以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
(1)基板処理装置の構成
まず、本開示の一実施形態に係る基板処理装置の構成について説明する。
ここでは、基板処理装置の一例として、半導体装置の製造工程の一工程で使用される基板処理装置であって、一度に複数枚の基板に対して成膜処理等を行うバッチ式の縦型装置である基板処理装置について説明する。
本実施形態に係る基板処理装置は、処理炉1を備えて構成されている。
図1は、処理炉1の構成例を示す立断面図である。
処理炉1は、中心線が垂直になる様に縦向きに配置され、筐体(図示せず)により固定的に支持された反応管としての縦型のプロセスチューブ2を有している。プロセスチューブ2は、インナチューブ3とアウタチューブ4とを有している。インナチューブ3およびアウタチューブ4は、例えば石英(SiO2)または炭化珪素(SiC)、石英や炭化珪素の複合材料等の耐熱性の高い材料によって、それぞれ一体に成形されている。
インナチューブ3は、上端が閉塞され下端が開放された円筒形状であり、その筒内に基板保持手段(基板保持具)としてのボート5が収納される。ボート5には、基板としてのウエハ6が水平姿勢で多段に積層されている。このようなボート5が収納されるインナチューブ3内には、ウエハ6を収納して処理する処理室7が画成される。インナチューブ3の下端開口は、ウエハ6を保持したボート5を挿脱する為の炉口を構成している。したがって、インナチューブ3の内径は、ウエハ6を保持したボート5の最大外径よりも大きくなるように設定されている。
アウタチューブ4は、上端が閉塞され下端が開口された円筒形状であり、内径がインナチューブ3よりも大きく、該インナチューブ3の外側を囲むよう同心に配置される。アウタチューブ4の下端部は、マニホールド8のフランジ9にOリング(図示せず)を介して取付けられ、Oリングにより気密に封止される。
インナチューブ3の下端部は、マニホールド8の内周面に形成された円板状のリング部11上に載置されている。マニホールド8には、インナチューブ3およびアウタチューブ4についての保守点検作業や清掃作業のため、インナチューブ3およびアウタチューブ4が着脱自在に取付けられている。さらに、マニホールド8が筐体(図示せず)に支持されることにより、プロセスチューブ2は垂直に据付けられた状態になっている。
なお、上記に於いては、インナチューブ3の内部に画成される空間を処理室7としているが、以下では、アウタチューブ4内に画成される空間を処理室7と呼ぶ場合もある。
マニホールド8の側壁の一部には、処理室7の雰囲気を排気する排気管12が接続されている。マニホールド8と排気管12との接続部には、処理室7の雰囲気を排気する排気口が形成されている。排気管12内は、排気口を介してインナチューブ3とアウタチューブ4との間に形成された隙間からなる排気路47(後述)に連通している。なお、排気路47の横断面形状は略円形リング状になっている。これにより、後述するインナチューブ3に形成された排気孔13の上端から下端まで均一に排気することができる。すなわち、ボート5に載置された複数枚のウエハ6全てから均一に排気することができる。
排気管12には、上流側から順に、圧力センサ14、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ15、真空排気装置としての真空ポンプ16が設けられている。真空ポンプ16は、処理室7の圧力が所定の圧力(真空度)となる様真空排気し得るように構成されている。圧力センサ14およびAPCバルブ15には、コントローラ17が電気的に接続されている。コントローラ17は、処理室7内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、圧力センサ14により検出された圧力に基づいてAPCバルブ15の開度を制御するように構成されている。
主に、排気管12、圧力センサ14、APCバルブ15により、本実施形態に係る排気ユニット(排気系)が構成される。また、排気ユニットには真空ポンプ16を含めてもよい。また、排気管12には、排気ガス中の反応副生成物や未反応の原料ガス等を補足するトラップ装置や、排気ガス中に含まれる腐食成分や有毒成分等を除外する除外装置が接続されている場合がある。この場合、トラップ装置や除外装置を排気ユニットに含めてもよい。
マニホールド8には、マニホールド8の下端開口を閉塞するシールキャップ18が垂直下方から当接される。シールキャップ18は、アウタチューブ4の外径と同等以上の外径を有する円盤形状となっており、プロセスチューブ2の外部に垂直に設置されたボートエレベータ19(後述)によって水平姿勢で垂直方向に昇降される。
シールキャップ18上には、ウエハ6を保持するボート5が垂直に立脚されて支持されている。ボート5は、上下で一対の端板21と、端板21間に垂直に設けられた複数本の保持部材22とを有している。端板21および保持部材22は、例えば石英(SiO2)または炭化珪素(SiC)、石英や炭化珪素の複合材料等の耐熱性材料からなる。各保持部材22には、多数条の保持溝23が長手方向に等間隔に形成されている。ウエハ6の円周縁が複数本の保持部材22に於ける同一段の保持溝23内にそれぞれ挿入されることにより、複数枚のウエハ6が水平姿勢かつ互いに中心を揃えた状態で多段に積層されて保持
される。
ボート5とシールキャップ18との間には、上下で一対の補助端板24が複数本の補助保持部材25によって支持されている。各補助保持部材25には、多数条の保持溝26が形成されている。保持溝26には、例えば石英(SiO2)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料からなる円板形状の複数枚の断熱板27が、水平姿勢で多段に装填される。断熱板27によって、後述するヒータユニット28からの熱が前記マニホールド8側に伝わり難くなっている。また、ボート5に載置される複数枚のウエハ6の下側での温度低下を抑制できるようになっている。
シールキャップ18の処理室7と反対側には、ボート5を回転させる回転機構29が設けられている。回転機構29の回転軸31は、シールキャップ18を貫通してボート5を下方から支持している。回転機構29により回転軸31を回転させることで、処理室7内にてウエハ6を回転させることができる。
また、シールキャップ18は、搬送手段(搬送機構)としてのボートエレベータ19によって垂直方向に昇降されるように構成されており、ボートエレベータ19によってボート5を処理室7に搬送することが可能となっている。
