JP7260267B2 - ワイヤ放電加工用電極線 - Google Patents

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Description

本発明は、精密な金型製造用途に用いられるワイヤ放電加工用電極線に関する。
半導体リードフレーム等の精密な金型製造に用いられるワイヤ放電加工機(WEDM)の電極線には、ワイヤ線径30~100μmレベルの細い電極線が使用される。このような細径電極線(一般的には線径100μm以下)としては、金型の寸法精度の関係から電極線に張力を負荷した状態で使用されるため、高強度の電極線、例えば、芯線としてピアノ線のような鋼線を用いた電極線等が用いられる。また、芯線の外周には、電気伝導性および放電加工性を良好にする銅(Cu)と亜鉛(Zn)とのブラス組成の合金被覆層、あるいは、1層目のCuと2層目のZnとからなる2層構造の被覆層などが設けられ、これらは製品化されて市場で使用されている。
このような放電加工用電極線に関しては、前述の電極線以外にも種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、炭素(C)を重量比で0.6%以上含有する鋼線(芯線)の外周に銅と亜鉛とからなる被覆層を形成し、断面直径が0.1mm以下になるまで伸線した後に、温間で引張り力を付与することにより、十分な引張り強さと放電加工性能とを兼ね備えた放電加工用電極線を製造する方法が開示されている。
また、特許文献2には、導電性と放電性とを両立させて加工速度を向上させる放電加工用電極線が開示されている。この場合、電極線は、芯線としての鋼線と、該鋼線を被覆する銅亜鉛合金からなるめっき層とから構成され、めっき層は、その平均亜鉛濃度が60~75質量%のγ相の単層であり、導電度が10~20%(IACS)であり、線径が30~200μmである。また、この特許文献2には、電極線の表面粗度(Rz)を調整した試験から、RzJISで表現される表面粗さを1.25μm以下とすることが被加工物の表面粗さを更に抑えることができる旨が記載されている。
更に、特許文献3には、高電圧や高張力下で使用可能な小径のワイヤ放電加工用電極線が開示されている。具体的には、このワイヤ放電加工用電極線は、0.78~1.05重量%の炭素を含む鋼線と、その鋼線の表面に形成されたアルミニウムめっき層とを有し、線径が30~100μmであり、引張り強さが2000~4,000MPaに設定されている。
また,特許文献4には、ステンレス鋼線を芯線としたワイヤ放電加工用電極線の開発例が開示されている。具体的には、ステンレス鋼線を芯線とし、その周囲に薄いニッケル(Ni)を被覆し、次いで、銅(Cu)及び亜鉛(Zn)を順次被覆し、その後の処理により銅と亜鉛とを合金化した引張り強さ1900~3200MPaの電極線を成すようにしたものである。
特開2005-138236号公報 特開2015-71221号公報 特開2013-139073号公報 特開2011-251394号公報
半導体を始めとする電子機器分野に代表されるリードフレーム用金型などの生産においては、金型の生産性あるいは金型部品の高精度化対応から、ワイヤ放電加工用電極線の性能向上への期待が高い。すなわち、金型加工の生産性から、放電特性に優れ、高速加工が可能な電極線が望まれている状況にある。十分な強度でかつ高速加工が可能な電極線は、前述の半導体分野に限らず、多方面の産業で使用される金型の製造分野において広く求められている。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、放電特性に優れ、特に高速加工が可能なワイヤ放電加工用電極線を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、鋼線からなる芯線と、CuおよびZnを有して前記芯線の外周に被覆される被覆層とを備えるワイヤ放電加工用電極線であって、前記被覆層の外表面に多孔質構造の微細凹凸が形成されることを特徴とする。
