以下では、本発明の第一実施形態に係る電力供給システム1について説明する。
図1に示す電力供給システム1は、所定の事業者(アグリゲータ)によりエネルギー管理が行われる所定の地域(エリア)に適用される。アグリゲータは、高圧一括受電を行って、受けた電力を前記所定の地域における住宅や商業施設等の種々の需要家に供給することで、一括したエネルギー管理を行っている。なお以下では、本実施形態に係る電力供給システム1が適用された前記所定の地域を「一括受電エリアA」と称する。
一括受電エリアAには、複数の住宅Hの集合体であって、当該複数の住宅H間で互いにエネルギー(主に電力)を融通するグループ(以下では「住宅群A1」と称する)が設けられる。住宅群A1においては、使用される電力がアグリゲータから各住宅Hへ売電される。また、住宅群A1で余剰した電力をアグリゲータへ売電することもできる。
なお、本実施形態においては、住宅群A1に3つの住宅Hが設けられるものとする。各住宅Hには、電力を消費する電気機器(住宅負荷HL)が設けられる。住宅負荷HLは、系統電源Kと接続される。
また、一括受電エリアAには、住宅群A1に含まれない商業施設Sや図示せぬ会社や病院等が設けられる。以下では、前記商業施設Sや図示せぬ会社や病院等の、住宅群A1に含まれないグループを「非住宅群A2」と称する。非住宅群A2においても、住宅群A1と同様に、使用される電力がアグリゲータから売電される。また、非住宅群A2で余剰した電力をアグリゲータへ売電することもできる。
なお、本実施形態において、非住宅群A2に商業施設Sが設けられるものとする。商業施設Sには、電力を消費する電気機器(非住宅負荷SL)が設けられる。非住宅負荷SLは、系統電源Kと接続される。
電力供給システム1は、一括受電エリアAに適用され、当該一括受電エリアA内で所定の需要家に電力を供給するためのものである。また、電力供給システム1は、一括受電エリアAの住宅群A1において、複数の住宅H間で電力を融通することができる。図1及び図2(a)に示すように、電力供給システム1は、第一配電線10、一括受電盤20、第二配電線40、非住宅群受電盤50、非住宅群発電部60、住宅群受電盤70、総負荷センサ80、蓄電システム90及びEMS装置100を具備する。
第一配電線10は、系統電源Kと3つの住宅Hとを接続するものである。具体的には、第一配電線10の一端側は、系統電源Kと接続される。また、第一配電線10の他端側は、3つに分岐すると共に、分岐したそれぞれの端部が住宅H(住宅負荷HL)に接続される。なお以下では、第一配電線10における前記一端側(系統電源K側)を「上流側」と、前記他端側(住宅H側)を「下流側」と称する場合がある。
一括受電盤20は、系統電源Kからの電力を一括して受けるための受電設備である。一括受電盤20は、第一配電線10のうち、上流側の端部近傍(系統電源Kの直ぐ下流側)に設けられる。一括受電盤20は、受けた電力を下流側へと配電することができる。また、一括受電盤20は、系統電源Kへと電力を渡すことができる。このように、一括受電エリアAにおいては、系統電源Kとの電力の受け渡しは、必ず一括受電盤20を介して行われる。
第二配電線40は、系統電源Kと商業施設Sとを接続するものである。具体的には、第二配電線40の一端側の端部は、一括受電盤20内で第一配電線10の中途部(より詳細には、スマートメータ30の下流側)と接続される。なお以下では、第二配電線40と第一配電線10との接続部を「接続部10a」と称する。また、第二配電線40の他端側の端部は、商業施設S(非住宅負荷SL)と接続される。なお以下では、第二配電線40における前記一端側(第一配電線10側)を「上流側」と、前記他端側(非住宅負荷SL側)を「下流側」と称する場合がある。
非住宅群受電盤50は、一括受電盤20から第二配電線40へと配電された電力を受けるための受電設備である。非住宅群受電盤50は、第二配電線40の下流側に設けられる。非住宅群受電盤50は、受けた電力を非住宅負荷SLへと配電することができる。また、非住宅群受電盤50は、後述する非住宅群発電部60の発電電力を受けて、一括受電盤20へ渡すことができる。
非住宅群発電部60は、太陽光を利用して発電する装置である。非住宅群発電部60は、太陽電池パネル等により構成される。非住宅群発電部60は、例えば商業施設の屋上等の日当たりの良い場所に設置される。非住宅群発電部60は、所定の配電線を介して、非住宅群受電盤50内で、第二配電線40に接続される。
住宅群受電盤70は、一括受電盤20から第一配電線10の下流側へと配電された電力(すなわち、住宅群A1側へ流れる電力)を受けるための受電設備である。住宅群受電盤70は、第一配電線10のうち、一括受電盤20の直ぐ下流側に設けられる。住宅群受電盤70は、受けた電力を後述する蓄電システム90や住宅負荷HLへと配電することができる。また住宅群受電盤70は、住宅群A1内の電力(太陽光発電部91の発電電力及び蓄電池92の放電電力)を受けて、太陽光発電部91の発電電力及び蓄電池92の放電電力のうち余剰した電力を一括受電盤20へ渡すことができる。このように、住宅群A1においては、一括受電盤20との電力の受け渡しは、必ず住宅群受電盤70を介して行われる。
総負荷センサ80は、電力を検出可能なものである。総負荷センサ80は、住宅群受電盤70内で、第一配電線10の中途部(当該第一配電線10が分岐する直ぐ上流側)に設けられる。総負荷センサ80は、後述するEMS装置100と接続され、当該EMS装置100へ検出結果を送信することができる。総負荷センサ80は、下流側にある全ての(3つの)住宅負荷HLへと流れる電力を検出することができる。すなわち、総負荷センサ80の検出結果から、全ての住宅負荷HLの消費電力の合計(以下では「住宅総負荷」と称する)を取得することができる。
蓄電システム90は、太陽光を利用して発電可能であると共に、電力を充放電可能なものである。蓄電システム90は、太陽光発電部91、蓄電池92、電力センサ93及びパワコン94を具備する。
太陽光発電部91は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部91は、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部91は、住宅Hの屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。太陽光発電部91は、後述するパワコン94に接続される。
蓄電池92は、電力を充放電可能なものである。蓄電池92は、例えばリチウムイオン電池等により構成される。蓄電池92は、後述するパワコン94に接続される。蓄電池92は、稼動中における充放電等の動作の態様が設定された運転モードとして、放電モード、充電モード、待機モード及び充放電モードを有する。なお、これらのモードについての詳細な説明は後述する。なお、本実施形態において、蓄電池92の最大放電電力は、2000Wであるとする。また、蓄電池92の最大充電電力は、2000Wであるとする。また、蓄電池92には、蓄電池92の稼動状態を維持するための電池残量として所定の残量(以下では「最低残量」と称する)が設定される。また、蓄電池92は、例えば放電効率を考慮して放電の閾値(最小放電電力)が任意に設定される。放電の閾値としては、任意の値(例えば、1000W)を採用することができる。また、蓄電池92は、放電の閾値が設定されている場合であっても、EMS装置100の指示により当該設定にかかわらず放電することもできる。
