本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明においては、特に断りがない限り、図1に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。
〔コンバインの全体構成〕
図1に示されるように、本発明の自動走行制御システムを適用可能なコンバインの一形態である自脱型のコンバイン1は、左右一対に構成されたクローラ式の走行装置11,11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、刈取部H、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、エンジン(不図示)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって自走可能である。
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11よりも上側に備えられている。運転部12には、コンバイン1の作業を監視するオペレータが搭乗可能である。なお、オペレータは、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していても良い。
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14に接続している。また、衛星測位モジュール80は、運転部12を覆うキャビンの屋根部に取り付けられている。
刈取部Hは、コンバイン1における機体前部に備えられ、圃場の作物、具体的には植立穀稈を刈り取る。刈取部Hは、バリカン型の切断装置15、及び、搬送装置16を有する。なお、本実施形態では6条刈りの刈取部Hが備えられている。
切断装置15は、圃場の作物の株元を切断する。そして、搬送装置16は、切断装置15によって切断された穀稈を後側へ搬送する。
この構成によって、刈取部Hは、圃場の作物を刈り取る。コンバイン1は、刈取部Hによって圃場の作物を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
搬送装置16によって搬送された穀稈は、脱穀装置13において脱穀処理される。脱穀処理によって得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
また、運転部12には、通信端末4(図4参照)が配置されている。通信端末4は、例えばタッチパネル式の画面を備えた情報端末であって、種々の情報を表示可能に構成されている。本実施形態において、通信端末4は、運転部12に固定されている。しかし、本発明はこれに限定されず、通信端末4は、運転部12に対して着脱可能に構成されていても良いし、通信端末4は、コンバイン1の機外に位置していても良い。
ここで、コンバイン1は、図2及び図3に示されるように圃場における外周領域SAで穀物を収穫しながら周回走行を行った後、内側領域CAで刈取走行を行うことによって、圃場の穀物を収穫するように構成されている。
また、運転部12には、主変速レバー19(図4参照)が設けられている。主変速レバー19は、人為操作可能である。コンバイン1が手動走行しているとき、オペレータが主変速レバー19を操作すると、コンバイン1の車速が変化する。即ち、コンバイン1が手動運転しているとき、オペレータは、主変速レバー19を操作することによって、コンバイン1の車速を変更することができる。
なお、オペレータは、通信端末4を操作することによって、エンジンの回転速度を変更することができる。
作物の状態によって、適切な作業速度は異なる。オペレータが通信端末4を操作し、エンジンの回転速度を適切な回転速度に設定すれば、作物の状態に適した作業速度での作業が可能となる。
図2において、圃場の外周側における周回走行のためのコンバイン1の走行経路が矢印で示されている。図2に示す例では、コンバイン1は、3周の周回走行を行う。そして、この走行経路に沿った刈取走行が完了すると、圃場は、図3に示す状態となる。
つまり、コンバイン1は、最初に外周領域SAにおいて渦巻き状の周回走行を行いながら刈取走行を行う。その後、コンバイン1は、図3に示されるように、外周領域SAよりも内側における内側領域CAにおいて、往復走行経路LSに沿って前進しながら行われる刈取走行と、外周領域SAにおいて旋回経路に沿って走行する方向転換と、を繰り返す。これにより、コンバイン1は、外周領域SA及び内側領域CAの全体を網羅するように作物を刈り取る。本発明では、前進しながらの刈取走行と、方向転換と、を繰り返す走行を、「往復走行」と称する。
本実施形態においては、図2に示す周回走行は手動走行によって行われる。また、図3に示す内側の領域での刈取走行は、自動走行によって行われる。なお、本発明はこれに限定されず、図2に示す周回走行は自動走行によって行われても良い。
コンバイン1における左右一対の走行装置11,11のうち、左側の走行装置11が、右側の走行装置11よりも機体横内側に偏倚している場合が多い。このため、機体左側部よりも左側に未刈領域があり、かつ、機体右側部よりも右側に既刈領域がある状態で刈取走行が行われると、未刈領域の作物が走行装置11によって踏まれる虞が軽減される。本実施形態では、往復走行経路LSは、機体右側部が出来るだけ既刈領域と隣接するように設定される。つまり、往復走行では、未刈領域の外周形状のうち、条方向に沿う二辺の部分をコンバイン1が交互に刈取走行し、コンバイン1は図3の紙面反時計回りに走行する。