本発明においては、鋼線(例えば炭素鋼線,もしくはステンレス鋼線)からなる芯線の外周面上に、電気伝導性に優れた銅層と、放電性能に優れた銅亜鉛合金層を形成し得る亜鉛層との2層構造を有するとともに、この2層構造の被覆層の外表面(最表層)、すなわち、銅亜鉛合金被覆層の外表面(最表層)に、冷却効果も兼ね備えて高速加工に寄与し得る多孔質構造の微細凹凸が形成されるため、優れた放電特性を実現できるとともに、加工速度を従来電極線に比べて向上させることができる。なお、本明細書中において「微細凹凸」とは、電子顕微鏡により観察(二次電子像で倍率2000~10000)したときに微細な凹凸に加えて微細なポーラス構造として確認できる形態の凹凸(例えば、深さが0.5ミクロン以下)を言うものとする。
本発明によれば、電気伝導性に優れた銅層と、放電性能に優れた銅亜鉛合金層を形成し得る亜鉛層との2層構造を有するとともに、被覆層の外表面(最表層)に、冷却効果も兼ね備えて高速加工に寄与し得る多孔質構造の微細凹凸が形成されるため、放電特性に優れ、特に高速加工が可能なワイヤ放電加工用電極線が得られる。
本発明の一実施の形態に係るワイヤ放電加工用電極線の断面図である。 図1のワイヤ放電加工用電極線の被覆層の組成を示す図である。 多孔質構造の微細凹凸を有さない電極線の外表面の電子顕微鏡写真である。 多孔質構造の微細凹凸を有する図1の電極線の外表面の電子顕微鏡写真である。 図1に係る本発明のワイヤ放電加工用電極線及びそれ以外の比較例の電極線のそれぞれの特性を示す表である。 図1の電極線の真直性を説明するための概略図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1には、本実施の形態に係るワイヤ放電加工用電極線10が断面図で示される。図示のように、この放電加工用電極線10は、例えば炭素鋼線を芯線1とし、該芯線1の外周にCuおよびZnからなる被覆層(合金被覆層)5を有する電極線である。被覆層5は、図2に示すように、表層(外表面)側に向かってCu濃度が低くなるとともにZn濃度が高くなる組成を成す。具体的には、被覆層5は、Cuの濃度ピークを有する銅ピーク層2と、Znの濃度ピークを有する亜鉛ピーク層3とを有する。また、電極線10の最表層(亜鉛ピーク層3の外表面)には多孔質構造(ポーラス構造)の微細凹凸4(図4参照)が形成される。なお,本発明の特徴である最表面の多孔質構造の微細凹凸は,被覆層5の最表面に形成されるものであることから、芯線1の材質に影響を受けるものではなく、また、芯線1の周囲に形成された被覆層5の特性を示すものであることから、炭素を含む鋼線はもとより、ステンレス鋼線、更には銅を主成分とする非鉄合金(Cu―Zn合金など)の外層に形成させることも可能である。
したがって、電極線10の芯線1となる材質としては、鉄(Fe)をベースとして炭素(C)やマンガン(Mn)元素を含む線(鉄線あるいは鋼線と呼ばれる線)や、鉄(Fe)-クロム(Cr)ニッケル(Ni)を主成分としたステンレス鋼(鋼線)がその主な対象となる。
前述したように、本発明の電極線10の表面側に形成される被覆層5は、導体の役目としての銅ピーク層2と、放電性能のための銅亜鉛合金層(亜鉛ピーク層)3とから成る。放電加工においては電極線10そのものに電流を流す必要から、固体抵抗の高い炭素鋼線あるいはステンレス鋼線では電流によるジュール熱による加熱と放電熱による強度低下とに起因して断線に至るため、導体として銅めっきが採用される。一方、亜鉛は放電特性向上のための元素であり、被覆層5の外層に位置される層を銅と亜鉛との合金層として存在させることで、被加工物間との放電性を高めることができる。
また、電極線10の最表層の微細な凹凸層(ポーラス構造)4は、放電性及び放電OFF時の電極線10の冷却を高めることから、熱による電極線10の断線防止に有利である。これは、従来品に比較して高速加工の実現を狙ったものである。この表面への凹凸(ポーラス構造)4の形成は,最終伸線加工後のヒートストレッチ処理の加熱により、被覆層5である銅と亜鉛の拡散に伴う相変態を利用することで生成可能である。また、電極線10には自動結線性が求められていることから、この真直加工もヒートストレッチ法による矯正方法とすることで真っ直ぐな電極線(ワイヤ)とすることもできる。
