JP7277707B2 - 厚鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、厚鋼板、より詳しくはレーザー切断に使用するのに有用な厚鋼板に関する。
造船、建築、産業機械、橋梁等の鋼構造物には多量の厚鋼板が使用されている。これらの鋼構造物の工作においては、施工コスト・工数の多くが溶接と切断で占められている。一般的に、鋼板の切断方法としては、従来のガス切断に加えて、プラズマ切断やレーザー切断などが知られている。
レーザー切断は、従来のガス切断と比較して、切断面の精度に優れ、熱影響部が小さいこと、さらには自動化が可能なことから薄板加工業を中心に普及してきた。しかしながら、近年、高出力のレーザー切断機の実用化により、厚鋼板の切断においてもレーザー切断機が利用されるようになってきている。
ここで、厚鋼板等の鋼板の製造はスラブを熱間圧延する工程を一般に含み、一方で、熱間圧延された鋼板は大気中で酸化されてその表面にスケール(酸化物)が形成することが知られている。そして、厚鋼板のレーザー切断においては、このスケールが鋼板表面で剥離していたり、切断時にレーザーによって剥離したりすると、厚鋼板をうまく切断できなかったり、切断面にえぐられたような異常切断部(ノッチ)が生じたりして、安定的な切断ができない場合がある。
また、上記のとおり、レーザー切断は自動化が可能であるものの、例えば、設定された切断条件のもと自動無人運転においてレーザー切断が施工されるような場合に、上記のような切断不良が発生してしまうと、切断処理が自動停止されることになる。このような場合には、予定されていた処理量を達成することができなくなるため、レーザー切断においては、一定の切断条件のもとで安定的に切断を実施できることが極めて重要となる。したがって、レーザー切断に供される厚鋼板では、一般的なレーザー切断条件において切断面にノッチが発生しないことが要求され、そのためには厚鋼板からスケールが剥離しないこと、すなわちスケールの密着性を高めることが非常に有効である。
特許文献1では、表面にスケール層を有する厚鋼板であって、前記スケール層の平均厚さが15μm以下であり、前記スケール層表面がJIS Z 8741に規定される60°鏡面光沢度Gs(60°)で15%以下で、JIS Z 8729に規定される明度L*が40以下であり、かつ前記スケール層と地鉄との界面が、JIS B 0601-2001で規定される算術平均粗さRaで2.5μm以上である粗さを有する厚鋼板が記載されている。また、特許文献1では、スケール層の厚さが薄いほど、スケール自体の密着性が向上し、レーザー切断性向上の観点から15μm以下にする必要があること、スケール層の密着性は、スケール層と地鉄との界面の粗さ(凹凸)によっても影響され、更なるスケール層の密着性向上のために、上記算術平均粗さRaを2.5μm以上とする必要があることが教示されている。
特許文献2では、レーザー切断後の鋼板断面のノッチ等を抑制するためには、表面スケールの密着性を高めることが重要であり、このためには、スケール層の厚み上限の管理が必要となること、さらに切断安定性を向上させるためには、スケール組成を管理することによりレーザー光の吸収効率を高めることが重要であることが教示され、より具体的には、所定の成分組成を有し、鋼板表面スケールの平均厚さが10~40μmで、かつ表面スケール中のFe34およびFeOが体積分率で合計80%以上であることを特徴とする鋼板がレーザー切断性に優れると教示されている。
特許文献3では、熱間圧延鋼板の製造方法が開示されており、スケールの密着性の向上には、スケール表層のFe34の厚さを減少すること、スケール/地鉄界面で生成するFe34を増加させること、及びスケール中のFe34の量を増加させることが有効であると教示されている。
特開2014-005504号公報 特開2013-248629号公報 特開平11-061248号公報
例えば、特許文献2では、スケール層の組成がFeO及びFe34主体となるとスケールの色が黒色になり、レーザー吸収能が向上してレーザー切断性が向上すると教示されている。また、特許文献3では、密着性に優れたスケールを得るためには、スケール厚さを薄くするとともに、スケールの組成をFeOよりもFe34とすることが必要であると教示されている。しかしながら、特許文献1~3のいずれにおいても、スケール組織の具体的な構造及びそれが鋼板に対するスケールの密着性に及ぼす影響については必ずしも十分な検討がなされておらず、それゆえ当該特許文献1~3に記載の鋼板では、そのレーザー切断性について依然として改善の余地があった。
そこで、本発明は、新規な構成により、スケールの密着性が改善され、それゆえレーザー切断に使用するのに有用な厚鋼板を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は下記のとおりである。
(1)鋼板と、前記鋼板の表面に形成された10μm以上40μm以下の厚さを有するスケールとを含み、
前記スケールがFeO層を含み、前記FeO層の前記スケールに対する割合が50体積%以上であり、
板厚方向に平行な断面の前記FeO層中に円相当直径0.3μm以上3.0μm以下の粒状Fe34が0.10個/μm2以上の個数密度で分散していることを特徴とする、厚鋼板。
(2)6mm以上35mm以下の厚さを有することを特徴とする、上記(1)に記載の厚鋼板。