図3において、内側領域CAが部分作業領域CA1,CA2,CA3で区切られている。コンバイン1は、部分作業領域CA1,CA2,CA3の夫々の紙面上下両端部の往復走行経路LSから紙面上下内側の往復走行経路LSに向かって順番に刈取走行する。このため、コンバイン1が最初の往復走行経路LSから2番目の往復走行経路LSへ移動する際のUターンの距離が長くなると、コンバイン1の空走距離が長くなって作業効率が悪くなる。また、コンバイン1が部分作業領域CA1,CA2,CA3を刈取走行している途中で穀粒タンク14が満杯になって、コンバイン1が穀粒の排出のための往復走行経路LSを離脱すると作業効率が悪くなる。このため、部分作業領域CA1,CA2,CA3の夫々の広さや作業対象条数が、内側領域CAの外周形状のうちの条方向に沿う二辺間の距離や穀粒タンク14の容量等を勘案して決定される。
このように、コンバイン1が内側領域CAで刈取走行を行う際、コンバイン1は、圃場における外周部の既刈領域を自動走行するとともに、既刈領域よりも内側における未刈領域を自動走行しながら未刈領域の植立穀稈を刈り取る。
〔制御部に関する構成〕
本実施形態におけるコンバイン1の制御系は、多数のECUと呼ばれる電子制御ユニットと、各種動作機器、センサ群やスイッチ群、それらの間のデータ伝送を行う車載LANなどの配線網から構成されている。コンバイン1に制御ユニット20が備えられ、制御ユニット20は当該制御系の一部として構成されている。制御ユニット20に、自車位置算出部21、圃場データ取得部22、走行経路設定部23、自動走行制御部24、車速設定部25、記憶部26、等が備えられている。
衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星からのGPS信号を受信する。そして衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを自車位置算出部21へ送る。
自車位置算出部21は、衛星測位モジュール80によって出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。なお、コンバイン1の位置座標は、コンバイン1の機体の位置を示している。算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、自動走行制御部24と車速算出部21Bと走行軌跡算出部21Aとへ送られる。
なお、自車位置算出部21は、コンバイン1の位置座標を算出することによって、コンバイン1の位置座標を取得する。即ち、コンバイン1は、機体の位置を示す位置座標を取得する自車位置算出部21を備えている。自車位置算出部21は、走行軌跡算出部21Aと車速算出部21Bとを有する。
走行軌跡算出部21Aは、コンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、圃場の外周側における周回走行でのコンバイン1の走行軌跡を算出する。算出された走行軌跡は、走行経路設定部23へ送られる。
車速設定部25は、主変速レバー19の操作量に基づいて走行装置11が駆動する速度、即ち車速を設定する。車速算出部21Bは、コンバイン1の経時的な位置座標に基づいて単位時間当たりの位置座標の変化量を算出し、当該変化量からコンバイン1の車速を検出する。車速算出部21Bによって検出された車速は、自動走行制御部24へ送られる。
圃場データ取得部22は、管理コンピュータ5から通信部30を介して圃場形状データ及び作物植付情報等を取得する。
走行経路設定部23は、圃場データ取得部22から圃場形状や作物植付情報を受け取り、自動走行用の走行経路を設定する。走行経路設定部23は、圃場形状データに基づいて外周領域SAと内側領域CAとを判別するとともに、内側領域CAを往復走行しながら作物を刈り取る往復走行経路LSを設定する。
走行経路設定部23に、往復走行経路設定部23Aと、旋回経路設定部23Bと、が備えられている。往復走行経路設定部23Aは、内側領域CAを往復走行する自動走行用の複数の往復走行経路LSを設定し、これら複数の往復走行経路LSは互いに平行である。つまり、往復走行経路設定部23Aは、未刈領域に互いに平行な複数の往復走行経路LSを設定可能に構成されている。旋回経路設定部23Bは、コンバイン1が往復走行経路LSに沿って内側領域CAを刈り抜けた後の次の往復走行経路LSの端部へ繋げる旋回経路を既刈領域に設定可能に構成されている。
因みに、走行経路設定部23は、走行軌跡算出部21Aによって算出されたコンバイン1の走行軌跡データを受け取り可能に構成され、当該走行軌跡データに基づいて往復走行経路LS及び旋回経路を変更できる。
旋回経路には複数の旋回パターンが用いられ、旋回元の往復走行経路LS1から旋回先の往復走行経路LS2に移行する旋回経路の旋回パターンが、図5乃至図14に示されている。これら複数の旋回パターンが図4に示された制御ユニット20の記憶部26に記憶されている。つまり、旋回経路の設定に用いられる複数の旋回パターンが備えられている。これらの旋回パターンに関しては後述する。
また、通信端末4に、第一設定スイッチ4Aと、第二設定スイッチ4Bと、が備えられている。第一設定スイッチ4Aは、後述する第一旋回パターンの有効と無効とを切換えるON/OFFスイッチである。また、第二設定スイッチ4Bは、後述する第二旋回パターンの有効と無効とを切換えるON/OFFスイッチである。第一設定スイッチ4A及び第二設定スイッチ4Bは、例えばタッチパネルの画面に表示される設定ボタンである。
自動走行制御部24は、走行装置11を制御可能に構成されている。そして、自動走行制御部24は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標及び検出車速と、走行経路設定部23から受け取った往復走行経路LS及び旋回経路と、車速設定部25から受け取った設定車速と、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、自動走行制御部24は、図3に示されるように、往復走行経路LSに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。即ち、コンバイン1は、自動走行可能である。
