4によって所望の周波数の交流電圧Voに変換されて負荷8に供給される。
コンバータ3は、制御装置6に含まれる制御回路10によって制御される。制御回路10(図2、図3)では、参照電圧発生部11によって参照電圧VDCrが生成され、電圧検出器12、減算器13、および直流電圧制御部14により、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように有効電流指令値Iicが生成される。
有効電流指令値Iicは、リミッタ15によって最大値Imax以下に制限されて有効電流指令値IicLとなる。無効電流指令部16によって無効電流指令値IicQが生成される。電流検出器2の出力信号Iifがdq変換部27によってdq変換されて、有効電流検出値IifPおよび無効電流検出値IifQが生成される。有効電流検出値IifPおよび無効電流検出値IifQがそれぞれ有効電流指令値IicLおよび無効電流指令値IicQになるように、演算制御部23によって有効電圧指令値ViPおよび無効電圧指令値ViQが生成される。有効電圧指令値ViPおよび無効電圧指令値ViQが、逆dq変換部24によって逆dq変換されて電圧指令値Vi*が生成される。
加算器25によって電圧指令値Vi*に交流入力電圧Viが加算されて電圧指令値Vicが生成され、PWM制御部19によって電圧指令値Vicと三角波信号とが比較されてPWM制御信号φ19が生成される。コンバータ3は、PWM制御信号φ19(図2)によって駆動され、交流入力電圧Viを直流電圧VDCに変換する。
インバータ4は、制御装置6に含まれる制御回路30によって制御される。制御回路30(図4、図5)では、有効電流指令部31により、負荷8に応じた所望の有効電流指令値Ioc1が生成される。
また、制御回路10(図2)で生成された電流指令値Iic,IicLの差ΔIic=Iic-IicLが減算器32によって求められ、その差ΔIicが補償器33によって有効電流指令値Ioc2に変換され、減算器34によって有効電流指令値Ioc1から有効電流指令値Ioc2が減算されて有効電流指令値Ioc3が生成される。
無効電流指令部35によって無効電流指令値IocQが生成される。電流検出器5の出力信号Iofが、dq変換部47によってdq変換されて有効電流検出値IofPおよび無効電流検出値IofQが生成される。有効電流検出値IofPおよび無効電流検出値IofQがそれぞれ有効電流指令値Ioc3および無効電流指令値IocQになるように、演算制御部43によって有効電圧指令値VoPおよび無効電圧指令値VoQが生成される。
有効電圧指令値VoPおよび無効電圧指令値VoQが、逆dq変換部44によって逆dq変換されて電圧指令値Vo*が生成される。加算器45によって電圧指令値Vo*に電圧指令基準値Voeが加算されて電圧指令値Vocが生成され、PWM制御部37によって電圧指令値Vocと三角波信号とが比較されてPWM制御信号φ37が生成される。インバータ4は、PWM制御信号φ37によって駆動され、直流電圧VDCを交流出力電圧Voに変換する。
図6は、この電力変換装置の動作を示すタイムチャートである。図6において、(A)は交流入力電圧Viが定格電圧VHである場合におけるインバータ4の電力指令値P4cおよびコンバータ3の電力指令値P3cの時刻変化を示し、(B)は交流入力電圧Viが定格電圧VHよりも低い電圧VLになった場合におけるインバータ4の電力指令値P4cおよびコンバータ3の電力指令値P3cの時刻変化を示している。
インバータ4の電力指令値P4cは、有効電流指令値Ioc3(図4)と交流出力電圧Vo(図1)とに基づいて求められる値である。コンバータ3の電力指令値P3cは、有効電流指令値IicL(図2)と交流入力電圧Vi(図1)とに基づいて求められる値である。P3maxは、コンバータ3の出力電力の最大値(コンバータ3の装置能力の限界値)であり、電流指令値IicLの最大値Imaxに基づいて求められる値である。
まず、交流入力電圧Viが定格電圧VHになっている場合について説明する。図5(A)において、負荷電流Ioの増大に伴ってインバータ4の電力指令値P4cが徐々に増大すると、それに応じてコンバータ3の電力指令値P3cも徐々に増大する。
インバータ4の電力指令値P4cが最大値P4maxに到達するのとほぼ同時に、コンバータ3の電力指令値P3cも最大値P3maxに到達する(時刻t1)。コンバータ3の電力指令値P3cが最大値P3maxに到達すると、インバータ4の電力指令値P4cは増大することができなくなり、インバータ4の電力指令値P4cおよびコンバータ3の電力指令値P3cはそれぞれ最大値P4max,P3maxに維持される。
