以下、図1~図14に基づき、本発明の実施形態と変形例を説明する。インクジェット記録装置として、プリンター100を例に挙げて説明する。本実施形態の説明に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定せず単なる説明例にすぎない。
(プリンター100)
まず、図1及び図2を用いて、実施形態に係るプリンター100の構成を説明する。図1、図2は、実施形態に係るプリンター100の一例を示す図である。
プリンター100は制御部1、記憶部2、操作パネル3、給紙部4、用紙搬送部5、画像形成部60、通信部10を含む。制御部1は印刷動作を制御する。制御部1は、制御回路11と画像処理回路12を含む。制御回路11は、例えば、CPUである。制御回路11は、記憶部2に記憶される制御プログラムや制御データに基づき演算、処理を行う。記憶部2は、ROM、HDD、フラッシュROMのような不揮発性の記憶装置と、RAMのような揮発性の記憶装置を含む。画像処理回路12は、印刷に用いる画像データに対し画像処理を行い、印刷用画像データi2を生成する。
操作パネル3は設定に関する入力操作を受け付ける。操作パネル3は表示パネル31、タッチパネル32を含む。表示パネル31は設定画面や情報を表示する。表示パネル31は、キー、ボタン、タブのような操作用画像を表示する。タッチパネル32は、表示パネル31へのタッチ操作を検知する。制御部1は、タッチパネル32の出力に基づき、操作された操作用画像を認識する。制御部1は、使用者が行った設定操作を認識する。
給紙部4は給紙トレイ41、給紙ローラー42を含む。用紙束が給紙トレイ41にセットされる。給紙ローラー42が給紙トレイ41の用紙搬送方向下流側端部に設けられる。給紙ローラー42は、給紙モーター(不図示)により回転する。印刷を行うとき、制御部1は給紙モーターを回転させる。これにより、最上位の用紙から順に、用紙が一枚ずつ給紙トレイ41から送り出される。
用紙搬送部5は用紙を搬送する。用紙搬送部5は、搬送ベルト51、駆動ローラー52、従動ローラー53、搬送モーター54、排出ローラー対55、排出トレイ56、吸着部57を含む。用紙搬送部5は給紙部4から供給された用紙を搬送する。用紙搬送部5は、印刷済用紙を機外(排出トレイ56)に排出する。
給紙部4の用紙搬送方向下流側(図1において右側)に、ベルトユニット58が配される。ベルトユニット58は、搬送ベルト51、駆動ローラー52、従動ローラー53を含む。各ローラーの回転軸は平行である。搬送ベルト51は駆動ローラー52と従動ローラー53に張架される。印刷時、制御部1は搬送モーター54を回転させる。搬送モーター54は駆動ローラー52を回転させる。これにより、搬送ベルト51が周回する。搬送ベルト51上の用紙は、用紙搬送方向(副走査方向)の下流側に向けて搬送される。
用紙搬送部5は排出ローラー対55を含む。排出ローラー対55は搬送ベルト51よりも用紙搬送方向下流側に設けられる。排出ローラー対55は、排出モーター(不図示)により回転する。印刷時、制御部1は排出モーターを回転させる。用紙は排出ローラー対55から排出トレイ56に排出される。また、用紙搬送部5は吸着部57を含む。吸着部57は用紙を搬送ベルト51に吸着させる。印刷時、制御部1は吸着部57を動作させる。
画像形成部60は搬送用紙にインクを吐出して印刷を行う。制御部1はインクの吐出を制御する。図2に示すように、画像形成部60は、複数のラインヘッド6を含む。制御部1は、用紙搬送部5が搬送する用紙に向けて、各ラインヘッド6にインクを吐出させる。プリンター100では、4本のラインヘッド6(6Y、6Bk、6C、6M)が設けられる。用紙搬送方向上流側からの順に、ラインヘッド6Y、ラインヘッド6Bk、ラインヘッド6C、ラインヘッド6Mが並べられる。ラインヘッド6Yはイエローのインクを吐出する。ラインヘッド6Bkはブラックのインクを吐出する。ラインヘッド6Cはシアンのインクを吐出する。ラインヘッド6Mはマゼンタのインクを吐出する。各ラインヘッド6は固定される。搬送ベルト51の上方に各ラインヘッド6が設けられる。各ラインヘッド6と搬送ベルト51の間に一定の隙間が設けられる。
各ラインヘッド6は、複数のノズル61を含む。各ノズル61の開口は搬送ベルト51と向かい合う。ノズル61からインクが吐出される。インクは搬送用紙に着弾する。これにより、画像が形成される。プリンター100では、ノズル61は主走査方向(用紙搬送方向と直交方向、図2の紙面垂直方向)に並べられる。主走査方向でのノズル61の間隔が1画素のピッチとなる。例えば、600dpiに対応するラインヘッド6の場合、ピッチは約42μmである。用紙搬送部5(ベルトユニット58)は、ノズル61のインクの1吐出周期の間に1画素分用紙を搬送する。搬送モーター54は、例えば、ステッピングモーターである。制御部1は、搬送モーター54にパルス信号を入力する。1ステップ(1パルス)につき、用紙は、1ライン(1画素)分移動する。
ラインヘッド6ごとに、インクを供給するインクタンク(不図示)が設けられる。具体的に、イエローのインクを収容するインクタンクと、ブラックのインクを収容するインクタンクと、シアンのインクを収容するインクタンクと、マゼンタのインクを収容するインクタンクが設けられる。各インクタンクは対応するラインヘッド6にインクを供給する。
制御部1は、各ラインヘッド6と接続される。制御部1(画像処理回路12)は、各ラインヘッド6に印刷用画像データi2を供給する。制御部1は、1ラインずつ、印刷用画像データi2を各ラインヘッド6に送信する。印刷用画像データi2は、各ノズル61のインクの吐出、不吐出を指示するデータである。各ラインヘッド6は、受信した画像データに基づき、インクを用いて画像を印刷する。
通信部10は、通信メモリーと、通信用ハードウェア(コネクタ、ソケット、回路)を含む。通信メモリーは、通信用ソフトウェアと送受信データを記憶する。通信部10はコンピューター200と通信する。コンピューター200は、例えば、PCやサーバーである。制御部1は、コンピューター200から印刷用データを受信する。印刷用データは印刷設定や印刷内容を含む。例えば、印刷用データは、ページ記述言語で記述されたデータを含む。制御部1(画像処理回路12)は、受信した(入力された)印刷用データを解析する。制御部1は、受信した印刷用データに基づき、画像形成部60での画像形成に用いる画像データ(ラスターデータ)を生成する。制御部1は、生成した画像データに基づき、印刷用画像データi2を生成する。制御部1は、生成した印刷用画像データi2に基づき、画像形成部60に印刷を行わせる。
(ラインヘッド6)
次に、図3、図4を用いて、実施形態に係るラインヘッド6の一例を説明する。図3、図4は、実施形態に係るラインヘッド6の一例を示す図である。各ラインヘッド6の構成は同様である。図3、図4の説明では、イエローのラインヘッド6Yを例に挙げて説明する。ブラック、シアン、マゼンタのラインヘッド6も同様に説明できる。
図3に示すように、1つのラインヘッド6は、複数の記録ヘッド62を含む。図3は、主走査方向に3つの記録ヘッド62を並べる例を示している。以下の説明では、副走査方向(用紙搬送方向)において、副走査方向で上流側のヘッドを上流側ヘッド7と称する。副走査方向で下流側のヘッドを下流側ヘッド8と称する。上流側ヘッド7は下流側ヘッド8よりも副走査方向において上流側に位置する。また、下流側ヘッド8は上流側ヘッド7よりも副走査方向において下流側に位置する。図3は、上流側ヘッド7を1つ、下流側ヘッド8を2つ設ける例を示す。1つのラインヘッド6は、2つ以上の上流側ヘッド7を含んでもよい。1つのラインヘッド6は、3つ以上の下流側ヘッド8を含んでもよい。
上流側ヘッド7と下流側ヘッド8は、複数のノズル61を含む。各ノズル61は、主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)で並ぶ。上流側ヘッド7と下流側ヘッド8は、各ヘッドの端部に配置された複数のノズル61が副走査方向(用紙搬送方向)から見て互いに重なる重複部6aを有するように取り付けられる。図4において、重複部6aを斜線網掛けで図示している。重複部6aに含まれるノズル61は、例えば、10~20個程度である。このように、副走査方向からみて、上流側ヘッド7は、下流側ヘッド8と隣接する端部のノズル61が下流側ヘッド8の端部と重なるように、取り付けられる。副走査方向からみて、下流側ヘッド8は、上流側ヘッド7と隣接する端部のノズル61が上流側ヘッド7の端部と重なるように、取り付けられる。下流側ヘッド8に隣接する上流側ヘッド7の端部と、上流側ヘッド7に隣接する下流側ヘッド8の端部では、ノズル列が2列になる。