市場に流通している放電加工用電極線(例えば黄銅線やタングステン線)の線径は、黄銅線において最小70μm、大きいもので300μm、一方、タングステン線では細いもので20μm、太いものでは100μmレベルである。本発明は,精密金型加工分野、例えばリードフレーム用金型製作において用いられる線径30~70μm径の電極線の性能向上を目標としている。しかしながら、本発明品の効果は、市場において使用されている放電加工機用の電極線の線径範囲(30~300μm)おいて有効であることは言うまでもない。また、被覆層5の厚みは、被覆層5を含む電極線10の全断面積に対する被覆層5の断面積の比(%)において最大40%としている。これは、被覆層5の厚みを40%以上にすると、強度が低下(芯線強度を1とすると芯線と被覆層を含む強度が概ね0.5以下)し、放電加工中のワイヤ張力を下げる必要があるため、金型の寸法精度が悪くなることによる。
前述した特許文献3においては、アルミニウムを利用することで伸線加工プロセスにおいて割れによる表面凹凸生成を行なう旨が記載されているが、この特許文献3には多数の凹凸と記載されているのみで、特許文献3の図面においてもその凹凸レベルが不明である。本発明者等は、電極線10の最表層表面に微細なるポーラス構造の凹凸4を形成する試験を行ない、適正な表層亜鉛濃度と適正な熱処理を行なうことで、均一なポーラス構造の凹凸4を形成可能で、かつ、放電加工性能が格段に向上することを確認したものである。
次に、線材径5.5φ、炭素量0.82%の高炭素鋼線材を用いて最終線径(電極線径)70μmに仕上げる製造例をもって本発明を更に詳細に述べる。
炭素量0.82%を含む線材5.5φを一次伸線においてΦ2.4mmまで伸線加工し、パテンティングを行なった後、連続して酸洗、造膜処理(リン酸亜鉛皮膜)を行ない、さらに、この工程の繰り返しを行なう一連のプロセスにより、Φ0.32mmのパテンティング上がりの線(めっき前の素線となる)を製造した。なお、ここまでのプロセスは一般的なピアノ線や硬鋼線の中間製造方法として良く知られているところである。
引き続いて、電極線10の被覆層5を構成する銅と亜鉛金属の形成は、電気めっき法による方法を選択した。第1層となる銅めっき、第2層となる亜鉛を電気めっき法にて形成した。このときの銅及び亜鉛金属のめっき厚みは、浴槽への浸漬時間(分)と通電する電流(アンペア:A)とにより容易に調整可能である。また、使用するめっき浴は、銅めっきにおいてはピロリン酸銅浴を使用し、亜鉛めっき浴には硫酸亜鉛浴を用いて所定の厚みに仕上げる。
さらに引き続いて行なう電極線10の強度を得るための伸線加工は、湿式伸線機により、22枚のダイスを用いて連続引抜き加工を行なった。ここで用いる引抜き加工用伸線ダイスにはダイヤモンドダイスを使用し、伸線ダイスと引抜き素材との摩擦軽減のための潤滑剤(油)には、油脂成分を添加した水溶性溶液(潤滑液)を用いた。
伸線後の表面は、ダイスとワイヤ(めっき表面)表面との摩擦を下げる目的で使用される潤滑液の粘度により若干の凹凸は異なるものの、通常は図3に示すような平滑な表面形態となる。伸線加工された表面を拡大観察可能な拡大鏡(例えば走査型電子顕微鏡)による数千倍程度の観察では平滑な表面を呈する。
なお、前述した特許文献2には、電極線表面の粗さを0.13~1.25μmに調整して放電加工を行なった事例が開示されており、電極線表面粗さを小さくすることで被加工物の加工面粗さを小さくできる旨が記載されている。しかしながら、この特許文献2には、表面形態の詳細についての記述がなく、その形態が不明である。本発明品は、銅めっきおよび亜鉛めっきの両者を鋼線(コア線)表面に形成させ、伸線加工後(この場合は70μm)に伸線したワイヤを加熱拡散処理することにより、電極線のコア素地側に銅成分の高い(銅ピーク層2)層を、表層側に亜鉛成分の高い層(亜鉛ピーク層3)を形成させたものである。
つまり、この被覆層5は、銅を主体とする通電性のための導体層2を素地線側に設け、放電性を高める銅亜鉛合金層3を被覆層5の表面側に設けたものである。被覆層5全体の平均亜鉛濃度は、亜鉛濃度50%を超えると伸線加工性に乏しいβ相の出現もあることから、50%以下に設定されるが、一方で、放電特性の向上のためには被覆層5全体の亜鉛濃度が30%以上である必要があり、したがって、本実施の形態では、被覆層5全体の亜鉛濃度が好ましくは35~45%に設定される。
次に、電極線10の被覆層5の外表面にポーラス構造の凹凸4を形成するための形成手段、および、放電性能に影響する効果について説明する。
