JP2020138899A - ジオポリマー用減粘剤及びジオポリマー硬化体 - Google Patents
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Abstract
Description
また、GPを用いたコンクリートは、ポルトランドセメントを用いた従来のコンクリートと比較して、強度発現性、耐火性、アルカリ骨材反応抵抗性、耐硫酸塩抵抗性に優れ、重金属を固定できる等の特徴を有する。
これまでGPの活性フィラーとして、FAとBFSを採用した例が多く報告されている。活性フィラーのなかでも、酸化カルシウム(CaO)の含有量が比較的少ないFAを単独で使用したGPは、凝結・硬化時間が長く(例えば常温(気中)養生の場合、1日以上)、十分な可使時間は確保されるものの強度発現性に乏しい(例えば非特許文献2及び非特許文献3)。一方、酸化カルシウムの含有量が比較的多いBFSを活性フィラーとしたGPは、強度発現性に非常に優れるものの、常温下の凝結時間は10〜40分ほどで極めて短く、その作業性は悪い。このため、GPの強度発現性を高める目的で、FAを用いたGPに、BFSを混合使用する検討例がいくつか報告されている(例えば、非特許文献3及び非特許文献4)。
GPやGPコンクリートにあっても、ポルトランドセメンにおける減水剤と同様に、流動性を確保しながら、単位アルカリ溶液量を減少できる混和剤(ここに、減液剤と呼ぶ)への要求は高いとみられるものの、日本国内ではジオポリマー用減液剤の利用に関する報告はまだ見当たらない。
ポルトランドセメント・コンクリート用の減水剤をGPコンクリートに適用している事例として、例えば非特許文献6−8では、ナフタレン系減水剤をGPに用いた事例が報告されている。しかし、従来のポルトランドセメントの場合と比べ、減水剤の添加率は粉体質量の1.5%以上とかなり多く、それにもかかわらず減水剤の添加効果は不明であり、尚且つ添加率が高いほど、GPの養生温度にかかわらず圧縮強度が低下したとの報告がある(非特許文献7の図5と非特許文献8の図3を参照)。
一方、非特許文献9は、リグニン酸系の減水剤とポリカルボン酸系の減水剤をGPに使用した事例を報告している。同文献には、水酸化ナトリウムのモル濃度が4.0モル以下である場合に流動性が増加する効果がみられたが、4.0モル以上になると、逆に、減水剤の添加で流動性は低下したことが開示されている(非特許文献9の図2を参照)。
非特許文献10は、3種類のポリカルボン酸系、2種類のナフタレン系および1種類のメラミン系の減水剤を、粉体質量の1%の割合で使用した事例が報告されている。ポリカルボン酸系を添加した場合には流動性は4割ほどで増加したが、ナフタレン系の場合には6〜8%しか増加せず、メラミン系減水剤の場合には流動性は低下したとされ、一方GPの強度に与える減水剤添加の影響は記述されていない。
こうした中、本発明者らの検討において、上述の強度発現性と凝結時間の観点に加え、GPの練り混ぜ直後の粘性が従来のセメントコンクリートのそれとは大きく異なり、同水粉体比のセメントコンクリートに比べ、練り混ぜ直後のGP混練物の粘性が非常に大きくなることに着目した。GPの流動性を改善するために減水剤の添加効果に関する検証例や検討例がいくつか報告されているが、前述のように、従来の減水剤を添加することによる流動性の改善効果は例外なく明確に確認されているとは言えず、GPの強度発現性に悪影響を及ぼす可能性が十分にあり、また粘性に着目したものはまだ見当たらない。
こうした種々の課題を踏まえ、本発明では、活性フィラー粒子を分散させることで流動性を改善する減液剤には着目せず、比較的高いpH値で粘性低減効果を発揮し、硬化後の強度発現性を確保しながら、フレッシュ時の流動性を改善するGP組成物を調製することができるGP用減粘剤及び該GP用減粘剤を用いたGP硬化体の提供を課題とするものである。
[1]下記化学式(1)で表されるリン酸エステル化合物を含有する、ジオポリマー用減粘剤。
[3][1]又は[2]に記載のジオポリマー用減粘剤、並びに、
減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、AE剤、流動化剤、硬化促進剤、消泡剤、急結剤、収縮低減剤、硬化遅延剤及び防錆剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有する、ジオポリマー用混和剤。
