JP7264728B2 - 硬化性組成物、ドライフィルムまたはプリプレグ、硬化物、および電子部品 - Google Patents

硬化性組成物、ドライフィルムまたはプリプレグ、硬化物、および電子部品 Download PDF

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Description

本発明は、硬化性組成物、ドライフィルムまたはプリプレグ、硬化物、および電子部品に関する。
ポリヒドロキシアミド(PHA)は、加熱により閉環反応させることで、ポリベンゾオキサゾール(PBO)となる。このポリベンゾオキサゾール(PBO)は、剛直な分子構造を有し、また分子間でのパッキング密度も上昇することから、耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性、および柔軟性などの機械特性に優れた硬化膜となる。このことから、このPHAを含む組成物は、電子材料の表面保護材や層間絶縁材として広く利用されている。
一方で、電子材料の表面保護材や層間絶縁材には、環境温度の変化による熱衝撃や物理的な衝撃への耐性が要求されている。このような要求に対し、従来、低熱膨張性や塗膜強度(引張強度)を付与する方法として、硬化性組成物中にセルロースナノファイバー(CNF)を分散させる方法が提案されている(特許文献1)。
WO2018-181802
しかしながら、PHAを含む組成物中にCNFを分散した場合、PHAを閉環反応させるための加熱温度(320℃以上)では、組成物中のCFNが炭化、変質してしまい、配合量に見合った低熱膨張性や塗膜強度(引張強度)を得ることが難しかった。
そこで本発明は、CNFの炭化を防止または抑制することに着目し、250℃以下(例えば220℃程度)の硬化温度であっても、低熱膨張性や優れた塗膜強度を奏する硬化物が得られるPHA含有硬化性組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討した結果、PHAとCNFを含む硬化性組成物が、さらにPHAとCNFの双方と架橋反応性を有する所定の化合物を含有することによって、PHAのポリマー同士が部分的に架橋し、かつ組成物中に分散されたCNFも該架橋構造内に組み込まれるようになることで、低温硬化であっても低熱膨張性や優れた塗膜強度を奏する硬化物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、ポリヒドロキシアミドと、セルロースナノファイバーと、分子構造内にメチロール基およびアルコキシメチル基を合計2つ以上有する化合物である架橋剤と、を含有する硬化性組成物を提供する。
前記架橋剤が下記一般式(2)~(4)のいずれかの式で表される化合物であってもよい。
Figure 0007264728000001
式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25およびR26はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~3のアルキル基である。
Figure 0007264728000002
式(3)中、R33およびR34は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。R31およびR32は1価の有機基を表し、またはR31およびR32がお互い結合して5~8員の環を形成する。
Figure 0007264728000003
式(4)中、R41は2~10価の有機基を示す。R42は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示す。nは2~10の整数を示す。
前記架橋剤が有するメチロール基またはアルコキシメチル基が、それぞれN-メチロール基またはN-アルコキシメチル基であってもよい。
前記架橋剤が下記のいずれかの化合物であってもよい。
Figure 0007264728000004
Figure 0007264728000005
本発明によれば、CNFの炭化を防止または抑制し、低温硬化であっても低熱膨張性や優れた塗膜強度(引張強度)を発揮し得る硬化物を提供できるPHA含有の硬化性組成物が提供される。
また、本発明は、前記硬化性組成物を基材に塗布又は含浸して得られるドライフィルムまたはプリプレグが提供される。
また、本発明は、前記硬化性組成物を硬化して得られる硬化物が提供される。
また、本発明は、前記硬化物を含む積層板が提供される。
また、本発明は、前記硬化物を有する電子部品が提供される。
本発明によれば、CNFの炭化を防止または抑制し、低温硬化であっても低熱膨張性や優れた塗膜強度(引張強度)を発揮し得る硬化物を提供できるPHA含有の硬化性組成物、およびそれから得られるPBO硬化物を提供することが可能となる。
以下、本発明のPHA組成物およびそれから得られるPBO硬化物について詳述する。なお、説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
本発明の硬化性組成物(「組成物」とも表現する)は、ポリヒドロキシアミド(PHA)とセルロースナノファイバー(CNF)との双方と架橋反応性を有する架橋剤を含有する。
<ポリヒドロキシアミド>
PHAは特に限定されず、従来使用されているものが使用できる。具体的には以下の式(1)の繰り返し構造を有する化合物である。
Figure 0007264728000006
式(1)中、nは2以上の整数であり、好ましくは10~200、より好ましくは20~70である。Xは4価の有機基を示し、Yは2価の有機基を示す。
