以下では、図1を用いて、本実施形態に係る電力供給システム1について説明する。
電力供給システム1は、複数の戸建住宅(住宅H)からなる住宅街区T(住宅Hの集合体)に適用することを想定している。具体的には、住宅街区Tには、複数の(戸建)住宅Hとして、第一住宅H1、第二住宅H2、第三住宅H3及び第四住宅H4が設けられる。住宅街区Tにおいては、電力小売事業者が電力会社(系統電源S)から電力を一括購入し、当該購入した電力が各住宅Hに適宜供給(売却)される。
電力供給システム1は、電力小売事業者が電力会社から一括購入した電力等を、複数の住宅H(第一住宅H1から第四住宅H4)間で適宜供給(融通)するためのシステムである。電力供給システム1は、主としてセンサ部10、第一蓄電システム20、第二蓄電システム30、第三蓄電システム40、第四蓄電システム50及びEMS60を具備する。
複数の住宅H(第一住宅H1から第四住宅H4)は、人が居住する建物である。各住宅Hには適宜の電気製品が設けられ、電力が消費される。
また、各住宅Hは、系統電源Sと接続される。具体的には、各住宅Hは、上流側端部が系統電源Sと接続されると共に下流側端部が分岐して各住宅Hと接続された配電線Lを介して、当該系統電源Sと接続される。
センサ部10は、配電線Lを流通する電力を検出するものである。センサ部10は、第一センサ11、第二センサ12、第三センサ13及び第四センサ14を具備する。
第一センサ11、第二センサ12、第三センサ13及び第四センサ14は、それぞれ配置箇所を流通する電力を検出するものである。第一センサ11、第二センサ12、第三センサ13及び第四センサ14は、それぞれ検出結果に関する信号を出力可能に構成される。第一センサ11、第二センサ12、第三センサ13及び第四センサ14は、それぞれ所定の蓄電システムと対応するように設けられ、当該対応する蓄電システムのハイブリッドパワコンと電気的に接続される。
具体的には、第一センサ11は、後述する第一蓄電システム20のハイブリッドパワコン23と電気的に接続される。また、第二センサ12は、後述する第二蓄電システム30のハイブリッドパワコン33と電気的に接続される。また、第三センサ13は、後述する第三蓄電システム40のハイブリッドパワコン43と電気的に接続される。また、第四センサ14は、後述する第四蓄電システム50のハイブリッドパワコン53と電気的に接続される。
また、第一センサ11、第二センサ12、第三センサ13及び第四センサ14は、それぞれ配電線Lにおいて、前記対応する蓄電システムのハイブリッドパワコンが接続された連結点の直ぐ上流側に配置される。具体的には、第一センサ11、第二センサ12、第三センサ13及び第四センサ14は、それぞれ配電線Lにおいて、後述する第一連結点P1、第二連結点P2、第三連結点P3及び第四連結点P4の直ぐ上流側に配置される。
第一蓄電システム20、第二蓄電システム30、第三蓄電システム40及び第四蓄電システム50は、それぞれ配電線Lに接続される。より詳細には、第一蓄電システム20、第二蓄電システム30、第三蓄電システム40及び第四蓄電システム50は、配電線Lにおいて、各住宅H側から系統電源S側にかけて順に接続されることで、互いに直列に接続される。第一蓄電システム20、第二蓄電システム30、第三蓄電システム40及び第四蓄電システム50は、それぞれ第一住宅H1、第二住宅H2、第三住宅H3及び第四住宅H4の居住者に所有されている。具体的には、第一蓄電システム20は、第一住宅H1に設けられ、第一住宅H1の住人に所有されている。また、第二蓄電システム30は、第二住宅H2に設けられ、第二住宅H2の住人に所有されている。また、第三蓄電システム40は、第三住宅H3に設けられ、第三住宅H3の住人に所有されている。また、第四蓄電システム50は、第四住宅H4に設けられ、第四住宅H4の住人に所有されている。
第一蓄電システム20は、系統電源Sから購入した電力や太陽光を利用して発電された電力を蓄電したり、各住宅H等へと供給するものである。第一蓄電システム20は、太陽光発電部21、蓄電池22及びハイブリッドパワコン23を具備する。
太陽光発電部21は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部21は、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部21は、例えば、住宅の屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。太陽光発電部21は、後述するハイブリッドパワコン23を介して、配電線Lの中途部に設けられた第一連結点P1で当該配電線Lと接続される。
蓄電池22は、電力を充放電可能に構成されるものである。蓄電池22は、例えば、リチウムイオン電池により構成される。蓄電池22は、後述するハイブリッドパワコン23を介して太陽光発電部21と接続される。なお、本実施形態において、蓄電池22は、最大放電電力(単位時間当たりに放電可能な電力の最大値)が2000Wとなっている。
ハイブリッドパワコン23は、電力を適宜変換するもの(ハイブリッドパワーコンディショナ)である。ハイブリッドパワコン23は、太陽光発電部21で発電された電力及び系統電源Sからの電力を蓄電池22に充電可能に構成される。また、ハイブリッドパワコン23は、太陽光発電部21で発電された電力及び蓄電池22に充電されている電力を各住宅H等へと放電させる。また、ハイブリッドパワコン23は、太陽光発電部21及び蓄電池22の運転状態に関する情報を取得可能に構成される。このようなハイブリッドパワコン23は、第一連結点P1で配電線Lの中途部と接続される。
このように構成される第一蓄電システム20のハイブリッドパワコン23は、対応するセンサ(第一センサ11)から所定の信号が入力可能に構成され、当該信号に基づいてセンサの検出結果を取得可能に構成される。ハイブリッドパワコン23は、取得したセンサの検出結果等に基づいて、蓄電池22の放電電力を調整する負荷追従運転を行うことができる。
第二蓄電システム30は、ハイブリッドパワコン33が第一連結点P1よりも系統電源S側に設けられた第二連結点P2で配電線Lに接続される点を除いて、第一蓄電システム20と同様に構成される。具体的には、第二蓄電システム30の太陽光発電部31、蓄電池32及びハイブリッドパワコン33は、それぞれ第一蓄電システム20の太陽光発電部21、蓄電池22及びハイブリッドパワコン23に相当する。
第三蓄電システム40は、ハイブリッドパワコン43が第二連結点P2よりも系統電源S側に設けられた第三連結点P3で配電線Lに接続される点を除いて、第一蓄電システム20と同様に構成される。具体的には、第三蓄電システム40の太陽光発電部41、蓄電池42及びハイブリッドパワコン43は、それぞれ第一蓄電システム20の太陽光発電部21、蓄電池22及びハイブリッドパワコン23に相当する。
第四蓄電システム50は、ハイブリッドパワコン53が第三連結点P3よりも系統電源S側に設けられた第四連結点P4で配電線Lに接続される点を除いて、第一蓄電システム20と同様に構成される。具体的には、第四蓄電システム50の太陽光発電部51、蓄電池52及びハイブリッドパワコン53は、それぞれ第一蓄電システム20の太陽光発電部21、蓄電池22及びハイブリッドパワコン23に相当する。
