JP7264370B2 - 複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
なお、本発明において、「標準電極電位」は、「化学便覧 基礎編 改訂5版」(社団法人日本化学編)のII-580頁に記載された方法を用いて特定することができる。
本発明の複合体の製造方法は、複数本のCNTおよび溶媒を含むCNT組成物に、水素ガスと、金属の前駆体とを供給して、CNTの表面に金属の粒子を析出させる工程(以下、「複合工程」と称する。)を少なくとも含む。なお、本発明の複合体の製造方法は、複合工程以外の工程(以下、「その他の工程」と称する。)を含んでいてもよい。
そして、上述した複合工程を少なくとも含む本発明の製造方法によれば、CNTと金属が良好に複合化した複合体を得ることができる。
まず、溶媒中で、CNTと水素ガス(H2)が接触することで、強い還元性を有するヒドリドイオン(H-)が生成する。そして、CNT表面に存在するヒドリドイオンにより金属の前駆体が還元されて、金属の粒子がCNT表面に固着した状態で析出する。ここで、ヒドリドイオンの生成には、CNTが不可欠である。CNTが系内に存在しない状態ではヒドリドイオンが生成せず、金属の前駆体の還元反応が進行しない。
このように、本発明の複合体の製造方法によれば、CNTと水素ガスの接触により生じるヒドリドイオンによる還元(ヒドリド還元)により、CNTと金属の良好な複合化が可能になると考えられる。
本発明の複合体の製造方法に用いるカーボンナノチューブ組成物は、少なくとも、複数本のCNTと溶媒を含む。
CNT組成物に含まれるCNTは、単層カーボンナノチューブであっても、多層カーボンナノチューブであってもよいが、複数本のCNTは、少なくとも単層CNTを含むことが好ましい。CNTとして単層CNTを用いれば、得られる複合体の導電性を高めると共にゼーベック係数を十分に確保することができ、当該複合体の熱電変換特性を向上させることができる。
そして、複数本のCNT中に占める単層CNTの割合は、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
なお、「複数本のCNT中に占める単層CNTの割合」は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したCNT100本中の単層CNTの数を数えることで、求めることができる。
なお、複数本のCNTの平均直径は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したCNT100本の直径を測定して求めることができる。
なお、複数本のCNTの平均長さは、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したCNT100本の長さを測定して求めることができる。
なお、CNTの「BET比表面積」は、77Kにおける窒素吸着等温線を測定し、BET法により求めることができる。ここで、BET比表面積の測定には、例えば、「BELSORP(登録商標)-max」(日本ベル(株)製)を用いることができる。
CNT組成物に含まれる溶媒は、特に限定されず、水および有機溶媒の何れも用いることができる。なお、溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ここで、本発明の複合体の製造方法に用いるCNT組成物は、CNTと溶媒を含んでいれば特に限定されず、複数本のカーボンナノチューブが溶媒中に分散してなるCNT組成物(以下、「CNT分散液」と称する。)や、複数本のCNTがシート状(膜状)に集合してなるCNTシート(「バッキーペーパー」と称されることもある。)に溶媒を含浸させてなるCNT組成物(以下、「CNTシート含浸物」と称する。)を用いることができる。
CNT分散液は、上述した複数本のCNTと、上述した溶媒とを少なくとも含み、任意に、分散剤を含むことができる。
分散剤としては、CNTを分散可能であり、上述した溶媒に溶解可能であれば、特に限定されないが、界面活性剤、合成高分子または天然高分子を用いることができる。
ここで、界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、合成高分子としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-ビニルアルコール-酢酸ビニル共重合樹脂、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
更に、天然高分子としては、例えば、多糖類であるデンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カードラン、キチン、キトサン、セルロース、並びに、その塩または誘導体が挙げられる。誘導体とはエステルやエーテルなどの従来公知の化合物を意味する。
これらの分散剤は、1種または2種以上を混合して用いることができる。中でも、CNTの分散性に優れることから、分散剤としては、界面活性剤が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
