JP7266544B2 - パイル用紡績糸及び織編物 - Google Patents

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Description

本発明は、保温性に優れながら軽量性、嵩高性を兼ね備えたパイル用紡績糸、及びその紡績糸を裏毛又はシンカーパイルとして用いた織編物に関するものである。
木綿の織編物は、吸湿性が良く、接触冷感があるため、一年のうち夏によく使われる素材である。この木綿の織編物を秋冬においても使えるようにするために、太い糸で裏毛やパイルを作ったり、起毛したりすることで、織編物の厚みを高めて空気を多く含ませて保温性を高くすることが行われている。しかし、このような織編物は、重い生地になりやすいため、より軽く、保温性の高いパイル製品が要望されていた。
その要望に応える方策として、特許文献1では、肌触り感、軽量性、通気性を向上させ、縫製を容易にする無撚糸パイルを有するタオル製品として、パイル糸に、従来に比べて細番手(40~90番手)の無撚糸を用いたタオル製品が提案されている。しかし、このタオル製品は、パイルが細いことから軽量ではあるが、肉感の劣ったものになりやすかったり、解撚の工程を追加することでコストが高くなる問題があった。
また、特許文献2では、軽量感と嵩高性に優れる織編物を品質よく製造するのに適した複重層糸として、芯部が単糸繊度0.6~2.2dtexのアルカリ易溶性短繊維から構成され、鞘部が単糸繊度0.6~2.2dtexのセルロース短繊維から構成され、かつ芯部と鞘部との質量比率(芯:鞘)が10:90~60:40の範囲にある紡績糸が提案されている。しかし、この紡績糸は、織編物にした後にアルカリ易溶性短繊維が溶解して繊維間の隙間が多くなるため、繊維同志の拘束力が低下して毛抜けが起こり易く、摩耗による強力低下やピリングが起こり易い問題があった。
WO2015-49887号公報 特開2016-69755号公報
本発明は、上述の従来技術の現状に鑑みて創案されたものであり、保温性に優れながら軽量性、嵩高性を兼ね備えたパイル用紡績糸、ならびにその紡績糸をパイルに用いた織編物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、通常の紡績糸には使わない繊維長の極めて短い木綿短繊維を特定の条件で適正に用いることで、高い膨らみを持った裏毛やパイルに最適な紡績糸を提供できることを見出した。更に、この紡績糸を用いると、保温性が高く、軽量で嵩高性を備えた織編物を提供できることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)~(5)の構成を有するものである。
(1)英式番手5~30番手、撚係数Kが2.5~3.4の綿繊維からなるパイル用紡績糸であって、JIS-L1019A法で測定したときに前記紡績糸の平均繊維長が10~23mm、かつ短繊維含有率が30~50%であることを特徴とするパイル用紡績糸。
(2)JIS-L1095B法による比容積が6.0~8.5cm/gであることを特徴とする(1)に記載のパイル用紡績糸。
(3)(1)又は(2)に記載のパイル用紡績糸の製造方法であって、前記紡績糸の原料として、JIS-L1019A法で測定したときに平均繊維長が10~18mmの綿繊維Aを10~50重量%、平均繊維長が22~35mmの綿繊維Bを50~90重量%使用することを特徴とする製造方法。
(4)(1)又は(2)に記載されたパイル用紡績糸の混率が30~55重量%であるパイル織編物であって、比容積が6.0~8.0cm/gであることを特徴とするパイル織編物。
(5)パイル織編物が裏毛、又はシンカーパイルであることを特徴とする(4)に記載のパイル織編物。
本発明のパイル用紡績糸は、保温性、軽量性、嵩高性に優れるので、インナー、スウェット等のアウター、ベビー用品、タオル、寝具など、木綿を主体とする織編物に好適であり、軽くて膨っくらとして暖かい快適なパイル衣料品を提供することができる。
