JP7267864B2 - 熱可塑性エラストマー組成物、栓体及び容器 - Google Patents
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Description
再シール性、耐液漏れ性の観点から、従来から、医療容器用の栓体の材料としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、及びこれらのブレンド物等のゴム材料が用いられている。
しかしながら、前記ゴム材料を用いる場合、ゴム成分に、少なくとも充填剤や軟化剤、加硫剤等の添加剤を添加し、混練りしてゴム混合物を得る工程と、混練りしたゴム混合物を栓体用の金型に供給し、加熱、加圧する加硫工程を経てゴム材料を製造することが必要となる。当該ゴム材料の製造工程は複雑であり、かつ大掛かりな製造設備が必要であるため、生産コストが高い等の問題を有している。
また、前記ゴム材料を用いた医療用容器の栓体は、医療用容器の保存期間中にゴム成分中の二重結合が酸化することに起因して劣化が生じ、劣化したゴム成分が薬液中へ溶出するという問題を有している。
かかるプラスチック針は、金属針に比べて剛性が低いことから、十分な剛性を得るために、針径を大きくする必要がある。しかしながら、針径が大きくなると医療用容器の栓体に針を貫通させる際の抵抗、すなわち針刺し抵抗性が大きくなるという問題を有している。
例えば、特許文献1には、水添ブロック共重合体、炭化水素系ゴム用軟化剤、及びポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂組成物を成形した医療用ゴム栓が開示されている。
また、特許文献2には、水添ブロック共重合体、水添石油樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、パーオキサイド分解型オレフィン系樹脂、及び非芳香族系ゴム用軟化剤からなる医療用樹脂組成物を成形した医療用栓が開示されている。
また、特許文献2に開示されている医療用栓においても、栓体に針を刺した状態が短時間である場合を前提としており、針を長時間刺した状態を保持し、その後、栓体から針を抜いた場合においては、十分な再シール性が得られておらず、さらにポリフェニレンエーテル樹脂を使用しているためゴム混合物の臭気が強く、溶出物も増加するという問題を有している。
上述したように、従来提案されている熱可塑性エラストマーを用いた医療容器用栓体は、未だ十分な再シール性が得られておらず、当該再シール性の向上を図るためには、栓体の厚みを厚くしたり、栓体を装填する外栓部の内容積を小さくして締め付け力、すなわち加締めを強くしたりする必要があるが、いずれも針抜き刺し時の抵抗も大きくなるため、注射針を上手く刺せなくなるという問題を有しており、また、ポリフェニレンエーテル樹脂を使用しているため、ゴム混合物の臭気が強く、溶出物も増加する等の不具合があるという問題を有している。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
水添ブロック共重合体(a)100質量部と、
ポリプロピレン系樹脂(b)10~50質量部と、
非芳香族系軟化剤(d)75~200質量部と、
無機充填剤(e)1~150質量部と、
を、含む熱可塑性エラストマー組成物であって、
前記水添ブロック共重合体(a)が、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単
量体単位を主体とする重合体ブロックA1と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体
単位を主体とする重合体ブロックB1と、を含み、水素添加された水添ブロック共重合体
(a-1)を含有し、
前記水添ブロック共重合体(a-1)の重量平均分子量が100,000~550,0
00であり、
前記水添ブロック共重合体(a-1)の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含
有量が20質量%を超え50質量%以下であり、
前記無機充填剤(e)がシラン系カップリング剤で表面処理されたシリカである、熱可塑性エラストマー組成物。
〔2〕
前記水添ブロック共重合体(a)が、
前記水添ブロック共重合体(a-1)と、
少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック
A2と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックB2
と、を含み、水素添加された水添ブロック共重合体(a-2)と、を含有し、
前記水添ブロック共重合体(a-2)の重量平均分子量が120,000~230,0
00であり、
前記水添ブロック共重合体(a-2)の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含
有量が7質量%以上20質量%以下であり、
前記水添ブロック共重合体(a-1)と前記水添ブロック共重合体(a-2)の質量比
((a-1)/(a-2))が70/30~95/5である、前記〔1〕に記載の熱可塑
性エラストマー組成物。
〔3〕
前記水添ブロック共重合体(a-2)において、前記共役ジエン化合物単量体単位中の
水素添加前のビニル結合量が63モル%~95モル%である、前記〔2〕に記載の熱可塑
性エラストマー組成物。
〔4〕
前記水添ブロック共重合体(a-2)が、少なくとも2個のビニル芳香族炭化水素化合
物単量体単位を主体とする重合体ブロックA2と、少なくとも2個の共役ジエン化合物単
量体単位を主体とする重合体ブロックB2と、を有し、
少なくとも1個の前記重合体ブロックB2は、前記水添ブロック共重合体(a-2)の
末端にあり、当該末端にある重合体ブロックB2の含有量が、前記水添ブロック共重合体
(a-2)中0.5~9質量%である、前記〔2〕又は〔3〕に記載の熱可塑性エラスト
マー組成物。
〔5〕
前記水添ブロック共重合体(a-1)において、前記共役ジエン化合物単量体単位中の
水素添加前のビニル結合量が30モル%~60モル%である、
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
〔6〕
ショアーA硬度が55以下であり、針刺し抵抗性が4.0kgf以下である、
前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
〔7〕
6段階臭気強度表示法による臭気強度が3以下である、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
〔8〕
前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む、栓体。
〔9〕
前記〔8〕に記載の栓体を具備する容器。
〔10〕
前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む、医療用途に用いられる栓体。
〔11〕
前記〔10〕に記載の栓体を具備する医療用途に使用される容器。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、
水添ブロック共重合体(a)100質量部と、
ポリプロピレン系樹脂(b)10~50質量部と、
非芳香族系軟化剤(d)75~200質量部と、
無機充填剤(e)1~150質量部と、
を、含み、
前記水添ブロック共重合体(a)が、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックA1と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックB1と、を含み、水素添加された水添ブロック共重合体(a-1)を含有し、
前記水添ブロック共重合体(a-1)の重量平均分子量が100,000~550,000であり、
前記水添ブロック共重合体(a-1)の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が20質量%を超え50質量%以下であり、
前記無機充填剤(e)が表面処理されたシリカである、熱可塑性エラストマー組成物である。
以下、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の各成分について詳細に説明する。
本実施形態の熱可塑性エラストマーに含まれる水添ブロック共重合体(a)は、後述する水添ブロック共重合体(a-1)を含む。
<水添ブロック共重合体(a-1)>
水添ブロック共重合体(a-1)は、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックA1と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックB1と、を含むブロック共重合体を水素添加(水添)して得られる水添ブロック共重合体である。
なお、本実施形態において、ブロック共重合体を構成する各単量体単位の命名は、当該単量体単位が由来する単量体の命名に従っているものとする。例えば、「ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位」とは、単量体であるビニル芳香族炭化水素化合物を重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
また、「共役ジエン化合物単量体単位」とは、単量体である共役ジエン化合物を重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン化合物単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
ビニル芳香族炭化水素化合物単量体としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、重合性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンが好適に用いられる。これらビニル芳香族炭化水素化合物単量体は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
共役ジエン化合物単量体としては、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、重合性の観点から、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)が好適に用いられる。これら共役ジエン化合物単量体は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
さらに、水添ブロック共重合体(a-1)は、下記一般式(1)~(7)で表される構造の共重合体を、複数種類、任意の割合で含む混合物であってもよい。
(A1-B1)n (1)
A1-(B1-A1)n (2)
B1-(A1-B1)n (3)
[(B1-A1)n]m-Z (4)
[(A1-B1)n]m-Z (5)
[(B1-A1)n-B1]m-Z (6)
[(A1-B1)n-A1]m-Z (7)
また、nは1以上の整数であり、好ましくは1~5の整数である。
mは2以上の整数であり、好ましくは2~11、より好ましくは2~8の整数である。