アウタチューブ4の外部には、プロセスチューブ2内を全体に亘って均一または所定の温度分布に加熱する加熱手段(加熱機構)としてのヒータユニット28が、アウタチューブ4を囲繞するように設けられている。ヒータユニット28は、基板処理装置の筐体(図示せず)に支持されることにより、垂直に据付けられた状態となっており、例えばカーボンヒータ等の抵抗加熱ヒータとして構成されている。
プロセスチューブ2内には、温度検出器としての温度センサ32が設置されている。主に、ヒータユニット28、温度センサ32により、本実施形態に係る加熱ユニット(加熱系)が構成される。
インナチューブ3の側壁(後述する排気孔13とは180°反対側の位置)には、チャンネル形状の予備室33が、インナチューブ3の側壁から該インナチューブ3の径方向外向きに突出して垂直方向に長く延在するように形成されている。また、予備室33の内壁は処理室7の内壁の一部を形成している。
予備室33の内部には、予備室33の内壁(すなわち処理室7の内壁)に沿うように、予備室33の下部から上部に沿ってウエハ6の積層方向に延在し、処理室7内にガスを供給するノズル34,35,36,37が設けられている。すなわち、ノズル34,35,36,37は、ウエハ6が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。
ノズル34,35,36,37は、L字型のロングノズルとして構成されており、ノズル34,35,36,37の水平部はマニホールド8を貫通し、ノズル34,35,36,37の垂直部はウエハ配列領域の下端から上端に向って立ち上がるように設けられている。なお、便宜上、図1には1本のノズル34を記載しているが、実際には4本のノズル34,35,36,37が設けられている。
また、ノズル34,35,36,37の側面には、ガスを供給する多数のガス供給孔38,39,40,41がそれぞれ設けられている。ガス供給孔38,39,40,41は、下部から上部に亘ってそれぞれ同一、または大きさに傾斜を付けた開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。
マニホールド8を貫通したノズル34,35,36,37の水平部の端部は、プロセスチューブ2の外部で、ガス供給ラインとしてのガス供給管43,44,45,46とそれぞれ接続されている。
上記した様に、本実施形態に於けるガス供給の方法は、予備室33に配置されたノズル34,35,36,37を介してガスを搬送し、ガス供給孔38,39,40,41からウエハ6の近傍より処理室7にガスを噴出させている。
インナチューブ3の側壁であって、ノズル34,35,36,37に対向した位置、すなわち予備室33とは180°反対側の位置には、例えばスリット状の貫通孔である排気孔13が垂直方向に細長く開設されている。インナチューブ3とアウタチューブ4との間の隙間により排気路47が形成され、排気路47は排気孔13を介して処理室7と連通している。したがって、ガス供給孔38,39,40,41から処理室7に供給されたガスは、排気孔13を介して排気路47内へと流れた後、排気口を介して排気管12内に流れ、処理室7外へと排出される。
このとき、ガス供給孔38,39,40,41から処理室7のウエハ6の近傍に供給されたガスは、水平方向、すなわちウエハ6の表面と平行な方向に向って流れた後、排気孔13を介して排気路47へと流れる。つまり、処理室7に於けるガスの主たる流れは水平方向、すなわちウエハ6の表面と平行な方向となる。このような構成とすることで、各ウエハ6に対して均一にガスを供給でき、各ウエハ6に形成される薄膜の膜厚を均一にすることができる。なお、排気孔13はスリット状の貫通孔に限らず、複数個の孔により形成されていてもよい。
次に、図2を参照して本実施形態に係るガス供給系について説明する。
図2は、ガス供給系を示す概略構成図である。
ガス供給管43には、上流側から順に、流量制御装置(流量制御部)としてのMFC(マスフローコントローラ)48および開閉弁であるバルブ49がそれぞれ設けられており、例えば不活性ガスである窒素(N2)ガスがガス供給管43およびノズル34を通って処理室7へ供給される。主に、ノズル34、ガス供給管43、MFC48、バルブ49により第1の不活性ガス供給系が構成される。
ガス供給管46には、上流側から順に、流量制御装置(流量制御部)としてのMFC(マスフローコントローラ)51および開閉弁であるバルブ52がそれぞれ設けられており、例えば不活性ガスである窒素(N2)ガスがガス供給管46およびノズル37を通って処理室7へ供給される。主に、ノズル37、ガス供給管46、MFC51、バルブ52により第2の不活性ガス供給系が構成される。
不活性ガス供給系は、第1の不活性ガス供給系と第2の不活性ガス供給系のいずれかまたは両方で構成される。ウエハ6への処理によって2つを使い分けてもよいが、第1の不活性ガス供給系と、第2の不活性ガス供給系の両方を用いることで、ウエハ6に均一な処理を施すことができる。また、ノズル34とノズル37は、他のノズルを挾むように配置することが好ましい。このような配置とすることで、ウエハ6への処理均一性を向上させることができる。
ガス供給管44には、上流側から順に、反応ガス活性化装置53、流量制御装置(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)54および開閉弁であるバルブ55が設けられている。ガス供給管44の先端部には、ノズル35が接続されている。
ガス供給管44の上流側は、図示しない反応ガス供給源が反応ガス活性化装置53に接続されている。主に、ノズル35、ガス供給管44、反応ガス活性化装置53、MFC54、バルブ55により反応ガス供給系が構成される。なお、反応ガス活性化装置53としては、オゾナイザやプラズマ生成装置、予備加熱装置等が挙げられる。
ガス供給管45には、気化システム(気化部)であり、液体原料を気化して原料ガスとしての気化ガスを生成する気化器56が設けられており、気化器56の下流側には、上流側から順に開閉弁であるバルブ57、ガスフィルタ58が設けられている。ガス供給管45の先端部には、ノズル36が接続されている。バルブ57を開けることにより、気化器56内にて生成された気化ガスがノズル36を介して処理室7に供給される。主に、ノズル36、ガス供給管45、気化器56、バルブ57、ガスフィルタ58により原料ガス供給系(気化ガス供給系)が構成される。なお、後述するキャリアガス供給系、液体原料供給系も原料ガス供給系に含めてもよい。
