JP7261054B2 - フッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーおよびその硬化体 - Google Patents
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(A)両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンであって、分子量分布指数(Mw/Mn;Mwは重量平均分子量,Mnは数平均分子量)が1.3以上であるもの。
(B)テトラアルコキシシランのオリゴマー、および/または、前記オリゴマーの完全または部分加水分解物または縮合物。
(C)炭素数4以上の直鎖状(n-)パーフルオロアルキル基または炭素数5以上の分岐鎖状パーフルオロアルキル基1個と3個のメトキシ基を有するシラン化合物、および/または、前記シラン化合物の完全または部分加水分解物または縮合物。
本発明のフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーは、両末端に反応性を有するシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を一原料としている。両末端にシラノール基を有し、分子鎖が分岐、あるいは末端に複数個のシラノール基を有するもの、その他の反応性官能基を有するものなど、種々の原材料が考えられるが、フッ素含有化合物を反応させてフッ素を組み込む時、パーフルオロアルキル基は立体障害が大きく合成が困難な場合があった。結果的に、直鎖状で両末端にシラノール基を有するものがフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーの調製には最適であった。(A)の化学式を(1)に示す。
アルコキシ基を有するシランオリゴマーは、一般的にはメチルシリケートやエチルシリケートといった化合物が知られており、簡単に入手することが可能である。そのオリゴマーであるアルキルシリケートの一般構造式は下記の通りとなる。
炭素数4以上の直鎖状(n-)パーフルオロアルキル基または炭素数5以上の分岐鎖状(立体障害が大きすぎないようイソが好ましいが、限定されない)パーフルオロアルキル基1個と3個のメトキシ基を有するシラン化合物に関しては、加水分解性基がメトキシ基であることが重要であり、エトキシ基では加水分解反応速度が低いためか作製が困難である。安全面などからメトキシ基よりエトキシ基の化合物を用いることが望ましいが、エトキシ基を用いた系では白濁を生じ合成が困難である。
接着性改善を目的に使用される材料として、接着性、耐光性、耐熱性の高いエポキシ基を有したイソシアヌレート環構造を有し、末端エポキシ基またはエポキシ基、および、末端アルコキシ基を有する化合物(D)を化合物(A)、(B)、(C)の合計量100重量部に対し0.1~5重量部用いることができる。化合物(D)は、エポキシ樹脂の改質剤として一般的に知られているが、この中でも、官能基としてアルコキシ基を有するものが好ましい。この種の化合物は分子の平面度が高く、接合面に沿って接着性を上げる効果が期待されるが、化合物(A)、(B)、(C)の合計量に対し0.1重量部未満では接着性改善効果が発現し難く、5重量部を超えると、耐光性、耐熱性が劣化する恐れがある。接着性改善効果、耐光性、耐熱性のバランスを考慮すると、化合物(D)は、化合物(A)、(B)、(C)の合計量100重量部に対し0.2~2重量部用いるのがより好ましい。
本発明のフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーの調製には、有機金属化合物を縮合触媒として合成を進めることが好ましい。縮合触媒に制約は無いが、最も使いやすく添加量を低く抑えることが可能なSn系触媒が有効である。金属系触媒には、Sn系以外でもTi系、Al系、Zn系、Zr系、Bi系等の有機金属化合物が存在するが、反応性が低い、残留時の硬化体の耐熱性低下、着色などの課題を生じるため、Sn系触媒が最も効果的に使用することができる。
上記PDMS(A)の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比を分子量分布指数とした。標準試料としてポリスチレンを用い、ポリスチレン換算分子量を測定した。なおGPC法によるポリスチレン換算分子量測定は、以下の測定条件で行うものとする。
a)測定機器:東ソー製GPC HLC-8320PC
b)Mn30,000以下のカラム :TSKgel guardColumn Super HZ-H、TSKgel Super HZM-H ×2本
c)Mn30,000以上のカラム :TSKgel guardColumn Super MP(HZ)-N、TSKgel Multipore HZ-N ×3本
d)オーブン温度:40℃
e)溶離液 :テトラヒドロフラン(THF) 1.0mL/min
f)標準試料:ポリスチレン
g)注入量 :100μL
h)濃度 :0.05g/10mL
i)試料調製:2,6-ジ-tert-ブチル-p-フェノール(BHT)が0.2質量%添加されたTHFを溶媒として、室温で攪拌して溶解させる。