Zはカップリング剤残基を表す。ここで、カップリング残基とは、共役ジエン化合物単量体単位とビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位との共重合体の複数を、重合体ブロックA1-重合体ブロックA1間、重合体ブロックB1-重合体ブロックB1間、又は重合体ブロックA1-重合体ブロックB1間において結合させるために用いられるカップリング剤の結合後の残基を意味する。カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、後述するジハロゲン化合物や酸エステル類等が挙げられる。
また、重合体ブロックA1及び重合体ブロックB1がビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位と共役ジエン化合物単量体単位の共重合体ブロックである場合には、当該共重合体ブロック中のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位は均一に分布している部分、及びテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。さらに、前記共重合体ブロック部分には、ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が異なる部分が複数個共存していてもよい。
耐熱変形性の観点から、好ましくは120,000以上、より好ましくは140,000以上である。また、500,000以下が好ましく、より好ましくは450,000以下であり、さらに好ましくは400,000以下であり、さらにより好ましくは350,000以下であり、よりさらに好ましくは300,000以下である。
また、好ましくは120,000~350,000であり、より好ましくは140,000~300,000である。
水添ブロック共重合体(a-1)の重量平均分子量が100,000以上であると、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の再シール性に係る回復性が良好なものとなる傾向にある。水添ブロック共重合体(a-1)の重量平均分子量が550,000以下であると、熱可塑性エラストマー組成物において、良好な流動性が得られ、優れた成形加工性が得られる。
水添ブロック共重合体(a-1)の分子量分布が前記範囲内にあれば、より良好な機械強度が得られる傾向にある。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した水添ブロック共重合体(a-1)の分子量分布曲線の形状は特に限定されず、ピークが二ヶ所以上存在するポリモーダルの分子量分布を持つものでもよいし、ピークが一つであるモノモーダルの分子量分布を持つものでもよい。
なお、水添ブロック共重合体(a-1)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布〔Mw/Mn;重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比〕は、後述する実施例に記載の方法でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したクロマトグラムのピークの分子量に基づいて、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。
水添ブロック共重合体(a-1)の重量平均分子量は、重合開始剤量、モノマー量を調整することにより、上述した数値範囲に制御することができる。
機械物性、再シール性に係る回復性の観点から、20質量%を超えるものとし、好ましくは22質量%以上であり、より好ましくは24質量%以上であり、さらに好ましくは26質量%以上であり、さらにより好ましくは28質量%以上である。
また、柔軟性の観点から、50質量%以下であるものとし、好ましくは47質量%以下であり、より好ましくは44質量%以下であり、さらに好ましくは41質量%以下であり、さらにより好ましくは38質量%以下である。
また、回復性と柔軟性のバランスの観点から、より好ましくは26~44質量%であり、さらに好ましくは26~41質量%であり、さらにより好ましくは28~41質量%であり、よりさらに好ましくは28~38質量%である。
なお、全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量は、水添ブロック共重合体(a-1)の重合工程において単量体の添加量を調整することにより前記数値範囲に制御することができ、後述する実施例に記載の方法で紫外線分光光度計を用いて262nmの吸収強度を測定することにより算出することができる。
共役ジエン化合物単量体単位中の水素添加前のビニル結合量が30モル%以上であると水添ブロック共重合体(a-1)と後述のポリプロピレン系樹脂(b)との相容性がより向上する傾向にあり、共役ジエン化合物単量体単位中の水素添加前のビニル結合量が60モル%以下であると強度がより向上する傾向にある。
なお、水素添加後において、水素未添加の1,2-結合、水素添加後の1,2-結合、水素未添加の3,4-結合、水素添加後の3,4-結合、水素未添加の1,4-結合及び水素添加後の1,4-結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総モル量に対する、水素未添加の1,2-結合、水素添加後の1,2-結合、水素未添加の3,4-結合及び水素添加後の3,4-結合で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総モル量の割合は、水素添加前の共役ジエン単量体単位のビニル結合量と等しい。したがって、水素添加前の共役ジエン単量体単位のビニル結合量は、水素添加後のブロック共重合体を用いて核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により測定でき、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定できる。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物に含まれる水添ブロック共重合体(a)は、前記水添ブロック共重合体(a-1)と、当該水添ブロック共重合体(a-1)とは異なる水添ブロック共重合体(a-2)を含んでいてもよい。
水添ブロック共重合体(a-2)は、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックA2と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックB2と、を含むブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体であって、重量平均分子量が120,000~230,000である。また、水添ブロック共重合体(a-2)の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量は、7質量%以上20質量%以下である。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を、針を刺す用途のある栓体として使用する場合、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性が針刺しの抵抗に影響するが、針刺し抵抗性を低減するために過度に柔軟性を向上させると、使用中に針が栓体から抜け落ちるおそれがあり、針を保持する力(針保持性)が低下する傾向にある。
熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性はいろいろな因子と相関があるものの、水添ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物の量、例えばスチレンの量が少ないほど、(a-2)成分が多いほど、熱可塑性エラストマー組成物中のポリプロピレン樹脂(b)、無機充填剤(e)、無機多孔質吸着剤(f)が少ないほど、非芳香族系軟化剤(d)が多いほど、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性、すなわち柔らかさが向上する傾向にある。
針刺し抵抗性と再シール性のバランス向上の観点から、水添ブロック共重合体(a)は前記水添ブロック共重合体(a-1)と、水添ブロック共重合体(a-2)を含む混合物であることが好ましい。この場合、水添ブロック共重合体(a-1)と水添ブロック共重合体(a-2)の質量比((a-1)/(a-2))は70/30~95/5であることが好ましい。水添ブロック共重合体(a-1)と水添ブロック共重合体(a-2)の質量比が前記範囲内であることにより、針刺し抵抗性と再シール性のバランスを向上できる。同様の観点から、前記質量比は、より好ましくは75/25~95/5であり、さらに好ましくは80/20~95/5である。
共役ジエン化合物単量体としては、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、重合性の観点から、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)が好適に用いられる。これら共役ジエン化合物単量体は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
(A2-B2)n (8)
A2-(B2-A2)n (9)
B2-(A2-B2)n (10)
[(B2-A2)n]m-Z (11)
[(A2-B2)n]m-Z (12)
[(B2-A2)n-B2]m-Z (13)
[(A2-B2)n-A2]m-Z (14)
また、nは1以上の整数であり、好ましくは1~5の整数である。
mは2以上の整数であり、好ましくは2~11、より好ましくは2~8の整数である。
Zはカップリング剤残基を表す。ここで、カップリング残基とは、共役ジエン化合物単量体単位とビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位との共重合体の複数を、重合体ブロックA2-重合体ブロックA2間、重合体ブロックB2-重合体ブロックB2間、又は重合体ブロックA2-重合体ブロックB2間において結合させるために用いられるカップリング剤の結合後の残基を意味する。カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、後述するジハロゲン化合物や酸エステル類等が挙げられる。
少なくとも1個の重合体ブロックB2が、前記水添ブロック共重合体(a-2)の末端にあり、末端にある重合体ブロックB2の含有量が、前記水添ブロック共重合体(a-2)中、0.5~9質量%であることにより、本実施形態の熱可塑性エラストマーは、より柔軟性に優れる傾向にある。末端にある重合体ブロックB2の含有量については、重合反応に用いた全モノマーの質量から、末端で重合させた共役ジエンの質量を、除することにより、算出することができる。
水添ブロック共重合体(a-2)において、少なくとも1個の重合体ブロックB2が末端にあり、当該末端にある重合体ブロックB2の含有量を上記数値範囲とするためには、水添ブロック共重合体(a-2)の重合工程において、単量体の添加時期や添加量を調整する方法が有効である。