図1は、本発明の紡績糸(a)と従来の紡績糸(b)の側面写真である。 図2は、本発明の紡績糸の原料に用いた綿繊維Aの一例のステープルダイヤグラムを示す。 図3は、本発明の紡績糸の一例を解して取り出した繊維のステープルダイヤグラムを示す。 図4は、従来の紡績糸の一例を解して取り出した繊維のステープルダイヤグラムを示す。 図5は、本発明の織編物の編組織として実施例で使用された裏毛編物の組織図を示す。 図6は、本発明の織編物の編組織として実施例で使用されたシンカーパイルの組織図を示す。
本発明のパイル用紡績糸は、JIS-L1019A法で測定したときに平均繊維長が10~23mmであり、かつ短繊維含有率が30~50%であることを特徴とする。このように平均繊維長が短く、短繊維含有率が高いと、衣料用に使用できる糸にならないが、本発明では、原料として平均繊維長の異なる原綿を使用することで、平均繊維長が短いながらも衣料用として実用性のある糸を作ることができるだけでなく、パイルに最適な紡績糸を提供できるに至った。この紡績糸は、例えば衣料用として平均繊維長が比較的長い綿繊維Bに、衣料用では通常は使用しない平均繊維長が極端に短い綿繊維Aを混紡して製造されることが好ましい。短い方の綿繊維Aは、紡績糸の表面毛羽を増やして嵩高性を高める効果がある。また、長い方の綿繊維Bは、紡績糸の物性を実用性のある範疇に収める効果がある。そして、本発明では、原料として短い綿繊維Aと長い綿繊維Bとをうまく組み合わせて紡績することで、糸内に空気層を多く保持させて、嵩高性、軽量性を実現するとともに、パイル形状が綺麗でかつ圧縮弾性率をより高めることができるようになり、パイル用に優れた紡績糸を提供することができる。本発明のパイル用紡績糸の好ましい平均繊維長は15~22mmであり、好ましい短繊維含有率は33~45%である。平均繊維長が上記範囲未満であったり、短繊維含有率が上記範囲を超えると、出来上がった織編物からの毛羽脱落がおこって製品品質が低下し易くなる。平均繊維長が上記範囲を超えたり、短繊維含有率が上記範囲未満になると、本発明の軽くて、温かい性能を高め難くなり易い。
本発明の紡績糸においては、上記の特徴を達成するためには、繊維長が極端に短い綿繊維Aが含まれていることが必要である。綿繊維Aは、繊維長が短いため、紡績糸の強度等の物性向上には寄与しないが、紡績糸の表面毛羽を増やして見掛けの嵩高性を増やすことや、比較的長い綿繊維Bと組み合わせることで紡績糸中のデッドエアを増やして保温性を高めることに寄与することができる。そのため、本発明の紡績糸は、JIS-L1095B法による比容積が6.0~8.5cm/gであることができる。
本発明の紡績糸に使用される上記の極端に短い綿繊維Aは、JIS-L1019A法で測定したときに平均繊維長が10~18mmであることが好ましく、マイクロネヤ繊度の平均繊度が2.6~5.5μg/inchであることが好ましい。コストと品位の兼ね合いから、マイクロネヤ繊度が3.0~5.0μg/inchであることがさらに好ましい。これより太い繊維を使用すると、紡績糸横断面において構成される繊維の本数が少なくなりすぎて生産性が低下しやすく、糸斑も大きくなりやすい。このような極端に短い綿繊維Aとしては、コーマ工程での落ち綿やカードスライバーを短くカットしたもの等を使用することができる。本発明の紡績糸中の綿繊維Aの混率は、10~50重量%であることが好ましい。より好ましくは15~45重量%である。上記混率の範囲より少ないとデッドエアを増やす効果が少なく、保温性や軽量感、パイルの嵩高性を高めることが難しくなりやすい。上記混率の範囲を超えると衣料用紡績糸としての必要強度を得られ難しくなるとともに生産性が低下しやすくなる。