ガス供給管45の気化器56よりも上流側には、上流側から順に液体原料タンク59、液体流量制御装置(LMFC)61、開閉弁であるバルブ62が設けられている。気化器56内への液体原料の供給量、すなわち気化器56内で気化され処理室7へ供給される気化ガスの供給流量は、LMFC61によって制御される。主に、ガス供給管45、液体原料タンク59、LMFC61、バルブ62により液体原料供給系が構成される。
また、気化器56には、第1キャリアガスとしての不活性ガスがガス供給管85から、第2キャリアガスとしての不活性ガスがガス供給管91からそれぞれ供給される。ガス供給管85には、上流側から順にMFC86とバルブ87が設けられている。気化器56で生成された気化ガスをキャリアガスで希釈することにより、ボート5に搭載されるウエハ6間の膜厚均一性等、ウエハ6間に於けるウエハ6の処理の均一性を調整することができる。主に、ガス供給管85、MFC86、バルブ87により、第1キャリアガス供給系が構成され、ガス供給管91、MFC92、バルブ93、加熱機構94により、第2キャリアガス供給系が構成される。
ガス供給管45からは、原料ガスが、LMFC61、気化器56、ガスフィルタ58、ノズル36等を介して処理室7へ供給される。原料ガスとしては、液体原料を気化した気化ガスを用いることができる。例えば、常温常圧に於いては液体である液体原料は、液体原料タンク59内に貯留される。
なお、気化器56の詳細については後述する。
次に、図3を参照して本実施形態に係る制御部(制御手段)であるコントローラ17と各構成の接続について説明する。
図3は、コントローラ17を説明する概略構成図である。
コントローラ17は、CPU(Central Processing Unit)75、RAM(Random Access Memory)76、記憶装置77、I/Oポート78を具備するコンピュータとして構成されている。RAM76、記憶装置77、I/Oポート78は、内部バス79を介してCPU75とデータ交換可能な様に構成されている。コントローラ17には、ディスプレイ等の表示装置80や、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置81が接続されている。
記憶装置77は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置77内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が読出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程に於ける各手順をコントローラ17に実行させ、所定の結果を得ることが出来る様に組合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書に於いて、プログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM76は、CPU75によって読出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
I/Oポート78は、MFC48,51,54,92、バルブ49,52,55,57,62,93、圧力センサ14,114、APCバルブ15、真空ポンプ16、ボートエレベータ19、ヒータユニット28、回転機構29、温度センサ32、活性化装置53、気化器56、LMFC61、加熱機構94等に接続されている。
CPU75は、記憶装置77から制御プログラムを読出して実行すると共に、入出力装置81からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置77からプロセスレシピを読出す。そして、CPU75は、読出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC48,51,54による各種ガスの流量調整動作、LMFC61による液体原料の流量制御、バルブ49,52,55,57,62の開閉操作、APCバルブ15の開閉動作およびAPCバルブ15による圧力センサ14に基づく圧力調整動作、温度センサ32に基づくヒータユニット28の温度調整動作、真空ポンプ16の起動および停止、回転機構29によるボート5の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ19によるボート5の昇降動作、加熱機構94による第2キャリアガス(不活性ガス)の加熱調整動作等を制御する。
なお、コントローラ17は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、USBメモリ等の半導体メモリ)82を用意し、外部記憶装置82を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ17を構成することができる。コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置82を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置82を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。記憶装置77や外部記憶装置82は、コンピュータで読取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書に於いて記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置77単体のみを含む場合、外部記憶装置82単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
(2)基板処理工程の手順
次に、上述した基板処理装置の処理炉1を用いて半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する基板処理工程を行う場合のシーケンス例について、図4を参照して説明する。以下の説明に於いて、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ17により制御される。
なお、本明細書に於いて、「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、すなわち表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合がある。また、本明細書に於いて「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、即ち積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