水添ブロック共重合体(a-2)の重量平均分子量が120,000以上であると、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物のC-set等の圧縮永久歪みが小さい特性が得られる。すなわち、回復性が向上する。水添ブロック共重合体(a-2)の重量平均分子量が230,000以下であると、熱可塑性エラストマー組成物の反発弾性が向上し、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を用いた医療容器用栓体において、十分な再シール性、針刺し抵抗性改善効果が得られる。同様の観点から、水添ブロック共重合体(a-2)の重量平均分子量は、好ましくは140,000~220,000であり、より好ましくは150,000~210,000であり、さらに好ましくは160,000~200,000である。
水添ブロック共重合体(a-2)における共役ジエン化合物単量体単位中の水素添加前のビニル結合量が63モル%以上であると、後述するポリプロピレン系樹脂(b)との相容性が向上する傾向にあり、本実施形態の熱可塑性エラストマーの柔軟性、回復性がより向上し、再シール性がより向上する傾向にある。また、共役ジエン化合物単量体単位中の水素添加前のビニル結合量が95モル%以下であれば、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の機械強度がより向上し、コアリングがより向上する傾向にある。
炭化水素溶媒としては、特に限定されず、例えば、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
重合開始剤に含まれるアルカリ金属としては、以下に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。なお、アルカリ金属は、1分子中に1種、又は2種以上含まれていてもよい。具体的には、以下に限定されないが、例えば、n-プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec-ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec-ブチルリチウムと少量の1,3-ブタジエンの反応生成物等が挙げられる。
さらにまた、米国特許5,708,092号明細書に開示されている1-(t-ブトキシ)プロピルリチウム及びその溶解性改善のために1~数分子のイソプレンモノマーを挿入したリチウム化合物;英国特許2,241,239号明細書に開示されている1-(t-ブチルジメチルシロキシ)ヘキシルリチウム等のシロキシ基含有アルキルリチウム;米国特許5,527,753号明細書に開示されているアミノ基含有アルキルリチウム、ジイソプロピルアミドリチウム及びヘキサメチルジシラジドリチウム等のアミノリチウム類も使用することができる。
調整剤は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、前記一般式中、R1、R2、R3は炭素数1~20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭化水素基を示す。
第3級アミン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-エチルピペリジン、N-メチルピロリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’-ジオクチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
直鎖状エーテル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。
環状エーテル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5-ジメチルオキソラン、2,2,5,5-テトラメチルオキソラン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
重合温度は、特に限定されないが、通常は0~180℃であり、好ましくは30~150℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1~10時間である。
また、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合することが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。
ここで、一般式中、R1は炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3又は4の整数を表す。
好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物、及び当該チタノセン化合物と還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、特に限定されないが、例えば、特開平8-109219号公報に記載された化合物等が挙げられる。具体的には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の、置換又は非置換のシクロペンタジエニル構造、インデニル構造、及びフルオレニル構造を有する配位子を少なくとも1つ以上有する化合物等が挙げられる。
還元性有機金属化合物としては、以下に限定されないが、例えば、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。
水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1~15MPa、より好ましくは0.2~10MPa、さらに好ましくは0.3~5MPaである。
水添反応の反応時間は、通常3分~10時間、好ましくは10分~5時間である。
なお、水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
水添ブロック共重合体と溶媒を分離する方法としては、以下に限定されないが、例えば、水添ブロック共重合体の溶液に、アセトン又はアルコール等の水添ブロック共重合体に対して貧溶媒となる極性溶媒を加えて、水添ブロック共重合体を沈澱させて回収する方法、あるいは、水添ブロック共重合体の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、水添ブロック共重合体の溶液を直接加熱することによって溶媒を留去する方法等が挙げられる。
酸化防止剤としては、以下に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
具体的には、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチル-フェニル)プロピオネート、テトラキス-〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン]、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウムとポリエチレンワックス(50%)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ブチル酸,3,3-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エチレンエステル、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル-アクリレート、及び2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-エチル〕-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、ポリプロピレン系樹脂(b)を含有する。
ポリプロピレン系樹脂(b)としては、以下に限定されないが、例えば、プロピレン単独重合体、又は、プロピレンとプロピレン以外のオレフィン、好ましくは炭素数が2~20のα-オレフィン、とのブロック共重合体もしくはランダム共重合体、あるいはそれらのブレンド物が挙げられる。
炭素数が2~20のα-オレフィンとしては、以下に限定されないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられ、好ましくは炭素数2~8のα-オレフィンであり、より好ましくはエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンである。
前記ポリプロピレン系樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
チーグラー・ナッタ型触媒に用いられるチタン含有固体状遷移金属成分としては、以下に限定されないが、例えば、チタン、マグネシウム及びハロゲンを必須成分とし、電子供与性化合物を任意成分とする固体成分、又は三塩化チタンが挙げられ、有機金属成分としては、以下に限定されないが、例えば、アルミニウム化合物が挙げられる。
これらの重合方法において、プロピレン単独重合体を得る場合にはプロピレンのみを重合し、共重合体を得る場合にはプロピレンとプロピレン以外の単量体を重合する。
ポリプロピレン系樹脂(b)の含有量が10質量部以上であると、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物において良好な流動性が得られ、優れた成形加工性、コアリング性が得られる。ポリプロピレン系樹脂(b)の含有量が50質量部以下であると、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物において、良好な反発弾性、柔軟性が得られ、優れた針刺し抵抗性が得られる。
本実施形態の熱可塑性エラストマーは、ポリフェニレンエーテル樹脂(c)を含有してもよい。
ポリフェニレンエーテル樹脂(c)は、下記一般式(I)で表される繰り返し構造単位を有する、単独重合体及び/又は共重合体であることが好ましい。
R2~R5は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、第一級若しくは第二級のC1~C7アルキル基、フェニル基、C1~C7ハロアルキル基、C1~C7アミノアルキル基、C1~C7ヒドロカルビロキシ基、又はハロヒドロカルビロキシ基(ここで、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表す。
これらの中でも、工業的生産性と耐熱性能の観点から、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体、又はこれらの混合物が好ましい。
ここで、変性ポリフェニレンエーテル樹脂とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたポリフェニレンエーテル樹脂をいう。