この動作は、制御回路10,30(図2~図5)により実現される。すなわち、所望の負荷電流Ioの増大に伴ってインバータ4の有効電流指令値Ioc1,Ioc3が徐々に増大すると、それに応じてコンバータ3の有効電流指令値Iic,IicLも徐々に増大する。
コンバータ3の電流指令値Iicが最大値Imaxを超えると、リミッタ15(図2)によって電流指令値IicLが最大値Imaxに維持される。これにより、コンバータ3の電力指令値P3cは最大値P3maxに維持される。
また、減算器32,34および補償器33(図4)により、有効電流指令値Iic,IicLの差に応じた値Ioc2だけインバータ4の有効電流指令値Ioc1が減少されて有効電流指令値Ioc3になり、電流制御部36などにより、交流出力電流Ioが電流指令値Ioc3,IocQになるようにインバータ4が制御される。したがって、インバータ4の電力指令値P4cは最大値P4maxを超えることができず、最大値P4maxに維持される。
次に、交流入力電圧Viが定格電圧VHよりも低い電圧VLに低下した場合について説明する。図5(B)において、所望の負荷電流Ioの増大に伴ってインバータ4の電力指令値P4cが徐々に増大すると、それに応じてコンバータ3の電力指令値P3cも徐々に増大する。
この場合は、交流入力電圧Viが低下しているので、交流入力電圧Viが定格電圧VHである場合に比べてコンバータ3の電力指令最大値P3maxが小さく、インバータ4の電力指令値P4cが最大値P4maxに到達する前にコンバータ3の電力指令値P3cが最大値P3maxに到達してしまう(時刻t2)。
コンバータ3の電力指令値P3cが最大値P3maxに到達すると、インバータ4の電力指令値P4cは増大することができなくなり、インバータ4の電力指令値P4cは、最大値P4maxよりも小さな電力値PLで飽和する。この電力値PLは、交流入力電圧Viの値VLで決まる。
たとえば時刻t3において、インバータ4の電力指令値P4cが電力値PLを超えようとして、所望の有効電流指令値Ioc1が増大しても、コンバータ3の電力指令値P3cが最大値P3maxに到達しているので、補償器33の出力である有効電流指令値Ioc2も増大することによって、インバータ4の有効電流指令値Ioc3は増大せず、インバータ4の電力指令値P4cは、最大値P4maxよりも小さな電力値PLで維持される。これによりコンバータ3の電力指令値P3cが最大値P3maxに到達した場合でも直流電圧VDCは低下することなく維持される。
この動作は、制御回路10,30(図2~図5)により実現される。すなわち、負荷電流Ioの増大に伴ってインバータ4の有効電流指令値Ioc1,Ioc3が徐々に増大すると、それに応じてコンバータ3の有効電流指令値Iic,IicLも徐々に増大する。
コンバータ3の有効電流指令値Iicが最大値Imaxを超えると、リミッタ15(図2)によって有効電流指令値IicLが最大値Imaxに維持される。これにより、コンバータ3の電力指令値P3cは最大値P3maxに維持される。
また、減算器32,34および補償器33(図4)により、有効電流指令値Iic,IicLの差に応じた値Ioc2だけインバータ4の有効電流指令値Ioc1が減少されて有効電流指令値Ioc3になり、電流制御部36などにより、交流出力電流Ioが電流指令値Ioc3,IocQになるようにインバータ4が制御される。したがって、インバータ4の電力指令値P4cは電力値PLを超えることができず、電力値PLに維持される。
以上のように、この実施の形態では、たとえば交流電源7から供給される交流電圧Viが低下して有効電流指令値Iicが増大し、有効電流指令値Iicが最大値Imaxを超過した場合には、有効電流指令値IicLを最大値Imaxに制限してコンバータ3の出力電力を最大値P3maxに維持するとともに、有効電流指令値Iic,IicLの差ΔIicに応じた値Ioc2だけ有効電流指令値Ioc1を減少させてインバータ4の出力電力を減少させることで直流電圧VDCを維持することができる。したがって、コンバータ3の出力電力を最大値P3maxに維持することができる。
図7は、実施の形態の比較例を示すブロック図であって、図4と対比される図である。図7を参照して、この比較例が実施の形態と異なる点は、制御回路30が制御回路50で置換されている点である。制御回路50が制御回路30と異なる点は、減算器32,34および補償器33が除去され、演算制御部51およびリミッタ52が追加されている点である。
