以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
先ず、半導体装置の製造工程の一工程で使用される半導体装置の一例である、基板処理装置について説明する。尚、以下では、該基板処理装置の一例として、一度に複数枚の基板に対して成膜処理等を行うバッチ式の縦型装置である基板処理装置を使用した場合について説明する。
図1、図2は、該基板処理装置の処理炉1を示している。
該処理炉1は、中心線が垂直になる様に縦向きに配置され、筐体(図示せず)により固定的に支持された反応管としての縦型のプロセスチューブ2を有している。該プロセスチューブ2は、インナチューブ3とアウタチューブ4とを有している。前記インナチューブ3及び前記アウタチューブ4は、例えば石英(SiO2 )又は炭化珪素(SiC)、石英や炭化珪素の複合材料等耐熱性の高い材料によって、それぞれ一体に成形されている。
前記インナチューブ3は、上端が閉塞され下端が開放された円筒形状であり、該インナチューブ3内には基板保持手段(基板保持具)としてのボート5が収納され、該ボート5にはウェーハ6が水平姿勢で多段に積層されており、前記インナチューブ3にウェーハ6を収納して処理する処理室7が画成される。前記インナチューブ3の下端開口は、ウェーハ6を保持した前記ボート5を挿脱する為の炉口を構成している。従って、前記インナチューブ3の内径は、ウェーハ6を保持した前記ボート5の最大外径よりも大きくなる様に設定されている。
前記アウタチューブ4は、上端が閉塞され下端が開口された円筒形状であり、内径が前記インナチューブ3よりも大きく、該インナチューブ3の外側を囲む様同心に配置される。前記アウタチューブ4の下端部は、マニホールド8のフランジ9にOリング(図示せず)を介して取付けられ、Oリングにより気密に封止される。
又、前記インナチューブ3の下端部は、前記マニホールド8の内周面に形成された円板状のリング部11上に載置されている。前記マニホールド8には、前記インナチューブ3及び前記アウタチューブ4についての保守点検作業や清掃作業の為、前記インナチューブ3及び前記アウタチューブ4が着脱自在に取付けられている。更に、前記マニホールド8が前記筐体(図示せず)に支持されることにより、前記プロセスチューブ2は垂直に据付けられた状態になっている。
尚、上記に於いては前記インナチューブ3の内部に画成される空間を前記処理室7としているが、以下では、前記アウタチューブ4内に画成される空間を前記処理室7と呼ぶ場合もある。
前記マニホールド8の側壁の一部には、前記処理室7内の雰囲気を排気する排気管12が接続されている。前記マニホールド8と前記排気管12との接続部には、前記処理室7内の雰囲気を排気する排気口が形成されている。前記排気管12内は、排気口を介して前記インナチューブ3と前記アウタチューブ4との間に形成された隙間からなる排気路47(後述)内に連通している。尚、該排気路47の横断面形状は略円形リング状になっている。これにより、後述する前記インナチューブ3に形成された排気孔13の上端から下端迄均一に排気することができる。即ち、前記ボート5に載置された複数枚のウェーハ6全てから均一に排気することができる。
前記排気管12には、上流側から順に、圧力センサ14、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ15、真空排気装置としての真空ポンプ16が設けられている。該真空ポンプ16は、前記処理室7内の圧力が所定の圧力(真空度)となる様真空排気し得る様に構成されている。前記圧力センサ14及び前記APCバルブ15には、コントローラ17が電気的に接続されている。該コントローラ17は、前記処理室7内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となる様に、前記圧力センサ14により検出された圧力に基づいて前記APCバルブ15の開度を制御する様に構成されている。
主に、前記排気管12、前記圧力センサ14、前記APCバルブ15により、本実施例に係る排気ユニット(排気系)が構成される。又、該排気ユニットには前記真空ポンプ16を含めてもよい。又、前記排気管12には、排気ガス中の反応副生成物や未反応の原料ガス等を補足するトラップ装置や、排気ガス中に含まれる腐食成分や有毒成分等を除外する除外装置が接続されている場合がある。この場合、トラップ装置や除外装置を前記排気ユニットに含めてもよい。
前記マニホールド8には、該マニホールド8の下端開口を閉塞するシールキャップ18が垂直下方から当接される。該シールキャップ18は、前記アウタチューブ4の外径と同等以上の外径を有する円盤形状となっており、前記プロセスチューブ2の外部に垂直に設置されたボートエレベータ19(後述)によって水平姿勢で垂直方向に昇降される。
前記シールキャップ18上には、ウェーハ6を保持する前記ボート5が垂直に立脚されて支持されている。該ボート5は、上下で一対の端板21と、該端板21間に垂直に設けられた複数本の保持部材22とを有している。前記端板21及び前記保持部材22は、例えば石英(SiO2 )又は炭化珪素(SiC)、石英や炭化珪素の複合材料等の耐熱性材料からなる。各前記保持部材22には、多数条の保持溝23が長手方向に等間隔に形成されている。ウェーハ6の円周縁が複数本の前記保持部材22に於ける同一段の前記保持溝23内にそれぞれ挿入されることにより、複数枚のウェーハ6が水平姿勢且つ互いに中心を揃えた状態で多段に積層されて保持される。
又、前記ボート5と前記シールキャップ18との間には、上下で一対の補助端板24が複数本の補助保持部材25によって支持されている。各補助保持部材25には、多数条の保持溝26が形成されている。該保持溝26には、例えば石英(SI2 )や炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料からなる円板形状の複数枚の断熱板27が、水平姿勢で多段に装填される。該断熱板27によって、後述するヒータユニット28からの熱が前記マニホールド8側に伝わり難くなっている。又、前記ボート5に載置される複数枚のウェーハ6の下側での温度低下を抑制できる様になっている。