本発明の紡績糸に使用される上記の比較的長い綿繊維Bは、JIS-L1019A法で測定したときに平均繊維長が22~35mmであることが好ましく、マイクロネヤ繊度の平均繊度が2.6~5.5μg/inchであることが好ましい。より好ましくは3.4~5.0μg/inchの超長綿を用いるのがよい。平均繊維長及びマイクロネヤ繊度がこの範囲であると、実用的な強度を保持できるとともに、軽くて圧縮弾性の優れたパイルになる紡績糸を実現しやすい。具体的に使用できる原綿の種類としては、オーストラリア綿やピマ綿等を用いることができる。本発明の紡績糸中の綿繊維Bの混率は、50~90重量%であることが好ましい。より好ましくは55~85重量%である。上記混率の範囲より少ないと糸の物性が低下しやすくなる。上記混率の範囲を超えると嵩高性やパイルの圧縮弾性を高めることが難しくなる。ここで、原綿を直接測定した平均繊維長とその原綿を使った紡績糸を解撚して測定した平均繊維長は同一ではなく、生産工程中では繊維脱落や繊維の切断等が起こるため、単純計算で算出された値とは違うものになることに注意すべきである。従って、実際には、本発明の紡績糸の平均繊維長は、紡績糸から解した平均繊維長を表わすので、使用した原綿の平均繊維長より短くなる傾向がある。
本発明の紡績糸の一例を解撚して、JIS-L1019-7.2.1の繊維長のA法(ダブルソータ法)を用いて構成する繊維のステープルダイヤグラムを作図した。図2は、本発明の紡績糸の原料に用いた綿繊維Aのステープルダイヤグラム、図3は、本発明の紡績糸の一例を解して取り出した繊維のステープルダイヤグラム、図4は、従来の紡績糸の一例を解して取り出した繊維のステープルダイヤグラムを示す。これらの図から、本発明の紡績糸のステープルダイヤグラムには、繊維長の短い繊維が従来の紡績糸より多く含まれていることがわかる。
本発明の紡績糸の繊度は、英式番手で5~30番手である。好ましくは10~25番手である。繊度が上記の範囲より太いと、この紡績糸を使った織編物が重いものとなり、薄くて軽い織編物が得られにくい。また、上記範囲より細いと、紡績糸が細くなりすぎて保温性が得られにくいし、甘撚にしたときの紡績糸の強度が実用レベルに達しない場合がある。なお、本発明の紡績糸は、単糸でも双糸でも三子撚でもかまわないが、トータル繊度として5番手以上であることが必要である。
本発明の紡績糸は、保温性の点から撚係数Kが2.5~3.4である。好ましくは2.6~3.2である。撚係数が上記の範囲より小さいと、紡績糸の強度が実用レベルに達しない場合があり、上記の範囲より大きいと、保温性が向上しにくく、また従来の綿素材と同様の冷たい手触りになってしまいやすい。
本発明の紡績糸は、リング紡績法で生産することが好ましい。リング紡績法を用いて紡績方法を最適化することで、紡績糸の繊維間のデッドエアを増やして、嵩高性を最大限に高めることができる。本発明では、JIS-L1019A法で測定したときに平均繊維長が10~23mm、かつ短繊維含有率30~50%を達成するために、例えば上記のように極端に短い綿繊維Aと比較的長い綿繊維Bを用いて紡績条件を最適化すると、図1(a)に示すような糸側面の糸にすることができる。図1(a),(b)は、いずれも同じ繊度の紡績糸であるが、(a)が本発明の紡績糸であり、(b)が従来の紡績糸、即ち、通常のコーマ糸である。図1(a),(b)の対比から、両者は同じ繊度であるのに図1(a)が太い直径を持っていることがわかる。また、本発明の紡績糸は、撚角度が高くなっていることが好ましい。この撚角度の高さがパイルの嵩高性を高めている原因である。この高い撚角度を実現するには、精紡時に施撚スピードを下げながらも必要な撚り数を維持しながら精紡することが好ましい。具体的には、フロントローラーからトラベラまでの紡出張力を下げるようにする。スネルワイヤの上流での糸張力を測定して、最も低張力で安定した生産ができる条件に調整することが好ましい。
本発明の紡績糸は、裏毛やシンカーパイル、ラッチパイル、フレンチパイル、タオル織物等の織編物のパイルとして好適に用いることができる。
本発明の織編物は、上述した本発明の紡績糸の混率が30~55重量%であることが好ましい。好ましくは30~45重量%である。本発明の紡績糸の混率が上記範囲未満であると保温性と嵩高性を高めることが難しくなりやすい。本発明の紡績糸の混率が上記範囲を超えると地組織が貧弱になり、編地全体の物性を最低限に満たし難くなる傾向がある。他の糸を交編する場合には、薄くて軽い特性を維持するために60番手以上の細い糸条を使用することが好ましい。より好ましくは、80番手以上である。具体的には、50dtex以下のフィラメントや、紡績糸又は複合糸が好適に用いられる。