(3)レーザー切断用であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の厚鋼板。
本発明によれば、鋼板上のスケールを改質して、粒状のFe34が分散されたFeO層を50体積%以上含むスケールを形成することで、一般に密着性が劣る10μm以上の厚さを有するスケールの場合であっても、鋼板に対するスケールの密着性を向上させることができ、その結果として鋼板表面からのスケールの剥離を抑制することができるので、レーザー切断に使用するのに有用な厚鋼板を提供することができる。
本発明の厚鋼板を示す模式図である。 本発明の厚鋼板の好ましい製造方法の熱処理工程におけるスケール構造の形成を示す模式図である。 本発明の厚鋼板の好ましい製造方法の熱処理工程における温度履歴の例示である。
以下、本発明は、レーザー切断用に用いられる厚鋼板について詳しく説明されるが、本発明の厚鋼板は、このような特定の用途に何ら限定されるものではなく、高いスケール密着性が要求される任意の用途において幅広く適用できることは言うまでもない。
<厚鋼板>
本発明の厚鋼板は、鋼板と、前記鋼板の表面に形成された10μm以上40μm以下の厚さを有するスケールとを含み、
前記スケールがFeO層を含み、前記FeO層の前記スケールに対する割合が50体積%以上であり、
板厚方向に平行な断面の前記FeO層中に円相当直径0.3μm以上3.0μm以下の粒状Fe34が0.10個/μm2以上の個数密度で分散していることを特徴としている。
先に述べたとおり、厚鋼板のレーザー切断においては、切断面にノッチが発生しないことが要求され、そのためには厚鋼板からスケールが剥離しないこと、すなわちスケールの密着性を高めることが非常に有効である。
ここで、スケールは、熱間圧延された厚鋼板が大気中で酸化されることで鋼板表面上に形成され、このスケールは、地鉄(鋼板)側から、ウスタイト(FeO)、マグネタイト(Fe34)及びヘマタイト(Fe23)の順で構成された3層構造を有することが一般に知られている。これらの酸化鉄は、地鉄側から拡散する鉄(Fe)と大気中の酸素(O2)とが反応することによって生成される。そのため、地鉄側ほど低次の酸化鉄が生成され、大気側ほど高次の酸化鉄が生成される。このような一般的なスケール構造を有する厚鋼板の場合、スケール厚さが10μm未満であれば、鋼板表面に対するスケールの密着性が高く、良好なレーザー切断性を示すことができる。しかしながら、スケール厚が10μm以上になると、鋼板表面に対するスケールの密着性が低下し、このような厚鋼板をレーザー切断に供した場合には、美麗な切断面を得ることができないという問題がある。
本発明者は、圧延工程後の鋼板を、後で説明する特定の熱処理工程にさらして鋼板上のスケールを改質することで、地鉄(鋼板)側から、ウスタイト(FeO)、マグネタイト(Fe34)及びヘマタイト(Fe23)の順で構成された3層構造を有するスケールではなく、粒状のFe34が分散されたFeO層を含むスケールを形成することができ、さらにはこのようなスケールを所定の量において含有する厚鋼板を使用することでレーザー切断性が顕著に改善されることを見出した。
以下、図面を参照して、本発明の厚鋼板及び当該厚鋼板の製造方法についてより詳しく説明するが、これらの説明は、本発明の好ましい実施態様の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施態様に限定することを意図するものではない。
図1は、本発明の厚鋼板を示す模式図である。図1を参照すると、本発明の厚鋼板1は、鋼板(地鉄)2上にスケール3を含み、当該スケール3は、FeO層4中にFe34粒5(粒状Fe34)が分散された構成を有し、当該FeO層4の上にFe34層6をさらに含んでいる。本発明によれば、Fe34粒5が分散されたFeO層4をスケール3全体に対して50体積%以上含むことで、一般に密着性が劣る10μm以上の厚さを有するスケールを含む厚鋼板の場合であっても、鋼板2に対するスケール3の密着性を向上させることができ、その結果として鋼板表面からのスケール3の剥離を抑制して、厚鋼板1のレーザー切断性を顕著に改善することが可能となる。
何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、FeO層中に微細な粒状Fe34を析出させそして分散させることで、いわゆる析出強化のような機構によりスケールが強化され、その結果としてこのような粒状Feが分散されたFeO層を含まないスケールの場合と比較して、鋼板に対するスケールの密着性が向上するものと考えられる。上記のとおり、従来の厚鋼板では、スケールは層状構造を有するということが一般に知られている事項であることから、このような粒状Fe34が分散されたFeO層を含むことでスケールの密着性、さらには厚鋼板のレーザー切断性が向上するという知見は従来知られておらず、今回、本発明者によって初めて明らかにされたことであり、極めて意外であり、また驚くべきことである。
