JP7274034B1 - ジオポリマー組成物の製造方法、ジオポリマー硬化体の製造方法、及びジオポリマー組成物調製用キット - Google Patents

ジオポリマー組成物の製造方法、ジオポリマー硬化体の製造方法、及びジオポリマー組成物調製用キット Download PDF

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Abstract

【課題】良好なフレッシュ性状と優れた強度を有しつつ、CO2排出量を削減することが可能なジオポリマー組成物を提供すること。【解決手段】無機フィラー、ナトリウム及びカリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むケイ酸アルカリ水溶液、遅延剤、減水剤、並びに消泡剤を含み、無機フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含み、無機フィラー全体に対する炭酸カルシウムの配合比率は0体積%を超え70体積%未満である、ジオポリマー組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本開示は、ジオポリマー組成物及びその製造方法、ジオポリマー硬化体及びその製造方法、ジオポリマー組成物調製用の固体組成物、並びにジオポリマー組成物調製用キットに関する。
石炭灰等の非晶質材料をアルカリ溶液で処理することによってコンクリートのように硬化するジオポリマー組成物が知られている。ジオポリマー組成物は、通常のセメントと比べて、製造時に発生するCOを低減することができる。ジオポリマー組成物に用いられるシリカ源としては、水ガラス等の液体、及びシリカフューム等のフィラーが挙げられる。例えば、特許文献1では、水酸化ナトリウムと石炭灰及び高炉スラグの粉体とを攪拌した後、シリカフュームを徐々に溶かす処理を行う方法(以下、「その場溶解法」と称す。)によって、ジオポリマー組成物の凝結時間を稼ぎ、可使時間を確保する技術が提案されている。
非特許文献1では、アルカリ溶液として水ガラス及び苛性ソーダ、無機フィラーとしてフライアッシュ及び高炉スラグ微粉末を使用する方法(アルカリ溶液に水ガラスを含む方法を、以下、「一般法」と称す。)によって調製されたジオポリマーコンクリートのCO排出量を128kg-CO/mと試算している。これによって、同じ強度レベルのセメントコンクリートと比較して約63~68%のCO排出量削減が可能であるとしている。その理由は、CO排出量の多いポルトランドセメントを使用していないことによるものである。なお、ジオポリマー組成物に用いられる各原材料のCO排出量の原単位は、非特許文献2,3にも記載されている。
特開2014-237561号公報
原田耕司、一宮一夫、津郷俊二、池田攻、「ジオポリマーの諸特性に関する一考察」、コンクリート工学年次論文集、Vol.34、No.1、pp.1894-1899、2012 土木学会、コンクリート技術シリーズ62、「コンクリートの環境負荷(その2)」、2004 日本コンクリート工学会、「建設分野へのジオポリマー技術の適用に関する研究委員会報告書」、p.62、2017
しかしながら、ジオポリマー組成物のCO排出量はセメント組成物に比べると少ないものの、カーボンニュートラルの域には達していない。一方、ジオポリマー組成物が今後広く普及するためには、フレッシュ性状と強度の両特性を高い水準で両立することが必要である。そこで、本開示は、良好なフレッシュ性状と優れた強度を有しつつ、CO排出量を削減することが可能なジオポリマー組成物及びその製造方法を提供する。また、このようなジオポリマー組成物を、簡便に調製することが可能なジオポリマー組成物調製用の固体組成物及びジオポリマー組成物調製用キットを提供する。また、十分に高い強度を有しつつCO排出量を削減することが可能なジオポリマー硬化体及びその製造方法を提供する。
本開示は、一つの側面において、無機フィラー、ナトリウム及びカリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むケイ酸アルカリ水溶液、遅延剤、減水剤、並びに消泡剤を含み、無機フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含み、無機フィラー全体に対する炭酸カルシウムの配合比率は0体積%を超え70体積%未満である、ジオポリマー組成物を提供する。
上記ジオポリマー組成物は、遅延剤及び減水剤を含みつつ、無機フィラー全体に対する炭酸カルシウムの配合比率が所定の範囲にある。このようなジオポリマー組成物は、良好なフレッシュ性状と優れた強度を有しつつ、CO排出量を削減することができる。
上記遅延剤は、グルコン酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム、スクロース、及びグルコースからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。これによって、ジオポリマー組成物の可使時間(打込み、締固め、成型などの施工が可能な時間)を延長することができる。
上記減水剤はリグニン誘導体を含むことが好ましい。これによって、ジオポリマー組成物の粘性が低減され、流動性を一層高くすることができる。ケイ酸アルカリ水溶液には少なくともシリカフュームが溶解していることが好ましい。このようなケイ酸アルカリ水溶液は円滑に調製することができる。