電力センサ93は、電力を検出可能なものである。電力センサ93は、一括受電盤20内で第一配電線10の中途部に設けられる。なお、電力センサ93の構成についての詳細な説明は後述する。
パワコン94は、電力を適宜変換可能なハイブリッドパワーコンディショナである。パワコン94は、上述の如く太陽光発電部91及び蓄電池92に接続される。また、パワコン94は、第一配電線10の中途部に接続される。具体的には、パワコン94は、住宅群受電盤70内で総負荷センサ80よりも上流側に接続される。このように、パワコン94は、太陽光発電部91と蓄電池92と第一配電線10との間に設けられる。
こうして、太陽光発電部91の発電電力は、パワコン94を介して第一配電線10に出力することができる。また、太陽光発電部91の発電電力は、パワコン94を介して蓄電池92に充電することができる。また、蓄電池92の放電電力は、パワコン94を介して第一配電線10に出力することができる。また、第一配電線10を流れる電力(系統電源Kからの電力)は、パワコン94を介して蓄電池92に充電することができる。
また、パワコン94は、上述の如く電力センサ93と接続される。パワコン94は、電力センサ93の設置箇所を流れる電力の大きさ及び向き(上流側又は下流側)に関する情報を取得することができる。パワコン94は、電力センサ93から取得した情報に基づいて、蓄電池92の充放電の制御を行うことができる。
こうして、蓄電システム90は、太陽光発電部91の発電電力や蓄電池92の放電電力を、パワコン94を介して第一配電線10へ出力することができる。また、蓄電システム90は、太陽光発電部91の発電電力や系統電源Kからの電力を、パワコン94を介して蓄電池92に充電することができる。
本実施形態において、蓄電システム90は3つ設けられる。3つの蓄電システム90(より詳細には、蓄電システム90のパワコン94)は、第一配電線10にそれぞれ互いに直列となるように接続される。具体的には、3つの蓄電システム90は、住宅群受電盤70内で、総負荷センサ80よりも上流側に1つずつ順番に接続される。各蓄電システム90は、3つの住宅Hのうちいずれかの住宅Hに所有されている。
図2(a)に示すEMS装置100は、蓄電システム90の動作を制御することによって、電力供給システム1における電力の供給態様を制御するものである。EMS装置100は、3つの蓄電システム90のそれぞれのパワコン94に接続される。EMS装置100は、パワコン94を介して蓄電池92を制御することができる。具体的には、EMS装置100は、蓄電池92の運転モードを切り換えることができる。
また、EMS装置100は、パワコン94を介して蓄電システム90及び太陽光発電部91に関する情報を取得することができる。具体的には、例えば、EMS装置100は、蓄電池92の電池残量に関する情報を取得することができる。また、EMS装置100は、蓄電池92の実行中の運転モードに関する情報を取得することができる。また、EMS装置100は、蓄電池92の放電量に関する情報を取得することができる。また、EMS装置100は、太陽光発電部91の発電電力に関する情報を取得することができる。また、EMS装置100は、全ての(3つの)太陽光発電部91の発電電力に関する情報に基づいて、当該全ての太陽光発電部91の発電電力の合計(以下では「PV総発電」と称する)を取得することができる。
また、EMS装置100は、総負荷センサ80に接続される。EMS装置100は、総負荷センサ80から上述の如く住宅総負荷に関する情報を取得することができる。
また、EMS装置100は、電力の供給態様に関する種々の制御を実行することができる。EMS装置100が実行する制御には、後述する電力融通制御や電力融通補正制御が含まれる。
以下では、図1を用いて、電力センサ93の構成について詳細に説明する。
なお以下では、上述の如き3つの蓄電システム90を、上流側から下流側へと順番に、第一蓄電システム90a、第二蓄電システム90b、第三蓄電システム90cと称する場合がある。また、第一蓄電システム90a、第二蓄電システム90b、第三蓄電システム90cに設けられる電力センサ93を、それぞれ第一電力センサ93a、第二電力センサ93b、第三電力センサ93cと称する場合がある。
第一蓄電システム90aの第一電力センサ93aは、一括受電盤20内で、第一配電線10の中途部(より詳細には、第一配電線10と第二配電線40との接続部10aよりも上流側)に設けられる。第一電力センサ93aは、全ての(3つの)電力センサ93のうち、最も上流側に設けられる。第一電力センサ93aは、第一蓄電システム90aのパワコン94と接続され、当該パワコン94へ検出結果を送信することができる。
第二蓄電システム90bの第二電力センサ93bは、一括受電盤20内で、第一配電線10の中途部(より詳細には、第一配電線10と第二配電線40との接続部10aと、第一電力センサ93aと、の間)に設けられる。第二電力センサ93bは、第二蓄電システム90bのパワコン94と接続され、当該パワコン94へ検出結果を送信することができる。
第三蓄電システム90cの第三電力センサ93cは、一括受電盤20内で、第一配電線10の中途部(より詳細には、第一配電線10と第二配電線40との接続部10aと、第二電力センサ93bと、の間)に設けられる。第三電力センサ93cは、第三蓄電システム90cのパワコン94と接続され、当該パワコン94へ検出結果を送信することができる。
こうして、第一電力センサ93a、第二電力センサ93b、第三電力センサ93cは、一括受電盤20内で、第一配電線10に上流側から順番に互いに直列となるように設けられている。
上述の如き電力供給システム1の構成において、当該電力供給システム1を構成する各種の機器のうち、住宅群受電盤70、総負荷センサ80及び蓄電システム90は、住宅群A1に含まれる。一方、一括受電盤20、非住宅群受電盤50及び非住宅群発電部60は、非住宅群A2に含まれる。このように、蓄電システム90は、住宅群A1に属しているにもかかわらず、当該蓄電システム90の電力センサ93は非住宅群A2に設置されている。
こうして、系統電源Kから一括受電盤20が受けた電力(すなわち、非住宅群A2が受けた電力)は、一括受電エリアA全体として買電した電力となる。また、一括受電盤20から系統電源Kへと渡された電力(すなわち、非住宅群A2から渡された電力)は、一括受電エリアA全体として売電した電力となる。