CNTシート含浸物は、CNTシートの内部に上述した溶媒が含浸した状態のものであれば特に限定されない。具体的には、CNTシート含浸物は、CNTシートが(比較的多量の)溶媒中に、シート形状を保持したまま浸漬した状態の組成物であってもよいし、CNTシートが(比較的少量の)溶媒を吸収してなるシート状の物体であってもよい。
なお、複数本のCNTをシート状に集合させてCNTシートを調製する方法は、特に限定されず、例えば、上述のCNT分散液を成膜基材上に塗布した後、塗布したCNT分散液を乾燥する方法や、上述のCNT分散液を多孔質の成膜基材を用いてろ過し、得られたろ過物を乾燥する方法が挙げられる。このような方法に用いる成膜基材、並びに、塗布、濾過、および乾燥の方法としては、例えば、国際公開第2016/103706号に記載されたものを用いることができる。
金属の前駆体は、還元反応により金属の粒子を形成しうる化合物である。
ここで、CNTと複合される金属としては、特に限定されないが、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)が挙げられる。そして、このような金属の前駆体としては、AgClO4、AgNO3、H2[AuCl4]、(NH4)2[AuCl4]、H[Au(NO3)4]H2O、HAuCl4、Pt(NH3)2(NO2)2、H2PtCl4、H2PtCl6、K2PtCl4、K2PtCl6、Pd(CH3COO)2、PdCl2が挙げられる。
なお、CNTと複合される金属は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。また、金属の前駆体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、水素ガスをCNT組成物に供給する方法は、特に限定されないが、CNT組成物が含まれる容器に水素ガスを供給しつつ、当該容器に含まれていた気体(通常は空気)を追い出して、容器内の気相を水素ガスで満たすことが好ましい。このように、容器内の気相を水素ガスで満たすことで、CNT組成物中に水素ガスを良好に溶解(浸入)させることができる。
また、金属の前駆体をCNT組成物に供給する方法は、特に限定されないが、金属の前駆体を水などの溶媒中に溶解させた状態で、滴下などの任意の手段によりCNT組成物に供給することが好ましい。
なお、上記水素ガスの供給および金属の前駆体の供給は、CNT組成物(特には、CNT分散液)を攪拌しながら行うことが好ましい。
より具体的には、CNTの表面に金属の粒子を析出させる工程は、例えば、CNT組成物を含む容器内部に水素ガスを供給する工程と、水素ガスの供給後、CNT組成物に金属の前駆体を供給する工程とを含むことが好ましい。
なお、2種以上の金属とCNTを複合する場合は、CNT組成物に2種以上の金属の前駆体の混合物を供給してもよいし、2種以上の金属の前駆体を順次供給してもよい。
そして、金属の前駆体の供給量は、特に限定されない。例えば、CNT100質量部に対して、金属が10質量部以上100質量部以下となる量で、金属の前駆体を供給することができる。
本発明の複合体の製造方法が任意に含み得るその他の工程としては、特に限定されない。本発明の複合体の製造方法は、例えば、上記複合工程の前にCNT組成物を調製する工程(CNT組成物調製工程)、上記複合工程の後に後処理を行う工程(後処理工程)を含むことができる。
ここで、CNT組成物としてのCNT分散液を調製する方法は、複数本のCNTを溶媒中に分散させることができれば特に限定されない。例えば、溶媒と、複数本のCNTと、任意に分散剤とを含む混合物に対し、任意の分散処理を施すことで、CNT分散液を調製することができる。このような分散処理としては、例えば、国際公開第2016/103706号に記載された、キャビテーション効果が得られる分散処理または解砕効果が得られる分散処理が挙げられる。
また、CNT組成物としてのCNTシート含浸物を調製する方法は、CNTシートに溶媒を含浸させることができれば特に限定されない。例えば、CNTシートを溶媒中に浸漬させることでCNTシート含浸物を調製することができる。
上述した複合工程において、CNT組成物としてCNT分散液を用いた場合、複数の複合体(金属の粒子が表面に担持されたCNT)が、溶媒中に分散した状態で得られる。この複数の複合体を含む分散液をろ過することで、複合体をシート状(膜状)に集合させることができる(シート化工程)。
また、上述した複合工程またはシート化工程の後に、複合体を洗浄することができる(洗浄工程)。洗浄方法としては、例えば、水および/またはエタノールを用いて洗浄する既知の洗浄方法が挙げられる。
そして、上述した複合工程、シート化工程、または洗浄工程の後に、複合体を乾燥することができる(乾燥工程)。乾燥方法としては、例えば、真空乾燥などの既知の乾燥方法が挙げられる。
上述した複合工程、および任意にその他の工程を経て得られる複合体は、CNTの表面に金属の粒子が形成されてなる。ここで、複合体は、特に限定されないが、取り扱い性などの観点から、複数の複合体がシート状(膜状)に集合してなる複合体シートとして得ることが好ましい。
なお、CNTの表面に形成される金属の粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、150nm以上800nm以下の範囲内である。本発明の複合体の製造方法によれば、標準電極電位が高い金属(例えば、金、銀、白金)であっても、上述したような平均粒子径を有する微粒子の状態でCNTの表面に析出させることが可能である。
