以下に、本発明にかかる誘導加熱装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
以下の実施例にかかる誘導加熱装置はほぼ左右対称の構造であり、基本的に左側の構成要素には符号の添え字に「a」を付し、右側の構成要素には「b」を付す。また、左右を明示する場合には、左側の構成要素には符号の添え字に「L」を付し、右側の構成要素には「R」を付す。ただし上下、左右など方向の表記は説明の便宜上のものであり、発明を限定するものではない。
図1は、本発明の実施形態である誘導加熱装置10を示す斜視図である。誘導加熱装置10は、例えば熱容量の異なる2つのワーク(第1ワーク)12aとワーク(第2ワーク)12bとを同時に加熱することに用いられる。また、例えば1つのワークの2か所を同時に加熱するという要求仕様がある場合には、ワーク12aに相当する部分とワーク12bに相当する部分とが一体のものであってもよい。被加熱部材のワーク12aとワーク12bとは薄板状の接合材料を介して端部同士が突き合わされ、加熱されることにより接合される。以下の例では、接合材料にロウ材が用いられワーク12aとワーク12bとはロウ付けされるものとする。このような場合、ワーク12aとワーク12bとが均等に加熱されることが好ましい。
ワーク12a,12bは、例えば長尺な薄板形状であって、図1の横方向に延在するように配置されている。ワーク12a,12bは、電気伝導性のよい金属(例えば、銅や銅合金等)である。ワーク12aとワーク12bとは厚み、幅、材質等の違いにより熱容量が異なっている。ワーク12aは、ワーク12bとの突合せ箇所であるロウ付け部14から離れた箇所でセット台16aに載置され、上から押え板18aで押さえられている。同様にワーク12bは、ロウ付け部14から離れた箇所でセット台16bに載置され、上から押え板18bで押さえられている。
誘導加熱装置10は、ワーク12a,12bの上方に配置された第1コア20と、ワーク12a,12bの下方に配置された第2コア22とを備える。第1コア20および第2コア22は磁性体で構成された鉄心であって、例えばフェライトが用いられる。
第1コア20は2つの磁極24a,24bと、磁極24aと磁極24bとの間に介在するブロック状の中間コア26とを備える。磁極24a,24bは、それぞれZ方向(図1の上下方向)に延在している。図1から明らかなように磁極24aと磁極24bとは別体である。なお、本願で磁極とはコアにおけるコイルが巻回される部分で、ワークに対して磁気的な作用を与える部分を意味する。
磁極24a,24bは、Z軸方向の軸中心に中空部25a,25bを備える。中空部25a,25bの水平断面形状は、例えば円形や矩形である。一般に、鉄心の中央部では磁力の発生が小さいため中空部25a,25bが設けられていても磁気的作用はほとんど低下しない。
磁性体のブロックを筒状に積層して磁極24a,24bを形成することにより、ブロックに囲まれた空間が中空部25a,25bとして形成される。磁極24a,24bの材質としてフェライトを用いる場合、このようにブロックを用いて中空部25a,25bを形成することは、中実体のフェライトに対して機械加工で形成するよりも容易である。中空部25a,25bは細長い空間であり、しかもフェライトは機械加工に適さないためである。後述する磁極54a,54bにおける中空部55a,55bについても同様である。
磁極24aの下端にはコイル28aが巻回されており、磁極24bの下端にはコイル28bが巻回されている。コイル28a,28bおよび後述するコイル58a,58bの導線はリッツ線および銅パイプ等で形成されている。これらのコイル28a,28b,58a,58b(以下、代表的にコイルCとも呼ぶ。)には電気導電率の小さい冷媒を流通させてもよい。
中間コア26は直方体部材であって、磁極24aと磁極24bの双方の上方部を磁気的に接続している。中間コア26は位置が固定されている。磁極24a,24bは後述するように個別に昇降するが、中間コア26はその動作範囲内にあって磁極24a,24bと対向する面積が一定に保たれ、磁束経路断面積が狭まることがない。
磁極24aの下端およびコイル28aは上下左右の4面がカバー30aで覆われ、磁極24bの下端およびコイル28bは上下左右の4面がカバー30bで覆われている。カバー30a,30bは絶縁性、耐熱性があり熱電伝導率の小さい材質(例えば、セラミックスやガラスクロス等からなる無機質系樹脂)で形成される。後述するカバー60も同様である。カバー30a,30bは前後方向の2面が開口しており、図示しないファンの送気によりコイル28a,28bが冷却される。
カバー30a,30bは取付板32a,32bに取り付けられている。取付板32a,32bは可動ベース34a,34bに固定されている。磁極24aはカバー30aの内部において、コイル28aよりも上方の部分が下支持具36aによってカバー30aの内面に固定されている。また、磁極24aは上端近の部分が上支持具38aによって取付板32aに固定されている。下支持具36aおよび上支持具38aによって磁極24aの延在向きはZ方向に正しく維持されている。同様に磁極24bは、下支持具36bおよび上支持具38bによってカバー30bおよび取付板32bに固定されており、延在向きがZ方向に維持されている。カバー30a,30bの下面には、後述するロッド42a,42bの挿通可能な孔が形成されている。