本発明の織編物の密度は、コースが25~29個/inch、ウエールが20~24個/inchが好ましい。コース密度が上記範囲未満の場合、膨らみに欠けやすく、上記範囲を超える場合、生地が硬くなり膨らみを得ることが難しい。また、ウエール密度が上記範囲未満の場合、膨らみに欠ける生地となりやすく、上記範囲を超えると生地が硬くなりやすい。
本発明の織編物の地組織に用いる糸は、特に限定はなく、衣料用や寝具、インテリア等の用途に適した一般的な糸を用いればよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアリレート等のポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル-塩化ビニル共重合体等を原料とするアクリル繊維、木綿、麻、毛、絹等の天然繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、レヨセル等の再生繊維等を使用することができる。中でも、適度な剛性を有することから、ポリエステル繊維が好ましく、特にポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。
本発明の織編物の厚みは、1.0~4.0mmであることが好適である。より好ましくは1.5~3.0mmである。上記範囲より薄いと、所望の保温性が得られにくく、上記範囲より厚くなると、保温性は得られるが、重くなるおそれがある。本発明の織編物は、目付が150~500g/mであることが好ましい。より好ましくは200~450g/mである。上記範囲より軽いものは、密度が甘くなりすぎて保温性が低下しやすく、上記範囲より重いものは、着用時の快適性が損われるおそれがある。
本発明の織編物の染色加工は、通常のセルロース繊維や、他の繊維との混用編地の加工方法を採用することができるが、本発明の紡績糸の繊維間空隙構造を潰さないよう張力に注意して加工する必要がある。例えば、乾燥や熱処理時に必要以上に編地にテンションや厚み方向の圧縮等をかけて加工しないこと等である。本発明の織編物は、綿の加工に通常用いられている精練・漂白の方法を使うことができる。下晒後、特にソフトで膨らみのある風合いとするために酵素処理や液安加工を施してもよい。
本発明の織編物は、裏毛やパイル組織として使用することが好ましく、例えば丸編の裏毛組織、シンカーパイル、ダブルフリース等が好ましく用いられる。経編の場合は、ダブルラッシェル等、織物の場合は、タオルや別珍、ベルベット等に好ましく用いられる。より好ましくは、丸編の裏毛、シンカーパイル、織物のタオルである。
本発明の裏毛編地、シンカーパイルの編機ゲージは、16ゲージ~20ゲージが好ましく、更に好ましくは18ゲージ~19ゲージである。上記範囲より小さい場合は生地の密度が粗くなり膨らみの無い編地となりやすい。また、上記範囲を超えると生地密度が高くなり硬く重い編地となりやすい。裏毛の編成糸長は、タイイン(裏毛編地の表側を構成する表糸)が450mm~550mm/100ウエール、ニットイン(裏毛編地の表糸とパイルとの間に配置される糸)が400mm~450mm/100ウエール、パイル(裏毛編地の裏側に配置されるパイル状の糸)は200mm~250mmであることが好ましい。それぞれの範囲を外れると、短い場合は編地が硬く、重くなって本来の嵩高性を得ることが困難になる。また、長い場合は生地が薄くなり過ぎてこれも嵩高性を得ることが困難になる。尚、本発明では便宜上、表糸、裏毛等の表現を用いているが、編地の使用において、編地のパイル面、表糸面のいずれを製品の表側に用いても構わない。
本発明のシンカーパイルの編地は、グランド糸が300mm~350mm/100ウエール、パイルの糸長が350mm~480mm/100Wであることが好ましい。いずれも範囲より短いとき生地密度が高く膨らみに欠ける編地となりやすい。また、長くなると膨らみは得られるが、パイル形状が不安定となり、糸が外れてしまい綺麗なパイルを得ることができなくなりやすい。パイル長は、1.5~2.0mmの範囲が好ましい。1.5mm未満では膨らみ感が不足し、2.2mmを超えると膨らみが得られるが、生地が重くなり嵩高性が出なくなりやすい。
