以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
[基本構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る過電流保護回路の基本構成を示す回路図である。本実施形態に係る過電流保護回路100は、電流検出抵抗Rs及びメインスイッチM11を含む電流供給ライン21と、制御ライン22と、保護用トランジスタQ11と、電圧発生部X10と、閾値変化部Y10とを有する。
電源供給ライン21の一端側には、電源10が設けられており、電源供給ライン21の他端側には、出力ポート11が設けられている。電源10は、本実施形態では、バッテリ等の直流電源で構成されている。出力ポート11の先には、負荷Lが接続されている。本実施形態では、負荷Lは、電力の供給を受けて電力を消費する素子や回路であればどのような物であってもよく、典型的には、ソレノイド(モータ)、コンデンサ等を含む。
電流検出抵抗Rsは、電流供給ライン21に流れる電流により、過電流を検出するための電位差ΔVを生じる。メインスイッチM11は、電流検出抵抗Rsと出力ポート11(負荷L)との間に接続される。メインスイッチM11は、ゲート、ソース及びドレインを有するP型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)で構成されている。なお、メインスイッチは、電界効果型トランジスタに限られず、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)により構成されていてもよい。
メインスイッチM11のゲートは、制御ライン22を介して保護用トランジスタQ11のコレクタと接続されている。また、メインスイッチM11のソースは、電流検出抵抗Rsに接続されており、メインスイッチM11のドレインは、出力ポート11に接続されている。
メインスイッチM11は、保護用トランジスタQ11によって、電源10から負荷Lへ電流を供給するオン状態と、電源10から負荷Lへ供給される電流を制限するオフ状態とを切り替え可能に構成される。
ここで、「電流を制限する」とは、本実施形態では、負荷Lへ供給される電流を所定の電流値以下に規制することをいう。これにより、過電流検出時においても所定の大きさに制限された電流を負荷Lへ供給することができる。所定の電流値としては、負荷Lへ接続される回路の種類に応じて適宜設定可能であり、当該回路がICなどの制御回路の場合には、当該制御回路の安定した動作に必要な電流値に設定される。なお、以降の説明では、負荷への電流が制限されていない状態を「通常状態」と呼び、逆に、負荷への電流が制限されている状態を「制限状態」と呼ぶ。
制御ライン22の一端側は、メインスイッチM11のゲートに接続されており、制御ライン22の他端側には、入力ポート12が設けられている。入力ポート12には、メインスイッチM11をオンオフ制御することが可能な入力信号が入力可能に構成される。
メインスイッチM11のゲートは、メインスイッチM11のソースとドレイン間のインピーダンスを調整する。入力ポート12に与える入力信号(電圧)のインピーダンスは、保護用トランジスタQ11のエミッタとコレクタ間が導通した際のインピーダンスに比べて高く、保護用トランジスタQ11の動作が優先的に働くように構成される。
メインスイッチM11には、インピーダンス素子Zが接続される。インピーダンス素子Zは、メインスイッチM11のソースとゲートとの間に接続される。インピーダンス素子Zは、メインスイッチM11を外来ノイズや使用環境の負荷から守るために設けられる。特に、インピーダンス素子Zにより、メインスイッチM11をオフ状態に切り替えた際の電流供給ライン21に生じるサージを吸収することができる時定数が設定される。これにより過電流検出時においてメインスイッチM11をサージ電流から保護することができる。
インピーダンス素子Zは、抵抗素子、容量素子、整流素子等の1つもしくは2以上の受動素子を適宜組み合わせた並列回路で構成される。なお、図示は省略するが、メインスイッチM11のドレインと出力ポート11との間にフェライトビーズ等の電波吸収材が別途設置されてもよい。
保護用トランジスタQ11は、本実施形態では、ベース、エミッタ及びコレクタを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成されている。ベースは、電圧発生部X10に接続されている。また、エミッタは、電源10と電流検出抵抗Rsとの間の電流供給ライン21に接続されており、コレクタは、制御ライン22を介してメインスイッチM11のゲートに接続されている。
保護用トランジスタQ11のベースには、過電流検出抵抗の両端電位差(ΔV)と、電圧発生部X10によって発生された基準電圧(Vref)との加算電圧(ΔV+Vref)が印加電圧として与えられる。
保護用トランジスタQ11のベース‐エミッタ間には、閾値電圧(Vbe)が掛けられている。保護用トランジスタQ11は、保護用トランジスタQ11のオフ状態(通常状態)において、過電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)と、基準電圧(Vref)(第1の基準電圧(Vref1))との加算電圧(ΔV+Vref)が閾値電圧(Vbe)以上となると、オフ状態からオン状態へと切り替わるように構成されている。この場合、保護用トランジスタQ11は、制御ライン22を介してメインスイッチM11のゲートに電圧を印加してメインスイッチM11をオン状態からオフ状態に切り替え、負荷Lへ供給される電流を制限する。つまり、この場合、保護用トランジスタQ11は、通常状態を制限状態へ切り替える。
逆に、保護用トランジスタQ11は、保護用トランジスタQ11のオン状態(制限状態)において、過電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)と、基準電圧(Vref)(第2の基準電圧(Vref2))との加算電圧(ΔV+Vref)が閾値電圧(Vbe)未満となると、オン状態からオフ状態へと切り替わるように構成されている。この場合、保護用トランジスタQ11は、制御ライン22を介してメインスイッチM11のゲートへ印加されていた電圧を解除し、メインスイッチM11をオフ状態からオン状態に切り替え、負荷Lへの電流の制限を解除する。つまり、この場合、保護用トランジスタQ11は、制限状態を通常状態へ切り変える(通常状態へ復帰させる)。
電圧発生部X10は、電流検出抵抗RsとメインスイッチM11との間の電流供給ライン21と、保護用トランジスタQ11のベースとの間に接続される。電圧発生部X10は、基準電圧(Vref)を発生し、保護用トランジスタQ11のベースに対して、過電流検出抵抗の両端電位差(ΔV)と、基準電圧(Vref)との加算電圧(ΔV+Vref)を印加電圧として与える。
基準電圧(Vref)は、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)に満たない適宜の大きさに設定される。本実施形態では、閾値変化部Y10により、基準電圧(Vref)が可変とされており、これにより、過電流判定閾値(Th)が可変とされている。ここで、過電流判定閾値(Th)は、過電流検出抵抗Rsに過電流が流れたかどうかの判断の基準となる閾値である。
本実施形態では、基準電圧が変化すると、過電流判定閾値Thが変化するといった関係を利用している。この原理について説明する。
上述のように、通常状態において、過電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)と、基準電圧(Vref)との加算値(ΔV+Vref)が閾値電圧(Vbe)に達すると、保護用トランジスタQ11がオン状態となり、通常状態が制限状態へと切り替わる。従って、通常状態へと切り替わる条件は、ΔV+Vref≧Vbeであり、ΔV≧Vbe-Vrefである。つまり、過電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)が、閾値電圧(Vbe)と基準電圧(Vref)との差よりも大きくなれば、通常状態が制限状態へと切り替わる。
通常状態が制限状態へと切り替わる条件(ΔV≧Vbe-Vref)に達したときの、過電流検出抵抗Rsの両端電位差ΔVを過電流検出電圧(ΔVrs)とする。つまり、ΔVrs=Vbe-Vrefである。