図3に示すように、各ラインヘッド6はドライバー回路63を含む。例えば、1つの記録ヘッド62に対し、1つのドライバー回路63が設けられる。1つの記録ヘッド62に対し、複数のドライバー回路63が設けられてもよい。ドライバー回路63はラインヘッド6の動作を制御する。画像処理回路12は、印刷用画像データi2をドライバー回路63に送信する。ドライバー回路63は受信した印刷用画像データi2に基づき、各ノズル61でのインクの吐出、不吐出を制御する。
各ラインヘッド6(記録ヘッド62)の各ノズル61は、主走査方向の間隔が均等になるように形成される。例えば、エッチングや金属板への穿孔により各ノズル61が形成される。1つのノズル61に対して1つの駆動素子64が設けられる。駆動素子64は圧電素子(ピエゾ素子)である。ドライバー回路63は各駆動素子64への電圧印加のON/OFFを行う。ドライバー回路63は、パルス状の電圧を、インクを吐出させるノズル61に対応する駆動素子64に印加する。駆動素子64は電圧印加により形状が変形する。形状変化の圧力がノズル61にインクを供給する流路に加わる。流路への圧力により、ノズル61からインクが吐出される。一方、ドライバー回路63は、インクを吐出させない画素に対応する駆動素子64に電圧を印加しない。ドライバー回路63はインクの吐出を実際に制御する。なお、図4では、便宜上、1つのラインヘッド6Yのみ内部の一部を図示している。ラインヘッド6の構成は各色同様である。
制御部1(画像処理回路12)は、ラインヘッド6ごとに(色ごとに)印刷用画像データi2を生成する。制御部1は生成した印刷用画像データi2を各ラインヘッド6に送信する。印刷用画像データi2は、画素ごと、ラインごとに、インクの吐出、不吐出を指示するデータ(2値的なデータ)である。制御部1(画像処理回路12)は主走査方向の1ライン単位で画像データを各ドライバー回路63に送信する。
制御部1は各ドライバー回路63にクロック信号を供給してもよい。クロック信号に基づき、インクの吐出周期(周波数)が定まる。印刷ジョブのとき、各ドライバー回路63が各駆動素子64に電圧を印加する周期は一定である。制御部1は、1吐出周期の間に用紙が1ドット(1ライン)分移動する速度で、用紙搬送部5に用紙を搬送させる。制御部1は所定の用紙搬送速度で用紙搬送部5に用紙を搬送させる。ページの最初から最後まで、1ラインずつの印刷処理を副走査方向で繰り返すことで、1ページが印刷される。
(通常印刷)
次に、図5を用いて、実施形態に係るプリンター100での通常印刷の一例を説明する。図5は、実施形態に係るプリンター100での通常印刷を説明するための図である。
ラインヘッド6は複数の記録ヘッド62を含む。上流側ヘッド7と下流側ヘッド8では、副走査方向の位置が異なる。上流側ヘッド7の副走査方向の印刷位置と、下流側ヘッド8の副走査方向の印刷位置を合わせる必要がある。そこで、制御部1は、1ページの印刷用画像データi2を分割する。制御部1は、上流側ヘッド7に印刷させる画像データと、下流側ヘッド8に印刷させる画像データに分割する。1つのラインヘッド6が3つの記録ヘッド62を含む場合、制御部1は、印刷用画像データi2を副走査方向に沿って、3つに分割する。
制御部1は上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61と、下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61のうち、一方のみにインクを吐出させる。上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61に印刷させる場合、制御部1は下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61に印刷させない。制御部1は、印刷用画像データi2のうち、下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61に対応する画素を白色(インク不吐出を指示する値)とする。下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61に印刷させる場合、制御部1は上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61に印刷させない。制御部1は、印刷用画像データi2のうち、上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61に対応する画素を、白色(インク不吐出を指示する値)とする。
副走査方向における上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の位置の差を考慮して、制御部1は、上流側ヘッド7のあるラインの印刷から第1ずらし時間T1後に、副走査方向で同じラインを下流側ヘッド8に印刷させる。制御部1(画像処理回路12)は、1ラインずつ、各ドライバー回路63に印刷用画像データi2を送信する。記憶部2は第1ずらし時間T1を不揮発的に記憶する。記憶部2に記憶された第1ずらし時間T1に基づき、制御部1は、上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の同じラインの印刷タイミングをずらす。1本のラインヘッド6に下流側ヘッド8が複数含まれている場合、下流側ヘッド8ごとに第1ずらし時間T1が定められる。
あるラインの印刷用画像データi2を上流側ヘッド7に送信してから第1ずらし時間T1経過した後、制御部1は、あるライン(同じライン)の印刷用画像データi2を下流側ヘッド8に送信する。つまり、制御部1は、同じラインの印刷用画像データi2の送信タイミングを、第1ずらし時間T1分、ずらす。これにより、同じラインを印刷するためのインク吐出時点が、第1ずらし時間T1分ずれる。第1ずらし時間T1の初期値は予め定められる。第1ずらし時間T1は、上流側ヘッド7のノズル61と下流側ヘッド8のノズル61の副走査方向の仕様上(設計上)の距離を、仕様上(設計上)の用紙搬送速度で除して得られる時間に基づき定められる。仕様上の副走査方向のノズル61間距離分用紙を搬送するのに必要な時間が第1ずらし時間T1の初期値とされる。
(調整用チャート9の印刷)
次に、図6~図8を用いて、実施形態に係るプリンター100での調整用チャート9の印刷の一例を説明する。図6は、実施形態に係るプリンター100での調整用チャート9の印刷の一例を示す図である。図7は、実施形態に係る調整用チャート9の印刷物の一例を示す。図8は、実施形態に係る調整用チャート9の拡大図の一例を示す。
プリンター100では調整用チャート9を印刷できる。調整用チャート9は、副走査方向の上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の印刷位置を一致させるための印刷物である。プリンター100の画質調整の一種として、調整用チャート9を印刷することができる。例えば、プリンター100の設置時や、メンテナンス時に調整用チャート9が印刷される。操作パネル3は調整用チャート9の印刷指示を受け付ける。図6のスタートは、操作パネル3が調整用チャート9の印刷指示を受け付けた時である。
制御部1は調整用画像データi1を読み出す(ステップ♯11)。調整用画像データi1は調整用チャート9を印刷するための画像データである。記憶部2は調整用画像データi1を不揮発的に記憶する(図1参照)。制御部1は、調整用画像データi1に基づき、調整用チャート9を印刷させる(ステップ♯12)。具体的に、制御部1は、給紙部4に用紙を供給させる。制御部1は用紙搬送部5に用紙を搬送させる。制御部1は、調整用画像データi1に基づき、調整用チャート9を画像形成部60に印刷させる。
図7は、調整用チャート9の印刷物の一例を示す。制御部1は、用紙に各色の調整用チャート9を印刷させる。副走査方向(用紙搬送方向)の上流側から順に、イエロー、ブラック、シアン、マゼンタの調整用チャート9が印刷される。印刷する色の順番は、ラインヘッド6の色の順番と同じである。
印刷される調整用チャート9の個数は、ラインヘッド6に含まれる下流側ヘッド8の個数と同じである。副走査方向において、上流側ヘッド7の印刷位置に下流側ヘッド8の印刷位置を合わせるためである。各ラインヘッド6は、2つの下流側ヘッド8を含む。そのため、1色につき、2つの調整用チャート9が印刷される。図7の調整用チャート9のうち、制御部1は、上流側ヘッド7と左側の下流側ヘッド8に、左側の調整用チャート9を印刷させる。制御部1は、上流側ヘッド7と右側の下流側ヘッド8に、右側の調整用チャート9を印刷させる。
