JP7253618B2 - 吸水剤の製造方法及びポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂 - Google Patents
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Description
<1> ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を下記一般式(1):
R1は炭素数1~6の炭化水素基を表し、
R2は水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表し、
Xは4級アンモニウム基の対イオンであって塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、又は水酸化物イオンを表し、
m、nはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、同じ置換基Aに結合しているm、nは0≦m+n≦4を満たし、
lは1~6であり、
kは1以上の整数である。)
で示される化合物を含む表面架橋剤で処理することを特徴とする、吸水剤の製造方法。
<2> 前記R1がメチル基である<1>に記載の製造方法。
<3> 前記m、nが0≦m+n≦1を満たす<1>又は<2>に記載の製造方法。
<4> 前記表面架橋剤が式(1)で示される化合物と、多価アルコール化合物及びアルキレンカーボネート化合物とを含む<1>~<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5> 表面架橋剤の使用量が、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部である<1>~<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6> 前記表面架橋剤を水溶液にし、該水溶液を表面架橋前の吸水性樹脂に噴霧又は滴下する<1>~<5>のいずれかに記載の製造方法。
<7> 吸水剤が下記の特性について、何れか1つ以上を満たす<1>~<6>のいずれかに記載の製造方法。
・無加圧下吸収倍率(CRC)が25g/g以上、40g/g以下である
・加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上である
・圧力0.3psi下でのゲル床透過性(GBP)が50×10-9cm2以上である
<8> ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と下記一般式(1):
R1は炭素数1~6の炭化水素基を表し、
R2は水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表し、
Xは4級アンモニウム基の対イオンであって塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、又は水酸化物イオンを表し、
m、nはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、同じ置換基Aに結合しているm、nは0≦m+n≦4を満たし、
lは1~6であり、
kは1以上の整数である。)
で示される化合物とを含むことを特徴とする吸水性樹脂組成物。
<9> 下記一般式(11):
R1は炭素数1~6の炭化水素基を表し、
R2は水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表し、
Xは4級アンモニウム基の対イオンであって塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、又は水酸化物イオンを表し、
m、nはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、同じ置換基Aに結合しているm、nは0≦m+n≦4を満たし、
lは1~6であり、
kは1以上の整数である。)
で示される構造を有することを特徴とするポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
[1-1]架橋剤(A)
本発明では、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂(以下、ベースポリマー、表面架橋ポリマーなどともいう)を下記一般式(1)で表される化合物(表面架橋剤に相当する。以下、架橋剤(A)という場合がある)で表面架橋することを特徴とする。
その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。複数のR1は互いに同一でもよく異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
一般式(2)及び一般式(3)において、R1、R2、A、m、nは一般式(1)について述べたのと同様である。一般式(1)中の複数のBは互いに同一でもよく異なっていてもよく、例えば、一部のBが一般式(2)で表され、一部の(B)が一般式(3)で表されていてもよい。一般式(2)及び一般式(3)の構造は、一般式(1)の化合物1分子中にそれぞれ2以上存在していてもよい。
上記架橋剤は、下記一般式(4):
A-(OH)m+n+2(4)
で表される(m+n+2)価の多価アルコールと、エピハロヒドリンとを反応させる工程1、
前記工程1で得られる反応物と、下記一般式(5):
R1 2NH (5)
で表される第二級アミンを反応させる工程2、及び、前記工程2で得られた反応物中のハロゲン原子を-OR2基に変換する工程3を含む製造方法により製造される。
で表される化合物が得られる。
上述した架橋剤(A)を含む表面架橋剤で表面が架橋されていない吸水性樹脂を処理することで、表面架橋された吸水性樹脂が得られる。該吸水性樹脂を含む吸水剤の製造方法について説明するに先だって、本明細書で使用する用語を定義しておく。
[2-1] 吸水性樹脂、吸水剤
本明細書における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味し、一般的に粉末状である。また、「水膨潤性」とは、WSP241.3(10)で規定される無加圧下吸収倍率(CRC)が5g/g以上であることを、「水不溶性」とは、WSP270.3(10)で規定される水可溶分(Ext)が50質量%以下であることを、それぞれ意味する。
