以下、図1~図6を参照しながら、本実施形態に係るプリプレグの製造方法、成型体の製造方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
図1は、本実施形態のプリプレグの製造方法によって製造されるプリプレグを示す概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の製造方法で製造されるプリプレグ1は、マトリクス樹脂10と、炭素繊維層20と、を含む。
(マトリクス樹脂:第1樹脂組成物)
マトリクス樹脂10は、変性ポリオレフィン樹脂からなる主剤と、主剤を架橋させる架橋剤として機能するエポキシ系化合物とを含む。このようなマトリクス樹脂10の形成材料は、本発明における「第1樹脂組成物」に該当する。
マトリクス樹脂10中において、主剤の一部と、架橋剤の一部とが反応していてもよい。マトリクス樹脂10は、主剤が架橋剤により架橋されてなる架橋樹脂を含んでもよい。
このようなマトリクス樹脂10は、熱可塑性を有する。また、主剤と架橋剤とが反応することにより一部硬化する。
マトリクス樹脂10の主剤となる変性ポリオレフィン樹脂は、熱可塑性を有する。変性ポリオレフィン樹脂としては、酸変性ポリオレフィン樹脂、ヒドロキシ変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、エポキシ系化合物が有するエポキシ基との反応性の観点から、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂の製造方法としては、未変性ポリオレフィン樹脂を酸官能基含有モノマーとを溶融混練によりグラフト変性する方法、オレフィンモノマーと酸官能基含有モノマーとを共重合させる方法等が挙げられる。マトリクス樹脂10の主剤としては、グラフト変性による酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。グラフト変性は、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂の構成において、酸官能基含有モノマーと共重合する場合のオレフィンモノマー、又は未変性ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、α-オレフィン等の1種又は2種以上が挙げられる。
グラフト変性される前の未変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、プロピレンと1-ブテンとの共重合体、プロピレンとエチレン又はα-オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレン又はα-オレフィンとのブロック共重合体等の1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、プロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン、プロピレン-エチレンのブロック共重合体、プロピレン-エチレンのランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体等のポリプロピレン系樹脂が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成するモノマーが1-ブテンを含有することにより、マトリクス樹脂10が加熱された際の分子運動が促進される。主剤と架橋剤とが相互に反応し得る官能基を有する場合、主剤と架橋剤との官能基同士が接触する機会が増える結果、マトリクス樹脂10の耐久性、被着体への密着性がより向上する。
酸官能基含有モノマーとしては、エチレン性二重結合と、酸基又は酸無水物基とを同一分子内に持つ化合物である。酸官能基となる酸基又は酸無水物基としては、カルボン酸基(-COOH)又はカルボン酸無水物基(-CO-O-CO-)が挙げられる。カルボン酸基又はカルボン酸無水物基を有するモノマーとしては、不飽和のモノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物等の1種又は2種以上が挙げられる。
1種又は2種以上の酸変性ポリオレフィン樹脂において、同一の酸官能基含有モノマーが用いられてもよく、異なる2種以上の酸官能基含有モノマーが用いられてもよい。