〔旋回経路について〕
図5乃至図14に示される内側領域CAに往復走行経路LS1,LS2が設定され、往復走行経路LS1,LS2の夫々は互いに平行であって、かつ、互いに隣接する。図5乃至図14に示される内側領域CAは、例えば図3に示される部分作業領域CA1,CA2,CA3の何れか一つうち、コンバイン1の作業幅の二倍に亘って刈り残された未刈領域である。この未刈領域に、コンバイン1が最後に走行する往復走行経路LS2と、往復走行経路LS2に隣接する往復走行経路LS1と、が設定される。往復走行経路LS1,LS2の離間距離は、コンバイン1の最小旋回半径では旋回し切れないため、コンバイン1は旋回の途中で一旦後進走行する。つまり、図5乃至図14に示される旋回走行では、スイッチバックによる旋回走行が外周領域SA、即ち既刈領域で行われる。
図5には、従来技術で設定される旋回経路が示される。往復走行経路LS1の延長線と円弧上で接する接円CF1と、往復走行経路LS2の延長線と円弧上で接する接円CF2と、が旋回経路設定部23B(図4参照、以下同じ)によって設定される。接円CF1は、往復走行経路LS2の位置する側から往復走行経路LS1の延長線と接点PSで接する。また、接円CF2は、往復走行経路LS1の位置する側から往復走行経路LS2の延長線と接点PEで接する。
接点PEは、内側領域CAの外周形状のうちの往復走行経路LS1,LS2と交差する辺部S1から設定距離D1だけ離間した位置に設定される。設定距離D1に亘る領域は、コンバイン1が旋回走行を完了して旋回先の往復走行経路LS2に沿って走行を開始する際に、自動走行制御部24がコンバイン1の位置ずれや方位ずれを修正するためのマージン領域として確保される。
接円CF1,CF2の夫々の円心は辺部S1から設定距離D1だけ離間した位置に並んで設定される。接円CF1,CF2の夫々はコンバイン1の最小旋回半径と等しい半径を有する。接円CF1,CF2の夫々の半径は互いに同じ径に設定されている。コンバイン1の最小旋回半径は規定値であって、コンバイン1の仕様によって値が異なる。なお、接円CF1,CF2の夫々の半径は、最小旋回半径と同一の値でなくても良く、例えば作業者が通信端末4等(図4参照)を用いて無理のない旋回半径を予め設定する構成であっても良い。このことは、後述する図6乃至図14に関しても同様である。
接円CF1の円弧上に前進旋回経路LC1が設定され、接円CF2の円弧上に前進旋回経路LC2が設定される。前進旋回経路LC1と前進旋回経路LC2とを繋ぐ直線経路として後進中間経路LMが設定されている。前進旋回経路LC1と後進中間経路LMとは接点P1で接し、前進旋回経路LC2と後進中間経路LMとは接点P2で接する。後進中間経路LMは、内側領域CAの外周形状のうちの往復走行経路LS1,LS2と交差する辺部S1と平行な経路である。また、後進中間経路LMは接円CF1,CF2に対して接線方向に延びる経路である。
コンバイン1は、旋回元の往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後、そのまま前進して接点PSに到達すると、旋回走行を開始する。旋回走行はコンバイン1が接点PEに到達するまで継続する。コンバイン1が接点PEに到達するまでに、コンバイン1は、前進旋回経路LC1に沿って前進旋回走行を行い、次に後進中間経路LMに沿って後進走行を行い、最後に前進旋回経路LC2に沿って前進旋回走行を行う。
このように、コンバイン1は前進旋回経路LC1と後進中間経路LMと前進旋回経路LC2とを順番に経由してスイッチバック走行を行う。そして、接点PE付近において、コンバイン1の方位と、旋回先の往復走行経路LS2の方位と、の差が許容値に収まれば旋回走行が終了する。
因みに、旋回先の往復走行経路LS2との距離及び方位差に基づいて操舵制御されることによって、コンバイン1は旋回先の往復走行経路LS2に移行できる。このため、コンバイン1の旋回走行の際、前進旋回走行及び後進走行の走行軌跡は、前進旋回経路LC1,LC2や後進中間経路LM等と厳密に一致しなくてもよい。このことは、後述する図6乃至図14に関しても同様である。
図6に、本発明における旋回経路の構成の一例が示されている。図6に示された旋回パターンは、コンバイン1が往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後の最初の前進旋回走行において、コンバイン1に次の往復走行経路LS2の位置する側に旋回させるパターンである。この旋回パターンを、『第一旋回パターン』と称する。
往復走行経路LS1の延長線と円弧上で接する接円CF1(本発明の『第一接円』、以下同じ)と、往復走行経路LS2の延長線と円弧上で接する接円CB1(本発明の『第二接円』、以下同じ)と、が旋回経路設定部23Bによって設定される。図5で示された前進旋回経路LC1,LC2と後進中間経路LMとが、図6では破線LC0で示されており、図6に示される本発明の旋回経路と図5に示される従来技術の旋回経路とを比較し易くしている。後述の図7乃至図9においても、図5で示された前進旋回経路LC1,LC2と後進中間経路LMとが破線LC0で示されている。
接円CF1は、往復走行経路LS2の位置する側から往復走行経路LS1の延長線と接点PS(本発明の『第一接点』、以下同じ)で接する。また、接円CB1は、往復走行経路LS1の位置する側と反対側から往復走行経路LS2の延長線と接点PEで接する。この状態で、接円CF1と接円CB1との夫々の円弧同士が接点P1(本発明の『第二接点』、以下同じ)で接する。接点P1は、接点PEよりも内側領域CAの位置する側に位置するとともに、往復走行経路LS2の延長線に対して往復走行経路LS1の位置する側と反対側に位置する。つまり、接円CB1は、往復走行経路LS2の延長線と接円CF1との両方に対して円弧上で接する。