EMS60は、電力供給システム1の動作を管理するエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)である。EMS60は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部及びタッチパネル等の入出力部等を具備し、所定の演算処理や記憶処理等を行うことができる。EMS60には、電力供給システム1の動作を制御する際に用いられる種々の情報やプログラム等が予め記憶される。
また、EMS60は、各蓄電システム20・30・40・50のハイブリッドパワコン23・33・43・53と電気的に接続される。EMS60は、所定の信号をハイブリッドパワコン23・33・43・53に出力することで、当該ハイブリッドパワコン23・33・43・53を介して蓄電池22・32・42・52に充放電の指示を出し、当該蓄電池22・32・42・52の充放電を許可することができる。また、EMS60は、所定の信号をハイブリッドパワコン23・33・43・53に出力することで、当該ハイブリッドパワコン23・33・43・53を介して蓄電池22・32・42・52に待機の指示を出し、当該蓄電池22・32・42・52の充放電を禁止することができる。
また、EMS60は、所定の信号をハイブリッドパワコン23・33・43・53に出力することで、蓄電池22・32・42・52の放電電力の上限値である放電上限値を設定することができる。例えば、蓄電池22の放電上限値を1500Wに設定した場合、当該蓄電池22は、最大放電電力が2000Wであるにも関わらず、最大で1500Wまでしか放電できなくなる。こうして、EMS60は、蓄電池22・32・42・52の放電電力を減少させることができる。
また、EMS60は、ハイブリッドパワコン23・33・43・53から所定の信号が入力可能に構成される。これにより、EMS60は、ハイブリッドパワコン23・33・43・53を介して太陽光発電部21・31・41・51の発電電力を検出することができる。
また、EMS60は、各住宅Hと電気的に接続される。EMS60は、各住宅Hから所定の信号が入力可能に構成される。これにより、EMS60は、各住宅Hの消費電力を取得することができる。
また、EMS60は、蓄電池22・32・42・52にそれぞれ放電優先順位を設定する制御を実行可能とされている。本実施形態において、放電優先順位とは、各蓄電システム20・30・40・50の中での蓄電池22・32・42・52の放電の優先順位である。
次に、上述の如く構成された電力供給システム1における、電力小売事業者による電力の売買の様子について簡単に説明する。
電力小売事業者は、電力会社(系統電源S)から一括購入した電力を、各住宅Hからの要求に応じて当該各住宅Hへと適宜売却する。各住宅Hの住人は、電力小売事業者を介して電力会社から購入した電力を使用することができる。また、電力小売事業者は、各蓄電システム20・30・40・50から放電された電力を購入し、当該電力を各住宅Hからの要求に応じて当該各住宅Hへと適宜売却する。電力小売事業者が売買する電力の価格は適宜設定される。
このように、電力小売事業者は、電力の売買によって利益を得ることができる。また、各住宅Hの住人も、各蓄電システム20・30・40・50の電力(すなわち、余剰電力)を電力小売事業者に売却することで利益を得ることができる。
以下では、EMS60によって行われる、各蓄電システム20・30・40・50の制御について説明する。なお、以下では、放電上限値が設定されていないものとして、各蓄電システム20・30・40・50の制御を説明する。
EMS60は、太陽光発電部21・31・41・51からの電力を、蓄電池22・32・42・52よりも優先的に各住宅Hへ供給する。具体的には、EMS60は、まず、太陽光発電部21・31・41・51からの電力を配電線Lを介して各住宅Hへ供給する。EMS60は、当該太陽光発電部21・31・41・51からの電力で各住宅Hの消費電力(消費電力の合計)を賄えない場合に、蓄電池22・32・42・52からの電力を各住宅Hへ供給する。このとき、EMS60は、放電優先順位が上位の蓄電池から順に放電させる。
前述の如く、放電優先順位とは、各蓄電システム20・30・40・50の中での蓄電池22・32・42・52の放電の優先順位である。EMS60は、ハイブリッドパワコン23・33・43・53を介して蓄電池22・32・42・52の前日の積算放電量をそれぞれ取得し、当該積算放電量が少ないものから順番に放電優先順位を設定する。こうして、EMS60は、蓄電池22・32・42・52の積算放電量が少ない蓄電システムが上位となるように、放電優先順位を設定する。EMS60は、このような放電優先順位の設定を、決まったタイミングで(例えば、0時になると)行うように構成されている。
EMS60は、こうして設定された放電優先順位が上位の(積算放電量が少ない)蓄電池から順に放電させる。具体的には、EMS60は、まず、ハイブリッドパワコンを介して放電優先順位が1位の蓄電池に対して放電指示を出し、当該蓄電池を放電させる。このとき、放電優先順位が1位の蓄電池は、負荷追従運転によって放電電力が調整される。
また、EMS60は、放電優先順位が1位の蓄電池を放電させても各住宅Hの消費電力を賄えない場合に、放電優先順位が2位の蓄電池を放電させる。このとき、放電優先順位が2位の蓄電池は、負荷追従運転によって放電電力が調整される。
このように、EMS60は、各住宅Hの消費電力が賄えない場合に、放電が開始された蓄電池よりも放電優先順位が1つ下位の蓄電池を放電させるという動作を、繰り返し行う。
これによれば、EMS60は、積算放電量が少ない(上位の)蓄電池が放電する機会を他の蓄電池よりも増やして、これらの蓄電池の積算放電量の均等化を図ることができる。なお、全ての蓄電池22・32・42・52を放電させても各住宅Hの消費電力が賄えない場合には、系統電源Sから不足する分の電力が購入される(系統電源Sから購入された電力が、各住宅Hへと供給される)。
また、各蓄電システム20・30・40・50のうち、最も下流側の第一蓄電システム20の蓄電池22を放電させると、第一センサ11だけではなく、当該第一センサ11の上流側に配置される第二センサ12、第三センサ13及び第四センサ14の検出結果の値も小さくなる。また、第二蓄電システム30の蓄電池32を放電させると、第二センサ12だけではなく、当該第二センサ12の上流側に配置される第三センサ13及び第四センサ14の検出結果の値も小さくなる。また、下流側の蓄電池は、上流側の蓄電池が最大放電電力(2000W)で放電しても各住宅Hの消費電力を賄えない場合に放電される。その結果、複数台の蓄電池を放電させた場合に、放電させた蓄電池の中で最も上流側の(系統電源Sに近い)蓄電池以外の蓄電池が最大放電電力(2000W)で放電し、最も上流側の蓄電池が最大放電電力未満の電力を放電することとなる(図7参照)。このように、複数台の蓄電池を放電させた場合、最も上流側の蓄電池の放電電力が他の蓄電池の放電電力よりも小さくなる。