不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のα,β-不飽和カルボン酸モノマーの1種又は2種以上が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸)、エンド-ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸(エンディック酸)等の1種又は2種以上が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ナジック酸、無水エンディック酸などの1種又は2種以上が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、架橋剤に含まれるエポキシ基との反応性が高いことから、酸無水物基を有する酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましく、カルボン酸無水物基を有する酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましく、特に、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。なかでも、接着性、及び適度な融点の観点から、無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂が、未反応の酸官能基含有モノマーを含有する場合は、接着力が低下するおそれがある。このため、マトリクス樹脂10の主剤としては、未反応の酸官能基含有モノマーを含まない酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。未反応の酸官能基含有モノマーを除去した酸変性ポリオレフィン樹脂を主剤としてもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂において、未変性ポリオレフィン樹脂又はオレフィンモノマーに由来する部分の割合は、酸変性ポリオレフィン樹脂の全量100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましい。
酸変性ポリオレフィンにおける酸置換基による変性率は、0.5質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。ここで言う「酸置換基による変性率」とは、酸置換基によるグラフト変性率のことを指し、下記方法で酸置換基によるグラフト変性率を測定して求められた値を指す。
(測定方法)
無水マレイン酸のペレット状のサンプルを熱プレスにより厚さ約100μmのフィルムを作成し、赤外線吸収スペクトルにおいて1780cm-1に現れる吸収ピークと、別途求めた検量線とからマレイン酸の含有率(質量%)を検量し、得られた値を全無水マレイン酸の含有率(質量%)とする。得られた値をAとする。
沸騰させたキシレンにペレット状の測定試料を溶解させた後、得られた溶液から測定試料をメタノールに再沈殿させる。その後、沈殿物を80℃で6時間真空乾燥させ、粉末状のサンプルを得る。
得られたサンプルに含まれる無水マレイン酸の含有率を、上記と同様の方法で検量し、得られた値をサンプル中のポリオレフィンにグラフトした無水マレイン酸の含有率(質量%)とする。得られた値をBとする。
グラフト変性した無水マレイン酸の含有率(B)を、全無水マレイン酸の含有率(A)で除し、得られた値を百分率で表した値((B/A)×100)を、測定試料における無水マレイン酸のグラフト変性率とする。得られたマレイン酸のグラフト変性率を、酸置換基による変性率とする。
変性ポリオレフィン樹脂の測定温度180℃における溶融粘度は、1000mPa・s以上50000mPa・s以下であることが好ましく、5000mPa・s以上20000mPa・s以下であることがより好ましい。溶融粘度の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
本明細書において溶融粘度は、JIS K7199に準拠した方法で測定する値を指す。具体的には、レオメーター(AntonPaar社製、装置名:physicaMCR301)を用い、測定温度180℃、ひずみ振幅3%、1Hzの周波数で測定を行った際の値を指す。
変性ポリオレフィン樹脂の融点は60℃以上130℃以下が好ましい。この融点は、70℃以上120℃以下が好ましく、75℃以上110℃以下がより好ましく、80℃以上100℃以下がさらに好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、例えば10000~800000であり、50000~650000が好ましく、80000~550000がより好ましく、100000~450000がさらに好ましい。
次に、マトリクス樹脂10の架橋剤について説明する。架橋剤となるエポキシ系化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。フェノキシ樹脂は、一般にはポリヒドロキシポリエーテル樹脂とされているが、原料に由来するエポキシ基を有する場合には、架橋剤のエポキシ系化合物として用いることができる。
エポキシ系化合物としては、フェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
