JP7268607B2 - 車両の前部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の前部構造に関する。
従来の自動車などの車両では、エアバッグの作動などのために、衝突荷重を検知する衝突検知センサが車体に取り付けられている。車体前方の衝突荷重を早期に検出するためには、衝突検知センサを出来るだけ車体前方に設ける必要がある。そこで、衝突検知センサは、例えば、車体の前方のエンジンルーム内部のうちバンパーに近い位置に設けられる。衝突検知センサとエンジンルーム内部の制御部とは、ハーネスによって電気的に接続されている。
その一方で、車両の前方衝突時においては、ハーネスがエンジンルーム内部の構成部品の間に挟まれて破損または断線することが懸念される。そこで、ハーネスをエンジンルーム内部の構成部品から保護するために、例えば、特許文献1記載の車両の前部構造では、ハーネスの前方側に配置されて車両衝突時にハーネスに接触するおそれがあるコネクタには、延設部が設けられている。
この延設部は、車体前方からハーネスに向かうにつれて下降するように傾斜する傾斜面を有する。そのため、車両衝突時には、延設部の傾斜面がハーネスに接触して当該ハーネスを上方へ押し上げることにより、ハーネスが前記コネクタと周辺の構成部品とによって挟まれることから回避することが可能である。
特開2017-19460号公報
上記の車両の前部構造では、車両衝突時にハーネスの上方への移動を可能にするために、ハーネスがあらかじめ車両の前方衝突時の移動の分だけ余長をもたせて配索されている必要がある。したがって、ハーネス周辺に十分な配索用のスペースが無い場合には、この構造はハーネス保護の点で有効ではない。
一方、ハーネス保護のためにハーネス周辺に剛性の高い保護カバーを設けた場合には、車両衝突時の衝突荷重のピーク(最大値)が高くなり、衝突荷重の最大値を制限する所定の衝突要件を満たすことができないおそれがある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、ハーネスを配置するスペースが少なくても、衝突荷重のピークを抑えて衝突要件を満たしながらハーネスを保護することが可能な車両の前部構造を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の車両の前部構造は、車両の前部構造であって、車体前方を向く前面を有し、車体内部の所定の位置に固定されたベース部材と、前記ベース部材の前方側に設けられた衝突検知センサと、前記衝突検知センサに接続されたハーネスと、前記ハーネスを保護する保護カバーとを備え、前記ベース部材の前記前面には、所定の方向に延びるように溝が形成され、前記ハーネスは、前記溝の底面と前記保護カバーの間を通るように配索され、前記保護カバーは、前記ベース部材の前記前面から前方側に離間した位置で前記溝の底面を覆うように、前記ベース部材に取り付けられていることを特徴とする。
かかる構成によれば、ハーネスは、ベース部材の前面に形成された溝の底面と保護カバーの間を通るように配索され、さらに、保護カバーは、ベース部材の前面から前方側に離間した位置で前記溝の底面を覆うようにベース部材の前面に取り付けられている。そのため、車両の前方衝突時において、保護カバーにおける溝の底面を覆う部分が車体後方側へ変形しても、ハーネスはベース部材の前面から後方側に退避しているので、ハーネスが保護カバーおよびベース部材に挟まれて破損するおそれが低減する。しかも、保護カバーにおける溝の底面を覆う部分は、ベース部材の前面から前方側へ離間しており、車体後方側への変形が許容されているので、衝突荷重のピークを抑えることが可能である。これにより、ハーネスを配置するスペースが少なくても、衝突荷重のピークを抑えて衝突要件を満たしながらハーネスを保護することが可能になる。
上記の車両の前部構造において、前記溝は、前記溝の底面の縁から車体前方に向かうにつれて当該溝の幅が広がる方向に傾斜して延びる内側面を有し、前記保護カバーの端部は、車体前後方向において前記内側面に対向する位置に配置されているのが好ましい。
かかる構成では、溝の内側面が溝の底面の縁から車体前方に向かうにつれて当該溝の幅が広がる方向に傾斜して延びている。そのため、車両衝突時において、保護カバーの端部は、ベース部材の前面よりもさらに後方に位置する溝の内側面に衝突するまで、車体後方側へ変形することが可能になる。これにより、衝突荷重のピークをさらに抑えて衝突性能を向上させることが可能である。