j)補正 :検量線測定時と試料測定時とのBHTのピークのずれを補正して、分子量計算を行う。
本発明のフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーの作製においては、好ましくは有機金属化合物(E)の存在下で、脱水または脱アルコールによる縮合反応によってまず縮合型ポリジメチルシロキサン系プレポリマーが合成される。
フッ素含有オルガノポリシロキサン硬化体の有する接着力では適用が困難な場合、接着力向上を目的に、イソシアヌレート環構造を有し、末端エポキシ基またはエポキシ基、および、末端アルコキシ基を有する化合物(D)を複合化させることが可能である。この複合化により、耐熱性や耐光性を大きく損なうことなく接着性を向上させることができる。
〔フッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー(F)の作製〕
攪拌装置、温度計、滴下ラインを取り付けた反応容器に、窒素ガスを十分に充満させた。このとき、窒素ガスとして、窒素ガス製造装置(ジャパンユニックス社製UNX-200)によって製造したものを用いた。
シリケートオリゴマー(B);エチルシリケート、多摩化学工業社製、シリケート40:テトラエトキシシランの直鎖状4~6量体であるオリゴマー、平均分子量=745。130℃で2時間蒸留精製したものを使用。
フッ素系シランカップリング剤(C):トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン(東京化成工業社製 T2917;分子量=568.30)、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シラン(東京化成工業社製 T2918;分子量=368.27)を使用。
溶媒:tert-ブチルアルコール(富士フイルム和光純薬社製)を使用。
攪拌装置、温度計、滴下ラインを取り付けた反応容器に、窒素ガスを十分に充満させた。このとき、窒素ガスとして、窒素ガス製造装置(ジャパンユニックス社製UNX-200)によって製造したものを用いた。
PDMS(a):JNC社製FM9927A(数平均分子量(Mn)≒29500、Mw/Mn=1.10)を使用。
シリケートオリゴマー(B);エチルシリケート、多摩化学工業社製、シリケート40:テトラエトキシシランの直鎖状4~6量体であるオリゴマー、平均分子量=745。130℃で2時間蒸留精製したものを使用。
フッ素系シランカップリング剤(C):トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン(東京化成工業社製 T2917;分子量=568.30)を使用。
フッ素系シランカップリング剤(c):トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン(東京化成工業社製 T2720;分子量:218.25)を使用。
溶媒:tert-ブチルアルコール(富士フイルム和光純薬社製)を使用。
撹拌脱泡装置に装備できる密閉可能なプラスチック容器に、4~6量体のシリケートオリゴマー(多摩化学工業社製 エチルシリケート40;蒸留精製品)を14.07g、2-エチルヘキサン酸ジルコニル(日本化学産業社製 ニッカオクチックスジルコニウム12%)を3.72g、2-エチルヘキサン酸亜鉛(日本化学産業社製 ニッカオクチックス亜鉛18%)を2.21g入れ、充分撹拌したところに、tert-ブチルアルコールを2g添加し、さらに撹拌させたものを、硬化剤として使用する。
[実施例7,8及び比較例4]
実施例1~6と同様の方法でフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー(F)、(f´)を得た。イソシアヌレート環構造を有し、末端エポキシ基またはエポキシ基、および、末端アルコキシ基を有する化合物(D;以下、高機能エポキシ化合物)を(D)と同重量の溶媒で溶解させ、得られたプレポリマー(F)、(f´)に添加し、撹拌しながら100℃で15分間反応させ、高接着性フッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー(G)、(g)を得た。
PDMS(a):JNC社製FM9927A(数平均分子量(Mn)29500、Mw/Mn=1.10)を使用。
シリケートオリゴマー(B);エチルシリケート、多摩化学工業社製、シリケート40:テトラエトキシシランの直鎖状4~6量体であるオリゴマー、平均分子量≒745。130℃で2時間蒸留精製したものを使用。
フッ素系シランカップリング剤(C):トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン(東京化成工業社製 T2917;分子量=568.30)使用。
高機能エポキシ化合物(D): 日産化学工業社製高機能エポキシ化合物 TEPIC-PAS B22(エポキシ当量:180~200g/eq)を使用。
溶媒:tert-ブチルアルコール(富士フイルム和光純薬社製)を使用。
〔評価用サンプルの作製〕