PHAの合成方法は特に制限されず、公知の方法を利用してよい。例えば、アミン成分としてジヒドロキシジアミン類と、酸成分としてジカルボン酸ジクロリド、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル等のジカルボン酸成分とを反応させて得ることができる。この方法で合成する場合、上記式(1)中、Xは上記ジヒドロキシジアミン類の残基であり、Yは上記ジカルボン酸成分の残基である。
上記の繰り返し構造のジヒドロキシジアミン類としては、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。中でも、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
上記の繰り返し構造のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-ブロモイソフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、5-クロロイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(p-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等の芳香環を有するジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、1,2-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族系ジカルボン酸が挙げられる。中でも、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルが好ましい。
式(1)中、Xが示す4価の有機基は脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましく、2つのヒドロキシ基と2つのアミノ基がオルト位に芳香環上に位置することがより好ましい。Xが示す4価の有機基の炭素原子数は、6~30であることが好ましく、6~24であることがより好ましい。Xが示す4価の有機基の具体例としては、例えば、下記式(X)の芳香族基が挙げられる。
Figure 0007264728000007
Xが示す4価の有機基は、下記の基であることが特に好ましい。
Figure 0007264728000008
式(1)中、Yが示す2価の有機基は脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましく、芳香環上で前記式(1)中のカルボニルと結合していることがより好ましい。Yが示す2価の有機基の炭素原子数は、6~30であることが好ましく、6~24であることがより好ましい。Yが示す2価の有機基の具体例としては、例えば、下記式(Y)の芳香族基が挙げられる。
Figure 0007264728000009
式(Y)中、Aは単結合または-CH-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-NHCO-、-C(CF-、-C(CH-からなる群から選択される2価の基を表す。
Yが示す2価の有機基は、下記の基であることが特に好ましい。
Figure 0007264728000010
PHAの数平均分子量(Mn)は5,000~100,000であることが好ましく、8,000~50,000であることがより好ましい。また、PHAの重量平均分子量(Mw)は10,000~200,000であることが好ましく、16,000~100,000であることがより好ましい。多分散指数(PDI=Mw/Mn)は1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
なお本発明において、数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。
PHAが有するフェノール性水酸基は、後述する架橋剤と縮合反応するか、もしくは架橋剤と反応せずに閉環反応によりベンゾオキサゾール構造を形成する。このPHAのフェノール性水酸基当量は200~500であることが好ましく、300~400であることがより好ましい。このようなPHAのフェノール性水酸基当量の範囲であれば、良好な破断伸び、破断強度を有する硬化膜が得られる。
<セルロースナノファイバー(CNF)>
CNFは特に限定されず、従来使用されているものが使用できる。このCNFは、水酸基やそれが一部酸化されて生じたカルボキシル基を有することで、後述する架橋剤と縮合反応する。このCNFは、樹脂との相溶性を高める目的で、水酸基やカルボキシル基の一部が後述するように化学修飾されていることが好ましい。
CNFの数平均繊維径(D)は特に制限はないが1nm~1000nm、1nm~200nm、1nm~100nm、1.5nm~50nmまたは2nm~30nmが好ましい。
CNFの数平均繊維長(L)は特に制限はないが600nm以下が好ましく、50nm~600nmがより好ましい。
CNFのアスペクト比は特に制限はないが1~250が好ましく、5~230がより好ましい。
CNFの数平均繊維径(D)、数平均繊維長(L)、アスペクト比は以下の手法に基づいて求められる。
CNFに水を加えて、その濃度が0.0001質量%の分散液を調製する。この分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe(NCH)を使用)を用いて、観察試料中のCNFの繊維高さを測定する。その際、CNFが確認できる顕微鏡画像において、CNFを5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径(D)を算出する。また、繊維方向の距離より、平均繊維長(L)を算出する。アスペクト比は、数平均繊維径(D)に対する数平均繊維長(L)の比、すなわちL/Dとして算出される。
CNFの含有量は、分散性や充填性の観点から、PHA100質量部に対し、1~30質量部であることが好ましく、2~10質量部がより好ましい。