また、エポキシ系化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂も好ましい。ここで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA骨格を有するエポキシ樹脂を意味する。同様に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールF骨格を有するエポキシ樹脂を意味する。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール化合物を基本構造とし、その構造の一部にエポキシ基が導入された化合物である。ビスフェノール化合物はフェノール性水酸基を2個有するため、ビスフェノール型エポキシ樹脂は、通常、ビスフェノール骨格を有する二官能エポキシ樹脂となる。
本明細書において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂とは、フェノールノボラック樹脂を基本構造とし、その構造の一部にエポキシ基が導入された化合物である。フェノールノボラック樹脂は、一般には、単に「ノボラック」ともいい、フェノール類化合物とホルムアルデヒドとを縮合して得られる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂における1分子あたりのエポキシ基導入量は特に限定されるものではないが、エピクロルヒドリン等のエポキシ基原料とフェノールノボラック樹脂とを反応させることにより、フェノールノボラック樹脂中に多数存在するフェノール性水酸基に多数のエポキシ基が導入されるため、通常は多官能エポキシ樹脂となる。
フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール類化合物としては、フェノール性水酸基を有する化合物であればよく、水酸基以外に活性水素を有しない化合物が好ましい。フェノール類化合物の具体例として、フェノール(ヒドロキシベンゼン)、クレゾール、ナフトール等のモノフェノール化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物などが挙げられる。ビスフェノール化合物を用いて構成されたフェノールノボラック樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格を有する。
架橋剤となるエポキシ系化合物として、ビスフェノール骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA骨格またはビスフェノールFを有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂が特に好ましい。
エポキシ系化合物のエポキシ当量は、100~300が好ましく、200~300がより好ましい。エポキシ当量(g/eq)は、エポキシ基1個あたりのエポキシ系化合物の分子量に相当し、この値が小さいほどエポキシ系化合物中のエポキシ基が多いことを意味する。エポキシ当量の比較的小さいエポキシ系化合物を架橋剤とすることにより、エポキシ系化合物の添加量が比較的少量でも、主剤の酸変性ポリオレフィン樹脂が十分に架橋される。
エポキシ系化合物の分子量は、300以上50000以下であることが好ましく、10000以下が好ましい。エポキシ化合物の分子量が50000以下であると、主剤中でエポキシ化合物が拡散しやすく移動しやすい。そのため、エポキシ系化合物の分子量が上記上限値以下であると、エポキシ官能基と、主剤の置換基や繊維の表面の置換基との反応確率が上がり、炭素繊維強化樹脂成型体とした際の強度が向上する。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の具体例として、三菱化学株式会社製のjER(登録商標)154、jER(登録商標)157S70、jER(登録商標)157S65;DIC株式会社製のEPICLON(登録商標)N-730A、EPICLON(登録商標)N-740、EPICLON(登録商標)N-770、EPICLON(登録商標)N-775(以上、いずれも商品名)等の市販品を用いることもできる。
マトリクス樹脂10を構成する第1樹脂組成物は、主剤及び架橋剤からなる接着性樹脂に加えて、所望により混和性のある添加剤、付加的な樹脂、可塑剤、安定剤、着色剤等を適宜含有することができる。
マトリクス樹脂10中の第1樹脂組成物の全量を100質量部として、変性ポリオレフィン樹脂を10質量%以上99.5質量%以下含み、エポキシ系化合物を第1樹脂組成物の全量に対して0.5質量%以上10質量%以下含むことが好ましい。
架橋剤の割合が多すぎる場合、適切な接着条件の設定が困難になるおそれがある。架橋剤が含まれない場合、酸変性ポリオレフィン樹脂が架橋されず、マトリクス樹脂が硬化しない。
(マトリクス樹脂:第2樹脂組成物)
また、マトリクス樹脂10は、グラフト鎖にエポキシ基を有するオレフィン樹脂を含むこととしてもよい。このようなマトリクス樹脂10の形成材料は、本発明における「第2樹脂組成物」に該当する。
グラフト鎖にエポキシ基を有するオレフィン樹脂は、ポリオレフィン系樹脂と、エチレン性二重結合およびエポキシ基を同一分子内に有する単量体とを、ラジカル重合開始剤の存在下で反応させ、エポキシ基でポリオレフィン系樹脂を変性したものが好ましい。