仮想点PS0は、図5で示された接点PSである。図6に示される接点PSは、仮想点PS0よりも内側領域CAの位置する側に位置し、図5に示される旋回経路よりもコンバイン1の旋回開始地点が内側領域CAの位置する側に設定されている。接点PSは、コンバイン1が旋回を開始する際に未刈領域の作物が走行装置11の旋回内側部分に踏まれないような位置に設定される。
図6に示された接点PEは、図5に示された接点PEよりも内側領域CAから離れて設定されている。つまり、図6に示された接点PEは、辺部S1から設定距離D1だけ離間した位置よりも更に内側領域CAから離れて設定されている。
接円CF1の円弧上に前進旋回経路LC1が設定され、接円CB1の円弧上に後進旋回経路LBが設定される。前進旋回経路LC1と後進旋回経路LBとは接点P1で接する。前進旋回経路LC1は接点PSと接点P1とに亘って設定され、後進旋回経路LBは接点P1と接点PEとに亘って設定される。
コンバイン1は、旋回元の往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後、そのまま前進して接点PSに到達すると、旋回走行を開始する。コンバイン1は、接点P1まで前進旋回経路LC1に沿って前進旋回走行を行って、途中で往復走行経路LS2の延長線を横切る。前進旋回経路LC1は左旋回の経路であって、コンバイン1、は往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後の前進旋回走行で次の往復走行経路LS2の位置する側に旋回する。
コンバイン1が接点P1に到達すると、コンバイン1の旋回方向が前進旋回経路LC1の旋回方向と逆方向に切り返され、コンバイン1は後進旋回経路LBに沿って後進旋回走行を行う。コンバイン1が接点PEに到達すると、コンバイン1は、次の往復走行経路LS2の延長線上に位置し、コンバイン1の前進方位が往復走行経路LS2の前進方位に沿っている。
図6に示された接点PEは、図5に示された接点PEよりも内側領域CAから離れて設定されているが、コンバイン1が後進旋回経路LBに沿って走行する距離は、図5においてコンバイン1が後進中間経路LMに沿って走行する距離と同等程度か、これ以下である。このため、図6に示された第一旋回パターンに基づく旋回経路の走行距離は、図5に示された旋回経路の走行距離と比較して、前進旋回経路LC1が内側領域CAの位置する側に近寄った分だけ短くなる。
図7に、本発明における旋回経路の構成の一例が示されている。図7に示された旋回パターンは、コンバイン1が往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後の最初の前進旋回走行において、コンバイン1に次の往復走行経路LS2の位置する側と反対側に旋回させるパターンである。この旋回パターンを、『第二旋回パターン』と称する。図6に基づいて上述した通り、往復走行経路LS1の延長線と円弧上で接する接円CF1と、往復走行経路LS2の延長線と円弧上で接する接円CB1と、が旋回経路設定部23Bによって設定される。
接円CF1は、往復走行経路LS2の位置する側と反対側から往復走行経路LS1の延長線と接点PSで接する。また、接円CB1は、往復走行経路LS1の位置する側から往復走行経路LS2の延長線と接点PEで接する。この状態で、接円CF1と接円CB1との夫々の円弧同士が接点P1で接する。接点P1は、接点PEよりも内側領域CAの位置する側に位置するとともに、往復走行経路LS1の延長線に対して往復走行経路LS2の位置する側と反対側に位置する。つまり、接円CB1は、往復走行経路LS2の延長線と接円CF1との両方に対して円弧上で接する。
仮想点PS0は、図5で示された接点PSである。図7に示される接点PSは、仮想点PS0よりも内側領域CAの位置する側に位置し、図5に示される旋回経路よりもコンバイン1の旋回開始地点が内側領域CAの位置する側に設定されている。接円CF1の円弧上に前進旋回経路LC1が設定され、前進旋回経路LC1は接点PSと接点P1とに亘って設定される。前進旋回経路LC1は右旋回の経路であって、コンバイン1、は往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後の前進旋回走行で次の往復走行経路LS2の位置する側と反対側に旋回する。接点PSは、コンバイン1が旋回を開始する際に未刈領域の作物が走行装置11の旋回外側部分に踏まれないような位置に設定される。
図7に示された接点PEは、図5に示された接点PEよりも内側領域CAから離れて設定されている。つまり、図7に示された接点PEは、辺部S1から設定距離D1だけ離間した位置よりも更に内側領域CAから離れて設定されている。
接円CB1の円弧上に後進旋回経路LBが設定される。前進旋回経路LC1と後進旋回経路LBとは接点P1で接する。後進旋回経路LBは接点P1と接点PEとに亘って設定される。図7に示された後進旋回経路LBの経路途中の領域のうち、接点P1よりも内側領域CAの位置する側に近寄る領域が存在する。このため、図7に示された実施形態では、コンバイン1が後進旋回経路LBに沿って後進旋回走行する際に、内側領域CAにおいて刈り残された作物が走行装置11の旋回外側部分に踏まれないように、接点PS,P1の設定位置は考慮される。
コンバイン1は、旋回元の往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後、そのまま前進して接点PSに到達すると、旋回走行を開始する。コンバイン1は、接点P1まで前進旋回経路LC1に沿って前進旋回走行を行う。
コンバイン1が接点P1に到達すると、コンバイン1の旋回方向が前進旋回経路LC1の旋回方向と逆方向に切り返され、コンバイン1は、後進旋回経路LBに沿って後進旋回走行を行う。このとき、コンバイン1は往復走行経路LS1の延長線を途中で横切る。コンバイン1が接点PEに到達すると、コンバイン1は、次の往復走行経路LS2の延長線上に位置し、コンバイン1の前進方位が往復走行経路LS2の前進方位に沿っている。