[4][1]若しくは[2]に記載のジオポリマー用減粘剤又は[3]に記載のジオポリマー用混和剤、
少なくとも一種のアルミノシリケート源、
アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ源、及び
骨材を含む、ジオポリマー形成組成物。
[5][1]若しくは[2]に記載のジオポリマー用減粘剤又は[3]に記載のジオポリマー用混和剤、
少なくとも一種のアルミノシリケート源、
アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ源、及び
骨材を含む組成物の硬化体からなる、ジオポリマー硬化体。
疑問視されている。仮に吸着したとしても、粉体粒子の周りに電気二重層を形成できるかどうか、また、粘性が高い液相において、高分子の減水剤の鎖で粉体粒子を分散できるかどうかなど、不明点は多い。
また減水剤は通常、液状であるため、その添加量が多い場合には水量の補正は必要となるが、上述の非特許文献に挙げられた報告において、流動性の増加効果だけでなく強度の減少効果を生じているのは、一つの要因として水量の補正を行わなかったためと考えられる。
本発明者らは、特定構造を有するリン酸エステル系化合物をジオポリマー混練物に配合することにより、該リン酸エステル化合物が減粘剤としての働きを有すること、すなわちGP混練物の粘性を低減できること、そして強度発現性を損なうことなく混練物における作業性を確保できることを見出した。以下、本発明について詳述する。
炭素原子数2〜24のアルケニル基としては、具体的には、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられ、これらは分岐構造、環状構造を有していてもよい。
置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、ナフチル基等の無置換のアリール基、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基等の置換基を有する前記アリール基が挙げられる。
nはアルキレンオキシ基の付加モル数であり、0〜30の整数であるが、粘性低減効果
の観点で好ましくは1〜10の整数である。nが2以上の場合、n個のAOは同一でも異なっていてもよく、異なる場合は−(A1O)n−はランダム付加、ブロック付加または交互付加のいずれの付加形式でもよい。
mは1〜3の整数であり、好ましくは1または2である。
前記GP用減粘剤及びGP用混和剤は、少なくとも一種のアルミノシリケート源、並びに、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ源を含む混合物より形成されるGPに適用される添加剤(減粘剤・混和剤)であることが好ましい。
さらには、前記GP形成組成物の硬化体、すなわち前記GP用減粘剤又はGP用混和剤と、少なくとも一種のアルミノシリケート源、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ源、及び骨材を含む、GP硬化体に関する。
A2Oは炭素原子数2〜4のアルキレンオキシ基を表し、具体的にはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基が挙げられる。二種以上のアルキレンオキシ基から構成される場合、これらアルキレンオキシ基はブロック付加又はランダム付加の何れでも良い。
pは上記アルキレンオキシ基の付加モル数であり、1〜200の整数を表す。好ましくは5〜120、より好ましくは10〜100、更に好ましくは40〜100である。
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ビニルアルコールアルキレンオキシド付加物、(メタ)アリルアルコールアルキレンオキシド付加物、3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、イソプレンアルコール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキシド付加物、3−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−2−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物等の不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物。なお本発明では、(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートの両方をいい、(メタ)アリルアルコールとはアリルアルコールとメタリルアルコールの両方をいう。
類:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレンなど;(2)アニオン系単量体類:ビニルスルホン酸塩、スチレンスルホン酸塩、メタクリル酸リン酸エステルなど;(3)アミド系単量体類:アクリルアミド、アクリルアミドのアルキレンオキサイド付加物など、(4)ポリアミドポリアミン系単量体:ポリアミドポリアミンと(メタ)アクリル酸の縮合物に、必要に応じてアルキレンオキサイドを付加した化合物。
また、上記ポリカルボン酸系減水剤は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、アルキルアミン、有機アミン類などの中和剤によって、予め部分中和、或いは完全中和された形態として、本発明のジオポリマー用減粘剤に配合されることが好ましい。
消泡剤としては、例えば、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アルキレンオキシド付加物、アルキレンオキシドジ脂肪酸エステル、多価アルコールアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキシド付加物等の非イオン界面活性剤系消泡剤;シリコーンオイルをエマルション化したシリコーン系消泡剤;高級アルコールをエマルション化した高級アルコール類、鉱物系消泡剤、これらを主成分とした混合物などが挙げられる。
収縮低減剤としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸若しくはそれらの塩;糖及び糖アルコール;グリセリン糖の多価アルコールなどが挙げられる。
防錆剤としては、例えば、亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛などが挙げられる。
本発明の上記GP減粘剤、GP混和剤を適用するGPは、前述したように、活性フィラー等のアルミノシリケート源、アルカリシリカ溶液等のアルカリ源、及び骨材などを含む混合物より構成される。
なお、本発明は、前記GP用減粘剤又は前記GP用混和剤と、GPを構成する前記活性フィラー等のアルミノシリケート源及びアルカリシリカ溶液等のアルカリ源、並びに後述する骨材を含むジオポリマー形成組成物、並びに該GP形成組成物の硬化体からなるGP硬化体も対象とする。
本発明の減粘剤及び混和剤が対象とするGPは、例えばアミノシリケート源として、フライアッシュを0乃至100質量%及び高炉スラグ微粉末を100乃至0質量%の割合(
合計で100質量%)にて含むものを対象とすることができる。好ましくはCaO含有量が1〜60質量%である少なくとも一種のアルミノシリケート源と、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ源を含みて構成されるものを対象とすることができる。
上記アルミノシリケート源とは、アルミノシリケート(xM2O・yAl2O3・zSiO2・nH2O、Mはアルカリ金属)を成分として含有する成分を指し、高アルカリ性溶液(アルカリシリカ溶液)との接触により、アルミニウムやケイ素等の陽イオンを溶出し、それらの供給源となる作用を有する。
アルミノシリケート源の好適な例として、1)フライアッシュ、クリンカアッシュ、流動床石炭灰、高炉スラグ微粉末、都市ごみ焼却灰溶融スラグ微粉末、赤泥、および下水汚泥焼却灰溶融スラグ微粉末などの産業廃棄物・副産物、2)メタカオリンなどの天然アルミノシリケート鉱物および粘土とその焼物、3)火山灰などを挙げることが出来る。
これらのうち、上記1)の産業廃棄物は、他のアルミノシリケート源と比較して、産地制限がなく、かつ産業廃棄物資源の有効利用にもつながり、特に好適である。