これらの中でも、水添ブロック共重合体(a)とポリフェニレンエーテル樹脂(c)の相容性の観点から、好ましくはフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸であり、より好ましくはフマル酸、無水マレイン酸である。
また、これら不飽和ジカルボン酸の2個のカルボキシル基のうちの1個又は2個がエステルになっている化合物も使用可能である。
ポリフェニレンエーテル樹脂(c)の前記還元粘度が0.15dL/g以上であると、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物において、良好な回復性が得られる傾向にあり、0.70dL/g以下であると、優れた加工性が得られる傾向にある。
ポリフェニレンエーテル樹脂(c)の還元粘度は、ポリフェニレンエーテル樹脂(c)の製造工程において、触媒の種類、重合時間、及び重合温度を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
ポリフェニレンエーテル樹脂(c)の還元粘度は後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
ポリスチレン系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、汎用ポリスチレン(GPPS)、ゴム成分で補強された耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン-ブタジエン共重合体、本実施形態で用いる水添ブロック共重合体(a)以外の水添スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
ポリプロピレン系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、プロピレンとプロピレン以外のオレフィン、好ましくは炭素数2~20のα-オレフィン、とのブロック共重合体もしくはランダム共重合体、あるいはそれらのブレンド物を挙げることができる。
ポリフェニレンエーテル樹脂(c)の含有量が5質量部以上であれば、十分な回復性と反発弾性が得られる。ポリフェニレンエーテル樹脂(c)の含有量が100質量部以下であると、熱可塑性エラストマー組成物の成形加工性が良好なものとなる傾向にある。
臭気の低減化の観点からは、ポリフェニレンエーテル樹脂(c)を含有しないか、含有量が少ない方が好ましく、含有量は10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、含有しないことがさらによりさらにより好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂(c)を含有する場合であっても、後述する無機多孔質吸着剤(f)を併用することで臭気を低減することができるので、この場合には、10質量部を超える含有量であっても、臭気の少ない熱可塑性エラストマー組成物が得られる。ただし、表面処理していないフィラーは樹脂との相容性が低い場合があり、表面処理しない無機多孔質吸着剤(f)を含有することで、耐液漏れ性が悪化する場合もある。従って、臭気が少なく、液漏れも少ない薬栓用の熱可塑性エラストマー組成物を得るためには、ポリフェニレンエーテル樹脂(c)の含有量はより少なく、表面処理しない無機多孔質吸着剤(f)の添加量もより少ないことが好ましい。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、非芳香族系軟化剤(d)を含有する。
軟化剤を非芳香族系のものとすることで、色調が良好で、衛生面や安全面でも食品や医療用途にも適した熱可塑性エラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
また、芳香族系軟化剤は芳香族ビニルブロックに入り込んで、熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性を悪化させる傾向にあるが、非芳香族系軟化剤を採用することで、耐熱性の観点からも良好である。
非芳香族系軟化剤(d)としては、芳香族性を示さず、水添ブロック共重合体を軟化しうるものであれば特に限定されない。水添ブロック共重合体が「軟化」すると、軟化剤が水添ブロック共重合体の芳香族ビニルブロックを崩さず、共役ジエンブロックに取り込まれて相容した状態になると想定される。軟化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、パラフィンワックス、流動パラフィン、ホワイトミネラルオイル、植物系軟化剤等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を含む医療容器用の栓体の低温特性や耐溶出性等の観点から、パラフィン系オイル、流動パラフィン、ホワイトミネラルオイルが好ましい。
非芳香族系軟化剤(d)の40℃における動粘度が500mm2/秒以下であれば、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の流動性がより向上し、成形加工性がより向上する傾向にある。
非芳香族系軟化剤(d)の動粘度は、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定することができる。
非芳香族系軟化剤(d)が、40℃における動粘度が前記範囲内である非芳香族系軟化剤(d-1)を含むものであれば、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、非芳香族軟化剤保持性、すなわちオイル保持性が良好で、さらに回復性と反発弾性のバランスが向上する傾向にある。
非芳香族系軟化剤(d)が、40℃における動粘度が100mm2/秒以下である非芳香族系中剤(d-2)を含むものであれば、良好なオイル保持性を維持したまま、柔軟性、成形加工性により優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られる傾向にある。
例えば、非芳香族系軟化剤(d-1)と非芳香族系軟化剤(d-2)を組み合わせて用いることができる。
非芳香族系軟化剤(d-1)と非芳香族系軟化剤(d-2)を組み合わせることによって、非芳香族系軟化剤の保持性を向上することができ、かつ柔軟性、回復性、反発弾性、成形加工性のバランスがより向上する傾向にある。
(d-1)/(d-2)が30/70~60/40の範囲であれば、柔軟性、回復性、反発弾性、成形加工性のバランスがより向上する傾向にあるため好ましい。
非芳香族系軟化剤(d)の含有量が前記範囲内であれば、非芳香族系軟化剤(d)の保持性をより向上でき、かつ成形加工性、回復性により優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られる傾向にある。
非芳香族系軟化剤(d)全体の合計含有量が前記範囲内であれば、組み合わせる2種以上の非芳香族系軟化剤の双方の特性を良好に発揮できる傾向にある。
本実施形態においては、非芳香族系軟化剤(d)が、40℃における動粘度が300~400mm2/秒である非芳香族系軟化剤(d-1)と、40℃における動粘度が100mm2/秒以下である非芳香族系軟化剤(d-2)の混合物であり、非芳香族系軟化剤(d-1)と非芳香族系軟化剤(d-2)の質量比((d-1)/(d-2))が30/70~60/40であり、非芳香族系軟化剤(d-1)と非芳香族系軟化剤(d-2)の合計含有量が、水添ブロック共重合体(a)100質量部に対し、100~200質量部であることがさらに好ましい。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、針保持性の観点から、無機充填剤(e)として、表面処理されたシリカを含有する。
その他の無機充填剤としては、例えば、表面処理されていないシリカでもよいし、表面処理され、又は表面処理されていないタルク、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸亜鉛、ウォラスナイト、ゼオライト、ワラストナイト、アルミナ、クレー、酸化チタン、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、ハイドロタルサイト、硫酸バリウム、チタンブラック等や、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックでもよい。
その他の無機充填剤として、表面処理された無機充填剤を添加すると、水添ブロック共重合体とポリプロピレン系樹脂との界面接着が良好で、界面剥離が起きにくく、エネルギーロスが少ないため再シール性が良好になる傾向がある。一方で、表面処理していない充填剤を添加すると、界面接着が悪く、組成物が裂けやすくなるため、針刺し抵抗を下げることができる傾向にある。
これらの中でも、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を含む医療容器用の栓体の再シール性等の観点から、表面処理されたタルク、炭酸カルシウム、クレーが好ましく、タルク、炭酸カルシウムがより好ましい。
本発明者は、無機充填剤(e)として、表面処理されたシリカを用いるものとすることにより、当該熱可塑性エラストマー組成物が医療用の容器のゴム栓として利用された場合に、蒸気滅菌処理後の再シール性悪化を防止できることを見出した。
表面処理の前後の表面状態を顕微IRで観察することにより、シリカが「表面処理」された状態かを確認できる。表面処理されていない状態では、シリカの表面は親水基で覆われており、炭化水素系の樹脂及び/又は水添ブロック共重合体との相容性は高くない。一方、シリカを脂肪酸等で表面処理すると、表面が炭化水素で修飾されるため、炭化水素系樹脂及び/又は水添ブロック共重合体との相容性が向上する。これに伴って、炭化水素系樹脂及び/又は水添ブロック共重合体へのシリカの分散も良好となり、界面の密着性も向上する。
なお、シリカ以外の無機充填剤も、上記と同様の方法により、表面状態を観察できる。
例えば、表面処理剤が、脂肪酸、樹脂酸、油脂、又は界面活性剤の場合、乾式処理としては、粉末状の表面処理剤をシリカと混合し、加熱されたボールミルやローラーミル等の粉砕機、あるいはリボンブレンダーやヘンシェルミキサー等のミキサーで粉砕しながら溶融かつ化学反応させることにより表面処理が行われる。
また、融点が高く非水溶性のものを表面処理剤として用いる場合は、エマルジョン状態とするか又はアルコールに溶解した溶液として、粉砕機又はミキサーの中に注入しながらシリカと撹拌・混合し、その後乾燥することにより、表面処理が行われる。
湿式処理としては、シリカの合成時のスラリーに、表面処理剤を添加し、加熱しながらミキサー等で撹拌することにより、シリカの表面処理が行われる。融点が高いものを表面処理剤として用いる場合は、エマルジョン状態として使用し、同様にシリカの合成時に添加して撹拌することにより表面処理が行われる。
カップリング剤を表面処理剤として用いる場合、水溶性のものは、通常水とエタノールの混合液をpH調整したのち、その溶液中にカップリング剤を添加し、シリカの入った加熱されたヘンシェルミキサー等の高速撹拌ミキサー中にスプレーすることにより、シリカの表面と化学反応し、表面処理が行われる。カップリング剤のうち非水溶性のものを表面処理剤として用いる場合は、カップリング剤をアセトンやアルコール等に溶解し、上記と同様に、シリカの入った加熱された高速攪拌ミキサー中にスプレーすることによりシリカの表面処理が行われる。