本開示は、一つの側面において、上述のいずれかのジオポリマー組成物を硬化して得られるジオポリマー硬化体を提供する。このようなジオポリマー硬化体は、十分に高い強度を有しつつCO排出量を削減することができる。
本開示は、一つの側面において、無機フィラー、シリカフューム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むアルカリ源、水、遅延剤、減水剤、並びに消泡剤を含む原料を混合してジオポリマー組成物を得る混合工程を有し、無機フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含み、無機フィラー全体に対する炭酸カルシウムの配合比率は0体積%を超え70体積%未満である、ジオポリマー組成物の製造方法を提供する。
上記製造方法で得られるジオポリマー組成物は、遅延剤及び減水剤を用いつつ、無機フィラー全体に対する炭酸カルシウムの配合比率が所定の範囲にある。このため、良好なフレッシュ性状と優れた強度を有しつつ、CO排出量を削減することができる。
上記製造方法は、無機フィラー、シリカフューム、及び遅延剤を含む固体組成物を調製する第1調製工程と、アルカリ源、水、減水剤、及び消泡剤を含む液体組成物を調製する第2調製工程と、固体組成物と液体組成物とを配合してジオポリマー組成物を得る上記混合工程と、を有することが好ましい。このような製造方法であれば、例えば固体組成物と液体組成物とを別々に調製しておき、ジオポリマー組成物を使用する直前に固体組成物と液体組成物を配合して混合し、良好なフレッシュ性状を有しつつ強度にも優れるジオポリマー組成物を簡便に調製することができる。したがって、上記製造方法は、現場で実施し易く、作業性及び施工性に優れる。
本開示は、一つの側面において、上述のジオポリマー組成物又は上述のいずれかの製造方法で得られたジオポリマー組成物を硬化する硬化工程を有する、ジオポリマー硬化体の製造方法を提供する。この製造方法で得られるジオポリマー硬化体は、十分に高い強度を有しつつCO排出量を削減することができる。
本開示は、一つの側面において、固体組成物を含む第1包装体と液体組成物を含む第2包装体とを有する、ジオポリマー組成物調製用キットであって、固体組成物は、無機フィラー、シリカフューム、及び遅延剤を含み、液体組成物は、アルカリ源、水、減水剤、及び消泡剤を含み、アルカリ源は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含み、無機フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含み、無機フィラー全体に対する炭酸カルシウムの配合比率は0体積%を超え70体積%未満である、ジオポリマー組成物調製用キットを提供する。
上記ジオポリマー組成物調製用キットは、固体組成物と液体組成物が別個の包装体に含まれている。このため、ジオポリマー組成物を使用する直前に固体組成物と液体組成物を混合して、ジオポリマー組成物を簡便に調製することができる。このようなジオポリマー組成物調製用キットは、取り扱いやすく、現場での作業性及び施工性に優れる。また、このようにして調整されるジオポリマー組成物は、良好なフレッシュ性状と優れた強度を有しつつ、CO排出量を削減することができる。
本開示は、一つの側面において、無機フィラー、シリカフューム、及び遅延剤を含むジオポリマー組成物調製用の固体組成物であって、無機フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含み、無機フィラー全体に対する炭酸カルシウムの配合比率は0体積%を超え70体積%未満である、ジオポリマー組成物調製用の固体組成物を提供する。このような固体組成物を用いれば、ジオポリマー組成物を簡便に調製することができる。したがって、現場での作業性を良好にすることができる。また、このようにして調整されるジオポリマー組成物は、良好なフレッシュ性状と優れた強度を有しつつ、CO排出量を削減することができる。
本開示によれば、良好なフレッシュ性状と優れた強度を有しつつ、CO排出量を削減することが可能なジオポリマー組成物及びその製造方法を提供することができる。また、このようなジオポリマー組成物を、簡便に調製することが可能なジオポリマー組成物調製用の固体組成物及びジオポリマー組成物調製用キットを提供することができる。また、十分に高い強度を有しつつCO排出量を削減することが可能なジオポリマー硬化体及びその製造方法を提供することができる。
以下、場合により図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、数値範囲で用いている「~」の記号は、上限及び下限の数値を含む数値範囲を示す。例えば、「X~Y」は「X以下且つY以下」の数値範囲を示す。上限及び/又は下限を実施例に記載の数値で置換した数値範囲も本開示の開示内容に含まれる。
一実施形態に係るジオポリマー組成物は、無機フィラー(F)、ナトリウム及びカリウムから群より選ばれる少なくとも一つを含むケイ酸アルカリ水溶液、遅延剤(Ad1)、減水剤(Ad2)、及び消泡剤(Ad3)を含む。無機フィラー(F)としては、フライアッシュ(FA)、高炉スラグ微粉末(BS)、及び炭酸カルシウム(CC)が挙げられる。無機フィラー(F)のその他の成分としては、メタカオリン、下水汚泥、及び火山灰等、Si、Al、Caを含有する非晶質のフィラーが挙げられる。
