以下に、実施の形態にかかる電力半導体装置および電力半導体装置の製造方法を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の構成を示す平面図である。図2は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の構成を示す第1の断面図であり、図1におけるII-II線に沿った断面図である。図3は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の構成を示す第2の断面図であり、図1におけるIII-III線に沿った断面図である。なお、断面図については、見やすくするために一部のハッチングを省略している。
実施の形態1においては、図1から図3における左右方向を、電力半導体装置100および電力半導体装置100の構成部の左右方向とする。左右方向は、図1から図3におけるX方向に対応し、電力半導体装置100および電力半導体装置100の構成部の幅方向に対応する。また、図2および図3における紙面の奥行方向、および図1における上下方向を、電力半導体装置100および電力半導体装置100の構成部の奥行方向とする。奥行方向は、図1から図3におけるY方向に対応し、電力半導体装置100および電力半導体装置100の構成部の奥行方向に対応する。また、奥行方向は、不図示の送風システムから電力半導体装置100に送風される空気流200の進行方向、すなわち送風方向あるいは電力半導体装置100における風流入方向と換言できる。また、奥行方向は、保持部60の内部における空気流200の進行方向と換言できる。また、図2および図3における上下方向および図1における紙面の奥行方向を、電力半導体装置100および電力半導体装置100の構成部の上下方向とする。上下方向は、図1から図3におけるZ方向に対応し、電力半導体装置100および電力半導体装置100の構成部の高さ方向に対応する。
また、図2および図3の紙面の奥行方向における手前側、および図1の下側を、電力半導体装置100およびヒートシンク一体型パワーモジュール20の正面側とする。図2および図3の紙面の奥行方向における奥側、および図1の上側を、電力半導体装置100およびヒートシンク一体型パワーモジュール20の背面側とする。なお、「左右」、「上下」、「正面」および「背面」の表現は、便宜上の記載であり、実際の「左右」、「上下」、「正面」および「背面」を意味するものではなく、これらの方向は逆とされてよい。
電力半導体装置100は、複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20が保持部60に搭載されている。電力半導体装置100は、複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20と、構造支持部50と、保持部60と、を備える。図1においては、実施の形態1にかかる複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20が搭載された電力半導体装置の一例として、2列×3行に配列された6個のヒートシンク一体型パワーモジュール20が搭載された電力半導体装置100について示している。
保持部60は、電力半導体装置100において複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20の一部を収納して保持する。すなわち、複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20は、一部分が保持部60に収納された状態で保持部60に保持されている。保持部60は、ハウジング40と外枠30とにより構成されている。
図1に示す電力半導体装置100においては、ヒートシンク一体型パワーモジュール20である、ヒートシンク一体型パワーモジュール20a、ヒートシンク一体型パワーモジュール20b、ヒートシンク一体型パワーモジュール20c、ヒートシンク一体型パワーモジュール20d、ヒートシンク一体型パワーモジュール20e、およびヒートシンク一体型パワーモジュール20fが保持部60に取り付けられている。なお、電力半導体装置100におけるヒートシンク一体型パワーモジュール20の取付個数は6個に限定されない。例えば、左右方向において2つ以上のヒートシンク一体型パワーモジュール20が保持部60に取り付けられてもよい。このような形態においても、後述する電力半導体装置100の効果が得られる。
保持部60の内部には、送風システムから送風される空気流200が、正面側から背面側に向かって流れる。なお、空気流200が流れる方向は、背面側から正面側に向かう方向であってもよい。
ヒートシンク一体型パワーモジュール20は、電力半導体装置100に搭載される電力半導体モジュールであり、樹脂モールドタイプのパワーモジュールである。図4は、実施の形態1にかかるヒートシンク一体型パワーモジュール20の断面図である。実施の形態1にかかるヒートシンク一体型パワーモジュール20は、ヒートシンク1と、フィンベース2と、絶縁シート3と、配線ワイヤ4と、半導体素子5と、はんだ6と、金属導体7と、制御端子8と、封止樹脂9と、主端子10と、を備える。
また、ヒートシンク1は、複数の放熱フィン1aと、ヒートシンクベース1bと、を有する。また、絶縁シート3、配線ワイヤ4、半導体素子5、はんだ6、金属導体7、制御端子8、封止樹脂9および主端子10により、実施の形態1にかかるパワーモジュール11が構成されている。したがって、実施の形態1にかかるヒートシンク一体型パワーモジュール20は、ヒートシンク1と、パワーモジュール11とがフィンベース2を介して接合されて構成されている。すなわち、ヒートシンク一体型パワーモジュール20は、パワーモジュール11と、複数の放熱フィン1aがヒートシンクベース1bに設けられてパワーモジュール11で発生した熱を放熱するヒートシンク1とが一体とされている。
ヒートシンク一体型パワーモジュール20は、パワーモジュール11の下面側に、ヒートシンク1が接続されて、パワーモジュール11の半導体素子5において発生した熱の放熱の向上が図られている。すなわち、ヒートシンク一体型パワーモジュール20は、パワーモジュール11の半導体素子5での発熱をヒートシンク1から放熱することにより、パワーモジュール11において発生した熱の放熱の向上が図られている。そして、ヒートシンク一体型パワーモジュール20は、パワーモジュール11とヒートシンク1との間に熱伝導性グリスを使用しないグリスレスパワーモジュールである。このため、ヒートシンク一体型パワーモジュール20は、パワーモジュール11とヒートシンク1との間に熱伝導性グリスを使用する場合と比べて、パワーモジュール11において発生した熱の放熱特性がより高められており、より高い放熱性能を有する。
ヒートシンク1は、放熱フィン1aとヒートシンクベース1bとが「かしめ加工」により一体化された、かしめ加工ヒートシンクである。
放熱フィン1aは、矩形形状を有する薄板状の放熱部品である。放熱フィン1aは、パワーモジュール11の半導体素子5での発熱を放熱することができるように、熱伝導性が相対的に高い金属材料によって構成されている。一例では、放熱フィン1aは、アルミニウムおよびアルミニウム合金といった腐食し難い金属材料により構成される。放熱フィン1aに上述したアルミニウム等の金属材料の圧延材が用いられることにより、放熱フィン1aの加工性と、半導体素子5での発熱の放熱性と、を両立させることができる。
複数の放熱フィン1aの各々は、ヒートシンクベース1bにおける一面側に形成された不図示のフィン挿入溝に挿入され、かしめられることによって、ヒートシンクベース1bに固定されている。放熱フィン1aは、ヒートシンクベース1bをフィンベース2と挟み込むように配置される。
ヒートシンクベース1bは、当該ヒートシンクベース1bの面内方向において矩形形状を有する平板状の部品であり、複数の放熱フィン1aが固定されてヒートシンク1のベースとなる部品である。ヒートシンクベース1bは、パワーモジュール11の半導体素子5での発熱を放熱フィン1aに効率良く伝熱できるように、熱伝導性が相対的に高い金属材料によって構成されている。一例では、ヒートシンクベース1bは、アルミニウムおよびアルミニウム合金といった腐食し難い金属材料によって構成される。ヒートシンクベース1bは、切削加工、ダイキャスト加工、鍛造加工、押出加工などの加工方法によって作製される。
フィンベース2は、ヒートシンクベース1bよりも小さい矩形形状を有する平板状の部品であり、パワーモジュール11とヒートシンク1とを接続する接続部品である。フィンベース2は、パワーモジュール11の半導体素子5での発熱をパワーモジュール11からヒートシンク1に効率良く伝熱できるように、熱伝導性が相対的に高い金属材料によって構成されている。一例では、フィンベース2は、アルミニウムおよびアルミニウム合金といった腐食し難い金属材料によって構成される。フィンベース2は、切削加工、ダイキャスト加工、鍛造加工、押出加工などの加工方法によって作製される。