本発明では、上記アルミノシリケート源として、CaO含有量が1〜60質量%であるものを少なくとも一種用いることが好ましい。例えばCaO含有量が1〜10質量%程度のアルミノシリケート源としてはフライアッシュやクリンカアッシュが挙げられる。またCaO含有量が10〜60質量%と比較的高いアルミノシリケート源としては、例えば、高炉スラグ微粉末、都市ごみ焼却灰溶融スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰スラグ微粉末、CaOに富む流動床石炭灰等が挙げられる。本発明の好ましい態様の一つとして、上記CaO含有量の比較的高いアルミノシリケート源の少なくとも一種とフライアッシュを混合使用すること、特に高炉スラグ微粉末とフライアッシュを混合使用する態様が挙げられる。
また都市ごみ焼却灰溶融スラグは、都市ごみを焼却処理する際に生じた灰を高温で溶融・冷却して得られるものであり、高炉スラグ同様、ケイ素、アルミニウムおよびカルシウムなどの酸化物が主成分である。本発明においては、CaOの含有率が15〜45質量%の範囲にあるものが好ましく用いられる。
流動床石炭灰は、加圧流動床石炭ボイラーから発生した灰である。炉内で脱硫する目的で石灰石微粉末を混和して石炭を燃焼させるため、後述するフライアッシュとクリンカアッシュに比べCaOを多く含有することが特徴である。流動床石炭灰は現在のコンクリート混和材用フライアッシュのJIS規格(JIS A 6201)を満足するものではないが、アルカリシリケート源として用いることが可能である。CaOの含有率は、灰の発生場所によって異なるが、20〜55質量%である。
なお、下水汚泥焼却灰溶融スラグは、下水の処理によって発生する汚泥を濃縮・脱水した後、800℃程度で焼却した灰をさらに高温で溶融・冷却して得られるものである。脱水時に添加する凝集剤の種類によって下水汚泥焼却灰は分類され、すなわち、消石灰、塩化第二鉄を添加した石灰系焼却灰と、高分子凝集剤を添加した高分子系焼却灰に分類される。石灰系焼却灰のCaOの含有率は、脱水時の消石灰の添加率により異なるが、一般的に30〜50質量%程度である。一方、高分子系焼却灰のCaOの含有率は10質量%程度以下である。従って、本発明に使用するアルミノシリケート源としては、石灰系焼却灰によるスラグを用いることが好ましい。
に規格が規定されている。その粒度が細かく反応性に富むJIS I種、II種がジオポリマー原料として特に適している。フライアッシュ中のCaOの含有率は〜10.1質量%程度とされる。
またクリンカアッシュは石炭燃焼ボイラー底部で回収される溶結状の石炭灰を粉砕処理したものである。クリンカアッシュ中のCaOの含有率は2〜9質量%程度とされる。
フライアッシュ、クリンカアッシュともに、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)成分が全質量中の70〜90%を占めているため、アルカリシリケート源として有用である。
当該活性フィラー中における上記のCaO含有量の高いアルミノシリケート源の配合割合は、活性フィラーの全質量に対して1質量%から100質量%であり、好ましくは10質量%から100質量%であり、さらに好ましくは20質量%以上である。
2種以上の活性フィラーを用いる場合、活性フィラー全体のうち、CaOが占める割合は、例えば1〜60質量%であり、好ましくは10質量%〜60質量%である。上記のCaO含有量が高い微粉末や灰の割合を変更することによってCaOの含有量を調整することができる。
本発明において、アルカリ源とは、高アルカリ性を示す化合物の水溶液を指し、前記アルミノシリケート源と接触することにより、それらを活性化させ、アルミニウム及びケイ素等の陽イオンを溶出させる作用を有する。
アルカリ源に使用する化合物としては、1)水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ水酸化物、2)炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ塩、3)ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどのアルカリケイ酸塩のほか、これら1)〜3)の組み合わせを好適に用いることが出来る。
また3)アルカリケイ酸塩を用いる場合には、それ自身がジオポリマー形成に預かるケイ酸モノマー(Si(OH)4)の供給源となるため、一層好適である。
これらの観点から、アルカリ供給源の化合物の好ましい例としては、ケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの併用を挙げることができる。また、工業実施上の経済性(コスト)を損なわない範囲で上記ナトリウム化合物の一部を対応するカリウム化合物にて置き換えることも可能である。