また、電力供給システム1においては、各蓄電システム20・30・40・50から放電された電力を配電線Lを介して各住宅Hへ供給することで、当該各蓄電システム20・30・40・50を所有する住人(住宅H)だけでなく、その他の住人(住宅H)へも供給することとなる。すなわち、各蓄電システム20・30・40・50から放電された電力を複数の住宅H間で適宜融通することとなる。これにより、自分の住宅H(例えば、第一住宅H1)の消費電力が少なかったとしても、他の住宅H(第二住宅H2から第四住宅H4)の消費電力を賄うために自分の住宅Hに設置された蓄電池(蓄電池22)を放電させることができる。これによって、蓄電池22・32・42・52を放電させ易くすることができ、蓄電池22・32・42・52の放電機会を増やすことができる。
以下では、蓄電池22・32・42・52の放電電力と放電効率との関係について説明する。
蓄電池22・32・42・52は、放電時に(例えば、直流電力を交流電力に変換する際等に)電力の一部を損失することになる。この損失の程度を評価した放電効率が90%であれば、蓄電池22・32・42・52の充電電力に対して10%の損失が生じることになる。当該放電効率は、図2に示すように、蓄電池22・32・42・52の放電電力が小さくなるほど悪化する。なお、図2は、放電電力と放電効率との関係の一例を示すものであり、当該関係は、蓄電池22・32・42・52の種類に応じて異なるものとなる。
前述の如く、複数台の蓄電池を放電させた場合、放電させた蓄電池の中で最も上流側の蓄電池の放電電力が他の蓄電池の放電電力よりも小さくなる。このため、特段の処理を行わなければ、最も上流側の蓄電池の放電電力が小さくなり過ぎて、当該蓄電池の放電効率が悪化する可能性がある。図3は、その状態を示したものである。
図3に示す状態において、放電優先順位は、蓄電池52が1位、蓄電池42が2位、蓄電池32が3位、蓄電池22が4位、となっている。また、各住宅Hの消費電力の合計は、2400Wとなっている。また、図3においては、説明の便宜上、太陽光発電部21・31・41・51は発電していない(発電電力が0Wである)ものとする。
以上のような状態においては、放電優先順位が上位2台の蓄電池42・52を放電させなければ各住宅Hの消費電力の合計(2400W)を賄えないことから、EMS60は、2台の蓄電池42・52に放電指示を出す。その結果、下流側の蓄電池42は最大放電電力(2000W)で放電し、上流側の蓄電池52は400Wで放電することとなる。
図2に示すように、最大放電電力(2000W)で放電する蓄電池42は、放電効率が90%程度となる。よって、蓄電池42は、放電時に生じる損失が10%程度で済むことになる。一方、400Wで放電する蓄電池52は、放電効率が80%程度にまで悪化する。よって、蓄電池52は、放電時に生じる損失が20%程度にまで増える(最大放電電力で放電する場合と比較して10%程度増える)ことになる。
このように、電力供給システム1においては、下流側の蓄電池42を最大放電電力(2000W)で放電させてしまうと、各住宅Hの消費電力の合計によっては、最も上流側の蓄電池52の放電効率が悪化する可能性がある。そこで、本実施形態に係るEMS60は、図4に示すメインフローにより適宜放電上限値を設定し、放電効率が悪化するのを抑制している。
以下では、メインフローについて説明する。
メインフローは、放電上限値を設定する処理のメインとなるフローである。メインフローの処理は、決まったタイミングで(例えば、1分毎に)行われる。以下では、図4を用いて、メインフローの具体的な処理の内容について説明する。
まず、ステップS110において、EMS60は、総消費電力A及び太陽光総発電電力Bを取得する。なお、総消費電力Aは、各住宅Hの消費電力の合計である。EMS60は、第一住宅H1から第四住宅H4までからそれぞれ消費電力を取得してその結果を合計することで、総消費電力Aを取得する。また、太陽光総発電電力Bは、太陽光発電部21・31・41・51の発電電力の合計である。EMS60は、ハイブリッドパワコン23・33・43・53を介してそれぞれ太陽光発電部21・31・41・51の発電電力を取得し、その結果を合計することで、太陽光総発電電力Bを取得する。EMS60は、ステップS110の処理が終了すると、ステップS120へ移行する。
ステップS120において、EMS60は、総消費電力Aが太陽光総発電電力Bよりも大きいか否かを判断する。EMS60は、総消費電力Aが太陽光総発電電力Bよりも大きい場合に(ステップS120:YES)、ステップS150へ移行する。一方、EMS60は、総消費電力Aが太陽光総発電電力B以下である場合に(ステップS120:NO)、ステップS130へ移行する。
ステップS130において、EMS60は、充電する蓄電池の台数である充電指示台数Dを算出する。ステップS130においては、総消費電力Aが太陽光総発電電力B以下であることから、太陽光発電部21・31・41・51で発電した電力の合計が、各住宅Hの消費電力の合計に対して余剰している状態となっている。そこで、EMS60は、この余剰電力(B-A)を蓄電池22・32・42・52に充電するために、まず、余剰電力(B-A)によって、蓄電池22・32・42・52のうち何台の蓄電池を充電可能であるのかを以下の式(1)によって算出する。
D=(B-A)/C・・・(1)
ここで、上記式(1)において、Cは、蓄電池22・32・42・52の最大充電電力である。
なお、上記式(1)において、Dが整数とならない場合がある。この場合、EMS60は、Dの小数点以下を切り上げることにより、充電指示台数Dを算出する。また、上記式(1)において、Dが蓄電池22・32・42・52の総台数(「4」)を超える場合がある。この場合、EMS60は、充電指示台数Dに蓄電池22・32・42・52の総台数(「4」)を代入する。EMS60は、ステップS130の処理が終了すると、ステップS140へ移行する。
ステップS140において、EMS60は、D台の蓄電池に充電指示を出す。このとき、EMS60は、ハイブリッドパワコン23・33・43・53を介してそれぞれ蓄電池22・32・42・52の残量を取得し、残量が少ないものから順にD台の蓄電池に充電指示を出す。また、EMS60は、それ以外の蓄電池に待機指示を出す。EMS60は、ステップS140の処理が終了すると、メインフローの処理を終了する。
ステップS150において、EMS60は、放電する蓄電池の台数である放電指示台数Fを算出する。なお、放電指示台数Fは、放電上限値を設定せずに(図3に示すような状態で)蓄電池を放電させる場合において、何台の蓄電池が放電するのかを示す値である。EMS60は、以下の式(2)によって放電指示台数Fを算出する。
F=(A-B)/E・・・(2)
ここで、上記式(2)において、Eは、蓄電池22・32・42・52の最大放電電力(2000W)である。また、(A-B)は、総消費電力Aに対して太陽光総発電電力Bが不足する電力である。当該電力(A-B)は、蓄電池22・32・42・52から放電する必要がある電力となる。このため、以下においては、電力(A-B)を「必要総放電電力(A-B)」と称する。
なお、上記式(2)において、Fが整数とならない場合がある。この場合、EMS60は、Fの小数点以下を切り上げることにより、放電指示台数Fを算出する。また、上記式(2)において、Fが蓄電池22・32・42・52の総台数(「4」)を超える場合がある。この場合、EMS60は、放電指示台数Fに蓄電池22・32・42・52の総台数(「4」)を代入する。EMS60は、ステップS150の処理が終了すると、ステップS160へ移行する。