なお、放熱フィン1a、ヒートシンクベース1bおよびフィンベース2の各々の材料は、ともに上述したアルミニウム系材料に限定されるものではなく、他の材料であってもよい。すなわち、放熱フィン1aとヒートシンクベース1bとフィンベース2との材料の組み合わせは、上記とは異なる材料の組み合わせであってもよい。例えば、放熱能力の観点では、放熱フィン1aをアルミニウム系材料よりも熱伝導率が大きい銅系の板部品とすることで、放熱フィン1aがアルミニウム系材料からなる板部品である場合よりも、さらに放熱フィン1aの放熱能力が向上する。
放熱フィン1aとヒートシンクベース1bとがかしめ加工により一体化されたかしめ加工ヒートシンクをヒートシンク1に採用する場合には、ダイキャスト加工および押出加工でヒートシンクを作製する場合のアスペクト比の加工制約がないため、放熱フィン1aを自由に設計することができ、ヒートシンク1の放熱能力を向上させることができる。ただし、ヒートシンク1は、かしめ加工ヒートシンクに限定されず、他の加工方法によって作製されたヒートシンクが用いられてもよい。
図5は、実施の形態1にかかる第1の変形例のヒートシンク12が取り付けられた第1の変形例のヒートシンク一体型パワーモジュールの断面図である。図5においては、図4と同じ構成については、同じ符号を付している。第1の変形例のヒートシンク12は、押出加工によって放熱フィン1aとヒートシンクベース1bとが一体に作製されている。
図6は、実施の形態1にかかる第2の変形例のヒートシンク13が取り付けられた第2の変形例のヒートシンク一体型パワーモジュールの断面図である。図6においては、図4と同じ構成については、同じ符号を付している。第2の変形例のヒートシンク13は、ダイキャスト加工によって放熱フィン1aとヒートシンクベース1bとが一体に作製されている。
また、ヒートシンク一体型パワーモジュール20においては、切削加工あるいは鍛造加工で作製されたヒートシンクが用いられてもよい。
図7は、実施の形態1にかかる第3の変形例のヒートシンク一体型パワーモジュールの断面図である。第3の変形例のヒートシンク一体型パワーモジュールは、パワーモジュール11とヒートシンク1とが、はんだといった接合材15あるいは接着剤16によって接続されている。
図5から図7に示す構造においても、上述したように高い放熱性能を実現できるというグリスレスパワーモジュールの効果が得られる。
絶縁シート3は、封止樹脂9に封止された構成部とヒートシンクベース1bとを絶縁すると共に、半導体素子5が発生させた熱をヒートシンクベース1bに放熱する。絶縁シート3は、封止樹脂9と同等以上の放熱性を有する。
配線ワイヤ4は、半導体素子5同士を電気的に接続し、また、半導体素子5と主端子10とを電気的に接続する。
半導体素子5は、電力制御用の半導体素子である。半導体素子5の一例は、整流ダイオード、パワートランジスタ、サイリスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。半導体素子5は、珪素(Si)によって形成される素子、または珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体によって形成される素子が例示される。ワイドバンドギャップ半導体の一例は、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム系材料またはダイヤモンドである。ワイドバンドギャップ半導体を用いた半導体素子5は、許容電流密度が高く、電力損失が低いため、ヒートシンク一体型パワーモジュール20および電力半導体装置100を小型化することができる。
はんだ6は、半導体素子5と金属導体7とを接合する接合材である。なお、半導体素子5と金属導体7とを接合する接合材は、はんだ6に限定されない。
金属導体7は、半導体素子5が搭載される基板であり、半導体素子5が発生させた熱を絶縁シート3に放熱する。
制御端子8および主端子10は、半導体素子5に接続され、半導体素子5に電力を供給し、または半導体素子5と外部の装置との間で信号の伝送を行う。
封止樹脂9は、パワーモジュール11の筐体を構成する。封止樹脂9は、エポキシなどの熱硬化性樹脂により形成され、内部に配置された部材間の絶縁性を確保する。封止樹脂9は、例えばトランスファー成型によって形成されたトランスファーモールドである。ただし、封止樹脂9の成型方法は、トランスファー成型に限定されない。
つぎに、上記のように構成されたヒートシンク一体型パワーモジュール20の製造方法について説明する。
まず、半導体素子5が、はんだ6を用いて金属導体7にダイボンドされる。つぎに、半導体素子5と他の半導体素子5とが、配線ワイヤ4によりワイヤボンドされ、電気的に接続される。また、一部の半導体素子5と、制御端子8または主端子10とが、配線ワイヤ4によりワイヤボンドされ、電気的に接続される。つぎに、絶縁シート3が、フィンベース2の一面上に仮付けされる。
その後、絶縁シート3が一面上に仮付けされたフィンベース2と、上述したように半導体素子5のダイボンドおよび配線ワイヤ4のワイヤボンドが完了した金属導体7と、制御端子8および主端子10とが封止樹脂9を用いて一体化されることにより、ヒートシンク一体型パワーモジュール20とフィンベース2とが組み立てられた組立体が作製される。
さらに、フィンベース2における他面側に設けられたフィンベース凹凸部2uと、ヒートシンクベース1bの一面に設けられたヒートシンクベース凹凸部1buとが、プレス加工によって嵌合固定されることにより、組立体とヒートシンクベース1bとが一体化される。これにより、図1に示すヒートシンク一体型パワーモジュール20が形成される。
上述したヒートシンク一体型パワーモジュール20の製造方法においては、プレス加工によりフィンベース2とヒートシンクベース1bとが一体化されるため、プレス加工時の半導体素子5へのダメージ、半導体素子5の割れ、半導体素子5の特性変化、封止樹脂9の割れ、絶縁シート3の耐圧低下、その他、ヒートシンク一体型パワーモジュール20の各部材間の剥離などの不具合の発生が懸念される。このため、組立体とヒートシンクベース1bとを一体化する際のプレス荷重は、できる限り低荷重であることが好ましい。
図8は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の外枠30を示す上面図である。図9は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の外枠30を示す断面図であり、図8におけるIX-IX線に沿った断面図である。
外枠30は、ヒートシンク一体型パワーモジュール20が取り付けられたハウジング40を支持し、また送風システムから送風される空気流200の風路を形成する。外枠30は、当該外枠30の底面部31における左右方向の両端部から2つの側面部32が垂直上方に立ち上がり、上側、正面側および背面側が解放された直方体形状の箱形状を有する。すなわち、外枠30は、図2、図3、図8および図9に示すように、左右方向に沿った断面においてU形状の断面形状を有し、ハウジング40が取り付けられる上面側、正面側および背面側の面以外の面が閉じた構造となっている。なお、外枠30は、上面側、正面側および背面側の面以外の面も必ずしも閉じた形状である必要はなく、必要に応じて開口部が形成されてもよい。
また、「U形状」とは、角が無い形状だけでなく、図2、図3、図8および図9に示すように、角がある形状も含むものである。すなわち、「U形状」は、曲がっている部分が曲線によって連続的に構成されている形状と、曲がっている部分が屈曲部により構成されている形状とを含む。
外枠30では、底面部31および2つの側面部32により囲まれた内部空間が、送風システムから送風される風の風路を構成している。外枠30は、解放された正面側が、送風システムから送風される風の流入口とされている。また、外枠30は、解放された背面側が、流入口から外枠30の内部に流入して外枠30の内部を流れた風の流出口とされている。外枠30における風の流入口は、保持部60における風の流入口と換言できる。外枠30における風の流出口は、保持部60における風の流出口と換言できる。
外枠30は、ハウジング40、ヒートシンク一体型パワーモジュール20、およびヒートシンク一体型パワーモジュール20に接続される各部品の自重を支えるため、上記の構成部を支持できる剛性を有する材料によって構成される。また、外枠30は、電力半導体装置100の製品重量の観点から、上記の構成部を支持できる剛性を有する範囲で、できる限り薄くされて軽量化されることが好ましい。例えば、メッキ鋼板は、上記の構成部を支持できる剛性、薄肉化および軽量化をともに実現可能であり、外枠30に用いられる材料として好ましい材料である。なお、外枠30には、メッキ鋼板以外の材料を用いることも可能である。
ハウジング40は、ヒートシンク一体型パワーモジュール20が取り付けられて搭載される、ヒートシンク一体型パワーモジュール20の取付板である。ハウジング40は、図2および図3に示すように、外枠30の2つの側面部32上に載置される。ハウジング40の面内方向と、外枠30の底面部31の面内方向と、ヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bの面内方向とは平行とされている。