無機フィラー(F)は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含む。無機フィラー(F)全体に対するフライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムの配合比率の合計は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。これによって、良好なフレッシュ性状と優れた強度を十分に高い水準で両立することができる。炭酸カルシウムは、COがCaO等と反応して得られるものであることから、炭酸カルシウムを用いたジオポリマー組成物は、CO排出量を削減することができる。炭酸カルシウムは、セメント工場からの排ガスから分離回収されるCOと、廃コンクリート又は石炭灰等から抽出されるCaとを水熱合成等の反応によって得られたものであってもよい。これによって、COの排出量を一層削減することができる。
ジオポリマー組成物を調製する際の無機フィラー(F)全体に対する炭酸カルシウム(CC)の配合比率は、0体積%を超え70体積%未満である。この配合比率は、ジオポリマー組成物及びジオポリマー硬化体が良好なフレッシュ性状を有しつつ強度を十分に高くする観点から、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上である。一方、炭酸カルシウムの配合比率が高過ぎると強度が低下しフレッシュ性状も悪化する傾向にあることから、この配合比率は、好ましくは65体積%以下であり、より好ましくは60体積%以下であり、さらに好ましくは55体積%以下である。
フライアッシュ(FA)は、JIS A6201:2015に規定されるI種~IV種のうち、II種が好ましい。フライアッシュII種は、III種やIV種に比べて反応性が高いことから強度発現性に優れる。フライアッシュI種は、II種より比表面積が大きいことから反応性は高いものの、粘性が増加することに加えて、価格が高く流通量が少ないため入手し難い傾向にある。高炉スラグ微粉末(BS)のブレーン比表面積は、好ましくは3500~6000cm/gであり、より好ましくは4000~5000cm/gである。高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積が高いほど反応性が高く強度発現性に優れるものの、粘性が高く可使時間が短くなる傾向にある。無機フィラー(F)全体に対する高炉スラグ微粉末(BS)の配合比率は、例えば0体積%を超え75体積%以下であってよく、0体積%を超え50体積%以下であってよく、10体積%を超え50体積%未満であってもよい。
経済産業省のカーボンリサイクル技術ロードマップによると、回収したCOの直接利用(溶接・ドライアイス等)以外の再利用先として、化学品、燃料、鉱物が挙げられている。鉱物利用においては、鉄鋼スラグ、廃コンクリート、石炭灰等の産業副産物、廃鉱物、海水(かん水)等から有効成分(CaやMg)を分離し、炭酸塩化して利用することが想定されている。COの回収元となる産業としては、火力発電、セメント製造、鉄鋼製造、石油精製、化学工業等が想定される。すなわち、このようにCOを吸収させて得られた炭酸塩(炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム)はCO排出量がマイナスとなるため、これをジオポリマー組成物の無機フィラーとして使用することで更なるCO排出量の削減が可能となる。なお、コンクリートの製造時に液化COを噴射して練混ぜ水に溶け込ませ、セメントから溶出したCaイオンと結合させて瞬時に微細な炭酸カルシウムを生成させる技術があるが、ジオポリマー組成物の練混ぜ時に同様の方法で炭酸カルシウムを生成させてもよい。
無機フィラー(F)の配合量は、ジオポリマー組成物1mに対して、例えば450~620kg/mであってよく、465~605kg/mであってよく、480~590kg/mであってもよい。炭酸カルシウム(CC)の配合量は、ジオポリマー組成物1mに対して、例えば0を超え350kg/m以下であってよく、10~320kg/mであってよく、20~290kg/mであってよく、50~270kg/mあってよく、60~220kg/mであってもよい。
ケイ酸アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム(NaOH)及び水酸化カリウム(KOH)からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むアルカリ源の水溶液に、シリカフューム(SF)等を溶解させて得ることができる。ケイ酸アルカリ水溶液には、シリカフューム(SF)以外の原材料が溶解されていてもよい。
シリカフューム(SF)は、セメント組成物に用いられる一般的なものを用いることができる。シリカフューム(SF)のBET比表面積は10m/g以上であってよく、14m/g以上であってよく、16m/g以上であってもよい。BET比表面積の大きいシリカフュームは高い反応性を有するため、アルカリ水溶液中に早期に溶解し円滑にSiOを供給することができる。シリカフューム(SF)のBET比表面積の上限は、入手の容易性の観点から20m/g以下であってもよい。シリカフューム(SF)の配合量は、ジオポリマー組成物1mに対して、例えば10~100kg/mであってよく、20~80kg/mであってよく、30~70kg/mであってもよい。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの合計の配合量(固形分換算)は、ジオポリマー組成物1mに対して、例えば40~200kg/mであってよく、60~150kg/mであってよく、70~130kg/mであってもよい。このような量を含むアルカリ水溶液を用いてもよい。