ステップS160において、EMS60は、放電指示台数Fが「1」であるか否かを判断する。EMS60は、放電指示台数Fが「1」である場合に(ステップS160:YES)、ステップS170へ移行する。一方、EMS60は、放電指示台数Fが「1」でない場合に(ステップS160:NO)、ステップS180へ移行する。
ステップS170において、EMS60は、放電優先順位が1位の蓄電池に放電指示を出すと共に、それ以外の蓄電池に待機指示を出す。また、EMS60は、放電優先順位が1位の蓄電池に放電上限値を設定しない。これにより、EMS60は、放電優先順位が1位の蓄電池のみを、最大放電電力E(2000W)まで放電可能な状態で放電させる。EMS60は、ステップS170の処理が終了すると、メインフローの処理を終了する。
ステップS180において、EMS60は、放電上限値を設定せずにF台の蓄電池を放電させた場合に、放電電力が放電基準値G1未満となる蓄電池があるか否かを判断する。なお、放電基準値G1は、放電上限値を設定するか否かを判断するための値である。放電基準値G1は、図2に示す放電電力と放電効率との関係に基づいて適宜設定される。図2においては、放電電力が1000Wから小さくなるにつれて、放電効率が急激に悪化する。また、放電電力が1000Wとなると、最大放電電力(2000W)で放電した場合に超えていた放電効率90%を下回ることとなる。そこで、本実施形態においては、放電基準値G1に1000W(これ以上放電電力が小さくなると放電効率が急激に悪化する値、所定の放電効率以下となる値)が設定されている。
前述の如く、複数台の蓄電池を放電させた場合、放電させた蓄電池の中で最も上流側の蓄電池以外(F-1台)の蓄電池が最大放電電力E(2000W)で放電し、最も上流側の蓄電池が最大放電電力未満の電力(最も少ない電力)を放電することとなる。そこで、EMS60は、図4に示すステップS180において、最も上流側の蓄電池の放電電力が放電基準値G1未満であるかを、以下の式(3)によって判断する。
(A-B-(E×(F-1)))<G1・・・(3)
EMS60は、上記式(3)が成立する場合に放電電力が放電基準値G1未満となる蓄電池があると判断し(ステップS180:YES)、ステップS190へ移行する。一方、EMS60は、上記式(3)が成立しない場合に放電電力が放電基準値G1未満となる蓄電池がないと判断し(ステップS180:NO)、ステップS210へ移行する。
ステップS190において、EMS60は、放電基準値Gに放電基準値G1の値を代入する。なお、放電基準値Gは、後述するステップS200において、放電上限値の最低ラインを規定するための値である。EMS60は、ステップS190の処理が終了すると、ステップS200へ移行する。
ステップS200において、EMS60は、放電上限値つき放電指示のサブルーチンを実行する。EMS60は、前記サブルーチンにおいて、放電基準値G以上となるように(放電基準値Gを最低ラインとして)放電上限値を設定して蓄電池を放電させることとなる。なお、前記サブルーチンについては、後述する。EMS60は、ステップS200の処理が終了すると、メインフローの処理を終了する。
ステップS210において、EMS60は、放電電力が放電基準値G2未満となる蓄電池があるか否かを判断する。なお、放電基準値G2は、放電上限値を設定するか否かを判断するための値である。放電基準値G2は、図2に示す放電電力と放電効率との関係に基づいて適宜設定される。また、放電基準値G2には、放電基準値G1よりも大きく、かつ、最大放電電力E未満の値が設定される。図2においては、放電電力が2000Wから1500Wまでの間は、放電効率があまり変わらない。一方、放電効率が1500Wから1000Wまでの間は、放電効率が徐々に悪化する。そこで、本実施形態においては、放電基準値G2に放電効率が徐々に悪化し始める1500Wが設定されている。当該放電基準値G2は。最大放電電力Eと放電基準値G1とのちょうど中間の値となる。
ステップS210において、EMS60は、上記式(3)の右辺を放電基準値G2に変更した以下の式(4)によって、放電電力が放電基準値G2未満となる蓄電池があるか否かを判断する。
(A-B-(E×(F-1)))<G2・・・(4)
EMS60は、上記式(4)が成立する場合に(ステップS210:YES)、ステップS220へ移行する。一方、EMS60は、上記式(4)が成立しない場合に(ステップS210:NO)、ステップS230へ移行する。
ステップS220において、EMS60は、放電基準値Gに放電基準値G2の値を代入する。EMS60は、ステップS220の処理が終了すると、ステップS200へ移行する。
ステップS230において、EMS60は、F台の蓄電池に放電指示を出す。このとき、EMS60は、放電優先順位が上位のF台(1位からF位まで)の蓄電池に放電指示を出すと共に、それ以外の蓄電池に待機指示を出す。また、EMS60は、F台の蓄電池に放電上限値を設定しない。これにより、EMS60は、放電優先順位が1位からF位までの蓄電池を、最大放電電力E(2000W)まで放電可能な状態で放電させる。EMS60は、ステップS220の処理が終了すると、メインフローの処理を終了する。
前述の如く、放電電力が2000Wから1500Wまでの間は、放電効率があまり変わらない。このため、最も上流側の蓄電池の放電電力が放電基準値G2(1500W)以上である場合(ステップS210:NO)、蓄電池をそのまま放電させても(放電上限値を設定しなくても)放電効率はほとんど悪化しない。そこで、EMS60は、このような場合には、最大放電電力E(2000W)まで放電可能な状態で蓄電池を放電させる。
次に、図5を用いて、放電上限値つき放電指示のサブルーチン(図4のステップS200)の処理について説明する。
放電上限値つき放電指示のサブルーチン(以下、「上限指示処理」と称する)は、放電上限値H1~Fを設定すると共に、蓄電池に放電指示を出す処理である。なお、放電上限値Hの添字は放電優先順位に対応している。具体的には、放電上限値H1は放電優先順位が1位の蓄電池の放電上限値を示すものであり、放電上限値HFは放電優先順位がF位の蓄電池の放電上限値を示すものである。上限指示処理では、メインフローで算出(代入)した放電指示台数F及び放電基準値G等を用いて放電上限値H1~Fを算出し、蓄電池に対して適宜算出した放電上限値H1~Fを設定するようにしている。
なお、「放電上限値H1~Fを算出する」とは、EMS60の前記演算処理部で計算して得られた放電上限値H1~Fの値を、EMS60の前記記憶部に確保された領域に格納することを指す。また、「放電上限値H1~Fを設定する」とは、放電上限値H1~Fの値に関する信号をハイブリッドパワコン23・33・43・53に出力することで、放電優先順位が1位からF位までの蓄電池に対して、放電上限値H1~Fよりも大きな放電電力で放電しないように指示を出すことを指す。
以下では、上限指示処理の具体的な処理の内容について説明する。
まず、ステップS310において、EMS60は、放電上限値HF(放電する蓄電池の中で最下位の蓄電池の放電上限値)に放電基準値Gの値を代入する。これにより、放電上限値HFに1000W又は1500Wが代入されることとなる。具体的には、ステップS190から上限指示処理へ移行した場合、放電上限値HFに1000Wが代入されることとなる。また、ステップS220から上限指示処理へ移行した場合、放電上限値HFに1500Wが代入されることとなる。EMS60は、ステップS310の処理が終了すると、ステップS320へ移行する。