なお、スケール3は、任意選択で、Fe34層6の上にFe23層(図示せず)をさらに含有していてもよい。しかしながら、このFe23は、Fe34等と比較すると成長速度が極めて遅く、しかも後で説明する本発明に係るスケール構造を形成するための特定の熱処理工程の条件下では、その成長が促進されることもない。したがって、本発明の好ましい実施態様によれば、スケール3は、粒状Fe34が分散されたFeO層4と、当該FeO層4の上に形成されたFe34層6から実質的に構成されるか、又はFeO層4とFe34層6のみから構成される。ここで、本発明において、「スケールが、粒状Fe34が分散されたFeO層と、当該FeO層の上に形成されたFe34層から実質的に構成される」という表現は、スケールが、粒状Fe34が分散されたFeO層と、当該FeO層の上に形成されたFe34層以外の組織を5体積%以下、4体積%以下、3体積%以下、2体積%以下又は1体積%以下しか含まないことを意味するものである。
[鋼板]
本発明によれば、鋼板としては、一般にレーザー切断等の用途において使用される任意の化学組成を有する鋼板であってよく、特に限定されない。しかしながら、レーザー切断が鋼構造物の製造において多用されている点を考慮すると、本発明における鋼板は、より汎用的な化学組成を有する鋼板、例えば、質量%で、C:0.30%以下、Si:0.6%以下、Mn:2.0%以下、P:0.05%以下、S:0.050%以下、及びN:0.010%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼板であってよい。ここで、不純物とは、厚鋼板を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明の厚鋼板に対して意図的に添加した成分でないものを意味する。
また、本発明における鋼板は、上記の基本成分の元素に加えて、任意選択で、質量%で、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Cr:0.50%以下、及びMo:0.50%以下の1種又は2種以上を含有していてもよい。さらに、任意選択で、Al、Nb、Ti、V、B、Ca、Mg、及びREM(希土類金属:Rare-Earth Metal)からなる群より選択される1種又は2種以上の元素を、合計で、質量%で、0.5%以下含んでいてもよい。
なお、上記基本成分の各元素に関する含有量の下限値は特に規定しないが、例えば、C含有量は0.01%以上であってもよく、Si含有量は0.05%以上であってもよく、Mn含有量は0.1%以上であってもよい。一方、P、S及びNの含有量は0%であってもよいが、これらの元素の含有量を0.0001%未満とすることは、製造コストの大幅な増加を招くことなどから、P、S及びNの含有量はそれぞれ0.0001%以上とすることが好ましい。また、上記任意選択成分の各元素に関する含有量の下限値は特に規定されず、0%であってよい。
[スケール厚さ]
本発明によれば、上記鋼板の表面に形成されるスケールの厚さは10μm以上40μm以下である。スケールの厚さが10μm未満であると、本発明に係るスケール構造を有していない厚鋼板の場合であっても、スケールの密着性が高いため、当該厚鋼板は良好なレーザー切断性を示すことができる。一方で、一般的には、スケールの厚さが10μm以上になると、スケールの密着性が低下するため、このようなスケールを含む厚鋼板をレーザー切断に供しても美麗な切断面を得ることはできない。
しかしながら、本発明に係るスケール構造を有する厚鋼板によれば、スケールの厚さが10μm以上の場合であっても、スケールの密着性を向上させることができ、その結果として鋼板表面からのスケールの剥離を抑制して、厚鋼板のレーザー切断性を顕著に改善することが可能である。ただし、スケールの厚さが40μmを超える場合には、本発明に係るスケール構造を有していても、十分なスケール密着性を確保することができず、よって良好なレーザー切断性を得ることはできない。したがって、本発明においては、スケールの厚さは、10μm以上40μm以下とする必要があり、例えば、15μm以上又は20μm以上であり、かつ35μm以下又は30μm以下であってもよく、好ましくは15μm以上35μm以下である。
本発明において、「スケールの厚さ」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて決定される。より具体的には、「スケールの厚さ」は、厚鋼板の板厚方向に平行な断面を観察面として試料を採取し、観察面を研磨し、当該観察面をSEMにより1000倍の倍率で観察し、スケールと地鉄との界面からスケール表面までの距離を5点以上求める測定を任意の3視野で行い、得られた距離の平均値として決定される。
[スケール構造]
本発明によれば、スケールはFeO層を含み、当該FeO層の上記スケールに対する割合が50体積%以上であり、板厚方向に平行な断面の上記FeO層中に円相当直径0.3μm以上3.0μm以下の粒状Fe34が0.10個/μm2以上の個数密度で分散している。
FeO層内の粒状Fe34の円相当直径が0.3μm未満であると、粒状Fe34をFeO層中に析出させたことによる効果、すなわち密着性向上、ひいてはレーザー切断性向上の効果に寄与しない。一方で、粒状Fe34の円相当直径が3.0μmを超えると、このような粗大な析出粒はスケールの強化に寄与しなくなり、同様にスケール密着性向上効果、ひいてはレーザー切断性向上効果に寄与しない。また、粒状Fe34の円相当直径が3.0μmを超えると隣接するFe34粒同士の結合が生じてしまう場合がある。Fe34粒同士の結合が生じると、FeO層中において分散する粒状Fe34の数が減少することとなる。このような場合には、FeO層中の粒状Fe34の個数密度を適切な範囲内に制御することができなくなり、すなわち厚鋼板の板厚方向に平行な断面において測定した場合に、粒状Fe34をFeO層中に0.10個/μm2以上の個数密度で分散させることができなくなる。その結果として、同様に、粒状Fe34をFeO層中に析出させたことによる効果を十分に発揮することができなくなる。