可動ベース34aは、駆動機構40aの可動テーブル40aaに固定されており、アクチュエータ40abの作用下にZ方向の昇降が可能となっている。したがって、磁極24aは可動ベース34aとともにZ方向に昇降し、変位可能である。同様に、可動ベース34b、駆動機構40bの可動テーブル40baに固定されており、アクチュエータ40bbの作用下にZ方向の昇降が可能となっている。したがって、磁極24bおよびコイル28bは可動ベース34bとともにZ方向に昇降し、変位可能である。したがって、磁極24aと磁極24bとコイル28bとは個別の駆動機構40aと駆動機構40bとによる作用により、矢印Zaおよび矢印Zbで示すように独立的な動作が可能である。駆動機構40a,40bは、例えば1軸型ロボットが適用されるが、他の機構でもよい。
なお、基本的にコイル28aは磁極24aに固定されていて該磁極24aとともに昇降し、コイル28bは磁極24bに固定されていて該磁極24bとともに昇降するが、設計条件によってはコイル28a,28bのZ方向位置は固定されていて、磁極24a,24bだけが昇降するようにしてもよい。コイル28a,28bが磁極24a,24bに固定されていて該磁極24a,24bと一体的に昇降する構成では、コイル28a,28bのZ方向位置を保持しておく機構が不要であって簡便である。
磁極24a,24bの中空部25a,25bにはロッド42a,42bが挿通している。ロッド42a,42bの下端は磁極24a,24bの下端からやや突出してワーク12a,12bの上面に当接する。ロッド42a,42bの上部は磁極24a,24bの上端からさらに上方に延出しており、加圧ベース板44の孔を通ってさらに上まで延出している。ロッド42a,42bは加圧ベース板44に固定された中空のリニアガイド46a,46bによって摺動可能な状態で支持されている。リニアガイド46a,46bはそれぞれ加圧ベース板44の孔を貫通して下方に突出する筒部と、加圧ベース板44の上面に当接するフランジ部とを有する。ロッド42a,42bは絶縁性、耐熱性があり熱電伝導率の小さい材質、例えば酸化アルミニウム(通称はアルミナ)、窒化ケイ素またはジルコニアを主成分として形成されている。後述するロッド62a,62bも同様である。
ロッド42a,42bの上端は、下向きの力を発生させる加圧機構48a,48bの作用部である加圧ブロック48aa,48baに接続されている。加圧機構48a,48bの本体部分は加圧ベース板44の上面に固定されている。加圧機構48a,48bは、例えばトグルクランプであり、ロッド42a,42bに対して下向きの押圧力を与え、ワーク12a,12bに対して適度な圧力で当接させる。また、加圧機構48a,48bは所定の操作をすることによりロッド42a,42bを上方に退避させることができ、ワーク12a,12bの着脱が可能になる。加圧ベース板44は左右端がサイドフレーム50a,50bによって支持され、該サイドフレーム50a,50bを介して図示しないメインフレームに固定されている。中間コア26は固定具52を介してメインフレームに固定されている。
図2は、誘導加熱装置10の模式側面図である。図2に示すように、磁極24aと中間コア26との間、および磁極24bと中間コア26との間にはそれぞれ微小な隙間dxが形成されており、磁極24a,24bは摺動摩擦のないスムーズな昇降が可能である。また、磁極24a,24bおよび中間コア26の材質が機械的強度の低いフェライトである場合にも、非接触で相対変位することから損傷することがない。隙間dxは磁束Φが通るのに影響のない程度に十分狭く、かつ寸法誤差が許容されるように設定されており、例えば0.1~0.5mmである。
磁極24aおよびコイル28aは駆動機構40aの作用下に矢印Zaのように昇降し、磁極24aの下端とワーク12aの上端との隙間Daの調整が可能である。また、磁極24bおよびコイル28bは駆動機構40bの作用下に矢印Zbのように昇降し、磁極24bの下端とワーク12bの上端との隙間Dbの調整が可能である。幅dLと幅dRとは個別に調整可能である。
図1および図2に示すように、第2コア22は、2つの磁極54a,54bと、磁極54aと磁極54bとの間に介在するブロック状の連接部56とを備える。磁極54a,54bは中空部55a,55bを備える。磁極54a,54bは、それぞれZ方向に延在している。
また、誘導加熱装置10では、上方の第1コア20と下方の第2コア22とによる1つの閉じたループ状の磁束Φの経路が形成される。磁束Φは、実際上は交番磁束である。この経路上で磁極24aと磁極54aとの対によりギャップ59aが形成され、磁極24bと磁極54bとの対によりギャップ59bが形成されている。これらのギャップ59a,59bにはワーク12a,12bが配置されておりそれぞれが加熱される。ギャップ59a,59bは磁束Φが通ることが出来る程度の幅であり、磁束漏れが小さく、効率的な加熱が可能である。なお、駆動機構40a,40bによる隙間Da,Dbの調整は、ギャップ59aの幅dLの調整、およびギャップ59bの幅dRの調整と実質的に同じである。