ステップS320において、EMS60は、分配放電電力l0を算出する。なお、分配放電電力lとは、放電上限値H1~F-1を算出するために用いられる値である。分配放電電力lは、後述するステップS330からS370の処理において、放電優先順位が1位の蓄電池から順番に割り振られる。例えば、分配放電電力lが放電優先順位が1位から3位の蓄電池に割り振られる場合、まず、分配放電電力l(初期値)の一部が放電優先順位が1位の蓄電池に割り振られ、残った電力が放電優先順位が2位の蓄電池に割り振られ、さらに残った電力が放電優先順位が3位の蓄電池に割り振られる。分配放電電力l0は、このような割り振りにおける分配放電電力lの初期値である。本実施形態に係る分配放電電力l0は、必要総放電電力(A-B)に対して、F台の蓄電池が放電基準値Gで放電したと仮定した場合に不足する電力である。EMS60は、以下の式(5)によって分配放電電力l0を算出する。EMS60は、ステップS320の処理が終了すると、ステップS330へ移行する。
l0=A-B-G×F・・・(5)
EMS60は、ステップS330へ移行すると、当該ステップS330からステップS370の処理を繰り返し行う。具体的には、EMS60は、ステップS320からステップS330へ移行すると、まず、変数nに「1」を代入し、ステップS330~S370の処理を行う。そして、EMS60は、変数nをインクリメントして、再びステップS330~S370の処理を行う。EMS60は、このような処理を、変数nが「F-1」となるまで繰り返す。なお、変数nは、ステップS330からステップS370までの繰り返し処理において、放電優先順位の値を示すものである。本実施形態において放電指示台数Fは最大で「4」となることから、変数nは、「1」から「3」までの範囲の値となる。
ステップS330において、EMS60は、以下の式(6)を用いて、放電上限値Hnを算出する。
Hn=G+ln-1×2/(F-n+1)・・・(6)
なお、上記式(6)において、右辺の第2項(ln-1×2/(F-n+1))は、放電優先順位がn位の蓄電池に割り振る電力を示すものである。分配放電電力ln-1の少なくとも一部は、当該第2項によりn位の蓄電池に割り振られる。また、F-1位の蓄電池の放電上限値HF-1を算出する(変数nが「F-1」である)場合、分母(F-n+1)は「2」となる。このため、F-1位の(最後に割り振られる)蓄電池に分配放電電力ln-1が全て割り振られることとなる。こうして、1位からF-1位の蓄電池に、分配放電電力l0を全て割り振ることができる。上記式(6)においては、この割り振られた値(分配値)を放電基準値Gに加えることで、放電上限値Hnを算出している。これにより、EMS60は、放電上限値Hnが放電基準値G以上の値となるようにしている。また、EMS60は、分配放電電力l0の電力を放電優先順位が上位の蓄電池に優先的に割り振るようにしている。
具体的には、変数nが「1」から「3」までの範囲の値となることから、上記式(6)では、変数nの値に応じて、分配放電電力l0~2の値が用いられる。前述の如く、分配放電電力l0は分配放電電力lの初期値である。また、分配放電電力l1は放電優先順位が1位の蓄電池に分配放電電力l0を割り振って残った電力を示し、分配放電電力l2は放電優先順位が2位の蓄電池に分配放電電力l1を割り振って残った電力を示している。よって、分配放電電力lは、添字の数字(変数n)が小さいほど、その値が大きくなる。
このため、放電優先順位が上位である(変数nが小さい)ほど、上記式(6)の右辺の第2項において、分子(ln-1×2)は大きくなる。なお、前記第2項の分母(F-n+1)も放電優先順位が上位であるほど大きくなるものの、放電優先順位(変数n)に応じた前記第2項(ln-1×2/(F-n+1))の計算結果は、放電優先順位が上位であるほど大きくなる。このような上記式(6)の第2項により、放電優先順位が上位の蓄電池に優先的に(より多くの電力を)割り振っている。
EMS60は、ステップS330の処理が終了すると、ステップS340の処理へ移行する。
ステップS340において、EMS60は、放電上限値Hnが最大放電電力E(2000W)よりも大きいか否かを判断する。EMS60は、放電上限値Hnが最大放電電力Eよりも大きい場合に(ステップS340:YES)、ステップS350へ移行する。一方、EMS60は、放電上限値Hnが最大放電電力E以下である場合に(ステップS340:NO)、ステップS360へ移行する。
ステップS350において、EMS60は、放電上限値Hnを最大放電電力E(2000W)に補正する。これにより、EMS60は、放電上限値Hnの値を適切な値にする(最大放電電力Eを超えないようにする)ことができる。EMS60は、ステップS350の処理が終了すると、ステップS360の処理へ移行する。
ステップS360において、EMS60は、変数nが「F-1」でないかを判断する。EMS60は、変数nが「F-1」でない場合に(ステップS360:YES)、ステップS370へ移行する。一方、EMS60は、変数nが「F-1」である場合に(ステップS360:NO)、ステップS330~S370の繰り返しの処理を抜け出してステップS380へ移行する。
ステップS370において、EMS60は、分配放電電力ln(放電優先順位がn位の蓄電池に分配放電電力ln-1を割り振って残った電力)を算出する。このとき、EMS60は、以下の式(7)を用いて、分配放電電力lnを算出する。
ln=ln-1-(Hn-G)・・・(7)
ここで、上記式(7)において、(Hn-G)は、分配放電電力ln-1を放電上限値Hnに割り振った値(上記式(6)の第2項)である。
EMS60は、このようなステップS330からステップS370を変数nが「F-1」となるまで繰り返すことで、放電上限値H1~Fのうち、ステップS310で算出(放電基準値Gの値が代入)されなかった放電上限値HF以外の放電上限値H1~F-1を算出する。こうして、EMS60は、F台の蓄電池の放電上限値H1~Fを算出する。
ステップS380において、EMS60は、F台の蓄電池に放電指示を出す。このとき、EMS60は、放電優先順位が上位のF台(1位からF位まで)の蓄電池に放電指示を出すと共に、それ以外の蓄電池に待機指示を出す。また、EMS60は、放電指示を出す蓄電池の中で、最も上流側の蓄電池を除く蓄電池に対して、放電上限値を設定する(放電上限値の指示を出す)。これにより、EMS60は、放電優先順位が1位からF位までの蓄電池のうち、最も上流側の蓄電池を除く蓄電池を、放電上限値まで放電可能な状態で放電させる。また、EMS60は、最も上流側の蓄電池を最大放電電力E(2000W)まで放電可能な状態で放電させる。EMS60は、ステップS380の処理が終了すると、上限指示処理の処理を終了する。
次に、メインフロー及び上限指示処理の具体例について説明する。
以下では、総消費電力Aが異なる2つのケースC1・C2に分けて具体例を説明する。まず、図3及び図6を用いて、総消費電力Aが2400WであるケースC1を例に挙げて具体例を説明する。なお、図3及び図6においては、説明の便宜上、太陽光発電部21・31・41・51が発電していない(太陽光総発電電力Bが0Wである)ものとする。
