JP7268300B2 - 紙製容器および紙製容器の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、防水性を高めるために、容器の内面となるブランクの一方の面にポリエチレンの層を設けることが記載されているが、これを電子レンジで加熱すると、ポリエチレン層が発泡してピンホールを生じ、食品の成分がポリエチレン層を通過して紙に染み込む可能性がある。
シート状材料は、紙製の基材と、基材上に形成されたアンカー層と、アンカー層上に形成された厚さ20μm以上60μm未満のシーラント層とを有する。アンカー層は、酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体で形成され、かつ前記酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体に含まれるポリプロピレンの融点が120℃以上150℃以下である。シーラント層は、ホモポリマー型ポリプロピレンで形成され、かつ前記ホモポリマー型ポリプロピレンの融点が135℃以上である。
シート状材料は、紙製の基材と、基材上に形成されたアンカー層と、アンカー層上に形成された厚さ20μm以上60μm未満のシーラント層とを有する。
アンカー層は、酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体で形成され、かつ酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体に含まれるポリプロピレンの融点が120℃以上150℃以下である。
シーラント層は、ホモポリマー型ポリプロピレンで形成され、かつホモポリマー型ポリプロピレンの融点が135℃以上である。
この方法は、ブランクをメス型の上方に配置する工程Aと、噴出口を有する熱風供給ユニットをブランクの四隅に設けられた、側面部を形成するための接合部に配置する工程Bと、熱風供給ユニットの一部をカバーで覆い、噴出口の周囲に閉空間を形成する工程Cと、閉空間内に熱風を供給して接合部の前記シーラント層を溶融させる工程Dと、ブランクをメス型に向かって押圧し、ブランクを折り曲げつつ、シーラント層の一部を対向させて接合する工程Eとを備える。
本実施形態の紙製容器は、シート状材料を打ち抜いて形成されたブランクを折り曲げつつ熱融着することにより形成される容器本体と、容器本体に取り付けられる蓋材とで構成されている。シート状材料は、紙を主材料としている。
蓋材は、ブランク1と異なる材料で形成してもよいが、ブランク1と同一の材料で形成すると、紙製容器全体を使用後に可燃ごみとして廃棄でき、分別が不要である。
シーラント層4の厚さは、20μm以上60μm未満である。
まず、ブランク1が、シーラント層4が形成された面を上側にして、紙製容器の外形に対応した形状のメス型上に配置される(工程A)。配置は、バキュームパッドやチャック等により行える。
各熱風供給ユニット101は、図示しない噴出孔を有する。噴出口からは、数百℃の熱風を供給できる。噴出口は、工程Bにおいてブランク1の四隅部にある各接合部21、22、23、24に向けられる。
熱風は、概ねカバー102により形成された閉空間内にとどまり、閉空間外に漏れた熱風は拡散とともに急速に温度が低下するため、接合部以外のシーラント層4は溶融しない。
その後、別のオス型等により、各フランジ部が底面部と略平行に折り曲げられると、図7に示すように、容器本体50が完成する。
PPと基材との密着性を高めるアンカー剤もいくつか知られているが、有機溶剤にしか溶解しないものが多い。これらのアンカー剤を紙製容器に適用すると有機溶剤臭が強くなるため、内容物が飲食物の場合には適用が難しい。
以下、本発明の各構成の効果を示す検討データのいくつかについて示す。
以下の材料を用いて検討用のシート材料を形成した。
基材:紙カップ用原紙、(坪量320g/m2)
シーラント層材料:ホモポリマー型PP(融点160℃、MFR20、密度0.9g/cm2)
基材の一方の面に、シーラント層材料を押し出しラミネートにより積層して、シーラント層の厚みが異なる複数種類のシート状材料を得た。シーラント層の厚みは、14μm、17μm、20μm、および50μmの4種類とした。各シート状材料を打ち抜いたブランクを用いて、上述した製造手順(熱風温度520℃、風量430ml/分、製函速度50個/分)で検討用の紙製容器を作製した。
なお、アンカー剤の有無はピンホールの発生にほとんど影響しないことが分かっているため、検討1では基材上に直接シーラント層を形成して検討した。
各紙製容器において、製函完了時および電子レンジ加熱後におけるシーラント層のピンホールの有無を確認した。
検討1の結果を表1に示す。以降の表記載における、〇、×、△は、それぞれ、良い(good)、悪い(bad)、用途等によっては許容できる(fair)を示す。
以下の材料を用いて検討用のシート材料を形成した。
基材:紙カップ用原紙、(坪量320g/m2)
アンカー層材料:以下の3パターンとした。
A1:アンカー層無し
A2:ポリエチレンイミン系アンカー剤
A3:酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体(ポリプロピレン融点150℃)
シーラント層材料:ホモポリマー型PP(融点160℃、MFR20、密度0.9g/cm2)
基材の一方の面に上記A1~A3のいずれかに従ってアンカー層を形成した。A2およびA3の場合、塗布量は固形分換算で0.5g/m2とした。アンカー層上にシーラント層材料を押し出しラミネートにより積層して3種類のシート状材料を得た。シーラント層の厚みは40μmとした。
各シート状材料を用いて試験片を作製し、基材層とシーラント層とを把持して180°剥離を行い、密着の度合いを確認した。剥離条件は、以下の2パターンとした。
・室温(25℃)
・加熱(100℃ 60分)直後
検討2の結果を表2に示す。