上記の車両の前部構造において、前記保護カバーは、前記ベース部材の前記前面から前方側に離間した位置で前記溝を当該溝の幅全体にわたって覆うのが好ましい。
かかる構成では、保護カバーは、溝をその幅全体にわたって覆っているので、車両衝突時において、保護カバーが車体後方側へ変形しても、当該保護カバーをベース部材の前面に当接させて溝の底面と保護カバーの間のハーネスとの接触を確実に回避することが可能である。しかも、保護カバーは、ベース部材の前面から前方側に離間した位置で溝を覆っているので、当該前面から離間している距離で車体後方側への変形が可能になり、衝突荷重のピークを抑えることが可能である。
上記の車両の前部構造において、前記保護カバーを前記ベース部材の前面に固定するカバー固定部材をさらに備え、前記ハーネスは、前記保護カバーと前記ベース部材との間において、前記カバー固定部材を囲むように配置されているのが好ましい。
保護カバーのうちカバー固定部材周辺の部分は、カバー固定部材との連結によって剛性が高くなっており、車体後方側への変形が少ない。そこで、カバー固定部材を囲むようにハーネスを配置することで、ハーネスの破損のおそれをさらに低減することが可能である。
上記の車両の前部構造において、前記ハーネスを前記溝の底面に固定するハーネス固定部材をさらに備えているのが好ましい。
かかる構成では、ハーネスがハーネス固定部材によって溝の底面に固定されるので、車両衝突時に保護カバーが車体後方側へ変形したときに、ハーネスが衝突の勢いで溝の外部に出て保護カバーとベース部材の前面との間に挟まれて破損するおそれを低減することが可能である。
上記の車両の前部構造において、前記保護カバーは、前記溝を覆う第1部分と、前記衝突検知センサを覆う第2部分とを有するのが好ましい。
かかる構成では、保護カバーは溝を覆う第1部分とは別に衝突検知センサを覆う第2部分を有しているので、車両衝突前の通常の状態では、衝突検知センサは、保護カバーに覆われていることよって、周囲の構成部品との接触を回避するとともに水、油、ほこりなどの汚染物質から保護される。したがって、1つの保護カバーをハーネスの保護だけでなく衝突検知センサの保護にも兼用することが可能である。
上記の車両の前部構造において、前記第2部分は、前記第1部分よりも車体前方側でかつ当該第1部分と車体前後方向に重ならない位置に配置され、前記保護カバーは、前記第1部分と前記第2部分とを連結する第3部分をさらに有し、前記第3部分は、車体前方へ向かうにつれて前記第2部分へ近づく方向に傾斜するように延びているのが好ましい。
かかる構成では、保護カバーの第1部分と第2部分とを連結する第3部分が車体前方へ向かうにつれて第2部分へ近づく方向に傾斜しているので、保護カバーの第3部分の車体後方側において、ハーネスにおける衝突検知センサから溝へ延びる部分の配索スペースを広く確保することが可能である。これにより、車両衝突時において、保護カバーの第2部分が車体後方側へ移動しても、ハーネスが当該第2部分に衝突して破損するおそれが低減する。
上記の車両の前部構造において、車体の車幅方向両側において車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレームと、車体の車幅方向に延び、前記一対のフロントサイドフレームのそれぞれの前端に連結されたバンパーレインと、前記バンパーレインの後方側に設けられたシュラウドとをさらに備え、前記ベース部材は、前記バンパーレインと前記シュラウドとを連結するセンターステーであるのが好ましい。
かかる構成では、ベース部材が、バンパーレインとシュラウドとを連結するセンターステーであるので、衝突検知センサをセンターステーの前面に取り付けることにより、車両衝突時にバンパーレインが受ける衝突荷重をセンターステーを介して衝突検知センサに円滑に伝達することが可能である。その結果、衝突検知センサは精度よく衝突の検知を行うことが可能である。
上記の車両の前部構造において、前記溝は、前記ベース部材の前面において、上下方向に沿って延びているのが好ましい。
かかる構成では、溝は、ベース部材の前面において上下方向に沿って延びているので、溝の底面と保護カバーの間のハーネスも上下方向に延びる。これにより、ハーネスが溝の底面と保護カバーの間においても自重でたわむおそれが低くなり、ハーネスが溝の底面と保護カバーの間から外部へ出るおそれが低減する。