ジオポリマー組成物における単位水量は、好ましくは170~230kg/mであり、より好ましくは180~220kg/mであり、さらに好ましくは190~215kg/mである。単位水量をこのような範囲にすることによって、優れた流動性と高い強度を十分に高い水準で両立することができる。ジオポリマー組成物中の水は、ケイ酸アルカリ水溶液として含まれてよい。
無機フィラー(F)全体に対して、配合されるシリカフューム(SF)、アルカリ源、及び水の合計の体積比(L/F)は、好ましくは0.9~1.3であり、より好ましくは1.0~1.3である。このような範囲であることによって、優れた流動性と高い強度を十分に高い水準で両立することができる。
ジオポリマー組成物は、細骨材(S)を含んでよい。細骨材(S)としては、川砂、山砂、陸砂及び海砂等の天然骨材、砕砂、珪砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材及び電気炉酸化スラグ細骨材等の人工細骨材、並びに再生細骨材等が挙げられる。細骨材として、これらは単独で又は複数組み合わせて用いることができる。細骨材(S)の表乾密度は、いずれも、2.2~2.9g/cmであってよく、2.4~2.8g/cmであってよく、2.5~2.7g/cmであってもよい。
遅延剤(Ad1)としては、グルコン酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム、スクロース、及びグルコースからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むものが挙げられる。これらのうち、グルコン酸ナトリウムを用いることが好ましい。これによって、可使時間をより延長することができる。
無機フィラー(F)全体に対する遅延剤(Ad1)の配合比率(Ad1/F×100)は、0.5~3.5質量%である。このようなジオポリマー組成物は、良好なフレッシュ性状を有しつつ強度にも優れる。フレッシュ性状と強度を一層高い水準で両立させる観点から、配合比率(Ad1/F×100)は、好ましくは0.5~3.0質量%であり、より好ましくは0.7~2.5質量%であり、さらに好ましくは0.8~2.0質量%である。
減水剤(Ad2)は、リグニン誘導体、ヒドロキシ系複合体、ナフタリンスルホン酸系化合物、アミノスルホン酸系化合物、及び、ポリカルボン酸系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つであってよい。本明細書におけるリグニン誘導体とは、リグニンから誘導される化合物であり、例えば、リグニンスルホン酸塩が挙げられる。減水剤(Ad2)は、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、及び高性能AE減水剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでよい。
無機フィラー(F)全体に対する減水剤(Ad2)の配合比率(Ad2/F×100)は、0.1~1.5質量%であってよい。このようなジオポリマー組成物は、良好なフレッシュ性状を有しつつ強度にも優れる。フレッシュ性状と強度を一層高い水準で両立させる観点から、配合比率(Ad2/F×100)は、好ましくは0.2~1.0質量%であり、より好ましくは0.3~0.7質量%である。
消泡剤(Ad3)としては、セメント組成物に配合されるものを用いることが可能であり、例えば、非イオン界面活性剤タイプのもの、オイルタイプ、及びエマルションタイプ等が挙げられる。
無機フィラー(F)全体に対する消泡剤(Ad3)の比率(Ad3/F×100)は、好ましくは0.002~0.10質量%であり、より好ましくは0.005~0.05質量%であり、さらに好ましくは0.008~0.03質量%である。ジオポリマー組成物は、減水剤(Ad2)を含むと気泡が発生して圧縮強度が低下する傾向にある。そこで、上述の比率で消泡剤(Ad3)を含有することによって、ジオポリマー組成物の製造コストを維持しつつ強度発現性を十分に高くすることができる。
ジオポリマー組成物は、上述の成分以外の成分を含んでもよい。そのような成分としては、例えば、炭酸カルシウム以外の炭酸塩、膨張材、収縮低減剤、防錆剤、及び防水材等が挙げられる。
ジオポリマー組成物の15打モルタルフローは、好ましくは150~220mmであり、より好ましくは170~210mmである。このようなジオポリマー組成物は流動性に優れ、施工性にも優れる。15打モルタルフローは実施例に記載の方法で測定される。ジオポリマー組成物の可使時間は、好ましくは120分以上である。このようなジオポリマー組成物はフレッシュ性状に優れており、施工性に優れる。可使時間は実施例に記載の方法で測定される。
ジオポリマー組成物は、強度発現性に優れており、最高温度60℃で3時間保持する蒸気養生において、材齢28日におけるジオポリマー組成物の圧縮強度は、好ましくは20N/mm以上である。各圧縮強度は実施例に記載の条件で測定される。このように、ジオポリマー組成物は良好なフレッシュ性状と優れた圧縮強度を有する。そして、炭酸カルシウム(CC)を含有することから、CO排出量を削減することができる。このため、低炭素ジオポリマー組成物ということもできる。
一実施形態に係るジオポリマー硬化体は、上述のジオポリマー組成物を硬化することによって得ることができる。このジオポリマー硬化体は、十分に高い圧縮強度を有しつつ、CO排出量を削減することができる。したがって、低炭素ジオポリマー硬化体ということもできる。