制御部1は、調整用チャート9のうち、第1ラインL1を上流側ヘッド7に印刷させる。第1ラインL1は主走査方向の直線である。制御部1は、複数の第1ラインL1を上流側ヘッド7に印刷させる。制御部1は等間隔(基準間隔)で第1ラインL1を上流側ヘッド7に印刷させる。間隔は予め定められる。調整用画像データi1でも第1ラインL1の間隔は基準間隔となっている。さらに、制御部1は、上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61に第1ラインL1を印刷させる。制御部1は、重複部6aに続く複数の上流側ヘッド7のノズル61に第1ラインL1を印刷させる。つまり、制御部1は、上流側ヘッド7の一方の端部のノズル61を含む一定範囲のノズル61に第1ラインL1を印刷させる。
一方、制御部1は、調整用チャート9のうち、第2ラインL2を下流側ヘッド8に印刷させる。第2ラインL2は、主走査方向の直線である。第2ラインL2は第1ラインL1の対となるラインである。第2ラインL2は、副走査方向の印刷位置のずれ方向とずれ量を測る(知る)ためのラインである。制御部1は、複数の第2ラインL2を下流側ヘッド8に印刷させる。制御部1は、下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61に第2ラインL2を印刷させる。つまり、制御部1は、上流側ヘッド7に近い方の下流側ヘッド8の端部のノズル61から一定範囲のノズル61に第2ラインL2を印刷させる。制御部1は、第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせごとに、第1ラインL1に対応する第2ラインL2の副走査方向の位置をずらす。
図8は、調整用チャート9の拡大図である。図8の調整用チャート9は、図7の右側の調整用チャート9のうちの一例を示す。ブラック、シアン、マゼンタでも同様の調整用チャート9が印刷される。図8は、ある色の上流側ヘッド7の主走査方向の一方端部分(右端部分)のノズル61と、同じ色の上流側ヘッド7の一方端側の下流側ヘッド8の他方端部分(左端部分)のノズル61を用いて印刷した調整用チャート9の一例を示す。
なお、図7の左側の調整用チャート9では、左側のラインが第2ラインL2となり、右側のラインが第1ラインL1となる。つまり、主走査方向において、下流側ヘッド8が上流側ヘッド7の主走査方向の一方側(右側)に位置している場合、制御部1は、第1ラインL1を他方側(左側)に、第2ラインL2を一方側(右側)に印刷させる。反対に、主走査方向において、下流側ヘッド8が上流側ヘッド7の主走査方向の他方側(左側)に位置している場合、制御部1は、第1ラインL1を一方側(右側)に、第2ラインL2を他方側(左側)に印刷させる。
図8の調整用チャート9のうち、左側のラインが第1ラインL1である。ずれ方向とずれ量を示す値が各第1ラインL1に付される。図8の調整用チャート9のうち、右側のラインが第2ラインL2である。第2ラインL2には、数字が付されない。制御部1は、第1ラインL1を基準間隔(等間隔)で上流側ヘッド7に印刷させる。例えば、第1ラインL1は、主走査方向に伸びる1ドット幅の直線である。複数の第1ラインL1のうち、中央のラインが第1基準ラインL1aである。制御部1は、数字ゼロが付された第1基準ラインL1aを上流側ヘッド7に印刷させる。
制御部1は、第1基準ラインL1aのインク吐出から第1ずらし時間T1が経過したとき、第2基準ラインL2aのインクを下流側ヘッド8に吐出させる。第2ラインL2は、主走査方向に伸びる1ドット幅の直線である。第2基準ラインL2aは第1基準ラインL1aの対となる第2ラインL2である。上流側ヘッド7と下流側ヘッド8がずれなく取り付けられている場合、初期値の第1ずらし時間T1を用いて印刷したとき、第1基準ラインL1aと第2基準ラインL2aは副走査方向で重なる。第1ラインL1と第2ラインL2は、一直線となる。
制御部1は、第2ラインL2を等間隔で下流側ヘッド8に印刷させる。第2ラインL2の間隔は、(基準間隔+1ライン)である。制御部1は、第2基準ラインL2aよりも副走査方向下流側にm本のラインを下流側ヘッド8に印刷させる。また、制御部1は、第2基準ラインL2aよりも副走査方向上流側にn本のラインを下流側ヘッド8に印刷させる(図8では、m=19、n=19)。
最も下流の第1ラインL1のインク吐出後、制御部1は、最も下流の第2ラインL2のインクを吐出させる。その時間間隔は、第1ずらし時間T1からmドット(mライン)分用紙を搬送するのに必要な時間を減じた時間である。以後、制御部1は、(基準間隔+1ライン)の間隔でインクを吐出させる。制御部1は、第2ラインL2を下流側ヘッド8に印刷させる。
調整用チャート9の印刷後、使用者やメンテナンス担当者による印刷結果の確認が行われる(ステップ♯13)。操作パネル3は、ずれの最も少ない第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせの入力を受け付ける(ステップ♯14)。制御部1は、入力された組み合わせを示す数字に基づき、上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の副走査方向での印刷位置のずれ方向とずれ量を認識する(ステップ♯15)。
制御部1は上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61を用いて調整用チャート9を印刷させる。副走査方向の印刷位置が一致している第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせでは、第1ラインL1と第2ラインL2は一直線状になる。さらに、各重複部6aのノズル61によるインクの着弾位置が重なる。副走査方向の印刷位置が一致している第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせでは、重複部6aのノズル61の印刷部分が濃くなる。従って、副走査方向の印刷位置が一致している第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせがわかりやすい。
一方、副走査方向の印刷位置が一致しない組み合わせでは、第1ラインL1と第2ラインL2は一直線状にならない。さらに、各重複部6aのノズル61によるインクの着弾位置が副走査方向でずれる。副走査方向の印刷位置が一致しない組み合わせでは、重複部6aのノズル61の印刷部分は、副走査方向で太くなる、または、主走査方向で入れ違う。従って、副走査方向の印刷位置が一致しない第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせもわかりやすい。
調整用チャート9を印刷したとき、制御部1は、調整入力用画面を表示パネル31に表示させる。調整入力用画面は、調整用チャート9(色、下流側ヘッド8)ごとに、ずれの最も少ない第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせを入力するための画面である。図7に示すように、調整用チャート9が8つ印刷された場合、制御部1は、8つの入力欄を調整入力用画面に表示させる。入力欄が操作されたとき、制御部1は、入力用のソフトウェアキーボードを表示させる。確認者は、ソフトウェアキーボードを用いて、ずれの最も少ない第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせを示す数字を入力する。
例えば、ブラックの一方側の調整用チャート9において、「+2」の符号が付された第1ラインL1と第2ラインL2が最もずれなく重なっているとき、調整用チャート9の確認者は、ブラックの一方側の入力欄に「+2」を入力する。この場合、下流側ヘッド8の印刷位置を2ライン分遅らせると、副走査方向において、ブラックの上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の印刷位置が一致することになる。現在の第1ずらし時間T1を用いて印刷した場合、制御部1は、副走査方向において、下流側ヘッド8の印刷位置は上流側ヘッド7の印刷位置に対し、上流方向に2ライン(2ドット)分早いと認識する。
また、ブラックの他方側の調整用チャート9において、「-3」の符号が付された第1ラインL1と第2ラインL2が最もずれなく重なっているとき、調整用チャート9の確認者は、ブラックの他方側の入力欄に「-3」を入力する。この場合、下流側ヘッド8の印刷位置を3ライン分早めると、副走査方向において、ブラックの上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の印刷位置が一致することになる。現在の第1ずらし時間T1を用いて印刷した場合、制御部1は、副走査方向において、上流側ヘッド7の印刷位置に対し、下流側ヘッド8の印刷位置が下流方向に3ライン(3ドット)遅いと認識する。