CNFの原材料および調製方法は特に制限はなく、周知のものが使用可能である。例えば以下の方法を挙げることができる。
CNFの原材料としては、木材や麻、竹、綿、ジュート、ケナフ、ビート、農産物残廃物、布等の天然植物繊維原料から得られるパルプ、レーヨンやセロファン等の再生セルロース繊維等を用いることができる。なかでもパルプが好適である。パルプとしては、植物原料を化学的若しくは機械的に、または、両者を併用してパルプ化することにより得られるクラフトパルプや亜硫酸パルプ等のケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、ケミグランドパルプ、ケミメカニカルパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、リファイナーメカニカルパルプ、砕木パルプおよびこれらの植物繊維を主成分とする脱墨古紙パルプ、雑誌古紙パルプ、段ボール古紙パルプなどを用いることができる。なかでも、繊維の強度が強い針葉樹由来の各種クラフトパルプ、例えば、針葉樹未漂白クラフトパルプ、針葉樹酸素晒し未漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプが特に好適である。
上記原材料はセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンから主として構成される。このうちリグニンの含有量は通常0~40質量%、特には0~10質量%である。これらの原材料については、必要に応じ、リグニンの除去ないし漂白処理を行って、リグニン量の調整を行うことができる。なお、リグニン含有量の測定は、Klason法により行うことができる。
植物の細胞壁の中では、セルロース分子が単分子ではなく規則的に凝集して数十本集まった結晶性を有するミクロフィブリル(CNF)を形成しており、これが植物の基本骨格物質となっている。よって、上記原材料からCNFを製造するためには、上記原材料に対し、叩解ないし粉砕処理、高温高圧水蒸気処理、リン酸塩等による処理、N-オキシル化合物を酸化触媒としてセルロース繊維を酸化する処理等を施すことにより、その繊維をナノサイズまで解きほぐす方法を用いることができる。
上記のうち叩解ないし粉砕処理は、上記パルプ等の原材料に対し直接力を加えて、機械的に叩解ないし粉砕を行い、繊維を解きほぐすことで、CNFを得る方法である。より具体的には、例えば、パルプ等を高圧ホモジナイザー等により機械的に処理して、繊維径0.1~10μm程度に解きほぐしたセルロース繊維を0.1~3質量%程度の水懸濁液とし、さらに、これをグラインダー等で繰り返し磨砕ないし融砕処理することにより、繊維径10~100nm程度のCNFを得ることができる。
上記磨砕ないし融砕処理は、例えば、栗田機械製作所製グラインダー「ピュアファインミル」等を用いて行うことができる。このグラインダーは、上下2枚のグラインダーの間隙を原料が通過するときに発生する衝撃、遠心力および剪断力により、原料を超微粒子に粉砕する石臼式粉砕機であり、剪断、磨砕、微粒化、分散、乳化およびフィブリル化を同時に行うことができるものである。また、上記磨砕ないし融砕処理は、増幸産業(株)製超微粒磨砕機「スーパーマスコロイダー」を用いて行うこともできる。スーパーマスコロイダーは、単なる粉砕の域を超えて融けるように感じるほどの超微粒化を可能にした磨砕機である。スーパーマスコロイダーは、間隔を自由に調整できる上下2枚の無気孔砥石によって構成された石臼形式の超微粒磨砕機であり、上部砥石は固定であり、下部砥石が高速回転する。ホッパーに投入された原料は遠心力によって上下砥石の間隙に送り込まれ、そこで生じる強大な圧縮、剪断および転がり摩擦力などにより、原材料は次第にすり潰されて、超微粒化される。
また、上記高温高圧水蒸気処理は、上記パルプ等の原材料を高温高圧水蒸気に曝すことによって繊維を解きほぐすことで、CNFを得る方法である。
さらに、上記リン酸塩等による処理は、上記パルプ等の原材料の表面をリン酸エステル化することにより、セルロース繊維間の結合力を弱め、次いで、リファイナー処理を行うことにより、繊維を解きほぐし、CNFを得る処理法である。例えば、上記パルプ等の原材料を50質量%の尿素および32質量%のリン酸を含む溶液に浸漬して、60℃で溶液をセルロース繊維間に十分に染み込ませた後、180℃で加熱してリン酸化を進め、これを水洗した後、3質量%の塩酸水溶液中、60℃で2時間、加水分解処理をして、再度水洗を行い、さらにその後、3質量%の炭酸ナトリウム水溶液中において、室温で20分間程処理することでリン酸化を完了させ、この処理物をリファイナーで解繊することにより、CNFを得ることができる。
そして、上記N-オキシル化合物を酸化触媒としてセルロース繊維を酸化する処理は、上記パルプ等の原材料を酸化させた後、微細化することによりCNFを得る方法である。
まず、天然セルロース繊維を、絶対乾燥基準で約10~1000倍量(質量基準)の水中に、ミキサー等を用いて分散させることにより、水分散液を調製する。上記CNFの原料となる天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプや広葉樹系パルプ等の木材パルプ、麦わらパルプやバガスパルプ等の非木材系パルプ、コットンリントやコットンリンター等の綿系パルプ、バクテリアセルロース等を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、これら天然セルロース繊維には、あらかじめ表面積を大きくするために叩解等の処理を施しておいてもよい。