上記のように、本発明で、スケール密着性を向上させる効果を発揮する粒状Fe34は、円相当直径が0.3μm以上3.0μm以下のものである。なお、FeO層は、円相当直径が0.3μm未満であるか又は3.0μm超である粒状Fe34を含んでいてもよい。ここで、本発明において、「粒状Fe34」とは、その周囲をFeO層中のFeOによって囲まれたものを言う。したがって、例えば、図1のFe34層6を起点としてFeO層4の内部へ成長したようなFe34や、図2(d)に関連して後で説明される鋼板/スケール界面に生成するFe34層6を起点としてFeO層4の内部へ成長したようなFe34、さらにはこれらのFe34層6が完全な層を形成できずに、例えば、部分的に切断された形態において鋼板の表層や鋼板/スケール界面に存在しているようなFe34は、本発明における「粒状Fe34」には包含されない。これらのFe34は、粒状Fe34が分散されたFeO層には含まれず、図1及び図2(d)で説明されるFe34層6の一部又は単なるFe34相としてみなされる。
さらに、粒状Fe34は、厚鋼板の板厚方向に平行な断面のFeO層中に0.10個/μm2以上の個数密度で分散させる必要があり、例えば、0.20個/μm2以上、0.30個/μm2以上、0.50個/μm2以上、0.80個/μm2以上又は1.00個/μm2以上の個数密度で分散してもよく、好ましくは当該FeO層中に0.30個/μm2以上の個数密度で分散してもよい。なお、粒状Fe34の個数密度の上限値は特に規定しないが、当該個数密度が大きくなると、円相当直径の場合と同様に、隣接するFe34粒同士の結合が生じてしまう場合があり、それゆえ好ましくない。したがって、粒状Fe34の個数密度の上限値は、一般的には7.00個/μm2以下とし、好ましくは6.00個/μm2以下、より好ましくは5.00個/μm2以下である。
また、上記FeO層のスケールに対する割合が50体積%未満の場合には、十分なスケール密着性を得ることができないため、良好なレーザー切断性を達成することができなくなる。したがって、本発明においては、スケールは、粒状Fe34が分散されたFeO層を50体積%以上含む必要があり、さらに十分なスケール密着性をより確実に得るためには、スケールは、当該FeO層を55体積%以上、好ましくは60体積%以上、より好ましくは70体積%以上含む。なお、FeO層のスケールに対する割合の上限値は、100体積%であってもよく、特に規定しないが、一般的には95体積%以下、好ましくは90体積%以下である。
本発明において、「粒状Fe34の円相当直径」、「粒状Fe34の個数密度」及び「FeO層のスケールに対する割合」は、スケールの厚さの場合と同様にSEMを用いて決定される。より具体的には、厚鋼板の板厚方向に平行な断面を観察面として試料を採取し、観察面を研磨し、当該観察面をSEMにより3000倍の倍率で観察し、コントラストの違いからFeOとFe34、さらにはFe23を判別する。次に、画像処理により、各粒状Fe34の円相当直径を算出し、次いで円相当直径0.3μm以上3.0μm以下の粒状Fe34の個数密度、及び当該粒状Fe34を含有するFeO層のスケールに対する割合をそれぞれ求め、これを任意の3視野で行い、得られた平均値がそれぞれ「粒状Fe34の個数密度」及び「FeO層のスケールに対する割合」として決定される。
[厚鋼板の厚さ]
本発明の厚鋼板は、レーザー切断が適用可能な任意の厚さを有することができ、特に限定されないが、一般的には6mm以上35mm以下の厚さを有し、好ましくは16mm以上25mm以下の厚さを有する。
<厚鋼板の製造方法>
次に、本発明の厚鋼板の好ましい製造方法について説明する。以下の説明は、本発明の厚鋼板を製造するための特徴的な方法の例示を意図するものであって、本発明の厚鋼板を以下に説明するような製造方法によって製造されるものに限定することを意図するものではない。
本発明の厚鋼板の好ましい製造方法は、スラブを熱間圧延する圧延工程、及び得られた鋼板を熱処理する熱処理工程を含み、
前記厚鋼板が10μm以上40μm以下の厚さを有するスケールを含み、
前記熱処理工程が、前記圧延工程後の鋼板を、前記鋼板の表面酸素濃度が20%未満の雰囲気中で、温度変化が0.400℃/分以下となるように250℃以上400℃以下の温度範囲で5分間以上240分間以下の時間にわたって均熱保持する均熱工程を含むことを特徴としている。
[圧延工程]