このように、操作パネル3への入力に基づき、制御部1は、上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の印刷位置のずれ方向とずれ量を認識できる。制御部1は、各色のラインヘッド6における上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の印刷位置のずれ方向とずれ量を認識できる。
制御部1は、認識したずれ方向とずれ量に基づき、上流側ヘッド7と下流側ヘッド8が印刷する同じラインの副走査方向の位置のずれが無くなるように第1ずらし時間T1を補正する(ステップ♯16)。そして、制御部1は、補正後の第1ずらし時間T1を記憶部2に不揮発的に記憶させる(ステップ♯17)。
例えば、下流側ヘッド8の印刷位置がaライン(aドット)だけ早い場合、制御部1は、補正前の第1ずらし時間T1に時間を加算する補正を行う。制御部1は、用紙(搬送ベルト51)をaライン分移動させるのに要する時間を、補正前の第1ずらし時間T1に加算する。言い換えると、制御部1は、補正前の第1ずらし時間T1に、搬送モーター54のaステップ分の周期を加算する。
また、下流側ヘッド8の印刷位置がbライン(bドット)だけ遅い場合、制御部1は、補正前の第1ずらし時間T1の時間を減らす補正を行う。制御部1は、用紙(搬送ベルト51)をbライン分移動させるのに要する時間を、補正前の第1ずらし時間T1から減らす補正をする。言い換えると、制御部1は、補正前の第1ずらし時間T1から搬送モーター54のbステップ分の周期を減算する。
以後の通常印刷では、制御部1は、補正後の第1ずらし時間T1を用いて印刷を行わせる。具体的に、同じラインについて、制御部1は、上流側ヘッド7にラインの印刷用画像データi2を送信してから第1ずらし時間T1が経過すると、下流側ヘッド8にラインの印刷用画像データi2を送信する。制御部1は、同じラインの印刷用画像データi2の送信タイミング(インク吐出タイミング)を補正後の第1ずらし時間T1だけずらす。
(重複部6aのノズル61の使用数の調整)
次に、図9を用いて、実施形態に係るプリンター100での重複部6aのノズル61の使用数の設定の一例を説明する。図9は、実施形態に係るプリンター100での重複部6aのノズル61の使用数の設定の一例を示す図である。図10は、実施形態に係る使用数設定画面3aの一例を示す図である。
調整用チャート9の印刷では、上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61と、下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61にインクを吐出させる。重複部6aを用いる場合、重複部6aを使用しない場合に比べ、重複部6aが印刷する部分には、通常の2倍のインクが吐出される。重複部6aの印刷部分がインクで滲む場合がある。印刷位置が一致している第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせが見づらくなることがある。
そこで、調整用チャート9の印刷で使用する重複部6aのノズル61の数を設定できるようにする。図9のスタートは、操作パネル3が重複部6aのノズル61の使用数の設定開始を受け付けた時点である。制御部1は、使用数設定画面3aを表示パネル31に表示させる(ステップ♯21)。図10は使用数設定画面3aの一例を示す。制御部1は、使用ノズル数を設定するための使用数設定ボタンB1を複数個、使用数設定画面3a内に表示させる。図10は、各ヘッド7、8の重複部6aに含まれるノズル61の数が10個である場合を示す。制御部1は、各色の上流側ヘッド7と下流側ヘッド8ごとに、使用数設定ボタンB1を表示させる。制御部1は、重複部6aに含まれるノズル61の数に応じた個数の使用数設定ボタンB1を表示させる。図10は、80個(4色×2(上流と下流)×10(ノズル数))の使用数設定ボタンB1を表示する例を示している。
使用者は、使用数設定ボタンB1を操作(タッチ)して、重複部6aのノズル61の使用数の設定をできる。制御部1は、現在設定されている使用数に対応する使用数設定ボタンB1を白黒反転状態で表示させる。操作パネル3は、上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61の使用数の設定を受け付ける(ステップ♯22)。また、操作パネル3は、下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61の使用数の設定を受け付ける(ステップ♯23)。そして、制御部1は、設定された設定値(ノズル使用数設定値N1)を記憶部2に不揮発的に記憶させる(ステップ♯24、図1参照)。なお、ノズル61使用数のデフォルト値(初期値)は、各色の上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の両方とも、最大値である。
制御部1は、上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61のうち、設定された使用数のノズル61を用いて調整用チャート9を印刷させる。具体的に、制御部1は、重複部6aのノズル61のうち、主走査方向において、隣接する下流側ヘッド8から遠いノズル61から順に、設定された使用数のノズル61を選択する。制御部1は、選択したノズル61に調整用チャート9を印刷させる。使用数が減らされた場合、上流側ヘッド7の重複部6aが印刷するラインが短くなる。上流側ヘッド7が印刷したラインと下流側ヘッド8が印刷したラインの重複部6a分の長さが短くなる。
また、制御部1は、下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61のうち、設定された使用数のノズル61を用いて調整用チャート9を印刷させる。具体的に、制御部1は、重複部6aのノズル61のうち、主走査方向において、隣接する上流側ヘッド7から遠いノズル61から順に、設定された使用数のノズル61を選択する。制御部1は、選択したノズル61に調整用チャート9を印刷させる。使用数が減らされた場合、下流側ヘッド8の重複部6aが印刷するラインが短くなる。上流側ヘッド7が印刷したラインと下流側ヘッド8が印刷したラインの重複部6a分の長さが短くなる。
(変形例)
次に、図11~図13を用いて、実施形態に係るプリンター100での調整用チャート9の印刷の変形例を説明する。図11は、変形例に係るプリンター100での調整用チャート9の印刷の一例を示す図である。図12は、変形例に係る調整用チャート9の印刷物の一例を示す。図13は、変形例に係るイエローの調整用チャート9の拡大図の一例を示す。図14は、変形例に係るイエローの調整用チャート9の拡大図の一例を示す。
変形例のプリンター100でも、副走査方向の上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の印刷位置を一致させるための調整用チャート9を印刷できる。変形例では、イエローのラインヘッド6Yに対し、基準ラインヘッドが定められる。基準ラインヘッドは、イエロー以外のラインヘッド6である。基準ラインヘッドは、ブラック、シアン、マゼンタのラインヘッド6のうち何れか1つから選ぶことができる。本説明では、基準ラインヘッドがブラックのラインヘッド6Bkである例を説明する。ブラックのラインヘッド6Bkは、イエローのラインヘッド6Yの隣に位置する。例えば、排出ローラー対55に用紙が進入すると、用紙搬送速度が変動することがある。基準ラインヘッドをイエローのラインヘッド6Yに近いラインヘッド6とすることにより、用紙搬送速度の変動要因の影響が出にくい。従って、イエローのラインヘッド6Yの上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の印刷位置のずれを正確に認識することができる。
イエローのみの画像は、見づらいことがある。白の用紙にイエローのみで印刷された調整用チャート9では、副走査方向の印刷位置が一致しているラインの組み合わせを判定しづらい場合がある。そこで、変形例では、イエローについては、基準ラインヘッド(ブラック)によるラインとイエローのラインヘッド6Yによるラインを組み合わせた調整用チャート9を印刷する。ブラックのラインとイエローのラインを含む調整用チャート9に基づき、副走査方向でのイエローの上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の位置のずれ方向とずれ量を認識する。なお、ブラック、シアン、マゼンタの調整用チャート9については、上述の実施形態と同様である。