これに対して、一括受電盤20から住宅群受電盤70が受けた電力(すなわち、非住宅群A2から住宅群A1が受けた電力)は、住宅群A1が(アグリゲータから)買電した電力となるものの、一括受電エリアAとしては、系統電源Kとの関係で電力の受け渡しは発生していない。すなわち、一括受電エリアA全体として見れば、買電した電力は増えない。また、一括受電盤20へと住宅群受電盤70から渡した電力(すなわち、住宅群A1から非住宅群A2へと渡した電力)は、住宅群A1が(アグリゲータへと)売電した電力となるものの非住宅負荷SLで消費されてしまうため、一括受電エリアAとしては、系統電源Kとの関係で電力の受け渡しは発生していない。すなわち、一括受電エリアA全体として見れば、売電した電力は増えない。
以下では、蓄電池92の運転モード(放電モード、充電モード、待機モード及び充放電モード)について説明する。
放電モードは、負荷追従運転により蓄電池92を放電させるモードである。放電モードが実行された場合、蓄電池92は、電力センサ93の検出結果に応じて放電可能な状態となる。具体的には、蓄電池92は、電力センサ93が下流側へ流れる電力を検出した場合に、当該検出した電力に対応する電力を放電する。すなわち、蓄電池92は、住宅群A1に設置されているにもかかわらず、非住宅群A2に設置されている電力センサ93の検出結果に応じて放電を行う。
なお、放電モードが実行された場合において、電力センサ93が下流側へ流れる電力を検出した場合であっても、蓄電池92の電池残量が放電可能な残量でない場合(例えば、電池残量が残量下限値である場合や最低残量である場合)には、蓄電池92は放電することができずに待機状態となる。
充電モードは、蓄電池92を充電させるモードである。蓄電池92は、太陽光発電部91が発電している場合、当該太陽光発電部91の発電電力を充電する。また、蓄電池92は、太陽光発電部91が発電していない場合や、太陽光発電部91の発電電力が最大充電電力よりも小さい場合、第一配電線10を流れる電力(例えば系統電源Kからの電力)も充電する。また、太陽光発電部91の発電電力の一部が蓄電池92に充電された場合、当該発電電力の残りは第一配電線10に出力される。
なお、充電モードが実行された場合であっても、満充電である場合には蓄電池92は充電できずに待機状態となる。この場合、太陽光発電部91の発電電力の全部が第一配電線10に出力される。
待機モードは、蓄電池92を待機させるモードである。待機モードが実行された場合、蓄電池92は稼動したまま待機状態となる(充放電を行わない)。
充放電モードは、負荷追従運転により蓄電池92を充放電させるモードである。充放電モードが実行された場合、蓄電池92は、電力センサ93の検出結果に応じて充放電可能な状態となる。
具体的には、蓄電池92は、放電モードと同様に、電力センサ93が下流側へ流れる電力を検出した場合に、当該検出した電力に対応する電力を放電する。また、電力センサ93が下流側へ流れる電力を検出した場合であっても、蓄電池92の電池残量が放電可能な残量でない場合には、蓄電池92は放電することができずに待機状態となる。
また、充放電モードが実行された場合、蓄電池92は、電力センサ93が上流側へ流れる電力を検出した場合に、当該検出した電力に対応する電力を充電する。このように、蓄電池92は、住宅群A1に設置されているにもかかわらず、非住宅群A2に設置されている電力センサ93の検出結果に応じて充放電を行う。
また、充放電モードが実行された場合、蓄電池92は、満充電である場合には充電できない。また、充放電モードが実行された場合、蓄電池92は、電力センサ93が上流側及び下流側へ流れる電力を検出しなかった場合には待機状態となる。
なお、蓄電池92の運転モードは、パワコン94を介して行われるEMS装置100からの指示により切り替えられる。以下では、EMS装置100による蓄電池92の運転モードを実行する(切り替える)ための指示を、それぞれ放電指示、充電指示、待機指示及び充放電指示という場合がある。
以下では、図3を用いて、上述の如く構成された電力供給システム1における電力の供給態様について説明する。
なお以下では、全ての蓄電池92に充放電指示が行われた場合(充放電モードが実行される場合)について説明する。また、本実施形態において、非住宅群A2に設けられた非住宅負荷SLの消費電力は、例えば住宅群A1に設けられた住宅負荷HLの1つ当りの消費電力と比べて、大きな電力であるものとする。具体的には、非住宅負荷SLの消費電力は、例えば非住宅群発電部60の発電電力の全部が供給されたとしても、残りの消費電力が4000W以上となる大きさであるものとする。
このように、非住宅負荷SLの消費電力が大きい場合、例えば太陽光発電部91の発電電力が住宅群受電盤70から一括受電盤20へと逆潮流された場合(すなわち、PV総発電が住宅総負荷よりも大きい場合等)に、当該逆潮流された電力は、非住宅群受電盤50内において、第二配電線40と第一配電線10との接続部10aを越えて系統電源K側へと流れず、非住宅群受電盤50側(すなわち、非住宅負荷SL)へ流れる。このように、住宅群受電盤70から一括受電盤20へと逆潮流された電力は、当該一括受電盤20から系統電源Kへと売電(逆潮流)されることはない。
また、仮に住宅群受電盤70からの電力が非住宅負荷SLに供給されたとしても、当該非住宅負荷SLにはまだ消費電力が残ることとなる。そのため、非住宅負荷SLの残りの消費電力を賄うために、系統電源Kから買電が行われる。系統電源Kからの電力は、一括受電盤20内を下流側へ流れる際に、3つの電力センサ93(第一電力センサ93a、第二電力センサ93b及び第三電力センサ93c)に順に検出される。こうして、3つの電力センサ93が下流側へと流れる電力を検出すると、検出した電力に対応する電力が、第一蓄電システム90a、第二蓄電システム90b及び第三蓄電システム90cの蓄電池92(3つの蓄電池92)から放電される。
またその場合、住宅群A1において、住宅総負荷に対してPV総発電が不足する場合には、3つの蓄電池92から放電された電力の一部又は全部が下流側へと流れて住宅負荷HLへと供給される。
ここで、3つの蓄電池92から放電された電力の全部が下流側へと流れる場合とは、PV総発電と全ての蓄電池92の放電電力とを合計しても、いまだ住宅総負荷に不足していることを意味する。すなわち、3つの蓄電池92から放電された電力の全部が下流側へと流れる場合には、いまだ住宅総負荷に対して不足する電力が系統電源Kから買電される。このように、かかる場合には、3つの蓄電池92はそれぞれ最大放電電力の放電を行う。
一方、3つの蓄電池92から放電された電力の一部が下流側へと流れる場合とは、PV総発電と全ての蓄電池92の放電電力とを合計すると、住宅総負荷に余剰していることを意味する。すなわち、3つの蓄電池92から放電された電力の一部が下流側へと流れる場合には、3つの太陽光発電部91の発電電力と3つの蓄電池92の放電電力のうち、住宅総負荷に対して余剰する電力が住宅群受電盤70から一括受電盤20へ流れる。また、一括受電盤20へと流れた電力は、非住宅群受電盤50へ流れて非住宅負荷SLに供給される。このように、かかる場合には、3つの蓄電池92はそれぞれ最大放電電力の放電を行う。