前記「吸水性樹脂」は、好ましくはカルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させてなる親水性の架橋重合体であるが、その全量(100質量%)が架橋重合体である必要はなく、前記CRCやExt等の性能を満たす範囲内で添加剤等を含有することもできる。
また、架橋状態を区別することなく「吸水性樹脂」と称した場合には、「内部のみが架橋された重合体、つまり、内部と表面の架橋密度が実質的に同じである重合体」または「内部と表面とが架橋された重合体、つまり、表面の架橋密度が内部の架橋密度に対して相対的に高い重合体」の両方を指す。ただし、内部のみが架橋された吸水性樹脂を指す場合には「表面架橋前の吸水性樹脂」と表記する場合があり、内部と表面とが架橋された吸水性樹脂を指す場合には「表面架橋後の吸水性樹脂」と表記する場合がある。なお、前記「表面架橋前」とは、「表面架橋剤を添加する前」または「表面架橋剤が添加された後であっても加熱処理による架橋反応が始まる前」のことを意味する。また、「吸水性樹脂」は、樹脂成分のみを指す場合もあるが、添加剤等の樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
本発明における「吸水剤」とは、最終製品として出荷可能な状態にある表面架橋後の吸水性樹脂のことを意味する。従って、前記「表面架橋後の吸水性樹脂」が出荷可能な状態であれば「吸水剤」に該当し、このとき「表面架橋後の吸水性樹脂」と「吸水剤」は同義で扱われる。
本明細書における「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、アクリル酸および/またはその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と表記する。)を原料とする架橋重合体を意味する。つまり、「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、アクリル酸(塩)由来の構造単位を有する架橋重合体であり、任意成分としてグラフト成分を有する架橋重合体である。
具体的には、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、重合反応に関与する単量体のうち、内部架橋剤を除いた部分に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であって、好ましくは100モル%以下、特に好ましくは実質100モル%のアクリル酸(塩)を含む、架橋重合体である。
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称である。また「WSP」は、Worldwide Strategic Partnersの略称であり、EDANAが提供する、吸水剤又は吸水性樹脂の世界標準の測定法を示すものである。本発明では、特に断りのない限り、WSP原本(2010年改定)に準拠して、吸水剤又は吸水性樹脂の物性を測定する。
無加圧下吸収倍率を意味する「CRC」は、Centrifuge Retention Capacityの略称であり、吸水剤又は吸水性樹脂の無加圧下での吸収倍率を意味する。具体的には、吸水剤又は吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して吸水剤又は吸水性樹脂を自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)を用いて脱水した後の吸収倍率(単位:g/g)のことである。
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水剤又は吸水性樹脂の加圧下吸収倍率を意味する。具体的には、吸水剤又は吸水性樹脂0.9gを大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)荷重下で膨潤させた後の吸収倍率(単位:g/g)のことをいう。
水可溶分を意味する「Ext」は、Extractablesの略称であり、吸水剤又は吸水性樹脂の水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、吸水剤又は吸水性樹脂1.0gを0.9質量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、250rpmで1時間または16時間攪拌した後の溶解ポリマー量(単位:質量%)のことをいう。溶解ポリマー量の測定は、pH滴定を用いて行う。攪拌時間は結果の報告時に記載される。
本発明における吸水剤又は吸水性樹脂の「通液性」とは、荷重下または無荷重下での膨潤ゲルの粒子間を通過する液の流れ性のことを意味する。「通液性」の測定方法として、GBP(Gel Bed Permeability/ゲル床透過性)が挙げられる。
前記「GBP」とは、荷重下または自由膨潤での、吸水剤又は吸水性樹脂に対する0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の通液性であり、国際公開第2005/016393号に記載されたGBP試験方法に準拠して測定される値である。
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸および/またはその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
本発明に係る吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であって表面架橋したものを最終製品として出荷可能な状態にしたものであり、まず前記吸水性樹脂の好ましい製造方法に関して詳細に説明する。
[3-1] 単量体水溶液の調製工程
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分として含む単量体および1種類以上の重合性内部架橋剤を含む単量体水溶液を調製する工程である。前記「主成分」とは、重合反応に供される単量体のうち、内部架橋剤を除いた部分に対して、アクリル酸(塩)の含有量が、50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上であって、好ましくは100モル%以下であることを意味する。尚、最終製品として得られる吸水剤の吸水性能に影響しない範囲内で、単量体のスラリー液を使用することもできるが、本明細書では便宜上、単量体水溶液について説明する。