まず、圧延工程に先立ち、溶鋼を鋳造し、熱間圧延に供するスラブを形成する。鋳造方法は、通常の鋳造方法でよく、連続鋳造法、造塊法などを採用できるが、生産性の点で、連続鋳造法が好ましい。当該スラブは、特に限定されないが、例えば、上で説明した鋼板の化学組成、より具体的には、質量%で、C:0.30%以下、Si:0.6%以下、Mn:2.0%以下、P:0.05%以下、S:0.050%以下、及びN:0.010%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、任意選択で、さらに、質量%で、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Cr:0.50%以下、及びMo:0.50%以下の1種又は2種以上を含有するものであってよく、さらに、Al、Nb、Ti、V、B、Ca、Mg、及びREM(希土類金属:Rare-Earth Metal)からなる群より選択される1種又は2種以上の元素を、合計で、質量%で、0.5%以下含有するものであってもよい。なお、上記基本成分の各元素に関する含有量の下限値は特に規定しないが、例えば、C含有量は0.10%以上であってもよく、Si含有量は0.05%以上であってもよく、Mn含有量は0.50%以上であってもよい。一方、P、S及びNの含有量は0%であってもよいが、これらの元素の含有量を0.0001%未満とすることは、製造コストの大幅な増加を招くことなどから、P、S及びNの含有量はそれぞれ0.0001%以上とすることが好ましい。また、上記任意選択成分の各元素に関する含有量の下限値は特に規定されず、0%であってよい。
次いで、得られたスラブが熱間圧延に供される。本方法では、スラブを鋳造した後、そのまま熱間圧延を行ってもよいし、又はスラブを一旦室温まで冷却し、Ac3点以上の温度等に再加熱して熱間圧延を行ってもよい。熱間圧延の加熱温度は、例えば900℃以上1250℃以下であってよい。また、熱間圧延は、例えば、板厚調整等のための粗圧延を含むものであってもよい。当該粗圧延は、所望の板厚寸法が確保できればよく、その条件は特に限定されない。さらに、本方法では、熱間圧延後の冷却形態は特に限定されない。例えば、そのまま水冷若しくは途中まで空冷後に水冷するか、又は空冷した後、再加熱して焼入れしてもよい。
[熱処理工程]
次に、得られた鋼板が、熱処理工程において熱処理される。当該熱処理工程は、以下のような均熱工程、すなわち圧延工程後の鋼板を、当該鋼板の表面酸素濃度が20%未満の雰囲気中で、温度変化が0.400℃/分以下となるように250℃以上400℃以下の温度範囲で5分間以上240分間以下の時間にわたって均熱保持する均熱工程を含む。なお、熱処理工程に先立ち、例えば、スケールの厚さを10μm以上40μm以下の範囲に調整するために、必要に応じて高圧水等によるデスケーリングを行ってもよい。このようなデスケーリングは、例えば、圧延工程の前、その間、又は圧延工程の後でかつ熱処理工程の前に実施することができる。
本熱処理工程における均熱工程では、スケールの相変態が促され、それによって上で説明した本発明に係るスケール構造を有する厚鋼板が得られる。以下、図面を参照してより詳しく説明する。
図2は、本発明の厚鋼板の好ましい製造方法の熱処理工程におけるスケール構造の形成を示す模式図である。図2(a)は、圧延工程後でかつ熱処理工程前の厚鋼板の状態を示し、図2(b)は、本発明の厚鋼板の好ましい製造方法に従って熱処理された後の厚鋼板の状態を示し、図2(c)~(f)は、本発明の厚鋼板の好ましい製造方法に従って熱処理されない場合の厚鋼板の状態を示している。
図2(a)に示すように、圧延工程後では、熱間圧延された鋼板が大気中で酸化されてその表面にスケールが形成され、当該スケールは、鋼板(地鉄)2側から、FeO層4、Fe34層6及びFe23層7の順で構成された3層構造を有する。本方法では、このようなスケール構造を有する厚鋼板を、鋼板2の表面酸素濃度が大気中の酸素濃度よりも低い20%未満の雰囲気中250℃以上400℃以下の温度範囲において均熱保持することにより、最表面のFe23層7の一部又は全部がより低次の酸化物であるFe34層6に変化するとともに、FeO層4において以下の反応式で示されるようなFeOの相変態が生じてFe34が析出する。
4FeO → Fe34 + Fe
ここで、このようなFeOの相変態は、Fe34の核生成と核成長によって進行すると考えられる。しかしながら、相変態の際すなわち均熱保持の際の温度や時間等の条件によっては、Fe34の核生成と核成長のいずれか一方あるいは他の反応が支配的に起こる場合があり、このような場合には、得られるスケール構造が全く異なるものとなってしまう。より具体的に説明すると、熱処理工程が、圧延工程後の鋼板を、当該鋼板の表面酸素濃度が20%未満の雰囲気中で、温度変化が0.400℃/分以下となるように250℃以上400℃以下の温度範囲で5分間以上240分間以下の時間にわたって均熱保持する均熱工程を含む場合には、FeO層4中でFe34の核生成が進行し、それが核成長することにより、図2(b)に示すように、FeO層4中にFe34粒5(粒状Fe34)が分散されたスケール構造が形成される。
(表面酸素濃度:20%未満)
一方、鋼板の表面酸素濃度が20%以上の雰囲気すなわち大気と同じか又はそれよりも酸化性の雰囲気中で均熱工程を実施した場合には、Fe34の核生成及び核成長よりも以下の反応式で示されるFeOの酸化反応が支配的となる。
6FeO + O2 → 2Fe34