演算制御部51は、直流電圧制御部14(図2)によって生成された有効電流指令値Iicに基づいて可変制限値Ivrを生成する。有効電流指令値Iicが上限値I3hよりも小さい場合には、可変制限値Ivrは最大値I4maxにされる。電流指令値Iicが上限値I3h以上になると、可変制限値Ivrは最大値I4maxよりも小さな上限値I4hにされる。上限値I3hは、最大値I3maxよりもコンバータ3の制御余裕だけ小さな値に設定する。可変制限値Ivrは、リミッタ52に与えられる。
リミッタ52は、有効電流指令部31からの有効電流指令値Ioc1を可変制限値Ivr以下に制限して有効電流指令値Ioc1Lを生成する。Ioc1≦Ivrである場合は、Ioc1がそのままIoc1Lとなる。Ioc1>Ivrである場合は、IvrがIoc1Lとなる。他の構成および動作は、実施の形態と同じであるので、その説明は繰り返さない。
図8は、比較例の動作を示すタイムチャートであって、図6と対比される図である。図8において、(A)は交流電源7から供給される交流入力電圧Viが定格電圧VHである場合におけるインバータ4の電力指令値P4cおよびコンバータ3の電力指令値P3cの時刻変化を示し、(B)は交流入力電圧Viが定格電圧VHよりも低い電圧VLになった場合におけるインバータ4の電力指令値P4cおよびコンバータ3の電力指令値P3cの時刻変化を示している。
インバータ4の電力指令値P4cは、有効電流指令値Ioc1L(図7)と交流出力電圧Vo(図1)とに基づいて求められる値である。コンバータ3の電力指令値P3cは、電流指令値IicL(図2)と交流入力電圧Vi(図1)とに基づいて求められる値である。Pmaxは、コンバータ3の出力電力の最大値(コンバータ3の装置能力の限界値)である。Phは、コンバータ3の出力電力の上限値であり、Pmaxよりもコンバータ3の制御余裕だけ小さな値である。
Pvrは、インバータ4の電力指令値P4cを制限する可変制限値であり、可変制限値Ivrに対応する値である。コンバータ3の電力指令値P3cが上限値Phよりも小さい場合には、Pvr=Pmaxとなる。コンバータ3の電力指令値P3cが上限値Phに到達すると、Pvr=Phとなる。
まず、交流入力電圧Viが定格電圧VHになっている場合について説明する。図8(A)において、負荷電流Ioの増大に伴ってインバータ4の電力指令値P4cが徐々に増大すると、それに応じてコンバータ3の電力指令値P3cも徐々に増大する。
コンバータ3の電力指令値P3cが上限値Phに到達すると、可変制限値Pvrが上限値Phとなり、インバータ4の電力指令値P4cが上限値Phに制限され、コンバータ3の電力指令値P3cもインバータ電力P4hと釣り合う値に落ち着く(時刻t1)。したがって、インバータ4の電力指令値P4cおよびコンバータ3の電力指令値P3cは最大値Pmaxよりも小さな上限値Phに維持される。
この動作は、制御回路10,50(図2、図3、図7)により実現される。すなわち、コンバータ3の有効電流指令値Iicが上限値I3hに到達すると、演算制御部51によって可変制限値Ivrが上限値I4hに設定され、リミッタ52によってインバータ4の有効電流指令値Ioc1Lが上限値I4hに制限される。これにより、コンバータ3の電力指令値P3cおよびインバータ4の電力指令値P4cは最大値Pmaxよりも小さな上限値Phに維持される。
次に、交流入力電圧Viが定格電圧VHよりも低い電圧VLに低下した場合について説明する。図8(B)において、負荷電流Ioの増大に伴ってインバータ4の電力指令値P4cが徐々に増大すると、それに応じてコンバータ3の電力指令値P3cも徐々に増大する。
この場合は、交流入力電圧Viが低下しているので、交流入力電圧Viが定格電圧VHである場合に比べてコンバータ3の電力指令上限値P3hが小さく、インバータ4の電力指令値P4cが上限値Phに到達する前にコンバータ3の電力指令値P3cが上限値Phに到達してしまう(時刻t2)。
この場合のインバータ4の電力指令値P4cは、上限値Phよりも小さな電力値PLである。この電力値PLは、交流入力電圧Viの値VLで決まる。時刻t3において、インバータ4の電力指令値P4cは上限値P4hよりも小さいためリミッタ52で制限されておらず、インバータ4の電力指令値P4cが変動して若干増大すると、コンバータ3の電力指令値P3cを増大させて直流電圧VDCを維持する必要がある。
このため、最大値Pmaxよりもコンバータ3の制御余裕だけ小さな値に上限値Phを設定する必要がある。したがって、この比較例では、コンバータ3の出力電力を最大値Pmaxに維持することができず、コンバータ3の装置能力を限界まで使用することができない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。