図11のスタートは、操作パネル3が調整用チャート9の印刷指示を受け付けた時である。制御部1は調整用画像データi1を読み出す(ステップ♯31)。調整用画像データi1は調整用チャート9を印刷するための画像データである。記憶部2は調整用画像データi1を不揮発的に記憶する(図1参照)。変形例の調整用画像データi1では、ブラックとイエローを用いて、イエローの調整用チャート9を印刷するようになっている。制御部1は、調整用チャート9を印刷させる(ステップ♯32)。具体的に、制御部1は、給紙部4に用紙を供給させる。制御部1は用紙搬送部5に用紙を搬送させる。制御部1は、調整用画像データi1に基づき、調整用チャート9を画像形成部60に印刷させる。
図12は、変形例に係る調整用チャート9の印刷物の一例を示す。制御部1は、用紙に各色の調整用チャート9を印刷させる。副走査方向(用紙搬送方向)の上流側から順に、イエロー、ブラック、シアン、マゼンタの調整用チャート9が印刷される。印刷する色の順番は、ラインヘッド6の色の順番と同じである。但し、制御部1は、イエローのラインヘッド6Yとブラックのラインヘッド6Bkを用いて、イエローのラインヘッド6Yのための調整用チャート9を印刷させる。ブラック、シアン、マゼンタについては、印刷される調整用チャート9の個数は、ラインヘッド6に含まれる下流側ヘッド8と同じ数となる。この点、上述の実施形態と同様である。一方、イエローについては、印刷される調整用チャート9の個数は、ラインヘッド6に含まれる下流側ヘッド8と上流側ヘッド7を合計した数となる。
変形例では、制御部1は、第3ラインL3を基準ラインヘッドの上流側ヘッド7(基準上流側ヘッド)に印刷させる。つまり、第3ラインL3はブラックである。制御部1は、基準上流側ヘッドのうち、後述の第5ラインL5を印刷しないノズル61に、第3ラインL3を印刷させる。制御部1は、第4ラインL4をイエローのラインヘッド6Yの上流側ヘッド7(イエローの上流側ヘッド7)に印刷させる。第4ラインL4はイエローである。制御部1は、第3ラインL3と第4ラインL4を含む調整用チャート9を各上流側ヘッド7に印刷させる。主走査方向において、制御部1は、第3ラインL3と第4ラインL4の一部が重なるように、基準上流側ヘッドとイエローの上流側ヘッド7に印刷させる。
図12のうち、最上段、中央の調整用チャート9が第3ラインL3と第4ラインL4を含む調整用チャート9である。制御部1は、調整用チャート9のうち、第3ラインL3を基準ラインヘッドの上流側ヘッド7(基準上流側ヘッド)に印刷させる。第3ラインL3は、主走査方向の直線である。制御部1は、複数の第3ラインL3を基準上流側ヘッドに印刷させる。制御部1は、等間隔(基準間隔)の第3ラインL3を基準上流側ヘッドに印刷させる。間隔は予め定められる。調整用画像データi1でも第3ラインL3の間隔は、基準間隔となっている。
制御部1は、調整用チャート9のうち、第4ラインL4をイエローの上流側ヘッド7に印刷させる。第4ラインL4は、主走査方向の直線である。第4ラインL4は第3ラインL3の対となるラインである。第4ラインL4は、副走査方向の印刷位置のずれ方向とずれ量を測る(知る)ためのラインである。制御部1は、複数の第4ラインL4をイエローの上流側ヘッド7に印刷させる。制御部1は、第3ラインL3と第4ラインL4の組み合わせごとに、第3ラインL3に対応する第4ラインL4の副走査方向の位置をずらす。
図13は、第3ラインL3と第4ラインL4を含む調整用チャート9の拡大図である。図13の調整用チャート9に示すように、第3ラインL3に付された数字は、ずれ方向とずれ量を示す値である。図13の調整用チャート9のうち、右側のラインが第4ラインL4である。第4ラインL4には、数字が付されない。
制御部1は、第3ラインL3を基準間隔で基準上流側ヘッドに印刷させる。例えば、第3ラインL3は、主走査方向に伸びる1ドット幅の直線である。複数の第3ラインL3のうち、中央のラインは、第3基準ラインL3aである。制御部1は、数字ゼロが付された第3基準ラインL3aを基準上流側ヘッドに印刷させる。
制御部1は、第4基準ラインL4aの印刷後、第2ずらし時間T2が経過したとき、第3基準ラインL3aをブラックの上流側ヘッド7に印刷させる。第2ずらし時間T2は、予め定められる。例えば、第2ずらし時間T2は、イエローの上流側ヘッド7のノズル61と、基準上流側ヘッドのノズル61の副走査方向の距離に相当するライン数だけ用紙を搬送するのに必要な時間とされる。記憶部2は、第2ずらし時間T2を不揮発的に記憶する(図1参照)。制御部1は、記憶部2に記憶された第2ずらし時間T2に基づき、イエローの上流側ヘッド7と基準上流側ヘッドの印刷タイミングをずらす。1本のラインヘッド6に上流側ヘッド7が複数含まれている場合、上流側ヘッド7ごとに第2ずらし時間T2が定められてもよい。
あるラインの印刷用画像データi2をイエローの上流側ヘッド7に送信してから第2ずらし時間T2経過した後、制御部1は、同じラインの印刷用画像データi2を基準上流側ヘッドに送信する。つまり、制御部1は、同じラインの印刷用画像データi2の送信タイミングを、イエローの上流側ヘッド7と基準上流側ヘッドでずらす。制御部1は、第2ずらし時間T2分ずらす。これにより、同じラインについて、イエローの上流側ヘッド7と基準上流側ヘッドヘッドのインクの吐出時点が、第2ずらし時間T2分ずれる。
第4ラインL4は、主走査方向に伸びる1ドット幅の直線である。第4基準ラインL4aは第3基準ラインL3aの対となる第4ラインL4である。制御部1は、第4基準ラインL4aの印刷用画像データi2をイエローの上流側ヘッド7に送信してから第2ずらし時間T2経過した後、制御部1は、第3基準ラインL3aの印刷用画像データi2を基準上流側ヘッドに送信する。
制御部1は、第4ラインL4を等間隔でイエローの上流側ヘッド7に印刷させる。第4ラインL4の間隔は、(基準間隔+1ライン)の間隔である。制御部1は、第4基準ラインL4aよりも副走査方向下流側にm本のラインをイエローの上流側ヘッド7に印刷させる。また、制御部1は、第4基準ラインL4aよりも副走査方向上流側にn本のラインをイエローの上流側ヘッド7に印刷させる(図13では、m=19、n=19)。
最も下流の第4ラインL4のインク吐出後、制御部1は、最も下流の第3ラインL3のインクを吐出させる。その時間間隔は、第2ずらし時間T2からmドット(mライン)分用紙を搬送するのに必要な時間を減じた時間である。最も下流の第4ラインL4のインク吐出後、制御部1は、(基準間隔+1ライン)の間隔でインクを吐出し、第4ラインL4を下流側ヘッド8に印刷させる。
また、制御部1は、イエローの調整用チャート9のうち、第5ラインL5を基準上流側ヘッドに印刷させる。図12のイエローの調整用チャート9のうち、左側と右側の調整用チャート9に第5ラインL5が含まれる。第5ラインL5は、主走査方向の直線である。制御部1は、複数の第5ラインL5を基準上流側ヘッドに印刷させる。制御部1は、等間隔(基準間隔)で第5ラインL5を基準上流側ヘッドに印刷させる。調整用画像データi1でも第5ラインL5の間隔は、基準間隔となっている。第3ラインL3と第5ラインL5の副走査方向の位置は同じでよい。さらに、制御部1は、基準上流側ヘッドの重複部6aのノズル61に第5ラインL5を印刷させる。つまり、制御部1は、基準上流側ヘッドの端部のノズル61から一定範囲のノズル61に第5ラインL5を印刷させる。
一方、制御部1は、調整用チャート9のうち、第6ラインL6をイエローの下流側ヘッド8に印刷させる。第6ラインL6は、主走査方向の直線である。第6ラインL6は第5ラインL5の対となるラインである。第6ラインL6は、イエローの副走査方向の印刷位置のずれ方向とずれ量を測る(知る)ためのラインである。制御部1は、複数の第6ラインL6をイエローの下流側ヘッド8に印刷させる。制御部1は、イエローの下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61に第6ラインL6を印刷させる。つまり、制御部1は、イエローの下流側ヘッド8の端部のうち、イエローの上流側ヘッド7に近い方の端部のノズル61から一定範囲のノズル61に第6ラインL6を印刷させる。制御部1は、第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせごとに、第5ラインL5に対応する第6ラインL6の副走査方向の位置をずらす。
図14は、調整用チャート9の拡大図である。図14の調整用チャート9は、図12のイエローの調整用チャート9のうち、右端の調整用チャート9の一例を示す。つまり、図14は、基準上流側ヘッドの主走査方向の一方端部分(右端部分)のノズル61と、基準上流側ヘッドの一方端側(右端部分)にあるイエローの下流側ヘッド8の他方端部分(左端部分)のノズル61を用いて印刷した調整用チャート9の一例を示す。