したがって、本明細書に於いて「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書に於いて「ウエハ上に所定の層(または膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(または膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(または膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
また、本明細書に於いて「基板」という言葉を用いた場合も「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明に於いて、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
以下、基板処理工程について説明する。
STEP:01 先ず、複数枚のウエハ6がボート5に装填(ウエハチャージ)される。
STEP:02 次に、該ボート5がボートエレベータ19により持上げられ、処理室7内に搬入(ボートロード)される。この状態では、シールキャップ18はマニホールド8の下端をシールした状態となる。
STEP:03 ボート5の搬入後、処理室7が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ16によって真空排気される。この際、処理室7の圧力は、圧力センサ14で測定され、測定された圧力に基づきAPCバルブ15にフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室7が所望の温度となるようにヒータユニット28によって加熱される。この際、処理室7が所望の温度分布となるように、温度センサ32が検出した温度情報に基づきヒータユニット28への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、回転機構29により、ボート5が回転されることで、ウエハ6が回転される。
なお、真空ポンプ16の作動、ヒータユニット28による処理室7の加熱、回転機構29によるボート5およびウエハ6の回転は、少なくともウエハ6に対する処理が終了する迄の間は継続して行われる。
次に、原料ガスとして金属含有ガス、反応ガスとして酸化剤を処理室7に供給することにより膜を形成する膜形成工程を行う。膜形成工程では、STEP:04~STEP:08の4つのステップを順次実行する。
STEP:04 先ず、ガス供給管45のバルブ57を開放し、気化器56、ガスフィルタ58を介してガス供給管45内に原料ガスを流す。ガス供給管45内を流れる原料ガスは、LMFC61により流量調整され、気化器56により気化された状態で、ノズル36のガス供給孔40から処理室7に供給され、排気管12から排気される。
また、原料ガスの供給と並行して、バルブ49を開き、ガス供給管43、ノズル34、ガス供給孔38からN2等の不活性ガスを流すと共に、バルブ52を開き、ガス供給管46、ノズル37、ガス供給孔41からN2等の不活性ガスを流す。
このとき、APCバルブ15の開度を適正に調整して処理室7の圧力を、例えば100~500Paの範囲内の圧力とする。LMFC61で制御する原料ガスの供給流量は、例えば0.045~5.0g/分の範囲内の流量とする。また、ウエハ6を原料ガスに曝す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば10~300秒間の範囲内の時間とする。また、このときのヒータユニット28の温度は、ウエハ6の温度が例えば150~300℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。原料ガスの供給により、ウエハ6上に、例えば、金属含有層が形成される。
STEP:05 原料ガスの供給後、バルブ57を閉じ、処理室7への原料ガスの供給を停止する。このとき、排気管12のAPCバルブ15は開いたままとし、真空ポンプ16により処理室7を真空排気し、処理室7に残留する未反応、若しくは金属含有層形成に寄与した後の原料ガスを処理室7から排気する。
このとき、バルブ49,52を開いたままとし、不活性ガスとしてのN2ガスの処理室7への供給を維持する。N2ガスはパージガスとして作用し、処理室7に残留する未反応、若しくは金属含有層形成に寄与した後の原料ガスを処理室7から排気する効果を更に高めることができる。
また、処理室7に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室7を完全にパージしなくてもよい。処理室7に残留するガスが微量であれば後述するSTEP:06に於いて悪影響が生じることはない。このとき、処理室7に供給するN2ガスの流量は大流量とする必要はなく、例えば、アウタチューブ4(若しくは処理室7)の容積と同程度の量を供給することで、STEP:06に於いて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室7を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、N2ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
STEP:06 処理室7の残留ガスを除去した後、ガス供給管44のバルブ55を開くことで、活性化装置53によって活性化された反応ガスが、MFC54により流量調整され、ノズル35のガス供給孔39から処理室7に供給され、排気管12から排気される。また、反応ガスの供給と並行して、バルブ49を開き、ガス供給管43、ノズル34、ガス供給孔38からN2等の不活性ガスを流すと共に、バルブ52を開き、ガス供給管46、ノズル37、ガス供給孔41からN2等の不活性ガスを流す。
反応ガスを流すときは、APCバルブ15の開度を適正に調整し、処理室7の圧力を、例えば100~500Paの範囲内の圧力とする。MFC54で制御する反応ガスの供給流量は、例えば10~90SLMの範囲内の流量とする。また、反応ガスをウエハ6に曝す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば10~300秒間の範囲内の時間とする。また、ヒータユニット28の温度は、STEP:04と同様、ウエハ6の温度が150~300℃の範囲内の温度に設定されている。反応ガスの供給により、STEP:04でウエハ6上に形成された金属含有層が、例えば、酸化されることにより、金属酸化層が形成される。