磁極54aの上端にはコイル58aが巻回および固定されており、磁極54bの上端にはコイル58bが巻回および固定されている。連接部56は磁極54aと磁極54bの双方の下端部を磁気的に接続している。連接部56は、上記の第1コア20における中間コア26に相当する部材であるが、中間コア26と磁極24a,24bとの間には微小な隙間が設けられているのに対して、連接部56の両端は磁極54a,54bと接して固定されている。つまり、磁極54aと磁極54bとは連接部56を介して接続されて一体化している。磁極54a,磁極54bおよび連接部56は締結具57(図3参照)で周囲から加圧・締結されることにより一体的に接続されている。磁極54a,54bは基本的に上記の磁極24a,24bと同じ構造である。
磁極24aの下端と磁極54aの上端とは対を為し、ワーク12aが配置されるギャップ(第1ギャップ)59aを介してZ方向に対向して配置され、磁極24bの下端と磁極54bの上端とは対を為し、ワーク12bが配置されるギャップ(第2ギャップ)59bを介してZ方向に対向して配置されている。
磁極54a,54b、コイル58a,58bおよび連接部56は上下左右の4面がカバー60で覆われている。カバー60は、第2コア22に沿って略U字形状となっている。カバー60は前後方向の2面が開口しており、図示しないファンの送気によりコイル58a,58bが冷却される。カバー60の上面には、ロッド62a,62bの挿通可能な孔が形成されている。カバー60はメインフレームに固定されている。
図3は、誘導加熱装置10の断面側面図である。図4は、第2コア22における磁極54aの上端とその近傍を示す断面側面図である。図3および図4に示すように、磁極54a,54bの中空部55a,55bには、中空のロッド62a,62bが挿通している。ロッド62a,62bの上端は磁極54a,54bの上端からやや突出し、筒フランジ64a,64bを介してワーク12a,12bの下面に当接する。ロッド62a,62bの下部は磁極54a,54bの下端からさらに下方に延出しており、下フレーム64に対して位置調整接続具66a,66bによって固定されている。下フレーム64はメインフレームに固定されている。筒フランジ64a,64bの磁極54a,54bからの突出量は、位置調整接続具66a,66bによって調整可能である。位置調整接続具66a,66bは、例えばネジ・ナット式構造で工具を用いて調整する。筒フランジ64a,64bは、熱伝導率が小さい絶縁体(セラミックス、酸化アルミニウム、窒化珪素等)で形成してある。
ワーク12aはロッド42aと筒フランジ64aとによって上下両面を挟持されて安定する。ワーク12bはロッド42bと筒フランジ64bとによって上下両面を挟持されて安定する。ロッド42a,42bと筒フランジ64a,64bとは同軸上で対向し、ワーク12a,12bを挟持する。ワーク12aとワーク12bとのロウ付け部14は、セット台16a,16bからやや離間しているが、近い箇所をロッド42a,42bおよび筒フランジ64a,64bによって支持されることから、それぞれ2点支持となり、いわゆる片持ち梁のような状態とならず安定する。したがって、ワーク12aとワーク12bとは正確に突き合わされてロウ付け精度が向上する。また、ロウ付け部14の近くがロッド42a,42bおよび筒フランジ64a,64bによって支持されていることから、加熱による反り返りなどの変形が抑制されてロウ付け精度が向上する。設計条件によっては(例えば、ワーク12aとワーク12bとが一体である場合)、ロッド42aと筒フランジ64aとによる固定か、ロッド42bと筒フランジ64bによる固定のいずれか一方だけでもよい。
ロッド62a,62bおよび筒フランジ64a,64bの中空部には温度センサ(温度検出手段)68a,68bが挿通している。温度センサ68a,68bは、下端の本体部68aa,68baと、上端の感熱部68ab,68bbと、これらの間を連接するパイプ68ac,68bcとを有する。パイプ68ac,68bcは、例えばステンレス製である。パイプ68ac,68bcは下フレーム64の孔を通り該下フレーム64よりも下方に突出している。下フレーム64の下面にはベース部材70a,70bが固定されており、パイプ68ac,68bcはベース部材70a,70bの孔を貫通して下方に延在している。本体部68aa,68baには中空部材72a,72bが固定されている。
ベース部材70a,70bと中空部材72a,72bとの間にはスプリング74a,74bが係止されている。スプリング74a,74bは中空部材72a,72bを介して温度センサ68a,68bを適度な力で上方に向かって引き上げるように付勢している。これにより、温度センサ68a(図4参照)は上端の感熱部68abがワーク12aに当接する。感熱部68abには板バネ機構が設けられており、隙間なく適度な圧力でワーク12aに当接する。図4では、左側の温度センサ68aを例示しているが右側の温度センサ68bも同様である。このように、温度センサ68a,68bは感熱部68ab,68bbがワーク12a,12bに接触することにより、該ワーク12a,12bの温度を正確に計測することができる。