前記シールキャップ18の前記処理室7と反対側には、前記ボート5を回転させる回転機構29が設けられている。該回転機構29の回転軸31は、前記シールキャップ18を貫通して前記ボート5を下方から支持している。前記回転機構29により前記回転軸31を回転させることで、前記処理室7内にてウェーハ6を回転させることができる。
又、前記シールキャップ18は、搬送手段(搬送機構)としての前記ボートエレベータ19によって垂直方向に昇降される様に構成されており、該ボートエレベータ19によって前記ボート5を前記処理室7内外に搬送することが可能となっている。
前記アウタチューブ4の外部には、前記プロセスチューブ2内を全体に亘って均一又は所定の温度分布に加熱する加熱手段(加熱機構)としての前記ヒータユニット28が、前記アウタチューブ4を囲繞する様に設けられている。前記ヒータユニット28は、基板処理装置の筐体(図示せず)に支持されることにより、垂直に据付けられた状態となっており、例えばカーボンヒータ等の抵抗加熱ヒータとして構成されている。
前記プロセスチューブ2内には、温度検出器としての温度センサ32が設置されている。主に、前記ヒータユニット28、前記温度センサ32により、本実施例に係る加熱ユニット(加熱系)が構成される。
前記インナチューブ3の側壁(後述する前記排気孔13とは180°反対側の位置)には、チャンネル形状の予備室33が、前記インナチューブ3の側壁から該インナチューブ3の径方向外向きに突出して垂直方向に長く延在する様に形成されている。又、前記予備室33の内壁は前記処理室7の内壁の一部を形成している。
前記予備室33の内部には、該予備室33の内壁(即ち前記処理室7の内壁)に沿う様に、前記予備室33の下部から上部に沿ってウェーハ6の積層方向に延在し、前記処理室7内にガスを供給するノズル34,35,36,37が設けられている。即ち、該ノズル34,35,36,37は、ウェーハ6が配列されるウェーハ配列領域の側方の、ウェーハ配列領域を水平に取囲む領域に、ウェーハ配列領域に沿う様に設けられている。
前記ノズル34,35,36,37は、L字型のロングノズルとして構成されており、該ノズル34,35,36,37の水平部は前記マニホールド8を貫通し、前記ノズル34,35,36,37の垂直部はウェーハ配列領域の下端から上端に向って立上がる様に設けられている。尚、便宜上、図1には1本の前記ノズル34を記載しているが、実際には図2に示される様に、4本の前記ノズル34,35,36,37が設けられている。
又、該ノズル34,35,36,37の側面には、ガスを供給する多数のガス供給孔38,39,40,41がそれぞれ設けられている。該ガス供給孔38,39,40,41は、下部から上部に亘ってそれぞれ同一、又は大きさに傾斜を付けた開口面積を有し、更に同一の開口ピッチで設けられている。
前記マニホールド8を貫通した前記ノズル34,35,36,37の水平部の端部は、前記プロセスチューブ2の外部で、ガス供給ラインとしてのガス供給管43,44,45,46とそれぞれ接続されている。
上記した様に、本実施例に於けるガス供給の方法は、前記予備室33内に配置された前記ノズル34,35,36,37を介してガスを搬送し、前記ガス供給孔38,39,40,41からウェーハ6の近傍より前記処理室7内にガスを噴出させている。
前記インナチューブ3の側壁であって、前記ノズル34,35,36,37に対向した位置、即ち前記予備室33とは180°反対側の位置には、例えばスリット状の貫通孔である前記排気孔13が垂直方向に細長く開設されている。前記インナチューブ3と前記アウタチューブ4との間の隙間により前記排気路47が形成され、該排気路47は前記排気孔13を介して前記処理室7と連通している。従って、前記ガス供給孔38,39,40,41から前記処理室7内に供給されたガスは、前記排気孔13を介して前記排気路47内へと流れた後、排気口を介して前記排気管12内に流れ、前記処理室7外へと排出される。
この時、前記ガス供給孔38,39,40,41から前記処理室7内のウェーハ6の近傍に供給されたガスは、水平方向、即ちウェーハ6の表面と平行な方向に向って流れた後、前記排気孔13を介して前記排気路47へと流れる。つまり、前記処理室7内に於けるガスの主たる流れは水平方向、即ち前記ウェーハ6の表面と平行な方向となる。この様な構成とすることで、各ウェーハ6に対して均一にガスを供給でき、各ウェーハ6に形成される薄膜の膜厚を均一にすることができる。尚、前記排気孔13はスリット状の貫通孔に限らず、複数個の孔により形成されていてもよい。
次に、図3を参照して本実施例に係るガス供給系について説明する。
前記ガス供給管43には、上流側から順に、流量制御装置(流量制御部)としてのMFC(マスフローコントローラ)48及び開閉弁であるバルブ49がそれぞれ設けられており、例えば不活性ガスである窒素(N2 )ガスが前記ガス供給管43及び前記ノズル34を通って前記処理室7へ供給される。主に、前記ノズル34、前記ガス供給管43、前記MFC48、前記バルブ49により第1の不活性ガス供給系が構成される。
又、前記ガス供給管46には、上流側から順に、流量制御装置(流量制御部)としてMFC(マスフローコントローラ)51及び開閉弁であるバルブ52がそれぞれ設けられており、例えば不活性ガスである窒素(N2 )ガスが前記ガス供給管46及び前記ノズル37を通って前記処理室7へ供給される。主に、前記ノズル37、前記ガス供給管46、前記MFC51、前記バルブ52により第2の不活性ガス供給系が構成される。