STEP:07 金属酸化層の形成後、バルブ55を閉じて処理室7への反応ガスの供給を停止する。このとき、排気管12のAPCバルブ15は開いたままとし、真空ポンプ16により処理室7を真空排気し、処理室7に残留する未反応、若しくは酸化に寄与した後の反応ガスを処理室7から排気する。
このとき、バルブ49,52を開いたままとし、不活性ガスとしてのN2ガスの処理室7内への供給を維持する。N2ガスはパージガスとして作用し、処理室7に残留する未反応若しくは金属酸化層形成に寄与した後の反応ガスを処理室7から排気する効果を更に高めることができる。
また、処理室7に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室7を完全にパージしなくてもよい。処理室7に残留するガスが微量であれば再度STEP:04を行う場合に悪影響が生じることはない。このとき、処理室7に供給するN2ガスの流量は大流量とする必要はなく、例えば、アウタチューブ4(若しくは処理室7)の容積と同程度の量を供給することで、STEP:04に於いて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室7を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、N2ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
STEP:08 上述したSTEP:04~STEP:07を1サイクルとし、このサイクルが所定数だけ行われたかどうかが判断される。このサイクルが少なくとも1サイクル行われることで、ウエハ6上に所定膜厚の金属酸化膜を形成することができる。なお、上記したサイクルは複数回繰返すのが好ましく、サイクルが複数回行われることで、ウエハ6上に所定膜厚の金属酸化膜を形成することができる。
STEP:09 金属酸化膜の形成後、バルブ49,52を開き、処理室7にN2ガスを流す。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより処理室7が不活性ガスでパージされ、処理室7に残留するガスが処理室7から除去される。
STEP:10 処理室7の雰囲気が不活性ガスに置換された後、処理室7の圧力が大気圧(常圧)に復帰される(大気圧復帰)。
STEP:11 その後、ボートエレベータ19によりシールキャップ18が下降され、マニホールド8の下端が開口されると共に、処理済みのウエハ6がボート5に保持された状態でマニホールド8の下端からプロセスチューブ2の外部に搬出される(ボートアンロード)。
STEP:12 最後に、処理済みのウエハ6がボート5より取出され(ウエハディスチャージ)、基板処理を終了する。
(3)気化器56の詳細
次に、図5乃至図10を用いて本実施形態に係る気化器56の詳細について説明する。
(気化室)
図5は、気化器56を説明する概略構成図である。
気化システムとしての気化器56は、既述のように、液体原料を気化して原料ガスとしての気化ガスを生成するものである。そのために、気化器56は、気化ガスを生成するための空間として機能する気化室65を備えている。
気化室65は、一端部と他端部とを有する管状の部材によって形成されている。管状の一端部は、図中における下方側に配され、詳細を後述する第2流体供給部Bが設けられている。また、管状の他端部は、図中における上方側に配され、詳細を後述する第1流体供給部Aが設けられている。
気化室65の内壁には、供給されるガスの滞留や乱流等を抑制するようにテーパ部73が、少なくとの気化室65の下方側、すなわち第2流体供給部Bがある一端部の側に設けられている。
また、気化室65の内壁の表面は、液体原料の付着抑制のため、さらに詳しくは気化室65で気化されなかった液体原料が付着して滞在することを抑制するために、表面処理がされている。具体的には、表面処理として、例えば、電界複合研磨等の精密研磨が施されているものとする。電界複合研磨によれば、導電性のある金属であればナノレベルの超平滑面にすることが可能である。したがって、電解複合研磨等により表面粗さを小さくすれば、内壁の表面に液体原料が付着しても、液の転がり性が良いのでその場に留まらずに、壁面を移動しながら気化することになり、その結果として液体原料の付着を確実に抑制し得るようになる。ただし、表面処理は、精密研磨に限定されることはなく、例えば、フッ素樹脂コーティング等のコーティング処理が施されていてもよい。その場合であっても、液体原料の付着の抑制効果が得られる。
気化室65の上下方向の中央部近傍には、排出孔70が設けられている。排出孔70は、気化室65内で生成された気化ガスの出口に相当するもので、その気化ガス(原料ガス)を処理室7に供給するための流路の一部を構成するものである。排出孔70は、気化室65の側壁に複数設けられていてもよい。その場合に、各排出孔70は、気化室65の側壁の周方向に均等に配されていることが好ましい。
気化室65の外周側には、気化室65を囲うように、気化室65の壁面の温度を調整するためのヒータHが設けられている。このヒータHにより、気化室65の壁面からの熱伝達効率の向上が図れる。したがって、気化室65の壁面に付着するミストが効率よく気化されるので、その壁面の残渣を低減することができる。
(第1流体供給部)
気化室65の他端部に設けられる第1流体供給部Aは、当該他端部で気化室65に接続され、その気化室65の一端部に向けて第1キャリアガス(不活性ガス)88と液体原料63が混合された混合流体とを供給するものである。つまり、第1流体供給部Aは、液体原料63と第1キャリアガス88が混合されたアトマイジングミストとしての混合流体(以後、単にミストともいう。)を、気化室65に噴射するように構成されている。
図6乃至図9は、第1流体供給部Aの構成要素を示す説明図である。
図6に示すように、第1流体供給部Aは、他端部で気化室65に面するノズルホルダ95を有している。
ノズルホルダ95には、液体原料63を気化室65に噴霧(アトマイジング)する噴霧ノズルとして、液体原料63を微粒化する二流体噴霧方式の噴霧ノズル96が設けられている。噴霧ノズル96は円筒状であり、その内部にはガス供給管45(図3参照)から液体原料63が供給される噴霧流路97が形成されている。
また、ノズルホルダ95には、所定の体積を有する例えば倒立円錐台形状のキャリアガス室98が噴霧ノズル96を囲繞するように形成されており、そのキャリアガス室98を垂直に貫通するように噴霧ノズル96が配されている。キャリアガス室98には、ガス供給管85(図3参照)と連通するキャリアガス供給孔99が形成されており、そのキャリアガス供給孔99を介してガス供給管85から第1キャリアガス88が供給されるようになっている。