図14の調整用チャート9のうち、左側のラインが第5ラインL5である。数字は、ずれ方向とずれ量を示す値である。図14の調整用チャート9のうち、右側のラインが第6ラインL6である。第6ラインL6には数字が付されない。なお、図12のイエローの左端の調整用チャート9では、左側のラインが第6ラインL6となり、右側のラインが第5ラインL5となる。主走査方向において、イエローの下流側ヘッド8がイエローの上流側ヘッド7(基準上流側ヘッド)の主走査方向の一方側(右側)に位置している場合、制御部1は、第5ラインL5を他方側(左側)に、第6ラインL6を一方側(右側)に印刷させる。反対に、主走査方向において、イエローの下流側ヘッド8が基準上流側ヘッド(基準上流側ヘッド)の主走査方向の他方側(左側)に位置している場合、制御部1は、第5ラインL5を一方側(右側)に、第6ラインL6を他方側(左側)に印刷させる。
制御部1は、第5ラインL5を基準間隔で基準上流側ヘッドに印刷させる。複数の第5ラインL5のうち、中央のラインは、第5基準ラインL5aである。制御部1は、数字ゼロが付された第5基準ラインL5aを基準上流側ヘッドに印刷させる。制御部1は、第6基準ラインL6aの印刷後、第2ずらし時間T2からイエローの第1ずらし時間T1を減じた時間が経過したとき、第5基準ラインL5aを基準上流側ヘッドに印刷させる。例えば、第5ラインL5と第6ラインL6は、主走査方向に伸びる1ドット幅の直線である。第6基準ラインL6aは第5基準ラインL5aの対となるラインである。基準上流側ヘッドとイエローの下流側ヘッド8がずれなく取り付けられている場合、初期値の第1ずらし時間T1と第2ずらし時間T2を用いて印刷したとき、第5基準ラインL5aと第6基準ラインL6aは副走査方向で重なる。第5基準ラインL5aと第6基準ラインL6aは、一直線となる。
制御部1は、第6ラインL6を等間隔でイエローの下流側ヘッド8に印刷させる。第6ラインL6の間隔は、(基準間隔+1ライン)の間隔である。制御部1は、第6基準ラインL6aよりも副走査方向下流側にm本のラインをイエローの下流側ヘッド8に印刷させる。制御部1は、第6基準ラインL6aよりも副走査方向上流側にn本のラインをイエローの下流側ヘッド8に印刷させる(図14では、m=19、n=19)。
制御部1は、最も下流の第6ラインL6のインク吐出後、最も下流の第5ラインL5のインクを吐出させる。その時間間隔は、第2ずらし時間T2から、時間Aと時間Bをを減じた時間である。時間Aは、イエローの第1ずらし時間T1である。時間Bは、mドット(mライン)分用紙を搬送するのに必要な時間である。最も下流の第6ラインL6のインク吐出後、制御部1は、(基準間隔+1ライン)の間隔でインクを吐出する。制御部1は、第6ラインL6を下流側ヘッド8に印刷させる。
調整用チャート9の印刷後、使用者やメンテナンス担当者による印刷結果の確認が行われる(ステップ♯33)。イエロー以外のラインヘッド6については、操作パネル3は、ずれの最も少ない第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせの入力を受け付ける(ステップ♯34)。制御部1は、イエロー以外のラインヘッド6については、入力された組み合わせを示す数字に基づき、上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の副走査方向での印刷位置のずれ方向とずれ量を認識する(ステップ♯35)。そして、イエロー以外のラインヘッド6について、制御部1は、認識したずれ方向とずれ量に基づき、上流側ヘッド7と下流側ヘッド8が印刷する同じラインの副走査方向の位置のずれが無くなるように第1ずらし時間T1を補正する(ステップ♯36)。そして、制御部1は、イエロー以外の補正後の第1ずらし時間T1を記憶部2に不揮発的に記憶させる(ステップ♯37)。ステップ♯33~ステップ♯37は、ステップ♯13~ステップ♯17と同様である。同様に説明できるので、ステップ♯33~ステップ♯37の詳細な説明は省略する。
イエローのラインヘッド6Yについては、操作パネル3は、ずれの最も少ない第3ラインL3と第4ラインL4の組み合わせの入力を受け付ける(ステップ♯38)。更に、操作パネル3は、ずれの最も少ない第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせの入力を受け付ける(ステップ♯39)。制御部1は基準上流側ヘッドとイエローの上流側ヘッド7を用いて調整用チャート9(第3ラインL3と第4ラインL4)を印刷させる。制御部1は、第3ラインL3の一部と第4ラインL4の一部が重なるように、印刷させる。副走査方向の印刷位置が一致している第3ラインL3と第4ラインL4の組み合わせでは、第3ラインL3と第4ラインL4が一直線状になる。さらに、副走査方向の印刷位置が一致している第3ラインL3と第4ラインL4の組み合わせでは、重なり部分の色が濃くなる。従って、副走査方向の印刷位置が一致している第3ラインL3と第4ラインL4の組み合わせがわかりやすい。
制御部1は基準上流側ヘッドとイエローの下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61を用いて調整用チャート9(第5ラインL5と第6ラインL6)を印刷させる。副走査方向の位置が一致している第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせでは、第5ラインL5と第6ラインL6は一直線状になる。また、各重複部6aのノズル61によるインクの着弾位置が重なる。副走査方向の印刷位置が一致している第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせでは、重複部6aのノズル61の印刷部分が濃くなる。副走査方向の印刷位置が一致している第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせがわかりやすい。
副走査方向の印刷位置が一致しない第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせでは、第5ラインL5と第6ラインL6は一直線状にならない。副走査方向の印刷位置が一致しない第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせでは、重複部6aのノズル61の印刷部分が副走査方向で太くなる、または、主走査方向で入れ違う。従って、副走査方向の印刷位置が一致しない第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせもわかりやすい。
調整用チャート9を印刷したとき、制御部1は、調整入力用画面を表示パネル31に表示させる。図12に示すように、調整用チャート9が9つ印刷された場合、制御部1は、9つの入力欄を調整入力用画面に表示させる。入力欄が操作されたとき、制御部1は、入力用のソフトウェアキーボードを表示させる。イエロー以外については、確認者は、ソフトウェアキーボードを用いて、ずれの最も少ない第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせを示す数字を入力する。一方、イエローについては、確認者は、ソフトウェアキーボードを用いて、ずれの最も少ない第3ラインL3と第4ラインL4の組み合わせと、第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせを示す数字を入力する。
例えば、イエロー用の調整用チャート9において、「+2」の符号が付された第3ラインL3と第4ラインL4が最もずれなく重なっているとき、調整用チャート9の確認者は、第3ラインL3と第4ラインL4の調整用チャート9の入力欄に「+2」を入力する。制御部1は、現在の第2ずらし時間T2よりも、2ライン遅らせば、第3ラインL3と第4ラインL4が一致すると認識する。つまり、制御部1は、副走査方向において、ブラックの上流側ヘッド7とイエローの上流側ヘッド7の印刷位置が一致する理想的なタイミングに対し、現在の吐出タイミングは、2ライン(2ドット)早いと認識する。
また、あるイエロー用の調整用チャート9において、「-3」の符号が付された第5ラインL5と第6ラインL6が最もずれなく重なっているとき、調整用チャート9の確認者は、第5ラインL5と第6ラインL6の調整用チャート9に対応する入力欄に「-3」を入力する。現在の第2ずらし時間T2と現在のイエローの第1ずらし時間T1に基づき印刷した場合、制御部1は、副走査方向において、3ライン分の吐出タイミングを早めれば、第5ラインL5と第6ラインL6が一致すると認識する。つまり、制御部1は、ブラックの上流側ヘッド7の印刷位置とイエローの下流側ヘッド8の印刷位置が一致する理想的なタイミングに対し、現在の吐出タイミングは、3ライン(3ドット)遅いと認識する。