次に、上記水分散液中で、N-オキシル化合物を酸化触媒として用いて、天然セルロース繊維の酸化処理を行う。かかるN-オキシル化合物としては、例えば、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル)の他、4-カルボキシ-TEMPO、4-アセトアミド-TEMPO、4-アミノ-TEMPO、4-ジメチルアミノ-TEMPO、4-フォスフォノオキシ-TEMPO、4-ヒドロキシTEMPO、4-オキシTEMPO、4-メトキシTEMPO、4-(2-ブロモアセトアミド)-TEMPO、2-アザアダマンタンN-オキシル等の、C4位に各種の官能基を有するTEMPO誘導体等を用いることができる。これらN-オキシル化合物の添加量としては、触媒量で十分であり、通常、天然セルロース繊維に対し、絶対乾燥基準で0.1~10質量%となる範囲とすることができる。
上記天然セルロース繊維の酸化処理においては、酸化剤と共酸化剤とを併用する。酸化剤としては、例えば、亜ハロゲン酸、次亜ハロゲン酸および過ハロゲン酸並びにそれらの塩、過酸化水素、過有機酸を挙げることができ、中でも、次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好適である。また、共酸化剤としては、例えば、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属を用いることができる。酸化剤の使用量は、通常、天然セルロース繊維に対し、絶対乾燥基準で約1~100質量%となる範囲であり、共酸化剤の使用量は、通常、天然セルロース繊維に対し、絶対乾燥基準で約1~30質量%となる範囲である。
上記天然セルロース繊維の酸化処理の際には、水分散液のpHを9~12の範囲で維持することが、酸化反応を効率よく進行させる観点から好ましい。また、酸化処理の際の水分散液の温度は、1~50℃の範囲で任意に設定することができ、温度制御なしで、室温においても反応可能である。反応時間としては、1~240分間の範囲とすることができる。なお、水分散液には、天然セルロース繊維の内部まで薬剤を浸透させて、より多くのカルボキシル基を繊維表面に導入するために、浸透剤を添加することもできる。浸透剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリエチレングルコール型、多価アルコール型等の非イオン界面活性剤などが挙げられる。
上記天然セルロース繊維の酸化処理の後には、微細化を行うに先立って、水分散液中に含まれる未反応の酸化剤や各種副生成物等の不純物を除去する精製処理を行うことが好ましい。具体的には例えば、酸化処理された天然セルロース繊維の水洗および濾過を繰り返し行う手法を用いることができる。精製処理後に得られる天然セルロース繊維は、通常、適量の水が含浸された状態で微細化処理に供されるが、必要に応じ、乾燥処理を行って、繊維状または粉末状としてもよい。
次に、天然セルロース処理の微細化は、所望に応じ精製処理された天然セルロース繊維を、水等の溶媒中に分散させた状態で行う。微細化処理において使用する分散媒としての溶媒は、通常は水が好ましいが、所望に応じ、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン等)やエーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等)等の水に可溶な有機溶媒を使用してもよく、これらの混合物を用いることもできる。これら溶媒の分散液中の天然セルロース繊維の固形分濃度は、好適には、50質量%以下とする。天然セルロース繊維の固形分濃度が50質量%を超えると、分散に極めて高いエネルギーを必要とするため好ましくない。天然セルロース処理の微細化は、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、叩解機、離解機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等の分散装置を使用して行うことができる。
微細化処理により得られるCNFは、所望に応じ、固形分濃度を調整した懸濁液状、または、乾燥させた粉末状とすることができる。ここで、懸濁液状にする場合には、分散媒として水のみを使用してもよく、水と他の有機溶媒、例えば、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用してもよい。
上記天然セルロース繊維の酸化処理および微細化処理により、セルロース分子の構成単位のC6位の水酸基がアルデヒド基を経由してカルボキシル基へと選択的に酸化され、かかるカルボキシル基の含有量が0.1~3mmol/gであるセルロース分子からなる、上記所定の数平均繊維径を有する高結晶性のCNFを得ることができる。この高結晶性のCNFは、セルロースI型結晶構造を有している。これは、かかるCNFが、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース分子が表面酸化され微細化されたものであることを意味している。すなわち、天然セルロース繊維は、その生合成の過程において生産されるミクロフィブリルと呼ばれる微細な繊維が多束化して高次な固体構造を構築しており、そのミクロフィブリル間の強い凝集力(表面間の水素結合)を、酸化処理によるアルデヒド基またはカルボキシル基の導入によって弱め、さらに、微細化処理を経ることで、CNFが得られる。酸化処理の条件を調整することにより、カルボキシル基の含有量を増減させて、極性を変化させたり、カルボキシル基の静電反発や微細化処理により、CNFの平均繊維径や平均繊維長、平均アスペクト比等を制御することができる。
上記天然セルロース繊維がI型結晶構造であることは、その広角X線回折像の測定により得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14~17°付近と2θ=22~23°付近の二つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。また、CNFのセルロース分子中にカルボキシル基が導入されていることは、水分を完全に除去したサンプルにおいて、全反射式赤外分光スペクトル(ATR)においてカルボニル基に起因する吸収(1608cm-1付近)が存在することにより確認することができる。カルボキシル基(COOH)の場合には、上記の測定において1730cm-1に吸収が存在する。