図5は、誘導加熱装置10および該誘導加熱装置10を含む加熱システム80のブロック図である。図5において動力線は実線矢印で示し、信号線は破線矢印で示す。図5に示すように、加熱システム80は、誘導加熱装置10と、制御部82と、操作表示器84と、インバータ86と、駆動制御部88a,88bとを備える。これらの区分は便宜上のものであり、例えば制御部82およびインバータ86は誘導加熱装置10の一部としてもよい。
制御部82は加熱システム80を統括的に制御する部分である。操作表示器84は、制御部82と接続されており各種の入力操作や状態表示を行う部分である。操作表示器84は、ワーク12a,12bを加熱させる1以上の動作パターン(例えば、加熱温度や加熱時間)にかかる情報や駆動機構40a,40bの可動の上限値や下限値の設定情報を信号100によって制御部82に通知する。制御部82は信号102によって各種の情報を操作表示器84に表示させる。
インバータ86は制御部82の制御下において4つのコイルCに交流電流を供給する。操作表示器84に設けられた運転スイッチが操作されると、制御部82は予めプログラムされた条件でインバータ86に対して信号104により加熱を指令する。インバータ86は4つのコイルCの動作状態(例えば、消費電力、電流値、周波数など)の情報を信号106によって制御部82に通知する。
駆動制御部88a,88bは制御部82の制御下において駆動機構40a,40bの制御を行う。駆動制御部88aは、誘導加熱装置10における左側の一対の磁極24aと磁極54aとのギャップ59aのZ方向の幅dLを制御部82に供給する。駆動制御部88bは、誘導加熱装置10における右側の一対の磁極24bと磁極54bとのギャップ59bのZ方向の幅dRを制御部82に供給する。制御部82は後述するロジックに基づいて幅dL,dRを調整するための信号108,110を駆動制御部88a,88bに供給する。信号108,110には、駆動機構40a,40bにおける可動テーブル40aa,40baの移動方向と移動距離とが含まれる。駆動制御部88a,88bと制御部82との間で供給される幅dLおよび幅dRに係る信号は、幅dLおよび幅dRを特定することができる信号であれればよいことは勿論である。幅dL,dRは、例えば所定の原点位置からの積算移動量として計算できる。
インバータ86の2本の電力線はコイル58a,58bの各端部に接続されている。コイル58aとコイル28aとは接続線90aで接続され、コイル58bとコイル28bとは接続線90bで接続されている。また、コイル28aとコイル28bとは接続線90cで接続されている。接続線90a,90bは、コイル28a,28bとコイル58a,58bとが適度に離間可能な程度に余裕のある長さとなっており、適度な弾性・可撓性を有する。
4つのコイルCは、それぞれループ状の磁束経路に沿った同一方向に磁束Φ(図2参照)を発生させる向きに巻回されており、それぞれ直列に接続されている。このように、直列に接続された4つのコイルCは1台のインバータ86で駆動することができ、4つのコイルCに加わる電流が同期し、周波数や位相のずれがなく磁気干渉が生じない。磁気干渉がないため、インバータ86の出力ロスを低減できる。
温度センサ68a,68bで計測されたワーク12a,12bの温度TL,TRは制御部82に供給される。
次に、誘導加熱装置10によってワーク12a,12bを加熱する手順について説明する。まず、図2に示すように、ワーク12aとワーク12bとの接触面であるロウ付け部14が、第1コア20および第2コア22の左右中心位置となるよう、セット台16a,16bおよび押え板18a,18bで固定する。ロウ付けされるのはロウ付け部14であるが、温度センサ68a,68bによる温度測定点はロウ付け部14から等距離となり、偏りのない計測が可能となる。
ワーク12a,12bをセットする際、位置調整接続具66a,66bによりロッド62a,62bの高さ調整を行っておく。そして、加圧機構48aを操作することによってワーク12aをロッド42aとロッド62aとにより挟持し、加圧機構48bを操作することによってワーク12bをロッド42bとロッド62bとにより挟持する。これにより、ワーク12a,12bが安定して支持される。ワーク12a,12bはロウ付け部14の近傍をそれぞれ支持されることから、加熱の影響による反り返りが抑制される。ワーク12a,12bの高さは、例えば第1コア20の両端の磁極24a,24bが所定の初期高さであるときに、ギャップ59a,59bの中間高さにセットされる。なお、ロッド42a,62a,42b,62b、セット台16a,16bおよび押え板18a,18bはワーク12a,12bの横方向の熱膨張を許容する程度の圧力で固定してもよい。セット台16a,16bおよび押え板18a,18bは、ワーク12a,12bをZ方向および前後方向について固定し、横方向にはフリーであってもよい。