図10は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100のハウジング40を示す上面図である。図10に示すように、ハウジング40は、板形状を有し、ヒートシンク一体型パワーモジュール20の一部分が挿入される複数の開口部41が形成されている。ハウジング40には、搭載されるヒートシンク一体型パワーモジュール20の数、放熱フィン1aのサイズに対応した複数の開口部41が形成されている。図10に示すハウジング40では、6つのヒートシンク一体型パワーモジュール20を搭載するために、6個の開口部41が形成されている。
開口部41は、ハウジング40の面内方向において、長方形状を有する。なお、開口部41の形状は長方形状に限定されず、ヒートシンク一体型パワーモジュール20の形状に合わせて形成されればよい。開口部41は、ハウジング40の面内方向において、ヒートシンク一体型パワーモジュール20の放熱フィン1aの全体が挿入可能な大きさを有し、且つヒートシンクベース1bの外周縁部1bpが挿通できない大きさを有する。すなわち、開口部41は、ハウジング40の面内方向において、ヒートシンク一体型パワーモジュール20の放熱フィン1aの全体が挿入可能であるが、ヒートシンクベース1bが挿通できない寸法および形状を有する。開口部41、ヒートシンク一体型パワーモジュール20、ヒートシンクベース1bおよび放熱フィン1aの大きさの関係については、後述する。
ハウジング40は、ヒートシンク一体型パワーモジュール20およびヒートシンク一体型パワーモジュール20に接続される各部品の自重を支えるため、上記の構成部を支持できる剛性を有する材料によって構成される。また、ハウジング40は、電力半導体装置100の製品重量の観点から、上記の構成部を支持できる剛性を有する範囲で、できる限り薄くされて軽量化されることが好ましい。例えば、メッキ鋼板は、上記の構成部を支持できる剛性、薄肉化および軽量化をともに実現可能であり、ハウジング40に用いられる材料として好ましい材料である。なお、ハウジング40には、メッキ鋼板以外の材料を用いることも可能である。
複数の開口部41には、図2に示すように、ヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンク1の放熱フィン1aが保持部60の外部側から挿入される。ハウジング40は、放熱フィン1aが保持部60の内部に収納された状態で、ヒートシンクベース1bの外周縁部1bpが、開口部41に隣接する隣接領域413に載置されている。そして、ハウジング40は、外枠30のU形状における自由端である2つの側面部32の端部に支持されて保持部60の一面を構成する。
これにより、ハウジング40は、隣接領域413においてヒートシンクベース1bを保持することにより、ヒートシンク一体型パワーモジュール20を保持している。すなわち、複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20は、複数の放熱フィン1aが開口部41から保持部60の内部に挿入され、ヒートシンクベース1bの面内方向において、ヒートシンクベース1bの外周縁部1bpが、保持部60の一面を構成するハウジング40において開口部41に隣接する隣接領域413上に支持されている。
したがって、上述した構成を有する外枠30とハウジング40とにより構成される保持部60は、風の流入口と、風の流出口とが対向して設けられ、流入口と流出口とを繋ぐ一面を構成するハウジング40に複数の開口部41が形成された箱形状を有する。
構造支持部50は、保持部60の内部に設けられ、保持部60の一面を構成するハウジング40から保持部60の内部に向かう方向の荷重を受けて、ハウジング40およびハウジング40に搭載されたヒートシンク一体型パワーモジュール20を支持する。構造支持部50は、保持部60の幅方向において隣り合うヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1b同士の間に対応する位置に配置されている。保持部60の幅方向は、保持部60の流入口から保持部60の流出口に向かう方向と直交する方向であり、左右方向である。保持部60の流入口から保持部60の流出口に向かう方向は、Y方向に対応する。構造支持部50は、保持部60の流入口から保持部60の流出口までの領域において、流入口から流出口に向かう方向において連続して延在している。構造支持部50は、外枠30に固定され、上面がハウジング40と接している。構造支持部50は、長手方向に垂直な断面が長方形状を有する棒状とされている。なお、構造支持部50の形状は、構造支持部50の機能を発揮できれば限定されない。
つぎに、上記のように構成された電力半導体装置100の製造方法について説明する。図11から図18は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の製造方法の手順の一例を模式的に示す図である。図19は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の製造方法の手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS110において、構造支持部50が、外枠30に取り付けられて固定される。図11は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の製造方法の手順の一例を模式的に示す第1の上面図である。図12は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の製造方法の手順の一例を模式的に示す第1の断面図である。図12は、図11におけるXII-XII線に沿った断面図である。
具体的に、図11および図12に示すように、構造支持部50が、外枠30における底面部31の内面31aに取り付けられて固定される。構造支持部50は、長手方向に垂直な断面が外枠30の底面部31の内面31aと垂直とされ、長手方向が外枠30の2つの側面部32に平行とされた状態で、底面部31の内面31aにおける左右方向の中央部に、取り付けられる。外枠30に対する構造支持部50の固定方法は、ネジ締めが例示される。なお、外枠30に対する構造支持部50の固定方法は、ネジ締めに限定されない。例えば、構造支持部50は、溶接により外枠30における底面部31の内面31aに固定されてもよい。
つぎに、ステップS120において、ハウジング40が、ハウジング固定用ネジ71を用いて外枠30にネジ止めされて固定される。図13は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の製造方法の手順の一例を模式的に示す第2の上面図である。図14は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の製造方法の手順の一例を模式的に示す第2の断面図である。図15は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の製造方法の手順の一例を模式的に示す第3の断面図である。図16は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の製造方法の手順の一例を模式的に示す第3の上面図である。図17は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の製造方法の手順の一例を模式的に示す第4の上面図である。図14は、図13におけるXIIII-XIIII線に沿った断面図である。図15は、図13におけるXV-XV線に沿った断面図である。
具体的に、図13から図15に示すように、ハウジング40が、外枠30の上に載置される。このとき、ハウジング40の左右方向の端部領域415が、外枠30の側面部32の上に載置される。また、ハウジング40の左右方向の中央領域414が、構造支持部50の上に載置される。ハウジング40において、左右方向における、開口部の短辺411とハウジングの長辺416との間の領域を、端部領域415とする。また、ハウジング40においは、左右方向における、隣接する開口部の短辺411間の位置に対応する領域を、中央領域414とする。
そして、図16に示すように、左右方向の両端部においてハウジング40の端部領域415の上方からハウジング固定用ネジ71がネジ締めされることにより、ハウジング40が端部領域415において外枠30にネジ止めされて固定される。さらに、図17に示すように、左右方向の中央部においてハウジング40の中央領域414の上方からハウジング固定用ネジ71がネジ締めされることにより、ハウジング40が中央領域414において構造支持部50にネジ止めされて固定されてもよい。
