JP7259791B2 - シリコンウェーハへのクラスターイオン注入による白傷欠陥低減効果の評価方法及びエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法 - Google Patents
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Description
Cs+I→Ci ・・・(1)
そして、シリコンウェーハに注入された炭素(格子位置の炭素Cs及び格子間炭素Ci)は、格子間シリコン(I)又はシリコンウェーハに含まれる格子間酸素(Oi)とも結合して、CiCs欠陥及びCiOi欠陥を生成する(下記反応式(2A)及び反応式(2B)を参照)。
Ci+Cs→CiCs ・・・(2A)
Ci+Oi→CiOi ・・・(2B)
CiCs欠陥及びCiOi欠陥を形成するために消費されなかった格子間シリコン(I)は、格子間シリコン(I)のクラスターとして生成される。強力なゲッタリングサイトを形成するためには、上記反応式(1)では格子間シリコン(I)が消費しつくさないよう、格子間シリコン(I)の密度を増加すればよい。そして、格子間シリコン(I)の密度を増加させるためには、格子間シリコン(I)が増大するようなクラスターイオン注入条件を用いればよいと考えられる。
カソードルミネッセンス法又はフォトルミネッセンス法により前記改質層の発光スペクトルを求める工程と、
前記発光スペクトルにおける、TO線に起因する強度ITOに対するW線に起因する強度IWの強度比(IW/ITO)を求める工程と、
前記改質層上にシリコンエピタキシャル層を形成して得られるエピタキシャルシリコンウェーハから作製される固体撮像素子において観察される白傷欠陥への、前記クラスターイオン注入による低減効果を、前記強度比に基づき評価する工程と、
を含むことを特徴とするシリコンウェーハへのクラスターイオン注入による白傷欠陥低減効果の評価方法。
前記予備工程により決定した前記注入条件を用いて、前記第1のシリコンウェーハと同種の第2のシリコンウェーハの表面から前記クラスターイオンを注入して、前記第2のシリコンウェーハの表面に前記クラスターイオンの前記構成元素が固溶した第2改質層を形成する工程と、
前記第2改質層上にシリコンエピタキシャル層を形成する工程と、を含むエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法であって、
前記予備工程は、
(i)前記第1のシリコンウェーハの表面から前記クラスターイオンを注入して、前記第1のシリコンウェーハの表面に前記クラスターイオンの前記構成元素が固溶した第1改質層を形成する工程と、
(ii)カソードルミネッセンス法又はフォトルミネッセンス法により前記第1改質層の発光スペクトルを求める工程と、
(iii)前記発光スペクトルにおける、TO線に起因する強度ITOに対するW線に起因する強度IWの強度比(IW/ITO)を求める工程と、
(iv)前記強度ITOに対する前記強度IWの強度比(IW/ITO)が9.0以上であることを確認する工程と、を含む
ことを特徴とするエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
以下、各構成及び各工程の詳細を順次説明する。
まず、シリコンウェーハ100としては、シリコン単結晶からなる単結晶シリコンウェーハを用いることができる。単結晶シリコンウェーハは、チョクラルスキー法(CZ法)や浮遊帯域溶融法(FZ法)により育成された単結晶シリコンインゴットをワイヤーソー等でスライスしたいわゆるバルクのウェーハを使用することができる。また、シリコンウェーハ100に炭素及び/又は窒素が添加されもよいし、シリコンウェーハ100に任意のドーパントが所定濃度添加された、いわゆるn+型もしくはp+型、又はn-型もしくはp-型の基板を用いることも可能である。シリコンウェーハ100の酸素濃度も一般的な濃度範囲(4×1017~22×1017atoms/cm3(ASTM F121-1979))とすることができる。シリコンウェーハ100の表面にシリコンエピタキシャル層が設けられていてもよい。なお、シリコンウェーハの酸素濃度を4×1017atoms/cm3以下に低減することが好ましく、3×1017atoms/cm3以下に低減することも好ましい。上述のとおりCiOi欠陥の生成を抑制し、結果的に格子間シリコン(I)の密度を増大できるためである。