以上を踏まえると、上記アルカリ源としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウムの水溶液が好適に用いられ、特に好ましくはケイ酸ナトリウム水溶液が用いられる。
上記ケイ酸ナトリウム水溶液は、通称“水ガラス”と呼ばれるものであり、市販品が使用できる。化学組成として、SiO2=20〜40%、Na2O=5〜20%を含むものが好ましい。
なお、本発明において、アルカリ源として水ガラスを使用する場合、好ましい態様においてSiO2とNa2Oのモル比:SiO2/Na2Oが2.1以上である場合には、廃棄物の大量利用の観点から、前記活性フィラーにおける高炉スラグ微粉末の割合(質量)を50%未満とすることが好ましい。
使用するアルカリ水溶液の濃度は、好ましくは20〜50質量%の範囲である。
ジオポリマー形成組成物の製造において、前記活性フィラーとして複数のものを使用する場合には、これらを混合し、アルミノシリケート源を用意する。別途用意したアルカリ源を、アルミノシリケート源に添加して混合し、さらに骨材を添加して混合し、また後述するように本発明のGP用減粘剤・GP用混和剤を加えて、ジオポリマー形成組成物を製造する。
なお本発明は、上記ジオポリマー用減粘剤又はジオポリマー用混和剤、少なくとも一種のアルミノシリケート源、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ源、及び骨材を含む組成物の硬化体からなる、ジオポリマー硬化体も対象とする。
このようにジオポリマー用減粘剤又はジオポリマー用混和剤は、アルミノシリケート源とアルカリ源のいずれかと混合して、さらに残りのジオポリマーの使用材料と混合してもよいし、予め混合したアルミノシリケート源とアルカリ源の混合物に添加してもよいが、後者(混合物への添加)のほうが好ましい。また、添加方法として、所要の添加量を一括でして添加してもよいし、所要の添加量を分割して加えることもできる。
ジオポリマーの配合設計に関して、アルカリ溶液(アルカリ源:例えば水ガラス+水酸化ナトウリム+水)の総質量とアルミノシリケート源(活性フィラー粉体(B))の総質量の比([アルカリ溶液/B]×100(%))は、構造体や製品に必要とされる強度によって適宜設定可能であるが、作業性を考慮すると、好ましくは40〜65質量%である。
また、アルカリ溶液の構成成分の割合、例えば[水ガラス(WG)]/[水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化ナトリウム水溶液(NaOHaq)]で表される体積比は、ジオポリマー(硬化体)の目標凝結時間および強度によって適宜設定可能であるが、好ましくは1.0〜4.0の範囲である。この比率は、水ガラスと水酸化ナトリウム水溶液の質量比で設定することも可能である。
なおジオポリマー用減粘剤、そしてジオポリマー用混和剤の配合割合は、ジオポリマー形成組成物(ジオポリマーの使用材料)の構成(例えばアルミノシリケート源の構成など)によって、また混和剤の場合には混和剤の構成によって、種々変化し得るが、一例としてアルミノシリケート源の質量に対して0.1乃至10質量%、例えば0.5乃至5質量%にて配合することができる。
[合成例1:アルコールアルキレンオキサイド付加物の調製]
温度計、撹拌機、圧力計、窒素導入管を備えたステンレス製高圧反応器にメタノールを77g、96%水酸化カリウム1.2gを仕込み、反応器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。そして、安全圧下で120℃を保持したままプロピレンオキサイド708gを10時間かけて反応器内に導入し、その後2時間その温度を保持した。その後、150℃まで加熱し、安全圧下で150℃を保持したままエチレンオキサイド216gを5時間かけて反応器内に導入し、その後1時間その温度を保持してアルキレンオキサイド付加反応を完結させ、メタノールアルキレンオキサイド付加物(POの付加モル数:5モル、EOの付加モル数:2モル)を得た。
温度計、撹拌機、窒素導入管、コンデンサーおよび検水管を備えた反応容器に、合成例1で得たメタノールアルキレンオキサイド付加物を1,002g仕込み、40℃に昇温した。次に89%リン酸88.5g(ラサ工業(株)製)を4時間かけて滴下し、滴下終了後、同温で2時間熟成した。その後、95℃に加温し、下部から窒素を5m3/hrで導入しながら、4時間熟成させ、理論量に対し90%以上の反応水が検水管へ留出したことを確認し、反応を終了し、リン酸エステル化合物(X1)を得た。