本発明では、吸水剤又は吸水性樹脂の物性および生産性の観点から、公知のアクリル酸(塩)を単量体(以下、「重合性単量体」ということがある。)として用いることが好ましい。公知のアクリル酸には、重合禁止剤や不純物等の成分が微量含まれている。
前記重合禁止剤として、好ましくはメトキシフェノール類、より好ましくはp-メトキシフェノール類が使用される。当該重合禁止剤のアクリル酸中での濃度は、アクリル酸の重合性や吸水剤又は吸水性樹脂の色調等の観点から、質量基準で好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上であって、好ましくは200ppm以下、より好ましくは160ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。
前記不純物として、酢酸やプロピオン酸、フルフラール等の有機化合物の他、米国特許出願公開第2008/0161512号に記載された化合物が挙げられる。
また、アクリル酸塩としては、上述したアクリル酸を下記塩基性化合物で中和した塩が挙げられる。当該アクリル酸塩は、市販のアクリル酸塩でもよく、アクリル酸を中和して得られる塩でもよい。
本発明における「塩基性化合物」とは、塩基性を示す化合物を意味する。具体的には水酸化ナトリウム等が該当する。尚、市販の水酸化ナトリウムには、亜鉛、鉛、鉄等の重金属が質量基準でppmオーダーで含まれているため、厳密には組成物と表現することもできる。本発明では、このような組成物に関しても塩基性化合物の範疇に含めることとして扱う。
前記塩基性化合物の具体例として、アルカリ金属の炭酸塩や炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。中でも、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能の観点から、強塩基性の化合物が選択される。従って、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。尚、当該塩基性化合物は、取り扱い性の観点から、水溶液とされることが好ましい。
前記アクリル酸塩として、アクリル酸を中和して得られる塩を使用する場合、中和を行う時機としては、重合前、重合中、重合後の何れでもよく、複数の時機または箇所で中和を行ってもよい。また、吸水剤又は吸水性樹脂の生産効率の観点から、連続式で中和することが好ましい。
本発明においてアクリル酸(塩)を用いる場合、その中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは10モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上であって、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下、特に好ましくは75モル%以下である。当該中和率の範囲とすることで、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能の低下をより一層、抑制し易くなる。
尚、前記中和率の範囲は、上述した重合前、重合中、重合後の何れの中和においても適用される。また、吸水性樹脂の酸基のみならず、最終製品としての吸水剤に関しても同様に適用される。
本発明において、上述したアクリル酸(塩)以外の単量体(以下、「他の単量体」と表記する。)を、必要に応じてアクリル酸(塩)と併用することができる。
前記他の単量体として具体的には、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等のアニオン性不飽和単量体およびその塩;メルカプタン基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体が挙げられる。また、当該他の単量体には、水溶性または疎水性の不飽和単量体が含まれる。当該他の単量体を用いる場合、その使用量は内部架橋剤を除いた単量体に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。
本発明の好ましい製造方法においては、内部架橋剤が使用される。当該内部架橋剤として具体的には、例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内部架橋剤の中から、反応性等を考慮して1種類以上の内部架橋剤が選択される。また、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくは重合性不飽和基を二つ以上有する内部架橋剤、より好ましくは後述する乾燥温度で熱分解性を有する内部架橋剤、さらに好ましくは(ポリ)アルキレングリコール構造を有する重合性不飽和基を二つ以上有する内部架橋剤が選択される。
本発明では、前記単量体水溶液の作製時、前記重合反応および架橋反応の期間中、または前記重合反応および架橋反応の後の何れか1箇所以上で、吸水剤又は吸水性樹脂の物性向上の観点から、下記物質を単量体水溶液に添加することができる。
当該物質として具体的には、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ということがある。)、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)の架橋体等の親水性高分子、炭酸塩、アゾ化合物、気泡を生じる発泡剤、界面活性剤、キレート剤、連鎖移動剤等の化合物が挙げられる。
前記親水性高分子として水溶性樹脂または吸水性樹脂を用いると、澱粉-アクリル酸(塩)共重合体、PVA-アクリル酸(塩)共重合体等のグラフト重合体または吸水性樹脂組成物が得られる。これらグラフト重合体または吸水性樹脂組成物も、本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の範疇に含まれる。
上述した各物質や各成分(以下、「単量体成分」と表記する。)を目的に応じて種々選択し、前記範囲を満たすようにそれぞれの量を規定して互いに混合することによって、単量体水溶液が作製される。尚、本発明では、単量体を水溶液とすること以外に、水と親水性溶媒との混合溶液とすることもできる。
また、単量体成分の濃度は、吸水剤又は吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であって、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。当該単量体成分の濃度は、下記式(1)から算出される。