このシリコンウェーハ100に改質層110を形成する。改質層110は、炭素を構成元素に含むクラスターイオンの注入により、シリコンウェーハ100の表層部に形成される。図2の模式図を参照する。シリコンウェーハ100にクラスターイオンが注入されると、シリコンウェーハ表面近傍において格子位置にあったシリコン原子の多数が弾き飛ばされて格子位置が空孔になるとともに、弾き飛ばされたシリコンは格子間シリコンになる。また、注入した炭素原子は、格子位置シリコンを置換して格子位置の炭素(Cs)になるか、格子間炭素(Ci)になる。格子間炭素(Ci)は、さらに格子位置の炭素(Cs)と結合してCiCs欠陥を生成したり、格子間酸素(Oi)と結合してCiOi欠陥等を生成したりする。これら欠陥形成時に消費されずに残った格子間シリコン(I)が、シリコンエピタキシャル層形成時の熱処理を経て強力なゲッタリングとなるため、白傷欠陥低減にも寄与すると考えられる。
ここで、本明細書における「クラスターイオン」とは、電子衝撃法により、ガス状分子に電子を衝突させてガス状分子の結合を解離させることで種々の原子数の原子集合体とし、フラグメントを起こさせて当該原子集合体をイオン化させ、イオン化された種々の原子数の原子集合体の質量分離を行って、特定の質量数のイオン化された原子集合体を抽出して得られる。すなわち、クラスターイオンは、原子が複数集合して塊となったクラスターに正電荷又は負電荷を与え、イオン化したものであり、炭素イオンなどの単原子イオンや、一酸化炭素イオンなどの単分子イオンとは明確に区別される。クラスターイオンの構成原子数は、通常5個~100個程度である。このような原理を用いたクラスターイオン注入装置として、例えば日新イオン機器株式会社製のCLARIS(登録商標)を用いることができる。改質層110は、注入されるクラスターイオンのイオン形態及び加速電圧などに応じても異なるが、その厚さ範囲はシリコンウェーハ100の表面から、おおよそ50~300nm程度である。
クラスター注入条件として、クラスターイオンの構成元素、クラスターイオンのドーズ量、クラスターサイズ、クラスターイオンの加速電圧、ビーム電流値等を挙げることができる。
つぎに、クラスターイオン注入により形成された改質層110の発光スペクトルを、カソードルミネッセンス法(以下、「CL法」)又はフォトルミネッセンス法(以下、「PL法」)により求める。
続けて、改質層上にシリコンエピタキシャル層を形成して得られるエピタキシャルシリコンウェーハから作製される固体撮像素子において観察される白傷欠陥への、クラスターイオン注入による低減効果を、先に求めた強度比(IW/ITO)に基づき評価する。強度比(IW/ITO)の値が大きければ、クラスターイオン注入による白傷欠陥低減効果が有効であると評価することができる。反対に、強度比(IW/ITO)の値が小さければ、白傷欠陥低減効果は不十分であると評価することができる。特に、強度比(IW/ITO)が9.0以上であれば、白傷欠陥低減効果が十分であると評価することができる。後述の実施例において実験条件及び実験結果の詳細を述べるとおり、本発明者は、強度比(IW/ITO)が9.0以上であることにより白傷欠陥を十分に低減できることを実験的に確認したためである。
本発明によるエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法は、第1のシリコンウェーハを用いて、炭素を構成元素に含むクラスターイオンの注入条件を決定する予備工程と、予備工程により決定した注入条件を用いて、第1のシリコンウェーハと同種の第2のシリコンウェーハの表面からクラスターイオンを注入して、第2のシリコンウェーハの表面に前記クラスターイオンの構成元素が固溶した第2改質層を形成する工程と、第2改質層上にシリコンエピタキシャル層を形成する工程と、を少なくとも含む。
CZ単結晶から得たn-型シリコンウェーハ(直径:300mm、厚み:725μm、ドーパント種類:リン、抵抗率:10Ω・cm)を用意して、試料1に係るシリコンウェーハとした。なお、試料1のシリコンウェーハには、後述の試料2~6と異なり、クラスターイオンの注入を行わなかった。
試料1で用いたものと同じシリコンウェーハを用いて、クラスターイオン発生装置(日新イオン機器社製、型番:CLARIS)を用いて、2-メチルペンタンから生成したC3H6のクラスターイオンを、加速電圧80keV/Clusterの照射条件でシリコンウェーハの表面に照射した。なお、クラスターイオンを照射した際のドーズ量は、炭素原子数に換算して5.0×1014atoms/cm2である。また、クラスターイオンのビーム電流値を850μAとした。こうして、試料2に係るシリコンウェーハを作製した。