過電流検出抵抗Rsの両端電位差ΔVが、過電流検出電圧(ΔVrs)未満であれば、過電流であるとは判断されずに通常状態のままであるが、一方で、両端電位差ΔVが、過電流検出電圧(ΔVrs)以上となれば、過電流であると判断されて通常状態が制限状態へ切り替わる。つまり、過電検出電圧(ΔVrs)の値は、過電流検出抵抗Rsに過電流が流れたかどうかの判断の基準となる閾値となっており、過電流検出電圧(ΔVrs)の値は、過電流判定閾値Thと等しい。従って、ΔVrs=Th=Vbe-Vrefである。
Th=Vbe-Vrefの式について、過電流判定閾値Thの値は、基準電圧Vrefの値が変化すれば、これに応じて変化することが分かる(なお、閾値電圧Vbeの値は、保護用トランジスタQ11のベース‐エミッタ間の電圧を表しており、一定の値である)。また、過電流判定閾値Thの値は、基準電圧が高くなると低くなり、基準電圧が低くなると高くなることが分かる。これが、基準電圧Vrefの変化と、過電流判定閾値Thの変化との関係の原理である。
本実施形態では、基準電圧として2種類の基準電圧が用意されている。1つ目は、通常状態での基準電圧である第1の基準電圧(Vref1)であり、2つ目は、制限状態での基準電圧である第2の基準電圧(Vref2)である。
制限状態における第2の基準電圧(Vref2)の値は、通常状態における第1の基準電圧(Vref1)の値よりも高くなるようにその値が設定されている。なお、本実施形態では、基準電圧が、2段階とされているが、基準電圧は、3段階以上とされていてもよい。
閾値変化部Y10は、保護用トランジスタQ11のコレクタ側に配置されている。閾値変化部Y10は、保護用トランジスタQ11のオン状態及びオフ状態(通常状態及び制限状態)の切り替えに応じて、過電流判定閾値を変化させる。この閾値変化部Y10は、上述のように、電圧発生部X10の基準電圧を変化させることで、過電流判定閾値を変化させる。
本実施形態では、過電流判定閾値として、2種類の過電流判定閾値が用意されている。1つ目は、通常状態での過電流判定閾値である第1の過電流判定閾値であり、2つ目は、制限状態での過電流判定閾値である第2の過電流判定閾値である。
制限状態における第2の過電流判定閾値の値は、通常状態における第1の過電流判定閾値の値よりも低くなるようにその値が設定されている。つまり、制限状態では、過電流検出抵抗Rsの両端電位差ΔVが、通常状態における第1の過電流判定閾値よりも低い値であっても、過電流と判断され得る。なお、本実施形態では、過電流判定閾値が、2段階とされているが、過電流判定閾値は、3段階以上とされていてもよい。
閾値変化部Y10は、保護用トランジスタQ11におけるオフ状態(通常状態)からオン状態(制限状態)への切り替えに応じて、基準電圧を第1の基準電圧から第2の基準電圧に変化させることで、過電流判定閾値を第1の過電流判定閾値から第2の過電流判定閾値へ変化させる。
逆に、閾値変化部Y10は、保護用トランジスタQ11におけるオン状態(制限状態)からオフ状態(通常状態)への切り替えに応じて、基準電圧を第2の基準電圧から第1の基準電圧に変化させることで、過電流判定閾値を第2の過電流判定閾値から第1の過電流判定閾値へ変化させる。
[第1の比較例]
本実施形態の過電流保護回路100は、電圧発生部X10を備えることにより、電流検出抵抗Rsでの両端電位差ΔVを小さくして、電流検出抵抗Rsの発熱量を抑制することが可能とされている。この原理について、第1の比較例を参照しつつ説明する。
図2は、第1の比較例に係る過電流保護回路1を示す図である。第1の比較例に係る過電流保護回路1は、本実施形態とは異なり、電圧発生部も閾値変化部も備えていない。
図2に示すように、第1の比較例に係る過電流保護回路1は、電流検出抵抗Rsの出力端(電流供給ライン21)と保護用トランジスタQ11のベースとがダイレクトに接続されている。過電流保護回路1においては、電流検出抵抗Rsにおける両端電位差ΔVが、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)以上になったときに、保護用トランジスタQ11がオフ状態からオン状態に切り替わる。これによりメインスイッチM11が、電源10からオン状態からオフ状態に切り替えられ、負荷へ供給される電流が制限される。
第1の比較例に係る過電流保護回路1においては、過電流が生じたときの電流検出抵抗Rsの発熱量が問題となる。過電流の電流値をImax[A]、電流検出抵抗Rsの抵抗値をRs1[Ω]、保護用トランジスタQ11の閾値電圧をVbe[V]、過電流発生時における電流検出抵抗Rsの発熱量をPmax1[W]とすると、過電流保護回路1においては以下の関係を満たす。
Imax=Vbe/Rs1 …(1)
Pmax1=(Imax)2・Rs1
=(Vbe)2/Rs1 …(2)
第1の比較例の過電流保護回路1において、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)が0.6[v]である条件下での電流、電流検出抵抗Rsの抵抗値、電流検出抵抗Rsでの損失電力の関係を表1に示す。
一方、本実施形態の過電流保護回路100では、電流検出抵抗Rsの両端電位差ΔVだけでなく、電圧発生部X10によって発生された基準電圧も保護用トランジスタQ11に印加され、これらの加算電圧が閾値電圧(Vbe)と比較される。このため、電流検出抵抗Rsに、第1の比較例よりも低い抵抗値の抵抗素子を用いることが可能となり、これにより過電流発生時における電流検出抵抗Rsの発熱量を比較例における発熱量よりも低く抑えることができる。
例えば、本実施形態の過電流保護回路100における電流検出抵抗Rsの抵抗値をRs100(=Rs1/(1+a)[Ω](係数aは正数))、過電流発生時における電流検出抵抗Rsの発熱量をPmax100[W]とすると、以下のように、発熱量Pmax100は、第1の比較例における発熱量Pmax1の1/(1+a)倍に低下する。
Imax=Vbe/Rs100=Vbe/Rs1/(1+a) …(3)
Pmax100=(Imax)2・Rs100
=[Vbe/{Rs1/(1+a)}]2・Rs1/(1+a)
=Pmax1/(1+a) …(4)
[第2の比較例]
次に、第2の比較例の比較例に係る過電流保護回路について説明する。図3は、第2の比較例に係る過電流保護回路2を示す図である。第2の比較例に係る過電流保護回路2は、本実施形態に係る過電流保護回路100とは異なり、閾値変化部Y10を備えていない。従って、基準電圧(Vref)及び過電流判定閾値(Th)は変化せず、これらの値は、通常状態及び制限状態によらず一定の値が用いられる。
第2の比較例に係る過電流保護回路2において、何かしらの原因(例えば、負荷への急激な突入電流や、負荷の地絡)で過電流検出抵抗Rsに過電流が流れ、過電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)が過電流判定閾値(Th)に達したとする。
なお、第2の比較例に係る過電流保護回路2では、第1の比較例に係る過電流保護回路1とは異なり、保護用トランジスタQ11のベースに対して、予め電圧発生部よる基準電圧が印加されている。従って、第2の比較例に係る過電流保護回路2では、第1の比較例に係る過電流保護回路1に比べて、過電流判定閾値Thに達したときの電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔVrs)の値が小さく、電流検出抵抗Rsの発熱量も小さい。
過電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)が過電流判定閾値に達すると、保護用トランジスタQ11がオフ状態からオン状態に切り替わる。そして、メインスイッチM11がオン状態からオフ状態に切り替わり、通常状態が制限状態へと自動的に切り替えられる。
その後、制限状態において、過電流の原因が解消され(例えば、急激な突入電流の解消、地絡の解消等)、過電流検出抵抗Rsにおける両端電位差(ΔV)が過電流判定閾値(Th)未満となったとする。この場合、保護用トランジスタQ11がオン状態からオフ状態に切り替わる。そして、メインスイッチM11がオフ状態からオン状態に切り替わり、制限状態が通常状態へと自動的に切り替えられる(通常状態へと復帰する)。
第2の比較例では、制限状態から通常状態へと復帰する条件は、過電流検出抵抗Rsにおける両端電位差(ΔV)が過電流判定閾値(Th)未満となることである。また、制限状態における過電流判定閾値は、通常状態の過電流判定閾値と同じ値である。
このため、第2の比較例では、過電流検出抵抗Rsにおける両端電位差(ΔV)が比較的高いときに制限状態から通常状態へと復帰してしまう。このため、過電流の原因が完全に解消されていないのも拘らず、制限状態が通常状態へ復帰してしまう場合がある。また、制限状態から通常状態から復帰した後に、過電流検出抵抗Rsにおける両端電位差(ΔV)が、過電流判定閾値に近い値(過電流判定閾値未満)を取り続けるような場合は、発熱が問題となることも考えられる。