グラフト鎖にエポキシ基を有するオレフィン樹脂を構成するポリオレフィン系樹脂は、プロピレンもしくはブテンの共重合樹脂であることが好ましい。
エチレン性二重結合およびエポキシ基を同一分子内に有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p-スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル、p-グリシジルスチレン、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどが挙げられる。
(炭素繊維)
炭素繊維層20は、複数の炭素繊維29からなる。炭素繊維は、実質的に炭素元素だけからなる繊維状の炭素材料の総称である。本実施形態のプリプレグの製造方法において、炭素繊維29としては、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維など通常知られた炭素繊維を用いることができる。
本実施形態において用いる炭素繊維29は、連続繊維である。炭素繊維層20は、一方向に連続する炭素繊維29の束であってもよい。このような炭素繊維29は、単繊維であってもよく、撚り糸であってもよい。ここで「連続繊維」とは、プリプレグの全長にわたって連続する繊維の束であることを意味する。
また炭素繊維層20は、連続繊維である炭素繊維29を用いて形成した織物、または編物であってもよい。織物は、平織、綾織(斜文織)、繻子織など通常知られた織り方を採用することができる。
炭素繊維層20は、炭素繊維29としてPAN系炭素繊維を用いた織物が好ましい。
プリプレグ1においては、炭素繊維層20を構成する複数の炭素繊維29の隙間20aに、上述のマトリクス樹脂10が含浸している。
炭素繊維層20の厚さは、10~1000μmが好ましく、100~500μmがより好ましい。また、シート状の強化繊維基材の目付は、5~3000g/m2が好ましい。
プリプレグの厚さは50~500μmであることが好ましく、60~300μmであることが更に好ましい。
図2は、プリプレグの製造方法に用いる製造装置100を示す模式図である。本実施形態のプリプレグの製造方法においては、製造装置100を用い、帯状の樹脂フィルム11および帯状の炭素繊維シート21から、帯状のプリプレグ原反1Aを製造する。
なお、「プリプレグ原反」とは、帯状に形成された長尺のプリプレグのことを指す。プリプレグ原反1Aを枚葉加工することにより、上述のプリプレグ1が得られる。
プリプレグ1およびプリプレグ原反1Aは、いずれも本発明におけるプリプレグに該当する。
(樹脂フィルム)
樹脂フィルム11は、上述のマトリクス樹脂10と同じ材料を形成材料とする。樹脂フィルム11は、上述の第1樹脂組成物を形成材料とすることが好ましい。樹脂フィルム11は、上述のマトリクス樹脂10と同組成の樹脂が、帯状に形成された長尺の成型体である。
樹脂フィルム11を形成する方法としては、主剤と架橋剤を含む塗工液を製造し、基材フィルム上に塗工液を塗布、乾燥する方法が挙げられる。
樹脂フィルム11の乾燥後の膜厚は、10μm以上200μm以下であることが好ましい。樹脂フィルム11の膜厚は、20μm以上150μm以下が好ましく、30μm以上100μm以下がより好ましく、40μm以上80μm以下がさらに好ましい。
塗工液としては、主剤と架橋剤を溶媒に溶解した塗工液が好ましい。溶媒としては、主剤及び架橋剤の溶解性に加えて、塗布後の乾燥性に優れる有機溶媒が好ましい。溶媒の沸点は、例えば150℃以下が好ましい。
溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、シメン、メシチレン等の芳香族溶媒;
n-ヘキサン等の脂肪族溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;
乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル系溶剤;
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのアルコール系溶剤等の1種又は2種以上が挙げられる。
塗工液に用いられる溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせた混合溶剤でもよい。混合溶媒の場合は、主剤を良好に溶解する有機溶剤と、架橋剤を良好に溶解する有機溶剤とを組み合わせて用いることも好ましい。このような組み合わせとしては、主剤を良好に溶解するトルエンと、架橋剤を良好に溶解するメチルエチルケトンとの組み合わせが好ましい。混合溶剤を用いた塗工液の製造方法は、混合溶媒に主剤及び架橋剤を溶解させてもよく、主剤の溶液と架橋剤の溶液とを混合させてもよい。
混合溶媒における混合割合は特に限定されないが、例えばトルエンとメチルエチルケトンとを組み合わせる場合、質量比で60~95:5~40が好ましく、70~90:10~30がより好ましい。