クラスターイオン注入時のビーム電流値を1700μAとした以外は、試料2と同じ条件で試料3に係るクラスターイオン注入シリコンウェーハを作製した。
クラスターイオンのドーズ量を、炭素原子数に換算して1.0×1015atoms/cm2とした以外は、試料2と同じ条件で試料4にかかるクラスターイオン注入シリコンウェーハを作製した。
クラスターイオン注入時のビーム電流値を1700μAとした以外は、試料4と同じ条件で実験例5にかかるクラスターイオン注入シリコンウェーハを作製した。
試料1で用いたものと同じシリコンウェーハを用意し、さらに、これを枚葉式エピタキシャル成長装置(アプライドマテリアルズ社)内に搬送し、シリコンエピタキシャル層(厚さ:2.0μm、ドーパント種類:リン、抵抗率:30Ω・cm)をエピタキシャル成長させた。次いで、このシリコンエピタキシャル層に試料5で用いたのと同条件でクラスターイオン注入を行った。
試料1~6のそれぞれに対して、アズインプラの状態でカソードルミネッセンス法(使用装置:堀場製作所社製カソードルミネッセンス分光装置、加速電圧:15kV、測定温度:30K)を用いて発光スペクトルを求めた。代表例として、試料1及び試料2の発光スペクトルを図3に示す。
試料1~6に係るシリコンウェーハのそれぞれに対し、シリコンエピタキシャル層(厚さ:5.0μm、ドーパント種類:リン、抵抗率:30Ω・cm)を形成してエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。さらに、各エピタキシャルウェーハを用いて同条件で固体撮像素子を形成し、DCS(Dark current spectroscopy)法を用いてその白傷欠陥を評価した。白傷欠陥の評価結果を図4(B)に示す。
110 改質層
Claims (4)
- シリコンウェーハの表面から炭素を構成元素に含むクラスターイオンを注入して、前記シリコンウェーハの表面に前記クラスターイオンの前記構成元素が固溶した改質層を形成する工程と、
カソードルミネッセンス法又はフォトルミネッセンス法により前記改質層の発光スペクトルを求める工程と、
前記発光スペクトルにおける、TO線に起因する強度ITOに対するW線に起因する強度IWの強度比(IW/ITO)を求める工程と、
前記改質層上にシリコンエピタキシャル層を形成して得られるエピタキシャルシリコンウェーハから作製される固体撮像素子において観察される白傷欠陥への、前記クラスターイオン注入による低減効果を、前記強度比に基づき評価する工程と、
を含むことを特徴とするシリコンウェーハへのクラスターイオン注入による白傷欠陥低減効果の評価方法。 - 前記発光スペクトルの評価工程において、前記強度ITOに対する前記強度IWの強度比(IW/ITO)が9.0以上である場合に前記白傷欠陥低減効果が十分であると評価する、請求項1に記載の固体撮像素子の白傷欠陥低減効果の評価方法。
- 第1のシリコンウェーハを用いて、炭素を構成元素に含むクラスターイオンの注入条件を決定する予備工程と、
前記予備工程により決定した前記注入条件を用いて、前記第1のシリコンウェーハと同種の第2のシリコンウェーハの表面から前記クラスターイオンを注入して、前記第2のシリコンウェーハの表面に前記クラスターイオンの前記構成元素が固溶した第2改質層を形成する工程と、
前記第2改質層上にシリコンエピタキシャル層を形成する工程と、を含むエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法であって、
前記予備工程は、
(i)前記第1のシリコンウェーハの表面から前記クラスターイオンを注入して、前記第1のシリコンウェーハの表面に前記クラスターイオンの前記構成元素が固溶した第1改質層を形成する工程と、
(ii)カソードルミネッセンス法又はフォトルミネッセンス法により前記第1改質層の発光スペクトルを求める工程と、
(iii)前記発光スペクトルにおける、TO線に起因する強度ITOに対するW線に起因する強度IWの強度比(IW/ITO)を求める工程と、
(iv)前記強度ITOに対する前記強度IWの強度比(IW/ITO)が9.0以上であることを確認する工程と、を含む
ことを特徴とするエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。 - 前記クラスターイオンの注入条件は、前記クラスターイオンのドーズ量及びビーム電流値を含む、請求項3に記載のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
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