その結果として、図2(c)に示すように、Fe34層6が厚く成長して、粒状Fe34を含有するFeO層4がスケール3全体に対して50体積%未満となってしまう。このようなスケールは、十分なスケール密着性の効果を発揮することができない。したがって、当該FeO層4をスケール3全体に対して50体積%以上含有させ、十分なスケール密着性の効果を発揮するために、鋼板の表面酸素濃度は20%未満とし、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。なお、鋼板の表面酸素濃度の下限値は、特に規定しないが、本発明に係るスケール構造を形成する観点からは低ければ低いほどよく、0%であってもよい。
均熱工程の際の鋼板の表面酸素濃度は、原則として酸素濃度計を用いて決定される。しかしながら、酸素濃度計を用いた測定方法が適さない場合、例えば、後で説明するような鋼板を複数枚重ねた段積み徐冷によって均熱工程を実施する場合には、鋼板の表面酸素濃度は流体解析を利用した数値計算によって推定される。
(均熱温度範囲:250℃以上400℃以下)
均熱工程における均熱温度範囲の下限が250℃未満であると、Fe34がほとんど核生成しないため、粒状Fe34をほとんど又は全く析出させることができなくなる。一方で、均熱工程における均熱温度範囲の上限が400℃を超えると、Fe34の核生成よりもFe34の核成長が支配的となる。ここで、圧延工程後のスケール中には、図2(a)に示すようにFe34層6が存在しているため、均熱工程における均熱温度範囲の上限が400℃超になると、ここを起点としてFe34が厚さ方向に成長してより厚いFe34層6を形成してしまう。これに加えて、スケールと鋼板の界面において生成したFe34を起点としてもFe34が成長して層状のFe34層6が新たに生成する場合がある。
その結果として、図2(d)に示すように、鋼板表面と、鋼板/スケール界面とにFe34層6が生成し、粒状Fe34をほとんど又は全く含まないスケール構造が形成されることとなる。この場合には、粒状Fe34が分散されたFeO層4をスケール3全体に対して50体積%以上含有させることができず、よって十分なスケール密着性の効果を発揮することができなくなる。したがって、FeO層4中に粒状Fe34を確実に析出させるとともに、このようなFeO層4をスケール3全体に対して50体積%以上含有させるために、均熱工程における均熱温度範囲は、250℃以上400℃以下とし、例えば、260℃以上、280℃以上又は300℃以上であり、かつ390℃以下、370℃以下又は350℃以下であってもよく、好ましくは300℃以上350℃以下である。
(均熱時の温度変化:0.400℃/分以下)
粒状Fe34が分散されたFeO層4を形成するためには、まず、FeO層4中でFe34を核生成させ、次いでそれを核成長させる必要がある。ここで、Fe34を適切に核生成及び核成長させるためには、鋼板を所定の時間にわたって均熱保持すること、より具体的には均熱工程における温度変化が0.400℃/分以下となるように保持すればよい。均熱保持の際の温度変化が0.400℃/分を超えると、Fe34の核生成サイトが十分に発生しないため、図2(e)に示すように、FeO層4中に析出される粒状Fe34の数が少なくなる。この場合には、粒状Fe34をFeO層4中に0.10個/μm2以上の個数密度で分散させることができず、よって十分なスケール密着性の効果を発揮することができなくなる。
したがって、粒状Fe34をFeO層4中に0.10個/μm2以上の個数密度で分散させて十分なスケール密着性の効果を発揮するために、均熱工程における温度変化は0.400℃/分以下とし、好ましくは0.300℃/分以下、より好ましくは0.200℃/分以下、最も好ましくは0.100℃/分以下である。なお、当該温度変化の下限値は、特に規定しないが、本発明に係るスケール構造を形成する観点からは低ければ低いほどよく、0.000℃/分であってもよい。
(均熱時間:5分間以上240分間以下)
均熱工程における均熱時間が5分未満であると、Fe34が核生成しないか、又はFe34が核生成しても、それを円相当直径で0.3μm以上に十分に核成長させることができない。一方で、均熱工程における均熱時間が240分を超えると、図2(f)に示すように、析出した粒状Fe34が円相当直径で3.0μmを超えて粗大に成長し、さらには隣接するFe34粒同士の結合が生じてしまう場合がある。このような場合には、FeO層4中において分散する粒状Fe34の数が減少することとなる。したがって、粒状Fe34の円相当直径を0.3μm以上3.0μm以下の範囲内に制御し、さらには当該粒状Fe34をFeO層4中に0.10個/μm2以上の個数密度で適切に分散させるために、均熱工程における均熱時間は、5分間以上240分間以下とし、例えば、5分間以上、10分間以上、30分間以上又は60分間以上であり、かつ220分間以下、200分間以下、150分間以下又は100分間以下であってもよく、好ましくは10分間以上200分間以下である。
(熱処理方法の具体例)
本方法における熱処理を実施するための方法としては、圧延工程後の鋼板を、当該鋼板の表面酸素濃度が20%未満の雰囲気中で、温度変化が0.400℃/分以下となるように250℃以上400℃以下の温度範囲で5分間以上240分間以下の時間にわたって均熱保持する均熱工程を含むことができるものであればよく、特に限定されない。例えば、このような方法の具体例としては、以下のものが挙げられる。
(i)圧延工程後の鋼板を複数枚重ねる(段積み徐冷)。
(ii)圧延工程後の鋼板に保熱カバーを被せる。
(iii)圧延工程後の鋼板、又は圧延工程後に常温まで冷却された鋼板を均熱炉に装入する。