なお、シリカ以外の材料においても、同様の方法により表面処理を行うことができる。
上述のように、表面処理によってシリカと水添ブロック共重合体(a)やポリプロピレン系樹脂(b)との界面接着が良好になる傾向があるが、特に、シリカの表面処理剤としてトリメチルシリル系シランカップリング剤、ジメチルシリル系シランカップリング剤を用いることにより、界面剥離が一層起こりにくくなる。これは、トリメチルシリル系シランカップリング剤、ジメチルシリル系シランカップリング剤とシリカとの化学結合に起因するものと考えられる。
無機充填剤(e)である表面処理されたシリカの含有量が前記範囲内であれば、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を含む栓体、特に医療用容器に用いる栓体において、優れた針保持性が得られる傾向にある。
平均一次粒径のより好ましい上限値は1μm、さらに好ましくは0.05μmである。平均一次粒径のより好ましい下限値は、0.01μmであり、さらに好ましくは0.015μmである。
無機充填剤(e)であるシリカの平均一次粒径が0.001μm以上であることにより、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性の向上効果が得られ、2μm以下であることにより、熱可塑性エラストマー組成物への均一分散性の向上の効果が得られる。
なお、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物においては、上述したように、表面処理したシリカに加え、その他の無機充填剤として、表面処理していない無機充填剤を併用してもよい。
未表面処理の無機充填剤を添加し界面の密着性を低下させることで、針刺し抵抗を低下させる効果が期待できる。未表面処理の無機充填剤の添加量としては、再シール性を良好に保つ観点で、添加する全無機充填剤の半分程度を上限とすることが好ましい。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は臭気改善の観点から、無機多孔質吸着剤(f)をさらに含有していてもよい。
これらの無機化合物は1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、医療用容器の栓体用途の場合、臭気改善の観点から、ゼオライト;SiO2及びAl2O3と他の金属酸化物や金属塩との複合物が好ましい。
(ここで、MIはLi+,Na+,K+等の1価の金属カチオン、MIIはCa2+,Mg2+,Ba2+等の2価の金属カチオンであり、複数存在する場合は、互いに同一であっても異なるものであってもよい。n、mはそれぞれ2以上の整数であり、n≧mであるものとする。)
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、表面処理されたシリカを無機充填剤(e)として用いており、当該シリカは、前記数値程度の比表面積を有するため、無機多孔質吸着剤(f)を別途添加しなくても、無機充填剤(e)であるシリカが吸着剤として機能しうる。
より高い吸着性能を求める場合には、多孔質シリカ等、一層高い比表面積を有する吸着剤を、無機多孔質吸着剤(f)としてさらに添加することが好ましい。当該無機多孔質吸着剤(f)としての多孔質シリカの好ましい比表面積は400m2/g以上であり、より好ましくは600m2/g以上、さらに好ましくは800m2/g以上である。
無機多孔質吸着剤(f)の配合量が前記範囲内であれば、本実施形態の栓体の臭気改善に、より優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られる傾向にある。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、回復性の観点から、有機過酸化物(g)存在下で部分架橋されていてもよい。
有機過酸化物(g)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルクミルペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロキシペルオキシド、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ベンゾイルペルオキシド、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート等が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上の有機過酸化物を組み合わせて使用してもよい。
有機過酸化物(g)の使用量は、水添ブロック共重合体(a)100質量部に対し、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.1~4質量部、さらに好ましくは0.3~3質量部である。
有機過酸化物(g)の使用量が前記範囲内であれば、加工性を低下させることなく、回復性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られる傾向にある。
また、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を部分架橋する場合、架橋度を調整するために必要に応じて架橋助剤を使用することができる。
架橋助剤(h)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタルアミド、トリアリルホスフェート、ジビニルベンゼン、エチレンジメタクリレート、ジアリルフタレート、キノンジオキシム、エチレングリコールジメタクリレート、多官能性メタクリレートモノマー、多価アルコールメタクリレート及びアクリレート、不飽和シラン化合物(例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)等が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用して使用することができる。
架橋助剤(h)の使用量は、水添ブロック共重合体(a)100質量部に対し、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~8質量部、さらに好ましくは0.5~7質量部である。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、本実施形態の目的を損なわない範囲で、上述した(a)~(h)の成分以外に、さらにその他の添加剤を含んでいてもよい。
その他の添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、可塑剤、光安定剤、結晶核剤、衝撃改良剤、顔料、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、相容化剤、及び粘着性付与剤等が挙げられる。
特に滑剤としてシリコンオイルを添加すると摺動性が向上し、針刺し抵抗の低下、コアリングの改善に効果的である。
シリコンオイルの種類としては、一般的なジメチルポリシロキサン、フェニル-メチルポリシロキサン等が挙げられ、特にジメチルポリシロキサンが好ましい。
シリコンオイルの添加量としては、水添ブロック共重合体(a)100質量部に対し、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.7~7質量部、さらに好ましくは1.0~5質量部である。シリコンオイルの動粘度としては特に制限はないが、10~10000mm2/秒が好ましく、50~7000mm2/秒がより好ましく、100~5000mm2/秒がさらに好ましい。
これらの添加剤は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性、歪回復性、針貫通性、及び耐液漏れ性の観点から、ショアーA硬度が55以下であり、針刺し抵抗性が4.0Kgf以下であることが好ましく、ショアーA硬度が55以下であり、JIS K6252に準拠して測定される引裂き強度が45N以下、針刺し抵抗性が4.0Kgf以下であることがより好ましい。
前記針刺し抵抗性は、引張試験機TG-5kN(ミネベア株式会社製)を用いて、ペットボトルに本実施形態の熱可塑性エラストマーよりなる栓体を上向きにした状態で固定し、上方から直径(根元最大径)5mmの樹脂針(プラスチックびん針)を速度200mm/分で栓体1の中心部に貫通させ、このときの最大荷重を測定した値とする。
ショアーA硬度が55以下であり、引裂き強度が45N以下、針刺し抵抗性が4.0Kgf以下であれば、より確実に十分な柔軟性と、針刺貫通性が得られる傾向にあり、耐液漏れ性にも優れる傾向にある。
同様の観点から、より好ましくは、ショアーA硬度が53以下であり、引裂き強度が42N以下、針刺し抵抗性が3.7Kgf以下、さらに好ましくはショアーA硬度が50以下であり、引裂き強度が38N以下、針刺し抵抗性が3.5Kgf以下である。
特に下限はないが、ショアーA硬度は20以上が好ましく、引裂き強度が20N以上、針刺し抵抗性が1.0Kgf以上が好ましい。
ショアーA硬度、引裂き強度、針刺し抵抗性は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
本実施形態の熱可塑性エラストマーにおいて、水添ブロック共重合体(a)、ポリプロピレン系樹脂(b)、及び非芳香族系軟化剤(d)の含有量を調整したり、水添ブロック共重合体(a)においてビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量や分子量等の構造を調整したり、(b)~(c)成分においてこれらの分子量、MFR、粘度等を調整したりすることにより、ショアーA硬度、引裂き強度、及び針刺し抵抗性を前記数値範囲に制御することができる。
臭気強度は、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を適用できる。
例えば、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、ラボプラストミル、ミックスラボ、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。
また、成分(a)~成分(f)の一部と有機過酸化物(g)及び必要に応じて架橋助剤(h)を混合し、架橋した後に、残りの成分を混合してもよい。
部分架橋は、使用する有機過酸化物(g)の分解が起こる温度、一般には150~250℃の温度条件下で行うことができる。
成分(a)~(f)の一部又は全部の複合化と有機過酸化物(g)(及び必要に応じて添加する架橋助剤(h))による架橋を同時に行う場合には、使用する有機過酸化物(g)の分解が起こる温度で、前記溶融混練機を用いる等して複合化することもできる。
本実施形態の栓体は、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を含み、本実施形態の容器は、本実施形態の栓体を具備する。