また、樹脂フィルム11は、公知のシートダイやTダイを用いた溶融押出によって製造することとしてもよい。このような方法では、上述した塗工液を塗布乾燥させて製造する方法と比べて、製造する樹脂フィルム11を厚くしやすい。
測定温度150℃における樹脂フィルム11の粘弾性率の測定値E(150℃)は、1.0×103Pa以上1.0×106Pa以下であることが好ましい。樹脂フィルム11の貯蔵弾性率E’のチャートは、低温領域のガラス状態から、温度上昇に伴って、測定値E’が徐々に低下する転移領域を経て、凡そ平衡な値となる平衡領域に至るチャートを示すものが好ましい。
E(150℃)の値は、樹脂フィルム11を構成する変性ポリオレフィン樹脂の変性量や、架橋剤の添加量により調整することができる。
樹脂フィルム11の粘弾性率の測定値E(150℃)は、例えば、公知の動的粘弾性測定装置を用いて150℃で貯蔵弾性率を測定することにより評価することができる。動的粘弾性測定装置としては、TA Instrument社の動的粘弾性測定装置「RSA-3」(商品名)等を用いることができる。貯蔵弾性率を測定する際の振動周波数は、例えば1Hzである。
樹脂フィルム11は、例えば、形成材料である第1樹脂組成物において、変性ポリオレフィン樹脂を第1樹脂組成物の全量に対して10質量%以上99.5質量%以下含み、エポキシ系化合物を第1樹脂組成物の全量に対して0.5質量%以上10質量%以下含むことが好ましい。この場合、樹脂フィルム11に含まれる変性ポリオレフィン樹脂の融点が70℃以上120℃以下であることが好ましい。また、樹脂フィルム11の膜厚が、10μm以上200μm以下であることが好ましい。
(炭素繊維シート)
炭素繊維シート21は、上述した炭素繊維がシート状に成型された帯状の成型体である。
図2に示すように、製造装置100においては、ロール状に巻き取られた炭素繊維シート21は、供給ロール101に取り付けられている。供給ロール101は、炭素繊維シート21を炭素繊維シート21の長手方向に順次供給する。
また、製造装置100においては、ロール状に巻き取られた樹脂フィルム11は、供給ロール102,103にそれぞれ取り付けられている。以下の説明では、供給ロール102に取り付けられた樹脂フィルムを樹脂フィルム11Aとし、供給ロール103に取り付けられた樹脂フィルムを樹脂フィルム11Bとする。
樹脂フィルム11Aと樹脂フィルム11Bとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。ここで、樹脂フィルム11A,11Bが「同じ」とは、樹脂フィルムの組成及び膜厚が同じであることを指す。樹脂フィルム11A,11Bが「異なる」とは、樹脂フィルムの組成及び膜厚の少なくとも一方が異なることを指す。ここでは、樹脂フィルム11A,11Bが同じであることとして説明する。
供給ロール102,103は、樹脂フィルム11A,11Bを樹脂フィルム11A,11Bの長手方向に順次供給する。
樹脂フィルム11A、炭素繊維シート21、樹脂フィルム11Bは、この順に積層した状態で、ニップロール104,105の間の隙間を通過する。
図3は、図中符号αで示す部分で生じる現象を説明する説明図である。図に示すように、ニップロール104,105の間では、樹脂フィルム11A,11Bが押圧され、炭素繊維シート21に圧着され、樹脂フィルム11A、炭素繊維シート21、樹脂フィルム11Bからなる積層体1Bが得られる。本工程は、本発明における「圧着する工程」に該当する。
図2に示すように、製造装置100において、積層体1Bは長手方向に搬送され、加熱部110を通過する。加熱部110では、樹脂フィルム11A,11Bの軟化点以上、樹脂フィルム11A,11Bが含有する架橋剤の反応開始温度未満の温度範囲に樹脂フィルム11を加熱する。本工程は、本発明における「加熱する工程」に該当する。
次いで、積層体1Bは長手方向に搬送され、樹脂フィルム11が上記温度範囲に加熱された状態で、一対の加圧ロール120の間を通過する。
図4は、図中符号β1,β2で示す部分で生じる現象を説明する説明図である。積層体1Bでは、加熱部110による加熱により樹脂フィルム11A,11Bが溶融し、炭素繊維シート21を構成する複数の炭素繊維29の隙間20aに浸入する。さらに、積層体1Bでは、加圧ロール120による加圧により、溶融した樹脂フィルム11A,11Bが、炭素繊維シート21を構成する複数の炭素繊維29の隙間20aに浸入する。これにより、樹脂フィルム11A,11B、および炭素繊維シート21が一体化し、プリプレグ原反1Aが生成する。
次いで、図2に示すように、プリプレグ原反1Aは、加圧ロール120下流側に設けられた冷却部130で冷却される。プリプレグ原反1Aの製造時には、上述したように、炭素繊維シート21に樹脂フィルム11を溶融含浸させるために加熱部110で加熱する。この加熱により、樹脂フィルム11に含まれる架橋剤が意図せず架橋反応し、硬化が進行することがある。冷却部130では、プリプレグ原反1Aを冷却することにより、上述のような意図しない架橋反応を抑制または停止させることができる。