本発明の車両の前部構造によれば、ハーネスを配置するスペースが少なくても、衝突荷重のピークを抑えて衝突要件を満たしながらハーネスを保護することができる。
本発明の実施形態に係る車両の前部構造を示す斜視図である。 図1の前部構造の上半分を示す正面図である。 図2のセンターステーおよび保護カバーならびにその周辺部の拡大正面図である。 図3の保護カバーが取り除かれてセンターステーにおける上下方向に延びる溝に沿って配索されたハーネスが見えている状態を示す図である。 図3のセンターステーおよび保護カバーならびにその周辺部の斜視図である。 図2の前部構造の左内側面図である。 図3のセンターステーと保護カバーとの間においてハーネスが上下方向に配索された状態を示す拡大平面図である。 図3の保護カバーの正面図である。 図8の保護カバーの斜視図である。 図4のハーネス固定部材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は右内側面図である。 図2のセンターステー、保護カバーおよびシュラウドの配置を示す斜視図である。 図6の前部構造を備えた車両が壁に正面衝突した状態を示す説明図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
図1~2に示されるように、本実施形態の車両の前部構造は、車体1の車幅方向Yの両側において車体前後方向Xに延びる一対のフロントサイドフレーム2と、車幅方向Yに延び、一対のフロントサイドフレーム2のそれぞれの前端に連結されたバンパーレイン4と、バンパーレイン4の車体後方X2側に設けられたシュラウド3と、本発明のベース部材としてのバンパーレイン4とシュラウド3とを連結するセンターステー5とを備えている。さらに、この前部構造は、後述するセンターステー5の車体前方側X1に設けられた衝突検知センサ6およびハーネス7と、当該衝突検知センサ6およびハーネス7を車体前方側X1から覆う保護カバー8とを備えている。
バンパーレイン4(すなわち、バンパーレインフォースメント)は、車幅方向Yに延びるフロントバンパ(図示せず)内に配置されている。バンパーレイン4は、車体前方X1からの衝突時に衝撃を受けることが可能な強度を有する構成を有しており、例えば、略平板状のバンパーレインアウタとその車体後方側X2に配置された断面略ハット状のバンパレインインナとが接合されて閉断面状に形成される。バンパーレイン4の両端部は、フロントサイドフレーム2の前端に溶接などによって結合されている。なお、バンパーレイン4とフロントサイドフレーム2との間には、車両衝突時に圧縮変形して衝撃を吸収するクラッシュカンなどの衝撃吸収部材(図示せず)が設けられてもよい。
シュラウド3は、その内部にラジエータや冷却ファンなどが支持される略枠体形状の部材である。シュラウド3は、バンパーレイン4の車体後方において左右のフロントサイドフレーム2の間に車幅方向Yに延びるとともにバンパーレイン4より上下方向Zに延びるように設けられている。シュラウド3は、例えば、硬質の樹脂材料または金属材料などを用いて一体成形されている。
図3~7に示されるように、本実施形態車両の前部構造は、センターステー5に取り付けられる構成部品として、上記の衝突検知センサ6、ハーネス7、および保護カバー8とともに、保護カバー8をセンターステー5の前面5aに固定するカバー固定部材としてのボルト13と、ハーネス固定部材12とを備えている。
センターステー5は、本体部9と、本体部9の下部両側から斜め下方へ延びる一対の脚部10とを有する。センターステー5の本体部9は、車体1内部の所定の位置、具体的には、車幅方向Yの中央側のシュラウド3の前面の車幅方向Yの中央付近の位置にボルトなどによって固定されている。一対の脚部10のそれぞれ下部は、バンパーレイン4にボルトなどによって固定されている。この構成により、センターステー5は、バンパーレイン4とシュラウド3とを連結してバンパーレイン4を後方側から支持する支持部材として機能することが可能である。
センターステー5は、本体部9において、車体前方X1を向く前面5aを有する。
図4および図7に示されるように、センターステー5の前面5aには、所定の方向として本実施形態では上下方向Zに延びるように溝11が形成されている。溝11は、本体部9の上端から下端まで上下方向Zに貫通するように形成されている。
なお、本実施形態の前面5aの上半分は、図6に示されるように、上方へ向かうにつれて車体後方X2側に向かうように傾斜しており、前面5aと保護カバー8との間にハーネス7における車幅方向Yに延びる上側幅方向部分7cの配索スペース17を確保している。