このように、第2の比較例では、通常状態及び制限状態によらず、過電流判定閾値に同じ値が用いられているので、不都合が生じる場合がある。従って、本実施形態では、通常状態及び制限状態で過電流判定閾値の値を変化せることで、このような不都合を解消している。なお、具体的には、本実施形態では、過電流検出抵抗Rsにおける両端電位差(ΔV)が、通常状態の第1の過電流判定閾値よりも低い値に設定された第2の過電流判定閾値未満となるまでは、制限状態から通常状態へと復帰させないこととしている。
[電圧発生部及び閾値変化部]
次に、電圧発生部X10及び閾値変化部Y10の具体的な構成について説明する。図4は、電圧発生部X10及び閾値変化部Y10の具体的な構成を示す図である。
(電圧発生部)
図4に示すように、電圧発生部X10は、電流検出抵抗Rsの出力端と保護用トランジスタQ11のベースとの間に接続される。電圧発生部X10は、標準電圧発生源VSと、分圧回路部VDとを有する。
標準電圧発生源VSは、基準電圧(Vref)よりも高い標準電圧(Vbe')を発生することが可能に構成される。分圧回路部VDは、標準電圧発生源VSによって発生された標準電圧を基準電圧(Vref)に分圧することが可能に構成される。
標準電圧発生源VSは、電圧発生用トランジスタQ12と、抵抗R4とを含む。電圧発生用トランジスタQ12は、電流検出抵抗Rsの出力端とグランド端子(GND)との間に接続される。抵抗R4は、電圧発生用トランジスタQ12と抵抗素子R3との間において、電圧発生用トランジスタQ12と直列に接続される。抵抗素子R4は、電圧発生用トランジスタQ12のエミッタ側に接続されてもよい。なお、抵抗素子R4は、省略することも可能である。
電圧発生用トランジスタQ12は、整流素子で構成され、本実施形態では、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタで構成される。
より具体的に、電圧発生用トランジスタQ12は、エミッタ、コレクタ及びベースを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成されている。電圧発生用トランジスタQ12のエミッタは、電流供給ライン21(電流検出抵抗Rsの出力端)に接続され、コレクタは、グランド端子(GND)に抵抗R3(及び抵抗R4)を介して接続される。また、電圧発生用トランジスタのベースは、コレクタに接続される。
標準電圧発生源VSにより発生される標準電圧(Vbe')は、電圧発生用トランジスタQ12がオン動作する閾値電圧(Vbe')に相当する。本実施形態において、標準電圧発生源VSにより発生される標準電圧(Vbe')、つまり、電圧発生用トランジスタQ12の閾値電圧(Vbe')は、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)と同一の値に設定されている(Vbe'=Vbe)。電圧発生用トランジスタQ12は、典型的には、保護用トランジスタQ11と同一のトランジスタ素子で構成される。これにより、周囲温度の変化等による両トランジスタQ11,Q12間における特性のバラツキを防ぐことができる。
抵抗R4は、電圧発生部X10の出力特性を調整するために設けられている。保護用トランジスタQ11及び電圧発生用トランジスタQ12各々の閾値電圧(Vbe、Vbe')は、温度依存性を有し、低温になるほど上昇(増加)する傾向にある。電圧発生部X10は、抵抗R4の抵抗値の大きさによって、負荷Lに対する電源電圧(Vcc)の上昇に応じた標準電圧発生源VSの電圧(Vbe')の変化を調整することができる。
なお、抵抗R4の大きさに関係なく、環境温度が低温になるほど、電源電圧(Vcc)の上昇に応じて出力電流(Iout)が増加する傾向にあることが分かっている。また、抵抗R4の抵抗値が大きくなるに従い、電源電圧(Vcc)の上昇に伴って、負荷Lに対する出力電流(Iout)が低下する傾向にあることが分かっている。
出力電流(Iout)は、メインスイッチM11の出力特性に依存し、メインスイッチM11の出力特性は、保護用トランジスタQ11の出力特性に依存する。さらに、保護用トランジスタQ11の出力特性は、過電流検出時における電圧発生部X10の回路特性に強い相関を有する。このため、例えば、電圧発生部X10の出力特性が電源10と負荷Lとの間の電圧に大きく依存する場合等において、抵抗R4の抵抗値を最適化することで、電圧発生部X10の出力特性の調整が可能となる。
分圧回路部VDは、電流供給ライン21(電流検出抵抗Rsの出力端)とグランド端子(GND)との間に標準電圧発生源VSと並列的に接続される。分圧回路部VDは、相互に直列接続された第1の抵抗部31と、第2の抵抗部32とを有し、第1の抵抗部31及び第2の抵抗部32の接続点が保護用トランジスタQ11のベースに接続される。これにより、分圧回路部VDにおいて、標準電圧(Vbe')が基準電圧(Vref)に分圧される。
第1の抵抗部31は、基準電圧(Vref)に相当する電位差を生じる。一方、第2の抵抗部32は、標準電圧(Vbe')から基準電圧(Vref)を差し引いた値に相当する電位差を生じる。第1の抵抗部31は、1つの抵抗素子R1を含み、第2の抵抗部32は、相互に直列に配列された第1の抵抗素子R2と、第2の抵抗素子R2'との2つの抵抗素子を含む。
第1の抵抗部31(抵抗素子R1)は、電流検出抵抗Rsの出力端とグランド端子(GND)との間に接続される。一方、第2の抵抗部32(第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2')は、第1の抵抗部31と、グランド端子(GND)との間に接続される。
なお、抵抗R3は、第2の抵抗部32とグランド端子(GND)との間に接続される。抵抗R3の抵抗値は、標準電圧発生源VSが上述の標準電圧(Vbe')を発生させることができる値であれば、特に限定されない。
第1の抵抗部31における抵抗素子R1の抵抗値は、第2の抵抗部32における第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2'の2つの抵抗値の合計値よりも大きく設定される。
また、本実施形態において、第2の抵抗部32における第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2'の抵抗値の合計値は、電流検出抵抗Rsの抵抗値以上の値に設定される。第2の抵抗部32における第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2'の2つの抵抗値の合計値は、電流検出抵抗Rsに流れる電流が大きくなっていき、第2の抵抗部32に生じる電位差に対して、電流検出抵抗Rsの電位差の方が大きくなった場合に保護機能が働く(保護用トランジスタQ11がオンになる)値に設定されるのが好ましい。
ここで、第2の抵抗部32における第2の抵抗素子R2'は、通常状態においては有効となるが、一方で、制限状態においてはその両端がショート状態とされて無効とされる。この第2の抵抗素子R2'における有効及び無効の切り替えは、後述のように、閾値変化部Y10のショートトランジスタQ102によって行われる。
まず、通常状態における分圧回路部VDにおける分圧について一例を挙げて説明する。ここで、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)及び標準電圧(Vbe')がいずれも0.7[v]であるとする。また、第1の抵抗部31における抵抗素子R1の抵抗値が0.5[Ω]であるとし、第2の抵抗部32における第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2'の抵抗値がいずれも0.1[Ω]であるとする。なお、本明細書中において挙がられる電圧や抵抗値等の具体的な数値は、単なる一例に過ぎず、適宜変更可能である。
第1の抵抗部31における電位差は、標準電圧(Vbe')×{第1の抵抗部31の抵抗値/(第1の抵抗部31の抵抗値+第2の抵抗部32の抵抗値)}である。また、第2の抵抗部32における電位差は、標準電圧(Vbe')×{第2の抵抗部32の抵抗値/(第1の抵抗部31の抵抗値+第2の抵抗部32の抵抗値}である(あるいは、標準電圧(Vbe')-第1の抵抗部31の電位差)。