外枠30には、ハウジング固定用ネジ71がねじ込まれる箇所に、予め不図示のネジ孔が形成されている。外枠30においてハウジング固定用ネジ71がねじ込まれる位置は、外枠30の2つの側面部32の上面の位置である。また、ハウジング40には、ハウジング固定用ネジ71がねじ込まれる箇所に、予め不図示のネジ孔あるいは不図示の貫通孔が形成されている。ハウジング40においてハウジング固定用ネジ71がねじ込まれる位置は、端部領域415における外枠30のネジ孔に対応する位置である。また、構造支持部50には、ハウジング固定用ネジ71がねじ込まれる箇所に、予め不図示のネジ孔が形成されている。構造支持部50においてハウジング固定用ネジ71がねじ込まれる位置は、外枠30に固定された構造支持部50の上面における、ハウジング40の中央領域414のネジ孔あるいは貫通孔に対応する位置である。
ハウジング40が端部領域415において外枠30にネジ止めされて固定され、且つハウジング40が中央領域414において構造支持部50にネジ止めされて固定されることにより、ハウジング40が保持部60における他の構成部に対してより強固に固定され、保持部60および電力半導体装置100の耐振動性がより良好となる。
つぎに、ステップS130において、ヒートシンク一体型パワーモジュール20が、ハウジング40に搭載される。具体的に、ヒートシンク一体型パワーモジュール20の放熱フィン1aがハウジング40の開口部41の上方から挿入され、ヒートシンク一体型パワーモジュール20がハウジング40に搭載される。
ここで、図2に示すように、ヒートシンク一体型パワーモジュール20は、放熱フィン1aが保持部60の内部に収納された状態で、ヒートシンクベース1bの外周縁部1bpが開口部41に隣接する隣接領域413に載置される。これにより、ハウジング40の隣接領域413においてヒートシンクベース1bが支持されることにより、ヒートシンク一体型パワーモジュール20がハウジング40に保持される。また、ヒートシンク一体型パワーモジュール20は、ハウジング40の面内方向において、ハウジング40の開口部41の中心の位置と、ヒートシンクベース1bの中心の位置とが同じ位置とされて、ハウジング40に搭載される。また、ヒートシンク一体型パワーモジュール20は、ヒートシンク1における複数の放熱フィン1aの奥行方向が開口部の短辺411と平行とされ、ヒートシンク1において複数の放熱フィン1aが配列されている方向である放熱フィン1aの配列方向が開口部の長辺412と平行とされて、ハウジング40に搭載される。
つぎに、ステップS140において、ヒートシンク一体型パワーモジュール20が、ハウジング40にネジ止めされて固定される。図18は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の製造方法の手順の一例を模式的に示す第5の上面図である。
具体的に、図18に示すように、ヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bの面内方向における、ヒートシンクベース1bの4つの角部の周辺領域において、当該ヒートシンクベース1bの上方からパワーモジュール固定用ネジ72がネジ締めされることにより、ヒートシンクベース1bが角部の周辺領域においてハウジング40にネジ止めされて固定される。これにより、ヒートシンク一体型パワーモジュール20が、ヒートシンクベース1bの角部の周辺領域においてハウジング40にネジ止めされて固定される。
ハウジング40には、パワーモジュール固定用ネジ72がねじ込まれる箇所に、予め不図示のネジ孔が形成されている。ハウジング40においてパワーモジュール固定用ネジ72がねじ込まれる位置は、端部領域415における開口部41側の位置および中央領域414における開口部41側の位置である。ヒートシンクベース1bには、パワーモジュール固定用ネジ72がねじ込まれる箇所に、予め不図示のネジ孔あるいは不図示の貫通孔が形成されている。ヒートシンクベース1bにおいてパワーモジュール固定用ネジ72がねじ込まれる位置は、ハウジング40の端部領域415のネジ孔に対応する位置である。これにより、図18に示すように、実施の形態1にかかるヒートシンク一体型パワーモジュール20が作製される。
つぎに、ハウジング40に形成された開口部41と、ヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bとのサイズの関係について説明する。図20は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100におけるハウジング40の開口部41とヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bとのサイズの関係の例を説明する第1の模式図である。図20においては、ハウジング40の上面図において、ハウジング40に搭載されるヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bの位置を破線で示している。
電力半導体装置100においては、ヒートシンクベース1bとハウジング40とをネジ止めすることによりヒートシンク一体型パワーモジュール20とハウジング40とを固定可能とするために、図20に示すように、ハウジング40の面内方向において、以下の式(1)から式(4)に示される条件が満たされている。以下の式(1)から式(4)における開口部41は、ハウジング40の開口部41である。
開口部の第1短辺411aの長さ<ヒートシンクベースの第1短辺1bs1の長さ
・・・(1)
開口部の第2短辺411bの長さ<ヒートシンクベースの第2短辺1bs2の長さ
・・・(2)
開口部の第1長辺412aの長さ<ヒートシンクベースの第1長辺1bl1の長さ
・・・(3)
開口部の第2長辺412bの長さ<ヒートシンクベースの第2長辺1bl2の長さ
・・・(4)
上述した式(1)から式(4)に示される条件が満たされることにより、図20に示すように、ヒートシンクベース1bの面内方向における、ヒートシンクベース1bの角部と開口部41の角部との間の4か所の領域において、パワーモジュール固定用ネジ72によってヒートシンクベース1bをハウジング40にネジ止めすることが可能となる。
図21は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100におけるハウジング40の開口部41とヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bとのサイズの関係の例を説明する第2の模式図である。図21においては、ハウジング40の上面図において、ハウジング40に搭載されるヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bの位置を破線で示している。電力半導体装置100においては、ハウジング40の面内方向において、以下の式(5)および式(6)に示される条件が満たされる場合も、ヒートシンクベース1bとハウジング40とをネジ止めすることによりヒートシンク一体型パワーモジュール20とハウジング40とが固定可能である。
開口部の第1長辺412aの長さ<ヒートシンクベースの第1長辺1bl1の長さ・・・(5)
開口部の第2長辺412bの長さ<ヒートシンクベースの第2長辺1bl2の長さ・・・(6)
上述した式(5)および式(6)に示される条件が満たされることにより、ヒートシンクベース1bの面内方向における、ヒートシンクベース1bの4つの角部の周辺領域において、パワーモジュール固定用ネジ72によってヒートシンクベース1bをハウジング40にネジ止めすることが可能となる。この場合は、図21に示すように、ヒートシンクベース1bの4つの角部の周辺領域における、開口部の第1短辺411aとヒートシンクベースの第1短辺1bs1との間の2か所の領域と、開口部の第2短辺411bとヒートシンクベースの第2短辺1bs2との間の2か所の領域とにおいて、パワーモジュール固定用ネジ72をネジ止めすることができる。
図22は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100におけるハウジング40の開口部41とヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bとのサイズの関係の例を説明する第3の模式図である。図22においては、ハウジング40の上面図において、ハウジング40に搭載されるヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bの位置を破線で示している。電力半導体装置100においては、ハウジング40の面内方向において、以下の式(7)および式(8)に示される条件が満たされる場合も、ヒートシンクベース1bとハウジング40とをネジ止めすることによりヒートシンク一体型パワーモジュール20とハウジング40とが固定可能である。
開口部の第1短辺411aの長さ<ヒートシンクベースの第1短辺1bs1の長さ・・・(7)
開口部の第1長辺412aの長さ<ヒートシンクベースの第1長辺1bl1の長さ・・・(8)