溝11は、図7の平面図に示されるように、溝11の底面15の縁から車体前方X1に向かうにつれて当該溝11の幅が広がる方向(本実施形態では車幅方向Y)に傾斜して延びる内側面16を有している。
衝突検知センサ6は、車体前方X1における車両衝突時の際に、衝突荷重を迅速かつ正確に検知するために、車体1のなるべく前方X1の位置、具体的には、バンパーレイン4になるべく近い位置に配置される。本実施形態の衝突検知センサ6は、溝11から離間した位置に配置され、バンパーレイン4に固定されたセンターステー5の脚部10の車体前方X1側の面に固定されている。衝突検知センサ6は、例えば、衝突荷重を加速度として検知可能な加速度センサ(いわゆるGセンサ)などが用いられる。
ハーネス7は、衝突検知センサ6に接続された電線であり、衝突検知センサ6が検知した検知信号を車体1内部の制御部に伝達する。
ハーネス7は、図4に示されるように、車体1の内部において、上下方向Zに延びる溝11の底面15(図7参照)と保護カバー8の間を通るように配索されている。本実施形態では、ハーネス7は、保護カバー8とセンターステー5との間において、保護カバー8をセンターステー5の前面5aに固定するボルト13を囲むように、略C字状に配置されている。具体的には、ハーネス7は、溝11に沿って延びる上下方向部分7aと、上下方向部分7aと衝突検知センサ6との間を車幅方向Yに延びる下側幅方向部分7bと、上下方向部分7aの上部から車幅方向Yに延びる上側幅方向部分7cとを有する。なお、図4の7dは、ハーネス7の分岐部分であり、当該分岐部分7dは省略してもよい。
なお、ハーネス7は、車体1の内部において、上下方向Zに延びる溝11の底面15と保護カバー8の間を通るように配索されていればよく、図7に示されるように、ハーネス7の一部がセンターステー5の前面5aよりも車体前方X1側にあってもよい。
保護カバー8は、ハーネス7を保護する部材である。具体的には、保護カバー8は、図3および図8~9に示されるように、センターステー5の溝11を覆う第1部分8aと、当該第1部分8aの下方に位置する第2部分8bと、第1部分8aと第2部分8bとを連結する第3部分8cと、第1部分8aの上部から車幅方向Yに延びる第4部分8dと、第4部分8dと第2部分8bとを連結する第5部分8eとを有する。保護カバー8は、金属板のプレス成形などによって成形される。
第1部分8aは、車両後方X2へ突出する突出部8a1を有する。図7に示されるように、突出部8a1は、センターステー5の前面5aに当接した状態でボルト13により、当該センターステー5の前面5aに固定される。これにより、保護カバー8は、センターステー5の前面5aから前方側X1に離間した位置で溝11の底面15を覆うように、センターステー5に取り付けられる。
第2部分8bは、衝突検知センサ6、および当該衝突検知センサ6に接続されたハーネス7の下側幅方向部分7b(図4参照)を覆うことが可能な形状を有する。具体的には、第2部分8bは、図9に示されるように、それぞれ車幅方向に延びる縦壁8b1および水平壁8b2を有し、略L字断面形状を有する。
第2部分8bは、第1部分8aよりも車体前方X1側でかつ当該第1部分8aと車体前後方向Xに重ならないように、当該第1部分8aの下方の位置に配置されている。
第3部分8cは、車体前方X1へ向かうにつれて第2部分8bへ近づく下方向に傾斜するように延びている。
本実施形態では、図7に示されるように、保護カバー8の第1部分8aの端部8a2は、車体前後方向Xにおいて内側面16に対向する位置に配置されている。そのため、車両前方からの車両衝突時には、端部8a2が溝11の傾斜した内側面16に当接するまで、保護カバー8の第1部分8aが車両後方X2側へ変形することを許容する。
保護カバー8の第4部分8dは、ハーネス7の上側幅方向部分7cを前方側X1から覆う。
第5部分8eは、第4部分8dと第2部分8bとを連結することにより、第1~第5部分8a~8eが連続的に環状に連結される。これにより、保護カバー8は、略矩形枠体状の閉じた形状になり、金属薄板を用いて製造しても所定の剛性を確保することが可能である。
ハーネス固定部材12は、図10(a)、(b)に示されるように、ハーネス7をセンターステー5の溝11の底面15(図7参照)に固定することが可能な構成を有し、本体部12aと、固定部12bと、係合突起12cとを備えている。