なお、本工程における「冷却」とは、加圧ロール120を通過したプリプレグ原反1Aの温度を、自然放冷よりも速い速度で低下させることを意味する。冷却速度は、冷却対象物であるプリプレグ原反1Aの構成に応じて適宜設定することができる。例えば、プリプレグ原反1Aが冷却部130に侵入してから冷却部130を通過するまでの時間内に、プリプレグ原反1Aの温度を30℃以上低下させることが好ましく、50℃以上低下させることがより好ましい。
加圧ロール120を通過したプリプレグ原反1Aを早期に冷却するため、加圧ロール120と冷却部130との間のプリプレグ原反1Aの搬送距離を設定するとよい。例えば、プリプレグ原反1Aの搬送速度に応じ、加圧ロール120から冷却部130まで数秒以内に達するように搬送距離を設定するとよい。
冷却部130は、通常知られた構成の装置を用いることができる。冷却部130としては、例えば、公知の送風機や冷風機を採用することができる。
得られたプリプレグ原反1Aは、巻き取りロール150においてロール状に巻き取られる。
図5は、プリプレグ原反1Aにさらに加工を施す加工装置200を示す模式図である。
図5に示すように、加工装置200においては、ロール状に巻き取られたプリプレグ原反1Aが、供給ロール201に取り付けられている。供給ロール201は、プリプレグ原反1Aをプリプレグ原反1Aの長手方向に順次供給する。
プリプレグ原反1Aは、下流側に設けられた切断部202で切断され、枚葉加工されたプリプレグ1となる。プリプレグ1は、スタンパブルシートとして用いられる。得られたプリプレグ1は、複数枚(図では3枚)が積層された積層体5として、搬送装置203で下流側に搬送される。
積層体5においては、プリプレグ1に含まれる炭素繊維の延在方向を同方向に揃えて積層してもよい。また、例えば各プリプレグ1が有する炭素繊維の延在方向が交差するように向きを変えて積層してもよい。
プリプレグ1の積層体5は、下流側に設けられたプレス装置210にて、マトリクス樹脂10の軟化点以上に加熱されながら加圧され、成型される。詳しくは、積層体5を加熱して軟化させ、軟化した積層体5を不図示の金型で押さえて成形する、いわゆるスタンパブル成形を行う。
上述のように、プリプレグ1の製造時には、樹脂フィルム11A,11Bの軟化点以上、樹脂フィルム11A,11Bが含有する架橋剤の反応開始温度未満の温度範囲に樹脂フィルム11を加熱する。その際、一部の架橋剤が反応して硬化が進行することが想定される。すなわち、「マトリクス樹脂10の軟化点」は「樹脂フィルム11A,11Bの軟化点」よりも高いことが多い。
そのため、プリプレグ1の製造時と同じ設定温度で積層体5を加熱しても、積層体5の軟化点を超えないおそれがある。そのため、積層体5の加熱は、プリプレグ1の製造時よりも高い温度で行うことが好ましい。
同じ理由で、プレス装置210を用いた積層体5の加圧は、プリプレグ1の製造時よりも高い圧力で行うことが好ましい。
このプレス加工により、成型体6が得られる。図6に示すように、プレス加工で得られた成型体6では、積層体5が有するマトリクス樹脂10が溶融し、互いに接するプリプレグ1同士が一体化する。図中の破線は、プリプレグ1の界面であった箇所を示す。
成型体6は、加熱部220で、マトリクス樹脂10が含有する架橋剤の反応開始温度以上の温度に加熱される。これにより、成型体6においては架橋反応が進行して硬化し、成型体7が得られる。
成型体7は、下流側に設けられた冷却部230で冷却される。これにより、目的とする成型体が得られる。
以上のような構成のプリプレグの製造方法によれば、生産性高くプリプレグが製造可能となる。また、以上のような構成の成型体の製造方法によれば、生産性高く炭素繊維強化樹脂成型体を製造可能となる。
なお、本実施形態においては、製造装置100の加熱部110で加熱した後に、加圧ロール120で加圧することとしているが、これに限らない。例えば、ニップロール104,105の位置で加熱可能なロールを用い、樹脂フィルム11A、炭素繊維シート21、樹脂フィルム11Bの加熱と加圧とを同時に行うこととしてもよい。
また、本実施形態においては、加工装置200のプレス装置210にて積層体5を成形した後に、加熱部220で加熱してマトリクス樹脂10を硬化させることとしたが、これに限らない。プレス装置210の加熱条件を調整し、プレス装置210においてマトリクス樹脂10を硬化を進めることとしてもよい。
また、本実施形態においては、加工装置200のプレス装置210にて積層体5を構成するプリプレグ1間の溶着と、積層体5の成型とを行うこととしたが、これに限らない。例えば、プリプレグ1を複数積層した積層体5を平面プレスし、プリプレグ1間の溶着のみを行ってもよい。このようにして得られる成型体は、複数のプリプレグ1が積層され一体化したものであり、複数の炭素繊維層を有するプリプレグとして用いることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。