不活性ガス供給系は、第1の不活性ガス供給系と第2の不活性ガス供給系のいずれか又は両方で構成される。ウェーハ6への処理によって2つを使い分けてもよいが、第1の不活性ガス供給系と、第2の不活性ガス供給系の両方を用いることで、ウェーハ6に均一な処理を施すことができる。又、図2に示される様に、前記ノズル34と前記ノズル37は、他のノズルを挾む様に配置することが好ましい。この様な配置とすることで、ウェーハ6への処理均一性を向上させることができる。
前記ガス供給管44には、上流側から順に、反応ガス活性化装置としてのオゾナイザ53、流量制御装置(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)54及び開閉弁であるバルブ55が設けられている。前記ガス供給管44の先端部には、前記ノズル35が接続されている。
前記ガス供給管44の上流側は、酸化ガスとしての酸素(O2 )ガスを供給する図示しない酸素ガス供給源に接続されている。前記オゾナイザ53に供給されたO2 ガスは、該オゾナイザ53にて活性化されて反応ガスである酸化ガスとしてのオゾン(O3 )ガスとなり、前記処理室7内に供給される。主に、前記ノズル35、前記ガス供給管44、前記オゾナイザ53、前記MFC54、前記バルブ55により反応ガス供給系が構成される。
前記ガス供給管45には、気化装置(気化部)であり、液体原料を気化して原料ガスとしての気化ガスを生成する気化器56が設けられており、該気化器56の下流側には、上流側から順に開閉弁であるバルブ57、ガスフィルタ58が設けられている。前記ガス供給管45の先端部には、前記ノズル36が接続されている。前記バルブ57を開けることにより、前記気化器56内にて生成された気化ガスが前記ノズル36を介して前記処理室7内に供給される。主に、前記ノズル36、前記ガス供給管45、前記気化器56、前記バルブ57、前記ガスフィルタ58により原料ガス供給系が構成される。尚、後述するキャリアガス供給系、液体原料供給系も原料ガス供給系に含めてもよい。
前記ガス供給管45の前記気化器56よりも上流側には、上流側から順に液体原料タンク59、液体流量制御装置(LMFC)61、開閉弁であるバルブ62が設けられている。前記気化器56内への液体原料の供給量、即ち該気化器56内で気化され前記処理室7内へ供給される気化ガスの供給流量は、前記LMFC61によって制御される。主に、前記ガス供給管45、前記液体原料タンク59、前記LMFC61、前記バルブ62により液体原料供給系が構成される。
又、前記気化器56には、キャリアガスとしての不活性ガスがガス供給管85から供給される。該ガス供給管85には、上流側から順にMFC86とバルブ87が設けられている。前記気化器56で生成された気化ガスをキャリアガスで希釈することにより、前記ボート5に搭載されるウェーハ6間の膜厚均一性等、ウェーハ6間に於けるウェーハ6の処理の均一性を調整することができる。主に、前記ガス供給管85、前記MFC86、前記バルブ87により、キャリアガス供給系が構成される。
前記ガス供給管45からは、例えば金属含有ガスである原料ガスとして、ジルコニウム原料ガス、即ちジルコニウム(Zr)を含むガス(ジルコニウム含有ガス)が原料ガスとして、前記LMFC61、前記気化器56、前記ガスフィルタ58、前記ノズル36等を介して前記処理室7内へ供給される。ジルコニウム含有ガスとしては、例えばテトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ、Zr[N(CH3 )C2 H5 ]4 )を用いることができる。TEMAZは、常温常圧に於いては液体であり、液体のTEMAZは液体原料として前記液体原料タンク59内に貯留される。
図4、図5に於いて、本発明の第1の実施例に係る前記気化器56の詳細について説明する。
該気化器56は、先端部が縮径された噴霧ノズル64と、該噴霧ノズル64の下方に形成された気化室65とを有し、前記LMFC61より供給された液体原料63が前記噴霧ノズル64より前記気化室65内に噴霧され、該気化室65内で気化される様になっている。
前記噴霧ノズル64は、内部に所定の内径、所定の流路長を有し、先端が前記気化室65内に開放された噴霧流路66が形成され、前記噴霧ノズル64の中途部には、前記噴霧流路66を囲繞する様設けられ、前記噴霧ノズル64を加熱するノズルヒータ67が設けられている。
又、前記気化器56の前記噴霧ノズル64の下方には、例えば前記気化室65を囲繞する様内蔵され、該気化室65を加熱する気化室ヒータ68と、前記気化室65と連通し、該気化室65にて気化された気化ガス71を前記ガス供給管45に送給する気化ガス送給孔69が設けられている。尚、前記気化器56は図示しない加熱機構を有し、前記噴霧ノズル64の上流側で前記液体原料63を予め加熱可能となっている。
尚、図6は、該液体原料63の飽和蒸気圧曲線70を示している。前記液体原料63の圧力がP2 の時に温度をθ2 よりも高くすることで、該液体原料63が液相領域から気相領域へと相変化し、該液体原料63が沸騰する。又、該液体原料63の温度がθ1 の時に圧力をPvよりも低くすることで、該液体原料63が液相領域から気相領域へと相変化し、該液体原料63が沸騰する。
前記気化器56により前記液体原料63を気化させる際には、図示しない加熱機構により前記液体原料63が予め加熱され、加熱された該液体原料63が前記噴霧流路66を充満する様前記LMFC61により流量調整され、前記噴霧ノズル64に供給される。
この状態で、前記ノズルヒータ67を作動させ、前記噴霧流路66内の圧力が前記気化室65内の圧力よりも高くなる様、又液相領域から気相領域へと相変化する様(図6参照)、前記噴霧ノズル64内の前記液体原料63を更に加熱する。該液体原料63を加熱することで該液体原料63が過熱状態となり、過熱液の熱ポテンシャルにより前記液体原料63が沸騰して前記噴霧流路66内に気泡72が発生する様になっており、発生した該気泡72は下流側に向って移動しながら成長する。