通常状態では、第2の抵抗部32において第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2'はそれぞれ有効であるので、第2の抵抗部32の抵抗値は、0.1+0.1で0.2[Ω]である。
従って、通常状態では、第1の抵抗部31における電位差は、0.7×{0.5/(0.5+0.2)}で、0.5[v]であり、また、第2の抵抗部32における電位差は、{0.2/(0.5+0.2)}(あるいは、0.7-0.5)で、0.2[v]である。基準電圧(Vref)は、第1の抵抗部31の電位差に等しいので、通常状態における基準電圧(つまり、第1の基準電圧(Vref1))は、0.5[v]である。
一方、制限状態では、第2の抵抗部32の第2の抵抗素子R2'の両端がショート状態とされて第2の抵抗素子R2'が無効とされる。従って、制限状態では、第2の抵抗部32における抵抗値は、第1の抵抗素子R2の抵抗値のみの値となり、0.1[Ω]となる。つまり、通常状態と、制限状態とでは、第1の抵抗部31の抵抗値と、第2の抵抗部32の抵抗値との比が異なることになる。
制限状態では、第1の抵抗部31における電位差は、0.7×{0.5/(0.5+0.1)}で、約0.58[v]であり、また、第2の抵抗部32における電位差は、{0.2/(0.5+0.1)}(あるいは、0.7-0.58)で、約0.12[v]である。基準電圧(Vref)は、第1の抵抗部31の電位差に等しいので、制限状態における基準電圧(つまり、第2の基準電圧(Vref2))は、0.58[v]である。
上述のように、Th=Vbe-Vrefであり、過電流判定閾値Thの値は、基準電圧Vrefの値が変化すれば、これに応じて変化する。ここでの例では、通常状態における第1の過電流判定閾値Th1は、閾値電圧(Vbe)(0.7[v])-第1の基準電圧(0.5[v])から、0.2[v]である。一方、制限状態における第2の過電流判定閾値Th2は、標準電圧(Vbe)(0.7[v])-第1の基準電圧(0.58[v])から、0.12[v]である。
なお、ここでの例からも理解されるように、制限状態における第2の基準電圧(Vref2)の値は、通常状態における第1の基準電圧(Vref1)の値よりも高くなるようにその値が設定されている。また、制限状態における第2の過電流判定閾値(Th2)の値は、通常状態における第1の過電流判定閾値(Th1)の値よりも低くなるようにその値が設定されている。
(閾値変化部)
閾値変化部Y10は、保護用トランジスタQ11におけるオフ状態(通常状態)からオン状態(制限状態)への切り替えに応じて、基準電圧を、第1の基準電圧から第2の基準電圧へと変化させることで、過電流判定閾値を、第1の過電流判定閾値から第2の過電流判定閾値へと変化させる。典型的には、閾値変化部Y10は、保護用トランジスタQ11におけるオフ状態(通常状態)からオン状態(制限状態)への切り替えに応じて、第1の抵抗部31の抵抗値と第2の抵抗部32の抵抗値との比を変えることで、基準電圧を変化させ、過電流判定閾値を変化させる。
また、閾値変化部Y10は、保護用トランジスタQ11におけるオン状態(制限状態)からオフ状態(通常状態)への切り替えに応じて、基準電圧を、第2の基準電圧から第1の基準電圧へと変化させることで、過電流判定閾値を、第2の過電流判定閾値から第1の過電流判定閾値へと変化させる。典型的には、閾値変化部Y10は、保護用トランジスタQ11におけるオン状態(制限状態)からオン状態(通常状態)への切り替えに応じて、第1の抵抗部31の抵抗値と第2の抵抗部32の抵抗値との比を変えることで、基準電圧を変化させ、過電流判定閾値を変化させる。
閾値変化部Y10は、検出用トランジスタQ100と、駆動トランジスタQ101と、ショートトランジスタQ102との3つのトランジスタを有する。
検出用トランジスタQ100は、保護用トランジスタQ11におけるオフ状態(通常状態)からオン状態(制限状態)への切り替え、並びに、保護用トランジスタQ11におけるオン状態(制限状態)からオフ状態(通常状態)への切り替えを検出する。
検出用トランジスタQ100は、本実施形態では、ベース、エミッタ及びコレクタを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成されている。検出用トランジスタQ100のベースは、抵抗素子R5を介して、保護用トランジスタQ11のコレクタに接続されており、また、制御ライン22に接続されている。また、検出用トランジスタQ100のエミッタは、保護用トランジスタQ11のコレクタに接続されており、検出用トランジスタQ100のコレクタは、抵抗素子R6を介して、駆動トランジスタQ101のベースに接続されている。抵抗素子R5は、検出用トランジスタQ100のベース‐エミッタ間に配置されており、この抵抗素子R5は、電流制御用に設けられている。
駆動トランジスタQ101は、検出用トランジスタQ100による保護用トランジスタQ11のオフ状態(通常状態)からオン状態(制限状態)の切り替えの検出に応じて、ショートトランジスタQ102を駆動させる。また、駆動トランジスタQ101は、検出用トランジスタQ100による保護用トランジスタQ11のオン状態(制限状態)からオフ状態(通常状態)への切り替えの検出に応じて、ショートトランジスタQ102の駆動を解除する。この駆動トランジスタQ101は、通常状態及び制限状態の切り替えに応じて、ショートトランジスタQ102のベースに入力される電圧レベルを調整することで、ショートトランジスタQ102の駆動及び駆動の解除を切り替えることが可能とされている。
駆動トランジスタQ101は、本実施形態では、ベース、エミッタ及びコレクタを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成されている。駆動トランジスタQ101のベースは、抵抗素子R6を介して、検出用トランジスタQ100のコレクタに接続されており、また、抵抗素子R7を介して駆動トランジスタQ101のエミッタに接続されている。また、駆動トランジスタQ101のエミッタは、グランド(GND)に接続されており、駆動トランジスタQ101のコレクタは、抵抗素子R8を介して、ショートトランジスタQ102のベースに接続されている。
抵抗素子R7は、駆動トランジスタQ101のベース‐エミッタ間に配置されているプルダウン用の抵抗素子である。この抵抗素子R7は、駆動トランジスタQ101のベースに対してノイズ・リーク電流が入力されて、ノイズ・リーク電流に基づいて駆動トランジスタQ101が誤動作しないように設けられている。
ショートトランジスタQ102は、保護用トランジスタQ11におけるオフ状態(通常状態)からオン状態(制限状態)への切り替えに応じて、電圧発生部X10における分圧回路部VDの第2の抵抗素子R2'の両端をショートさせて、第2の抵抗素子R2'を無効とする。また、ショートトランジスタQ102は、保護用トランジスタQ11におけるオン状態(制限状態)からオフ状態(通常状態)への切り替えに応じて、電圧発生部X10における分圧回路部VDの第2の抵抗素子R2'の両端のショート状態を解除して有効とする。
なお、本実施形態の説明では、分圧回路部VDの第2の抵抗部32における第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2'のうち、第2の抵抗素子R2'がショートの対象となっているが、第2の抵抗素子R2'の代わりに、第1の抵抗素子R2がショートの対象となっていてもよい。つまり、ショートトランジスタQ102は、保護用トランジスタQ11のオン状態の切り替えに応じて、第2の抵抗部32の第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2'のうち一方の抵抗素子の両端をショートさせて無効とし、保護用トランジスタQ11のオフ状態への切り替えに応じて上記一方の抵抗素子の両端のショート状態を解除して有効とすればよい。
ショートトランジスタQ102は、本実施形態では、ベース、エミッタ及びコレクタを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成されている。ショートトランジスタQ102のベースは、抵抗素子R8を介して、駆動トランジスタQ101のコレクタに接続されており、また、抵抗9を介してショートトランジスタQ102のエミッタに接続されている。また、ショートトランジスタQ102のエミッタは、電圧発生部X10における分圧回路部VDの第2の抵抗素子R2'の入力端に接続されている。また、ショートトランジスタQ102のコレクタは、電圧発生部X10における分圧回路部VDの第2の抵抗素子R2'の出力端に接続されている。