なお、金属の粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡で観察し、無作為に選択された100個の金属ナノ粒子の画像に基づいてその粒径を測定し、求めることができる。
熱電特性評価装置(アドバンス理工社製、「ZEM-3」)を用いて、真空中50~110℃の温度下で、1~5℃程度の温度差をつけた時の、複合体シートのゼーベック係数S(μV・K-1)および導電率σ(S・cm-1)を測定した。そしてパワーファクター(μW・m-1・K-2)を、下記式を用いて算出した。
PF=S2×σ/10000
パワーファクターは温度変化当たりの発電力を示す指標であり、パワーファクターが大きい程熱電変換特性に優れることを意味する。
なお、ゼーベック係数は、数値が高いほど優れた熱電変換特性を示す指標ではあるものの、それ以上に、その絶対値が30(μV・K-1)以上であることが好ましく、40(μV・K-1)以上であることがより好ましい。
国際公開第2006/011655号の記載に従い、スーパーグロース法により、CNT(SGCNT、単層CNTの割合:90%、平均直径:3.5nm、平均長さ:350μm、BET比表面積:1200m2/g)を調製した。
ビーカーに、上述のようにして得られたCNT60mg、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(シグマ アルドリッチ社製)180mg、純水3000mLを入れ、マグネチックスターラーで5分間攪拌した。攪拌後の混合物を、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製、「Model 250 DA」)を用いて出力40%で9分間分散させた後、得られたCNT分散液を三ツ口フラスコに移した。
この三ツ口フラスコに、1.4mmol/LのAgClO4水溶液(小島化学薬品製)を含む滴下ろうとを取り付けた。その後、攪拌子でCNT分散液を攪拌しつつ、この三ツ口フラスコに水素ガス(圧縮水素ガス、岩谷産業社製)を30分間供給することで三ツ口フラスコ内の気相を水素ガスで満たした(水素置換)。水素置換後、攪拌中のCNT分散液にAgClO4水溶液を滴下し、滴下終了後30分間放置した。なお、金属の前駆体の供給量は、CNT100質量部に対して、金属が20質量部となる量とした。
その後、三ツ口フラスコの内容物を、メンブレンフィルター(アドバンテック社製、「H100A90C」、親水性、口径:1.0μm、直径:90mm)を用いて吸引ろ過を行った。メンブレンフィルター上に得られたろ取物を、メタノール(和光純薬社製)3Lで洗浄した。洗浄後のろ取物を十分に室温で乾燥させた後、更に真空乾燥機(ヤマト科学社製、「Vacuum Oven ADP-21」)を用い、70℃で6時間乾燥させて、複合体シートを得た。得られた複合体シートを走査型電子顕微鏡で観察し、CNTの表面に銀の粒子(平均粒子径:200nm)が形成されていることを確認した。また、複合体シートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表1に示す。
CNT分散液の調製に際し、純水に替えてN-メチル-2-ピロリドン(NMP、和光純薬社製)を使用し、且つドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして複合体シートを得た。得られた複合体シートを走査型電子顕微鏡で観察し、CNTの表面に銀の粒子(平均粒子径:200nm)が形成されていることを確認した。また、複合体シートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表1に示す。
AgClO4水溶液に替えて、HAuCl4水溶液を用いた以外は、実施例2と同様にして複合体シートを得た。得られた複合体シートを走査型電子顕微鏡で観察し、CNTの表面に金の粒子(平均粒子径:200nm)が形成されていることを確認した。また、複合体シートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表1に示す
実施例1と同様にしてCNT(SGCNT、単層CNTの割合:90%、平均直径:3.5nm、平均長さ:350μm、BET比表面積:1200m2/g)を調製した。
ビーカーに、上述のようにして得られたCNT60mg、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(シグマ アルドリッチ社製)180mg、純水3000mLを入れ、マグネチックスターラーで5分間攪拌した。攪拌後の混合物を、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製、「Model 250 DA」)を用いて出力40%で9分間分散させた。得られたCNT分散液を、メンブレンフィルター(アドバンテック社製、「H100A90C」、親水性、口径:1.0μm、直径:90mm)を用いて吸引ろ過を行った。メンブレンフィルター上に得られたろ取物を、メタノール(和光純薬社製)3Lで洗浄した。洗浄後のろ取物を十分に室温で乾燥させた後、更に真空乾燥機(ヤマト科学社製、「Vacuum Oven ADP-21」)を用い、70℃で6時間乾燥させて、CNTシートを得た。