一実施形態に係るジオポリマー組成物の製造方法は、無機フィラー(F)、シリカフューム(SF)、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むアルカリ源、水(w)、遅延剤(Ad1)、減水剤(Ad2)、並びに消泡剤(Ad3)を含む原料を混合してジオポリマー組成物を得る混合工程を有する。水の少なくとも一部とアルカリ源は、NaOH水溶液及びKOH水溶液等のアルカリ水溶液として配合してもよい。
水(w)に対する、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの合計のモル比(A/W)は、好ましくは0.1~0.7であり、より好ましくは0.1~0.5であり、さらに好ましくは0.15~0.3である。このような範囲であれば、フレッシュ性状と強度発現性のみならず、安全性も一層高くすることができる。水は、ジオポリマー組成物を調製する際に単独で配合してもよいし、NaOH及びKOHの水溶液として配合してもよい。上述の水(w)の量は、これらの合計値として求められる。
アルカリ源とシリカフューム(SF)は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの合計(A)に対する、シリカフューム(SF)に含まれるSiOのモル比(Si/A)が、好ましくは0.1~0.7、より好ましくは0.15~0.6、さらに好ましくは0.2~0.5となるように配合する。このような範囲で配合することによって、シリカフューム(SF)に含まれるSiOが円滑に溶解してケイ酸アルカリ水溶液が安定的に生成する。したがって、強度とフレッシュ性状を一層向上することができる。
本実施形態の製造方法では、アルカリ源を含む液体組成物に、無機フィラー(F)及びシリカフューム(SF)等を含む固体組成物を添加して溶解する、所謂その場溶解法でジオポリマー組成物を製造することが好ましい。このため、シリカフュームと混合される前の液体組成物(アルカリ水溶液)は、一般法のように、ケイ酸ナトリウム(NaSiO、NaSiO、NaSi、NaSi等)、ケイ酸カリウム(KSiO等)、及び水ガラスを含まなくてよい。これによって、シリカフューム(SF)及び無機フィラー(F)等とアルカリ源との反応が阻害され難くなり、ジオポリマー組成物の強度発現を促進することができる。
その他の各成分の配合量及び配合比は、ジオポリマー組成物の実施形態で説明したとおりであってよい。その場溶解法で各成分を混合すると、シリカフューム(SF)等がアルカリ水溶液中に溶解する。無機フィラー(F)及びその他の原料に含まれるSiOもアルカリ水溶液中に溶解してよいし、SiO以外の成分もアルカリ水溶液中に溶解してもよい。このようにして、ナトリウム及びカリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むケイ酸アルカリ水溶液が生成する。
上記製造方法は、混合工程の前に、無機フィラー(F)、シリカフューム(SF)、細骨材(S)、及び遅延剤(Ad1)を含む固体組成物を調製する第1調製工程と、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むアルカリ源、水、減水剤(Ad2)、並びに消泡剤(Ad3)を含む液体組成物を調製する第2調製工程とを有していてもよい。この場合、混合工程では、この固体組成物と液体組成物とを配合する。これによって、原料が混合されてジオポリマー組成物を得ることができる。
第1調製工程では、調製した固体組成物を包装して、固体組成物を含む第1包装体を得てもよい。第2調製工程では、調製した液体組成物を包装して、液体組成物を含む第2包装体を得てもよい。これによって、固体組成物を含む第1包装体と液体組成物を含む第2包装体とを有する、ジオポリマー組成物調製用キットを得ることができる。第1包装体及び第2包装体は、それぞれ、固体及び液体であることから、別々にすることによって運搬を円滑に行うことができる。混合工程を行うまで、シリカフューム等の溶解及び硬化反応が進行しないため、長期間にわたって安定的に保管することもできる。したがって、固体組成物を含む第1包装体と液体組成物を含む第2包装体とを有する、ジオポリマー組成物調製用キットは、取り扱い性に優れる。
第1調製工程で調製される固体組成物において、無機フィラー(F)全体に対する炭酸カルシウム(CC)の配合比率は、0体積%を超え70体積%未満である。この比率は、混合工程で得られるジオポリマー組成物及びジオポリマー硬化体の強度を十分に高くする観点から、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上である。一方、炭酸カルシウムの配合比率が高過ぎると強度が低下しフレッシュ性状も悪化する傾向にあることから、この配合比率は、好ましくは65体積%以下であり、より好ましくは60体積%以下であり、さらに好ましくは55体積%以下である。
固体組成物において、無機フィラー(F)全体に対する遅延剤(Ad1)の比率(Ad1/F×100)は、0.5~3.5質量%である。このような固体組成物を用いて得られるジオポリマー組成物は、良好なフレッシュ性状を有しつつ強度にも優れる。フレッシュ性状と強度を一層高い水準で両立させる観点から、比率(Ad1/F×100)は、好ましくは0.5~3.0質量%であり、より好ましくは0.7~2.5質量%であり、さらに好ましくは0.8~2.0質量%である。