図3は、メインフロー及び上限指示処理が行われる前の状態を示している。図3に示す状態において、放電優先順位は、蓄電池52が1位、蓄電池42が2位、蓄電池32が3位、蓄電池22が4位となっている。また、放電優先順位が上位2台の蓄電池42・52が放電しており、そのうち、下流側の蓄電池42の放電電力が2000W(最大放電電力E)、上流側の蓄電池52の放電電力が400W(放電効率の悪い状態)となっている。
以上のような状態でメインフローが行われると、EMS60は、総消費電力A(2400W)が太陽光総発電電力B(0W)よりも大きいと判断し(ステップS120:YES)、上記式(2)に値を代入して商(「1.2」)を算出する(以下の数式参照)。
F=(2400W-0W)/2000W=1.2
そして、EMS60は、算出した商(「1.2」)の小数点以下を切り上げて、放電指示台数F(「2」)を算出する(ステップS150)。その後、EMS60は、上記式(3)に値を代入して放電電力が放電基準値G1未満となる蓄電池があると判断する(ステップS160:NO、ステップS180:YES、以下の数式参照)。
(2400W-0W-(2000W×(2-1)))<1000W
400W<1000W
この場合、EMS60は、放電基準値Gに放電基準値G1の値(1000W)を代入し、上限指示処理を実行する(ステップS190・S200)。
EMS60は、上限指示処理において、まず、放電優先順位が2位(F位)の蓄電池42の放電上限値H2に放電基準値G1の値(1000W)を代入する(ステップS310)。そして、EMS60は、上記式(5)に値を代入して分配放電電力l0(400W)を算出する(ステップS320、以下の数式参照)。
l0=2400W-0W-1000W×2
=400W
そして、EMS60は、上記式(6)に値を代入して放電上限値H1(1400W)を算出する(ステップS330、以下の数式参照)。
H1=1000W+400W×2/(2-1+1)
=1000W+400W×2/2
=1400W
その後、EMS60は、放電上限値H1(1400W)が最大放電電力E(2000W)以下であり(ステップS340:NO)、また、変数n(「1」)がF-1(「1」)であることから(ステップS360:NO)、放電優先順位が1位及び2位の蓄電池42・52に対して放電指示を出す(ステップS380)。また、EMS60は、その他の蓄電池22・32に待機指示を出す。また、EMS60は、蓄電池42・52のうち、下流側(放電優先順位が2位)の蓄電池42に、ステップS310で最初に算出(放電基準値Gの値を代入)した放電上限値H2(1000W)を設定する。
図6は、図3に示す状態からメインフロー及び上限指示処理が行われた(放電上限値H2が設定された)後の状態を示す図である。なお、図6においては、放電指示が出された蓄電池42・52を実線で、そのうち、放電上限値H2(1000W)が設定された蓄電池42を太い実線で示している。また、待機指示が出された蓄電池22・32を二点鎖線で示している。また、図6の右下に示す表のうち、「分配なし」は、放電上限値H2を設定しない場合(図3の状態)の放電電力を示している。また、図6の右下に示す表のうち、「分配あり」は、放電上限値H2を設定した場合の放電電力を示している。
蓄電池42は、放電上限値H2(1000W)が設定されたことにより、2000Wから1000Wに放電電力が減少している。これにより、上流側の蓄電池52は、各住宅Hの消費電力の合計(2400W)に対して不足する残りの1400Wの電力を放電することとなる。
このような構成によれば、下流側の蓄電池42の放電電力を減少させた分(1000W)だけ、上流側の蓄電池52の放電電力を増やすことができる(図6の右下に示す表の「蓄電池52(1位)」参照)。これにより、蓄電池52の放電電力を400Wから1400Wに増やして、放電効率を80%から90%程度にまで増やすことができる。これによれば、蓄電池52の放電効率の悪化を抑制することができる。これによって、電力の損失が増えるのを抑制し、電力を有効に活用することができる。
また、図6に示す蓄電池42は、放電上限値H2の設定前の状態と比較して、放電電力が減っているものの、依然として放電効率が大きく悪化しない1000Wで放電している(図6の右下に示す表の「蓄電池42(2位)」参照)。これにより、EMS60は、蓄電池42(放電電力を減少させる蓄電池)の放電電力を必要以上に減少させないようにして、放電効率の悪化を抑制することができる。これによって、放電上限値H2を設定したことによって生じる蓄電池42の放電効率の悪化の影響を緩和することができる。また、放電する全ての蓄電池42・52を、放電効率があまり悪化しない状態(1000W以上)で放電させることができる。
また、EMS60は、上限指示処理(ステップS330)において、上流側の蓄電池52の放電上限値H1(1400W)を算出しているものの、当該蓄電池52に対して当該放電上限値H1を設定していない。このため、蓄電池52は放電上限値H1よりも高い電力を放電することができる。このような構成によれば、図6に示す状態から各住宅Hの消費電力の合計が増えたとしても(例えば、2400Wから3000Wに増えたとしても)、蓄電池52の放電電力を増やして各住宅Hの消費電力の急増に対応することができる。
次に、図7及び図8を用いて、総消費電力Aが5100WであるケースC2を例に挙げて具体例を説明する。なお、図7及び図8においては、説明の便宜上、太陽光発電部21・31・41・51が発電していない(太陽光総発電電力Bが0Wである)ものとする。
図7は、メインフロー及び上限指示処理が行われる前の状態を示している。図7に示す状態において、放電優先順位は、蓄電池32が1位、蓄電池22が2位、蓄電池42が3位、蓄電池52が4位となっている。また、放電優先順位が上位3台の蓄電池22・32・42が放電しており、そのうち、下流側の2台の蓄電池22・32の放電電力が2000W(最大放電電力E)、最も上流側の蓄電池42の放電電力が1100Wとなっている。
以上のような状態でメインフローが行われると、EMS60は、放電指示台数F(「3」)を算出する(ステップS110、ステップS120:YES、ステップS150)。そして、EMS60は、上記式(4)を用いて(1100W<1500W)、放電電力が放電基準値G2未満となる蓄電池があると判断する(ステップS160:NO、ステップS180:NO、ステップS210:YES)。この場合、EMS60は、放電基準値Gに放電基準値G2の値(1500W)を代入し、上限指示処理を実行する(ステップS220・S200)。
EMS60は、上限指示処理において、まず、放電優先順位が3位(F位)の蓄電池42の放電上限値H3に放電基準値G2の値(1500W)を代入する(ステップS310)。そして、EMS60は、上記式(5)を用いて(5100W-0W-1500W×3台)、分配放電電力l0(600W)を算出する(ステップS320)。
そして、EMS60は、上記式(6)を用いて(1500W+600W×2/(3-1+1))、放電優先順位が1位の蓄電池32の放電上限値H1(1900W)を算出する(ステップS330)。その後、EMS60は、上記式(7)を用いて(600W-(1900W-1500W))、分配放電電力l2(200W)を算出する(ステップS340:NO、ステップS360:YES、ステップS370)。