セパラブルフラスコの下部に、攪拌子、上述のCNTシートをこの順に入れ、次いで純水60mLを入れ、CNTシート含浸物を調製した。また、セパラブルフラスコ上部に、1.4mmol/LのAgClO4水溶液(小島化学薬品製)を含む滴下ろうとを取り付けた。
セパラブルフラスコを組み立てた後、攪拌子でCNTシート含浸物の溶媒(純水)を攪拌しつつ、水素ガス(圧縮水素ガス、岩谷産業社製)を30分間供給することでセパラブルフラスコ内の気相を水素ガスで満たした(水素置換)。水素置換後、攪拌中のCNTシート含浸物にAgClO4水溶液を滴下し、滴下終了後30分間放置した。なお、金属の前駆体の供給量は、CNT100質量部に対して、金属が20質量部となる量とした。
その後、セパラブルフラスコの内容物を取り出し、純水とメタノール(和光純薬社製)で洗浄した後、真空乾燥機(ヤマト科学社製、「Vacuum Oven ADP-21」)を用い、70℃で3時間乾燥させて、複合体シートを得た。得られた複合体シートを走査型電子顕微鏡で観察し、CNTの表面に銀の粒子(平均粒子径:400nm)が形成されていることを確認した。また、複合体シートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表1に示す。
CNTシートおよびCNTシート含浸物の調製に際し、純水に替えてNMPを使用し、且つドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用しなかった以外は、実施例4と同様にして複合体シートを得た。得られた複合体シートを走査型電子顕微鏡で観察し、CNTの表面に銀の粒子(平均粒子径:200nm)が形成されていることを確認した。また、複合体シートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表1に示す。
AgClO4水溶液に替えて、HAuCl4水溶液を用いた以外は、実施例5と同様にして複合体シートを得た。得られた複合体シートを走査型電子顕微鏡で観察し、僅かではあるがCNTの表面に金の粒子(平均粒子径:200nm)が形成されていることを確認した。また、複合体シートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表1に示す。
AgClO4水溶液に替えて、H2PtCl6水溶液を用いた以外は、実施例5と同様にして複合体シートを得た。得られた複合体シートを走査型電子顕微鏡で確認し、CNTの表面に白金の粒子(平均粒子径:700nm)が形成されていることを確認した。また、複合体シートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表1に示す。
AgClO4水溶液に替えて、PdCl2水溶液を用いた以外は、実施例5と同様にして複合体シートを得た。得られた複合体シートを走査型電子顕微鏡で確認し、CNTの表面にパラジウムの粒子(平均粒子径:700nm)が形成されていることを確認した。また、複合体シートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表1に示す。
CNTシートおよびCNTシート含浸物の調製に際しCNTとして名城ナノカーボン社製のCNT(製品名「MEIJO eDIPS」、単層CNTの割合:90%、平均直径:1.5nm)を使用し、純水に替えてエタノールを使用し、且つドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用しなかった以外は、実施例4と同様にして複合体シートを得た。得られた複合体シートを走査型電子顕微鏡で観察し、CNTの表面に銀の粒子(平均粒子径:200nm)が形成されていることを確認した。また、複合体シートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表1に示す。
水素置換を行わない以外は、実施例1と同様の操作を行った。洗浄および乾燥後のろ取物を走査型電子顕微鏡で確認したところ、CNTの表面に銀の粒子は形成されていなかった。
CNT分散液に替えて、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(シグマ アルドリッチ社製)180mgと純水3000mLの混合物(即ち、この混合物はCNTを含まない。)を調製し、この混合物を三ツ口フラスコに移した。
この三ツ口フラスコ中の混合物について、実施例1と同様にして水素置換およびAgClO4水溶液の滴下を行ったが、三ツ口フラスコ内に銀の粒子は形成されていなかった。
実施例1と同様にしてCNT(SGCNT、単層CNTの割合:90%、平均直径:3.5nm、平均長さ:350μm、BET比表面積:1200m2/g)を調製した。
上述のようにして得られたCNTを75mgとPd(CH3COO)2を17.6mgを、NMP56mL中に分散し、100℃で45分間加熱した。加熱終了後、吸引ろ過によりNMPを除去し、ろ取物をメタノールで洗浄後、40℃60時間真空乾燥することで、複合体シートを得た。得られた複合体シートを走査型電子顕微鏡で観察し、CNTの表面にパラジウムの粒子(平均粒子径:2.3nm)が形成されていることを確認した。また、複合体シートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にしてCNT(SGCNT、単層CNTの割合:90%、平均直径:3.5nm、平均長さ:350μm、BET比表面積:1200m2/g)を調製した。