本体部12aは、薄板状の部分であり、ハーネス7に当接する面を有する。固定部12bは、ハーネス7を本体部12aに固定する部分であり、接着テープ、面ファスナまたは結束バンドなどからなる。
係合突起12cは、図7に示されるように、センターステー5の溝11の底面15を貫通してシュラウド3に形成された係合穴3aに係合する。
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の車両の前部構造では、図3~4に示されるように、車体前方X1を向く前面5aを有し、車体1内部の所定の位置に固定されたベース部材としてのセンターステー5と、センターステー5の前方側X1に設けられた衝突検知センサ6と、衝突検知センサ6に接続されたハーネス7と、ハーネス7を保護する保護カバー8とを備えている。センターステー5の前面5aには、所定の方向(本実施形態では上下方向Z)に延びるように溝11が形成されている。ハーネス7は、溝11の底面15と保護カバー8の間を通るように配索されている。保護カバー8は、センターステー5の前面5aから前方側X1に離間した位置で溝11の底面15を覆うように、センターステー5に取り付けられている。
この構成によれば、ハーネス7は、センターステー5の前面5aに形成された溝11の底面15と保護カバー8の間を通るように配索され、さらに、保護カバー8は、センターステー5の前面5aから前方側X1に離間した位置で溝11の底面15を覆うようにセンターステー5の前面5aに取り付けられている。そのため、車両の前方衝突時において、保護カバー8における溝11の底面15を覆う第1部分8a(図7~9参照)が車体後方側X2へ変形しても、ハーネス7はセンターステー5の前面5aから車体後方側X2に退避しているので、ハーネス7が保護カバー8およびセンターステー5に挟まれて破損するおそれが低減する。しかも、保護カバー8における溝11の底面15を覆う第1部分8aは、センターステー5の前面5aから前方側X1へ離間しており、車体後方側X2への変形が許容されているので、衝突荷重のピークを抑えることが可能である。これにより、ハーネス7を配置するスペースが少なくても、衝突荷重のピークを抑えて衝突要件を満たしながらハーネス7を保護することが可能になる。
(2)
本実施形態の車両の前部構造では、図7に示されるように、溝11は、溝11の底面15の縁から車体前方X1に向かうにつれて当該溝11の幅が広がる方向に傾斜して延びる内側面16を有している。保護カバー8の第1部分8aの端部8a2は、車体前後方向Xにおいて内側面16に対向する位置に配置されている。
この構成では、溝11の内側面16が溝11の底面15の縁から車体前方X1に向かうにつれて当該溝11の幅が広がる方向(本実施形態では車幅方向Y)に傾斜して延びている。そのため、車両衝突時において、保護カバー8の端部8a2は、センターステー5の前面5aよりもさらに後方に位置する溝11の内側面16に衝突するまで、車体後方側へ変形することが可能になる。これにより、衝突荷重のピークをさらに抑えて衝突性能を向上させることが可能である。
(3)
本実施形態の車両の前部構造は、図3に示されるように、保護カバー8をセンターステー5の前面5aに固定するカバー固定部材としてボルト13を備えている。ハーネス7は、保護カバー8とセンターステー5との間において、ボルト13を囲むように配置されている。
保護カバー8のうちボルト13周辺の部分(すなわち、突出部8a1周辺の部分(図7~9参照))は、ボルト13との連結によって剛性が高くなっており、車体後方側X2への変形が少ない。そこで、ボルト13を囲むようにハーネス7を配置することで、ハーネス7の破損のおそれをさらに低減することが可能である。
なお、カバー固定部材は、ボルト13以外にも、ねじやリベットなどであってもよく、さらには保護カバー8をセンターステー5に固定するためのあらゆる手段(例えば、係合、嵌合、溶接、圧接などの手段)も本発明のカバー固定部材に含まれる。
(4)
本実施形態の車両の前部構造は、図4、図7、図10に示されるように、ハーネス7を溝11の底面15に固定するハーネス固定部材12を備えている。この構成では、ハーネス7がハーネス固定部材12によって溝11の底面に固定されるので、車両衝突時に保護カバー8が車体後方側X2へ変形したときに、ハーネス7が衝突の勢いで溝11の外部に出て保護カバー8とセンターステー5の前面5aとの間に挟まれて破損するおそれを低減することが可能である。
(5)
