JP7260336B2 - 高張力鋼のスラブの冷却方法 - Google Patents
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Description
スラブを冷却した際、スラブ長手方向に大きな内部応力が発生する。置き割れを引き起こす主な応力は、この長手方向の応力であることがわかった。さらに、置き割れは、この応力に直交する方向に発生した内部割れを起点に発生することがわかった。
本発明者らはさらに研究を進めたところ、内部割れ長さに応じて、置き割れが発生する内部応力の程度が異なることがわかった。このことから、内部割れ長さに応じて、内部応力を制御することにより、置き割れの発生を抑制できると考えられる。内部応力は冷却速度に依存することがわかったことから、内部割れ長さに応じて、冷却速度を制御することにより、内部応力を制御できることがわかった。
鋳造後、伝熱凝固計算によって算出されるスラブの軸心温度が700℃を超える範囲において、
伝熱凝固計算によって算出されるスラブの軸心冷却速度CR(℃/min.)が
CR≦2.5℃/min.
となるようにし、
伝熱凝固計算によって算出されるスラブの軸心温度が700℃になってから500℃に至るまでの範囲(500℃以上700℃以下の範囲)において、
鋳造後に測定されたスラブの内部割れ長さLまたは鋳造条件を基に求められた鋳造後のスラブの内部割れ長さLに基づいて、伝熱凝固計算によって算出されるスラブの軸心冷却速度CR(℃/min.)が以下を満たすように制御することを特徴とする高張力鋼のスラブの冷却方法。
スラブの内部割れ長さLが10mm以下のとき、CR≦4.1℃/min.とし、
スラブの内部割れ長さLが10mm超え30mm以下のとき、CR≦1.2℃/min.とし、
スラブの内部割れ長さLが30mm超え40mm以下のとき、CR≦0.7℃/min.とし、
スラブの内部割れ長さLが40mm超え100mmのとき、CR≦0.4℃/min.とする。
炭素(C)含有率:0.16mass%以上0.35mass%以下
ケイ素(Si)含有率:1.0mass%以上2.5mass%以下
マンガン(Mn)含有率:1.2mass%以上4.0mass%以下
本実施形態が対象とする高張力鋼は、上記の元素を添加されていることにより、780MPa以上の引張強度を有する。スラブのサイズは、例えば、厚さ230mm以上270mm以下、幅800mm以上1,400mm以下のサイズである。
スラブXを冷却した際、スラブXに内部応力が発生する。内部応力の大きさを、スラブXの幅方向、厚さ方向および長手方向で比較したところ、長手方向の応力が最も大きいことがわかった。そして、この長手方向の応力が、置き割れを引き起こす主な応力であることがわかった。
スラブの冷却速度は、CASTEM(伝熱凝固プログラム)を用いて計算した。ここでは、上記表1に示す成分のスラブサンプルの各種試験により採取した物性値(比熱、凝固潜熱、熱伝導度、密度等)に基づき、下記表2に示す連続鋳造機の冷却条件(鋳造速度、比水量)と鋳造後の冷却条件を元に、境界条件として、鋳片表面とミスト、大気、ロールそれぞれの熱伝達係数を温度の関数として与えた。また、連続鋳造機の最終ロールを通過した直後のスラブ表面温度および、鋳造後の冷却時におけるスラブ表面温度を測定し、計算によって得られた表面温度履歴が実測値に合うようにスラブ表面の熱伝達係数を補正した。連続鋳造機の最終ロールとは、鋳型直下から鋳造方向に連なるロール群の内、鋳型から最も鋳造距離が大きい位置にあるロールである。また、後述する内部応力の解析において、スラブの幅方向中央、厚さ方向中央、且つ長手方向中央の位置で内部応力が最大となったことから、冷却速度として、スラブの幅方向中央、厚さ方向中央、且つ長手方向中央の位置の冷却速度を採用した。以下において、スラブの幅方向中央、厚さ方向中央、且つ長手方向中央位置の冷却速度を、「スラブの軸心冷却速度」又は単に「軸心冷却速度」と称することがある。
汎用ソフトウェアのABAQUSを用いて、数値解析により、内部応力を求めた。このとき、上述したCASTEMで計算された鋳片の温度分布を与え、その温度と冷却速度に応じた物性値(応力-歪関係、線膨張係数)を逐次与えることで、鋳片内の応力分布を計算した。この解析により、内部応力は、スラブの幅方向、厚さ方向、および長手方向のうち長手方向で最大となることがわかった。また、スラブの幅方向、厚さ方向、および長手方向の内部応力はそれぞれ幅方向中央、厚さ方向中央、および長手方向中央で最大となることがわかった。
表3に示す鋳造速度および比水量でスラブを鋳造した。鋳片引き抜き開始時は、0.2m/min.で、約100秒間、鋳片を引き抜き抜いた。その後、0.12m/min.2の加速度で目標鋳造速度まで順次増速させた。鋳造後、スラブを所定の長さに切断し、室温で、表3に示すスラブ冷却状態になるように準備した。具体的には、スラブが連続鋳造機の最終ロールを通過した時から50分以内に、表3に示すスラブ冷却状態になるようにした。その後、表3に示すスラブ冷却状態でスラブを冷却した。表3に示すスラブ冷却状態は、スラブの軸心温度が700℃から500℃に至るまでの冷却状態である。その後、スラブを室温になるまで冷却させてから、スラブに置き割れが発生しているか(スラブ折損の有無)を確認した。