このように、図3に示すように、全ての蓄電池92に充放電指示が行われた場合(充放電モードが実行される場合)、住宅群A1において、全ての蓄電池92の放電電力を全ての住宅負荷HLに供給することができる。すなわち、全ての蓄電池92の放電電力を、複数の住宅H間で融通することができる。
また、全ての蓄電池92の電力センサ93が一括受電盤20よりも系統電源K側(より詳細には、非住宅負荷SLが接続された接続部10aよりも系統電源K側)に設けられるため、絶えず行われる系統電源Kからの買電に応じて、常時全ての蓄電池92を最大放電電力で放電させることができる。これにより、蓄電池92の放電効率を向上させることができる。また、常時全ての蓄電池92を最大放電電力で放電させることにより、全ての蓄電池92の間で放電量に偏りが生じるのを抑制できるため、全ての蓄電池92の稼動態様の均等化を図ることができる。
また、蓄電池92の放電電力を当該蓄電池92よりも下流側(系統電源Kと反対側)に設けられた住宅負荷HLだけでなく、蓄電池92よりも系統電源K側に設けられた非住宅負荷SLへと供給することができる。すなわち、住宅群A1において、蓄電池92の放電電力を住宅負荷HLに供給しつつ、住宅群A1外にある(非住宅群A2内にある)非住宅負荷SLに電力を供給することができる。また、蓄電池92の放電電力は、一括受電盤20から系統電源Kへと逆潮流されることがないため、蓄電池92の放電電力が系統電源Kへ売電されるのを抑制することができる。
ここで、上述の如き電力の供給態様においては、常時全ての蓄電池92が最大放電電力で放電してしまうため、住宅群A1内における自給率が低下する可能性がある。また、全ての太陽光発電部91の発電電力が住宅負荷HL又は非住宅負荷SLに供給されてしまうため、蓄電池92は太陽光発電部91の発電電力を充電できず、充電用の電力を系統電源Kから買電する必要性が生じる可能性がある。
そこで、本実施形態に係る電力供給システム1においては、上述の如き課題の解決を図るため、EMS装置100から蓄電池92に運転モードの指示を行う所定の制御(以下では、「電力融通制御」と称する)を実行することができる。具体的には、電力融通制御において、EMS装置100は、全ての蓄電池92に充放電指示を行うのではなく(充放電モードを実行するのではなく)、所定の蓄電池92に対して、所定の条件に基づいて選択した指示(放電指示、又は、充電指示、待機指示)を行う。
以下では、EMS装置100による、電力融通制御について説明する。電力融通制御には、事前設定制御と、蓄電システム動作制御と、が含まれる。
まず、図4のフローチャートを用いて、事前設定制御について説明する。
事前設定制御は、後述する蓄電システム動作制御を行うにあたって、所定の条件に基づく設定(後述する放電優先順位の設定)を事前に行うものである。事前設定制御は、EMS装置100により、例えば蓄電システム動作制御が行われる前日の24時(当日の0時)に実行される。
ステップS101において、EMS装置100は、各蓄電システム90の蓄電池92の積算放電量を取得する。具体的には、EMS装置100は、蓄電池92ごとに、本日(直近の24時間の間に)放電された電力量の総和を取得する。EMS装置100は、ステップS101の処理を実行した後、ステップS102の処理を実行する。
ステップS102において、EMS装置100は、ステップS101で取得した積算放電量に基づいて、全ての蓄電システム90の蓄電池92に対して放電優先順位を設定する。具体的には、EMS装置100は、全ての蓄電池92に対して、積算放電量の少ない順番に高い放電優先順位(本実施形態においては、第1位、第2位、第3位)を設定する。なお、放電優先順位とは、複数の蓄電池92のうちどの蓄電池92を他の蓄電池92に対して優先的に放電させるのかの判断基準となるものである。EMS装置100は、ステップS102の処理を実行した後、事前設定制御を終了する。事前設定制御の後、EMS装置100は、蓄電システム動作制御を実行する。
次に、図5のフローチャート及び図6を用いて、蓄電システム動作制御について説明する。
蓄電システム動作制御は、事前設定制御で行われた設定(放電優先順位)に基づいて、蓄電システム90の蓄電池92を具体的に動作させるものである。蓄電システム動作制御は、EMS装置100により、予め規定されたタイミング(例えば5分ごと)に繰り返し実行される。
ステップS110において、EMS装置100は、現時点の住宅総負荷及びPV総発電に関する情報を取得する。なお、住宅総負荷とは、上述の如く、全ての(3つの)住宅負荷HLの消費電力の合計である。また、PV総発電とは、上述の如く、全ての(3つの)太陽光発電部91の発電電力の合計である。EMS装置100は、ステップS110の処理を実行した後、ステップS120の処理を実行する。
ステップS120において、EMS装置100は、住宅総負荷がPV総発電以上であるか否かを判定する。このように、蓄電システム動作制御においては、太陽光発電部91の発電電力が、蓄電池92の放電電力に優先して住宅負荷HLに供給することを前提としている。EMS装置100は、住宅総負荷がPV総発電以上であると判定した場合(ステップS120:YES)、ステップS150へ移行する。一方、EMS装置100は、住宅総負荷がPV総発電よりも小さいと判定した場合(ステップS120:NO)、ステップS130へ移行する。
ステップS130において、EMS装置100は、充電する蓄電池92の台数を算出する。ステップS130においては、住宅総負荷がPV総発電よりも小さいため、太陽光発電部91の発電電力が住宅負荷HLの消費電力に対して余剰した状態となっている。
そこで、EMS装置100は、余剰電力で何台の蓄電池92を充電させるのかを、「充電する蓄電池台数=(PV総発電-住宅総負荷)/蓄電池の最大充電電力」の式によって算出する。なお、前記式によって算出された数に小数点が含まれる場合は、小数点以下は適宜切り上げ又は切り捨てて、充電する蓄電池92の台数を算出する。EMS装置100は、ステップS130の処理を実行した後、ステップS140の処理を実行する。
ステップS140において、EMS装置100は、ステップS130にて算出した台数の蓄電池92に充電指示を行う。このとき、EMS装置100は、全ての蓄電池92(又は、充電指示を行うことが可能な蓄電池92)から電池残量を取得し、当該電池残量が少ない蓄電池92から順に前記台数分だけ充電指示を行う(充電に関する設定を行う)。また、EMS装置100は、充電指示を行った蓄電池92以外の蓄電池92に待機指示を行う(待機に関する設定を行う)。
こうして、住宅群A1内において余剰電力がある場合は、太陽光発電部91の発電電力をできるだけ蓄電池92に充電することができる。これにより、住宅群A1内における太陽光発電部91の発電電力の自己消費率を向上させることができる。EMS装置100は、ステップS140の処理を実行した後、蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
また、ステップS120で住宅総負荷がPV総発電以上であると判定した場合に移行するステップS150において、EMS装置100は、最大放電電力で放電可能な蓄電池92の台数を算出する。ステップS150においては、住宅総負荷がPV総発電以上であるため、太陽光発電部91の発電電力が住宅負荷HLの消費電力に対して不足した状態となっている。