抵抗素子R9は、ショートトランジスタQ102のベース‐エミッタ間に配置されているプルアップ用の抵抗素子である。この抵抗素子R7は、ショートトランジスタQ102のベースに対してノイズ・リーク電流が入力されて、ノイズ・リーク電流に基づいてショートトランジスタQ102が誤動作しないように設けられている。
[過電流保護回路の動作]
続いて、以上のように構成される本実施形態の過電流保護回路100の典型的な動作について説明する。
動作の説明では、一例として、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)及び標準電圧(Vbe')がいずれも0.7[v]であるとする。また、分圧回路部VDの第1の抵抗部31における抵抗素子R1の抵抗値が0.5[Ω]であるとし、第2の抵抗部32における第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2'の抵抗値がいずれも0.1[Ω]であるとする。
電源10から負荷Lへ所定量の電流を供給する通常状態では、入力ポート12にはメインスイッチM11をオン状態に維持する信号電圧が入力される。これにより、電源10から投入された電流は、電流検出抵抗Rs及びメインスイッチM11を含む電流供給ライン21を介して出力ポート11及びこれに接続される負荷Lへ上記所定量の電流が供給される。
通常状態において、電圧発生部X11は、電流検出抵抗Rsの出力端からグランド端子(GND)へ流れる電流から第1の基準電圧(Vref1)を発生する。より具体的に、電圧発生部X11は、標準電圧発生源VSにおいて標準電圧(Vbe')を生成し、これを分圧回路部VDにおいて第1の基準電圧(Vref)に分圧する。
ここでの例では、標準電圧発生源VSにおける標準電圧は、0.7[v]であり、分圧回路部VDにおける第1の抵抗部31の抵抗素子R1の抵抗値は、0.5[Ω]である。また、通常状態では、第2の抵抗部32に含まれる第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2'の両方が有効であるので、第2の抵抗部32の抵抗値は、第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2'の合計値となり、0.1+0.1で0.2[Ω]である。なお、ここでの例では、通常状態での第1の抵抗部31の抵抗値と、第2の抵抗部32の抵抗値との比は、5:2である。
通常状態では、第1の抵抗部31における電位差は、0.7×{0.5/(0.5+0.2)}で、0.5[v]であり、また、第2の抵抗部32における電位差は、{0.2/(0.5+0.2)}(あるいは、0.7-0.5)で、0.2[v]である。第1の基準電圧(Vref1)は、第1の抵抗部31の電位差に等しいので、0.5[v]である。
また、通常状態における第1の過電流判定閾値は、式Th1=Vbe-Vref1から、閾値電圧(Vbe)(0.7[v])-第1の基準電圧(0.5[v])で、0.2[v]である。
保護用トランジスタQ11のベースに対しては、両端電位差ΔVと、第1の基準電圧(Vref1)との加算電圧(ΔV+Vref1)が印加される。つまり、保護用トランジスタQ11のベースに対しては、予め電圧発生部X10による基準電圧が印加されているので、電流検出抵抗Rsの抵抗値を、第1の比較例に係る過電流保護回路1(図2参照)よりも小さくすることができる。従って、電流検出抵抗Rsの発熱量の低減を図ることができ、電流検出抵抗Rsをより小型の抵抗素子で構成することができる。また、放熱機構の小型化や簡素化を図ることが可能となる。
通常状態において、何かしらの原因(例えば、負荷への急激な突入電流や、負荷の地絡)で過電流検出抵抗Rsに過電流が流れ、過電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)が第1の過電流判定閾値(Th)(0.2[v])に達したとする。
過電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)が第1の過電流判定閾値に達すると、保護用トランジスタQ11のベースに対して閾値電圧(Vbe)以上の電圧が印加されるので、保護用トランジスタQ11がオフ状態からオン状態に切り替わる。
保護用トランジスタQ11がオン状態に切り替えられると、メインスイッチM11のゲートに対して電圧が印加され、通常状態が制限状態へと切り替えられる。これにより、負荷Lを過電流から保護することが可能となる。
また、保護用トランジスタQ11がオン状態へと切り替えられると、閾値変化部Y10における検出用トランジスタQ100のベースに対して電圧が印加されて、検出用トランジスタQ100のエミッタ‐コレクタ間が導通し、検出用トランジスタQ100がオフ状態からオン状態へと切り替えられる。
検出用トランジスタQ100がオン状態へと切り替えられると、閾値変化部Y10における駆動トランジスタQ101のベースに対して電圧が印加されて、駆動トランジスタQ101のエミッタ‐コレクタ間が導通し、駆動トランジスタQ101がオフ状態からオン状態へと切り替えられる。
駆動トランジスタQ101がオン状態へと切り替えられると、閾値変化部Y10におけるショートトランジスタQ102のベースに対して電圧が印加されて、ショートトランジスタQ102のエミッタ‐コレクタ間が導通し、ショートトランジスタQ102がオフ状態からオン状態へと切り替えられる。
ショートトランジスタQ102のエミッタ‐コレクタ間が導通すると、第2の抵抗部32の第2の抵抗素子R2'に対して電流が流れなくなり、第2の抵抗素子R2'の両端がショート状態とされ、第2の抵抗素子R2'が無効とされる。つまり、通常状態において第2の抵抗素子R2'に対して流れていた電流が、制限状態では、ショートトランジスタQ102のエミッタ‐コレクタ間を流れるので、第2の抵抗素子R2'が有効に機能しなくなる。
従って、制限状態では、第2の抵抗部32における抵抗値は、第1の抵抗素子R2の抵抗値のみの値となり、ここでの例では、第2の抵抗部32における抵抗値は、0.1[Ω]となる。つまり、通常状態と、制限状態とでは、第1の抵抗部31の抵抗値と、第2の抵抗部32の抵抗値との比が代わり、ここでの例では、制限状態での第1の抵抗部31の抵抗値と、第2の抵抗部32の抵抗値との比は、5:1である。
制限状態では、第1の抵抗部31における電位差は、0.7×{0.5/(0.5+0.1)}で、0.58[v]であり、また、第2の抵抗部32における電位差は、{0.2/(0.5+0.1)}(あるいは、0.7-0.58)で、0.12[v]である。第2の基準電圧(Vref1)は、第1の抵抗部31の電位差に等しいので、0.58[v]である。
また、制限状態における第2の過電流判定閾値は、式Th1=Vbe-Vref1から、閾値電圧(Vbe)(0.7[v])-第2の基準電圧(0.58[v])で、0.12[v]である。
制限状態における第2の過電流判定閾値(Th)の値(0.12[v])は、通常状態における第1の過電流判定閾値の値(0.2[v])よりも低くなるようにその値が設定されている。つまり、制限状態では、過電流検出抵抗Rsの両端電位差ΔVが、通常状態における第1の過電流判定閾値よりも低い値であっても、過電流と判断され得る。
その後、制限状態において、過電流の原因が解消され(例えば、急激な突入電流の解消、地絡の解消等)、過電流検出抵抗Rsにおける両端電位差(ΔV)が第2の過電流判定閾値(Th2)未満となったとする。この場合、過電流検出抵抗Rsにおける両端電位差(ΔV)と、第2の基準電圧との加算電圧が、保護用トランジスタQ11の閾値電圧(Vbe)の値も小さくなるので、保護用トランジスタQ11がオン状態からオフ状態へと切り替わる。
保護用トランジスタQ11がオフ状態に切り替えられると、保護用トランジスタQ11からメインスイッチM11のゲートに対して印加されていた電圧が解除され、メインスイッチM11がオフ状態からをオン状態に切り替えられる。これにより、制限状態が通常状態へと切り替えられる(通常状態に復帰する)。
また、保護用トランジスタQ11がオフ状態へと切り替えられると、閾値変化部Y10における検出用トランジスタQ100のベースに対して印加されていた電圧が解除され、検出用トランジスタQ100がオン状態からオフ状態へと切り替えられる。
検出用トランジスタQ100がオフ状態へと切り替えられると、閾値変化部Y10における駆動トランジスタQ101のベースに対して印加されていた電圧が解除されて、駆動トランジスタQ101がオン状態からオフ状態へと切り替えられる。
