JP7278101B2 - クラス2食物アレルゲンが低減した豆乳及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、かかる事情に鑑み、クラス2食物アレルゲンが低減し、しかも風味のよい豆乳及びその製造方法等を提供することを課題とする。
[1]
Aspergillus属菌由来の複合型プロテアーゼで豆乳を酵素処理する工程を含む、クラス2アレルゲン低減豆乳の製造方法であって、
前記酵素処理が、プロテアーゼ(mg)/豆乳(ml)濃度0.01mg/ml以上0.5mg/ml以下の酵素濃度で実施される、方法。
[2]
前記酵素処理が、10分以上12時間未満実施される、[1]に記載の方法。
[3]
[1]又は[2]に記載の方法で製造される豆乳。
[4]
プロテアーゼ処理豆乳であって、
Gly m4含有量が未処理豆乳の70%以下であり、
苦味センサーで測定した電位(mV)が、未処理豆乳の電位の0.7(mV)以下である、豆乳。
[5]
非発酵豆乳である、[4]に記載の豆乳。
[6]
Aspergillus属菌由来の複合型プロテアーゼを含有する、Gly m4分解剤。
[7]
Aspergillus属菌由来の複合型プロテアーゼで豆乳を酵素処理する工程を含む、豆乳中のGly m4低減方法。
[8]
前記Aspergillus属菌が、Aspergillus oryzae及びAspergillus melleusから選択される、[7]に記載の方法。
豆乳の製造方法は、特に制限はないが、好ましくは、例えば、大豆を一夜水中に浸漬後、グラインダーで摩砕するなど、当業者に公知の手法を用いて製造することができる。大豆は焙煎等により前処理してから用いてもよい。豆乳は、一般的に市販されている豆乳を用いてもよい。
また、一態様において、本実施形態は、プロテアーゼ処理豆乳であって、Gly m4含有量が未処理豆乳の70%以下であり、苦味の少ない(例えば、苦味センサーで測定した電位(mV)が、未処理豆乳の電位の0.7(mV)以下である)、豆乳にも関する。
以下、上記クラス2アレルゲン低減豆乳及びプロテアーゼ処理豆乳を、あわせて本実施形態の豆乳ということもある。
クラス2アレルゲンによるアレルギーの発症の確認は、当業者に公知の方法を用いて実施することができ、例えば、被験者の前腕にアレルゲンを塗布し、出血しない程度に皮膚に傷をつけ、15分後の膨疹直径を測定し、アレルギー反応の有無を判断する(プリックテスト)ことにより実施することができる。
豆乳の調製
市販の丸大豆100gを脱皮し、挽割りした大豆を用いた。これに、430gの95℃熱水を加え、6分間茹でた。その後、磨砕機により10分間磨砕した。磨砕した大豆を3,500Gで5分間遠心分離することにより、上清としての豆乳を得た。
豆乳に酵素製剤を添加し、65℃で30分間反応させた。その後沸騰水浴にて失活させ、酵素処理豆乳を得た。
酵素処理豆乳又は未処理豆乳を、PBS(10mM リン酸緩衝液 140mM NaCl)で25×104倍希釈し、96ウェルELISAプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)に100μL/ウェル添加し、37℃、60分間静置し、プレートに固定した。ウェル内の液を除去後、蒸留水で5倍希釈した「BlockingOne」(ナカライテクス社製)を200μL/ウェル添加して25℃、60分静置した。
ウェルをT‐PBSで5回洗浄後、「Can Get Signal Solution 2」(東洋紡社製)で600倍希釈した二次抗体「Goat Anti-Rabbit IgG H&L(HRP)」(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を100μL/ウェル添加して25℃、60分静置した。
Gly m4含有率(%)
=[ [酵素処理豆乳の半定量値]/[未処理豆乳の半定量値] ]×100
未処理豆乳及び酵素処理豆乳を、味認識装置TS―5000Z(インテリジェントセンサーテクノロジー社製)にて、苦味センサー(BT0)を用いて電位値(mV)を測定し酵素処理豆乳と未処理豆乳の電位の差を計算した。
官能評価は、官能試験について訓練を受けたパネラー6名で実施した。各パネラーは、豆乳の商品開発部門に所属する社員であり、日常の業務において豆乳の官能評価を繰り返し行うことで訓練された者である。苦味について、試験開始前に、実施例1の全11種の酵素製剤にて処理した豆乳を全パネラーで試飲し、パネラー間にて苦味の評価の摺合せを行い、最も強く苦味を感じたサンプルを1つ選定し(表1中、評点5.0のサンプル)、これを評点5のコントロールとした。未処理豆乳を評点1のコントロールとし、1(苦味を感じない)、2(少し感じる)、3(感じる)、4(やや強く感じる)、5(強く感じる)の5段階で評価した。具体的には、各パネラーが評点1のコントロールを一定量口に含んで苦味を確認し、口をすすいだ後、酵素処理豆乳を一定量口に含んで苦味を確認し、口をすすいだ後、評点5のコントロールを一定量口に含んで評価した。