本実施形態の栓体は、医療用の気密容器や密閉容器に用いられることが好ましく、注射針を刺す用途の場合は、概略筒状の蓋体や、所定の治具の中に円柱状の栓体が嵌め込まれ、蓋体又は治具と一体となって用いられるのが代表的な形態である。
前記治具としては、以下に限定されるものではないが、例えば、所定の枠組み、キャップ、ハウジング、封止材等が挙げられる。具体的には、輸液バッグのキャップとして利用される形態が挙げられる。
他方、円柱状の栓体単独で用いられる場合もあり、ガラス瓶の口部に嵌め込まれて密閉性の栓として機能する。
注射針を刺さない用途の場合は、ねじ等で密閉できるようになっている容器の蓋の内面に円盤状の栓体が嵌め込まれることで、密閉性の向上に寄与する。
本実施形態の容器は、本実施形態の栓体を備える。
医療用の容器としては気密容器又は密閉容器であることが好ましく、以下に限定されないが、例えば、輸液バッグ、腹膜透析バッグ、輸液ボトル、輸液ソフトボトル、ガラスバイアル、プラスチックバイアル等が挙げられる。
前記栓体は、特に限定されないが、例えば、射出成形、圧縮成形、押出成形からの打ち抜き等により製造することができる。
寸法精度や表面粗さの再現性という観点からは、射出成形により製造することが好ましい。
先ず、実施例及び比較例に適用した、評価方法及び物性の測定方法について下記に示す。
((1)重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布)
水添ブロック共重合体(a)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して、クロマトグラムのピークの分子量に基づいて求めた。
測定ソフトとしては、HLC-8320ECOSEC収集を用い、解析ソフトとしてはHLC-8320ECOSEC解析を用いた。
(測定条件)
GPC ;HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
検出器 ;RI
検出感度 ;3MV/分
サンプリングピッチ;600MSEC
カラム ;TSKGEL SUPERHZM-N(6MMI.D×15CM)4本(東ソー株式会社製)
溶媒 ;THF
流量 ;0.6ML/分
濃度 ;0.5MG/ML
カラム温度 ;40℃
注入量 ;20ML
水添ブロック共重合体(a-1)中の重合体ブロックA1、水添ブロック共重合体(a-2)中の重合体ブロックA2、すなわちポリスチレンブロックの数平均分子量Mnは、I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Soi.1,429(1946)に記載の方法に準拠して、後述する<水添ブロック共重合体(1)~(8)、(12)>、<水添ブロック共重合体(9)~(11)、(13)>を、四酸化オスミウムを触媒として、t-ブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解し、前記((1)重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布)に記載した方法と同様に、GPCを用いて測定し、ポリスチレン換算した数平均分子量を求めた。
ポリスチレンブロックの含有量は、<水添ブロック共重合体(1)~(8)、(12)>、<水添ブロック共重合体(9)~(11)、(13)>を、四酸化オスミウムを触媒として、t-ブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解し、その後メタノールで沈殿させ、固液分離して沈殿物を、紫外分光光度計(島津製作所製、UV-2450)を用いて測定し、ビニル芳香族化合物成分(スチレン)に起因する吸収波長(262nm)のピーク強度から検量線を用いてポリスチレンブロックの含有量を算出することにより求めた。
一定量の水添ブロック共重合体をクロロホルムに溶解し、紫外分光光度計(島津製作所製、UV-2450)にて測定し、ビニル芳香族炭化水素化合物成分(スチレン)に起因する吸収波長(262nm)のピーク強度から検量線を用いてビニル芳香族炭化水素単量体単位(スチレン)の含有量を算出した。
ブロック共重合体中の共役ジエン単量体単位のビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、下記の条件で測定した。
全ての反応終了後(水添ブロック共重合体については水添反応終了後)の反応液に、大量のメタノールを添加することで、ブロック共重合体を沈殿させて回収した。次いで、ブロック共重合体をアセトンで抽出し、抽出液を真空乾燥し、1H-NMR測定のサンプルとして用いた。
1H-NMR測定の条件を以下に記す。
(測定条件)
測定機器 :JNM-LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
サンプル濃度 :50MG/ML
観測周波数 :400MHZ
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
ビニル結合量は、得られたピーク中の共役ジエン単量体単位に関わる全てのピーク(1,2-結合、3,4-結合、1,4-結合)合計面積に対する1,2-結合及び3,4-結合のピーク合計面積の比率により求めた。
ブロック共重合体中の共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、前記((5)ビニル結合量)と同様の条件で測定した。
水素添加率は、得られたピーク中の共役ジエン単量体単位中の二重結合に関わる全てのピーク(1,2-結合、3,4-結合、1,4-結合)合計面積に対する水添された1,2-結合及び水添された3,4-結合及び水添された1,4-結合のピーク合計面積の比率を算出することにより求めた。
((7)ポリフェニレンエーテル樹脂(c)の還元粘度)
ポリフェニレンエーテル樹脂(c)の0.5g/dLのクロロホルム溶液を調製し、ウベローデ粘度管を用いて30℃における還元粘度(ηsp/c)[dL/g]を求めた。
GPC、HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)を用いて前記(1)と同様の条件により測定した。
ポリフェニレンエーテル樹脂(c)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(コールター社製、製品名LS-230)を用い、1-ブタノール溶媒中に分散させて3回以上測定し、各体積平均中位径の算術平均値を平均粒子径とした。
(実施例1~59、比較例1~23)
下記表3~表11に示す配合割合(質量部)に基づき、二軸押出機(日本製鋼所製「TEX-30αII」、シリンダー口径30mm)によって、設定温度230℃で溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
((10)メルトフローレート(MFR))
上述のようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットのメルトフローレート(MFR)を、ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
上述のようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを用いて、東邦プレス製作所製50t電熱プレスにて、金型(サイズ:110mm×220mm×2mm厚)を使用し、200℃、0.5kgf/cm2の加圧条件で予熱5分間、200℃、100kgf/cm2の加圧条件で2分間プレスし、2mm厚のプレスシートを作製した。
得られたプレスシートを用いて、下記の測定方法に従い物性を測定した。
((11)硬度)
JIS K6253に準拠し、タイプAデュロメーターを用いて測定した。
ショアーA硬度は55以下であれば、十分な柔軟性を有しているものと判断した。
JIS K6252に準拠し、切り込みなしアングル形試験片を用い、試験速度200mm/分で、引裂き強度を測定した。
前記〔熱可塑性エラストマーの製造〕で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを用い、射出成形機FE120S18A(日精樹脂工業株式会社製)で、直径20mm×厚み4mmの円柱状の栓体1を成形した。
図1(A)は、栓体1の概略上面図を示し、図1(B)は栓体1の概略断面図を示す。
なお、射出成形の条件は、樹脂温度:240℃、射出速度:45cm3/秒、射出時間:10秒、金型温度:40℃、冷却時間:40秒とした。
((13)針刺し抵抗性)
図1に示す栓体1を、図2に示すように、所定の治具にはめ込んだ。
図2(A)は、治具2の概略上面図を示し、図2(B)は治具2の概略断面図を示す。
治具2は、所定の容器の口に、ネジピッチ部21を介して、栓をする対象に取り付け可能な管状のホルダー22を有している。
当該治具2の開口端部に前記栓体1をはめ込み、抑えリング23で固定した。
次に、500mLの水を充填したペットボトルの口栓部に、栓体1をはめ込んだ状態の治具2を取り付け、固定した。
引張試験機TG-5kN(ミネベア株式会社製)に、前述したペットボトルを、栓体1を上向きにした状態で固定し、上方から直径(根元最大径)5mmの樹脂針(プラスチックびん針)を速度200mm/分で栓体1の中心部に貫通させた。このときの最大荷重を測定した。
使用針は、テルモ株式会社製 テルフュージョン輸液セット(TK-U200L)とした。
最大荷重が小さいほど、針刺し抵抗性は低く良好であると判断した。
測定数は4個で、単純平均したもの測定値とした。
判定は、○:4Kgf以下、×:4Kgfを超えるとし、○が実用上良好であると評価した。
まず、図1に示す栓体1を、図2に示すように、所定の治具2にはめ込んだ。
次に、抑えリング23が、栓体1をはめ込んだホルダー22に完全に接触した状態になるように他の治具で固定し、ヤマト科学株式会社製オートクレーブSN500型にて、121℃、20分間、蒸気圧力0.104MPaで蒸気滅菌処理をした。
その後、装置内で2時間冷却し、取り出し、更に23℃の室温で2時間かけて冷却した後、上述した((13)針刺し抵抗性)と同様に、図1の栓体1が、図2の治具2にはめ込まれた状態で、500mLの水を充填したペットボトルの口栓部に取り付け、固定した。
ボトルを逆さにし、栓体部分を下側にした。その際、栓体内側の面から液面までの高さは18.5cmmであった。
ボトルの底部(上方側)に、直径3mmの穴を開け、栓体1の中心部に直径(根元最大径)5mmの樹脂針(プラスチックびん針)を針の最大径の部分まで刺した。
そのまま4時間放置し、針を抜き、針刺し痕からの漏れた水の質量を測定した。
漏れ量が小さいほど、再シール性が良好と判断した。
測定数は8個で、単純平均したものを測定値とした。
判定は、◎:漏れが0.5g以下、○:漏れが0.5gを超え1.0g以下、×:漏れが1.0gを超える、とし、◎が極めて優れるもの、○が実用上良好であると評価した。
熱可塑性エラストマー組成物のペレット100gを、500mLの耐圧ガラス瓶に入れて密封し、70℃で1時間加熱した後、室温にて48時間放置した。
その後、10名の被験者がガラス瓶の口部から臭気を確認し、下記<臭気強度>により評価した。
判定は下記の臭気強度の平均値を算出し、下記の基準で行った。
○:臭気強度3未満、×:臭気強度3以上とし、○が実用上良好であると評価した。