駆動トランジスタQ101がオフ状態へと切り替えられると、閾値変化部Y10におけるショートトランジスタQ102のベースに対して印加されていた電圧が解除されて、ショートトランジスタQ102がオン状態からオフ状態へと切り替えられる。
ショートトランジスタQ102がオン状態からオフ状態へと切り替えられると、第2の抵抗部32の第2の抵抗素子R2'のショート状態が解除されて、第2の抵抗素子R2'に電流が流れるようになり、第2の抵抗素子R2'が再び有効となる。これにより、第1の抵抗部31における抵抗値と第2の抵抗部32における抵抗値との比が、元の値に戻る。ここでの例では、第1の抵抗部31の抵抗値と第2の抵抗部32の抵抗値との比が、5:1から、5:2へ戻る。
第1の抵抗部31の抵抗値と第2の抵抗部32の抵抗値との比が元の状態へと戻ると、第2の基準電圧が第1の基準電圧へと戻り、第2の過電流判定閾値が第1の過電流判定閾値へと戻る。ここでの例では、基準電圧が0.58[v](第2の基準電圧)から第0.5[v](第1の基準電圧)へと戻り、過電流判定閾値が0.12[v](第2の過電流判定閾値)から0.2[v](第1の過電流判定閾値)へと戻る。
[出力電圧及び出力電流特性]
次に、本実施形態に係る過電流保護回路100の出力電圧及び出力電流特性について説明する。図5は、出力電圧-出力電流特性を示す図である。
一例として、まず、ポイントAにおいて、負荷に対して正常に電流が流れているとする。その後、何かしらの原因(例えば、負荷への急激な突入電流や、負荷の地絡)で、過電流検出抵抗Rsに流れる電流が徐々に増加していき、経路(a)に示すように、出力電圧一定のまま、出力電流が徐々に増加したとする。
その後、ポイントBにおいて、過電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)が第1の過電流判定閾値に達し、出力電流が第1の過電流判定閾値に相当する電流に達したとする。この場合、保護用トランジスタQ11がオフ状態からオン状態へと切り替えられ、メインスイッチM11がオン状態からオフ状態へと切り替えられることで、通常状態が、制限状態へと切り替えられる。また、このとき、閾値変化部Y10によって、電圧発生部X10における基準電圧が第1の基準電圧から第2の基準電圧に変化され、これにより、過電流判定閾値が第1の過電流判定閾値から第2の過電流判定閾値へと変化される。
通常状態が、制限状態へと切り替えられると、経路(b)に示すように、出力電圧及び出力電流が徐々に下げられる。そして、ポイントCにおいて、出力電流が第2の過電流判定閾値に相当する電流にまで下げられ、出力電圧が、例えば通常状態の出力電圧の約半分にまで下げられる。
出力電流及び出力電圧がポイントCに達した後、依然として過電流の原因が解消されていない場合には、過電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)が第2の過電流判定閾値未満とはならず、出力電流が第2の過電流判定閾値に相当する電流未満とはならない。従って、この場合には、出力電流及び出力電圧がポイントCで留まることになり、制限状態が維持される。つまり、本実施形態では、負荷に対する過電流が検出されても、負荷に対しては、電流が制限された状態で一定の電流(第2の過電流判定閾値相当の電流)は供給される。
出力電流及び出力電圧がポイントCに達した後、過電流の原因が解消された場合には、過電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)が第2の過電流判定閾値未満となり、出力電流が第2の過電流判定閾値に相当する電流未満となる。
この場合、保護用トランジスタQ11がオン状態からオフ状態へと切り替えられ、メインスイッチM11がオフ状態からオン状態へと切り替えられることで、制限状態が、通常状態へと切り替えられる。また、このとき、閾値変化部Y10によって、電圧発生部X10における基準電圧が第2の基準電圧から第1の基準電圧に変化され、これにより、過電流判定閾値が、第2の過電流判定閾値から第1の過電流判定閾値へと変化される。
制限状態が、通常状態へと切り替えられると、経路(c)に示すように、一旦、出力電圧及び出力電流が徐々に上昇した後、出力電圧一定のまま、出力電流が徐々に減少する。そして、出力電圧及び出力電流がポイントAへと戻り、負荷に対して正常に電流が供給される。
ここで、出力電流及び出力電圧がポイントCに達した後、一定期間、過電流の原因が解消されなかったとする。この場合、例えば、負荷がコンデンサである場合には、制限状態において供給される電流によってコンデンサに電荷が蓄えられる。これにより、電流検出抵抗Rsの両端電位差(ΔV)が第2の過電流判定閾値未満となり、出力電流が第2の過電流判定閾値に相当する電流未満となる。
この場合、保護用トランジスタQ1がオン状態からオフ状態へと切り替えられ、メインスイッチM1がオフ状態からオン状態へと切り替えられることで、制限状態が、通常状態へと切り替えられる。また、このとき、閾値変化部Y10によって、電圧発生部X10における基準電圧が第2の基準電圧から第1の基準電圧に変化され、これにより、過電流判定閾値が、第2の過電流判定閾値から第1の過電流判定閾値へと変化される。
その後、経路(d)に示すように、コンデンサに電荷が蓄えられることによって、出力電圧及び出力電流が徐々に下降してポイントDに達し、出力電圧及び出力電流が0になる。
ここで、例えば、図3に示す第2の比較例のように、過電流判定閾値が変化しない形態の場合、出力電圧及び出力電流特性は、一般的に「フの字特性(fold back current limiting characteristic)」と呼ばれる特性を持っている。図6は、「フの字特性」の一例を示す図である。
この「フの字特性」の場合、過電流が生じると、出力電圧及び出力電流は、経路(a')及び経路(b')に示すように、ポイントAからポイントBを経由してポイントCに達する。その後、過電流の原因が解消されると、出力電圧及び出力電流は、経路(c')に示すように、ポイントCからポイントBを経由してポイントAに戻る。
つまり、「フの字特性」の場合、過電流が流れて通常状態が制限状態とされるときの経路(経路(a')及び経路(b'))と、制限状態から通常状態へと復帰する経路(経路(c'))とが同じ経路となる。従って、「フの字特性」では、制限状態から通常状態へと復帰するときの出力電流の値が比較的に大きくなってしまっている。このため、制限状態から通常状態へと復帰するときに、過電流検出抵抗に比較的に大きな電流が流れてしまい、過電流検出抵抗の発熱量が大きくなってしまう。
これに対して、本実施形態では、通常状態及び制限状態で過電流判定閾値が変化する。このため、図5から明らかなように、過電流が流れて通常状態が制限状態とされるときの経路(経路(a')及び経路(b'))と、制限状態から通常状態へと復帰する経路(経路(c'))とが異なる経路となっている。つまり、本実施形態では、出力電圧-出力電流特性がヒステリシスとなっている。
これにより、本実施形態では、制限状態から通常状態へと復帰するとき、比較的に小さな出力電流のままこの復帰を行うことができる。従って、制限状態から通常状態へと復帰するときに過電流検出抵抗に流れる電流を比較的に小さくすることができ、これにより、過電流検出抵抗の発熱量を低減させることができる。
[作用等]
以上説明したように、本実施形態に係る過電流保護回路100は、電圧発生部X10を有している。そして、この電圧発生部X10により、閾値電圧より小さい基準電圧が発生され、保護用トランジスタQ11のベースに対して、過電流検出抵抗Rsの両端電位差と、基準電圧との加算電圧を印加電圧として与えられる。
つまり、保護用トランジスタQ11のベースに対しては、予め電圧発生部X10による基準電圧が印加されているので、電流検出抵抗Rsの抵抗値を小さくすることができる。従って、電流検出抵抗Rsの発熱量の低減を図ることができ、電流検出抵抗Rsをより小型の抵抗素子で構成することができる。また、放熱機構の小型化や簡素化を図ることが可能となる。
さらに、本実施形態に係る過電流保護回路100では、閾値変化部Y10により、保護用トランジスタQ11のオン状態(通常状態)からオフ状態(制限状態)への切り替えに応じて、過電流判定閾値が、第1の過電流判定閾値から第2の過電流判定閾値へ変化される。また、閾値変化部Y10により、保護用トランジスタQ11のオフ状態(制限状態)からオン状態(通常状態)への切り替えに応じて、過電流判定閾値が、第2の過電流判定閾値から第1の過電流判定閾値へ変化される。
