JP7254587B2 - フタリド系塩構造化合物のアモルファス体、その製造方法及び用途 - Google Patents
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Description
これら近赤外線を用いた光学センサーにおいて、センシング機能を精度よく機能させるには不要となる光、特に可視光をカットすることが重要である。
このような光学フィルター用の色素としては各種のフタリド化合物も知られているが、所望の吸収波長を有する色素を用いてフィルターを製造するには、樹脂に対する色素の溶解性が高いことが望まれる。しかしながら、樹脂に対する色素の溶解性は、当該色素の基本的構造、置換基の種類、結晶状態、塩構造などを含めた様々な要素と、その組み合わせにより大きく異なる(特許文献2)。
(一般式(1)中、Xは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1~5のアルキル基を表す。)
上記の本発明化合物はX線回折にて強い回折ピークが認められずアモルファス型である。
すなわち、前記一般式(1)の化合物のアモルファス体のうち、Xが水素原子である化合物については、下記一般式(2)で表されるフタリド化合物:
(一般式(2)中、Rは前記と同じ意味を表す。)
をケトン系溶媒から選ばれた少なくとも1種の溶媒及びアルコール系溶媒から選ばれた少なくとも1種の溶媒からなる混合溶媒に溶解した溶液を調製して酸を加え、ついで、(p-ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩と反応をおこない、得られた溶液を貧溶媒に排出し、この溶液から溶媒を分離することにより製造される。
さらに他の発明は前記のアモルファス体を含有してなるインク組成物である。
[本発明の化合物]
本発明の化合物は下記一般式(1)で表される塩構造化合物であって、アモルファス体をなす。
(一般式(1)中、Xは水素原子またはメチル基、Rは前記と同じ意味を表す。)
トリエチルアミン塩の調製
トリフルオロメタンスルホンアミドの塩化メチレン溶液を調整し、トリエチルアミンと混合する。混合時の温度は0℃から10℃が好ましい。続いてp-ビニルフェニルスルホニルクロライドと混合し反応を行う。p-ビニルフェニルスルホニルクロライドの使用量はトリフルオロメタンスルホンアミドに対して1.1から1.6重量倍が好ましい。
反応温度は0~30℃が好ましい。反応液から目的物を分離精製して(p-ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩が得られる。
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどが挙げられる。アルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
本発明で用いる混合溶媒は、これらケトン系溶媒から選ばれた少なくとも1種の溶媒と、アルコール系溶媒から選ばれた少なくとも1種の溶媒の混合溶媒である。強酸としては塩酸が好ましい。
溶媒の使用量はフタリド化合物に対してケトン系溶媒1.0~1.5重量倍、アルコール系溶媒1.0~1.5重量倍、強酸0.1~0.4重量倍である。好ましくはケトン系溶媒1.0~1.2重量倍、アルコール系溶媒1.0~1.2重量倍、強酸0.2~0.25重量倍である。
前記一般式(2)で表されるフタリド化合物のメタノール溶液を調整し、硫酸を加えて加熱反応を行う。反応温度は50~65℃が好ましい。得られた溶液を貧溶媒に排出し、この溶液から溶媒を分離し一般式(3)で表される化合物を得る。
(一般式(3)中、Rは前記と同じ意味を表す。)
つぎに一般式(2)又は(3)の溶液と、(p-ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩を混合して反応を行う。反応温度は20~40℃が適当である。(p-ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩の使用量は、一般式(2)又は(3)の化合物に対してモル数で1.0~1.2倍が好ましい。反応溶液を一般式(1)に対する貧溶媒と混合する。貧溶媒としては水が適当である。貧溶媒との混合溶液から目的物を単離精製する。これによりアモルファス体で目的物を得た。
本発明の一般式(1)の化合物のアモルファス体を用いた混合物は、水性インク、油性インク、インクジェット用インク、カラーフィルター用インク、各種塗料、樹脂用着色剤など種々の用途における染料として好適である。
本発明のインクは、一般式(1)の化合物のアモルファス体を含有するが、同時に各種溶剤を含有する。
各種溶剤としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等の酢酸エステル類;エチレングリコールジアルキルエーテル類;メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン等の炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。特に、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、酢酸エステル類が好ましい。
また、本発明のインクは各種樹脂を更に含有することも好ましい。
各種樹脂については後記着色組成物の項で具体的に説明する。
本発明の着色組成物は、本発明の本発明の一般式(1)の化合物のアモルファス体を含む混合物と樹脂を含有する。
樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、感光性樹脂等を用いられる。また、樹脂の前躯体としては、紫外線照射により硬化して樹脂を生成するモノマーまたはオリゴマーがあげられる。これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
各種溶剤としては、前記[インク]の項で示した溶剤類が挙げられるが、その他に、使用するアクリル系樹脂のモノマー組成、光重合性モノマーの種類、光重合開始剤の種類等に応じて適宜選択できる。このような溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、エタノール、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジグライム、シクロヘキサノン等から選ばれる一種または複数種を使用する。
中間体の製造:(p-ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸
トリエチルアミン塩の製造
トリフルオロメタンスルホンアミド(東京化成(株)製)3.00gを塩化メチレン30mL中に溶解し、内温を5℃以下に冷却した。内温が10℃を越えないようにトリエチルアミン5.10gを滴下し、滴下終了後10℃以下でp-ビニルフェニルスルホニルクロライド(東京化成(株)製)4.07gを添加した。5℃以下で1時間攪拌した後、室温下で5時間さらに攪拌し、反応液に水100mLを加え攪拌した。有機層を分液後水洗し、硫酸マグネシウムで脱水し、エバポレーターで減圧濃縮して、粘性物8.07gを得た。
下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):102(+)、314(-)
・元素分析値:CHN実測値(42.93%、5.42%、6.94%)
理論値(43.26%、5.57%、6.73%)
上記フタリド化合物1の4.5gをアセトン6mL、メタノール6mLからなる混合溶媒に溶解し、濃塩酸を0.97g加えた。製造例にて得た(p-ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩を、攪拌しながら3.93g加え、さらに室温で1時間攪拌した。反応液を室温の水200mLに加え沈殿を濾取し、水で洗浄した。減圧乾燥して、黒色粉末6.1gを得た。
下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):533(+)、314(-)
・元素分析値:CHN実測値(62.45%、5.28%、5.01%);
理論値(62.32%、5.23%、4.96%)
得られた化合物の透過スペクトルを、紫外・可視分光分析計((株)日立ハイテクノロジーズ製分光光度計U-4100)を用いて測定した結果を図2に示す。
に記載の合成法)
フタリド化合物1を4.5g、メタノール50mLに溶解し、濃塩酸を0.97g加えた。上記製造例で得られた(p-ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩を、攪拌しながら3.93g加え、さらに室温で1時間攪拌した。反応液中のメタノールをエバポレーターで減圧除去し、水100mLに加え沈殿を濾取し、水で洗浄した。減圧乾燥して黒色粉末6.1gを得た。
下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):533(+)、314(-)
・元素分析値:CHN実測値(62.45%、5.28%、5.01%)
理論値(62.32%、5.23%、4.96%)
得られた化合物の粉末X線回析スペクトルを、X線回折装置((株)リガク製Mini Flex600)を用いて測定した結果を図3に示す。
メタノール75mLに濃硫酸を4.5g、フタリド化合物1を5.4g加え、還流下20時間攪拌した。冷却後、反応液を水200mLに加え、析出した沈殿を濾取し、水で洗浄した。減圧乾燥して、黒色粉末A6.2gを得た。
黒色粉末A 5.1g、アセトン6mL、メタノール6mLに溶解した。上記製造例で得られた(p-ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩を、攪拌しながら3.93g加え、さらに室温で1時間攪拌した。反応液を室温の水200mLに加え沈殿を濾取し、水で洗浄した。減圧乾燥して黒色粉末6.1gを得た。
下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):547(+)、314(-)
・元素分析値:CHN実測値(62.50%、5.20%、4.95%)
理論値(62.70%、5.38%、4.87%)
得られた化合物の粉末X線回析スペクトルを、X線回折装置((株)リガク製Mini Flex600)を用いて測定した結果を図4に示す。得られた化合物の透過スペクトルを、紫外・可視分光分析計((株)日立ハイテクノロジーズ製分光光度計U-4100)を用いて測定した結果を図5に示す。
記載の合成法)
メタノール75mLに濃硫酸を4.5g、フタリド化合物1を5.4g加え、還流下20時間攪拌した。冷却後、反応液を水200mLに加え、析出した沈殿を濾取し、水で洗浄した。減圧乾燥して、黒色粉末A6.2gを得た。