なお、酸化処理後の天然セルロース繊維にはハロゲン原子が付着または結合しているため、このような残留ハロゲン原子を除去する目的で、脱ハロゲン処理を行うこともできる。脱ハロゲン処理は、過酸化水素溶液やオゾン溶液に酸化処理後の天然セルロース繊維を浸漬することにより、行うことができる。
具体的には、例えば、酸化処理後の天然セルロース繊維を、濃度が0.1~100g/Lの過酸化水素溶液に、浴比1:5~1:100程度、好ましくは1:10~1:60程度(質量比)の条件で浸漬する。この場合の過酸化水素溶液の濃度は、好適には1~50g/Lであり、より好適には5~20g/Lである。また、過酸化水素溶液のpHは、好適には8~11であり、より好適には9.5~10.7である。
なお、水分散液に含まれるCNFの質量に対するセルロース中のカルボキシル基の量[mmol/g]は、以下の手法により評価することができる。すなわち、あらかじめ乾燥質量を精秤したCNF試料の0.5~1質量%水分散液を60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液をpHが約11になるまで滴下して、電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記式を用いて官能基量を決定することができる。この官能基量が、カルボキシル基の量を示す。
官能基量[mmol/g]=V[mL]×0.05/CNF試料[g]
また、本発明において用いるCNFは、後述する架橋剤との架橋反応を阻害しない範囲であれば、化学修飾および/または物理修飾して、機能性を高めたものであってもよい。
化学修飾としては、アセタール化、アセチル化、シアノエチル化、エーテル化、イソシアネート化等により官能基を付加させたり、シリケートやチタネート等の無機物を化学反応やゾルゲル法等によって複合化させたり、または被覆させるなどの方法で行うことができる。化学修飾の方法としては、例えば、シート状に成形したCNFを無水酢酸中に浸漬して加熱する方法が挙げられる。また、N-オキシル化合物を酸化触媒としてセルロース繊維を酸化する処理にて得られたCNFは、分子中のカルボキシル基にアミン化合物や第4級アンモニウム化合物等をイオン結合やアミド結合で修飾させる方法が挙げられる。
なお、このような化学修飾を行っても、CNFの平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比は維持される。
物理修飾の方法としては、例えば、化学蒸着法(CVD法)、無電解めっきや電解めっき等のめっき法等により、被覆させる方法が挙げられる。これらの修飾は、上記処理前であっても、処理後であってもよい。
<架橋剤>
本発明における架橋剤は、分子構造内にメチロール基およびアルコキシメチル基を合計2つ以上有する化合物である。反応性の観点からメチロール基、アルコキシメチル基は、それぞれN-メチロール基、N-アルコキシメチル基であることが好ましい。
架橋剤のメチロール基やアルコキシメチル基は、PHAのフェノール性水酸基と反応することができる。このような架橋剤を介して複数のPHAが化学的に架橋することで、250℃以下などの比較的低温条件下でもPHA含有の硬化性組成物が硬化することが可能となる。このため、CNFの炭化や変質を低減ないし予防することができ、かかる硬化性組成物の硬化物は、低熱膨張性や優れた塗膜強度を発揮できる。
また、架橋剤のメチロール基やアルコキシメチル基(特にN-メチロール基、N-アルコキシメチル基)は、CNFの水酸基および/またはカルボキシル基と反応することができる。かかる反応により、CNFも架橋されることで組成物の硬化性がさらに向上する。また、これら成分が一体化することで、より良好な低熱膨張性や塗膜強度を発揮でき、さらにブリードアウトのリスクを低減することもできる。
具体的な架橋剤としては、以下の式(2)~(4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007264728000011
式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25およびR26はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましい。
式(2)で表される化合物としては、以下の化合物が特に好ましい。
Figure 0007264728000012
Figure 0007264728000013
式(3)中、R33およびR34は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。R31およびR32は1価の有機基を表す。R31およびR32がお互い結合して5~8員の環を形成してもよい。
式(3)で表される化合物としては、以下の式(3a)で表される化合物がより好ましい。
Figure 0007264728000014
式(3a)中、R33、R34、R35およびR36は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
式(3)で表される化合物としては、以下の化合物が特に好ましい。
Figure 0007264728000015
Figure 0007264728000016