図7に示された第二旋回パターンに基づく旋回経路の走行距離は、図6に示された第一旋回パターンに基づく旋回経路の走行距離と略同等である。このため、図7に示された第二旋回パターンに基づく旋回経路の走行距離は、図5に示された旋回経路の走行距離と比較して、旋回経路が全体的に内側領域CAの位置する側に近寄った分だけ短くなる。
図6及び図7に示される実施形態では、コンバイン1が後進旋回経路LBに沿った後進旋回走行を終了すると、コンバイン1の位置が次の往復走行経路LS2の延長線と一致または略一致し、コンバイン1の前進方位が次の往復走行経路LS2の走行方位と一致または略一致する。このため、自動走行制御部24は、コンバイン1を接点PEからそのまま前進走行させるだけで、往復走行経路LS2に沿って自動走行制御を可能である。つまり、図6及び図7に示される実施形態では、図5に示された旋回経路と比較して、自動走行制御部24は、内側領域CAへ進入する前にコンバイン1の位置ずれや方位ずれを修正し易い。
第一設定スイッチ4A(図4参照、以下同じ)がOFF設定であれば、旋回経路設定部23Bは、図6に示される第一旋回パターンを選択しない。また、第二設定スイッチ4B(図4参照、以下同じ)がOFF設定であれば、旋回経路設定部23Bは、図7に示される第二旋回パターンを選択しない。第一設定スイッチ4A及び第二設定スイッチ4Bはオペレータによって操作され、オペレータは、自身の好みに合わせて第一旋回パターンと第二旋回パターンとの夫々の有効/無効を設定できる。
第一設定スイッチ4Aと第二設定スイッチ4Bとの夫々がOFF設定であれば、旋回経路設定部23Bは、図5に示される従来の旋回パターンを選択する。第一設定スイッチ4Aと第二設定スイッチ4Bとの少なくとも一方がONであれば、旋回経路設定部23Bは、圃場の状況に応じて複数の旋回パターンを切換える。圃場の状況とは、旋回走行を行う外周領域SAの広さや、コンバイン1の旋回走行時にコンバイン1が圃場の畦際と接触する虞や、コンバイン1の旋回走行時にコンバイン1が未刈領域の作物を踏み倒す虞等が例示される。
旋回経路設定部23Bが旋回パターンを選択する際の優先順位は、優先順位の高い順に、第一旋回パターン、第二旋回パターン、従来技術の旋回パターンの順であって、これら三つの旋回パターンが何れも選択可能な場合、原則として第一旋回パターンが旋回経路設定部23Bによって選択される。なお、第二旋回パターンの旋回距離が第一旋回パターンの旋回距離よりも短い場合、第二旋回パターンが旋回経路設定部23Bによって選択される場合もある。
図6及び図7に基づいて上述した第一旋回パターン及び第二旋回パターンは、図8及び図9に示されるものであっても良い。図8に第一旋回パターンが示され、図9に第二旋回パターンが示されている。図6で示された第一旋回パターンと、図7で示された第二旋回パターンと、ではコンバイン1の後進旋回走行終了時に、コンバイン1が次の往復走行経路LS2の延長線上に位置する。一方、図8で示された第一旋回パターンと、図9で示された第二旋回パターンと、ではコンバイン1の後進旋回走行終了後に、再度コンバイン1の前進旋回走行が行われる。
図8及び図9に示された実施形態では、図5に基づいて上述したように、往復走行経路LS1の延長線と円弧上で接する接円CF1と、往復走行経路LS2の延長線と円弧上で接する接円CF2と、が旋回経路設定部23Bによって設定される。更に、接円CF1,CF2の夫々に対して円弧同士で接する接円CB1が、旋回経路設定部23Bによって設定される。
図8における接円CF1は往復走行経路LS2の位置する側から往復走行経路LS1の延長線と接点PSで接し、図9における接円CF1は往復走行経路LS2の位置する側と反対側から往復走行経路LS1の延長線と接点PSで接する。また、図8における接円CF2は往復走行経路LS1の位置する側から往復走行経路LS2の延長線と接点PEで接し、図9における接円CF2は往復走行経路LS1の位置する側と反対側から往復走行経路LS2の延長線と接点PEで接する。
この状態で、接円CF1と接円CB1との夫々の円弧同士が接点P1で接し、接円CF2と接円CB1との夫々の円弧同士が接点P2で接する。図8において、往復走行経路LS2の延長線を挟んで、往復走行経路LS1の位置する側と反対側に接点P1が位置するとともに往復走行経路LS1の位置する側に接点P2が位置する。図9において、往復走行経路LS1の延長線を挟んで往復走行経路LS2の位置する側と反対側に接点P1が位置し、往復走行経路LS2の延長線を挟んで往復走行経路LS1の位置する側と反対側に接点P2が位置する。
図8及び図9において、仮想点PS0は、図5で示された接点PSである。接点PSは、仮想点PS0よりも内側領域CAの位置する側に位置し、図5に示される旋回経路よりもコンバイン1の旋回開始地点が内側領域CAの位置する側に設定されている。接点PSは、コンバイン1が旋回を開始する際に未刈領域の作物が走行装置11の旋回内側部分に踏まれないような位置に設定される。そして、接円CF1の円弧上に接点PSと接点P1とに亘る前進旋回経路LC1が設定される。
図8及び図9に示された接点PEは、図5に示された接点PEと同じ位置に設定されている。つまり、図8及び図9に示された接点PEは、辺部S1から設定距離D1だけ離間した位置に設定されている。そして、接円CF2の円弧上に接点PEと接点P2とに亘る前進旋回経路LC2が設定される。更に、接円CB1の円弧上に接点P1と接点P2とに亘る後進旋回経路LBが設定される。