混合工程では、固体組成物と液体組成物とを配合して混合する。このとき、固体組成物に含まれる無機フィラー(F)全体に対して、液体組成物に含まれる減水剤(Ad2)の比率が0.1~1.5質量%、消泡剤(Ad3)の比率が0.002~0.10質量%となるように、固体組成物と液体組成物とを配合することが好ましい。このようなジオポリマー組成物は、良好なフレッシュ性状を有しつつ強度にも優れる。フレッシュ性状と強度を一層高い水準で両立させる観点から、配合比率(Ad2/F×100)は、好ましくは0.2~1.0質量%であり、より好ましくは0.3~0.7質量%である。同様の観点から、無機フィラー(F)全体に対する消泡剤(Ad3)の比率(Ad3/F×100)は、好ましくは0.002~0.10質量%であり、より好ましくは0.005~0.05質量%であり、さらに好ましくは0.008~0.03質量%である。また、固体組成物に含まれる各成分と、液体組成物に含まれる各成分とが、ジオポリマー組成物の説明において述べた配合量及び比率となるように、固体組成物と液体組成物とを混合することが好ましい。
第1調製工程、第2調製工程、及び混合工程で用いる攪拌装置に特に制限はない。第2調製工程では、液体組成物を調製することから、通常の容器を用いて調製してもよい。第1調製工程及び混合工程では、例えば、モルタルミキサ、二軸強制練りミキサ、パン型ミキサ、グラウトミキサ又はハンドミキサ等を使用することができる。このようにして、良好なフレッシュ性状を有しつつ強度にも優れるジオポリマー組成物を製造することができる。ジオポリマー組成物の好ましい例とそれによる効果は上述したとおりである。
一実施形態に係るジオポリマー硬化体の製造方法は、上述のジオポリマー組成物又は上述の製造方法で得られたジオポリマー組成物を硬化する硬化工程を有する。このようにして得られるジオポリマー硬化体は、十分に高い強度を有しつつCO排出量を削減することができる。
ジオポリマー硬化体の用途としては、現場での施工の他に、例えば、二次製品が挙げられる。ジオポリマー組成物を硬化させてジオポリマー硬化体を作製するときには、例えば、封緘養生してもよく、蒸気養生してもよい。これらのうち、蒸気養生する方が早期に強度を発現できる点からは好ましい。
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、本開示は、以下の内容を含む。
[1]無機フィラー、ナトリウム及びカリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むケイ酸アルカリ水溶液、遅延剤、減水剤、並びに消泡剤を含み、
前記無機フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含み、前記無機フィラー全体に対する前記炭酸カルシウムの配合比率は0体積%を超え70体積%未満である、ジオポリマー組成物。
[2]前記遅延剤は、グルコン酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム、スクロース、及びグルコースからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、[1]に記載のジオポリマー組成物。
[3]前記減水剤はリグニンスルホン酸塩を含む、[1]又は[2]に記載のジオポリマー組成物。
[4]前記ケイ酸アルカリ水溶液には少なくともシリカフュームが溶解している、[1]~[3]のいずれか一つに記載のジオポリマー組成物。
[5]上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のジオポリマー組成物を硬化して得られるジオポリマー硬化体。
[6]無機フィラー、シリカフューム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むアルカリ源、水、遅延剤、減水剤、並びに消泡剤を含む原料を混合してジオポリマー組成物を得る混合工程を有し、
前記無機フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含み、前記無機フィラー全体に対する前記炭酸カルシウムの配合比率は0体積%を超え70体積%未満である、ジオポリマー組成物の製造方法。
[7]前記無機フィラー、前記シリカフューム、及び前記遅延剤を含む固体組成物を調製する第1調製工程と、
前記アルカリ源、前記水、前記減水剤、及び前記消泡剤を含む液体組成物を調製する第2調製工程と、
前記固体組成物と前記液体組成物とを配合して前記ジオポリマー組成物を得る前記混合工程と、を有する、[6]に記載のジオポリマー組成物の製造方法。
[8]上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の前記ジオポリマー組成物、或いは、上記[6]又は[7]に記載の製造方法で得られた前記ジオポリマー組成物を硬化する硬化工程を有する、ジオポリマー硬化体の製造方法。
[9]固体組成物を含む第1包装体と液体組成物を含む第2包装体とを有する、ジオポリマー組成物調製用キットであって、
前記固体組成物は、無機フィラー、シリカフューム、及び遅延剤を含み、
前記液体組成物は、アルカリ源、水、減水剤、及び消泡剤を含み、
前記アルカリ源は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含み、