A1およびA2のシート状材料では、紙剥けせずにシーラント層のみが基材から剥離されたのに対し、A3のシート状材料においては、いずれの剥離条件においても、紙剥けを生じた。
以上より、酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体でアンカー層を構成することにより、紙基材とPP製シーラント層との密着性を高めることができ、その密着性は高温環境でも維持されることが示された。
酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体に含まれるPP融点が基材とシーラント層との密着性に与える影響について、検討3ではシート状材料を用いて検討した。
以下の材料を用いて検討用のシート材料を形成した。
基材:紙カップ用原紙、(坪量320g/m2)
アンカー層材料:酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体を用い、以下の4パターン準備した。
B1:含有PPの融点 70℃
B2:含有PPの融点 90℃
B3:含有PPの融点 120℃
B4:含有PPの融点 150℃
シーラント層材料:ホモポリマー型PP(融点160℃、MFR20、密度0.9g/cm2)
基材の一方の面に上記B1~B4のいずれかに従ってアンカー層を形成した。いずれの場合も、塗布量は固形分換算で0.5g/m2とした。アンカー層上にシーラント層材料を押し出しラミネートにより積層して4種類のシート状材料を得た。シーラント層の厚みは40μmとした。
各シート状材料を用いて試験片を作製し、基材層とシーラント層とを把持して180°剥離を行い、剥離強度を測定するとともに、密着の度合いを確認した。剥離条件は、以下の3パターンとした。
・室温(25℃)
・90℃雰囲気下
・110℃雰囲気下
検討3の結果を表3に示す。
B3およびB4のシート状材料では、シーラント層が伸びたが、これは機械的に力を加えたためである。紙製容器の実際の使用時には、シーラント層にこのような力が加わることはほとんどないため、B3およびB4のシート状材料では、高温雰囲気下でも紙基材とPP製シーラント層との密着状態が好適に保たれると考えられる。
酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体に含まれるPP融点が基材とシーラント層との密着性に与える影響について、検討4では紙製容器を用いて検討した。
検討3で作製した各シート状材料を用いて、検討1と同一の条件で紙製容器を作製した。さらに、検討1と同一条件で、内容物を充填し、電子レンジで加熱した。
製函直後の紙製容器と電子レンジ加熱後の紙製容器を用いて試験片を作製し、基材層とシーラント層とを把持して180°剥離を行い、密着の度合いを確認した。
検討4の結果を表4に示す。
B3では、製函工程における熱風によってシーラント層に発泡を生じた。製函時の熱風や電子レンジによる加熱で基材の温度が上昇すると、基材に含まれる水分が水蒸気となる。基材とシーラント層との密着力が弱い場合は、この水蒸気が剥離を生じさせるが、基材とシーラント層とが十分に密着している場合、剥離には至らず、発泡となると考えられる。アンカー層に含まれるPPの融点がより高いB4では、高温環境下でも基材とシーラント層との密着力が低下せず、発生した水蒸気を抑え込んだ結果、発泡を生じなかったと考えられた。B4の構成では、電子レンジ加熱で内容物がさらに高温になっても、発泡の発生を好適に抑制することが期待できる。
2 基材
3 アンカー層
4 シーラント層
101 熱風供給ユニット
102 カバー
Claims (3)
- シート状材料からなるブランクを折り曲げて形成された容器本体を備える紙製容器であって、
前記シート状材料は、
紙製の基材と、
前記基材上に形成されたアンカー層と、
前記アンカー層上に形成された厚さ20μm以上60μm未満のシーラント層と、を有し、
前記アンカー層は、酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体で形成され、かつ前記酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体に含まれるポリプロピレンの融点が120℃以上150℃以下であり、
前記シーラント層は、ホモポリマー型ポリプロピレンで形成され、かつ前記ホモポリマー型ポリプロピレンの融点が135℃以上である、
紙製容器。 - 前記シート状材料で形成され、前記容器本体に接合された蓋材をさらに備える、
請求項1に記載の紙製容器。 - シート状材料からなるブランクを折り曲げて形成された、底面部とその周囲に設けられた側面部とを含む容器本体を備える紙製容器の製造方法であって、
前記シート状材料は、
紙製の基材と、
前記基材上に形成されたアンカー層と、
前記アンカー層上に形成された厚さ20μm以上60μm未満のシーラント層と、を有し、
前記アンカー層は、酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体で形成され、かつ前記酸変性ポリプロピレン樹脂水性分散体に含まれるポリプロピレンの融点が120℃以上150℃以下であり、
前記シーラント層は、ホモポリマー型ポリプロピレンで形成され、かつ前記ホモポリマー型ポリプロピレンの融点が135℃以上であり、
前記ブランクをメス型の上方に配置する工程Aと、
噴出口を有する熱風供給ユニットを前記ブランクの四隅に設けられた、前記側面部を形成するための接合部に配置する工程Bと、
前記熱風供給ユニットの一部をカバーで覆い、前記噴出口の周囲に閉空間を形成する工程Cと、
前記閉空間内に熱風を供給して前記接合部の前記シーラント層を溶融させる工程Dと、
前記ブランクを前記メス型に向かって押圧し、前記ブランクを折り曲げつつ、前記シーラント層の一部を対向させて接合する工程Eと、
を備える、
紙製容器の製造方法。
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