この時、前記噴霧流路66内の前記液体原料63の圧力は前記気化室65内の圧力よりも高くなっているので、前記気泡72は前記噴霧流路66の出口に於いて急激に体積膨張する。膨張した前記気泡72により前記液体原料63が引きちぎられることで、該液体原料63が微粒化され霧状となり、前記気化室65内に噴霧される。又、該気化室65内に噴霧された前記液体原料63の液滴の大部分は、前記気化室65内で自己顕熱により断熱膨張し、気化される。
尚、前記噴霧流路66の出口圧が低ければ低い程、即ち該噴霧流路66内の圧力と前記気化室65内の圧力の差が大きい程、霧状の前記液体原料63が断熱膨張し易くなり、気化が促進される。
前記気化室65内に噴霧された前記液体原料63は、前記気化ガス71と気化しきれなかった霧状の微細な液滴とが混ざり合った状態となっている。該液滴は前記気化室ヒータ68により加熱された前記気化室65の壁面からの伝熱や接触により気化され、該気化室65への噴霧の際に気化した前記気化ガス71と共に前記気化ガス送給孔69へと送られ、該気化ガス送給孔69を介して前記ガス供給管45へと送給される。
尚、上記に於いては、前記ノズルヒータ67により前記噴霧ノズル64内の前記液体原料63を加熱することで前記噴霧流路66内の前記液体原料63の圧力を上昇させ、前記気化室65内との間に圧力差を生じさせていたが、該気化室65内を減圧する図示しない減圧機構を設け、該減圧機構により前記気化室65内の圧力が前記噴霧流路66内の圧力よりも低くなる様、又前記液体原料63が液相領域から気相領域へと相変化する様(図6参照)減圧させてもよい。前記気化室65内と前記噴霧流路66内との間に圧力差が生じることで、前記噴霧流路66内に前記気泡72を発生させることができる。
又、前記噴霧ノズル64の寸法、即ち該噴霧ノズル64内に形成された前記噴霧流路66の内径及び流路長を調整し、該噴霧流路66内の圧力ドロップにより前記気泡72を発生させてもよい。
更に、前記ノズルヒータ67による前記噴霧流路66内の前記液体原料63の増圧、前記減圧機構による前記気化室65内の減圧を組合わせ、前記液体原料63と前記気化室65内との間に圧力差を生じさせてもよいのは言う迄もない。
尚、前記噴霧流路66内の前記液体原料63の圧力は、前記気化室65内の圧力よりも高くなる様調整され、又該気化室65内の圧力は前記液体原料63の原料蒸気圧よりも低くなる様調整されている。従って、前記気化室65内の圧力が高い場合には、前記ノズルヒータ67により前記液体原料63を加熱し、原料蒸気圧値を上昇させることで、前記液体原料63と前記気化室65内との間に圧力差を生じさせる。尚、前記液体原料63の加熱は、前記噴霧流路66内で前記液体原料63が反応、析出しない様、該液体原料63の反応温度以下とするのが望ましい。
又、該気化室65内を減圧する場合には、通常前記噴霧流路66内の前記液体原料63の圧力を常圧とするが、反応圧及び配管抵抗により前記気化室65内の圧力が上昇した場合には、前記噴霧流路66内と前記気化室65内との間の圧力差を維持する様、前記ノズルヒータ67により前記液体原料63が反応温度以下の範囲で加熱され、前記液体原料63が増圧される。
尚、前記気化室ヒータ68による前記気化室65の加熱は、前記液体原料63の原料温度から飽和温度を引いた前記液体原料63のサブクール度による原料保有熱量の過不足分を補填する様加熱が行われる。
又、前記噴霧ノズル64の寸法や形状は、前記液体原料63が高温であれば噴霧状態への影響が小さいが、前記噴霧ノズル64の加熱が必要ない場合には噴霧状態への影響が大きい為、該噴霧ノズル64の材質は熱伝導性のよいものとするのが好ましい。
次に、図7に於いて、制御部(制御手段)である前記コントローラ17と各構成の接続について説明する。
該コントローラ17は、CPU(Central Processing Unit)75、RAM(Random Access Memory)76、記憶装置77、I/Oポート78を具備するコンピュータとして構成されている。前記RAM76、前記記憶装置77、前記I/Oポート78は、内部バス79を介して前記CPU75とデータ交換可能な様に構成されている。前記コントローラ17には、ディスプレイ等の表示装置80や、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置81が接続されている。
前記記憶装置77は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。該記憶装置77内には、前記基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が読出し可能に格納されている。尚、プロセスレシピは、後述する基板処理工程に於ける各手順を前記コントローラ17に実行させ、所定の結果を得ることが出来る様に組合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。尚、本明細書に於いて、プログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。又、前記RAM76は、前記CPU75によって読出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
前記I/Oポート78は、前記MFC48,51,54、前記バルブ49,52,55,57,62、前記圧力センサ14、前記APCバルブ15、前記真空ポンプ16、前記ボートエレベータ19、前記ヒータユニット28、前記回転機構29、前記温度センサ32、前記オゾナイザ55、前記気化器56、前記LMFC61、前記ノズルヒータ67、前記気化器ヒータ68等に接続されている。