そこで、EMS装置100は、不足電力を何台の蓄電池92の放電で賄えるのかを、「放電する蓄電池台数=(住宅総負荷-PV総発電)/蓄電池の最大放電電力」の式によって算出する。なお、前記式によって算出された数に小数点が含まれる場合は、小数点以下は適宜切り上げ又は切り捨てて、放電する蓄電池92の台数を算出する。EMS装置100は、ステップS150の処理を実行した後、ステップS160の処理を実行する。
ステップS160において、EMS装置100は、事前設定制御により設定された放電優先順位が高い蓄電システムから順に、ステップS150にて算出した台数分の蓄電池92に放電指示を行う(放電に関する設定を行う)。また、EMS装置100は、放電指示を行った蓄電池92以外の蓄電池92に待機指示を行う。
こうして、住宅群A1内において不足電力がある場合は、必要な台数だけ蓄電池92の放電を行う。これにより、住宅群A1内における不足電力が、住宅群A1外から供給された電力(例えば系統電源Kからの買電)によって賄われるのを抑制することができる。EMS装置100は、ステップS160の処理を実行した後、蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
このように、電力融通制御においては、電力センサ93の検出結果とは関係なく、住宅総負荷とPV総発電との関係で蓄電池92の充放電を行うため、常時全ての蓄電池92が最大放電電力で放電するのを防止できる(例えば、後述の図6参照)と共に、蓄電池92の放電電力をできるだけ住宅負荷HLに供給することができる。こうして、住宅群A1内における自給率を向上することができる。また、全ての太陽光発電部91の発電電力が住宅負荷HL又は非住宅負荷SLに供給されるのを防止できるため、充電用の電力を系統電源Kから買電しなくとも、蓄電池92は太陽光発電部91の発電電力を充電することができる。
ここで、図6は、電力融通制御を実行した場合の電力の供給態様の一例を示した図である。なお、住宅総負荷は、例えば2500Wであるものとする。また、非住宅負荷SLは、例えば3500Wであるものとする。また、説明の便宜上、図6に示す一例においては、全ての太陽光発電部(太陽光発電部91及び非住宅群発電部60)は発電を行っていないものとする。そして、電力融通制御によって、3つの蓄電池92のうち2つ(例えば第一蓄電システム90a及び第二蓄電システム90bの蓄電池92)に放電指示が行われ、1つ(例えば第三蓄電システム90c)に待機指示が行われたものとする。
このような状態において、仮に非住宅負荷SLが無い場合(すなわち、住宅群受電盤70よりも上流側に大きな負荷が存在しない場合)には、2つの(複数の)蓄電池92の放電電力は下流側の住宅負荷HLに流れて、2つのうち最も系統電源Kに近い側(上流側)の蓄電池92は放電電力が小さくなって、放電効率が低下するおそれがある。
しかしながら、本実施形態においては蓄電池92の上流側に非住宅負荷SL(すなわち、大きな電力需要を有する負荷)が有る。また、全ての蓄電池92の電力センサ93が一括受電盤20よりも系統電源K側(より詳細には、非住宅負荷SLが接続された接続部10aよりも系統電源K側)に設けられる。こうして、系統電源Kの買電は、非住宅負荷SLに供給される前に、電力センサ93に検出される。ここで、図6に示すように、例えば非住宅負荷SLの消費電力が3500Wである場合、住宅総負荷(2500W)と合わせた6000W(電力センサ93の検出結果)に応じた電力が2つの蓄電池92(第一蓄電システム90a及び第二蓄電システム90bの蓄電池92)から放電される。すなわち、2つの蓄電池92はそれぞれ最大放電電力(2000W)で放電を行う。
この場合、2つの蓄電池92の放電電力のうち、まず下流側の第二蓄電システム90bの蓄電池92からの放電電力(2000W)が、住宅負荷HLへ供給される。そして、第二蓄電システム90bの蓄電池92の放電電力だけでは不足する電力(500W)が、上流側の第一蓄電システム90aの蓄電池92の放電電力で賄われる。そして、第一蓄電システム90aの蓄電池92の放電電力(2000W)のうち、住宅負荷HLに対して余剰する電力(1500W)は、上流側に流れて、非住宅負荷SLに供給される。
また、上流側に流れた第一蓄電システム90aの蓄電池92の放電電力(1500W)だけでは非住宅負荷SLの消費電力(3500W)を賄うことはできないため、不足する電力(2000W)が系統電源Kから買電される。このように、系統電源Kから買電が行われる限り、2つの蓄電池92(第一蓄電システム90a及び第二蓄電システム90bの蓄電池92)は最大放電電力での放電を継続する。
すなわち、本実施形態においては、蓄電池92の上流側に非住宅負荷SLが有り、また全ての蓄電池92の電力センサ93が一括受電盤20よりも系統電源K側に設けられるため、放電指示が行われた全ての蓄電池92は最大放電電力で発電を行う。こうして、放電指示が行われた全ての蓄電池92のうち、最も上流側の蓄電池92であっても放電電力が小さくなるのを抑制することができる。
このように、最も上流側の蓄電池92は、仮に非住宅負荷SLが無い場合であれば、放電可能な電力(0W~2000W(最大放電電力))のうち、他の蓄電池92の放電電力で住宅負荷HLに不足する分だけを放電できるに過ぎない。しかしながら、本実施形態においては、上流側の非住宅負荷SLで大きな電力需要があるため、最も上流側の蓄電池92は、下流側の住宅負荷HLへと放電電力を供給したうえで、さらに放電する余力があれば、余力分の電力(すなわち、最大放電電力から住宅負荷HLへと供給した電力を減算した電力、0~2000W)を、上流側へと流すことができる。
こうして、電力融通制御において、必要台数だけ蓄電池92に放電指示を行った場合には、放電指示が行われた蓄電池92のうち、下流側の蓄電池92だけでなく、最も上流側の蓄電池92も最大放電電力で放電することできる。
以下では、図2(b)及び図7を用いて、第二実施形態に係る電力供給システム1について説明する。
第二実施形態に係る電力供給システム1において、第一実施形態に係る電力供給システム1と異なる点は、スマートメータ30を有する点と、EMS装置100の構成である。以下では、第二実施形態に係る電力供給システム1について、主に第一実施形態に係る電力供給システム1と異なる点である、スマートメータ30及びEMS装置100の構成について説明する。
スマートメータ30は、電力を検出可能なものである。スマートメータ30は、一括受電盤20内で、第一配電線10の中途部に設けられる。スマートメータ30は、図2(b)に示すようにEMS装置100と接続され、当該EMS装置100へ検出結果を送信することができる。スマートメータ30は、図示せぬ遮断器を具備する。スマートメータ30は、系統電源Kから第一配電線10に受けた電力(下流側へ流れる電力)が契約容量を超えた場合に、前記遮断器により第一配電線10の電力流通を遮断することができる。