キャリアガス室98の下面には、噴霧ノズル96の先端部と平行であり、キャリアガス室98と気化室65とを連通させる第1噴出口としてのアトマイザー噴射口(以後、単に噴射口ともいう。)101が形成されている。噴射口101は、噴霧ノズル96の周囲に形成されている。
このような構成を用いて液体原料63を気化させる際には、ガス供給管45からLMFC61(図3参照)により流量調整された液体原料63が噴霧流路97に供給され、ガス供給管85からMFC86(図3参照)により流量調整された第1キャリアガス88が、キャリアガス供給孔99を介してキャリアガス室98に供給される。このとき、噴射口101の内径がキャリアガス供給孔99の内径よりも小さくなっていると、キャリアガス室98は高圧となる。
そして、高圧となったキャリアガス室98の第1キャリアガス88は、噴射口101を通過する際にさらに圧縮されて加速され、気化室65に噴出される。また、噴霧流路97に供給された液体原料63も、噴霧流路97の先端より気化室65に噴出される。このとき、噴霧流路97の出口部分(液出口)、噴射口101の出口部分では、液体原料63と第1キャリアガス88との間で大きな速度差が生じている。よって、高速の第1キャリアガス88により液体原料63が引きちぎられることで、液体原料63が分裂して微粒化し、微粒化した液体原料63と第1キャリアガス88とが混合されたミストが生成される。そして、ミストは、高速、高圧な気液二層流103として気化室65に噴霧される。
ところで、図7に示すように、噴霧ノズル96の周囲には、噴射口101よりもさらに外周側に、複数のパージ孔121が形成されている。これらのパージ孔121は、パージガス(例えば、不活性ガス)を噴霧ノズル96の周囲に供給するためのもので、後述するノズルプレートカバー122(以後、単にカバーということがある。)との組み合わせによりミスト付着除去効果をもたらすようになっている。
図8は、噴霧ノズル96の周囲に取り付けられる、保護部材としてのカバー122の構成を示す図である。図例は、カバー122を取り付けた場合の、噴霧ノズル96とパージ孔121付近の構成を示している。また、このカバー122は、噴霧ノズル96の先端部で発生するミストのノズルホルダ95に流入する領域がノズル断面積分を除く環状口123に制限されるよう構成されている。この環状口123は、ミストの付着状況により小さくすることも可能であるが、気化性能の制約上、噴射口101の開口以上に構成される。さらに、この環状口123からパージガスを気化室65に供給する構成のため、噴霧ノズル96の先端部および円筒部に、ミスト付着が発生せず、ミスト付着除去効果が向上する。よって、噴射口101の閉塞が発生しない。
つまり、第1流体供給部Aは、図9に示すように、噴霧ノズル96と、この噴霧ノズル96の周囲に複数のパージ孔121が設けられたノズルホルダ95と、このノズルホルダ95を覆うよう取り付けられるカバー122と、を少なくとも含むように構成されている。なお、図中に示す点線は、第1キャリアガスの流路を模式的に示したものである。
これにより、噴射口101に供給される不活性ガスが、そのまま環状口123を介して気化室65に供給されることにより、液体原料63のミスト化を行う。複数の孔121から供給される不活性ガスがカバー122内に構成されるパージ空間(以後、プレートカバー内空間ともいう)としての空間124を通過した後、液体原料63のミスト化を行う不活性ガスと同様に環状口123から気化室65内に流れるよう構成される。このような構成により、噴射口101から供給される不活性ガスと複数の孔121から供給される不活性ガスによる2つの異なるガス流が、この環状口123と空間124の境界付近で合流し、環状口123の付近に存在することが可能になる。
ここで、第1流体供給部Aにおける第1キャリアガス88としての不活性ガスの流れについて、さらに詳しく説明する。先ず、不活性ガスがキャリアガス室98に充填される。そして、加圧された不活性ガスが、噴射口101およびパージ孔121を通過する。そして、図9中の点線で示すように、噴射口101より噴き出した不活性ガスは、パージ空間124、環状口123を通過し、噴霧ノズル96の先端へ到達して液体原料63をアトマイジングし、ミスト化する。この際、噴射口101から噴き出した不活性ガスは、その速度低下を妨げられることなく(高速のまま)、液体原料63のミスト化に寄与することになる。
一方、図9中の点線で示すように、パージ孔121を通過した不活性ガスは、パージ空間124を介してカバー122に衝突する。これにより、速度を落とした状態で不活性ガスの向きが噴霧ノズル96方向へ変更され、パージ空間124でその周囲に沿ったガス流となり環状口123近傍で噴射口101から噴き出した不活性ガスと合流され気化室65に供給される。このガス流は噴射口101およびその円周部直下でミスト付着保護層を形成させかつ環状口123より流入されるミストを環状口123より排出するミスト付着除去相乗効果を生み出すことができる。
このように、本実施形態に係る第1流体供給部Aによれば、第1実施形態における噴射口101に加え、パージ孔121からも不活性ガスを供給することにより、ノズル96先端部でアトマイジングされたミストは、カバー122の環状口123周囲およびカバー122のテーパ面およびノズル96先端部に付着するが、噴射口101周囲およびノズル円筒部には、微量の付着に留めることができる。したがって、噴射口101の閉塞およびノズル円筒部への付着の抑制効果が得られる。
上述のように、図7乃至図9に示されるノズルプレートカバー122を用いることにより、ある程度の原料供給における効果は発揮されている。但し、今後、さらなる原料の供給量の増大が望まれ、その際、ノズルプレートカバー122への付着が問題となる可能性がある。デバイスの煩雑化や3D化による基板6によるガスの消費量が多くなるに従い、処理室7に多くの原料を供給しなければならない。
次に、図6に係る実施形態においての第1流体供給部Aの他の実施例である図11について説明する。図11は、図6に係る実施形態を改良した形態であり、図6の構成と略同じであるので、重複する構成については、以下の説明において省略することがある。このような構成を用いて液体原料63を気化させるには、図6の構成における動作と基本的には同じであるため、以下簡単に説明する。
ガス供給管45からLMFC61(図3参照)により流量調整された液体原料63が噴霧流路97に供給され、ガス供給管85からMFC86(図3参照)により流量調整された第1キャリアガス88が、キャリアガス供給孔99を介してキャリアガス室98に供給された後、噴射口101から気化室65に供給される。