上述した式(7)および式(8)に示される条件が満たされることにより、ヒートシンクベース1bの面内方向における、ヒートシンクベース1bの4つの角部の周辺領域において、パワーモジュール固定用ネジ72によってヒートシンクベース1bをハウジング40にネジ止めすることが可能となる。この場合は、図22に示すように、ヒートシンクベース1bの3つの角部の周辺領域における、ヒートシンクベース1bの角部と開口部41の角部との間の2か所の領域と、開口部の第2短辺411bとヒートシンクベースの第2短辺1bs2との間の1か所の領域とにおいて、パワーモジュール固定用ネジ72をネジ止めすることができる。
電力半導体装置100においては、ヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bおよびハウジング40に製造上の反りが発生する可能性があること、ヒートシンク一体型パワーモジュール20において接続されている複数の部品の荷重をハウジング40で受けることを考慮すると、複数の部品が組付けられた後の電力半導体装置100の耐振動性という観点では、電力半導体装置100の耐振動性は、図22に示すネジ止め構造例<図21に示すネジ止め構造例<図20に示すネジ止め構造例、の順で良好となる。
ヒートシンク一体型パワーモジュール20の放熱フィン1aは、ハウジング40の内部に挿入されるため、奥行方向、すなわち風流入方向においては、以下の式(9)に示される条件が満たされている。
放熱フィン1aの奥行方向の長さ<開口部の短辺411の長さ・・・(9)
また、ヒートシンク一体型パワーモジュール20の放熱フィン1aは、ハウジング40の内部に挿入されるため、左右方向、すなわち電力半導体装置100の幅方向においては、以下の式(10)に示される条件が満たされている。
左端部の放熱フィン1aから右端部の放熱フィン1aまでの距離<開口部の長辺412の長さ・・・(10)
つぎに、上述した電力半導体装置100の構造面での効果について説明する。図23は、実施の形態1にかかる比較例の電力半導体装置の製造方法を示す第1の断面図である。図24は、実施の形態1にかかる比較例の電力半導体装置の製造方法を示す第2の断面図である。図23および図24では、パワーモジュール固定用ネジ72がネジ締めされる箇所における断面を示している。比較例の電力半導体装置は、保持部60に構造支持部50を備えないこと以外は、電力半導体装置100と同じ構造を有する。図23および図24では、実施の形態1にかかる電力半導体装置100と同じ構成については、電力半導体装置100と同じ符号を付している。
比較例の電力半導体装置においても、図23に矢印に示す方向にパワーモジュール固定用ネジ72のネジ締めを行って、ヒートシンクベース1bとハウジング40とがパワーモジュール固定用ネジ72を用いて固定される。この場合、ハウジング40の中央領域414においてパワーモジュール固定用ネジ72のネジ締めを行うと、パワーモジュール固定用ネジ72のネジ締結の荷重がヒートシンクベース1bを介してハウジング40に加わる。このため、保持部60に構造支持部50が設けられていない場合には、パワーモジュール固定用ネジ72のネジ締めにより加わる荷重によって、図24に示すようにハウジング40が撓んでしまう場合がある。ハウジング40が撓んだ場合、ヒートシンク一体型パワーモジュール20をハウジング40に固定できない可能性がある。
また、ハウジング40が撓んだ状態でヒートシンク一体型パワーモジュール20をハウジング40に固定できた場合でも、ヒートシンク一体型パワーモジュール20に他の部品が取り付けられて完成された製品においては耐振動性が悪化し、比較例の電力半導体装置に加わる振動に起因した繰り返し疲労によって、ハウジング固定用ネジ71およびパワーモジュール固定用ネジ72といったネジの締結部が破損し、ネジの締結部およびネジの締結部の周辺の構成部が破損する可能性がある。
上記の問題点を解決するためには、ハウジング40の剛性を上げる必要、具体的にはハウジング40の厚みを厚くする必要がある。ハウジング40の厚みを厚くした場合には、電力半導体装置の重量が増加し、電力半導体装置の軽量化の妨げとなる。
一方、実施の形態1にかかる電力半導体装置100では、保持部60においてハウジング40の中央領域414に対応する領域に構造支持部50が設けられている。すなわち、電力半導体装置100では、外枠30における底面部31の内面31aに構造支持部50が取り付けられて固定されている。これにより、電力半導体装置100では、ハウジング40の中央領域414におけるパワーモジュール固定用ネジ72のネジ締めによりヒートシンク一体型パワーモジュール20をハウジング40に固定する際の荷重を、構造支持部50が受けることができる。そして、ヒートシンク一体型パワーモジュール20に他の部品が取り付けられて完成された製品においては、電力半導体装置100に振動が加わる際の荷重も構造支持部50が受けることが可能である。したがって、電力半導体装置100は、生産性が高く、高い耐振動性を有する電力半導体装置を実現することが可能である。
つぎに、上述した電力半導体装置100の放熱性能面での効果について説明する。図25は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における保持部60の内部における風の流れを説明する模式図である。図26は、実施の形態1にかかる比較例の電力半導体装置における保持部60の内部における風の流れを説明する模式図である。図25および図26においては、電力半導体装置の一部を透過して見た状態を示している。比較例の電力半導体装置では、電力半導体装置100と同様に、送風システムから電力半導体装置100に送風される空気流200が保持部60の内部においてヒートシンク1の放熱フィン1aの周囲を流れることにより、パワーモジュール11の半導体素子5において発生した熱の放熱フィン1aにおける放熱が促進される。
しかしながら、比較例の電力半導体装置では、ハウジング40の中央領域414に対応する領域に構造支持部50が設けられていないため、図26に示すように、放熱フィン1aにおける放熱に寄与しない相対的に風量が多い第1気流ベクトル211が、ハウジング40の中央領域414に対応する領域に発生する。そして、第1気流ベクトル211が発生することにより、保持部60の内部の気流が乱れ、放熱フィン1aにおける放熱に寄与しない第2気流ベクトル212が、保持部60の内部におけるハウジング40の中央領域414に対応する領域および保持部60の内部におけるハウジング40の端部領域415に対応する領域に発生する。この場合、隣り合う放熱フィン1a間を流れる空気流の流速が低下し、放熱フィン1a間における放熱フィン1a間から放熱フィン1aの周囲の空気への熱伝達率が低下し、ヒートシンク1の放熱性能が低下してしまう。
一方、ハウジング40の中央領域414に対応する領域に構造支持部50が設けられている電力半導体装置100では、図25に示すように、上記のような放熱フィン1aにおける放熱に寄与しない第1気流ベクトル211および第2気流ベクトル212が発生しない。このため、電力半導体装置100では、整流された空気流200が隣り合う放熱フィン1a間に流入するため、設計通りの放熱フィン1aの放熱性能を得ることができる。
上述した電力半導体装置100では、高い放熱性を有する複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20を使用することで、複数のパワーモジュールが熱伝導グリスを用いて1つのヒートシンクに固定された構造を有する電力半導体装置、および個片化されたヒートシンクと1つのパワーモジュールとが熱伝導グリスを用いて固定された構造を有する電力半導体装置と比較して、電力容量が大きい電力半導体装置を、生産性良く実現できる。また、電力半導体装置100では、ヒートシンク一体型パワーモジュール20を交換する場合、熱伝導グリスが使用されていないため、熱伝導グリスの除去及び再配置といった処理が不要となり、ネジを着脱するだけでヒートシンク一体型パワーモジュール20を交換することでき、生産性およびメンテナンス性が良い。
つぎに、外枠30に対する構造支持部50の固定方法について説明する。図27は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における外枠30への構造支持部50の固定方法の例を示す第1の断面図である。図28は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における外枠30への構造支持部50の固定方法の例を示す第2の断面図である。
図27に示す例では、構造支持部50は、溶接部73により外枠30における底面部31の内面31aに固定されている。図28に示す例では、構造支持部50は、構造支持部固定用ネジ74により外枠30における底面部31の内面31aに固定されている。なお、外枠30への構造支持部50の固定方法は上記の例に限定されず、接着剤による外枠30への構造支持部50の固定といった、構造支持部50を外枠30に固定できる方法であれば任意の方法を適用可能である。
図28に示す例では、構造支持部固定用ネジ74がネジ締めされる箇所における断面を示している。図28に示す例では、構造支持部50には、ネジ固定領域50aが、当該構造支持部50の長手方向における一部の領域に設けられている。ネジ固定領域50aは、構造支持部50を構造支持部固定用ネジ74により外枠30における底面部31の内面31aに固定するための領域である。