前記無機フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含み、前記無機フィラー全体に対する前記炭酸カルシウムの配合比率は0体積%を超え70体積%未満である、ジオポリマー組成物調製用キット。
[10]無機フィラー、シリカフューム、及び遅延剤を含むジオポリマー組成物調製用の固体組成物であって、
前記無機フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含み、前記無機フィラー全体に対する前記炭酸カルシウムの配合比率は0体積%を超え70体積%未満である、ジオポリマー組成物調製用の固体組成物。
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
[ジオポリマー組成物の調製]
ジオポリマー組成物の原料として、以下の表1に示す材料を使用した。また、シリカフューム(SF)、フライアッシュII種(FA)、高炉スラグ微粉末(BS)及び炭酸カルシウム(CC)の化学成分は、表2に示すとおりであった。
Figure 0007274034000001
Figure 0007274034000002
表1に示す材料を用いてジオポリマー組成物を調製した。具体的には、液体組成物と固体組成物とをそれぞれ調製した後、これらを、モルタルミキサを用いて混合してジオポリマー組成物を調製した。液体組成物は、苛性ソーダ水溶液(SH)、水(w)、減水剤(Ad2)及び消泡剤(Ad3)を配合して調製した。固体組成物は、シリカフューム(SF)、フライアッシュII種(FA)、高炉スラグ微粉末(BS)、炭酸カルシウム(CC)、海砂(S1)、砕砂(S2)及び遅延剤(Ad1)を、モルタルミキサ内に入れて、30秒間空練りして調製した。その後、このモルタルミキサ内に、上述の液体組成物を加えて90秒間練り混ぜた。練り混ぜてかき落としを行った後、再度90秒間練り混ぜた。このようにして、各実施例及び各比較例のジオポリマー組成物を調製した。
各実施例及び各比較例で調製したジオポリマー組成物1m当たりの各材料の単位量は表3に示すとおりとした。表3に示すとおり、各比較例及び各実施例では、一部の材料を配合しなかった。なお、各実施例及び各比較例における無機フィラー(F)の配合量は、体積基準で一定となるようにした。遅延剤(Ad1)、減水剤(Ad2)及び消泡剤(Ad3)のそれぞれの配合量は、表4に示すように無機フィラー(F)の質量に対して一定の質量比率になるように配合した。このため、表3では、遅延剤(Ad1)、減水剤(Ad2)及び消泡剤(Ad3)を単位量が、実施例及び比較例毎にわずかに変わっている。
Figure 0007274034000003
表3中の記号「L」は、苛性ソーダ水溶液(SH)、水(w)、及びシリカフューム(SF)の合計を示し、記号「F」は、フライアッシュII種(FA)、高炉スラグ微粉末(BS)及び炭酸カルシウム(CC)の合計(無機フィラーの合計)を示し、記号「S」は、海砂(S1)及び砕砂(S2)の合計(細骨材)を示し、記号「Ad」は、遅延剤(Ad1)、減水剤(Ad2)、及び消泡剤(Ad3)の合計を示す。表4には、これらの記号を用いて、ジオポリマー組成物に含まれる各成分及び各材料の比又は割合を示す。
表4中、「A/W」は、Lに含有される水に対する水酸化ナトリウム(NaOH)のモル比を示し、「Si/A」は、Lに含有される水酸化ナトリウム(NaOH)に対する二酸化ケイ素(SiO)のモル比を示す。表4中、「単位水量」は、苛性ソーダ水溶液(SH)に含まれる水と、水(w)の合計の単位量である。
Figure 0007274034000004
[ジオポリマー組成物の評価]
各比較例及び各実施例で得られたジオポリマー組成物のフレッシュ性状(流動性、可使時間及び流下速度)、並びに、圧縮強度を以下の手順で評価した。
<流動性の評価>
流動性試験として、15打モルタルフローを測定した。モルタルフロー試験は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準じて実施した。測定結果は表6に示すとおりであった。
<可使時間の評価>
硬度計(全長:23cm、貫入部位:円錐形)を用いて可使時間の評価を行った。直径18.5cm、高さ10cmの円筒型の容器に、ジオポリマー組成物を入れ、5分ごとに硬度計を挿入して貫入抵抗値を測定した。打ち込み・成形可能な貫入抵抗値を1.0N/mmとし、この値を超えない時間を可使時間とした。測定結果は表6に示すとおりであった。
<圧縮強度の評価>
ジオポリマー組成物を所定の型枠に流し込んで、最高温度60℃での蒸気養生を行った。蒸気養生は、20℃で3時間の前置きの後、昇温速度13.3℃/hrで60℃に昇温して3時間保持し、降温速度13.3℃/hrで20℃に降温した。このようにして得られた円柱試験体(Φ5cm×高さ10cm)を用いて、材齢7日における圧縮強度を測定した。なお、材齢1日で脱型し、それ以降は温度20±2℃、相対湿度60±5%の恒温恒湿室で気中養生を行った。測定結果は表6に示すとおりであった。
<CO排出量の算出>
ジオポリマー組成物のCO排出量については、表5に示す各材料のCO排出量原単位と配合量を用いて算出した。表5中の※1~4の意味内容は以下のとおりである。
※1)フライアッシュII種(FA)、高炉スラグ微粉末(BS)、海砂(S1)及び砕砂(S2)のCO排出量原単位は、非特許文献2の記載値を使用した。
※2)苛性ソーダ水溶液(SH)のCO排出量原単位については、非特許文献3の記載値を使用材料の濃度に換算して使用した。