本実施形態の車両の前部構造では、衝突検知センサ6が溝11から離れて配置された構成において、図8~9に示されるように、保護カバー8は、センターステー5の溝11を覆う第1部分8aと、衝突検知センサ6を覆う第2部分8bとを有する。この構成では、車両衝突前の通常の状態では、衝突検知センサ6は、保護カバー8に覆われていることよって、周囲の構成部品との接触を回避するとともに水、油、ほこりなどの汚染物質から保護される。したがって、1つの保護カバー8をハーネス7の保護だけでなく衝突検知センサ6の保護にも兼用することが可能である。
(6)
本実施形態の車両の前部構造では、図8~9に示されるように、保護カバー8の第2部分8bは、第1部分8aよりも車体前方側X1でかつ当該第1部分8aと車体前後方向Xに重ならない位置(例えば、第1部分8aに対して上下方向Zまたは車幅方向Yにずれた位置であり、本実施形態では第1部分8aの下方の位置)に配置されている。保護カバー8は、第1部分8aと第2部分8bとを連結する第3部分8cをさらに有する。第3部分8cは、車体前方X1へ向かうにつれて第2部分8bへ近づく方向(本実施形態では下方向)に傾斜するように延びている。
この構成では、図6および図11~12に示されるように、保護カバー8の第1部分8aと第2部分8bとを連結する第3部分8cが車体前方X1へ向かうにつれて第2部分8bへ近づく方向に傾斜している。そのため、図12に示されるように車両が壁Wに正面衝突した場合でも、保護カバー8の第3部分8cの車体後方側X2において、ハーネス7における衝突検知センサ6から溝11へ延びる下側幅方向部分7bの配索スペース14(図6および図12参照)を広く確保することが可能である。これにより、車両衝突時において、保護カバー8の略断面L字状の第2部分8bが車体後方側X2へ移動しても、ハーネス7が保護カバー8の第2部分8bに衝突して破損するおそれが低減する。
(7)
本実施形態の車両の前部構造は、車体1の車幅方向Y両側において車体前後方向Xに延びる一対のフロントサイドフレーム2と、車幅方向Yに延び、一対のフロントサイドフレーム2のそれぞれの前端に連結されたバンパーレイン4と、バンパーレイン4の後方側に設けられたシュラウド3とをさらに備えている。ベース部材としてのセンターステー5は、バンパーレイン4とシュラウド3とを連結する。
この構成では、ベース部材としてのセンターステー5が、バンパーレイン4とシュラウド3とを連結するセンターステー5であるので、衝突検知センサ6をセンターステー5の前面5aに取り付けることにより、車両衝突時にバンパーレイン4が受ける衝突荷重をセンターステー5を介して衝突検知センサ6に円滑に伝達することが可能である。その結果、衝突検知センサ6は精度よく衝突の検知を行うことが可能である。
(8)
本実施形態の車両の前部構造では、溝11は、センターステー5の前面5aにおいて、上下方向Zに沿って延びている。この構成では、溝11は、センターステー5の前面5aにおいて上下方向Zに沿って延びているので、溝11の底面15と保護カバー8の間のハーネス7も上下方向Zに延びる。これにより、ハーネス7が溝11の底面15と保護カバー8の間においても自重でたわむおそれが低くなり、ハーネス7が溝11の底面15と保護カバー8の間から外部へ出るおそれが低減する。
(変形例)
(A)
保護カバー8は、センターステー5の前面5aから前方側X1に離間した位置で溝11を当該溝11の幅全体にわたって覆うようにしてもよい。このような変形例の構成では、保護カバー8は、溝11をその幅全体にわたって覆っているので、車両衝突時において、保護カバー8が車体後方側へ変形しても、当該保護カバー8をセンターステー5の前面5aに当接させて溝11の底面15と保護カバー8の間のハーネス7との接触を確実に回避することが可能である。しかも、保護カバー8は、センターステー5の前面5aから前方側X1に離間した位置で溝11を覆っているので、当該前面5aから離間している距離で車体後方側への変形が可能になり、衝突荷重のピークを抑えることが可能である。
(B)
上記実施形態では、ベース部材であるセンターステー5の前面5aにおいて溝11が上下方向Zに延びるように形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、上下方向Z以外にも車幅方向Yまたは車両前面視において斜め方向に延びるようにしてもよい。その場合も、上記(本実施形態の特徴)の(1)~(7)の作用効果を奏することが可能である。