前記CPU75は、前記記憶装置77から制御プログラムを読出して実行すると共に、前記入出力装置81からの操作コマンドの入力等に応じて前記記憶装置77からプロセスレシピを読出す。そして、前記CPU75は、読出したプロセスレシピの内容に沿う様に、前記MFC48,51,54による各種ガスの流量調整動作、前記LMFC61による液体原料の流量制御、前記バルブ49,52,55,57,62の開閉操作、前記APCバルブ15の開閉動作及び該APCバルブ15による前記圧力センサ14に基づく圧力調整動作、温度センサ32に基づく前記ヒータユニット28の温度調整動作、前記真空ポンプ16の起動及び停止、前記回転機構29による前記ボート5の回転及び回転速度調節動作、前記ボートエレベータ19による前記ボート5の昇降動作、前記ノズルヒータ67
の温度調整動作、前記気化器ヒータ68の温度調整動作等を制御する。
尚、前記コントローラ17は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ(USB Flash Drive)やメモリカード等の半導体メモリ)82を用意し、該外部記憶装置82を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施例に係る前記コントローラ17を構成することができる。尚、コンピュータにプログラムを供給する為の手段は、前記外部記憶装置82を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、前記外部記憶装置82を介さずにプログラムを供給する様にしてもよい。尚、前記記憶装置77や前記外部記憶装置82は、コンピュータで読取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。尚、本明細書に於いて記録媒体という言葉を用いた場合は、前記記憶装置77単体のみを含む場合、前記外部記憶装置82単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。
次に、上述した基板処理装置の前記処理炉1を用いて半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に絶縁膜であって、例えば高誘電率(High−k)膜である金属酸化膜としてジルコニウム酸化膜(ZrO2 、以下ZrOとも称す)を成膜するシーケンス例について、図8を参照して説明する。尚、以下の説明に於いて、基板処理装置を構成する各部の動作は前記コントローラ17により制御される。
尚、本明細書に於いて、「ウェーハ」という言葉を用いた場合は、「ウェーハそのもの」を意味する場合や、「ウェーハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、即ち表面に形成された所定の層や膜等を含めてウェーハと称する場合がある。又、本明細書に於いて「ウェーハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウェーハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウェーハ上に形成された所定の層や膜等の表面、即ち積層体としてのウェーハの最表面」を意味する場合がある。
従って、本明細書に於いて「ウェーハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウェーハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウェーハ上に形成されている層や膜等に対して、即ち積層体としてのウェーハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。又、本明細書に於いて「ウェーハ上に所定の層(又は膜)を形成する」と記載した場合は、「ウェーハそのものの表面(露出面)上に所定の層(又は膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウェーハ上に形成されている層や膜等の上、即ち積層体としてのウェーハの最表面の上に所定の層(又は膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
尚、本明細書に於いて「基板」という言葉を用いた場合も「ウェーハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明に於いて、「ウェーハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
以下、基板処理工程について説明する。
STEP:01 先ず、複数枚のウェーハ6が前記ボート5に装填(ウェーハチャージ)される。
STEP:02 次に、該ボート5が前記ボートエレベータ19により持上げられ、前記処理室7内に搬入(ボートロード)される。この状態では、前記シールキャップ18は前記マニホールド8の下端をシールした状態となる。
STEP:03 前記ボート5の搬入後、前記処理室7内が所望の圧力(真空度)となる様に、前記真空ポンプ16によって真空排気される。この際、前記処理室7内の圧力は、前記圧力センサ14で測定され、測定された圧力に基づき前記APCバルブ15にフィードバック制御される(圧力調整)。又、前記処理室7内が所望の温度となる様に前記ヒータユニット28によって加熱される。この際、前記処理室7内が所望の温度分布となる様に、前記温度センサ32が検出した温度情報に基づき前記ヒータユニット28への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、前記回転機構29により、前記ボート5が回転されることで、ウェーハ6が回転される。
尚、前記真空ポンプ16の作動、前記ヒータユニット28による前記処理室7内の加熱、前記回転機構29による前記ボート5及びウェーハ6の回転は、少なくともウェーハ6に対する処理が終了する迄の間は継続して行われる。
次に、TEMAZガスと、O3 ガスを前記処理室7内に供給することによりZrO膜を形成するジルコニウム酸化膜形成工程を行う。ジルコニウム酸化膜形成工程では、STEP:04〜STEP:08の4つのステップを順次実行する。