表1に示す通り、アルコールアルキレンオキサイド付加物におけるアルキレンオキサイドの付加モル数並びにアルコールの種類、あるいはアルキレンオキサイド非付加としたアルコールの種類を変化させた以外には、製造例1と同様の手順にて、本発明のリン酸エステル化合物(X2)〜(X9)を製造した。
なお表1中のR1、(A1O)n、Mは、いずれも前記式(1)で表されるリン酸エステル化合物における符号に対応する。
Y3:特開2018−188319号公報の実施例1に開示された合成法に基づき作製した分散剤ポリマー(ビニル共重合体(p−1))。
Y4:特表2015−518506号公報の実施例1に開示された合成法に基づき作製した分散剤ポリマー。
(A)ポリカルボン酸系減水剤ポリマー:(a1)ポリエチレングリコール(50モル)モノメチルエーテルのメタクリル酸エステルと(b1)メタクリル酸の共重合物((a1):(b1)=85:15、Mw:39,000))
(B)ポリカルボン酸系減水剤ポリマー:(a2)3−メチル−3−ブテン−1−オール50EO2PO付加物と(b2)フマル酸の共重合物((a2):(b2)=8:2、重量平均分子量:30,000)
(C)ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物(東邦化学工業(株)製、ルノックス1500A)
48質量%水酸化ナトリウム水溶液((株)カネカ製、製品名「苛性ソーダ」、35℃での比重:1.504、純分:48%、モル濃度:18.1mol/L)100質量部に対し、イオン交換水60質量部を加えて混合し、30質量%水酸化ナトリウム水溶液(比重:1.33、モル濃度10.0mol/L)を調製した。
なお、上記アルカリ溶液には、ジオポリマー用減粘剤は含まれない。
減粘剤(表1に示すリン酸エステル化合物X1〜X9、並びにY3及びY4)、その他薬剤((A)〜(C))を、表2及び表6(モルタル)に示す活性フィラーBの質量(g)または都市ゴミ焼却灰溶融スラグ微粉末WSの質量(g)に対して、それぞれ各表に示す添加量(質量%、固形分換算)にて添加した。
なお表2及び表6(モルタル)に示すアルカリ溶液/B(フライアッシュ+高炉スラグ微粉末)またはアルカリ溶液/WS(都市ごみ焼却灰溶融スラグ微粉末)(いずれも質量比、%)は各成分の使用量より算出した値である。
<流動性(モルタルフロー値)及び粘性の測定>
ジオポリマーモルタルの練り混ぜにはハイパワーミキサー((株)丸東製作所製:CB−34)を用いた。表2又は表6のNo.M1〜M4に示す配合において、使用した活性フィラーは、JIS II種のフライアッシュ(FA)と高炉スラグ微粉末4000(BFS)、あるいは都市ごみ焼却灰溶融スラグ微粉末(WS)であった。前記の手順で調製及び準備したアルカリ溶液、ジオポリマー用減粘剤(X1〜X9、Y3及びY9)、その他薬剤((A)〜(C))を、それぞれ所定の活性フィラーに対する割合で計量して、混合した後、活性フィラーに加え、低速(公転62rpm、自転141rpm)で120秒間撹拌した。
低速撹拌終了後、上記ミキサーの運転を停止し、停止してから30秒の間に、ミキサーに細骨材(S)として表2又は表6のNo.M1〜M4に示す配合(単位量)にてセメント強さ試験用標準砂を加え、再度低速で30秒間撹拌し、次いで速やかに60秒間高速(公転125rpm、自転284rpm)で撹拌した。高速撹拌終了後、作製したジオポリマーモルタルをJISフローコーンに充填し、JIS R 5201−1997に準拠し
、下記手順にてモルタルのモルタルフローを測定した。
乾燥した布でよく拭ったフローテーブルの上の中央の位置に置いたフローコーンに、作製したジオポリマーモルタルを2回に分けて入れた。まずフローコーンの1/2の高さまでジオポリマーモルタルを入れ、突き棒で全面を15回突いた後、フローコーンの上部までモルタルを入れ、突き棒で全面を15回突き、不足分があれば補い、表面をならした。その後、フローコーンを真上に取り去り、広がったモルタルの直径を測定し、モルタルフローとした。
モルタルフロー測定後、採取したモルタルを、1000mLステンレスビーカーに入れ、長さ(ビーカー直径方向の長さ)10cm、高さ(ビーカー高さ方向の長さ)5cmの撹拌羽を備えたスターラー(東京理化器械(株)製、マゼラZ−2310)で、当該モルタルを1分間50rpmで撹拌したときの、スターラーにかかる負荷電力(W)を求め、ジオポリマーモルタル粘性の尺度とした。負荷電力の値が小さいほどモルタルの粘性が低いことを示す。