ネジ固定領域50aは、構造支持部固定用ネジ74により構造支持部50を外枠30に固定できる位置であれば、構造支持部50の長手方向における任意の位置に設けることができる。また、ネジ固定領域50aは、構造支持部固定用ネジ74により構造支持部50を外枠30に固定できれば、任意の数量で設けることができる。ネジ固定領域50aは、例えば構造支持部50の長手方向における中央部の1か所に設けられてもよく、また例えば構造支持部50の長手方向における両端側の2か所に設けられてもよい。
ネジ固定領域50aの高さは、構造支持部固定用ネジ74により構造支持部50を外枠30に固定できれば、任意の高さとすることができる。図28に示す例では、ネジ固定領域50aの高さは、構造支持部50におけるネジ固定領域50a以外の領域の高さの1/2の高さとされている。また、ネジ固定領域50aの高さは、構造支持部50におけるネジ固定領域50a以外の領域の高さと同じ高さとされてもよい。この場合、ネジ固定領域50aの上部に対応する領域には、ハウジング40の中央領域414が設けられない。
図29は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における外枠30への構造支持部50の固定方法の例を示す第3の断面図である。図30は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における外枠30への構造支持部50の固定方法の例を示す第4の断面図である。図29は、図27に対応する図であり、構造支持部50は、溶接部73により外枠30における底面部31の内面31aに固定されている。図30は、図28に対応する図であり、構造支持部50は、構造支持部固定用ネジ74により外枠30における底面部31の内面31aに固定されている。
保持部60を構成する各部品の製造における寸法のバラつきおよび組立公差を考慮すると、図29および図30に示すように、ハウジング40の中央領域414と構造支持部50の上面とが接触せずに、ハウジング40の中央領域414と構造支持部50の上面との間に隙間80が発生する可能性がある。この場合、パワーモジュール固定用ネジ72を用いてヒートシンク一体型パワーモジュール20とハウジング40とを固定する際に、パワーモジュール固定用ネジ72のネジ締めによりハウジング40が変形することで、ハウジング40の中央領域414と構造支持部50の上面とが接触する。そして、ハウジング40の中央領域414と構造支持部50の上面とが接触することにより、ヒートシンク一体型パワーモジュール20をハウジング40に固定する際の荷重を、構造支持部50が受けることができる。
このため、図29に示すように、ハウジング40の中央領域414と構造支持部50の上面との間に隙間80が発生する場合であっても、保持部60に構造支持部50を設けることで、パワーモジュール固定用ネジ72のネジ締め時のハウジング40の変形を小さくできる。これにより、電力半導体装置100は、パワーモジュール固定用ネジ72のネジ締め時のハウジング40の撓みを抑制することができ、ヒートシンク一体型パワーモジュール20をハウジング40に固定する際の不良の発生率を低減でき、生産性が向上する。さらに、ヒートシンク一体型パワーモジュール20に他の部品が取り付けられて完成された製品における耐振動性についても、電力半導体装置100に振動が加わる際のハウジング40の変形を抑制し、またはハウジング40の変形を制御できる。したがって、製品の耐振動性が向上する。
上記のように、電力半導体装置100は、ハウジング40と構造支持部50とが接触しない状態、すなわちハウジング40の中央領域414と構造支持部50の上面との間に隙間80がある場合でも、ハウジング40の中央領域414と構造支持部50の上面との間に隙間80が無い場合と同様の効果を得ることができる。
上記においては、構造支持部50が外枠30に固定され、外枠30にハウジング40が固定された電力半導体装置100の構造について説明したが、構造支持部50がハウジング40に固定される場合においても、上記と同様の効果を得ることができる。図31は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100におけるハウジング40への構造支持部50の固定方法の例を示す第1の断面図である。図32は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100におけるハウジング40への構造支持部50の固定方法の例を示す第2の断面図である。
図31に示す例では、構造支持部50は、上面が溶接部75によりハウジング40の中央領域414に固定され、下面が外枠30の底面部31の内面31aと接している。図32に示す例では、構造支持部50は、構造支持部固定用ネジ76によりハウジング40の中央領域414に固定され、下面が外枠30の底面部31の内面31aと接している。なお、ハウジング40への構造支持部50の固定方法は、上記の例に限定されず、接着剤によるハウジング40への構造支持部50の固定といった、構造支持部50をハウジング40に固定できる方法であれば任意の方法を適用可能である。
図33は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100の他の製造方法の手順を示すフローチャートである。ここでは、構造支持部50がハウジング40に固定される場合における電力半導体装置100の製造方法について説明する。
まず、ステップS210において、構造支持部50が、ハウジング40に取り付けられて固定される。構造支持部50は、上述したように溶接部75あるいは構造支持部固定用ネジ76によりハウジング40に固定される。
つぎに、ステップS220において、ステップS120の場合と同様にして、ハウジング40が、ハウジング固定用ネジ71を用いて外枠30にネジ止めされて固定される。
つぎに、ステップS230において、ステップS130の場合と同様にして、ヒートシンク一体型パワーモジュール20が、ハウジング40に搭載される。
つぎに、ステップS240において、ステップS140の場合と同様にして、ヒートシンク一体型パワーモジュール20が、ハウジング40にネジ止めされて固定される。
図34は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100に弾性機能付き構造支持部77が適用された場合の電力半導体装置100の構造を示す第1の断面図である。図35は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100に弾性機能付き構造支持部77が適用された場合の電力半導体装置100の構造を示す第2の断面図である。ハウジング40と構造支持部50とが確実に接した状態でハウジング40と構造支持部50とを固定するために、図34および図35に示すように、弾性機能付き構造支持部77を使用することも可能である。
弾性機能付き構造支持部77は、弾性を有する構造支持部である。このため、ハウジング40と構造支持部50とを固定するために弾性機能付き構造支持部77を使用することで、保持部60を構成する各部品の製造における寸法のバラつきまたは組立公差が生じている場合であっても、弾性機能付き構造支持部77の弾性によって、各部品の製造における寸法のバラつきおよび組立公差が吸収される。これにより、電力半導体装置100は、ハウジング40と構造支持部50とが確実に接した状態でハウジング40と構造支持部50とを固定することが可能となる。電力半導体装置100は、弾性機能付き構造支持部77が使用されることで、耐振動性をさらに安定して向上させることが可能である。
図34および図35に示す例では、弾性機能付き構造支持部77は、構造支持部が2つの分割部である第1分割構造支持部77a1と第2分割構造支持部77a2とに分割され、第1分割構造支持部77a1と第2分割構造支持部77a2との間にコイルスプリング77bが挿入された構造を有する。第1分割構造支持部77a1は、高さ方向においてハウジング40の中央領域414側に配置されている。第2分割構造支持部77a2は、高さ方向において外枠30の底面部31側に配置されている。
また、図34に示す例では、弾性機能付き構造支持部77は、高さ方向において外枠30の底面部31側に配置された第2分割構造支持部77a2が、溶接部73により外枠30における底面部31の内面31aに固定されている。一方、図35に示す例では、弾性機能付き構造支持部77は、高さ方向において外枠30の底面部31側に配置された第2分割構造支持部77a2が、構造支持部固定用ネジ74により外枠30における底面部31の内面31aに固定されている。