図8において、コンバイン1は、旋回元の往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後、そのまま前進して接点PSに到達すると、旋回走行を開始する。コンバイン1は、接点P1まで前進旋回経路LC1に沿って左旋回の前進旋回走行を行って、途中で往復走行経路LS2の延長線を横切る。
コンバイン1が接点P1に到達すると、コンバイン1の旋回方向が前進旋回経路LC1の旋回方向と逆方向に切り返され、コンバイン1は、後進旋回経路LBに沿って後進旋回走行を行って、途中で往復走行経路LS2の延長線を横切る。コンバイン1が接点P2に到達すると、コンバイン1の旋回方向が後進旋回経路LBの旋回方向と逆方向、即ち前進旋回経路LC1の旋回方向と同じ旋回方向に切り返され、コンバイン1は、接点PEまで前進旋回経路LC2に沿って左旋回の前進旋回走行を行う。
図9において、コンバイン1は、旋回元の往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後、そのまま前進して接点PSに到達すると、旋回走行を開始する。コンバイン1は、接点P1まで前進旋回経路LC1に沿って右旋回の前進旋回走行を行う。
コンバイン1が接点P1に到達すると、コンバイン1の旋回方向が前進旋回経路LC1の旋回方向と逆方向に切り返され、コンバイン1は、後進旋回経路LBに沿って後進旋回走行を行って、途中で往復走行経路LS1,LS2の延長線を横切る。コンバイン1が接点P2に到達すると、コンバイン1の旋回方向が後進旋回経路LBの旋回方向と逆方向、即ち前進旋回経路LC1の旋回方向と同じ旋回方向に切り返され、コンバイン1は、接点PEまで前進旋回経路LC2に沿って右旋回の前進旋回走行を行う。
図9に示された後進旋回経路LBの経路途中の領域のうち、接点P1よりも内側領域CAの位置する側に近寄る領域が存在する。このため、図9に示された実施形態では、コンバイン1が後進旋回経路LBに沿って後進旋回走行する際に、内側領域CAにおいて刈り残された作物が走行装置11の旋回外側部分に踏まれないように、接点PS,P1の設定位置は考慮される。
図8及び図9に示された実施形態では、コンバイン1が後進旋回経路LBに沿った後進旋回走行を終了すると、コンバイン1の位置が次の往復走行経路LS2の延長線と概ね一致し、コンバイン1の前進方位が次の往復走行経路LS2の走行方位と概ね一致する。また、図8及び図9に示された接点P2の位置は、図6及び図7に示された接点PEよりも内側領域CAの位置する側に近づけられている。このことから、図8及び図9に示された実施形態では、図6及び図7に示された実施形態と比較して、コンパクトな領域でコンバイン1の旋回走行が可能となるとともに旋回走行の走行距離が更に短くなる。
また、図8及び図9に示された実施形態では、接点P2におけるコンバイン1の前進方位の方位ずれの度合いも、図5に示される接点P2におけるコンバイン1の前進方位の方位ずれよりも小さい。このため、図5に示された従来技術と比較して、前進旋回経路LC2におけるコンバイン1の方向転換が容易となる。
このように、図6乃至図9に示された旋回経路に、コンバイン1が前進旋回走行を行う経路と、コンバイン1が後進旋回走行を行う経路と、が含まれる。そして旋回経路設定部23Bは、コンバイン1が左右一方へ前進旋回走行を行った後に左右他方へ後進旋回走行を行うように、外周領域SAに旋回経路を設定可能に構成されている。そして、コンバイン1が後進旋回走行を終了すると、コンバイン1が次の往復走行経路LS2の延長線上に位置するように、旋回経路設定部23Bは旋回経路を設定する。また、コンバイン1が後進旋回走行を終了すると、コンバイン1の前進方位が次の往復走行経路LS2の走行方位に沿うように、旋回経路設定部23Bは旋回経路を設定する。
なお、図6乃至図9に示された接円CF1,CB1の夫々の半径は互いに同じ径に設定されているが、接円CF1,CB1の夫々の半径は格別の径に設定されても良い。図8及び図9に示された接円CF2も、接円CF1,CB1の夫々の半径とは格別の径に設定されても良い。
図10乃至図14では、内側領域CAの外周形状のうちの往復走行経路LS1,LS2と交差する辺部S1が、往復走行経路LS1,LS2に対して直交せずに斜め方向に交差する。
図10乃至図12に示された辺部S1のうち、往復走行経路LS2の位置する側の方が往復走行経路LS1の位置する側よりも紙面右側に位置する。このことから、コンバイン1が往復走行経路LS1を刈り抜ける際に、コンバイン1の進行方向左側部における刈り残しを避けるため、線S11で示された境界までは、コンバイン1が往復走行経路LS1に沿って真っすぐ刈取走行する必要がある。また、コンバイン1が往復走行経路LS2に沿って刈取走行を開始する際に、コンバイン1の進行方向右側部における作物の刈り取りが、コンバイン1の進行方向左側部における作物の刈り取りよりも早く開始される。このため、線S12で示された境界までに、コンバイン1が旋回走行を完了して往復走行経路LS2に沿って真っすぐ走行しておく必要がある。
図10には、従来技術で設定される旋回パターンが示される。往復走行経路LS1の延長線と円弧上で接する接円CF1と、往復走行経路LS2の延長線と円弧上で接する接円CF2と、が旋回経路設定部23Bによって設定される。接円CF1は、往復走行経路LS2の位置する側から往復走行経路LS1の延長線と接点PSで接する。また、接円CF2は、往復走行経路LS1の位置する側から往復走行経路LS2の延長線と接点PEで接する。
接円CF1の円弧上に前進旋回経路LC1が設定され、接円CF2の円弧上に前進旋回経路LC2が設定される。前進旋回経路LC1と前進旋回経路LC2とを繋ぐ直線経路として後進中間経路LMが設定されている。前進旋回経路LC1と後進中間経路LMとは接点P1で接し、前進旋回経路LC2と後進中間経路LMとは接点P2で接する。後進中間経路LMは、内側領域CAの外周形状のうちの辺部S1と平行な経路である。また、後進中間経路LMは接円CF1,CF2に対して接線方向に延びる経路である。