ビーカーに、上述のようにして得られたCNT60mg、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(シグマ アルドリッチ社製)180mg、純水3000mLを入れ、マグネチックスターラーで5分間攪拌した。攪拌後の混合物を、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製、「Model 250 DA」)を用いて出力40%で9分間分散させた。得られたCNT分散液を、メンブレンフィルター(アドバンテック社製、「H100A90C」、親水性、口径:1.0μm、直径:90mm)を用いて吸引ろ過を行った。メンブレンフィルター上に得られたろ取物を、メタノール(和光純薬社製)3Lで洗浄した。洗浄後のろ取物を十分に室温で乾燥させた後、更に真空乾燥機(ヤマト科学社製、「Vacuum Oven ADP-21」)を用い、70℃で6時間乾燥させて、CNTシートを得た。このCNTシートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表2に示す。
純水に替えてNMPを使用し、且つドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用しなかった以外は、参考例2と同様にしてCNTシートを得た。このCNTシートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表2に示す。
CNTとして名城ナノカーボン社製のCNT(製品名「MEIJO eDIPS」、単層CNTの割合:90%、平均直径:1.5nm)を使用し、純水に替えてエタノールを使用し、且つドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用しなかった以外は、参考例2と同様にしてCNTシートを得た。このCNTシートの導電率およびゼーベック係数を測定し、パワーファクターを算出した。結果を表2に示す。
さらに、上述した表1と表2の結果より、以下のことが分かる。
実施例1~9で得られた複合体は、従来法により得られた参考例1の複合体に比して、導電率およびパワーファクターに優れることが分かる。
実施例1および4と、参考例2とは、前者が金属とCNTとの複合化が行われた複合体シートであるのに対し、後者は、金属との複合化が行われていないCNTシートであり、これらの実質的な違いは、CNTシートへの金属の粒子の付着の有無である。そして、実施例1および4と、参考例2を比較すると、前者が後者に対して、導電率およびパワーファクターに優れることが分かる。
実施例2、3、5~8と、参考例3とは、前者が金属とCNTとの複合化が行われた複合体シートであるのに対し、後者は、金属との複合化が行われていないCNTシートであり、これらの実質的な違いは、CNTシートへの金属の粒子の付着の有無である。そして、実施例2、3、5~8と、参考例3を比較すると、前者が後者に対して、導電率およびパワーファクターに優れることが分かる。
実施例9と、参考例4とは、前者が金属とCNTとの複合化が行われた複合体シートであるのに対し、後者は、金属との複合化が行われていないCNTシートであり、これらの実質的な違いは、CNTシートへの金属の粒子の付着の有無である。そして、実施例9と、参考例4を比較すると、前者が後者に対して、導電率およびパワーファクターに優れることが分かる。
Claims (7)
- 複数本のカーボンナノチューブおよび溶媒を含むカーボンナノチューブ組成物に、水素ガスと、金属の前駆体とを供給して、前記カーボンナノチューブの表面に前記金属の粒子を析出させる工程を備える、複合体の製造方法であって、
カーボンナノチューブの表面に金属の粒子を析出させる前記工程が、
前記カーボンナノチューブ組成物を含む容器内部に前記水素ガスを供給する工程と、
前記水素ガスの供給後、前記カーボンナノチューブ組成物に前記金属の前駆体を供給する工程を備える、複合体の製造方法。 - 前記金属が、金、銀、および白金からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の複合体の製造方法。
- 前記金属が、金と銀の少なくとも一方である、請求項1に記載の複合体の製造方法。
- カーボンナノチューブの表面に金属の粒子を析出させる前記工程に先んじて、前記複数本のカーボンナノチューブを前記溶媒中に分散させて、前記カーボンナノチューブ組成物を得る工程を備える、請求項1~3の何れかに記載の複合体の製造方法。
- カーボンナノチューブの表面に金属の粒子を析出させる前記工程に先んじて、前記複数本のカーボンナノチューブよりなるシートに前記溶媒を含浸させて、前記カーボンナノチューブ組成物を得る工程を備える、請求項1~3の何れかに記載の複合体の製造方法。
- 前記複数本のカーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブを含む、請求項1~5の何れかに複合体の製造方法。
- 前記複合体が熱電変換素子用である、請求項1~6の何れかに複合体の製造方法。
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