ワイヤ放電加工における放電スパークの発生は電極線10の表面からであるため、電極線10の表面形態の調質(形態)は重要である。本発明者等は、放電加工での加工速度への影響(効果)につき試験を行なった。この試験材の詳細が図5に示される。本発明者等は、最終線径に伸線加工で仕上げた70μmのワイヤを350~500℃の温度条件下でかつ不活性ガス中において5秒~20秒の加熱時間で熱処理することにより、銅および亜鉛の拡散と亜鉛金属の蒸発も相まって、ワイヤ表面に微細なポーラス構造の凹凸4を生成できることを見出した。温度が低いと、表層には均一な微細ポーラスが形成されない。また、500℃を超え、かつ、20秒以上の加熱を行なうと、表面の酸化もあって均一なポーラス構造にはなり得ないことを確認した。
本発明品の効果を確かめるために製作した電極線の詳細が図5に示される。図5中、Cは素材の炭素量(%)であり、A式およびB式は以下の通りである。
A式:R≦[Cu] ≦R+(R-R)/2(図5中、○は適合、×は不適合)
B式:R+(R-R)/2≦[Zn]≦R(図5中、○は適合、×は不適合)
ここで、R(μm)は芯線1の半径、R(μm)は被覆層5を含めた電極線10全体の半径、[Cu]は、電極線10の中心Oから被覆層5(銅ピーク層2)のCuの濃度ピークまでの径方向距離(μm)、[Zn]は、電極線10の中心Oから被覆層5(亜鉛ピーク層3)のZnの濃度ピークまでの径方向距離(μm)であり、A式およびB式はそれぞれ被覆層5のCuの濃度ピークおよびZnの濃度ピークの径方向位置を表わす。
また、図5中、真直性(mm)は、長さ1mの電極線を垂直に垂下させたときの山から山までの最大開き(mm)であり、具体的には、図6に示すように、電極線10を1m垂下させたときに電極線10を垂下する起点Pから垂直に下した仮想線Vに対して垂直な方向に沿う電極線10の山10aと山10bとの間の水平方向距離Lが40mm以下となっている。
図5に示される発明品(発明例)は、前述のプロセスで製造された線径0.32mm(パテンティング上がりの径)に被覆層5となる銅及び亜鉛めっきを行ない、引き続いて所定のサイズである70μmまで連続伸線加工を行ない、さらに、温度400℃の加熱炉において8秒間加熱処理を行なって製造された。
図5に示されるNo.1~No,7のめっき厚み(被覆層5の厚み)は、伸線加工上がりでの厚みを示している。線径70μmにおいて最小2.1μmから最大8.3μmとしたものである。すなわち、伸線加工(縮径)に伴うめっき厚みを予め考慮しためっき厚みを線径0.32mm段階で銅及び亜鉛金属を付着させたものを伸線加工して製造したものである。
また、最終の熱処理(拡散)を終えた試験材(No.1~No,7)の被覆層5は、図1に示すような銅ピーク層2と亜鉛ピーク層3とをもつ形態であり、被覆層5全体の亜鉛濃度は図5に示される濃度である。めっき金属の濃度分析(EPMA)により組成分析を行なって前述したA式およびB式を満足したものである。
また、図5中の凹凸(微細ポーラス構造の凹凸4)の有無(「凹凸あり」;「凹凸なし」)において、「凹凸あり」は、図4に示される形態を有するものである。電極線10の表面を電子顕微鏡の加速電圧5KVにおいて2000~10000倍の倍率で観察したときに微細なポーラス構造の凹凸としてとらえることができる(図4は5000倍で撮影)。このような表面形態を図5においては「凹凸あり」と表記している。
試験No8およびNo.9は、比較材(比較例)として用いた電極線である。電極線の芯線となる炭素鋼線(Rod)の炭素量は開発品(発明例)に用いた素材と同じである。めっきの組成は銅と亜鉛のブラス組成(概ねCu70亜鉛30)であり、市場において多用されている電極線と類似のものである。試験No.10は、0.32φに銅と亜鉛の2層めっきを行ない、伸線加工を行なうことで製造した電極線である。したがって、組成の形態を示すA式及びB式は満足するが、表層への凹凸が生成されていない形態(図3に示される形態)となる。
各試験材の放電加工における加工速度の評価結果が図5中の加工速度欄に示される。評価はSKD11、加工油は鉱油、電極線への付与張力は0.8~1N、ワイヤ走行速度は7m/minとし、放電加工機のSV(サーボ電圧)70とする条件で、いわゆる放電加工の荒加工条件における加工速度を評価した。
荒加工における加工速度に関して、試験No.1~No.8において加工速度が最も優れていたものは、めっき厚みが4.2μmを超え、かつ、表面に微細ポーラス構造の凹凸4が形成されたものであり、比較材(比較例)に比べて早い速度が得られた。一方、被覆層5の最表面に凹凸4を生成したにもかかわらずめっき厚みが薄い比較材(No.7)は、他に比較して遅い結果が得られた。これは、放電加工により電極線表層でスパークに伴う消耗(クレータ状に消耗)が起きることから、薄いめっき層のNo.7の加工速度が遅かったと考えるべきである。