本発明の織編物には、柔軟剤や帯電防止剤のような一般的な仕上加工を付与してもよいし、その他の各種機能加工を単独または併用して施しても良い。機能加工の例としては、親水加工などの防汚加工、UVカット加工、静電加工、スキンケア加工などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明の織編物の保温性は、高い程良いが、20~38%であることができる。この範囲より低下すると着用したときの暖かみが劣り、この範囲より高くなると軽量化が難しくなってくる。
本発明の織編物の比容積は、上述のように比容積の高い本発明の紡績糸を使用して作られているので、6.0~8.0cm/g、特に6.2~8.0cm/gとなることができる。この数値範囲は、保温性のある編物としてはさほど高くない値である。この原因は、薄くて軽い編物にしたことに原因があるが、本発明の織編物では、微細な空隙がある暖かい紡績糸の効果により、見かけの比容積に比べて高い保温性を実現している。また、本発明の織編物の裏毛やパイルを用いた面では、膨らみ感が高く、ソフトな風合いにすることができる。
本発明の紡績糸を用いた織編物は、保温性が高いため、冬用衣料品に好適である。特に肌着やスポーツシャツ等の肌に直接接触する用途に適している。本発明の織編物を着用すると、風合いが良く、ゴアゴアした感じにならずに暖かく過ごすことができる。
次に実施例、比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。これらの実施例における変更は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本発明で用いた特性値の測定法は以下の通りである。
<綿繊維の平均繊維長>
JIS-L1019-7.2.1の繊維長のA法(ダブルソータ法)に準拠して、紡績糸を繊維の状態にして短繊維含有率を測定した。また、平均繊維長は面積から算出した。試験環境は20℃65%RHとした。
<綿繊維のマイクロネヤ繊度の平均繊度>
JIS-L1019-7.4.1の繊度のマイクロネヤによる方法に準拠して求めた。
<総繊度>
JIS-L1095-9.4.2の方法で見掛けの綿番手(英式番手)を測定した。
<撚係数>
JIS-L1095-9.15A法により、撚数を測定して、下記式に当てはめて撚係数(K)を求めた。
撚係数(K)=インチ当たりの撚回数(T)/√番手(’s)
<糸の比容積(嵩高性)>
JIS-L1095B法に従って比容積を求めた。
<編物の厚み>
JIS-L1018-6.5のメリヤス生地試験方法の厚さに準拠して測定した。
<編物の目付>
JIS-L1018-6.4.2のメリヤス生地の試験方法の備考の目付けに準拠して測定した。
<編物の比容積(嵩高性)>
編物の嵩高性の指標として、厚みと目付の測定値を用いて以下の式により比容積を算出した。
比容積(cm/g)={編地の厚み(mm)/編地の目付(g/m)}×1000
<糸直径>
ウースター社の糸測定装置UT-5を用い、糸400m/分をスリットに通し走行させて2Dφ(2方向から測定した平均糸直径)の測定項目に表示されたデータ(mm)を糸直径として読み取った。
<保温性>
カトーテック社製のサーモラボIIを用い、20℃、65%RHの環境下で、BT-BOXのBT板(熱板)を人の皮膚温度を想定して35℃に設定し、その上に試料を置き、熱移動量が平衡になったときの消費電力量Wを測定した。また、試料を置かない条件での消費電力量W0を計測する。以下の式で保温性を計算した。
保温性(%)={(W0-W)/W0}×100
BT板は、サイズ10cm×10cmであるが、試料は20cm×20cmとする。通常は試料を熱板に接触させて測定するが、本発明では、保温性は、熱板の上に断熱性のある発砲スチロール等のスペーサーを設置して試料との空隙を5mm設けて計測を行った。