(C)
上記実施形態では、溝11が前面5aに形成されたベース部材の一例として、センターステー5が例に挙げて説明されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、車体1のなるべく前方側X1の位置(例えば、バンパーレイン4に近い位置)であってかつ衝突検知センサ6よりも後方側に位置している部材であれば、本発明のベース部材に適用され得る。したがって、車体1の幅方向Yの中央側に配置されたセンターステーだけでなく、車体1の中央側から幅方向Yにずれた位置に配置された他の部材であっても本発明のベース部材に適用され得る。
1 車体
2 フロントサイドフレーム
3 シュラウド
4 バンパーレイン
5 センターステー(ベース部材)
5a 前面
6 衝突検知センサ
7 ハーネス
8 保護カバー
8a 第1部分
8b 第2部分
8c 第3部分
11 溝
12 ハーネス固定部材
13 ボルト(カバー固定部材)
14 配索スペース
15 底面
16 内側面
W 壁

Claims (9)

  1. 車両の前部構造であって、
    車体前方を向く前面を有し、車体内部の所定の位置に固定されたベース部材と、
    前記ベース部材の前方側に設けられた衝突検知センサと、
    前記衝突検知センサに接続されたハーネスと、
    前記ハーネスを保護する保護カバーと
    を備え、
    前記ベース部材の前記前面には、所定の方向に延びるように溝が形成され、
    前記ハーネスは、前記溝の底面と前記保護カバーの間を通るように配索され、
    前記保護カバーは、前記ベース部材の前記前面から前方側に離間した位置で前記溝の底面を覆うように、前記ベース部材に取り付けられている、
    車両の前部構造。
  2. 前記溝は、前記溝の底面の縁から車体前方に向かうにつれて当該溝の幅が広がる方向に傾斜して延びる内側面を有し、
    前記保護カバーの端部は、車体前後方向において前記内側面に対向する位置に配置されている、
    請求項1に記載の車両の前部構造。
  3. 前記保護カバーは、前記ベース部材の前記前面から前方側に離間した位置で前記溝を当該溝の幅全体にわたって覆う、
    請求項1に記載の車両の前部構造。
  4. 前記保護カバーを前記ベース部材の前面に固定するカバー固定部材をさらに備え、
    前記ハーネスは、前記保護カバーと前記ベース部材との間において、前記カバー固定部材を囲むように配置されている、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
  5. 前記ハーネスを前記溝の底面に固定するハーネス固定部材をさらに備えている、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
  6. 前記保護カバーは、前記溝を覆う第1部分と、前記衝突検知センサを覆う第2部分とを有する、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
  7. 前記第2部分は、前記第1部分よりも車体前方側でかつ当該第1部分と車体前後方向に重ならない位置に配置され、
    前記保護カバーは、前記第1部分と前記第2部分とを連結する第3部分をさらに有し、
    前記第3部分は、車体前方へ向かうにつれて前記第2部分へ近づく方向に傾斜するように延びている、
    請求項6に記載の車両の前部構造。
  8. 車体の車幅方向両側において車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレームと、
    車体の車幅方向に延び、前記一対のフロントサイドフレームのそれぞれの前端に連結されたバンパーレインと、
    前記バンパーレインの後方側に設けられたシュラウドと
    をさらに備え、
    前記ベース部材は、前記バンパーレインと前記シュラウドとを連結するセンターステーである、
    請求項1~7のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
  9. 前記溝は、前記ベース部材の前面において、上下方向に沿って延びている、
    請求項1~8のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
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