式(4)中、R41は2~10価の有機基を示し、無置換または置換基を有する炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましい。R42は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、水素原子であることが好ましい。nは2~10の整数であり、2~4の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(4)で表される架橋剤は、フッ素原子を有することが好ましく、トリフルオロメチル基を有することがより好ましい。式(4)中のR41が示す2~10価の有機基がフッ素原子またはトリフルオロメチル基を有することが好ましく、R41はジ(トリフルオロメチル)メチレン基であることが好ましい。また、式(4)で表される架橋剤は、ビスフェノール構造を有することが好ましく、ビスフェノールA構造またはビスフェノールAF構造を有することがより好ましい。
式(4)で表される化合物としては、以下の化合物が特に好ましい。
Figure 0007264728000017
架橋剤の含有量は、PHA100質量部に対し、1~30質量部であることが好ましく、5~20質量部がより好ましい。架橋剤の含有量がこのような数値範囲であることにより、優れた膜強度を有する硬化物を得ることができる。
<溶剤>
本発明の組成物に使用できる溶媒としては特に制限はなく、例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、γ-ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。
<その他の成分>
本発明の硬化性組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の成分を配合してもよい。例えば、硬化性組成物の低温硬化性を向上する観点から、PHAと反応するエポキシ基などの環状エーテル基、エピスルフィド基などの環状チオエーテル基を有する化合物、硬化物の耐薬品性を向上する観点から、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等を有する化合物、N-ブチルベンゼンスルホンアミド、N-エチル-p-トルエンスルホンアミド等のスルホンアミド化合物、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)などのフタル酸エステル化合物、マレイン酸ジ(2-エチルヘキシル)などのマレイン酸エステル化合物、トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテートなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチルなどの脂肪族二塩基酸エステル、トリメチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェートなどのリン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、クラウンエーテルなどのエーテル化合物、PHAの閉環反応を促進する観点から、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、カンファースルホン酸などのパーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸等のスルホン酸、前記スルホン酸をオニウム塩としての塩や、イミドスルホナートのような共有結合によって潜在化した化合物、硬化性組成物にフォトリソグラフィー等の感光性を付与する観点から、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N-オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ベンゾキノンジアゾスルホン酸エステル等の光酸発生剤、芳香族成分含有カルボン酸と3級アミンとの塩、α-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等の光塩基発生剤、感光性を向上させる公知の増感剤や、基材への接着性や塗布性を向上させるためのシランカップリング剤等の公知の密着剤、界面活性剤、レベリング剤、ポリスチレンやポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、シリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子、光を遮蔽または反射させるための各種着色剤等が挙げられる。尚、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基およびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
<硬化物>
硬化物は、上述した硬化性組成物を硬化することで得られる。
硬化性組成物から硬化物を得るための方法は、特に限定されるものではなく、硬化性組成物の組成に応じて適宜変更可能である。一例として、上述したような基材上に硬化性組成物の塗工(例えば、アプリケーター等による塗工)を行う工程を実施した後、必要に応じて硬化性組成物を乾燥させる乾燥工程を実施し、加熱(例えば、イナートガスオーブン、ホットプレート、真空オーブン、真空プレス機等による加熱)により熱硬化工程を実施すればよい。なお、各工程における実施の条件(例えば、塗工厚、乾燥温度および時間、加熱温度および時間等)は、硬化性組成物の組成や用途等に応じて適宜変更すればよい。ただし、各工程の温度は250℃を超えないように調整する。
<ドライフィルム、プリプレグ>
本発明のドライフィルムまたはプリプレグは、上述した硬化性組成物を基材に塗布又は含侵して得られるものである。
ここで基材とは、銅箔等の金属箔、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のフィルム、ガラスクロス、アラミド繊維等の繊維が挙げられる。
ドライフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に硬化性組成物を塗布乾燥させ、必要に応じてポリプロピレンフィルムを積層することにより得られる。
プリプレグは、例えば、ガラスクロスに硬化性組成物を含浸乾燥させることにより得られる。
<積層板>
本発明においては、上述のプリプレグを用いて積層板を作製することができる。
詳しく説明すると、本発明のプリプレグを一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面または片面に銅箔等の金属箔を重ねて、その積層体を加熱加圧成形することにより、積層一体化された両面に金属箔または片面に金属箔を有する積層板を作製することができる。
<電子部品>
このような硬化物は、ポリベンゾオキサゾールからなる永久膜として耐熱性や絶縁性を付与する成分として機能する。そのため、例えば、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、受動部品用絶縁材料、半導体素子の被覆膜、層間絶縁膜、ソルダーレジストやカバーレイ膜などのプリント配線板の被覆膜、ソルダーダム、光回路、光回路部品、反射防止膜、その他の光学部材または電子部材を形成するのに適している。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で使用した化合物は以下の通りである。
PHA:以下に示す繰り返し構造を有するポリヒドロキシアミドを使用した。重量平均分子量は32,000、数平均分子量は12,500、PDIは2.56であった。
Figure 0007264728000018
前記ポリヒドロキシアミドは以下の方法によって製造した。
温度計、攪拌機、原料仕込口及び窒素ガス導入口を備えた四つ口セパラブルフラスコに2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン40.3g(0.11モル)をN-メチル-2-ピロリドン1500gに溶解した後、ジフェニルエーテル-4、4’-ジカルボン酸ジクロリド35.4g(0.12モル)を反応系の温度を0~5℃に冷却しながら滴下した。
滴下終了後、反応系の温度を室温に戻し、そのまま6時間攪拌した。その後、純水1.8g(0.1モル)を加えて、更に40℃で1時間反応した。反応終了後、反応液を純水2000gに滴下した。殿物を濾集し、洗浄した後、真空乾燥を行い、
架橋剤:架橋剤1~3として以下の構造で表される化合物をそれぞれ使用した。
Figure 0007264728000019
CNF1:セルロースナノファイバーが有するカルボキシ基をアミン化合物によって変性させ、アミド結合を形成させたセルロースナノファイバーをCNF1として使用した。
CNF2:セルロースナノファイバーが有するカルボキシ基をアンモニウム塩によって変性させ、イオン結合を形成させたセルロースナノファイバーをCNF2として使用した。
前記セルロースナノファイバーは以下の方法によって製造した。
<カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーの製造>
ユーカリ由来の広葉樹漂白クラフトパルプ(CENIBRA社製)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
まず、広葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分に攪拌した後、このパルプ質量100gに対し、TEMPO1.25質量%、臭化ナトリウム12.5質量%、次亜塩素酸ナトリウム28.4質量%をこの順で添加した。pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持した。反応を120分(20℃)行った後、水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化パルプを得た。イオン交換水を用いて得られた酸化パルプを十分に洗浄し、次いで脱水処理を行い固形分30.4%の酸化パルプを得た。
105.3gの酸化パルプを、1000gのイオン交換水で希釈し、濃塩酸を346g加えて、酸化パルプ固形分濃度2.34wt%、塩酸濃度2.5Mの分散液に調製し、10分間還流させた。得られた酸化パルプを十分に洗浄し、固形分41%の酸加水分解TEMPO酸化パルプを得た。その後、酸化パルプ0.88gとイオン交換水35.12gを高圧ホモジナイザーを用いて150MPaで微細化処理を10回行い、カルボキシル基含有セルロースナノファイバー分散液(固形分濃度5.0質量%)を得た。このセルロースナノファイバーの平均繊維径は11.0nm、平均繊維長は187nm、平均アスペクト比は17、カルボキシル基含有量は1.1mmol/gであった。
<カルボキシル基変性セルロースナノファイバーの製造>
(CNF1)
マグネティックスターラーと攪拌子を備えたビーカーに前記セルロースナノファイバー分散液40g(固形分濃度5.0質量%)を仕込んだ。続いて、ドデシルアミンを、セルロースナノファイバーのカルボキシル基1molに対してアミノ基1.2molに相当する量、4-メチルモルホリンを0.34g、縮合剤であるDMT-MMを1.98g仕込み、DMF300g中に溶解させた。
この反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、エタノールにて洗浄、DMT-MM塩を除去し、DMFで洗浄及び溶媒置換することで、前記セルロースナノファイバーに、脂肪族炭化水素基がアミド結合を介して連結したCNF・DMF分散液を得た。得られたCNF・DMF分散液の固形分濃度は2.2質量%であった。
(CNF2)