上記(i)の段積み徐冷の場合には、その両面に他の鋼板を重ねられた鋼板は、端部以外は大気にほとんど触れないため、表面酸素濃度としては0%であるか又はほぼ0%であるとみなすことができる。仮に隣接する鋼板の間にわずかな隙間があり、当該隙間を通して大気が導入されるとしても、鋼板の端部から中心部に進むにつれて大気中の酸素は鋼板の酸化に消費され、酸素濃度としては次第に0%に近づいていく。したがって、段積み徐冷の場合の鋼板の表面酸素濃度は、このような隙間を考慮した流体解析によって数値計算したとしても1%にも満たないと推定することができる。加えて、段積み徐冷の場合、内部に配置される鋼板は、次第に温度が低下するものの、その低下速度は極めてゆっくりであるため、250℃以上400℃以下の温度範囲を0.400℃/分以下の温度変化でかつ5分間以上240分間以下保持するような均熱工程を実現することが可能である。なお、段積み徐冷によって本発明に係る熱処理を実施する場合は、段積み徐冷時の冷却過程において、250℃以上400℃以下の温度範囲に0.400℃/分以下の温度変化が5分間以上240分間以下継続するという均熱工程を含めば、段積み開始温度、終了温度、及び段積み時間については限定されない。
上記(ii)及び(iii)の保熱カバーや均熱炉を適用する場合においても、段積み徐冷の場合と同様に、上記の均熱保持を容易に実現することが可能であり、さらに密閉性を確保するか又は窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入することにより、容易に鋼板の表面酸素濃度を20%未満に制御することができる。
図3は、本発明の厚鋼板の好ましい製造方法の熱処理工程における温度履歴の例示である。図3(a)~(c)は、本発明の厚鋼板の好ましい製造方法に従って熱処理される場合の温度履歴の例を示し、一方、図3(d)~(g)は、本発明の厚鋼板の好ましい製造方法に従って熱処理されない場合の温度履歴の例を示している。
図3(a)は、段積み徐冷や保熱カバーを適用した温度履歴の例を示している。図3(a)を参照すると、圧延工程後に400℃未満の温度まで冷却された鋼板を段積みした後、時間t0からt1まで徐々に温度が低下しているものの、その温度変化は0.400℃/分以下であり、さらに250℃以上400℃以下の温度範囲で5分間以上240分間以下保持されていることがわかる。図3(b)は段積み徐冷に対応する温度履歴の例である。図3(b)では圧延工程後に400℃超で段積み徐冷を開始し250℃未満で段積み徐冷を終了しているが、250℃以上400℃以下の温度範囲において温度変化が0.400℃/分以下となる時間を5分間以上240分間以下含むように均熱保持されている。また、図3(c)は、均熱炉を用いた場合の温度履歴の例である。図3(c)を参照すると、圧延工程後に一旦常温まで冷却された鋼板を均熱炉に装入して加熱し、次いで250℃以上400℃以下の一定の温度で時間t0からt1まで5分間以上240分間以下均熱保持されていることがわかる。図3(a)~(c)に例示する温度履歴によれば、図1及び図2(b)に示すような本発明に係るスケール構造を有する厚鋼板を得ることができる。
一方、図3(d)では、圧延工程後の鋼板は、時間t0からt1まで0.400℃/分以下の温度変化で5分間以上240分間以下保持されているものの、均熱温度が400℃を超えていることがわかる。この場合には、Fe34の核生成よりもFe34の核成長が支配的となり、図2(d)に示すように、鋼板表面と、鋼板/スケール界面とにFe34層6が生成し、粒状Fe34をほとんど含まないスケール構造が形成されることとなる。
また、図3(e)に示すように、均熱時間が240分間を超えると、図2(f)に示すように、析出した粒状Fe34が円相当直径で3.0μmを超えて粗大に成長し、さらには隣接するFe34粒同士の結合が生じてしまう場合がある。このような場合には、結果としてFeO層中において分散する粒状Fe34の数が減少することとなる。
さらに、図3(f)及び(g)に示すように、均熱工程における温度変化が0.400℃/分を超えている場合には、Fe34の核生成サイトが十分に発生しないため、図2(e)に示すように、FeO層4中に析出される粒状Fe34の数が少なくなる。
本発明の厚鋼板は、上記のとおり、スケールの密着性が高くそれゆえレーザー切断性に優れるため、造船、建築、産業機械、橋梁等の鋼構造物に使用される厚鋼板であって、レーザー切断が利用可能な厚鋼板として有用である。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例では、本発明に係る厚鋼板を種々の熱処理条件下で製造し、そのレーザー切断性について調べた。
まず、質量%で、Cを0.16%、Siを0.1%、Mnを0.6%、Pを0.02%、Sを0.004%、Cuを0.04%、Niを0.05%、及びCrを0.20%含有し、残部がFe及び不純物からなるスラブを22mm厚さまで熱間圧延し、次いで水冷した。次に、得られた鋼板に下表1に示す条件下で熱処理を施した。なお、熱処理の際の鋼板の表面酸素濃度は、保熱カバー及び均熱炉を使用した場合には酸素濃度計を用いて測定し、段積み徐冷の場合には、鋼板と鋼板の間の隙間を考慮した流体解析により数値計算で求めた。
Figure 0007277707000001