こうして、スマートメータ30は、系統電源Kから一括受電エリアAが受けた電力を検出することができる。すなわち、スマートメータ30の検出結果から一括受電エリアA全体としての買電に関する情報を取得することができる。また、スマートメータ30は、一括受電エリアAから系統電源Kへと逆潮流される電力を検出することができる。すなわち、スマートメータ30の検出結果から一括受電エリアA全体としての売電に関する情報を取得することができる。
EMS装置100は、スマートメータ30に接続される。EMS装置100は、スマートメータ30から一括受電エリアA全体としての買電及び売電に関する情報を取得することができる。
また、第二実施形態に係る電力供給システム1においては、上述の如き電力融通制御(より詳細には、蓄電システム動作制御)が行われた後に、所定の制御(以下では「電力融通補正制御」と称する)を行うことにより、住宅群A1において複数の住宅H間で電力を融通しながらも、非住宅群A2ひいては一括受電エリアA全体としての優先事項を電力の供給態様に反映させることができる。
以下では、図8のフローチャート及び図9を用いて、電力融通補正制御について説明する。
本実施形態に係る電力融通補正制御においては、住宅群A1において複数の住宅H間で電力を融通しながらも、一括受電エリアA全体の買電が所定の閾値を越えた場合に、当該買電を前記所定の閾値よりも小さくすることを目的としている。
電力融通補正制御は、EMS装置100により、電力融通制御(より詳細には、蓄電システム動作制御)が行われた後に実行される。すなわち、電力融通補正制御は、蓄電システム動作制御と同様に、事前設定制御が行われた後、予め規定されたタイミング(例えば5分ごと)に繰り返し実行される。
ステップS210において、EMS装置100は、現時点の一括受電エリアA全体及び住宅群A1の状態を取得する。具体的には、EMS装置100は、スマートメータ30から取得した情報に基づいて、現時点の系統電源Kと一括受電盤20との電力の受け渡し(すなわち、一括受電エリアA全体の売買電)に関する情報を取得する。また、EMS装置100は、パワコン94から取得した情報に基づいて、住宅群A1の3つの蓄電池92に放電状態、又は、充電状態、待機状態の蓄電池92があるかに関する情報を取得する。
なお以下では、図9に示すように、ステップS210にて取得した状態のうち、一括受電エリアA全体が買電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に放電指示及び待機指示が行われた蓄電池92がある状態を、「第一の状態」と称する。また、一括受電エリアA全体が買電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に充電指示が行われた蓄電池92がある状態を、「第二の状態」と称する。
EMS装置100は、ステップS210の処理を実行した後、ステップS215の処理を実行する。
ステップS215において、EMS装置100は、系統電源Kから一括受電エリアAへの買電電力が所定の設定値よりも大きいか否かが判定される。ここで、所定の設定値とは、例えば電力会社が設定する最大デマンドのような値(超過することにより、電力料金に影響を与えるような値)を参照して設定される値である。
こうして、ステップS215において、EMS装置100は、現時点において系統電源Kから一括受電エリアAへの買電電力が所定の設定値よりも大きいか否かを判定し、買電電力が設定値よりも大きいと判定した場合(ステップS215:YES)、ステップS220の処理を実行する。一方、ステップS215にて、EMS装置100は、買電電力が設定値よりも大きくないと判定した場合(ステップS215:NO)、電力融通補正制御を一旦終了する。
ステップS220において、EMS装置100は、ステップS210で取得した一括受電エリアA全体及び住宅群A1の状態に応じて、電力融通制御における蓄電池92への充放電等の設定の補正として、住宅群A1の蓄電池92の充放電の台数を増減させる。EMS装置100は、ステップS220の処理を実行した後、電力融通補正制御を一旦終了させる。
以下では、図9から図11を用いて、ステップS210にて取得した状態が、第一の状態である場合の、ステップS220の処理について具体的に説明する。
EMS装置100は、第一の状態(一括受電エリアA全体が買電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に放電指示及び待機指示が行われた蓄電池92がある状態)である場合には、住宅群A1の融通制御の補正として、待機指示が行われた蓄電池92の何台かに放電指示を行う。これにより、放電する蓄電池92の台数を増加させ、一括受電エリアAへの買電を減少させる。
第一の状態において、EMS装置100は、待機状態の蓄電池92の何台に放電指示を行うのかを、「放電指示を行う蓄電池台数=一括受電エリアA全体の買電電力/蓄電池92の最大放電電力」の式によって算出する。なお、前記式によって算出された数が小数点が含まれる場合は、系統電源Kへの売電と当該系統電源Kからの買電どちらを許容するかに応じて、小数点以下を切り上げるか、切り捨てるかが決定される。すなわち、系統電源Kへの買電が許容される場合には、小数点以下が切り捨てられる。一方、系統電源Kからの買電が許容される場合には、小数点以下が切り上げられる。
ここで、ステップS210にて取得した状態が第一の状態である場合において、一括受電エリアAへの買電を減少させる電力の供給態様としては、2通りのパターン(以下では「パターン1」及び「パターン2」と称する)が想定される。そこで以下では、パターン1及びパターン2それぞれについて説明する。
まず、第一の状態において、前記電力の供給態様がパターン1である場合について説明する。
ここで、図10は、電力融通補正制御を実行する時点の、一括受電エリアA全体及び住宅群A1の電力の供給態様の一例を示した図である。図10の時点では、全ての蓄電システム90の太陽光発電部91が発電を行っているものとする。また、第一蓄電システム90a及び第二蓄電システム90bの蓄電池92には放電指示が行われる一方、第三蓄電システム90cの蓄電池92には待機指示が行われているものとする。この状態において、住宅群A1では、3台の太陽光発電部91の発電電力と2台の蓄電池92の放電電力で住宅負荷HLの消費電力が賄われているが、僅かに(1台の蓄電池92の最大放電電力に満たない電力が)不足しているため、住宅群A1(住宅群受電盤70)は当該不足する分の電力を一括受電盤20から受ける。すなわち、住宅群A1では買電が行われている。また、一括受電エリアA全体としても買電(例えば、3000W)が行われている。