黒色粉末A 5.1g、メタノール50mLに溶解した。上記製造例にて得られた(p-ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩を、攪拌しながら3.93g加え、さらに室温で1時間攪拌した反応液中のメタノールをエバポレーターで減圧除去し、室温の水100mLに加え沈殿を濾取し、水で洗浄した。減圧乾燥して黒色粉末6.1gを得た。
下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):547(+)、314(-)
・元素分析値:CHN実測値(62.50%、5.20%、4.95%)
理論値(62.70%、5.38%、4.87%)
得られた化合物の粉末X線回析スペクトルを、X線回折装置((株)リガク製Mini Flex600)を用いて測定した結果を図6に示す。
上記実施例、比較例で製造した各化合物の室温での溶解度試験を以下のように実施した。
溶剤に対する溶解性試験:PGMEA=プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを使用し、100質量部に対する各化合物の溶解量を測定し、下記評価基準に従って溶解性を評価した。結果を表1に示す。
◎:40質量部以上溶解。○:20質量部以上、40質量部未満の範囲で溶解。
ここで、「溶解」とは、目視により固体が見えない状態を指す。
また、溶解安定性試験は、以下の方法で行った。
上記溶解性試験で作成した溶液を、室温にて3日間放置し、析出の有無を目視で確認して、析出物なしを○、析出物がみられる場合を×とした。
上記各評価に示されるように、本発明の化合物は、溶剤、樹脂に対する溶解性に優れていた。
インク1の製造
実施例1で製造した例示化合物1のアモルファス体を7.0g、アクリル樹脂としてポリメタクリル酸(重量平均分子量10,000)を6.3g、アクリル酸ヒドロキシエチルとメタクリル酸の共重合体(重量平均分子量30,000))を6.3g、アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルを3g、2-(p-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンを0.8g、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)77gを混合し、回転式攪拌機(回転数:1,000rpm、時間:3分)で攪拌してインク1を製造した。
インク2の製造
実施例2で製造した例示化合物2のアモルファス体を用いた以外は、インク1の製造と同様にして、インク2を製造した。
インク3の製造
比較例1で製造した化合物1の結晶型を7.0g、アクリル樹脂としてポリメタクリル酸(重量平均分子量10,000)を6.3g、アクリル酸ヒドロキシエチルとメタクリル酸の共重合体(重量平均分子量30,000))を6.3g、アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルを3g、2-(p-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンを0.8g、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)77gを混合し、回転式攪拌機(回転数:1,000rpm、時間:10分)で攪拌してインク3を製造した。
インク4の製造
比較例2で製造した化合物2の結晶型を用いた以外は、前記インク3の製造と同様にしてインク4を製造した。
(インクの調製の比較)
インクの調製時、本発明による例示化合物1及び例示化合物2のアモルファス体は、回転式撹拌機による撹拌時間が結晶型(比較例3)の化合物の場合に比べ3分の1で容易にポリマーに溶解した。結晶型の化合物では、同様の時間では溶解せず10分間撹拌する必要があった。
ガラス基板上に、前記実施例3で製造したインク1及びインク2をそれぞれスピンコート(3000rpm、10sec)し、乾燥させた。ついで、70℃にて20分間プリベークし、露光した(50mJ/cm2)。十分に水洗後、乾燥させ、230℃で1時間ベークして、着色組成物1及び着色組成物2を製造した。
ガラス基板上に、前記比較例3で製造したインク3、インク4をそれぞれスピンコート(3000rpm、10sec)し、乾燥させ、70℃で20分間プリベークし、露光した(50mJ/cm2)。十分に水洗後、乾燥させ、230℃で1時間ベークして、着色組成物3及び着色組成物4を製造した。
Claims (5)
- 一般式(2)で表されるフタリド化合物及び硫酸をメタノール中にて反応させ、得られた溶液を貧溶媒に排出して溶媒を分離して一般式(3)で表される化合物を得て、この化合物をケトン系溶媒から選ばれた少なくとも1種の溶媒及びアルコール系溶媒から選ばれた少なくとも1種の溶媒からなる混合溶媒に溶解した溶液を調整し、ついで、(p-ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩と反応をおこない、得られた溶液を貧溶媒に排出し、この溶液から溶媒を分離することを特徴とする下記一般式(1)で表される塩構造化合物のアモルファス体の製造方法。
(一般式(2)中、Rは炭素数1~5のアルキル基を表す。)
(一般式(3)中、Rは前記と同じ意味を表す。)
(一般式(1)中、Xはメチル基を表し、Rは前記と同じ意味を表す。)
- 請求項1のアモルファス体を含有してなる樹脂組成物。
- 請求項1のアモルファス体を含有してなるインク組成物。
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