<臭気強度>
0;無臭、1;やっと感知できる臭い、2;何の臭いかわかる弱い臭い、2.5;2と3の中間、3;楽に感知できる臭い、3.5;3と4の中間、4;強い臭い、5強烈な臭い
上述した((13)針刺し抵抗性)と同様に、図1の栓体1を、図2の治具2にはめ込み、500mLの水を充填したペットボトルの口栓部に取り付け、固定した。
ボトルの栓体1の中心部に直径(根元最大径)5mmの樹脂針(プラスチックびん針)を5回刺し抜いた後、内容水中もしくは針表面において、栓体の削りかすの有無を目視で確認した。
削りかすが無いものが、コアリング性が良好であると判断した。
測定数は5個で、判定は、○:全てに削りかす無、×:1つでも削りかす有とし、○が実用上良好であると評価した。
第十七改正日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法溶出物試験に準拠し、前記〔プレスシートの作製〕で得られたプレスシートを用いて、性状、pH、亜鉛、過マンガン酸カリウム還元性物質、蒸発残留物、紫外吸収スペクトルの測定を行った。
判定は第十七改正日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法溶出物試験に準拠し、下記の通りとした。
<性状>
第十七改正日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法溶出物試験に準拠し、調製した試験液が無色透明で、空試験液を対照として波長430nm及び650nmの透過率を測定し、それぞれ99.9%以上で適合と評価した。
<pH>
第十七改正日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法溶出物試験に準拠し、調製した試験液及び空試験液のpHを測定し、その差が1.0以下で適合と評価した。
<亜鉛>
原子吸光光度法により試験を行い、第十七改正日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法溶出物試験に準拠し、調製した試料溶液の吸光度が標準溶液の吸光度以下で適合と評価した。
表10及び表11中、適合である場合を「〇」、不適合である場合を「×」で示した。
<過マンガン酸カリウム還元性物質>
第十七改正日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法溶出物試験に準拠し、調製した試験液及び空試験液を0.001mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定を行い、0.002mol/L過マンガン酸カリウム液の消費量の差が2.0mL以下で適合と評価した。
<蒸発残留物>
第十七改正日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法溶出物試験に準拠し、調製した試験液を蒸発乾固し、乾燥した後の残留物が、2.0mg以下で適合と評価した。
<紫外吸収スペクトル>
第十七改正日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法溶出物試験に準拠し、調製した試験液につき、空試験液を対照とし、紫外可視吸光度測定法により試験を行い、波長220~350nmにおける吸光度の差が0.20以下で適合と評価した。
後述する実施例及び比較例において、水添ブロック共重合体を作製する際に用いる水添触媒を、下記の方法により調製した。
攪拌装置を具備する反応容器を窒素置換しておき、これに、乾燥及び精製したシクロヘキサンを1L仕込んだ。
次に、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100mmolを添加した。
これを十分に攪拌しながら、トリメチルアルミニウム200mmolを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ、水添触媒を得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、1,3-ブタジエンモノマー5質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.080質量部と、テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDA)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.38モル添加し、70℃で15分間重合した。
次いで、スチレンモノマー18質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合し、さらに、1,3-ブタジエンモノマー60質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合した。
最後に、スチレンモノマー17質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
水添反応終了後、安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(1)を得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー16質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.067質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して0.48モル添加し、70℃で25分間重合した。
次いで、1,3-ブタジエンモノマー69質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合し、最後に、スチレンモノマー15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー16質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.067質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して0.45モル添加し、70℃で25分間重合した。
次いで、1,3-ブタジエンモノマー69質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合し、最後に、スチレンモノマー15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー16質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.044質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して0.50モル添加し、70℃で25分間重合した。
次いで、1,3-ブタジエンモノマー70質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合し、最後に、スチレンモノマー14質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー17質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.115質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して0.35モル添加し、70℃で25分間重合した。
次いで、1,3-ブタジエンモノマー67質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合し、最後に、スチレンモノマー16質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
次に四塩化ケイ素をn-ブチルリチウムの1モルに対して0.2モル添加し、20分間カップリング反応させた。反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.15モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー16質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.142質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して0.24モル添加し、70℃で25分間重合した。
次いで、1,3-ブタジエンモノマー70質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合し、最後に、スチレンモノマー14質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー28質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.078質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で30分間重合した。
次いで、1,3-ブタジエンモノマー45質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて60℃で60分間重合し、最後に、スチレンモノマー27質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー16質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.066質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して0.45モル添加し、70℃で25分間重合した。
次いで、1,3-ブタジエンモノマー69質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合し、最後に、スチレンモノマー15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、1,3-ブタジエンモノマー5質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.085質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して1.5モル、更にナトリウム-t-ペントキシドをn-ブチルリチウム1モルに対して0.04モル添加し、60℃で20分間重合した。
次いで、スチレンモノマー7質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で20分間重合し、さらに、1,3-ブタジエンモノマー82質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて60℃で1.5時間重合した。