ワーク12a,12bをセットした後に、操作者は操作表示器84によって加熱条件設定を行う。加熱条件設定は、例えばワーク12a,12bを加熱する目標温度T1および加熱時間tiを連続して多段階に加熱する工程段階ごとの条件設定や、Z方向に動作する磁極24a,24bの下端がワーク12a,12bの上面と接触しないように該ワーク12a,12bの厚さに応じて変動するギャップ59a,59bの下限値の設定などである。これらの加熱条件の設定を行った後に、運転スイッチを操作して加熱を開始する。これ以降の誘導加熱装置10における加熱処理は基本的に制御部82によって自動的に行われる。
図6は、制御部82で実行されるインバータ86の制御手順を示すフローチャートであり、図7は、制御部82で実行される駆動制御部88a,88bの制御手順を示すフローチャートである。
概念的には、図6に示す処理でワーク12a,12bの統合的な温度調整制御を行い、図7に示す処理でワーク12aの温度TLとワーク12bの温度TRとが等しくなるように駆動機構40a,40bを駆動する制御を行う。制御部82では所定の初期設定を行った後に図6および図7で示される2つの制御を同時並行的に実行することにより加熱処理を行う。制御部82が行う初期設定は、幅dL,dRを初期値dL0、dR0にセットする処理や、ワーク12a,12bを加熱する目標温度設定などを含む。
幅dL,dRを初期値dL0,dR0にセットする処理は、指令値dLc,dRcを以下のように初期化することにより行われる。以下、各設定式における「←」は右辺を左辺に代入することを示す。
dLc←dL0
dRc←dR0
指令値dLcは駆動機構40aに供給されることになる幅dLの目標値であり、該駆動機構40aが可動テーブル40aaを介して磁極24aをZ方向に駆動することにより幅dLが指令値dLcに一致する。同様に、指令値dRcは駆動機構40bに供給されることになる幅dRの目標値であり、該駆動機構40bが可動テーブル40baを介して磁極24bをZ方向に駆動することにより幅dRが指令値dRcに一致する。また、基本的にはdL0=dR0であり、この時点ではdLc=dRc=dL=dRとなる。さらに、幅dLとdRとの和Sは、S=dL+dR=2×dL0=2×dR0となる。後述するように和Sは一定に保たれる。
図6に示すように、インバータ86の制御では、まずステップS1においてコイルCに供給する電力量を調整する。ここでの電力量には周波数および電流を含むものとする。これらの出力はワーク12a,12bの材質特性などに基づいて設定され、該ワーク12a,12bが迅速に目標温度に到達可能な値として設定される。
ステップS2において、加熱時間tiが終了したか確認し、終了していれば(Yes)ステップS3へ移り、未達であれば(No)ステップS1へ戻って加熱を継続する。加熱時間tiは、例えば目標温度とロウ付け部14のロウ材の性質などに基づいて設定される。
ステップS3において、次の工程段階があるか確認し、次の工程段階が無ければ処理を終了し、次の工程段階が有ればそれに対応した目標温度となるように設定温度を変更し(ステップS4)、ステップS1へ戻って加熱を継続する。
図7に示すように、駆動制御部88a,88bの制御では、まずステップS11においてワーク12aの温度TL、および12bの温度TRを測定する。上記の通り温度TL,TRは温度センサ68a,68bから制御部82に供給される。温度TL,TRの測定は、加熱処理を開始してから所定時間(例えば2秒程度)が経過してインバータ86が安定してから計測する。温度TL,TRの測定は図6に示す処理と共通の処理としてもよい。温度TL,TRの測定および図7に示す全体の処理は所定の測定周期毎に繰り返し実行される。
ステップS12において、温度TRと温度TLとの温度差ΔT(=TR-TL)を算出する。
ステップS13において、温度差ΔTが所定の許容値θ以内であるか確認する。つまり、|ΔT|≦θが成立する場合(Yes)はステップS11へ戻り、非成立の場合(No)はステップS14へ移る。許容値θは、ワーク12aとワーク12bとのロウ付けにおいて不都合が生じない温度差である。
温度差ΔTの絶対値が許容値θよりも大きい場合には、ステップS14において温度差ΔTの符号による場合分けを行う。すなわち、温度TRが温度TLよりも大きく温度差ΔT>0である場合(Yes)にはステップS15へ移り、温度差ΔT<0である場合(NoにはステップS18へ移る。
ステップS15(温度TRが温度TLよりも許容値θ以上大きい場合)においては、温度差ΔTが許容値θ以内に収まるようにギャップ59aの幅dLを狭め、ギャップ59bの幅dRを広げる処理を行う。すなわち、指令値dLcおよび指令値dRcをギャップ補正量ηにより以下のように補正する。
dLc←dLc-η
dRc←dRc+η
また、この2つの設定式は、dLc←dL-η、dRc←dR+ηとしてもよい。