マグネティックスターラーと攪拌子を備えたビーカーに前記セルロースナノファイバー分散液35g(固形分濃度5.0質量%)を仕込んだ。続いて、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを、CNFのカルボキシル基1molに対してアミノ基1molに相当する量を仕込み、DMF300gで溶解させた。
この反応液を室温(25℃)で1時間反応させた。反応終了後ろ過し、DMFで洗浄することで、前記セルロースナノファイバーに、アミン塩が結合したCNFを得た。得られたCNF・DMF分散液の固形分濃度は4.0質量%であった。
表1記載の組成(数値は固形分換算の質量部である)に従い、上述化合物を含有する組成物を調製した。各組成物に関する評価結果も表1に記載する。
Figure 0007264728000020
各組成物に関する評価試験は以下の通りである。
<熱膨張率(α1)>
厚さ38μmのPETフィルムに、アプリケーターを用いて硬化後の膜厚が55μmとなるように各組成物を塗布し、熱風循環式乾燥炉にて90℃で10分間乾燥させて、各組成物の樹脂層を有するドライフィルムを得た。その後、厚さ18μmの銅箔に真空ラミネータにて60℃、圧力0.5MPaの条件で60秒間圧着して各組成物の樹脂層をラミネートして、PETフィルムを剥がした。次いで、熱風循環式乾燥炉にて180℃30分加熱して硬化させ、銅箔から剥がして、各組成物の硬化物(硬化膜)を得た。得られた硬化膜を3mm幅×30mm長にカットして試験片とした。
この試験片について、ティー・エイ・インスツルメント社製TMA(Thermomechanical Analysis)Q400を用いて、引張モードで、チャック間16mm、荷重30mN、窒素雰囲気下、20~250℃まで5℃/分で昇温し、次いで、250~20℃まで5℃/分で降温し、50℃から30℃までの降温過程での熱膨張率の平均値α1(ppm/K)を測定した。
α1が40ppm/K未満のものを「◎」、40ppm/K以上45ppm/K未満のものを「〇」、45ppm/K以上50ppm/K未満のものを「△」、50ppm/K以上のものを「×」と評価した。
<引張強度>
熱膨張率の解析用と同様に作製した硬化膜を5mm×10cmにカットして試験片を作製した。この試験片について、島津製作所製小型卓上試験機EZ-SXを用い、引張速度10mm/分にて応力[MPa]と歪み[%]を測定した。
破断点の応力[MPa]が120MPa以上のものを「◎」、120MPa未満100MPa以上のものを「〇」、100MPa未満80MPa以上のものを「△」、80MPa未満のものを「×」とした。
<破断伸び>
熱膨張率の解析用と同様に作製した硬化膜を長さ8cm、幅0.5cmにカットし、引張破断伸びを下記条件にて測定した。
[測定条件]
試験機:引張試験機EZ-SX(株式会社島津製作所製)
チャック間距離:50mm
試験速度:1mm/min
伸び計算:(引張移動量/チャック間距離)×100
引張破断伸び[%]が10%以上のものを「◎」、10%未満7%以上のものを「〇」、7%未満3%以上のものを「△」、3%未満のものを「×」とした。
表1に示す結果から明らかなように、PHAと、CNFと、分子構造内にメチロール基およびアルコキシメチル基を合計2つ以上有する化合物である架橋剤を含む組成物は、低温硬化であっても低熱膨張性や優れた塗膜強度の硬化物が得られることを確認した。

Claims (8)

  1. ポリヒドロキシアミドと、セルロースナノファイバーと、分子構造内にメチロール基およびアルコキシメチル基を合計2つ以上有する化合物である架橋剤と、を含有する硬化性組成物。
  2. 前記架橋剤が下記一般式(2)~(4)のいずれかの式で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
    Figure 0007264728000021
    式(2)中、R21、R22、R23、R24、R25およびR26はそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1~3のアルキル基である。
    Figure 0007264728000022
    式(3)中、R33およびR34は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。R31およびR32は1価の有機基を表し、またはR31およびR32がお互い結合して5~8員の環を形成する。
    Figure 0007264728000023
    式(4)中、R41は2~10価の有機基を示す。R42は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示す。nは2~10の整数を示す。
  3. 前記架橋剤が有するメチロール基またはアルコキシメチル基が、それぞれN-メチロール基またはN-アルコキシメチル基であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
  4. 前記架橋剤が下記のいずれかの化合物であることを特徴とする請求項2または3に記載の硬化性組成物。
    Figure 0007264728000024
    Figure 0007264728000025
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性組成物を基材に塗布または含浸して得られることを特徴とするドライフィルムまたはプリプレグ。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化して得られることを特徴とする硬化物。
  7. 請求項6に記載の硬化物を含むことを特徴とする積層板。
  8. 請求項6に記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。

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