EMS60は、変数nをインクリメントし、上記式(6)を用いて(1500W+200W×2/(3-2+1))、放電優先順位が2位の蓄電池22の放電上限値H2(1700W)を算出する(ステップS330)。そして、EMS60は、放電優先順位が1位から3位の蓄電池22・32・42に対して放電指示を出す(ステップS340:NO、ステップS360:NO、ステップS380)。また、EMS60は、その他の蓄電池52に待機指示を出す。また、EMS60は、蓄電池22・32・42のうち、下流側の2台の蓄電池22・32に放電上限値H1(1900W)・H2(1700W)を設定する。
図8は、図7に示す状態からメインフロー及び上限指示処理が行われた(放電上限値H1・H2が設定された)後の状態を示す図である。なお、図8においては、放電指示が出された蓄電池22・32・42を実線で、そのうち、放電上限値H1・H2が設定された蓄電池22・32を太い実線で示している。また、待機指示が出された蓄電池52を二点鎖線で示している。また、図8の右下に示す表のうち、「分配なし」は、放電上限値H1・H2を設定しない場合(図7の状態)の放電電力を示している。また、図8の右下に示す表のうち、「分配あり」は、放電上限値H1・H2を設定した場合の放電電力を示している。
蓄電池22は、放電上限値H2(1700W)が設定されたことにより、2000Wから1700Wに放電電力が減少している。また、蓄電池32も、蓄電池22と同様に、放電上限値H1(1900W)が設定されたことにより、2000Wから1900Wに放電電力が減少している。これにより、放電する蓄電池22・32・42の中で最も上流側の蓄電池42は、各住宅Hの消費電力の合計(5100W)に対して不足する残りの1500Wの電力を放電することとなる。
このように、EMS60は、放電する蓄電池22・32・42の中で最も上流側の蓄電池42の放電電力がある程度大きい場合に(1000W以上1500W未満、図7参照)、放電基準値Gを放電基準値G1(1000W)ではなく放電基準値G2(1500W)にしている。このような構成によれば、放電基準値G(放電上限値の最低ライン)を放電基準値G1から放電基準値G2へと引き上げることができるため、放電上限値H1・2が設定された蓄電池22・32の放電電力の減少量をより小さくすることができる。これによって、放電上限値H1・2を設定したことによって生じる蓄電池22・32(放電電力が減少する蓄電池)の放電効率の悪化の影響を効果的に緩和することができる。
ここで、図8に示す状態においては、放電優先順位が1位の蓄電池32が2位の蓄電池22よりも上流側に位置していることから、通常は(放電上限値H1・H2を設定しなければ)、放電優先順位が下位の蓄電池22の方が優先的に放電されてしまう。また、3台以上の蓄電池が放電する場合、蓄電池22・32は、それぞれ最大放電電力E(2000W)で放電してしまう。このように、蓄電池22・32・42・52は、上流及び下流の関係によっては、放電優先順位が上位であったとしても、下位の蓄電池よりも放電電力を大きくすることができない場合がある。
そこで、本実施形態では、放電優先順位が1位の蓄電池32の放電上限値H1(1900W)を2位の蓄電池22の放電上限値H2(1700W)よりも高くしている。これにより、上流と下流との関係に関わらず、放電優先順位が上位の蓄電池32の放電電力を下位の蓄電池22の放電電力よりも大きくすることができる。これにより、放電優先順位が上位の蓄電池32を優先的に放電させることができる。
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1は、各住宅H(負荷)へ電力を放電可能な複数の蓄電池22・32・42・52と、前記蓄電池22・32・42・52の放電を制御するEMS60(制御部)と、を具備し、前記EMS60は、放電する2台以上の蓄電池22・32・42・52のうち、一部の前記蓄電池22・32・42・52の放電電力が、前記蓄電池22・32・42・52の放電効率を考慮して設定された放電基準値G1・G2(基準値)未満である場合に(ステップS180:NO、ステップS210:NO)、前記一部の蓄電池を除く前記蓄電池の放電電力を減少させる(ステップS190・S200、ステップS220・S200)ものである。
このように構成することにより、放電効率が良好な蓄電池(「前記一部の蓄電池を除く前記蓄電池」)の放電電力を減少させた分だけ、放電効率が悪い蓄電池(「一部の蓄電池」)の放電電力を増大させることができる。これにより、蓄電池の放電効率が悪化するのを抑制することができる。
また、前記EMS60は、前記蓄電池22・32・42・52の放電電力の上限値である放電上限値H1~4を設定することで、前記放電電力を減少させるものであり、前記放電基準値G1・G2以上、かつ、前記蓄電池22・32・42・52の最大放電電力E未満の値となるように、前記放電上限値H1~4を設定する(ステップS310~S370)ものである。
このように構成することにより、放電上限値を設定した蓄電池(例えば、放電上限値H1を設定した蓄電池22)の放電電力の減少量をある程度の範囲に留めることができる。このため、放電上限値を設定することによって生じる、当該蓄電池(「前記一部の蓄電池を除く前記蓄電池」)の放電効率の悪化の影響を緩和することができる。
また、前記基準値には、値が互いに異なる複数の放電基準値G1・G2が含まれ、前記EMS60は、前記一部の蓄電池の放電電力と前記複数の放電基準値G1・G2とを比較して、当該放電電力以上、かつ、最も当該放電電力に近い放電基準値以上の値となるように、前記放電上限値を設定する(ステップS190・S200、ステップS210・S200)ものである。
このように構成することにより、一部の蓄電池の放電電力に応じて、放電上限値H1~4の値を高くすることができる。これにより、放電上限値を設定した蓄電池の放電電力の減少量を効果的に小さくすることができる。このため、放電上限値を設定することによって生じる、当該蓄電池(前記「一部の蓄電池を除く前記蓄電池」)の放電効率の悪化の影響を緩和することができる。
また、前記蓄電池22・32・42・52には放電優先順位(放電に関する優先順位)が設定され、前記EMS60は、前記放電優先順位が高い蓄電池22・32・42・52ほど前記放電上限値H1~4が高くなるように、前記放電上限値H1~4を設定する(ステップS310~S380)ものである。
このように構成することにより、放電優先順位に応じて放電上限値H1~4を最適なものにすることができる。
また、前記EMS60は、前記放電指示台数Fと同一台数の前記蓄電池22・32・42・52が前記放電基準値G(G1・G2)と同一の放電電力で放電したと仮定した場合に、前記各住宅Hに対して不足する分配放電電力l0を算出し(ステップS320)、前記分配放電電力l0の電力を、前記優先順位が高い蓄電池22・32・42・52に優先的に分配した値である分配値(ln-1×2/(F-n+1))を算出し、前記放電基準値G(G1・G2)と前記分配値とを合算することで前記放電上限値H1~4を算出する(ステップS330~S370)ものである。