このように、操作パネル3への入力に基づき、制御部1は、基準上流側ヘッドとイエローの上流側ヘッド7の印刷位置のずれ方向とずれ量を認識できる。さらに、制御部1は、基準上流側ヘッドとイエローの下流側ヘッド8の印刷位置のずれ方向とずれ量を認識できる。制御部1は、認識したこれらのずれ方向とずれ量に基づき、副走査方向において、イエローの上流側ヘッド7とイエローの下流側ヘッド8の位置のずれ方向とずれ量を認識する(ステップ♯310)。そして、制御部1は、イエローのラインヘッド6Yにおいて、副走査方向の印刷位置のずれが無くなるように、第1ずらし時間T1を補正する(ステップ♯311)。そして、制御部1は、補正後のイエローの第1ずらし時間T1を記憶部2に不揮発的に記憶させる(ステップ♯312)。
例えば、イエローの上流側ヘッド7の印刷位置が、基準上流側ヘッドの印刷位置に対し、2ライン(2ドット)早く、イエローの下流側ヘッド8の印刷位置が、基準上流側ヘッドの印刷位置に対し下流方向に3ライン(3ドット)遅い場合を説明する。副走査方向において、イエローの上流側ヘッド7とイエローの下流側ヘッド8の印刷位置のずれは合計5ライン(5ドット)となる。第3ラインL3と第4ラインL4が最もずれなく重なっている位置から、第5ラインL5と第6ラインL6がずれなく重なっている位置までの距離が、イエローの上流側ヘッド7とイエローの下流側ヘッド8の印刷位置のずれ量となる。
第3ラインL3と第4ラインL4が最もずれなく重なっている位置から第5ラインL5と第6ラインL6がずれなく重なっている位置への方向に基づき、制御部は、ずれ方向を認識できる。例えば、第3ラインL3と第4ラインL4が最も重なる第3ラインL3の符号が「+2」であり、第5ラインL5と第6ラインL6が最も重なる第5ラインL5の符号が「-3」であるとする。この場合、イエローの下流側ヘッド8の印刷位置をイエローの上流側ヘッド7の印刷位置にあわせるには、+方向に(遅らせる方向に)イエローの下流側ヘッド8の印刷位置を5ライン分移動させればよい。つまり、現時点では、イエローの下流側ヘッド8は、イエローの上流側ヘッド7の印刷位置と一致する位置よりも、5ライン分早くインクを吐出していることになる。
例えば、イエローの下流側ヘッド8の印刷位置がイエローの上流側ヘッド7の印刷位置よりもcライン(cドット)だけ早い場合、制御部1は、補正前の第1ずらし時間T1に時間を加算する補正を行う。制御部1は、用紙(搬送ベルト51)をcライン分移動させるのに要する時間を、補正前の第1ずらし時間T1に加算する。言い換えると、制御部1は、補正前の第1ずらし時間T1に、搬送モーター54のcステップ分の周期を加算する。上記の例では、制御部1は、用紙(搬送ベルト51)を5ライン分移動させるのに要する時間を、補正前の第1ずらし時間T1に加算する。
一方、副走査方向において、イエローの下流側ヘッド8の印刷位置がイエローの上流側ヘッド7の印刷位置よりもdライン(dドット)だけ遅い場合、制御部1は、補正前の第1ずらし時間T1を減らす補正を行う。制御部1は、用紙(搬送ベルト51)をdライン分移動させるのに要する時間を、補正前の第1ずらし時間T1から減らす。制御部1は、補正前の第1ずらし時間T1から搬送モーター54のdステップ分の周期を減らす。
変形例でも、以後の通常印刷では、制御部1は補正後の第1ずらし時間T1を用いて印刷を行う。同じラインについて、制御部1は、上流側ヘッド7にラインの印刷用画像データi2を送信してから第1ずらし時間T1が経過すると、下流側ヘッド8にラインの印刷用画像データi2を送信する。制御部1は、同じラインの印刷用画像データi2の送信タイミング(インク吐出タイミング)を補正後の第1ずらし時間T1だけずらす。
このようにして、実施形態と変形例に係るプリンター100(インクジェット記録装置)は、用紙搬送部5、記憶部2、ラインヘッド6、制御部1を含む。用紙搬送部5は、用紙を搬送する。記憶部2は、第1ずらし時間T1を記憶する。ラインヘッド6は、用紙搬送部5が搬送する用紙にインクを吐出して印刷を行う。制御部1は、ラインヘッド6からのインクの吐出を制御する。ラインヘッド6は上流側ヘッド7と下流側ヘッド8を含む。上流側ヘッド7は下流側ヘッド8よりも副走査方向において上流側に位置する。上流側ヘッド7と下流側ヘッド8は、主走査方向に並ぶ複数のノズル61を含む。隣接する上流側ヘッド7と下流側ヘッド8は、各ヘッドの端部に配置された複数のノズル61が副走査方向から見て互いに重なる重複部6aを有するように取り付けられる。画像データに基づき通常の印刷を行う通常印刷時、制御部1は、上流側ヘッド7のラインの印刷から第1ずらし時間T1後に、副走査方向において同じラインを下流側ヘッド8に印刷させる。制御部1は、上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61と、下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61のうち、一方のみにインクを吐出させる。副走査方向での上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の印刷位置を調整するための調整用チャート9を印刷する調整印刷時、制御部1は、主走査方向の直線である第1ラインL1を調整用チャート9として上流側ヘッド7に印刷させる。制御部1は、第1ラインL1を複数、等間隔で上流側ヘッド7に印刷させる。制御部1は、上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61に第1ラインL1を印刷させる。制御部1は、主走査方向の直線であり、第1ラインL1の対となる第2ラインL2を調整用チャート9として下流側ヘッド8に印刷させる。制御部1は、下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61に第2ラインL2を印刷させる。制御部1は、第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせごとに、第1ラインL1に対応する第2ラインL2の副走査方向の位置をずらす。
副走査方向の印刷位置のずれを確認するための調整用チャート9を印刷させることができる。使用者は、調整用チャート9により、副走査方向での上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の印刷位置のずれ量、ずれ方向を確認できる。また、上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の各重複部6aに含まれるノズル61に調整用チャート9を印刷させることができる。第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせのうち、副走査方向の位置が一致している組み合わせでは、各重複部6aのノズル61が印刷した第1ラインL1と第2ラインL2が重なる。重なっている部分では、第1ラインL1と第2ラインL2が一直線状、かつ、色が濃くなる。副走査方向の位置が一致している組み合わせがわかりやすい調整用チャート9を印刷することができる。つまり、副走査方向での各ヘッドの印刷位置のずれ量、ずれ方向を正確に認識できる調整用チャート9を印刷することができる。
また、制御部1は、操作パネル3に入力されたずれの最も少ない第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせに基づき、副走査方向でのずれ方向とずれ量を認識する。制御部1は、認識したずれ方向とずれ量に基づき、副走査方向において、同じラインの印刷位置が、上流側ヘッド7と下流側ヘッド8とで一致するように第1ずらし時間T1を補正する。ずれ量、ずれ方向を正確に認識できるので、ずれが無くなるように第1ずらし時間T1(吐出時間差)を正確に補正することができる。
インクジェット記録装置(プリンター100)は、吐出するインクの色が異なるラインヘッド6を複数含む。調整印刷時、制御部1は、ラインヘッド6ごとに、調整用チャート9を印刷させる。制御部1は、ラインヘッド6ごとに第1ずらし時間T1を調整する。各ラインヘッド6での副走査方向の印刷位置のずれを無くすことができる。各ラインヘッド6の上流側ヘッド7の印刷位置と下流側ヘッド8の印刷位置を一致させることができる。