STEP:04 先ず、前記ガス供給管45の前記バルブ57を開放し、前記気化器56、前記ガスフィルタ58を介して前記ガス供給管45内にTEMAZガスを流す。該ガス供給管45内を流れるTEMAZガスは、前記LMFC61により流量調整され、図4、図5に示される前記気化器56により気化された状態で、前記ノズル36の前記ガス供給孔40から前記処理室7内に供給され、前記排気管12から排気される。
又、TEMAZガスの供給と並行して、前記バルブ49を開き、前記ガス供給管43、前記ノズル34、前記ガス供給孔38からN2 等の不活性ガスを流すと共に、前記バルブ52を開き、前記ガス供給管46、前記ノズル37、前記ガス供給孔41からN2 等の不活性ガスを流す。
この時、前記APCバルブ15の開度を適正に調整して前記処理室7内の圧力を、例えば200〜500Paの範囲内の圧力とする。前記LMFC61で制御するTEMAZガスの供給流量は、例えば0.1〜0.5g/分の範囲内の流量とする。又、ウェーハ6をTEMAZガスに曝す時間、即ちガス供給時間(照射時間)は、例えば10〜300秒間の範囲内の時間とする。又この時の前記ヒータユニット28の温度は、ウェーハ6の温度が例えば150〜300°の範囲内の温度となる様な温度に設定する。TEMAZガスの供給により、ウェーハ6上にZr(ジルコニウム)含有層が形成される。
STEP:05 TEMAZガスの供給後、前記バルブ57を閉じ、前記処理室7内へのTEMAZガスの供給を停止する。この時、前記排気管12の前記APCバルブ15は開いたままとし、前記真空ポンプ16により前記処理室7内を真空排気し、該処理室7内に残留する未反応、若しくはZr含有層形成に寄与した後のTEMAZガスを前記処理室7内から排気する。
尚、この時、前記バルブ49,52を開いたままとし、不活性ガスとしてのN2 ガスの前記処理室7内への供給を維持する。N2 ガスはパージガスとして作用し、前記処理室7内に残留する未反応、若しくはZr含有層形成に寄与した後のTEMAZガスを前記処理室7内から排気する効果を更に高めることができる。
又この時、前記処理室7内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、該処理室7内を完全にパージしなくてもよい。該処理室7内に残留するガスが微量であれば後述するSTEP:06に於いて悪影響が生じることはない。この時該処理室7内に供給するN2 ガスの流量は大流量とする必要はなく、例えば、前記アウタチューブ4(前記処理室7)の容積と同程度の量を供給することで、STEP:06に於いて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。この様に、前記処理室7内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。又、N2 ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
STEP:06 該処理室7内の残留ガスを除去した後、前記ガス供給管44の前記バルブ55を開くことで、前記オゾナイザ53によって生成されたO3 ガスが、前記MFC54により流量調整され、前記ノズル35の前記ガス供給孔39から前記処理室7内に供給され、前記排気管12から排気される。又、O3 ガスの供給と並行して、前記バルブ49を開き、前記ガス供給管43、前記ノズル34、前記ガス供給孔38からN2 等の不活性ガスを流すと共に、前記バルブ52を開き、前記ガス供給管46、前記ノズル37、前記ガス供給孔41からN2 等の不活性ガスを流す。
O3 ガスを流す時は、前記APCバルブ15の開度を適正に調整し、前記処理室7内の圧力を、例えば50〜500Paの範囲内の圧力とする。前記MFC54で制御するO3 ガスの供給流量は、例えば5〜30SLMの範囲内の流量とする。又、O3 ガスをウェーハ6に曝す時間、即ちガス供給時間(照射時間)は、例えば10〜300秒間の範囲内の時間とする。又この時の前記ヒータユニット28の温度は、STEP:04と同様、ウェーハ6の温度が150〜300°の範囲内の温度となる様な温度に設定する。O3 ガスの供給により、STEP:04でウェーハ6上に形成されたZr含有層が酸化され、ZrO層が形成される。
STEP:07 ZrO層の形成後、前記バルブ55を閉じて前記処理室7内へのO3 ガスの供給を停止する。この時、前記排気管12の前記APCバルブ15は開いたままとし、前記真空ポンプ16により前記処理室7内を真空排気し、該処理室7内に残留する未反応、若しくは酸化に寄与した後のO3 ガスを前記処理室7内から排気する。
尚、この時、前記バルブ49,52を開いたままとし、不活性ガスとしてのN2 ガスの前記処理室7内への供給を維持する。N2 ガスはパージガスとして作用し、前記処理室7内に残留する未反応若しくはZrO層形成に寄与した後のO3 ガスを前記処理室7内から排気する効果を更に高めることができる。
又この時、前記処理室7内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、該処理室7内を完全にパージしなくてもよい。該処理室7内に残留するガスが微量であれば再度STEP:04を行う場合に悪影響が生じることはない。この時該処理室7内に供給するN2 ガスの流量は大流量とする必要はなく、例えば、前記アウタチューブ4(前記処理室7)の容積と同程度の量を供給することで、STEP:04に於いて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。この様に、前記処理室7内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。又、N2 ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