図35に示す例では、構造支持部固定用ネジ74がネジ締めされる箇所における断面を示している。図35に示す例では、第2分割構造支持部77a2には、ネジ固定領域77cが、第2分割構造支持部77a2の長手方向における一部の領域に設けられている。第2分割構造支持部77a2の長手方向は、弾性機能付き構造支持部77の長手方向と換言できる。ネジ固定領域77cは、第2分割構造支持部77a2を構造支持部固定用ネジ74により外枠30における底面部31の内面31aに固定するための領域である。高さ方向において、ネジ固定領域77cの上方には、コイルスプリング77bおよび第1分割構造支持部77a1は配置されない。
ネジ固定領域77cは、構造支持部固定用ネジ74により第2分割構造支持部77a2を外枠30に固定できる位置であれば、第2分割構造支持部77a2の長手方向における任意の位置に設けることができる。また、ネジ固定領域77cは、構造支持部固定用ネジ74により第2分割構造支持部77a2を外枠30に固定できれば、任意の数量で設けることができる。ネジ固定領域77cは、例えば第2分割構造支持部77a2の長手方向における中央部の1か所に設けられてもよく、また例えば第2分割構造支持部77a2の長手方向における両端側の2か所に設けられてもよい。
ネジ固定領域77cの高さは、構造支持部固定用ネジ74により第2分割構造支持部77a2を外枠30に固定できれば、任意の高さとすることができる。図35に示す例では、ネジ固定領域77cの高さは、第2分割構造支持部77a2におけるネジ固定領域77c以外の領域の高さの1/3の高さとされている。また、ネジ固定領域77cの高さは、第2分割構造支持部77a2におけるネジ固定領域77c以外の領域の高さと同じ高さとされてもよい。
なお、弾性機能付き構造支持部77の構造は、上記の例に限定されない。例えば、電力半導体装置100は、外枠30の底面部31の内面31aと構造支持部50との間、およびハウジング40の中央領域414と構造支持部50との間の少なくとも一方に、弾性機能を有するスポンジが挟み込まれた構成を備える場合でも、上記と同様の効果を得ることができる。
つぎに、構造支持部50と、ヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bと、ハウジング40との位置関係について説明する。図36は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における、構造支持部50と、ヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bと、ハウジング40との位置関係を説明する第1の断面図である。
電力半導体装置100におけるネジ締め部に着目すると、図36に示すように、構造支持部50の幅の寸法である構造支持部幅寸法50Lが、左右方向において隣接するヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1b間の隙間81の寸法よりも大きくされることが好ましい。構造支持部幅寸法50Lは、ハウジング40の中央領域414においてパワーモジュール固定用ネジ72のネジ締めが可能な寸法とされる。
そして、左右方向において隣接するヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bが、ハウジング40に搭載される。この状態で、ヒートシンクベース1bとハウジング40とが、ハウジング40の端部領域415においてパワーモジュール固定用ネジ72により固定される。また、ハウジング40の中央領域414の上方からパワーモジュール固定用ネジ72がネジ締めされることにより、ヒートシンクベース1bとハウジング40と構造支持部50とが、パワーモジュール固定用ネジ72により固定される。
これにより、ヒートシンク一体型パワーモジュール29が、保持部60に強固に固定され、耐振動性がより高い電力半導体装置100の構造が得られる。すなわち、上記の構造とされることにより、保持部60の内部におけるXZ平面に沿った風路断面積が小さくなり、隣り合う放熱フィン1a間を流れる空気流の流速が大きくなり、放熱フィン1a間から放熱フィン1aの周囲の空気への熱伝達率が大きくなり、ヒートシンク1の放熱性能が最も良好となる。
図37は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における、構造支持部50と、ヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bと、ハウジング40との関係を説明する第2の断面図である。図38は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における、構造支持部50と、ヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1bと、ハウジング40との関係を説明する第3の断面図である。
図37に示す構造では、構造支持部幅寸法50Lが、左右方向において隣接するヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1b間の隙間81の寸法よりも大きくされている。図38に示す構造では、構造支持部幅寸法50Lが、左右方向において隣接するヒートシンク一体型パワーモジュール20のヒートシンクベース1b間の隙間81の寸法よりも小さくされている。隙間81の寸法は、ハウジング40の中央領域414においてハウジング固定用ネジ71のネジ締めが可能な寸法とされる。
図37に示す構造および図38に示す構造では、ともにハウジング40の中央領域414の上方からハウジング固定用ネジ71がネジ締めされることにより、ハウジング40と構造支持部50とが、ハウジング固定用ネジ71により固定されている。図37に示す構造および図38に示す構造では、保持部60の固定強度を確保しつつ、耐振動性が高い電力半導体装置100の構造が得られる。なお、電力半導体装置100の耐振動性は、図36に示す構造>図37に示す構造>図38に示す構造の順に良好となる。
また、図36に示す構造では、図37に示す構造および図38に示す構造と比べて、使用するネジの本数の削減が可能であり、電力半導体装置100の生産性が向上し、また電力半導体装置100の製造工ストを低減できる。
つぎに、構造支持部50の形状および配置について説明する。図39は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における構造支持部50の形状および配置を説明する第1の上面図である。図39においては、電力半導体装置100の一部の構成を省略している。図39に示す構造では、構造支持部50は、外枠30の底面部31の面内方向およびハウジング40の面内方向において、当該構造支持部50の長手方向が、電力半導体装置100の奥行方向、すなわち、保持部60の内部における空気流200の進行方向と平行とされている。また、構造支持部50は、外枠30の正面側の端部33から外枠30の背面側の端部34まで、連続して延在している。すなわち、構造支持部50は、保持部60における風の流入口から風の流出口までの領域において、流入口から流出口に向かう方向において連続して延在している。なお、構造支持部50の形状および配置は、図39に示す構造に限定されない。
図40は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における構造支持部50の形状および配置を説明する第2の上面図である。図40においては、電力半導体装置100の一部の構成を省略している。図40に示す構造では、構造支持部50は、外枠30の底面部31の面内方向およびハウジング40の面内方向において、左右方向において隣接する2つのヒートシンク一体型パワーモジュール20の各ヒートシンクベース1bの隣接する角部を含む、保持部60の内部を流れる空気流200の進行方向の風上側の一部の領域に部分的に配置されている。また、構造支持部50は、外枠30の底面部31の面内方向およびハウジング40の面内方向において、左右方向において隣接する2つのヒートシンク一体型パワーモジュール20の各ヒートシンクベース1bの隣接する角部を含む、保持部60の内部を流れる空気流200の進行方向の風下側の一部の領域に部分的に配置されている。すなわち、構造支持部50は、保持部60における風の流入口から風の流出口までの領域において、流入口から流出口に向かう方向において不連続に配置されている。
図41は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における構造支持部50の形状および配置を説明する第3の上面図である。図41においては、電力半導体装置100の一部の構成を省略している。図41に示す構造では、構造支持部50は、外枠30の底面部31の面内方向およびハウジング40の面内方向において、左右方向において隣接する風上側の2つのヒートシンク一体型パワーモジュール20の各ヒートシンクベース1bの隣接する角部を含む、保持部60の内部を流れる空気流200の進行方向の風上側の一部の領域に部分的に配置されている。また、構造支持部50は、外枠30の底面部31の面内方向およびハウジング40の面内方向において、左右方向において隣接する風下側の2つのヒートシンク一体型パワーモジュール20の各ヒートシンクベース1bの隣接する角部を含む、保持部60の内部を流れる空気流200の進行方向の風下側の一部の領域に部分的に配置されている。また、構造支持部50は、外枠30の底面部31の面内方向およびハウジング40の面内方向において、隣接する4つのヒートシンク一体型パワーモジュール20の各ヒートシンクベース1bの隣接する角部を含む一部の領域に部分的に配置されている。すなわち、構造支持部50は、保持部60における風の流入口から風の流出口までの領域において、流入口から流出口に向かう方向において不連続に配置されている。