ギャップ補正量ηは固定値としてもよいし、温度差ΔTによって調整される変数としてもよい。例えば、温度差ΔTが大きいときには、速やかな温度調整が可能となるように大きい値に設定して補正動作回数を減らし、温度差ΔTが小さいときには、微調整が可能なように適度に小さく設定する。
このステップS15の処理によれば、磁極24aを下降させて低温側であるワーク12aに接近させて該ワーク12aの加熱を促進させるとともに、磁極24bを上昇させて高温側であるワーク12bから遠ざけて該ワーク12bの加熱を緩和させる。これによりワーク12aの温度TLは低下し、ワーク12bの温度TRは上昇する。
指令値dLc,dRcは、ステップS16において予め設定されたストローク範囲内であるかを確認した後、範囲内であれば(Yes)ステップS17に移って駆動機構40a,40bに対して出力されギャップ調整が行われる。指令値dLc,dRcが所定のストローク範囲外であれば(No)、補正動作を行わずにステップS11へ戻って幅dL,dRを維持する。
一方、ステップS18(温度TLが温度TRよりも許容値θ以上大きい場合)においては、温度差ΔTが許容値θ以内に収まるようにギャップ59aの幅dLを広げ、ギャップ59bの幅dRを狭める処理を行う。すなわち、指令値dLcおよび指令値dRcをギャップ補正量ηにより以下のように補正する。これはステップS15と逆の処理である。
dLc←dLc+η
dRc←dRc-η
また、この2つの設定式は、dLc←dL+η、dRc←dR-ηとしてもよい。
このステップS18の処理によれば、磁極24aを上昇させて高温側であるワーク12aから遠ざけて該ワーク12aの加熱を緩和させるとともに、磁極24bを下降させて低温側であるワーク12bに接近させて該ワーク12bの加熱を促進させる。これによりワーク12aの温度TLは上昇し、ワーク12bの温度TRは低下する。ステップS18の後、ステップS16のストローク範囲の確認を行い、さらにステップS17に移って駆動機構40a,40bに対して出力されギャップ調整が行われる。
図7に示す処理を繰り返し実行することにより、幅dL,dRが指令値dLc,dRcに一致して、ワーク12aとワーク12bのうち低温側が昇温するとともに高温側が降温して温度差ΔTが十分に小さくなりロウ付けが好適に行われる。図7の処理は、図6の処理の終了タイミングにあわせて終了する。
また、ステップS15,S18では指令値dLcと指令値dRcの一方にギャップ補正量ηを加算し、他方から減算していることから、これに応答する幅dLと幅dRも一方がηだけ増加し、他方がηだけ減少する。したがって、和Sは、S=dL+dR=dL0+dR0となり一定に保たれる。
このように、幅dLと幅dRとの和Sが一定となるように駆動機構40a,40bを駆動することにより、加熱体である直列の4つのコイルCとインバータ86との間におけるインダクタンスの変動が抑えられ、供給する電力が良好で適正な範囲となり安定する。
誘導加熱装置10では4つのコイルCが直列に接続されていて1台のインバータ86でまとめて駆動するため、左右のワーク12a,12bを加熱するのに電気回路的な個別調整は困難な構成であるが、駆動機構40a,40bによる左右の磁極24a,24bの機械的な個別昇降によって個別の加熱が実現されており、電気回路と機械回路とが好適に補完し合っている。なお、図7では指令値dLc,dRcおよび幅dL,dRは、一方がギャップ補正量ηだけ広がり、他方が同じだけ狭まる処理を示したが、設計条件によっては広がる量と狭まる量が異なってもよい。
図8は、誘導加熱装置10によりワークを加熱した際の該ワークの温度プロファイルの例を示すグラフである。
図8において温度TL,TRは上記の通りワーク12a,12bの温度であり左側縦軸に対応している。左側縦軸のT1がワーク12a,12bを加熱する際の目標温度である。ギャップ差Gは幅dRと幅dLとの差であり右側縦軸に対応している。右側縦軸の上方は幅dRが大きくて幅dLが小さい向きであり、下方は幅dRが小さくて幅dLが大きい向きである。また、右側縦軸の中央がG=0であり、磁極24aと磁極24bのそれぞれのストローク範囲の中間値である。初期状態では幅dLと幅dRが等しくG=0である。また、初期状態では駆動機構40a,40bに対するそれぞれの指令値dLc,dRcは初期値dL0,dR0と等しい。右側縦軸のLuはギャップ差Gのストローク範囲の上限値であり、Ldは下限値である。
インバータ出力Qはインバータ86の出力である。インバータ出力Qの縦軸目盛は省略しているが、グラフの最下辺部が「0」である。横軸は時間でありワーク12a,12bに対する加熱時間tiを含んでいる。ワーク12aとしては幅が37mmで厚さが5mmの銅平板を用い、ワーク12bとしては幅が30mmで厚さが5mmの銅平板を用いた。したがって、ワーク12bの方がワーク12aよりも熱容量が小さい。