※3)シリカフューム(SF)については、フライアッシュII種(FA)と同様に産業副産物であり、CO排出源も同様に製造時の分級電力と考えられることから、フライアッシュII種(FA)とCO排出量原単位が同じと仮定した。
※4)炭酸カルシウム(CC)のCO排出量原単位については、実際にはCO吸収や生成にエネルギー等を有すると考えられるが、現時点ではこれらの詳細が不明である。このため計算上はこれらの影響は無視して、炭酸カルシウム(CaCO)中のCOの割合から算出した。水(w)、遅延剤(Ad1)、減水剤(Ad2)、及び消泡剤(Ad3)のCO排出量原単位については、非特許文献2での取扱いを参考に0とした。
Figure 0007274034000005
Figure 0007274034000006
一般的な知見として、無機フィラー(F)中の高炉スラグ微粉末(BS)の割合が多くなると、圧縮強度は高く、15打フローは小さくなる傾向があることが知られている。よって、ここでは、無機フィラー(F)中の高炉スラグ微粉末(BS)の割合ごとに、圧縮強度及び15打フローの比較を行う。すなわち、No.1~4はBS/F=10体積%、No.5~11はBS/F=30体積%、No.12~14はBS/F=50体積%の条件下で、無機フィラー(F)中の炭酸カルシウム(CC)の割合を変化させて圧縮強度及び15打フローを比較する。なお、各BS/Fごとに、無機フィラー(F)中に炭酸カルシウム(CC)を含まない水準を比較例(基準)とし、圧縮強度比及び15打フロー比の基準とした。
表6中、「総合評価」は、以下に基づいてランク分けした結果である。
〇:基準に対する圧縮強度比85以上、かつ基準に対する15打フロー比85以上
×:基準に対する圧縮強度比85未満、又は基準に対する15打フロー比85未満
各BS/Fごとに比較すると、無機フィラー(F)中の炭酸カルシウム(CC)の割合が多くなると以下のような傾向が確認できる。
・CC/Fが高くなると、15打フロー比は小さくなる。
・CC/Fが高くなると、圧縮強度比は一旦増加した後に低下する。
・CC/Fが高くなると、CO排出量は少なくなる。
CO排出量は少ないことが望ましいが、CO排出量の削減とともに施工性(流動性)及び強度を確保することも必要であることから、圧縮強度比85以上かつ15打フロー比85以上を総合評価「〇」とした。実施例はいずれも総合評価「〇」であり、良好なフレッシュ性状と優れた強度を有しつつ、CO排出量を削減することが可能なジオポリマー組成物を得ることができた。
本開示によれば、良好なフレッシュ性状と優れた強度を有しつつ、CO排出量を削減することが可能なジオポリマー組成物及びその製造方法が提供される。また、良好なフレッシュ性状と優れた強度を有しつつ、CO排出量を削減することが可能なジオポリマー組成物を、簡便に調製することが可能なジオポリマー組成物調製用キットが提供される。また、十分に高い強度を有しつつCO排出量を削減することが可能なジオポリマー硬化体及びその製造方法が提供される。

Claims (5)

  1. 機フィラー、シリカフューム、及び遅延剤を含む固体組成物を調製する第1調製工程と、
    水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むアルカリ源、水、減水剤、及び消泡剤を含み、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及び水ガラスを含まない液体組成物を調製する第2調製工程と、
    前記固体組成物と前記液体組成物とを配合して、前記無機フィラー、前記シリカフューム、前記アルカリ源、前記水、前記遅延剤、前記減水剤、並びに前記消泡剤を含むジオポリマー組成物を得る混合工程と、を有し、
    前記無機フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含み、
    前記無機フィラー全体に対する前記炭酸カルシウムの配合比率は0体積%を超え70体積%未満である、ジオポリマー組成物の製造方法。
  2. 前記無機フィラー全体に対する前記高炉スラグ微粉末の配合比率は0体積%を超え30体積%以下である、請求項1に記載のジオポリマー組成物の製造方法。
  3. 求項又はに記載の製造方法で得られた前記ジオポリマー組成物を硬化する硬化工程を有する、ジオポリマー硬化体の製造方法。
  4. 固体組成物を含む第1包装体と液体組成物を含む第2包装体とを有する、ジオポリマー組成物調製用キットであって、
    前記固体組成物は、無機フィラー、シリカフューム、及び遅延剤を含み、
    前記液体組成物は、アルカリ源、水、減水剤、及び消泡剤を含み、且つ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及び水ガラスを含まず、
    前記アルカリ源は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含み、
    前記無機フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末及び炭酸カルシウムを含み、
    前記無機フィラー全体に対する前記炭酸カルシウムの配合比率は0体積%を超え70体積%未満である、ジオポリマー組成物調製用キット。
  5. 前記無機フィラー全体に対する前記高炉スラグ微粉末の配合比率は0体積%を超え30体積%以下である、請求項4に記載のジオポリマー組成物調製用キット。
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