図42は、実施の形態1にかかる電力半導体装置100における構造支持部50の形状および配置を説明する第4の上面図である。図42においては、電力半導体装置100の一部の構成を省略している。図42に示す構造では、構造支持部50は、外枠30の底面部31の面内方向およびハウジング40の面内方向において、左右方向において隣接する2つのヒートシンク一体型パワーモジュール20の各ヒートシンクベース1bにおける奥行方向の中央領域を含む一部の領域に部分的に配置されている。
図39から図42に示す構造により、上述したように耐振動性が高い電力半導体装置100が得られる。また、電力半導体装置100において、保持部60における空気流200の風上側に構造支持部50を配置することで、送風システムから送風される空気流200を整流した状態で、隣接する放熱フィン1a間に流入させることができる。これにより、電力半導体装置100は、設計通りの放熱性能を得ることができる。なお、上記の構造による電力半導体装置100の耐振動性の効果は、図39に示す構造>図40に示す構造>図41に示す構造>図42に示す構造の順に良好となる。
上述したように、実施の形態1にかかる電力半導体装置100では、構造支持部50が、複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20と、複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20が搭載されるハウジング40との荷重を受けるように、保持部60の外枠30の底面部31に配置されている。このため、電力半導体装置100では、複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20をハウジング40に固定する際に発生するハウジング40の撓みを抑制することができる。これにより、電力半導体装置100では、ハウジング40が撓んだ場合にヒートシンク1とハウジング49との間に発生する隙間に起因したヒートシンク1の放熱性の低下を抑制または防止することができ、パワーモジュール11において発生した熱の放熱性および耐振動性が向上する。
また、構造支持部50は、外枠30の底面部31において、ハウジング40の中央領域414に対応する領域に配置されている。これにより、構造支持部50は、左右方向において隣り合う2つのヒートシンク一体型パワーモジュール20の荷重を均等に受けることができ、複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20をハウジング40に固定する際に発生するハウジング40の撓みを、より抑制することができる。
また、電力半導体装置100では、構造支持部50が保持部60の内部における風上側に配置されることで、保持部60内部に流入する空気流200を整流するように構造支持部50が風路を形成し、整流された風をヒートシンク1に流入させることができるため、パワーモジュール11において発生した熱の放熱性が向上する。
そして、電力半導体装置100の構成によれば、高い放熱性能を有する複数のヒートシンク一体型パワーモジュール20を、高い放熱性および高い耐振動性を有した状態で、複数のパワーモジュールが使用される高容量帯の電力システムに適用可能となる。
したがって、実施の形態1にかかる電力半導体装置100によれば、複数のパワーモジュールおよびヒートシンクが取り付けられるハウジングの撓みを抑制することができる、という効果を奏する。
実施の形態2.
図43は、実施の形態2にかかる電力半導体装置101の構成を示す断面図である。実施の形態2にかかる電力半導体装置101は、構造支持部50の代わりに構造支持部51を備える点が実施の形態1にかかる電力半導体装置100と異なる。構造支持部51は、当該構造支持部51を奥行方向に貫通する貫通孔51aを有する。すなわち、構造支持部51は、保持部60の流入口から流出口に向かう方向において構造支持部51を貫通する貫通孔51aを有する。電力半導体装置101では、構造支持部51が貫通孔51aを有することで当該構造支持部51の表面積が広くなるため、パワーモジュール11の半導体素子5での発熱の当該構造支持部51での放熱性能が向上する。
図44は、実施の形態2にかかる電力半導体装置102の構成を示す断面図である。実施の形態2にかかる電力半導体装置102は、構造支持部50の代わりに構造支持部52を備える点が実施の形態1にかかる電力半導体装置100と異なる。構造支持部52は、構造支持部51の構造に加えて、当該構造支持部52の表面に凹凸52aを有する。電力半導体装置102では、構造支持部52が凹凸52aを有することで当該構造支持部52の表面積が広くなるため、パワーモジュール11の半導体素子5での発熱の当該構造支持部52での放熱性能が向上する。
実施の形態3.
図45は、実施の形態3にかかるヒートシンク一体型パワーモジュール21の構成を示す断面図である。図46は、実施の形態3にかかる電力半導体装置103の構成を示す断面図である。
上述した電力半導体装置100では、1つのパワーモジュール11に対して1つのヒートシンク1が設けられたヒートシンク一体型パワーモジュール20を用いているため、電力半導体装置100を組み立てる際のハンドリング性、メンテナンス時の部品の着脱性が向上する。一方で、電力半導体装置100では、1つのパワーモジュール11に対して1つのヒートシンク1が個片化されているため、1つのヒートシンクに対して複数のパワーモジュールを搭載する場合と比べて、ヒートシンク一体型パワーモジュール20とハウジング40とを固定するためのネジの本数が増加し、生産性が低下する可能性がある。
そこで、図45に示すように、実施の形態3にかかるヒートシンク一体型パワーモジュール21では、ヒートシンクベース1bの面内方向におけるヒートシンクベース1bの端部に、凸形状部22が設けられている。
図45に示すように、ヒートシンク一体型パワーモジュール21である第1ヒートシンク一体型パワーモジュール21aでは、ヒートシンクベース1bの面内方向におけるヒートシンクベース1bの端部に、凸形状部22である第1凸形状部22aが設けられている。第1凸形状部22aは、ヒートシンクベース1bにおいて、左右方向において隣り合う他の電力半導体装置103側の端部に設けられている。また、第1凸形状部22aは、ヒートシンクベース1bの端部における上部に設けられている。
図45に示すように、ヒートシンク一体型パワーモジュール21である第2ヒートシンク一体型パワーモジュール21bでは、ヒートシンクベース1bの面内方向におけるヒートシンクベース1bの端部に、凸形状部22である第2凸形状部22bが設けられている。第2凸形状部22bは、ヒートシンクベース1bにおいて、左右方向において隣り合う他の電力半導体装置103側の端部に設けられている。また、第2凸形状部22bは、ヒートシンクベース1bの端部における下部に設けられている。
図46に示すように、第1ヒートシンク一体型パワーモジュール21aと第2ヒートシンク一体型パワーモジュール21bとは、第1ヒートシンク一体型パワーモジュール21aの第1凸形状部22aと、第2ヒートシンク一体型パワーモジュール21bの第2凸形状部22bとが重ね合わされてハウジング40に搭載される。そして、重ね合わされた第1凸形状部22aと第2凸形状部22bと、ハウジング40の中央領域414と、構造支持部50とに対してパワーモジュール固定用ネジ72がネジ締めされることにより、第1凸形状部22aと第2凸形状部22bと構造支持部50とが固定される。すなわち、第1凸形状部22aと、第2凸形状部22bと、ハウジング40の中央領域414と、構造支持部50とは、重ね合わされた状態でネジ固定されている。
電力半導体装置103では、このような構造を採用することにより、ヒートシンク一体型パワーモジュール20とハウジング40とを固定するためのネジの本数を削減することができ、生産性が向上する。
さらに、第1凸形状部22aと第2凸形状部22bと構造支持部50とを1本のパワーモジュール固定用ネジ72により固定することで、ハウジング40の中央領域414において第1ヒートシンク一体型パワーモジュール21aと第2ヒートシンク一体型パワーモジュール21bと構造支持部50とを固定する領域を左右方向において狭くすることができる。このため、ヒートシンクベース1bに設ける放熱フィン1aの枚数を増加させることができる。これにより、電力半導体装置103では、パワーモジュール11の半導体素子5での発熱のヒートシンク1による放熱性能が向上する。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。