この状態において、ステップS220の処理により、例えば蓄電池92の3台(すなわち、追加で1台)に放電指示を行うことが算出される。こうして、放電優先順位に基づいて、算出された台数(追加の1台)の蓄電池92に放電指示が行われて、当該蓄電池92が放電を開始する。これにより、住宅群A1内では、放電する蓄電池32が1台追加されたため、太陽光発電部91の発電電力及び蓄電池92の放電電力が住宅負荷HLの消費電力に対して余剰することとなる。こうして、一括受電盤20は、当該余剰した電力を住宅群A1(住宅群受電盤70)から受ける。すなわち、住宅群A1では、太陽光発電部91の発電電力の売電が増加する。また、一括受電盤20が受けた電力は、非住宅負荷SLへ供給される。すなわち、図11に示すように、非住宅負荷SLの一部が住宅群A1からの電力で賄われるため、一括受電エリアA全体として買電が(例えば、3000Wから1000Wに)減少することとなる。
こうして、第一の状態においてパターン1では、蓄電池92からの放電が増加することにより住宅群A1からすると太陽光発電部91の発電電力の売電が増加するものの、一括受電エリアA全体からすると系統電源Kからの買電を減少させることができる。
次に、第一の状態において、前記電力の供給態様がパターン2である場合について説明する。
ここでは、図10に示す状態において、1台の蓄電池92に待機指示が行われている理由とは、3台の太陽光発電部91の発電電力と2台の蓄電池92の放電電力では住宅負荷HLの消費電力に不足しているものの、不足する電力が蓄電池92の前記放電の閾値(例えば、1000W)に満たないためであるとする。
この状態において、住宅群A1では、3台の太陽光発電部91の発電電力と2台の蓄電池92の放電電力に加え、住宅群A1(住宅群受電盤70)が一括受電盤20から受けた電力で、住宅負荷HLの消費電力が賄われている。すなわち、住宅群A1では買電が行われている。また、一括受電エリアA全体としても買電(例えば、3000W)が行われている。
この状態において、ステップS220の処理により、例えば蓄電池92の3台(すなわち、追加で1台)に放電指示を行うことが算出される。こうして、放電優先順位に基づいて、算出された台数(追加の1台)の蓄電池92に、放電の閾値の設定にかかわらず放電指示が行われて、当該蓄電池92が放電を開始する。これにより、住宅群A1内では、放電する蓄電池32が1台追加され、住宅負荷HLの消費電力が賄われる。こうして、一括受電盤20から住宅群受電盤70が受ける電力は、ほぼ0Wとなる。すなわち、住宅群A1では買電が減少している。また、図12に示すように、一括受電盤20から住宅群A1(住宅群受電盤70)が受ける電力が減少するため、一括受電エリアA全体として買電が(例えば、3000Wから1000Wに)減少することとなる。
こうして、第一の状態においてパターン2では、蓄電池92からの放電が増加することにより住宅群A1からすると買電が減少し、これにより一括受電エリアA全体からすると系統電源Kからの買電を減少させることができる。
次に、図9、図13及び図14を用いて、ステップS210にて取得した状態が、第二の状態である場合の、ステップS220の処理について具体的に説明する。
EMS装置100は、第二の状態(一括受電エリアA全体が買電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に充電指示が行われた蓄電池92がある状態)である場合には、住宅群A1の融通制御の補正として、充電指示が行われた蓄電池92の何台かに待機指示を行う。これにより、充電する蓄電池92の台数を減少させ、一括受電エリアAへの買電を減少させる。
第二の状態において、EMS装置100は、充電する蓄電池92の何台に待機指示を行うのかを、「待機指示を行う蓄電池台数=一括受電エリアA全体の買電電力/蓄電池92の最大充電電力」の式によって算出する。なお、前記式によって算出された数が小数点が含まれる場合は、系統電源Kへの売電と当該系統電源Kからの買電どちらを許容するかに応じて、小数点以下を切り上げるか、切り捨てるかが決定される。すなわち、系統電源Kへの買電が許容される場合には、小数点以下が切り捨てられる。一方、系統電源Kへの売電が許容される場合には、小数点以下が切り上げられる。
ここで、図13は、電力融通補正制御を実行する時点の、一括受電エリアA全体及び住宅群A1の電力の供給態様の一例を示した図である。図13の時点では、全ての蓄電システム90の太陽光発電部91が発電を行っているものとする。また、全ての蓄電システム90の蓄電池92に充電指示が行われているものとする。この状態において、住宅群A1では、3台の太陽光発電部91の発電電力に対して3台の蓄電池92が充電を行った後の残りの電力と、住宅群A1(住宅群受電盤70)が一括受電盤20から受けた電力で、住宅負荷HLの消費電力が賄われている。すなわち、住宅群A1では買電が行われている。また、一括受電エリアA全体としても買電(例えば、3000W)が行われている。
この状態において、ステップS220の処理により、例えば充電する蓄電池92の2台に待機指示を行うことが算出される。こうして、電池残量に基づいて、算出された台数(2台)の蓄電池92に待機指示が行われて、当該蓄電池92が充電を停止する。これにより、住宅群A1内では、3台の太陽光発電部91の発電電力に対して1台の蓄電池92が充電を行った後の残りの電力により、住宅負荷HLの消費電力が賄われると共に、さらに住宅負荷HLの消費電力に対して余剰することとなる。こうして、一括受電盤20は、当該余剰した電力を住宅群A1(住宅群受電盤70)から受ける。すなわち、住宅群A1では、太陽光発電部91の発電電力の売電が増加する。また、一括受電盤20が受けた電力は、非住宅負荷SLへ供給される。なお、図14に示す例では、一括受電盤20が受けた電力は、非住宅負荷SLに対しても余剰し、当該余剰した電力が系統電源Kへと売電される。こうして、図14に示すように、系統電源Kへと売電(例えば、1000W)が行われることとなるが、一括受電エリアA全体として買電が減少することとなる。
こうして、第二の状態において、蓄電池92の充電が減少することにより住宅群A1からすると太陽光発電部91の発電電力の売電が増加するものの、一括受電エリアA全体からすると系統電源Kからの買電を減少させることができる。
このように、電力融通補正制御においては、一括受電エリアA全体及び住宅群A1の状態に応じて、電力融通制御における蓄電池92への充放電等の設定の補正として、住宅群A1の蓄電池92の充放電の台数を増減させている。これにより、住宅群A1において複数の住宅H間で電力を融通しながらも、一括受電エリアA内の自給率及びPV自己消費率の向上を、当該一括受電エリアA全体の優先事項として電力の供給態様に反映させることできる。
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1においては、
系統電源Kと住宅負荷HL(第一電力負荷)とを接続する第一配電線10と、
前記第一配電線10の中途部(接続部10a)と非住宅負荷SL(第二電力負荷)とを接続する第二配電線40と、
前記第一配電線10の前記中途部(接続部10a)と前記住宅負荷HL(第一電力負荷)との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一配電線10に出力可能な太陽光発電部91(第一発電部)と、