最後に、スチレンモノマー6質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で20分間重合した。重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー10質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.140質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して0.50モル添加し、70℃で25分間重合した。
次いで、1,3-ブタジエンモノマー81質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で50分間重合し、最後に、スチレンモノマー9質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー13質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.066質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して1.5モル、更にナトリウム-t-ペントキシドをn-ブチルリチウム1モルに対して0.04モル添加し、70℃で25分間重合した。
次いで、1,3-ブタジエンモノマー75質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて60℃で1.5時間重合した。最後に、スチレンモノマー12質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー22質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.115質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して0.55モル添加し、70℃で30分間重合した。
次いで、1,3-ブタジエンモノマー58質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて65℃で60分間重合し、最後に、スチレンモノマー20質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー5質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.078質量部とTMEDAをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で20分間重合した。
次いで、1,3-ブタジエンモノマー81質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて60℃で1.5時間重合し、最後に、スチレンモノマー4質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で20分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
ポリプロピレン系樹脂(b)は下記の市販品を使用した。
ポリプロピレン系樹脂(b):サンアロマー株式会社PM801A、プロピレン単独9重合体、MFR(230℃、2.16kg)13g/10分
ポリフェニレンエーテル樹脂(c)は下記方法に従い製造した。
公知の方法に基づき、2,6-ジメチルフェノールの酸化カップリング重合によりポリフェニレンエーテルを重合し、精製してポリフェニレンエーテル樹脂(c)を得た。
得られたポリフェニレンエーテル樹脂(c)の還元粘度(ηsp/c)(0.5g/dLのクロロホルム溶液,30℃測定)、数平均分子量、及び平均粒子径を下記に示す。
(c-1):還元粘度=0.45dL/g、数平均分子量=1.74万、平均粒子径=290μm
非芳香族系軟化剤(d)は下記の市販品を使用した。
非芳香族系軟化剤(d-1):出光興産社製ダイアナプロセスオイルPW380、パラフィン系オイル、重量平均分子量750、動粘度(40℃)=380mm2/秒
非芳香族系軟化剤(d-2):出光興産社製ダイアナプロセスオイルPW90、パラフィン系オイル、重量平均分子量530、動粘度(40℃)=90.5mm2/秒
無機充填剤(e)は下記の市販品を使用した。
無機充填剤(e-1):白石カルシウム株式会社製ホワイトンSB赤、平均粒子径1.8μm、BET法・比表面積1.2m2/g、炭酸カルシウム
無機充填剤(e-2):白石カルシウム株式会社製ライトンA、平均一次粒子径1.8μm、BET法・比表面積3m2/g、変性脂肪酸表面処理炭酸カルシウム
無機充填剤(e-3):日本エアロジル株式会社製エアロジルOX50、平均一次粒子径40nm、BET法・比表面積50m2/g、シリカ
無機充填剤(e-4):日本エアロジル株式会社製エアロジルR972V、平均一次粒子径16nm、BET法・比表面積110m2/g、ジメチルシリル表面処理シリカ
無機充填剤(e-5):日本エアロジル株式会社製エアロジルR976S、平均一次粒子径7nm、BET法・比表面積240m2/g、ジメチルシリル表面処理シリカ
無機充填剤(e-6):日本エアロジル株式会社製エアロジルRX50、平均一次粒子径40nm、BET法・比表面積35m2/g、トリメチルシリル表面処理シリカ
無機充填剤(e-7):日本エアロジル株式会社製エアロジルRY50、平均一次粒子径40nm、BET法・比表面積30m2/g、ジメチルシリコンオイル表面処理シリカ
無機充填剤(e-8):日本エアロジル株式会社製エアロジルR104、平均一次粒子径12nm、BET法・比表面積150m2/g、オクタメチルシクロテトラシロキサン表面処理シリカ
無機充填剤(e-9):日本エアロジル株式会社製エアロジルRA200HS、平均一次粒子径12nm、BET法・比表面積140m2/g、ヘキサメチルジシラザンとアミノシラン表面処理シリカ
無機充填剤(e-10):日本エアロジル株式会社製エアロジルR805、平均一次粒子径12nm、BET法・比表面積150m2/g、オクチルシラン表面処理シリカ
無機充填剤(e-11):日本エアロジル株式会社製エアロジルR711、平均一次粒子径12nm、BET法・比表面積150m2/g、メタクリロキシシラン表面処理シリカ
無機充填剤(e-12):協和化学工業株式会社製キスマ5B、平均一次粒子径0.92μm、BET法・比表面積4.3m2/g、高級脂肪酸表面処理水酸化マグネシウム
無機充填剤(e-13):協和化学工業株式会社製パイロキスマ5301K、平均一次粒子径2μm、BET法・比表面積1.4m2/g、シランカップリング剤表面処理酸化マグネシウム
無機多孔質吸着剤(f)は下記の市販品を使用した。
無機多孔質吸着剤(f-1):ユニオン昭和株式会社製モレキュラーシーブUSYZ2000、平均粒子径3~5μm、BET法・比表面積500m2/g、合成ゼオライト(アルミノケイ酸ナトリウム)
無機多孔質吸着剤(f-2):大阪ガスケミカル株式会社製セブントールOM-1、平均粒子径2~2.5μm、BET法・比表面積≧200m2/g、合成ゼオライト(アルミノケイ酸ナトリウム)
シリコンオイルは下記の市販品を使用した。
シリコンオイル:東レ・ダウコーニング株式会社製SH200・100Cs、ジメチルポリシロキサン、動粘度100mm2/秒
なお、ブロック共重合体の型は、水添ブロック共重合体(a-1)及び(a-2)のいずれにおいてもスチレンブロックをA、ブタジエンブロックをBと表す。
熱可塑性エラストマー組成物の組成及び特性について、表3~表11に示す。
2 治具
21 ネジピッチ部
22 ホルダー
23 抑えリング
Claims (11)
- 水添ブロック共重合体(a)100質量部と、
ポリプロピレン系樹脂(b)10~50質量部と、
非芳香族系軟化剤(d)75~200質量部と、
無機充填剤(e)1~150質量部と、
を、含む熱可塑性エラストマー組成物であって、
前記水添ブロック共重合体(a)が、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単
量体単位を主体とする重合体ブロックA1と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体
単位を主体とする重合体ブロックB1と、を含み、水素添加された水添ブロック共重合体
(a-1)を含有し、
前記水添ブロック共重合体(a-1)の重量平均分子量が100,000~550,0
00であり、
前記水添ブロック共重合体(a-1)の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含
有量が20質量%を超え50質量%以下であり、
前記無機充填剤(e)がシラン系カップリング剤で表面処理されたシリカである、熱可塑性エラストマー組成物。 - 前記水添ブロック共重合体(a)が、
前記水添ブロック共重合体(a-1)と、
少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック
A2と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックB2
と、を含み、水素添加された水添ブロック共重合体(a-2)と、を含有し、
前記水添ブロック共重合体(a-2)の重量平均分子量が120,000~230,0
00であり、
前記水添ブロック共重合体(a-2)の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含
有量が7質量%以上20質量%以下であり、
前記水添ブロック共重合体(a-1)と前記水添ブロック共重合体(a-2)の質量比
((a-1)/(a-2))が70/30~95/5である、請求項1に記載の熱可塑性
エラストマー組成物。 - 前記水添ブロック共重合体(a-2)において、前記共役ジエン化合物単量体単位中の
水素添加前のビニル結合量が63モル%~95モル%である、請求項2に記載の熱可塑性
エラストマー組成物。 - 前記水添ブロック共重合体(a-2)が、少なくとも2個のビニル芳香族炭化水素化合
物単量体単位を主体とする重合体ブロックA2と、少なくとも2個の共役ジエン化合物単
量体単位を主体とする重合体ブロックB2と、を有し、
少なくとも1個の前記重合体ブロックB2は、前記水添ブロック共重合体(a-2)の
末端にあり、当該末端にある重合体ブロックB2の含有量が、前記水添ブロック共重合体
(a-2)中0.5~9質量%である、請求項2又は3に記載の熱可塑性エラストマー組
成物。 - 前記水添ブロック共重合体(a-1)において、前記共役ジエン化合物単量体単位中の
水素添加前のビニル結合量が30モル%~60モル%である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 - ショアーA硬度が55以下であり、針刺し抵抗性が4.0kgf以下である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 - 6段階臭気強度表示法による臭気強度が3以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む、栓体。
- 請求項8に記載の栓体を具備する容器。
- 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む、医療用途に用いられる栓体。
- 請求項10に記載の栓体を具備する医療用途に使用される容器。
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