STEP:08 上述したSTEP:04〜STEP:07を1サイクルとし、このサイクルが所定数だけ行われたかどうかが判断される。このサイクルが少なくとも1サイクル行われることで、ウェーハ6上に所定膜厚のジルコニウム及び酸素を含む高誘電率膜、即ちZrO膜を形成することができる。尚、上記したサイクルは複数回繰返すのが好ましく、サイクルが複数回行われることで、ウェーハ6上に所定膜厚のZrO膜を形成することができる。
STEP:09 ZrO膜の形成後、前記バルブ49,52を開き、前記処理室7内にN2 ガスを流す。N2 ガスはパージガスとして作用し、これにより前記処理室7内が不活性ガスでパージされ、該処理室7内に残留するガスが該処理室7内から除去される。
STEP:10 該処理室7内の雰囲気が不活性ガスに置換された後、該処理室7内の圧力が大気圧(常圧)に復帰される(大気圧復帰)。
STEP:11 その後、前記ボートエレベータ19により前記シールキャップ18が下降され、前記マニホールド8の下端が開口されると共に、処理済みのウェーハ6が前記ボート5に保持された状態で前記マニホールド8の下端から前記プロセスチューブ2の外部に搬出される(ボートアンロード)。
STEP:12 最後に、処理済みのウェーハ6が前記ボート5より取出され(ウェーハディスチャージ)、基板処理を終了する。
上述の様に、第1の実施例に於いては、前記気化器56が、前記噴霧流路66の増圧、前記気化室65の減圧、或は前記噴霧流路66の増圧と前記気化室65の減圧の両方により、前記噴霧流路66内が高圧となる様前記気化室65内との間に圧力差を生じさせ、圧力差により前記気泡72を生じさせることが可能になっている。該気泡72は前記噴霧流路66の出口に於ける圧力の変化により急激に膨張して前記液体原料63を引きちぎり、微粒化させると共に、微粒化された前記液体原料63の大部分が断熱膨張により気化し、該液体原料63の残りは前記気化室65からの熱により気化される。
断熱膨張により気化できなかった前記液体原料63に関しても、前記気泡72により微粒化され、霧状の液滴となっているので、前記気化室65内で気化される迄の時間が短くなり、該気化室65内での前記液体原料63が反応を起こすこと、或は副生成物が形成されることにより生じ、前記気化室65内に残留する残渣を軽減することができる。
又、前記ノズルヒータ67により前記噴霧流路66内の前記液体原料63を加熱し、該液体原料63の原料蒸気圧値を高くできるので、低蒸気圧の液体材料であっても前記気化器56により容易に気化させることができる。
又、前記噴霧流路66内の前記液体原料63の圧力が、前記気化室65内の圧力よりも高ければよいので、該気化室65内を減圧した減圧場(高真空場)に於いても前記液体原料63を容易に微粒化させ、気化させることができる。
又、前記噴霧流路66内の増圧、前記気化室65内の減圧が可能であるので、広い圧力範囲で前記液体原料63を前記気化室65内に噴霧することが可能となり、該気化室65内に残留する残渣を軽減することができる。
次に、図9に於いて本発明の第2の実施例について説明する。尚、図9中、図5中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施例に於ける気化器56では、液体原料63を気化室65内に噴霧する噴霧ノズルとして、前記液体原料63を高速のキャリアガス88で粉砕し、微粒化する二流体噴霧方式の噴霧ノズル89が用いられる。
該噴霧ノズル89は先端部が倒立円錐状となっており、該噴霧ノズル89の内部には、ガス供給管45(図3参照)から前記液体原料63が供給され、ガス供給管85(図3参照)から前記キャリアガス88が供給される噴霧流路91が形成されている。
該噴霧流路91は、前記液体原料63と前記キャリアガス88とが合流する流路である合流部92、該合流部92の下流側に形成され、該合流部92よりも径の小さい流路である加速部93、該加速部93の下流側に形成され、該加速部93よりも径の小さい流路である噴出部94の3つの流路により構成される。
前記気化器56により前記液体原料63を気化させる際には、前記ガス供給管45からLMFC61(図3参照)により流量調整された前記液体原料63と、前記ガス供給管85から前記MFC86(図3参照)により流量調整された前記キャリアガス88とが前記合流部92内に供給され、該合流部92内で前記液体原料63と前記キャリアガス88とが混合されて気液二層流95となる。
該気液二層流95は、前記合流部92から前記加速部93へと流動する過程で、加速されると共に圧力が増大され、該加速部93から前記噴出部94へと流動する過程で、更に加速され、圧力が増大される。
高速、高圧となった前記気液二層流95は、前記噴出部94の先端より前記気化室65内に噴出される様になっており、該気化室65内の雰囲気と噴出された前記気液二層流95との間の速度差により、該気液二層流95中の前記液体原料63が引きちぎられる様に分裂し、微粒化されて前記気化室65内に噴霧される。
図10は、第2の実施例に於ける前記気化器56を用いて前記液体原料63を微粒化させる場合に於ける、微粒化領域と前記気化室65内の圧力と温度との関係を示すグラフである。尚、図10に於いては、前記液体原料63として水、前記キャリアガス88として窒素を用い、水の流量を2g/min、窒素の流量を3SLMとしている。尚、グラフ中の曲線は水の蒸気圧曲線を示す。
上記条件に於いて、前記気化室65内の圧力が大気圧である場合には、前記液体原料63を微粒化する為に前記キャリアガス88の流量を3SLM以上とする必要がある。又、グラフに示される様に、前記キャリアガス88の流量を3SLM以上流した場合であっても、前記気化室65内の圧力を50kPaとする減圧下に置いては、微粒化領域の範囲外となる為、前記液体原料63は完全には微粒化せず、前記噴出部94の先端に液滴が発生する状態となる。
第2の実施例に於いては、前記液体原料63を前記噴霧ノズル89に供給する前に予め加熱する加熱機構、前記噴霧流路91内の前記液体原料63を過熱する為のノズルヒータ67(図5参照)等を必要としないので、前記噴霧ノズル89及び原料ガス供給系の構造を簡易化することができる。