このとき、噴霧流路97の出口部分(液出口)、噴射口101の出口部分では、液体原料63と第1キャリアガス88との間で大きな速度差が生じており、この高速の第1キャリアガス88が液体原料63と衝突する。これにより、液体原料63が微粒化し、微粒化した液体原料63と第1キャリアガス88とが混合されたミストが生成される。
この液体原料63と第1キャリアガス88との間で大きな速度差は、噴射口101の内径がキャリアガス供給孔99の内径よりも小さく、キャリアガス室98の容積が十分に大きく、第1キャリアガス88がキャリアガス室98に充填されて所定の高圧に達するという条件で、第1キャリアガス88が、噴射口101を通過する際さらに圧縮されて加速されるため生じる。
今後の処理室7への原料の供給量の増加に応じて、噴霧流路97に供給される液体原料63を更に増やす場合があると、上述の条件を満たしつつ、第1キャリアガス88の流量を増やすだけでなく、噴射口101の内径を大きくする必要がある。
本実施形態によれば、液体原料63の流量が多くなっても、上述の条件を満たしつつ、第1キャリアガス88の流量を大きくするとともに、噴射口101の内径を大きくすることにより、液体原料63を微粒化することができ、微粒化された液体原料63と第1キャリアガス88とが混合されたミストを効率よく生成することができる。更に、このミストに後述する第2キャリアガスを混合させることにより気化室65の残渣堆積を抑制して、気化効率の向上を図ることができる。
(第2流体供給部)
気化室65の一端部に設けられる第2流体供給部Bは、第1流体供給部Aによって気化室65の他端部から気化室65内に供給された混合流体に向けて、気化室65の一端部の側から第2キャリアガス(不活性ガス)105を供給するものである。つまり、第2流体供給部Bは、第1流体供給部Aからのミストの気化に必要な熱エネルギーを持つように加熱された不活性ガス(以後、Hot-N2ガスともいう。)である第2キャリアガス105を気化室65内に噴射して、その気化室65内でミストと第2キャリアガス105とを衝突させるように構成されている。
図10は、第2流体供給部Bの構成要素を示す説明図である。
図10に示すように、第2流体供給部Bは、一端部で気化室65内に面するように配されたBlow-UP(ブローアップ)プレート(B.UPプレート)としてのプレート部材109を有している。
プレート部材109には、第2キャリアガス105を気化室65に噴出させるための吹き出し穴(第2噴出孔)111と、第2噴出孔111に第2キャリアガス105を導入する流路となるキャリアガス導入孔106と、が設けられている。第2噴出孔111は、平面視円形状に形成されている。キャリアガス導入孔106は、第2噴出孔111を構成する内壁の接線方向に沿って配置されている。キャリアガス導入孔106は、少なくとも一つ、好ましくは複数(図例では二つ)が設けられている。図10に示すように、キャリアガス導入孔106を介して第2噴出孔111に供給された2つの第2キャリアガス105は、その流れを阻害しないように混合されている。
このように構成されたプレート部材109では、気化室65への第2キャリアガス105の噴射に際して、キャリアガス導入孔106から第2噴出孔111に向けて第2キャリアガス105が供給される。このとき、キャリアガス導入孔106が第2噴出孔111の内壁の接線方向に沿って配置されていることから、キャリアガス導入孔106が第2キャリアガス105を供給すると、第2噴出孔111では、供給された第2キャリアガス105が渦状の流れを形成することになる。図10に示すように、2つの第2キャリアガス105は、その流れを阻害しないように、寧ろ流れを促進するように混合されている。従い、複数のキャリアガス導入孔106を介して第2キャリアガス105が、第2噴出孔111を介して気化室65に噴出することにより、より大流量の第2キャリアガス105を供給することができる。
したがって、第2流体供給部Bにおけるプレート部材109からは、渦状に流れる第2キャリアガス105が噴射される。そして、その第2キャリアガス105は、気化室65内を回転しながら上昇する。このような第2キャリアガス105の流れにより、気化室65内では、第2流体供給部Bから噴射された第2キャリアガス105が、気化室65の下方側に設けられたテーパ部73の壁面に沿って上昇することになる。つまり、気化室65および第2流体供給部Bは、第2流体供給部Bが気化室65に供給する第2キャリアガス105が、その気化室65の内壁に沿って流れるように構成されているのである。
その他、第2流体供給部Bは、気化室65の内壁に沿う様に、接線方向に第2キャリアガス105が流れる管を設け、渦の流れを形成する構成であってもよい。
(気化室内でのガスの流れ)
ここで、気化器56を構成する気化室65でのガスの流れについて、さらに詳しく説明する。
上述したように、気化器56は、気化室65の他端部に第1流体供給部Aが設けられ、気化室65の一端部に第2流体供給部Bが設けられ、これら第1流体供給部Aおよび第2流体供給部Bのそれぞれがガス噴射を行うように構成されている。つまり、気化器56は、気化室65の上下対向面のそれぞれでガス噴射を行う。具体的には、第1流体供給部Aからは、液体原料63が第1キャリアガス88でミスト状にされて気化室65内に噴霧(アトマイジング)される。また、第2流体供給部Bからは、気化の補助を目的として、第1流体供給部Aからのミストの気化に必要な熱エネルギーを持つ第2キャリアガス105(Hot-N2ガス)が気化室65に噴射される。
その場合に、それぞれからのガス流が対向面側に向けた直線状であると、第1流体供給部Aから噴霧されたミストが気化室65の壁面に偏って当たり、局所的に温度が低い部分が発生し、そのために液体原料63の気化が不充分となり、気化室65内に残渣が堆積してしまうおそれがある。つまり、第1流体供給部Aからのミストに対して下方側から第2キャリアガス105(Hot-N2ガス)に向けて当てていたのでは、流れの不均衡によりミストがキャリアガス105と当たらない部分が発生し、その結果として、気化室65の下面にミストが付着して残渣堆積の要因となり得る。残渣付着領域が増加すると、気化室65での気化効率が低下して、残渣堆積の進行が加速してしまう。
このように、気化室65での気化ガスの生成に際しては、液体原料63の気化が不充分であると残渣堆積が発生し、そのために気化効率が低下してしまうおそれがある。したがって、ミストとキャリアガス105を十分に混合させてミストを気化させて気化効率の向上を図ることが望ましく、また、仮にミストが気化室65の内壁に付着してもキャリアガス105と十分混合することができるようにして、残渣堆積を抑制することが望ましい。