(実施例1)
平均繊維長26.2mmの綿(綿繊維B)80重量%、平均繊維長16.3mmの綿(綿繊維A)20重量%を用いて各々OHARA製混綿機で混綿し、次いで石川製作所製カード機を用いて300ゲレン/6ydのカードスライバーを紡出した。カード機で得たスライバーを原織機製練条機に2回通して400ゲレン/6ydの練条スライバーを得た。更に、このスライバーを豊田自動織機製粗紡機に通して210ゲレン/15ydの粗糸を作成した。そして、豊田自動織機製リング精紡機を用いてドラフト18倍、トラベラ回転数(スピンドル回転数)6000rpmで紡出して英式番手10番手の紡績糸を得た。そのときの撚係数(K)は3.0(撚数9.5T/inch)であった。得られた紡績糸の短繊維含有率は33.2%、平均繊維長は21.3mmであった。紡績糸の比容積は、6.3cm/gであった。
次いで出来上がった紡績糸を用いて裏毛のパイルにした編地を作成した。裏毛編機として、福原機械製DF-3を使用し、表糸(タイイン)にコーマ20/1、継糸(ニットイン)にコーマ30/1、パイルに(実施例1の紡績糸)10/1を配した2飛の裏毛編地を得た。使用した裏毛編地の組織図を図5に示す。出来上がった該裏毛編地をソーピングし、反応染料によって染色した後、テンターにより乾燥、仕上セットを行い、染色仕上げ生地を得た。出来上がった裏毛編地は、上記紡績糸の混率が36重量%で、その比容積(嵩高性)は、6.58cm/gとなり、ソフトで膨らみのある編地であった。実施例1の紡績糸、編地等の詳細を表1に示す。
(実施例2)
平均繊維長26.4mmの綿65重量%、平均繊維長16.1mmの綿35重量%を混綿した以外は実施例1と同じ条件で紡績糸を得た。そのとき得られた紡績糸の短繊維含有率は40.6%、平均繊維長は18.4mmであった。紡績糸の比容積は、7.0cm/gであった。次いで出来上がった該紡績糸を用いて実施例1と同じ条件で2飛裏毛を編成し、染色仕上げを行なって裏毛編地を得た。出来上がった裏毛編地は、上記紡績糸の混率が36重量%で、その比容積(嵩高性)は、7.2cm/gとなり、ソフトで膨らみのある編地であった。実施例2の紡績糸、編地等の詳細を表1に示す。
(実施例3)
紡績時の精紡機のスピンドル回転数を8000rpmに変えた以外は、実施例1と同じ条件で紡績した。次いで出来上がった紡績糸を用いて実施例1と同じ条件にて2飛裏毛編地を作製した。出来上がった裏毛編地は、上記紡績糸の混率が36重量%で、その比容積(嵩高性)は、6.38cm/gとなり、ソフトで膨らみのある編地であった。実施例3の紡績糸、編地等の詳細を表1に示す。
(実施例4)
紡績時の精紡機のスピンドル回転数を4000rpmに変え、糸の撚係数Kを2.7に変更した以外は、実施例1と同じ条件で紡績した。次いで出来上がった紡績糸を用いて実施例1と同じ条件にて2飛裏毛編地を作製した。出来上がった裏毛編地は、上記紡績糸の混率が36重量%で、その比容積(嵩高性)は、6.90cm/gとなり、ソフトで膨らみのある編地であった。実施例4の紡績糸、編地等の詳細を表1に示す。
(実施例5)
綿繊維Bに使用する綿として平均繊維長24.3mmのものを60重量%、綿繊維Aに使用する綿として平均繊維長12.3mmのものを40重量%に変えた以外は、実施例1と同じ条件で紡績した。次いで出来上がった紡績糸を用いて実施例1と同じ条件にて2飛裏毛編地を作製した。出来上がった裏毛編地は、上記紡績糸の混率が36重量%で、その比容積(嵩高性)は、7.15cm/gとなり、ソフトで膨らみのある編地であった。実施例5の紡績糸、編地等の詳細を表1に示す。
(実施例6)
綿繊維Bに使用する綿として平均繊維長が28.6mmのものを60重量%、綿繊維Aに使用する綿として平均繊維長14.2mmのものを40重量%に変えた以外は、実施例1と同じ条件で紡績した。次いで出来上がった紡績糸を用いて実施例1と同じ条件にて2飛裏毛編地を作製した。出来上がった裏毛編地は、上記紡績糸の混率が36重量%で、その比容積(嵩高性)は、6.90cm/gとなり、ソフトで膨らみのある編地であった。実施例6の紡績糸、編地等の詳細を表1に示す。