前記第一配電線10の前記中途部(接続部10a)よりも系統電源K側に設けられ、電力を検出可能な電力センサ93と、
前記第一配電線10の前記中途部(接続部10a)と前記住宅負荷HL(第一電力負荷)との間に設けられ、前記太陽光発電部91(第一発電部)の発電電力を充放電可能であり、前記電力センサの検出結果に基づいて放電した電力を第一配電線10を介して前記住宅負荷HL(第一電力負荷)と、第一配電線10及び第二配電線40を介して前記非住宅負荷SL(第二電力負荷)に供給可能である蓄電池92と、
を具備するものである。
このような構成により、蓄電池92の放電電力を系統電源Kと反対側に設けられた住宅負荷HL(第一電力負荷)だけでなく、蓄電池92よりも系統電源K側に設けられた非住宅負荷SL(第二電力負荷)へと供給することができる。
また、電力供給システム1においては、
前記蓄電池92は、複数設けられ、
前記電力センサは、前記複数の蓄電池92に対応するように複数設けられると共に、前記第一配電線10に互いに直列となるように設けられるものである。
このような構成により、複数の蓄電池92の放電電力を系統電源Kと反対側に設けられた住宅負荷HL(第一電力負荷)だけでなく、蓄電池92よりも系統電源K側に設けられた非住宅負荷SL(第二電力負荷)へと供給することができる。
また、全ての蓄電池92の電力センサ93が一括受電盤20よりも系統電源K側(より詳細には、非住宅負荷SLが接続された接続部10aよりも系統電源K側)に設けられるため、系統電源Kからの買電に応じて、全ての蓄電池92を最大放電電力で放電させることができる。これにより、蓄電池92の放電効率を向上させることができる。また、常時全ての蓄電池92を最大放電電力で放電させることにより、全ての蓄電池92の間で放電量に偏りが生じるのを抑制できるため、全ての蓄電池92の稼動態様の均等化を図ることができる。
また、電力供給システム1においては、
前記複数の蓄電池92の制御を実行可能なEMS装置100を具備し、
前記EMS装置100は、
前記太陽光発電部91(第一発電部)の発電電力と前記複数の住宅負荷HL(第一電力負荷)の消費電力に基づいて前記複数の蓄電池92の設定を行う電力融通制御(第一の制御)を実行可能であるものである。
このような構成により、例えば複数の蓄電池92のうち必要な台数分だけ充放電を行ったり、所定の基準に基づいて設定された優先順位に従って蓄電池の充放電を行うことができる。すなわち、複数の蓄電池92を適切に動かすことができる。
また、電力供給システム1においては、
前記電力供給システム1が、系統電源Kからの電力を一括して受電可能な一括受電エリアAに設けられ、
前記第一配電線10は、前記複数の住宅負荷HL(第一電力負荷)に接続され、
前記第一配電線10を介して系統電源Kからの電力を一括して受電可能な一括受電盤20(第一受電盤)と、
前記一括受電盤20(第一受電盤)に前記第一配電線10を介して接続されると共に、前記複数の住宅負荷HL(第一電力負荷)と前記太陽光発電部91(第一発電部)と前記複数の蓄電池92とが接続された住宅群A1(グループ)を構成する住宅群受電盤70(第二受電盤)と、
を具備し、
前記EMS装置100は、
前記電力融通制御(第一の制御)において、前記住宅群A1(グループ)内で、前記複数の蓄電池92の放電電力を前記複数の住宅負荷HL(第一電力負荷)に融通するように前記複数の蓄電池92の設定を行うものである。
このような構成により、一括受電エリアA内における住宅群A1(グループ)内において複数の蓄電池92の放電電力を複数の住宅負荷HL(第一電力負荷)へと融通することができる。
また、電力供給システム1においては、
前記EMS装置100は、
前記電力融通制御(第一の制御)において、前記複数の蓄電池92の設定には、
前記太陽光発電部91(第一発電部)の発電電力のうち前記複数の住宅負荷HL(第一電力負荷)に余剰する電力の充電が含まれるものである。
このような構成により、住宅群A1(グループ)内における自己消費率を向上させることができる。
また、電力供給システム1においては、
前記EMS装置100は、
事前に設定された前記一括受電エリアA内の優先事項に基づいて、前記電力融通制御(第一の制御)における前記複数の蓄電池92の設定の補正を行う電力融通補正制御(第二の制御)を実行可能であるものである。
このような構成により、住宅負荷HL(第一電力負荷)への電力の供給と優先事項との両立を図ることができる。
また、電力供給システム1においては、
前記電力融通補正制御(第二の制御)において、
前記太陽光発電部91(第一発電部)の発電電力が前記複数の蓄電池92の放電電力に優先して前記住宅負荷HL(第一電力負荷)に供給されると共に、前記住宅負荷HL(第一電力負荷)に対する前記発電電力の過不足に応じて前記複数の蓄電池92の充放電が行われるものである。
このような構成により、太陽光発電部91(第一発電部)の発電電力を効率よく使用することができる。
なお、本実施形態に係る一括受電エリアAは、本発明に係るエリアの実施の一形態である。
また、太陽光発電部91は、本発明に係る第一発電部の実施の一形態である。
また、非住宅群発電部60は、本発明に係る第二発電部の実施の一形態である。
また、電力融通制御は、本発明に係る第一の制御の実施の一形態である。
また、電力融通補正制御は、本発明に係る第二の制御の実施の一形態である。
また、一括受電盤20は、本発明に係る第一受電盤の実施の一形態である。
また、住宅群受電盤70は、本発明に係る第二受電盤の実施の一形態である。
また、非住宅群受電盤50は、本発明に係る第三受電盤の実施の一形態である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態において、第一発電部及び第二発電部は、太陽光を利用して発電するものとしたが、他の自然エネルギー(例えば、水力や風力)を利用して発電するものであってもよい。
また、一括受電エリアA内に、非住宅負荷SLは、必ずしも設けられる必要はない。
また、本実施形態においては、の積算放電量に基づいて放電優先順位を決定するものとしたが、放電優先順位を決定する基準はこれに限定されるものではなく、例えば蓄電システム90の充電状態(電力を蓄積可能な定格容量に対して蓄積されている電池残量の割合)や充電回数に基づいて決定するものであってもよい。
また、本実施形態においては、電力融通制御を行う場合、事前設定制御にて複数の蓄電池92の放電優先順位(複数の蓄電池92のうちどの蓄電池92を他の蓄電池92に対して優先的に放電させるのかの判断基準)を決定するものとしたが、前記判断基準を設定するタイミングはこれに限定するものではない。例えば、蓄電システム動作制御の処理中、具体的にはステップS150の処理を行う際に、前記判断基準を設定してもよい。すなわち、放電する蓄電池92の台数を算出するタイミングの都度、前記判断基準を決定してもよい。
また、本実施形態においては、蓄電システム90は3つであるとしたが、これに限定するものではない。すなわち、蓄電システム90は4つ以上であってもよい。また同様に、住宅負荷HLや非住宅負荷SL等の数も本実施形態のものに限定されない。