このように、本実施形態に係る過電流保護回路100では、通常状態及び制限状態で異なる過電流判定閾値が用いられるので、通常状態及び制限状態で異なる過電流判定閾値が用いられる場合の不都合を解消することができる。例えば、本実施形態では、過電流の原因が完全に解消された後に、制限状態を通常状態へ復帰させることができる。また、制限状態から通常状態に復帰した後に、過電流検出抵抗Rsにおける両端電位差(ΔV)が、比較的に高い値を取り続けてしまい、過電流検出抵抗Rsの発熱量が増加してしまうことを防止することもできる。
また、本実施形態に係る過電流保護回路100では、閾値変化部Y10により、保護用トランジスタQ11におけるオフ状態(通常状態)からオン状態(制限状態)への切り替えに応じて、基準電圧が、第1の基準電圧から第2の基準電圧へと変化されることで、過電流判定閾値が第1の過電流判定閾値から第2の過電流判定閾値へと変化される。また、閾値変化部Y10により、保護用トランジスタQ11におけるオン状態(制限状態)からオフ状態(通常状態)への切り替えに応じて、基準電圧が、第2の基準電圧から第1の基準電圧へと変化されることで、過電流判定閾値が第2の過電流判定閾値から第1の過電流判定閾値へと変化される。
これにより、(過電流検出抵抗Rsの抵抗値を小さくして発熱量を低減するための電圧である)基準電圧を変化させることで、適切に過電流判定閾値を変化させることができる。
さらに、本実施形態に係る過電流保護回路100では、電圧発生部X10は、基準電圧よりも高い標準電圧を発生する標準電圧発生源VSと、標準電圧を基準電圧に分圧する分圧回路部VDとを有している。これにより、電圧発生部X10において、基準電圧を安定して発生させることができる。
さらに、本実施形態に係る過電流保護回路100では、分圧回路部VDは、基準電圧に相当する電位差を生じる第1の抵抗部31と、標準電圧から基準電圧を差し引いた値に相当する電位差を生じる第2の抵抗部32とを有している。
そして、閾値変化部Y10により、保護用トランジスタQ11におけるオフ状態(通常状態)からオン状態(制限状態)への切り替えに応じて、第1の抵抗部31の抵抗値と第2の抵抗部32の抵抗値との比が変えられることで、基準電圧が第1の基準電圧から第2の基準電圧に変化されて、過電流判定閾値が第1の過電流判定閾値から第2の過電流判定閾値に変化される。また、閾値変化部Y10により、保護用トランジスタQ11におけるオン状態(制限状態)からオフ状態(通常状態)への切り替えに応じて、第1の抵抗部31の抵抗値と第2の抵抗部32の抵抗値との比が変えられることで、基準電圧が第2の基準電圧から第1の基準電圧に変化されて、過電流判定閾値が第2の過電流判定閾値から第1の過電流判定閾値に変化される。
これにより、本実施形態に係る過電流保護回路100では、第1の抵抗部31の抵抗値と第2の抵抗部32の抵抗値との比を変化させることで、基準電圧を変化させて、過電流判定閾値を適切に変化させることができる。
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る過電流保護回路200を示す回路図である。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
本実施形態の過電流保護回路200は、閾値変化部Y10が外部信号に応じて過電流判定閾値を変化させることが可能に構成される点で第1の実施形態と異なる。
図7に示すように、過電流保護回路200は、閾値変化部Y10のショートトランジスタQ102のベースに、ショートトランジスタQ102をオン状態に切り替えるのに必要な入力電圧を印加するための制御ポート13を備える。制御ポート13には、図示しないコントローラに電気的に接続されており、当該コントローラからショートトランジスタQ102をオン状態に切り替えるための入力信号が上記外部信号として入力される。
本実施形態の過電流保護回路200においては、制御ポート13に入力される外部信号によってショートトランジスタQ102を任意のタイミングでオン状態に切り替えることができる。つまり、本実施形態の閾値変化部Y10は、外部信号に応じて、分圧回路部VDにおける第2の抵抗素子R2'を任意に無効化して、上述のように過電流判定閾値を第2の過電流判定閾値に変化させることができる。
外部信号の入力タイミングは特に限定されず、例えば、電源10から負荷Lへの電源の供給開始時に外部信号をショートトランジスタQ102へ入力することができる。より具体的には、負荷Lがコンデンサの場合、コンデンサの充電開始直後は突入電流が生じやすい。このため、このような場合には、電源供給開始時から過電流判定閾値を低く設定しておくことで、電流検出抵抗Rsを通電時の発熱から効果的に保護することができる。
あるいは、負荷Lの地絡を負荷側で検出可能な検出回路を備えてもよい。この場合、当該検出回路の出力に基づき、上記コントローラが地絡を検出したときにショートトランジスタQ102へ外部信号を入力するように構成される。これにより、電流検出抵抗Rsを過電流による発熱からより効果的に保護することができる。
<第3の実施形態>
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。図8は、本発明の第3の実施形態に係る過電流保護回路300を示す回路図である。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
本実施形態の過電流保護回路300は、電流供給ライン21と、保護用トランジスタQ21と、電圧発生部X20と、閾値変化部Y20とを有する。
電流供給ライン21は、電源10(第1の電流供給源)と負荷Lに接続される出力ポート11との間に接続されたメインスイッチ(第1のスイッチ)M21と、負荷Lへの過電流を検出する電流検出抵抗Rsとを有する。
保護用トランジスタQ21は、電源10と負荷L(出力ポート11)との間に電流検出抵抗Rsと並列に接続される。保護用トランジスタQ21は、第1の実施形態と同様に、電流検出抵抗Rsの両端電位差が過電流判定閾値以上となり、ベースへの印加電圧が閾値電圧(Vbe)以上となったときにオン状態に切り替わることで、負荷Lへの電流の供給を制限するオフ状態へメインスイッチM21を切り替える。
電圧発生部X20は、保護用トランジスタQ21のベースに接続され、保護用トランジスタQ21がオン状態に切り替わる閾値電圧(Vbe)よりも小さい基準電圧(Vref)を発生することが可能に構成される。電圧発生部X20は、第1の実施形態と同様に、保護用トランジスタQ21の閾値電圧より小さい基準電圧(Vref)を発生し、保護用トランジスタQ21のベースに対して、過電流検出抵抗Rsの両端電位差と、基準電圧との加算電圧を印加電圧として与える。
閾値変化部Y20は、保護用トランジスタQ21のコレクタ側に配置されている。閾値変化部Y20は、保護用トランジスタQ21のオン状態及びオフ状態(通常状態及び制限状態)の切り替えに応じて、過電流判定閾値を変化させる。この閾値変化部Y20は、電圧発生部X20の基準電圧を変化させることで、過電流判定閾値を変化させる。
以下、各部の詳細について説明する。
メインスイッチM21は、電源10と電流検出抵抗Rsとの間に接続される。メインスイッチM21は、制御ライン22を介して保護用トランジスタQ21のコレクタと接続されるゲートと、電流検出抵抗Rsに接続されるソースと、電源10に接続されるドレインとを有するN型のMOSFETで構成される。
メインスイッチM21は、保護用トランジスタQ21によって、電源10から負荷Lへ電流を供給するオン状態と、電源10から負荷Lへ供給される電流を制限するオフ状態とを切り替え可能に構成される。
ここで、「電流を制限する」とは、第1の実施形態と同様に、負荷Lへ供給される電流を所定の電流値以下に規制することをいう。
保護用トランジスタQ21は、電圧発生部X20に接続されるベースと、電流検出抵抗Rsと出力ポート11との間の電流供給ライン21に接続されるエミッタと、制御ライン22を介してメインスイッチM21のゲートに接続されるコレクタとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される。
電圧発生部X20は、電流検出抵抗Rsの入力端と保護用トランジスタQ21のベースとの間に接続される。電圧発生部X20は、第1の実施形態と同様に、標準電圧発生源VSと、分圧回路部VDとを有する。