図5中に示される真直性(Lmm)は、自動結線性を可能とするための特性値である。No.1~No.10のいずれも40mm以下で仕上げたものである。自動結線性の評価は、彼加工物に事前に空けたスタート穴(3.8mm)へのワイヤの通線作業を50回実行した。その結果、No.4およびNo.6の真直性(L:38mm/1m)でも自動結線は可能であり,ワイヤの不通過はなかった。
本実施の形態の電極線10は、線の最表層に微細ポーラス構造を形成させ、かつ、被覆層5の組成(コア線側に銅のピーク,表層側に亜鉛のピーク)としたものである。本実施の形態の電極線10は、市場で多用されている試験No.8およびNo.9と比較して加工速度に優れ、かつ、放電加工での自動結線性も高い。電極線10の表層に形成せしめたポーラス構造の凹凸4は、電極線10の表面積を増大させることから、放電加工中のワイヤ冷却性能が向上し、かつ、スパークの発生源ともなり得る。そのため、従来の電極線と比べて高速加工が可能な電極線と言える。したがって、放電加工を利用する金型加工産業にとって有益な電極線となり得る。
以上説明したように、本実施の形態のワイヤ放電加工用電極線10は、鋼線からなる芯線1と、芯線1の外周に設けられる銅および亜鉛からなる被覆層5とを有し、被覆層5は、表層側に向かって銅濃度が低く亜鉛濃度が高い組成を成すことを特徴とする。また、最外層の表面(外表面)には放電加工中のスパーク発生(核)となる微細なポーラス構造による凹凸4が形成されている。つまり、本実施の形態のワイヤ放電加工用電極線10は、電気伝導性に優れた銅濃度が高い銅ピーク層2と放電性能に優れた銅亜鉛合金層(亜鉛ピーク層3)との2層構造を有し、かつ、電極線の最表層(放電加工の核生成源(面))の微細なポーラス構造4による冷却効果も相まって放電特性に優れることから、加工速度を従来の電極線と比べて向上させることができる。
1 芯線
2 銅ピーク層
3 亜鉛ピーク層
4 多孔質構造の微細凹凸
5 被覆層
10 ワイヤ放電加工用電極線

Claims (5)

  1. 鋼線からなる芯線と、CuおよびZnを有して前記芯線の外周に被覆される被覆層とを備えるワイヤ放電加工用電極線であって、前記被覆層の外表面の金属合金が微細凹凸を成し、前記微細凹凸は、電子顕微鏡により二次電子像において倍率2000~10000倍で観察したときに微細な多孔質構造として確認できる形態を成し、凹部の深さが0.5ミクロン以下であることを特徴とするワイヤ放電加工用電極線。
  2. 鋼線からなる芯線と、CuおよびZnを有して前記芯線の外周に被覆される被覆層とを備えるワイヤ放電加工用電極線であって、前記被覆層の外表面の金属合金が微細凹凸を成し、前記微細凹凸は、前記芯線の外周に前記被覆層が被覆されて成る電極線を350~500℃の温度条件下でかつ不活性ガス中において5秒~20秒の加熱時間で熱処理することによって生成されることを特徴とするワイヤ放電加工用電極線。
  3. 前記芯線は、炭素を含む炭素鋼線、もしくはステンレス鋼線を芯とした線であり、前記被覆層を含めた線径が300μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤ放電加工用電極線。
  4. 前記被覆層は、その外表面に向かってCu濃度が低くなるとともにZn濃度が高くなる組成を成すことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のワイヤ放電加工用電極線。
  5. 前記芯線の半径をRμm、前記被覆層を含めた電極線全体の半径をRμmとすると、前記被覆層のCuの濃度ピークおよびZnの濃度ピークの径方向位置は、
    ≦[Cu]≦R+(R-R)/2≦[Zn]≦R
    を満たし、
    [Cu]は、電極線の中心から前記被覆層のCuの濃度ピークまでの径方向距離(μm)であり、[Zn]は、電極線の中心から被覆層のZnの濃度ピークまでの径方向距離(μm)であることを特徴とする請求項に記載のワイヤ放電加工用電極線。
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