図8に示すように、時刻t0から加熱時間tiの期間、インバータ出力Qを所定値として出力することによりワーク12a,12bが加熱される。ワーク12aの方がワーク12bよりも熱容量が小さいことから、当初はワーク12bの温度TRの方がワーク12aの温度TLよりも速く上昇し温度差ΔT(図7参照)が生じる。当初の温度差ΔTをΔT1とする。温度差ΔT1が許容値θ(図7参照)よりも大きければ、幅dL,dRを補正量ηによって調整する(図7のステップS15)。幅dLと幅dRの一方をギャップ補正量ηだけ広げ、他方をηだけ狭めることからギャップ差Gは2×ηだけ変化する。この場合のギャップ補正量ηは、初期値η0となっている。
そして、所定の周期後にさらに温度TL,TRを計測し、依然としてTL>TR+θの状態が継続していることから、幅dL,dRをギャップ補正量ηによってさらに調整する。この時点で温度差ΔTがΔT=ΔT2であったとして、ΔT2>ΔT1であれば、初回のギャップ補正量η=η0による調整の効果が不十分と判断されることから、ギャップ補正量ηをη←η1(η1>η0)と変更してから幅dL,dRを補正量ηによって調整してもよい。変更補正量η1は初期値η0よりも大きく、例えばη1=2×η0である。
このように、幅dL,dRを補正量ηによって調整することを繰り返し実行すると、やがて温度TRの昇温速度が温度TLの昇温速度よりも遅くなり、温度差ΔTは小さくなる。図8に示すプロファイルでは、幅dL,dRの調整を5回繰り返したときにギャップ差Gがストローク範囲の上限値Luに達したため、その後は幅dL,dRを維持する。幅dL,dRを維持した状態でも温度TLと温度TRとは上昇し続ける。温度TRは当初の急激な上昇の影響により当面の間は温度TLよりも高い状態が続くが、幅dL,dRが調整されたことにより、温度差ΔTは減少する。
やがて温度TLと温度TRとは大小が逆転し、さらに時刻t1においてはTR>TL+θとなる。この時点ではT1>TRとする。そうすると、幅dL,dRを補正量ηによって調整するが、当初とは逆向きの調整となる(図7のステップS18)。これによりギャップ差Gは上限値Luから段階的に減少する。ギャップ差Gは0よりも小さくなる場合もあり、さらに再度大きくなる場合もある。
このような幅dL,dRの調整は加熱時間tiが経過するまで継続され、温度TLと温度TRとがほぼ均等となる。そして加熱時間tiでは温度TRおよび温度TLがそれぞれ目標温度T1よりもわずかに高い状態となり、インバータ出力Qを0に戻して加熱処理を終了する。このように、誘導加熱装置10によれば温度TRと温度TLとが均等となるようにワーク12a,12bが加熱されることから、いずれか一方が必要以上に高温で、他方が低温で目標温度T1に到達するまでの時間が長くかかるということが回避され、加熱時間tiを短くすることができてエネルギー的かつ時間的に効率的である。なお、加熱時間tiは基本的には予め設定されている時間だが、TR>T1、かつTL>T1となった時刻またはそれから多少の余裕時間後に加熱を終了させてもよい。
誘導加熱装置10では、ワーク12a,12bの上側の第1コア20について、磁極24a,24bが駆動機構40a,40bによって昇降可能な例を示したが、下側の第2コア22についてもその磁極54a,54bが昇降可能な構成にしてもよい。この場合、例えばワーク12aに対しては磁極24aと磁極54aとを等しい距離に配置することができ、ワーク12bに対しては磁極24bと磁極54bとを等しい距離に配置することができ、上下面からバランスよく加圧することができる。
誘導加熱装置10は、熱容量が異なる2つのワーク12a,12bのロウ付けに好適に用いることができる。ワーク12a,12bの加熱には表面から裏面にかけて磁束Φを通過させることから効率的な加熱ができる。また、加熱に利用される磁束Φが2つのワーク12a,12bに対して共通に供給されるような磁束経路が実現されていて効率的である。
誘導加熱装置10では、2つのワーク12a,12bに対して、4つのコイルCからなる1つの直列回路を1台のインバータ86で加熱をすることができ効率的である。
誘導加熱装置10では、ワーク12a,12bの温度TL,TRをロウ付け部14の近傍において接触式の温度センサ68a,68bで正確に計測することができ、さらに計測した温度TL,TRに基づいて温度差ΔTを低減させる温度制御を行っている。したがって、ワーク12a,12bのサイズ、形状、熱容量などの物性データは特に必要なく、これらのデータベースの作成、更新などの手間が不要である。
誘導加熱装置10は、ワーク12a,12bのサイズ、形状、熱容量などの物性にかかわらず適用可能であって、物性の異なるワークごとの専用加熱源が不要であって、汎用的である。誘導加熱装置10は、加熱処理の前の段取り段階で専用加熱源の付け替えおよび調整などの手順が不要であって生産性に優れ、また複数の専用加熱源の保管ペースも不要である。
図9は、変形例にかかる誘導加熱装置の模式図であり、(a)は第1の変形例にかかる誘導加熱装置10Aを示し、(b)は第2の変形例にかかる誘導加熱装置10Bを示し、(c)は第3の変形例にかかる誘導加熱装置10Cを示し、(d)は第4の変形例にかかる誘導加熱装置10Dを示す。各変形例において上記の誘導加熱装置10と同様の構成要素については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