10mm×20mm、厚さ0.5mmの石英基板の上に、前述の硬化剤を溶媒を含むプレポリマー100重量部に対して3重量部添加し、シンキー製撹拌機(シンキー社製 泡とり練太郎)で撹拌脱泡したものを塗布した。その後、15分間真空脱泡処理を行い、その上に同サイズの石英基板を乗せ、膜厚が10μmとなるよう調整し、80℃で30分間、次いで220℃で3時間熱処理を行った。
上記方法で作製したサンプルを、セン特殊光源社製のSSP16-110を使って、低圧水銀ランプによる258nm・出力17mW/m2の照度にて、1000時間まで連続照射を実施し、外観と波長265nm、300nm、350nmでの透過率の変化を初期から500時間、1000時間で比較した。結果を表5に示す。
評価サンプルの作製
実施例1、実施例7、実施例8及び比較例4のプレポリマー100重量部に対して、前述の硬化剤を10重量部添加し、撹拌脱泡装置にて充分撹拌し、接着用ポリマーを作製した。JIS K 6850に準じて、幅25mm×長さ100mm×厚さ1mmのアルミニウム板2枚の片端が幅10mmで重なるように各接着用ポリマーを塗布し、事務用クリップで固定した。これを電気炉にて、100℃で60分間の予備焼成後、250℃で3時間熱処理し、評価用サンプルを作製した。島津製作所社製オートグラフAGS-Jにて、JIS K 6850に準じて、引張り試験を行った。接着強度測定結果(引張試験結果(n=3))を表6に示す。
表5の結果より、本発明のフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーから得られた硬化体は、透明性に優れ、耐光性にも優れていることが分かる。一方、フッ素系シランカップリング剤を使用していないもの(比較例1)は、258nmの照射500時間でクラックを生じ、Mw/Mnが1.3以下のPDMSを使用したもの(比較例3)及びトリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シランを使用したもの(比較例2)は1000時間でクラックが生じた。フッ素系シランカップリング剤を使用してもフルオロアルキル基の鎖長が短いものでは1000時間の258nmのUV光照射に耐えないことが分かる。
上記実施例においては、これに限定されるものではなく、異なった種類、特性の有機金属化合物を使用してもよい。
Claims (9)
- 下記(A)と下記(B)と下記(C)とを縮合反応させることによって調製された、フッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー。
(A)両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンであって、分子量分布指数(Mw/Mn;Mwは重量平均分子量,Mnは数平均分子量)が1.3以上3.0以下であり、数平均分子量(Mn)が15,000以上70,000以下であるもの。
(B)テトラアルコキシシランのオリゴマー、および/または、前記オリゴマーの完全または部分加水分解物または縮合物。
(C)炭素数4以上の直鎖状(n-)パーフルオロアルキル基または炭素数5以上の分岐鎖状パーフルオロアルキル基1個と3個のメトキシ基を有するシラン化合物、および/または、前記シラン化合物の完全または部分加水分解物または縮合物。 - 前記(B)は、直鎖状で4量体~10量体であり、アルコキシ基としてメトキシ基またはエトキシ基を有する、請求項1に記載のフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー。
- 前記(B)が、前記(A)1モルに対して0.5~4モル配合されている、請求項2に記載のフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー。
- 前記(C)が、前記(A)1モルに対し1~9モル配合されている、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー。
- イソシアヌレート環構造を有し、エポキシ基または末端エポキシ基、および、末端アルコキシ基を有する化合物(D)が、前記(A)、前記(B)および前記(C)の合計100重量部に対して0.1~5重量部配合されている、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマー。
- 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーを含む、波長450nm以下のLED発光素子の封止材。
- 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーを含む、波長450nm以下の光学部材用接着剤。
- 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のフッ素含有縮合型オルガノポリシロキサンプレポリマーの硬化体。
- 厚さ10μmのとき、波長265nmの透過率が75%以上、300nmの透過率が80%以上、350nmの透過率が90%以上である、請求項8に記載の硬化体。
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