このように構成することにより、放電優先順位に応じた放電上限値H1~4の算出を簡単に行うことができる。
また、前記複数の蓄電池22・32・42・52は、系統電源Sと前記各住宅Hとを結ぶ配電線L(電力の供給経路)において互いに直列に接続され、前記EMS60は、放電する前記2台以上の蓄電池22・32・42・52の中で最も前記系統電源Sに近い(上流側の)前記蓄電池に対して、前記放電上限値H1~4を設定しない(ステップS380)ものである。
このように構成することにより、各住宅Hの消費電力の急増に対応することができる。
なお、本実施形態に係るEMS60は、本発明に係る制御部の実施の一形態である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態では、電力供給システム1は、住宅街区Tに適用されるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、集合住宅やオフィス等に適用されるものであってもよい。
また、本実施形態において各住宅Hの戸数は、4戸であるものとしたが、これに限定されるものではなく、任意の戸数とすることができる。
また、本実施形態において蓄電池22・32・42・52の台数は、4台であるものとしたが、これに限定されるものではなく、2台以上の任意の台数とすることができる。
また、本実施形態において、最大放電電力Eは、2000Wであるものとしたが、この値は一例であって、2000W以外の値であってもよい。
また、蓄電池22・32・42・52の最大放電電力は、全て同一であるものとしたが、所有する住宅の規模(例えば、建築面積や延床面積)等に応じて互いに異なるものであってもよい。この場合、EMS60は、蓄電池22・32・42・52の最大放電電力及び放電効率を個別に考慮して、メインフローの処理を行えばよい。
具体的には、例えば、EMS60は、放電指示台数Fの算出(ステップS150)において、放電優先順位が1位の蓄電池の最大放電電力と、必要総放電電力(A-B)と比較する。仮に、最大放電電力が必要総放電電力(A-B)未満であれば、EMS60は、当該最大放電電力に放電優先順位が1つ下(2位)の蓄電池の最大放電電力を加えて、必要総放電電力(A-B)と比較する。EMS60は、このような加算と比較とを繰り返し、何台の蓄電池の最大放電電力を合計すれば、必要総放電電力(A-B)以上となるのかを判断する。そして、EMS60は、当該判断結果により放電指示台数Fを算出すればよい。
また、EMS60は、放電基準値未満の蓄電池があるか否かの判断(ステップS180・S210)において、蓄電池22・32・42・52毎に放電効率を考慮して放電基準値を設定する。そして、EMS60は、放電する蓄電池の中で最も上流側の蓄電池の放電電力を算出し、その算出結果が当該蓄電池に対応する放電基準値未満であるかを判断すればよい。
また、蓄電池22・32・42・52(第一蓄電システム20から第四蓄電システム50)は、互いに直列に接続されるものとしたが、蓄電池22・32・42・52の放電電力と放電効率との関係が互いに異なっているのであれば、互いに並列に接続されていてもよい。具体的には、並列に接続された蓄電池22・32・42・52は互いに同一の放電電力で放電する。しかし、蓄電池22・32・42・52の放電電力と放電効率との関係が互いに異なっている場合、同一の放電電力で放電したとしても、これらの蓄電池22・32・42・52の放電効率が互いに異なることとなり、一部の蓄電池の放電効率が他の蓄電池と比べて極端に悪くなる場合がある。このような場合においては、放電上限値H1~4の設定により放電効率の悪化を抑制可能であるため、蓄電池22・32・42・52は互いに並列に接続されていてもよい。
また、各蓄電システム20・30・40・50は、太陽光を利用して発電する太陽光発電部21・31・41・51を具備するものとしたが、太陽光以外の自然エネルギーを利用して発電する装置(風力発電や水力発電)を具備していてもよい。
また、電力供給システム1は、各住宅Hへ電力を供給する機器として、少なくとも蓄電池22・32・42・52を具備していればよく、必ずしも太陽光発電部21・31・41・51を具備する必要はない。
また、本実施形態においては、EMS60によって蓄電池22・32・42・52の充放電を制御するものとしたが、蓄電池22・32・42・52を制御する機器はEMS60に限定されるものではなく、他の機器(例えば、ハイブリッドパワコン23・33・43・53等)であってもよい。
また、EMS60は、太陽光発電部21・31・41・51からの電力が余剰した場合に蓄電池22・32・42・52の充電を行うものとしたが(ステップS120:NO、ステップS130・S140)、これに限定されるものではなく、例えば、余剰した電力を逆潮流させてもよい。この場合、蓄電池22・32・42・52は、太陽光発電部21・31・41・51からの電力を充電するのではなく、系統電源Sからの電力を適宜のタイミングで(例えば、深夜の時間帯等に)充電すればよい。
また、EMS60は、ステップS120において、総消費電力Aと太陽光総発電電力Bとを用いて、太陽光発電部21・31・41・51からの電力が余剰しているのかを判断したが、当該判断手法は、本実施形態に限定されるものではない。EMS60は、例えば、センサ部10の第四センサ14(センサ部10のうち、最も上流側に配置されるセンサ)の検出結果に基づいて、太陽光発電部21・31・41・51からの電力が余剰しているのかを判断してもよい。
また、本実施形態において、放電基準値G1は、1000Wであるものとしたが、放電基準値G1の値はこれに限定されるものではなく、蓄電池22・32・42・52の放電電力と放電効率との関係に応じて適宜設定可能である。なお、放電基準値G1(最初に放電電力と比較する値)は、ある程度小さい値、具体的には最大放電電力Eの半分以下の値であることが望ましい。また、放電基準値G2は、1500Wであるものとしたが、放電基準値G2の値は放電基準値G1よりも大きく最大放電電力E(2000W)未満であれば、これに限定されるものではない。なお、放電基準値G2は、ある程度小さい値、具体的には最大放電電力Eと放電基準値G1(1段階前の放電基準値)とを合算した値の半分以下の値であることが望ましい。
また、本実施形態においては、放電基準値を2つ設定したが(放電基準値G1・G2)、放電基準値を設定する個数はこれに限定されるものではなく、1つや3つ以上設定してもよい。
また、EMS60は、放電指示台数Fが「1」の場合に(ステップS160:YES)、放電優先順位が1位の蓄電池に放電指示を出すものとしたが、これに限定されるものではなく、放電効率を考慮して、蓄電池の放電を適宜制御してもよい。具体的には、EMS60は、蓄電池の放電電力が放電基準値G1以上である場合にのみ蓄電池に放電指示を出してもよい。このような構成によれば、蓄電池を1台放電させる場合に、当該蓄電池の放電効率が悪化するのを抑制することができる。
また、分配放電電力lを割り振る手法は、本実施形態(上記式(6))に限定されるものではなく、他の手法によって割り振ってもよい。また、分配放電電力lは、必ずしも放電優先順位が上位の蓄電池に優先的に割り振られる必要はなく、放電優先順位に関わらず、放電する蓄電池に均等に割り振られてもよい。