図9(a)に示すように、第1の変形例にかかる誘導加熱装置10Aでは、ワーク12a,12bの上方に配置された第1コア20Aが2つの磁極112a,112bを備えている。一対の磁極112a,112bは隙間を介して隣接して配置されており、磁気的に接続されている。一方の磁極112aは上記の磁極24a(図1参照)と中間コア26とを一体にした形状であり、突出部112aaの部分が中間コア26に相当する。他方の磁極112bは上記の磁極24bに相当する。突出部112aaと磁極112bとの間には微小隙間が設けられている。磁極112aの下端にはコイル28aが巻回され、磁極112bの下端にはコイル28bが巻回されている。
このような誘導加熱装置10Aによれば、上記の中間コア26に相当する突出部112aaが駆動機構40aによって磁極112aの本体部112abとともに一体的に昇降する。第1コア20Aにおいては、突出部112aaと磁極112bとの間でわずかな磁束漏れが生じ得るが、突出部112aaと本体部112abとの間では磁束漏れが生じない。また、突出部112aaは上記のような固定具52(図1参照)が不要である。
図9(b)に示すように、第2の変形例にかかる誘導加熱装置10Bでは、ワーク12a,12bの上方に配置された第1コア20Bが2つの磁極114a,114bを備えている。磁極114a,114bは突出部114aa,114baを備える同形状であり、突出部114aaと突出部114baが対向するように左右対称に配置されている。磁極114aの下端にはコイル28aが巻回され、磁極114bの下端にはコイル28bが巻回されている。
突出部114aaと突出部114baとは上記の中間コア26を左右2つに分割したものに相当する。また2つの突出部114aa,114baはZ方向にやや長尺な形状となっており、磁極114a,114bが駆動機構40a,40bによって上下異なる方向に限度いっぱい昇降しても十分にひろい対向面積が確保される。このような誘導加熱装置10Bは、誘導加熱装置10Aと比較すると機構的に左右対称でバランスがよい。
図9(c)に示すように、第3の変形例にかかる誘導加熱装置10Cは、第1コア20Cにおける磁極24aと磁極24bとの間に駆動ギア(駆動機構)115を備える。第1コア20Cは上記の第1コア20と同じである。駆動ギア115は左右両側が磁極24b,24bの側面と接触している。これらの接触部の双方には噛み合い歯が設けられていてもよい。磁極24a,24bは図示しないガイドによってZ方向に案内される。
駆動ギア115はZ方向に昇降が可能な構成であり、駆動ギア115の昇降に応じて磁極24a,24bも昇降する。駆動ギア115は正逆転が可能な構成であり、駆動ギア115の回転に応じて磁極24aと磁極24bの一方が下降し、他方が上昇する。磁極24a,24bの下降量と上昇量とは等しい。このように駆動ギア115は上記の2つの駆動機構40a,40bに代わるものであって、1つの機構で磁極24a,24bを個別に進退させることが可能になる。なお本願において、個別に進退するとは、磁極24aの動作と磁極24bの動作とが異なることを示し、機構的には連動していてもよい。設計条件により駆動ギア115の昇降機構は省略し、回転機構だけとしてもよい。
上記のステップS15,S18(図7参照)によれば、幅dLと幅dRとはギャップ補正量ηに基づいて一方が狭められて他方が広められることから、磁極24aを駆動する駆動機構40aと磁極24bを駆動する駆動機構40bとは必ずしも別機構にする必要はなく、例えば、このような一つの駆動ギア115で磁極24aと磁極24bとが反対方向に動作するように連動させてもよい。
図9(d)に示すように、第4の変形例にかかる誘導加熱装置10Dは、第1コア20Dと第2コア22Dとを備える。第1コア20Dは、2つの磁極116a,116bと、中間コア118とを備える。磁極116aと磁極116bとはアングル型で同形状であり、左右対称の向きに配置されている。磁極116a,116bの上端はZ方向に延在する中間コア118の下面に対して隙間を介して対面している。磁極116a,116bは駆動機構40a,40bによってZ方向に進退可能である。左側の磁極116aの右端にはコイル28aが巻回され、右側の磁極116bの左端にはコイル28bが巻回されている。
第2コア22Dは磁極116aと磁極116bとの間に設けられた直線状の鉄心である。第2コア22D両端は磁極として作用し、左端にはコイル58aが巻回され、右端にはコイル58bが巻回されている。
磁極116aと第2コア22Dとの間には、例えば熱容量の小さいワーク120aが配置され、磁極116bと第2コア22Dとの間には、熱容量の大きいワーク120bが配置される。この場合、幅dLが大きくなるように駆動機構40aの作用下に磁極116aが左方向に移動し、ワーク120aが過度に加熱することを防止できる。また幅dRが小さくなるように駆動機構40bの作用下に磁極116bが左方向に移動し、ワーク120bの昇温を早めることができる。
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。