標準電圧発生源VSは、電圧発生用トランジスタQ22と、抵抗R4とを含む。電圧発生用トランジスタQ22は、ベースとコレクタ間がダイオード接続され、保護用トランジスタQ21と同一の閾値電圧を有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される。電圧発生用トランジスタQ22のコレクタは抵抗R3およびR4を介して補助電源20に接続され、電圧発生用トランジスタQ22のエミッタは、電流検出抵抗Rsの入力端に接続される。補助電源20の電圧Vpは、メインスイッチM21の出力電圧Vs1よりも大きな値に設定される。補助電源20の回路構成は特に限定されず、典型的には、チャージポンプあるいはDC-DCコンバータで構成される。
分圧回路部VDは、補助電源20と電流検出抵抗Rsの入力端との間に、標準電圧発生源VSとは並列的に接続される。分圧回路部VDは、第1の実施形態と同様に、相互に直列接続された3つの抵抗素子R1、R2及びR2'を有する。抵抗素子R1は、抵抗R3と電圧発生用トランジスタQ22のエミッタとの間に接続される。抵抗素子R2は、抵抗R3と抵抗素子R1との間に接続され、抵抗素子R2'は、抵抗R3と抵抗素子R2との間に接続される。保護用トランジスタQ21のベースは、抵抗素子R1と抵抗素子R2との間に接続される。
閾値変化部Y20は、第1の実施形態と同様に、検出用トランジスタQ100と、駆動トランジスタQ101と、ショートトランジスタQ102との3つのトランジスタを有する。
検出用トランジスタQ100は、保護用トランジスタQ21におけるオフ状態(通常状態)からオン状態(制限状態)への切り替え、並びに、保護用トランジスタQ21におけるオン状態(制限状態)からオフ状態(通常状態)への切り替えを検出する。
検出用トランジスタQ100のベースは、抵抗素子R5を介して制御ライン22に接続されており、また、保護用トランジスタQ21のコレクタに接続されている。また、検出用トランジスタQ100のエミッタは、制御ライン22に接続されており、検出用トランジスタQ100のコレクタは、抵抗素子R6を介して、駆動トランジスタQ101のベースに接続されている。
駆動トランジスタQ101は、検出用トランジスタQ100による保護用トランジスタQ21のオフ状態(通常状態)からオン状態(制限状態)の切り替えの検出に応じて、ショートトランジスタQ102を駆動させる。また、駆動トランジスタQ101は、検出用トランジスタQ100による保護用トランジスタQ21のオン状態(制限状態)からオフ状態(通常状態)への切り替えの検出に応じて、ショートトランジスタQ102の駆動を解除する。この駆動トランジスタQ101は、通常状態及び制限状態の切り替えに応じて、ショートトランジスタQ102のベースに入力される電圧レベルを調整することで、ショートトランジスタQ102の駆動及び駆動の解除を切り替えることが可能とされている。
駆動トランジスタQ101のベースは、抵抗素子R6を介して、検出用トランジスタQ100のコレクタに接続されており、また、抵抗素子R7を介して駆動トランジスタQ101のエミッタに接続されている。また、駆動トランジスタQ101のエミッタは、グランド(GND)に接続されており、駆動トランジスタQ101のコレクタは、抵抗素子R8を介して、ショートトランジスタQ102のベースに接続されている。
ショートトランジスタQ102は、保護用トランジスタQ21におけるオフ状態(通常状態)からオン状態(制限状態)への切り替えに応じて、電圧発生部X20における分圧回路部VDの抵抗素子R2'の両端をショートさせて、抵抗素子R2'を無効とする。また、ショートトランジスタQ102は、保護用トランジスタQ21におけるオン状態(制限状態)からオフ状態(通常状態)への切り替えに応じて、電圧発生部X20における分圧回路部VDの抵抗素子R2'の両端のショート状態を解除して有効とする。
なお、本実施形態の説明では、第1の実施形態と同様に、分圧回路部VDにおける第1の抵抗素子R2及び第2の抵抗素子R2'のうち、第2の抵抗素子R2'がショートの対象となっているが、第2の抵抗素子R2'の代わりに、第1の抵抗素子R2がショートの対象となっていてもよい。
ショートトランジスタQ102のベースは、抵抗素子R8を介して、駆動トランジスタQ101のコレクタに接続されており、また、抵抗9を介してショートトランジスタQ102のエミッタに接続されている。また、ショートトランジスタQ102のエミッタは、電圧発生部X20における分圧回路部VDの抵抗R3と第2の抵抗素子R2'との間に接続される。また、ショートトランジスタQ102のコレクタは、分圧回路部VDの第1の抵抗素子R2と第2の抵抗素子R2'との間に接続される。
以上のように構成される本実施形態の過電流保護回路300においても、上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
<第4の実施形態>
図9は、本発明の第4の実施形態に係る過電流保護回路400を示す回路図である。以下、第3の実施形態と異なる構成について主に説明し、第3の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
本実施形態の過電流保護回路400は、メインスイッチM31がIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)で構成されている点で、第3の実施形態と異なる。すなわち、メインスイッチM31は、電源10と電流検出抵抗Rsとの間に接続され、制御ライン22を介して保護用トランジスタQ21のコレクタと接続されるゲートと、電流検出抵抗Rsに接続されるエミッタと、電源10に接続されるコレクタとを有するN型のIGBTで構成される。
メインスイッチM31は、保護用トランジスタQ21によって、電源10から負荷Lへ電流を供給するオン状態と、電源10から負荷Lへ供給される電流を制限するオフ状態とを切り替え可能に構成される。ここで、「電流を制限する」とは、第1の実施形態と同様に、負荷Lへ供給される電流を所定の電流値以下に規制することをいう。
以上のように構成される本実施形態の過電流保護回路400においても上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。本実施形態においてメインスイッチM31がIGBTで構成されているため、比較的大電流が流れる電流供給ラインに設けられる過電流保護回路として好適に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば以上の各実施形態では、電圧発生部X10,X20の標準電圧発生源VSにおける電圧発生用トランジスタQ12,Q22をそれぞれダイオード接続されたバイポーラトランジスタで構成されたが、これに限られず、ダイオードやツェナダイオードなどの他の整流素子が用いられてもよい。整流素子としてダイオードが用いられる場合、当該ダイオードの順方向電圧が標準電圧(Vbe')に相当する。また、整流素子としてツェナダイオードが用いられる場合、当該ツェナダイオードの降伏電圧が標準電圧(Vbe')に相当する。整流素子としてツェナダイオードが用いられる過電流保護回路101の回路例を図10に示す。
さらに以上の各実施形態では、閾値変化部Y10,Y20が検出用トランジスタQ100、駆動トランジスタQ101及びショートトランジスタQ102の3つのトランジスタで構成されたが、これに限られない。例えば、検出用トランジスタ及びショートトランジスタの2つのトランジスタで構成された閾値変化部Y30を備えた過電流保護回路102の回路例を図11に示す。
図11に示す閾値変化部Y30において、Q200は検出用トランジスタであり、Q201はショートトランジスタである。検出用トランジスタQ200は、電圧発生部X10に接続されるベースと、電源10に接続されるエミッタと、ショートトランジスタQ201のベースに接続されるコレクタとを有するPNP型バイポーラトランジスタで構成される。ショートトランジスタQ201は、検出用トランジスタQ200のコレクタに接続されるベースと、電圧発生部X10における第2の抵抗素子R2'の一端に接続されるエミッタと、第2の抵抗素子R2'の他端に接続されるコレクタとを有するNPN型バイポーラトランジスタで構成される。抵抗素子R200~R203は、主として電流調整用の抵抗素子である。抵抗素子R200は、電圧発生部X10と保護用トランジスタQ11のベースとの間に接続され、抵抗素子R201は、電圧発生部X10と検出用トランジスタQ200のベースとの間に接続される。抵抗素子R202は、検出用トランジスタQ200のコレクタとショートトランジスタQ201のベースとの間に接続され、抵抗素子R203は、ショートトランジスタQ201のベースとエミッタとの間に接続される。上記構成の閾値変化部Y30においても、上述の各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。