次に、図11に於いて、本発明の第3の実施例について説明する。尚、図11中、図5中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
第3の実施例に於ける気化器56では、液体原料63を気化室65内に噴霧する噴霧ノズルとして、前記液体原料63を高速のキャリアガス88で粉砕し、微粒化する二流体噴霧方式の噴霧ノズル96が用いられる。
該噴霧ノズル96は円筒状であり、該噴霧ノズル96の内部には、ガス供給管45(図3参照)から前記液体原料63が供給される噴霧流路97が形成されている。
前記気化器56には、所定の体積を有する例えば倒立円錐台形状のキャリアガス室98が前記噴霧ノズル96を囲繞する様形成され、該噴霧ノズル96は前記キャリアガス室98を垂直に貫通する様になっている。
前記キャリアガス室98にはキャリアガス供給孔99が形成されている。該キャリアガス供給孔99はガス供給管85(図3参照)と連通しており、前記キャリアガス供給孔99を介して前記ガス供給管85から前記キャリアガス室98に前記キャリアガス88が供給される様になっている。
又、前記キャリアガス室98の下面には、前記噴霧ノズル96の先端部と平行であり、前記キャリアガス室98と前記気化室65とを連通させるオリフィス孔101,102が2箇所に形成されている。該オリフィス孔101,102が形成される位置は、前記噴霧ノズル96に関して対称となっている。
尚、前記オリフィス孔101,102の内径は、前記キャリアガス供給孔99の内径よりも極めて小さくなっており、前記オリフィス孔101,102から噴出される前記キャリアガス88の流速は、前記噴霧流路97の先端より噴出される前記液体原料63の流速よりも高速となっている。
前記気化器56により前記液体原料63を気化させる際には、前記ガス供給管45からLMFC61(図3参照)により流量調整された前記液体原料63が前記噴霧流路97に供給され、前記ガス供給管85からMFC86(図3参照)により流量調整された前記キャリアガス88が、前記キャリアガス供給孔99を介して前記キャリアガス室98に供給される。
この時、前記オリフィス孔101,102の内径が前記キャリアガス供給孔99の内径よりも小さくなっているので、前記キャリアガス室98内は高圧となる。
高圧となった該キャリアガス室98の前記キャリアガス88は、前記オリフィス孔101,102を通過する際に更に圧縮されて加速され、前記気化室65内に噴出される。又、前記噴霧流路97に供給された前記液体原料63も、前記噴霧流路97の先端より前記気化室65内に噴出される。
この時、該噴霧流路97の出口部分、前記オリフィス孔101,102の出口部分では、前記液体原料63と前記キャリアガス88との間で大きな速度差が生じており、高速の該キャリアガス88により前記液体原料63が引きちぎられることで、前記液体原料63が分裂して微粒化し、微粒化した該液体原料63と前記キャリアガス88とが混合された高速、高圧な気液二層流103として前記気化室65内に噴霧される。
図12は、第3の実施例に於ける前記気化器56を用いて前記液体原料63を微粒化させる場合に於ける、微粒化領域と前記気化室65内の圧力と温度との関係を示すグラフである。尚、図12に於いては、前記液体原料63として水、前記キャリアガス88として窒素を用い、水の流量を2g/min、窒素の流量を3SLMとしている。尚、グラフ中の曲線は水の蒸気圧曲線を示す。
第3の実施例に於いても、前記気化室65内の圧力が大気圧である場合には、第2の実施例と同様前記液体原料63を微粒化する為に前記キャリアガス88の流量を3SLM以上とする必要があるが、該キャリアガス88の流量を減らした場合でも、第2の実施例よりも微粒化される様になっている。
又、第3の実施例に於いては、前記気化室65内の圧力を2kPa程度迄減圧することで、前記液体原料63は微粒化されることなく噴出される様になっている。従って、第3の実施例に於ける前記気化器56の微粒化領域は、前記第2の実施例に於ける気化器56の微粒化領域よりも大幅に広くなっており、広い圧力範囲で前記液体原料63を微粒化させることができる。
尚、本発明の実施例に於いては、前記液体原料63としてTEMAZを用いているが、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ、Zr[N(C2 H5 )2 ]4 )、テトラキスジメチルアミノジルコニウム(TDMAZ、Zr[N(CH3 )2 ]4 )等の他のZr原料を用いてZrO膜を形成してもよい。
又、本発明の実施例に係る基板処理装置は、蒸気圧が低い原料を用いる膜種であれば、ZrO以外の膜種にも適用可能である。例えば、Niアミジネート(Ni−amidinate)をガス種としてウェーハ6上にニッケル膜(Ni膜)を形成する処理、Coアミジネート(Co−amidinate)をガス種としてウェーハ6上にコバルト膜(Co膜)を形成する処理にも本実施例に係る基板処理装置を適用することができる。
(付記)
又、本発明は以下の実施の態様を含む。
(付記1)基板を収容する処理室と、基板に反応ガスを供給する反応ガス供給系と、液体原料を気化器により気化させた気化ガスを原料ガスとして前記処理室に供給する原料ガス供給系と、前記反応ガス供給系と前記原料ガス供給系とを制御する制御部とを具備し、前記気化器は内部に前記液体原料が流通する噴霧流路が形成された噴霧ノズルと、該噴霧ノズルの下方に形成された気化室と、該気化室を減圧可能な減圧機構とを有し、前記制御部は前記噴霧流路内の圧力が前記気化室内の圧力よりも高くなる様前記減圧機構により前記気化室内を減圧することを特徴とする基板処理装置。
(付記2)前記噴霧ノズルを加熱するノズルヒータを更に具備し、該ノズルヒータにより前記噴霧ノズルを加熱し、前記噴霧流路内の前記液体原料の圧力を上昇させる付記1の基板処理装置。