(実施例7)
実施例1と同条件の綿を用いて粗糸ゲレンを130ゲレン/15ydとして精紡機にて21.8倍のドラフトを掛け、20/1の糸を紡出した。得られた紡績糸を用いてシンカーパイル編地を編成した。シンカーパイルの編機は、30”-18Gの福原機械のPL-2編機を用いてパイル長2.0mmで編成した。使用したシンカーパイルの組織図を図6に示す。次いで実施例1と同条件で染色加工し、シンカーパイル編地を得た。出来上がったシンカーパイル編地は、上記紡績糸の混率が40重量%で、その比容積(嵩高性)は、7.50cm/gとなり、ソフトで膨らみのある編地であった。実施例7の紡績糸、編地等の詳細を表1に示す。
(比較例1)
平均繊維長32.7mmの綿100重量%をOHARA製混綿機を用いて混綿し、次いで石川製作所製カード機を用いて300ゲレン/6ydのカードスライバーを紡出した。次いでカードスライバーをコーマ機に掛けて繊維長の長い繊維を残して350ゲレン/6ydのコーマスライバーを得た。コーマスライバーを練条機でダブリング、ドラフトを二回繰り返し、400ゲレン/6ydの練条スライバーを作製した。次いで粗紡機に掛けて210ゲレン/15ydの粗糸を得た。できた粗糸を用いて精紡機にて18倍のドラフトを掛けて10/1のコーマ糸で撚係数K3.6で紡出した。得られた紡績糸の比容積は5.1cm/gで低い値となった。得られた紡績糸を用いて実施例1と同じ条件で2飛の裏毛編地を作製した。出来上がった裏毛編地は、上記紡績糸の混率が36重量%で、その比容積(嵩高性)は、5.40cm/gであった。比較例1の紡績糸、編地等の詳細を表1に示す。
(比較例2)
平均繊維長28.1mmの綿100重量%を用い、糸の撚係数Kを4.0とした以外は、実施例1と同じ条件で紡績した。得られた紡績糸を用いて実施例1と同じ条件で2飛の裏毛編物を作製した。出来上がった裏毛編地は、上記紡績糸の混率が36重量%で、その比容積(嵩高性)は、5.90cm/gであった。比較例2の紡績糸、編地等の詳細を表1に示す。
(比較例3)
実施例1と同じ条件にて400ゲレン/6ydの練条スライバーまで作製した後、出来たスライバーを村田機械製のMVS861タイプにて紡績した。そのときのMVSのドラフト条件は110倍として10/1の糸を得た。このように空気紡績で得られた紡績糸を用いて実施例1と同じ条件で2飛の裏毛編地を作製した。出来上がった裏毛編地は、上記紡績糸の混率が36重量%で、その比容積(嵩高性)は、5.10cm/gであった。比較例3の紡績糸、編地等の詳細を表1に示す。
Figure 0007266544000001
本発明によれば、保温性に優れながら軽量性、圧縮弾性を兼ね備えたパイル用紡績糸、ならびにその紡績糸をパイルに用いた織編物を提供することができ、当業界において極めて有用である。

Claims (5)

  1. 英式番手5~30番手、撚係数Kが2.5~3.4の綿繊維からなるパイル用紡績糸であって、JIS-L1019A法で測定したときに前記紡績糸の平均繊維長が10~23mm、かつ短繊維含有率が30~50%であることを特徴とするパイル用紡績糸。
  2. JIS-L1095B法による比容積が6.0~8.5cm/gであることを特徴とする請求項1に記載のパイル用紡績糸。
  3. 請求項1又は2に記載のパイル用紡績糸の製造方法であって、前記紡績糸の原料として、JIS-L1019A法で測定したときに平均繊維長が10~18mmの綿繊維Aを10~50重量%、平均繊維長が22~35mmの綿繊維Bを50~90重量%使用することを特徴とする製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載されたパイル用紡績糸の混率が30~55重量%であるパイル織編物であって、比容積が6.0~8.0cm/gであることを特徴とするパイル織編物。
  5. パイル織編物が裏毛、又はシンカーパイルであることを特徴とする請求項4に記載のパイル織編物。
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