なお、変形例に係るインクジェット記録装置(プリンター100)は、吐出するインクの色が異なるラインヘッド6を複数含む。ラインヘッド6のうち1つは、イエローインクを吐出する。記憶部2は第2ずらし時間T2を記憶する。調整印刷時、制御部1は、主走査方向の直線である第3ラインL3を調整用チャート9として、基準ラインヘッドの上流側ヘッド7である基準上流側ヘッドに印刷させる。制御部1は、第3ラインL3を複数、等間隔で基準上流側ヘッドに印刷させる。制御部1は、主走査方向の直線であり、第3ラインL3の対となる第4ラインL4を調整用チャート9として、イエローのラインヘッド6Yの上流側ヘッド7であるイエローの上流側ヘッド7に印刷させる。制御部1は、第3ラインL3と第4ラインL4の組み合わせごとに、第3ラインL3に対応する第4ラインL4の副走査方向の位置をずらす。操作パネル3に入力されたずれの最も少ない第3ラインL3と第4ラインL4の組み合わせに基づき、制御部1は、副走査方向での基準上流側ヘッドとイエローの上流側ヘッド7の印刷位置のずれ方向とずれ量を認識する。制御部1は、主走査方向の直線である第5ラインL5を調整用チャート9として、基準上流側ヘッドに印刷させる。制御部1は、第5ラインL5を複数、等間隔で基準上流側ヘッドに印刷させる。制御部1は、基準上流側ヘッドの重複部6aのノズル61に第5ラインL5を印刷させる。制御部1は、主走査方向の直線であり、第5ラインL5の対となる第6ラインL6を調整用チャート9としてイエローのラインヘッド6Yの下流側ヘッド8であるイエローの下流側ヘッド8に印刷させる。制御部1は、イエローの下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61に第6ラインL6を印刷させる。制御部1は、第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせごとに、第5ラインL5に対応する第6ラインL6の副走査方向の位置をずらす。操作パネル3に入力されたずれの最も少ない第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせに基づき、制御部1は、基準上流側ヘッドとイエローの下流側ヘッド8の印刷位置の副走査方向でのずれ方向とずれ量を認識する。制御部1は、認識結果に基づき、イエローの上流側ヘッド7とイエローの下流側ヘッド8が印刷する同じラインの副走査方向の印刷位置のずれ方向とずれ量を求める。求めたイエローの上流側ヘッド7とイエローの下流側ヘッド8のずれ方向とずれ量に基づき、制御部1は、副走査方向において、同じラインの印刷位置が、イエローの上流側ヘッド7とイエローの下流側ヘッド8とで一致するように、イエローの第1ずらし時間T1を補正する。
用紙が白い場合、イエローの印刷部分は見えづらい。イエローインクの調整用チャート9は見づらい場合がある。そこで、基準ラインヘッドが印刷するラインを基準に、副走査方向でのイエローの上流側ヘッド7とイエローの下流側ヘッド8の印刷位置のずれを確認することができる。基準ラインヘッドのインクとイエローインクを用いるので、副走査方向の位置が一致する組み合わせがわかりやすい。また、副走査方向の位置が一致している組み合わせでは、第5ラインL5と第6ラインL6の一部が重なる。基準ラインヘッドのインクとイエローインクの混色により、副走査方向の位置が一致する組み合わせがわかりやすい。副走査方向の位置が一致するラインの組み合わせがわかりやすい調整用チャート9を印刷することができる。ずれ量、ずれ方向を正確に認識できるので、ずれが無くなるようにイエローの第1ずらし時間T1(吐出時間差)を正確に補正することができる。
基準ラインヘッドはイエローのラインヘッド6Yの隣に位置するラインヘッド6である。基準ラインヘッドとイエローのラインヘッド6Yの距離が長いほど、用紙搬送速度の変動要因の影響を受けやすい。用紙搬送速度が変動すると、印刷位置の正確なずれ量、ずれ方向を認識することが難しくなる。そこで、イエローのラインヘッド6Yに近いラインヘッド6を基準ラインヘッドとすることができる。用紙搬送速度が変動する前に、調整用チャート9を印刷することができる。ずれ量、ずれ方向を正確に認識することができる。ずれが無くなるように第1ずらし時間T1(吐出時間差)を正確に補正することができる。
操作パネル3は、上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61の使用数の設定を受け付ける。制御部1は、上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61のうち、設定された使用数のノズル61に調整用チャート9を印刷させる。上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61を用いて、調整用チャート9が印刷される。副走査方向の位置が同じラインの組み合わせでは、同じ画素(ドット)に、上流側ヘッド7と下流側ヘッド8の両方がインクを吹き付ける。インクの滲みにより、副走査方向の位置が最も一致する組み合わせが判定しづらくなる場合がある。この構成によれば、上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61のうち、使用するノズル61の範囲を設定することができる。インクが滲みすぎないように、上流側ヘッド7の重複部6aのノズル61の使用を制限することができる。
操作パネル3は、下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61の使用数の設定を受け付ける。制御部1は、下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61のうち、設定された使用数のノズル61に調整用チャート9を印刷させる。下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61のうち、使用するノズル61の範囲を設定することができる。インクが滲みすぎないように、下流側ヘッド8の重複部6aのノズル61の使用を制限することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
例えば、上記の実施形態の説明では、制御部1は、操作パネル3への入力に基づき、ずれの最も少ない第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせを認識する例を説明した。しかし、制御部は、調整用チャート9を読み取って得られた画像データに基づき、ずれの最も少ない第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせを認識してもよい。この場合、インクジェット記録装置に画像読取装置を含めてもよい。調整担当者は、調整用チャート9の印刷物を画像読取装置にセットする。制御部は、画像読取装置に調整用チャート9の印刷物を読み取らせる。制御部は、読み取りで得られた画像データに含まれるラインのうち、一直線になっている第1ラインL1と第2ラインL2の組み合わせを、ずれが最も少ない組み合わせと認識する。これにより、自動的にずれの少ない組み合わせ、ずれ量、ずれ方向を認識することができる。
例えば、上記の変形例の説明では、制御部1は、操作パネル3への入力に基づき、ずれの最も少ないずれの最も少ない第3ラインL3と第4ラインL4の組み合わせを認識する例を説明した。また、制御部1は、操作パネル3への入力に基づき、ずれの最も少ないずれの最も少ない第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせを認識する例を説明した。
しかし、制御部は、調整用チャート9を読み取って得られた画像データに基づき、ずれの最も少ない第3ラインL3と第4ラインL4の組み合わせを認識してもよい。また、制御部は、調整用チャート9を読み取って得られた画像データに基づき、ずれの最も少ない第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせを認識してもよい。この場合、インクジェット記録装置に画像読取装置を含めてもよい。調整担当者は、調整用チャート9の印刷物を画像読取装置にセットする。制御部は、画像読取装置に調整用チャート9の印刷物を読み取らせる。制御部は、読み取りで得られた画像データに含まれるラインのうち、一直線になっている第3ラインL3と第4ラインL4の組み合わせを、ずれが最も少ない組み合わせと認識する。また、制御部は、読み取りで得られた画像データに含まれるラインのうち、一直線になっている第5ラインL5と第6ラインL6の組み合わせを、ずれが最も少ない組み合わせと認識する。これにより、自動的にずれの少ない組み合わせ、ずれ量、ずれ方向を認識することができる。