コンバイン1は、旋回元の往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後、そのまま前進して接点PSに到達すると、旋回走行を開始する。旋回走行はコンバイン1が接点PEに到達するまで継続する。コンバイン1は、前進旋回経路LC1に沿って前進旋回走行を行い、次に後進中間経路LMに沿って後進走行を行い、最後に前進旋回経路LC2に沿って前進旋回走行を行い、そして接点PEに到達する。
このように、コンバイン1は前進旋回経路LC1と後進中間経路LMと前進旋回経路LC2とを順番に経由してスイッチバック走行を行う。そして、接点PE付近において、コンバイン1の方位と、旋回先の往復走行経路LS2の方位と、の差が許容値に収まれば旋回走行が終了する。
図10において、接点PEは、線S12で示された境界よりも内側領域CAの位置する側に設定できないため、接点PEは、内側領域CAの位置する側に殆ど近づけられない。図10に示される旋回経路のうち、コンバイン1が往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後に接点PSに到達するまでの空走距離が長くなっている。この空走距離を縮めるため、図11及び図12に、本発明における旋回経路の構成の一例が夫々示されている。
図11に第一旋回パターンが示され、図12に第二旋回パターンが示されている。図11及び図12に、図10で示された前進旋回経路LC1,LC2と後進中間経路LMとが破線LC0で示されており、図11及び図12に示される本発明の旋回経路と図10に示される従来技術の旋回経路とを比較し易くしている。また、図11及び図12に示された仮想点PS0は、図10で示された接点PSである。
図11に示された第一旋回パターンに基づく旋回経路は図8に基づいて上述した手法によって設定され、図12に示された第二旋回パターンに基づく旋回経路は図9に基づいて上述した手法によって設定されている。図11と図12との何れにおいても、接点PSが仮想点PS0よりも内側領域CAの位置する側に設定され、コンバイン1が往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後に接点PSに到達するまでの空走距離が、図10の場合よりも短くなっている。
図11に示される内側領域CAにおいては、往復走行経路LS1の位置する側よりも往復走行経路LS2の位置する側の方が外周領域SAへ出ている。このため、図11に示される第一旋回パターンでは、コンバイン1が内側領域CA(未刈領域)の作物を踏み倒さない程度に、接点PS及び前進旋回経路LC1は内側領域CAから離れた位置に設定される。図11に示される第一旋回パターンでは、図10に示される従来技術の旋回パターンと比較して、旋回経路の距離が短くなっている。
コンバイン1が往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後に位置する外周領域SAのうち、コンバイン1の右旋回側の領域が、コンバイン1の左旋回側の領域よりも広い。このため、図12における接点PSは、図11における接点PSよりも更に内側領域CAの位置する側に設定されている。また、図12に示された第二旋回パターンの走行距離は、図10及び図11に示された旋回パターンの走行距離よりも短くなっている。
図10乃至図12に示された複数の旋回パターンのうち、図12に示された第二旋回パターンに基づく旋回経路の距離が一番短い。このため、第二設定スイッチ4BがON設定であれば、旋回経路設定部23Bは、図10乃至図12に示された旋回パターンのうち、図12に示される第二旋回パターンを選択する。
第二設定スイッチ4BがOFF設定であって、かつ、第一設定スイッチ4AがON設定であれば、旋回経路設定部23Bは、図10乃至図12に示された旋回パターンのうち、図11に示される第一旋回パターンを選択する。また、第一旋回パターンに基づくコンバイン1の旋回走行であると、内側領域CA(未刈領域)の作物が踏み倒されると判定されると、たとえ第一設定スイッチ4AがON設定であっても、旋回経路設定部23Bは、図10に示される従来の旋回パターンを選択する場合もある。
なお、図12に示される第二旋回パターンは、図7に示されるように、前進旋回経路LC1と後進旋回経路LBとによって構成され、前進旋回経路LC2を有さない構成であっても良い。この場合、コンバイン1の後進旋回走行終了時に、コンバイン1が次の往復走行経路LS2の延長線上に位置し、コンバイン1の前進方位が次の往復走行経路LS2の走行方位に沿う。
図13及び図14に示された辺部S1のうち、往復走行経路LS1の位置する側の方が往復走行経路LS2の位置する側よりも紙面右側に位置する。このことから、コンバイン1が往復走行経路LS1を刈り抜ける際に、コンバイン1の進行方向右側部における刈り残しを避けるため、線S13で示された境界までは、コンバイン1が往復走行経路LS1に沿って真っすぐ刈取走行する必要がある。また、コンバイン1が往復走行経路LS2に沿って刈取走行を行う際に、コンバイン1の進行方向左側部における作物の刈り取りが、コンバイン1の進行方向右側部における作物の刈り取りよりも早く開始される。このため、線S14で示された境界までに、コンバイン1が旋回走行を完了して往復走行経路LS2に沿って真っすぐ走行しておく必要がある。
図13には、従来技術で設定される旋回経路が示される。旋回経路の設定手法に関しては、図10に基づいて上述した通りであるため省略する。
接点PSは、線S13で示された境界よりも内側領域CAの位置する側に設定できないため、図13及び図14に示された接点PSは、図示された位置よりも内側領域CAの位置する側に殆ど近づけられない。このため、図13に示される旋回経路のうち、コンバイン1が旋回走行を完了して内側領域CAへ進入するまでの空走距離が長くなっている。この空走距離を縮めるため、図14に、本発明における旋回経路の構成の一例が示されている。