次に、得られた厚鋼板をレーザー切断に供した。以下に示す切断条件のもと、100mm×100mmの鋼板を3枚切り出した。
レーザー出力:5000W
周波数:800Hz
デューティ:55%
焦点位置:13mm
アシストガス圧力:0.6MPa
切断速度:700mm/分
切断後の断面性状を観察してノッチの発生個数を測定し、それを厚鋼板1mあたりの発生頻度(個/m)に換算し、その換算値に応じて厚鋼板のレーザー切断性を以下のように評点付けした。
1個/m以下: ◎
1~10個/m: ○
10~20個/m:△
20個/m超: ×
スケール厚は、厚鋼板の板厚方向に平行な断面を観察面として試料を採取し、観察面を研磨し、当該観察面をSEMにより1000倍の倍率で観察し、スケールと地鉄との界面からスケール表面までの距離を5点求める測定を任意の3視野で行い、得られた距離の平均値として決定した。
同様に、厚鋼板の板厚方向に平行な断面を観察面として試料を採取し、観察面を研磨し、当該観察面をSEMにより3000倍の倍率で観察し、コントラストの違いからFeOとFe34、さらにはFe23を判別した。次に、画像処理により、各粒状Fe34の円相当直径を算出し、次いで円相当直径0.3~3.0μmの粒状Fe34の個数密度、及び円相当直径0.3~3.0μmの粒状Fe34を含有するFeO層のスケールに対する割合をそれぞれ求め、これを任意の3視野で行い、得られた平均値をそれぞれ、「粒状Fe34個数密度」及び「粒状Fe34含有FeO層のスケールに対する割合」として決定した。結果を下表2に示す。
Figure 0007277707000002
表1に示すように、実施例A及びBの厚鋼板は、圧延後の冷却過程において複数枚の板を重ねて空冷することで徐冷したものである。実施例C及びDの厚鋼板は、圧延後の冷却過程において厚鋼板に保熱カバーを設置して保熱したものである。実施例Eの厚鋼板は、一旦室温まで冷却したものを均熱炉に装入して加熱し、次いで均熱保持したものである。これら実施例A~Eの厚鋼板については、スケール中に微細な粒状Fe34を0.10個/μm2以上の割合で分散させることにより、鋼板に対するスケールの密着性が高く、それゆえ良好なレーザー切断結果を得ることができた。
これとは対照的に、比較例Fの厚鋼板は、均熱温度が400℃を超えたために、鋼板表面と、鋼板/スケール界面とにFe34層が生成してしまい、その結果として粒状Fe34が析出せず、スケールの密着性が十分でなく、レーザー切断性の評価も×であった。同様に、比較例Gの厚鋼板は、保持温度が250℃未満であったために粒状Fe34が析出せず、レーザー切断性の評価が×であった。一方、比較例Hの厚鋼板は、温度変化が0.030℃/分となる均熱時間が5分間未満であったために円相当直径で0.3μm以上の粒状Fe34を十分に析出させることができず、レーザー切断性の評価が△であった。また、比較例Iの厚鋼板は、温度変化が0.400℃/分よりも大きかったために十分な個数密度でFe34を分散させることができず、レーザー切断性の評価が△であった。比較例Jの厚鋼板は、表面酸素濃度が20%以上の大気中での保持としたために、Fe34層が厚く成長して粒状Fe34を含有するFeO層のスケールに対する割合が50体積%未満となり、レーザー切断性の評価が△であった。比較例Kの厚鋼板は、保持時間が240分間を超えたために粒状Fe34が粗大化し、円相当直径0.3~3.0μmの粒状Fe34の個数密度が0.10個/μm2未満となり、レーザー切断性の評価が×であった。比較例Lの厚鋼板では、スケール中にFe34が適切に分散されたスケール構造が得られたものの、スケール厚が40μm超であったためにスケール剥離が生じ、レーザー切断においてもノッチが多数発生した。
1 厚鋼板
2 鋼板
3 スケール
4 FeO層
5 粒状Fe34
6 Fe34
7 Fe23

Claims (6)

  1. 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された10μm以上40μm以下の厚さを有するスケールとを含み、
    前記スケールがFeO層を含み、前記FeO層の前記スケールに対する割合が50体積%以上であり、
    板厚方向に平行な断面の前記FeO層中に円相当直径0.3μm以上3.0μm以下の粒状Fe34が0.10個/μm2以上の個数密度で分散していることを特徴とする、厚鋼板。
  2. 16mm以上35mm以下の厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の厚鋼板。
  3. 前記スケールの厚さが15μm以上40μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の厚鋼板。
  4. 前記スケールの厚さが25μm以上40μm以下であることを特徴とする、請求項3に記載の厚鋼板。
  5. 前記FeO層の前記スケールに対する割合が60体積%以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の厚鋼板。
  6. レーザー切断用であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の厚鋼板。
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