表3に示す鋼種A~Cは、表1および表2に示す鋼種A~Cである。
表3に示す「スラブ冷却状態」を、以下に説明する。
・No.1の「水冷」
スラブをマンボ(枕木)に載せ、スプレーで、12時間、上方および下方からスラブに散水した。
・No.2とNo.5の「1枚空冷」
1枚のスラブをマンボ(枕木)に載せ、室温で96時間放置した。
・No.3の「8枚段積み(最上段)」
図6に示すように、8枚のスラブを積み、室温で96時間放置した。以下において、複数枚のスラブを積むことを「段積み」と称することがある。段積みは、8枚のスラブの幅方向および長手方向の中心が、同一鉛直線状に配置されるようにした。8枚のスラブのうち最上段のスラブに置き割れが発生したかを確認した。
・No.4の「8枚段積み(上から2枚目)」
No.3と同様に、8枚のスラブを積み、室温で96時間放置した。8枚のスラブのうち上から2枚目のスラブに置き割れが発生したかを確認した。
鋳造後、所定の長さに切断したスラブを、長手方向に沿って切断した。切断面からサンプルを採取し、サンプルに酸を塗布した。酸により腐食した部分の長さを測定した。この長さを内部割れ長さLとした。腐食した部分が複数存在するときは、腐食した部分の長さが最も長いものを、内部割れ長さLとした。デンドライト樹間でミクロ偏析が大きい部分と内部割れを見分けるのが困難であるため、本方法での検出下限は10mmである。そのため、10mm未満の長さの割れは全て10mmとして取り扱った。
No.1では、内部割れ長さLが10mm、スラブ軸心冷却速度が4.14℃/min.のとき、置き割れが発生しなかった。図7に示す曲線から、スラブ軸心冷却速度が4.14℃/min.以下で置き割れが発生しない最大内部割れ長さLは10mmである。このことから、内部割れ長さLが10mm以下のとき、スラブ軸心冷却速度を4.1℃/min.以下にすることにより、置き割れが発生しないといえる。
スラブの内部割れ長さLが10mm以下のとき、
CR≦4.1℃/min.とする。
スラブの内部割れ長さLが10mm超え30mm以下のとき、
CR≦1.2℃/min. とする。
スラブの内部割れ長さLが30mm超え40mm以下のとき、
CR≦0.7℃/min. とする。
スラブの内部割れ長さLが40mm超え100mmのとき、
CR≦0.4℃/min. とする。
CR≦2.5℃/min.
また、例えば、「内部割れ長さL」として推測された長さが存在する場合、その長さを推測するために用いた鋳造条件と同じ鋳造条件でスラブを鋳造するとき、そのスラブの「内部割れ長さL」を、すでに存在する推測された長さとしてもよい。例えば、「内部割れ長さL」の実測値が存在する場合、その実測値が得られた鋳造条件と同じ鋳造条件でスラブを鋳造するとき、そのスラブの「内部割れ長さL」を上記実測値としてもよい。
Claims (1)
- 炭素含有率が0.16mass%以上0.35mass%以下、ケイ素含有率が1.0mass%以上2.5mass%以下、マンガン含有率が1.2mass%以上4.0mass%以下の高張力鋼のスラブを鋳造した後、切断し、冷却するに際し、
鋳造後、伝熱凝固計算によって算出されるスラブの軸心温度が700℃を超える範囲において、
伝熱凝固計算によって算出されるスラブの軸心冷却速度CR(℃/min.)が
CR≦2.5℃/min.
となるようにし、
伝熱凝固計算によって算出されるスラブの軸心温度が700℃になってから500℃に至るまでの範囲において、
鋳造後に測定されたスラブの内部割れ長さLまたは鋳造条件を基に求められた鋳造後のスラブの内部割れ長さLに基づいて、伝熱凝固計算によって算出されるスラブの軸心冷却速度CR(℃/min.)が以下を満たすように制御することを特徴とする高張力鋼のスラブの冷却方法。
スラブの内部割れ長さLが10mm以下のとき、
CR≦4.1℃/min.とし、
スラブの内部割れ長さLが10mm超え30mm以下のとき、
CR≦1.2℃/min.とし、
スラブの内部割れ長さLが30mm超え40mm以下のとき、
CR≦0.7℃/min.とし、
スラブの内部割れ長さLが40mm超え100mmのとき、
CR≦0.4℃/min.とする
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JP2019167560A (ja) | 2018-03-22 | 2019-10-03 | 日本製鉄株式会社 | 高強度鋼板用スラブの冷却方法、高強度熱延鋼板の製造方法、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法及び高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 |
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