豆乳に各種酵素製剤を0.01%添加し、30分反応させた。その後、沸騰水浴にて失活させ、Gly m4の含有率と味覚センサーで電位値を測定した後、官能評価を実施した。結果は、表1に示す。評点については標準偏差も併せて示す。なお、表1中には、各酵素製剤の賦形剤割合と、賦形剤を除いた酵素濃度を示す。Aspergillus属由来の複合型プロテアーゼを用いた場合に、Gly m4含有率が低く、かつ官能評価も高い、風味の良い低アレルゲン豆乳が得られた。風味の良さのうち、苦味のなさは、味覚センサーの測定値でも確認された。
評点1:苦味を感じない(コントロール)
2:少し感じる
3:感じる
4:やや強く感じる
5:強く感じる(コントロール)
評価○:評点2未満
△:評点2以上3以下
×:評点3より大
豆乳にスミチームFP―G(新日本化学工業社製、賦形剤濃度50%、至適温度45℃~55℃)を0.01%添加し、10分(0.16時間)~12時間反応させた。その後、上記と同様に失活させた。各処理時間での反応温度は異なり(25~80℃)、表2中、反応温度が固定されているサンプル以外は、図1に示すとおり、80℃で酵素を添加し2.5時間維持した後、1時間に10℃温度が低下する条件で温度を低下させて酵素反応を実施した。結果を表2に示す。酵素の至適温度より高い80℃で失活させながら反応させた場合であっても、10分以上反応させた場合、Gly m4含有率が低く、かつ官能評価も高い、風味の良い低アレルゲン豆乳が得られた。なお、官能評価をパネラー2名で実施した場合にも、表2中、「官能」の列につき同様の結果が得られた。豆乳製造時には、大豆を熱湯と共に摩砕後、高温の豆乳が得られるため、反応温度が高温でも酵素が作用することは、実製造上有利であると考えられた。
豆乳に表3に記載の各濃度のスミチームFP―Gを添加し、65℃で30分間反応させた。その後沸騰水浴にて失活させた。結果は、表3に示す。スミチーム濃度が0.5%の場合(酵素濃度2.5mg/ml)、コントロールと比較して苦みを感じる豆乳が得られたが、それより低い濃度の場合には官能評価の高い豆乳が得られた。なお、官能評価をパネラー2名で実施した場合にも、表3中、「官能」の列につき同様の結果が得られた。酵素濃度が高いほど、Gly m4含有率が低い、低アレルゲン豆乳が得られた。
スミチームFP-Gの代わりにプロテアーゼP「アマノ」3SD(天野エンザイム(株)製、賦形剤割合70%、至適温度40℃)を用い、表4に示す濃度で豆乳に添加した以外は、実施例2と同様の手法を用いて酵素反応を実施した。結果を表4に示す。実施例2と同様、酵素の至適温度より高い80℃で失活させながら反応させた場合であっても、10分以上反応させた場合、Gly m4含有率が低く、かつ官能評価も高い、風味の良い低アレルゲン豆乳が得られ、実製造上有利であると考えられた。
豆乳に表5に記載の各濃度のプロテアーゼP「アマノ」3SDを添加し、65℃で30分間反応させた。その後沸騰水浴にて失活させた。結果は、表5に示す。酵素製剤濃度が0.5%の場合(酵素濃度1.5mg/ml)、コントロールと比較して苦みを感じる豆乳が得られたが、それより低い濃度の場合には官能評価の高い豆乳が得られた。酵素濃度が高いほど、Gly m4含有率が低い、低アレルゲン豆乳が得られた。酵素濃度0.06%の場合の官能評価は「△」となっているが、困難なく飲用可能な許容範囲の豆乳であった。
Claims (4)
- Aspergillus属菌由来の複合型プロテアーゼで豆乳を酵素処理する工程を含む、クラス2アレルゲン低減豆乳の製造方法であって、
前記酵素処理が、プロテアーゼ(mg)/豆乳(ml)濃度0.01mg/ml以上0.5mg/ml以下の酵素濃度で実施される、方法。 - 前記酵素処理が、10分以上12時間未満実施される、請求項1に記載の方法。
- Aspergillus属菌由来の複合型プロテアーゼ処理豆乳であって、
Gly m4含有量が未処理豆乳の70%以下であり、
苦味センサーで測定した電位(mV)が、未処理豆乳の電位の0.7(mV)以下である、豆乳。 - 非発酵豆乳である、請求項3に記載の豆乳。
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