本実施形態に係る気化器56では、第2流体供給部Bからの第2キャリアガス105(Hot-N2ガス)が、少なくとも排出孔70に至るまでは気化室65の内壁の全面を覆うように流れるようになっている。さらに詳しくは、気化室65の下方側から噴射される第2キャリアガスは、ミストに向けた直線的なものではなく、気化室65の内壁に沿って回転しながら上昇するように流れることにより、気化室65の上方側に向かって渦状に流れる。
そのため、気化室65において、渦状の第2キャリアガス105は、第1流体供給部Aからのミストを外周側から包み込むように流れることになる。これにより、気化室65に噴霧されたミストは、気化室65の壁面に偏って当たってしまうことが抑制される。また、もし気化室65の壁面にミストが付着したとしても第2キャリアガスにより加熱されるので、残渣として気化室65の壁面に堆積する前に気化される。これらのことから、本実施形態に係る気化器56では、第2流体供給部Bからの第2キャリアガス105(Hot-N2ガス)が気化室65の内壁に沿って渦状に流れることで、従来の第2キャリアガス105の直線的な流れの場合に比べて、気化室65に残渣が堆積してしまうのを抑制でき、その結果として気化室65での気化効率の向上を図ることができる。
更に、従来の第2キャリアガス105の直線的な流れの場合に比べて、第2キャリアガスが気化室65の内壁の周方向に向けて流れるので、ミストと第2キャリアガス105とが混合した状態で気化室65に滞在する時間を、従来の第2キャリアガス105の直線的な流れの場合よりも長くすることができるので、その結果、気化室65での気化効率の向上を図ることができ、気化ガスの大流量化が可能となる。また、第2キャリアガス105の流れが気化室65の内壁に沿って気化室65の側壁の周方向に向けられるよう構成されている。よって、従来の第2キャリアガス105の直線的な流れの場合に比べて、第2キャリアガス105は、気化室65の側壁の週方向に複数設けられている排出孔70から効率よく排出され、その結果として、液体原料を気化した気化ガスを大量に排出することができる。
(4)本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
(a)本実施形態によれば、第2キャリアガス105が気化室65の内壁に沿って流れるようにすることで、気化室65での残渣堆積を抑制して、気化ガスを生成する際の気化効率の向上を図ることができる。
(b)本実施形態によれば、第2キャリアガス105が渦状に流れるようにすることで、残渣堆積の抑制および気化効率向上を確実なものすることができる。つまり、気化室65での残渣堆積を抑制して気化効率の向上を図る上で非常に有用なものとなる。
(c)本実施形態によれば、第2キャリアガス105が気化室65を回転しながら上昇するようにすることで、残渣堆積の抑制および気化効率向上を確実なものすることができる。つまり、気化室65での残渣堆積を抑制して気化効率の向上を図る上で非常に有用なものとなる。
(d)本実施形態によれば、気化室65の内壁に精密研磨やコーティング処理等の表面処理が施されているので、気化室65の内壁の表面への液体原料の付着が抑制される。したがって、気化室65での残渣堆積を抑制して気化効率の向上を図る上で非常に有用なものとなる。
(e)本実施形態によれば、第2キャリアガス105が気化室65の内壁に沿って渦状に回転しながら上昇するので、気化室65の内壁の表面への液体原料の付着があっても、第2キャリアガス105により加熱することができ、液体原料を気化することができる。したがって、気化室65の内壁の表面への液体原料の付着が抑制される。
(f)本実施形態によれば、第2キャリアガス105の流れが、気化室65の内壁に沿って気化室65の側壁の周方向に向けられるように構成されているので、少なくとも排出孔70に至るまでは、気化室65の側壁の表面全体を第2キャリアガス105により加熱することができ、液体原料を気化することができる。したがって、残渣堆積の抑制および気化効率向上を確実なものすることができる。
(g)本実施形態によれば、第2キャリアガス105の流れが、気化室65の内壁に沿って気化室65の側壁の周方向に向けられるように構成されているので排出孔70に至るまでの時間が長くなるので、液体原料と混合される時間が長くなり効率よく液体原料を気化することができる。したがって、気化ガスとしての原料ガスの大流量化に寄与できる。
(h)本実施形態によれば、第2キャリアガス105の流れが気化室65の内壁に沿って気化室65の側壁の周方向に向けられるように構成されているので、第2キャリアガス105は、気化室65の側壁の週方向に複数設けられている排出孔70から効率よく排出されることにより、液体原料を気化した気化ガスを排出することができる。したがって、気化ガスとしての原料ガスの大流量化に寄与できる。
(5)変形例等
以上、本開示の一実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、第2キャリアガス105の流れが気化室65の内壁に沿うように、第2キャリアガスの供給管を螺旋状にしてもよい。また、第2キャリアガス105の流れを回転させながら上昇させるために、第2キャリアガス105の流路を水平ではなく少し上側に傾斜させて構成するようにしてもよい。傾斜角度は、できるだけ小さく例えば10°以下、好ましくは5°以下が望ましい。これにより、第2キャリアガス105が気化室65内壁を回転しながら上昇するよう構成される。
例えば、上述の実施形態においては、液体原料63として、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ、ZrN(CH3)C2H5]4)、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ、Zr[N(C2H5)2]4)、テトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ、Zr[N(CH3)2]4)等のZr原料を用いて金属酸化膜を形成してもよい。
また、上述の実施形態に係る基板処理装置は、蒸気圧が低い原料を用いる膜種であればよく、例えば、Niアミジネート(Ni-amidinate)をガス種としてウエハ6上にニッケル膜(Ni膜)を形成する処理、Coアミジネート(Co-amidinate)をガス種としてウエハ6上にコバルト膜(Co膜)を形成する処理にも、上述の実施形態に係る基板処理装置を適用することができる。