図14に第二旋回パターンが示される。また、図14に、図13で示された前進旋回経路LC1,LC2と後進中間経路LMとが破線LC0で示されており、図14に示される本発明の旋回経路と図13に示される従来技術の旋回経路とを比較し易くしている。また、図14に示された仮想点PE0は、図13で示された接点PEである。
図14に示された第二旋回パターンに基づく旋回経路は図9に基づいて上述した手法によって設定されている。図14では、接点PEが仮想点PE0よりも内側領域CAの位置する側に設定され、コンバイン1が旋回走行を完了して内側領域CAへ進入するまでの空走距離が短くなっている。このように、図14に示された第二旋回パターンに基づく旋回経路の走行距離は、図13に示された従来技術の走行距離よりも短くなっている。このため、第二設定スイッチ4BがON設定であれば、旋回経路設定部23Bは、図13及び図14に示された旋回パターンのうち、図14に示される第二旋回パターンを選択する。
このように、図5乃至図14に例示されるようなスイッチバック式の旋回走行が行われる際に、旋回経路設定部23Bが、内側領域CAにおける未刈領域の形状や既刈領域のスペースに応じて旋回パターンを選択する。即ち、旋回経路設定部23Bは、圃場の状況に応じて複数の旋回パターンを切換えるように構成されている。そして、コンバイン1が往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後の最初の前進旋回走行で、コンバイン1に次の往復走行経路LS2の位置する側に旋回させるパターンが、複数の旋回パターンに含まれている。また、コンバイン1が往復走行経路LS1に沿って内側領域CAを刈り抜けた後の最初の前進旋回走行で、コンバイン1に次の往復走行経路LS2の位置する側と反対側に旋回させるパターンが、複数の旋回パターンに含まれている。
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
(1)上述した実施形態に示された旋回経路設定部23Bは、図5、図10及び図13に示された従来技術を排除するものではない。旋回経路設定部23Bは、図5、図10及び図13に示された従来技術の旋回経路を生成しても良い。例えば、旋回経路は、コンバイン1に前進旋回走行を行わせる経路と、コンバイン1に後進旋回走行を行わせる経路と、を含み、更にコンバイン1に直進の後進走行を行わせる経路を含むものであっても良い。また、図5、図10及び図13に示された従来技術の旋回経路を設定するための旋回パターンが制御ユニット20の記憶部26に記憶され、旋回経路設定部23Bは、圃場の状況に応じて複数の旋回パターンを切換えるように構成されても良い。
(2)図5乃至図14に示された実施形態では、往復走行経路LS1,LS2は互いに隣り合っているが、この実施形態に限定されない。例えば往復走行経路LS1,LS2の間に、別の往復走行経路LSが存在する構成であっても良く、旋回経路設定部23Bは、当該別の往復走行経路LSを飛ばして往復走行経路LS1,LS2に亘る旋回経路を設定する構成であっても良い。要するに、旋回経路設定部23Bは、コンバイン1が往復走行経路LS1を刈り抜けた後の次の往復走行経路LS2の端部へ繋げる旋回経路を既刈領域に設定可能な構成であれば良い。
(3)上述した実施形態では、走行経路設定部23は制御ユニット20に備えられているが、この実施形態に限定されない。例えば、走行経路設定部23が、通信端末4や管理コンピュータ5に備えられる構成であっても良い。
(4)上述した実施形態では、複数の旋回パターンが図4に示された制御ユニット20の記憶部26に記憶されているが、この実施形態に限定されない。例えば、複数の旋回パターンは通信端末4や管理コンピュータ5から送られてくる構成であっても良い。
(5)図6乃至図9、図11及び図12、図14に基づいて上述した実施形態において、前進旋回経路LC1と後進旋回経路LBとの間に前進と後進との少なくとも一方の直進経路が設定される構成であっても良い。また、図8及び図9、図11及び図12、図14に基づいて上述した実施形態において、前進旋回経路LC2と後進旋回経路LBとの間に前進と後進との少なくとも一方の直進経路が設定される構成であっても良い。
(6)上述した自動走行制御システムの技術的特徴は、自動走行制御方法にも適用可能である。この場合における自動走行制御方法に、互いに平行な複数の往復走行経路LSを未刈領域に設定可能な往復走行経路設定ステップと、コンバイン1が往復走行経路LSを刈り抜けた後の次の往復走行経路LSの端部へ繋げる旋回経路を既刈領域に設定可能な旋回経路設定ステップと、が含まれるものであって良い。そして、旋回経路設定ステップは、コンバイン1が左右一方へ前進旋回走行を行った後に左右他方へ後進旋回走行を行うように、旋回経路を設定可能に構成されて良い。
(7)上述した自動走行制御システムの技術的特徴は、自動走行制御プログラムにも適用可能である。この場合における自動走行制御プログラムは、互いに平行な複数の往復走行経路LSを未刈領域に設定可能な往復走行経路設定機能と、コンバイン1が往復走行経路LSを刈り抜けた後の次の往復走行経路LSの端部へ繋げる旋回経路を既刈領域に設定可能な旋回経路設定機能と、をコンピュータに実行させるものであって良い。そして、旋回経路設定機能は、コンバイン1が左右一方へ前進旋回走行を行った後に左右他方へ後進旋回走行を行うように、旋回経路を設定可能に構成されて良い。また、この技術的特徴を有する自動走行制御プログラムは、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体に記憶されるものであって良い。
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。