空気量の測定は、混練終了後、JIS A 1174−1978の方法に従い測定を行った。
凝結時間の測定は、以下の手順で測定した。
上述の手順にて作製したジオポリマーモルタルを、試料容器(上端外径φ90mm、上端内径φ75±3mm、下端外径φ100mm、下端内径φ85±3mm、高さ40.0±0.5mmの円錐台形状)に充填して、凝結時間の測定に供した。始発時間は、ビガー針装置に設置した始発用標準針が底板の上面からおよそ1mmのところに止まるときとした。一方終結時間は、ビガー針装置に終結用標準針を設置し、ジオポリマーモルタルの表面に針の跡を止めるが、附属小片環による跡を残さないようになったときとした。始発および終結時間は、活性フィラーとアルカリ溶液の混合を開始した時刻を起点とした。
表4又は表12のNo.M1〜M6に示す配合で調製したジオポリマーモルタルを、サイズ:φ5cm、高さ10cmのプラスチック製モールドに充填して供試体とし、上面を食品用ラップフィルム(旭化成ホームプロダクツ(株)製)で覆い、供試体を封緘した。供試体封緘後、20℃にて1日間養生した後、供試体を脱型した。なお脱型時の材齢を1日とした。その後供試体を温度20℃、湿度60%にて28日間、気中養生を実施した(材齢28日)。
材齢28日の各供試体について、JIS A 1108の手順に従って圧縮強度を測定した。各実施例または比較例に対し、材齢28日にて各3本の供試体の平均値を圧縮強度(N/mm2)とした。
また、上記手順にて得られたジオポリマーモルタル硬化体(材齢28日)について、以下の基準にて外観(黒ずみ・白華)を評価した。なお、気中養生終了後(材齢28日)の外観は、いずれの試供体においても材齢1日と比較して変化は確認されなかった。
・外観(黒ずみ・白華) 評価基準
×:供試体表面に黒ずみが目立って観察され、且つ、白華も目立って観察される
△:供試体表面に黒ずみが目立って観察されるが、白華は確認されない
○:供試体表面に黒ずみがわずかに観察されるが、白華は確認されない
◎:供試体表面に黒ずみ・白華が全く観察されない
また、活性フィラーとして都市ごみ焼却灰溶融スラグ微粉末を用いて作製したGPモルタルについて実施した、GPモルタルのモルタルフローおよび負荷電力値(W)、凝結時間、圧縮強度、硬化体の表面外観の評価、並びに空気量の試験結果を表7に示す。
また本発明の減粘剤の代わりに分散剤Y3〜Y4を使用した比較例(比較例4〜比較例5、比較例9〜比較例10、比較例14〜比較例15)と比べても、本発明の減粘剤を用いたモルタルはおよそ負荷電力値が1.0〜3.0W低減されるという結果が得られ、ジ
オポリマーモルタル粘性が低下できることが確認された。
Claims (5)
- 前記ジオポリマー用減粘剤が、少なくとも一種のアルミノシリケート源、並びに、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ源を含む混合物より形成されるジオポリマーの添加剤である、請求項1に記載のジオポリマー用減粘剤。
- 請求項1又は請求項2に記載のジオポリマー用減粘剤、並びに、
減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、AE剤、流動化剤、硬化促進剤、消泡剤、急結剤、収縮低減剤、硬化遅延剤及び防錆剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有する、ジオポリマー用混和剤。 - 請求項1若しくは請求項2に記載のジオポリマー用減粘剤又は請求項3に記載のジオポリマー用混和剤、
少なくとも一種のアルミノシリケート源、
アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ源、及び
骨材を含む、ジオポリマー形成組成物。 - 請求項1若しくは請求項2に記載のジオポリマー用減粘剤又は請求項3に記載のジオポリマー用混和剤、
少なくとも一種のアルミノシリケート源、
アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ源、及び
骨材を含む組成物の硬化体からなる、ジオポリマー硬化体。
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