単量体成分の濃度(質量%)=〔(単量体成分の質量)/(単量体水溶液の質量)〕×100 … 式(1)
尚、前記式(1)中、(単量体水溶液の質量)には、グラフト成分や吸水性樹脂、逆相懸濁重合における疎水性有機溶媒の質量は含まれない。
本工程は、前記単量体水溶液の調製工程で得られた、アクリル酸(塩)を主成分として含む単量体および1種類以上の重合性内部架橋剤を含む単量体水溶液を重合させて、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と表記する。)を得る工程である。
(重合開始剤)
本発明においては、重合時に重合開始剤が使用される。当該重合開始剤としては、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、または、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤が挙げられる。当該重合開始剤として具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤が挙げられる。これら重合開始剤の中から、重合形態等を考慮して1種類以上の重合開始剤が選択される。また、重合開始剤の取り扱い性や吸水剤又は吸水性樹脂の物性の観点から、当該重合開始剤として、好ましくは過酸化物またはアゾ化合物、より好ましくは過酸化物、さらに好ましくは過硫酸塩が選択される。また、酸化性ラジカル重合開始剤を用いる場合には、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合を行ってもよい。
また、本発明においては、前記重合反応を、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって開始させてもよい。また、活性エネルギー線の照射と前記重合開始剤とを併用してもよい。
本発明に適用される重合形態としては、水溶液重合、逆相懸濁重合、噴霧重合、液滴重合、バルク重合、沈澱重合等が挙げられる。中でも、重合の制御の容易性や吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能の観点から、好ましくは水溶液重合または逆相懸濁重合、より好ましくは水溶液重合、さらに好ましくは連続水溶液重合が選択される。逆相懸濁重合は国際公開第2007/004529号、国際公開第2012/023433号などに記載されている。また当該連続水溶液重合は、吸水剤又は吸水性樹脂を高い生産性で製造することができ、その具体例としては、米国特許第4893999号、米国特許第6906159号、米国特許第7091253号、米国特許第7741400号、米国特許第8519212号、特開2005-36100号公報等に記載された連続ベルト重合や、米国特許第6987151号等に記載された連続ニーダー重合が挙げられる。
前記外部から気体を導入する場合、当該気体として具体的には、酸素、空気、窒素、炭酸ガス、オゾン、およびこれらの混合気体が挙げられる。中でも、重合性やコストの観点から、好ましくは窒素や炭酸ガス等の不活性ガス、より好ましくは空気や窒素が使用される。
また、使用できる発泡剤として具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭酸水素塩等が挙げられる。
本工程は、前記重合工程で得られた含水ゲルをゲル粉砕して、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と表記する。)を得る工程である。尚、後述する粉砕工程での「粉砕」と区別するために、本工程は「ゲル粉砕」と表記する。
前記ゲル粉砕とは、ニーダー、ミートチョッパー、カッターミル等のゲル粉砕機を用いて、含水ゲルを所定の大きさに調整することを意味する。
本工程は、前記重合工程及び/又はゲル粉砕工程で得られた含水ゲル及び/又は粒子状含水ゲルを所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。
前記乾燥重合体の樹脂固形分は、乾燥重合体1gを180℃で3時間加熱した際の質量変化から求められ、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは92質量%以上であって、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは97質量%以下である。
前記熱風の風速や乾燥時間等、前記乾燥温度以外の乾燥条件については、乾燥に供する粒子状含水ゲルの含水率や総質量及び目的とする樹脂固形分に応じて、適宜設定すればよく、バンド乾燥を行う際には、国際公開第2006/100300号、同第2011/025012号、同第2011/025013号、同第2011/111657号等に記載される諸条件が適宜適用される。
本工程は、前記乾燥工程を経て得られる乾燥重合体を、粉砕工程で粉砕し、所望する範囲の粒度に分級工程で調整して、表面架橋前の吸水性樹脂を得る工程である。
上述した粒度は、表面架橋後の吸水性樹脂のみならず、最終製品としての吸水剤についても適用される。そのため、表面架橋前の吸水性樹脂で調整された前記範囲の粒度を維持するように、表面架橋処理(表面架橋工程)されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて粒度調整されることがより好ましい。
本工程は、上述した各工程を経て得られる表面架橋前の吸水性樹脂の表面層に、さらに架橋密度の高い部分を設ける工程であり、混合工程、熱処理工程、冷却工程等を含む構成となっている。当該表面架橋工程において、例えば、上述した架橋剤(A)を含む表面架橋剤を用いることで表面架橋前の吸水性樹脂の表面で架橋反応が起こり、架橋剤(A)で表面架橋された吸水剤又は吸水性樹脂が得られる。なお本表面架橋工程では、架橋剤(A)以外の表面架橋剤(例えば、後述する他の表面架橋剤)を用いることも可能である。以下、本表面架橋工程で表面架橋前の吸水性樹脂を架橋剤(A)で処理する場合を例にとって詳述するが、架橋剤(A)を使用しない場合にはそれに代えて他の表面架橋剤を使用すれば足りる。なお本表面架橋工程で架橋剤(A)に代えて他の表面架橋剤を使用する場合、表面架橋後の吸水性樹脂を、その後の適当な工程(後述する再利用工程を含む)で、架橋剤(A)で表面架橋すればよい。
本工程は、表面架橋剤を含む溶液(以下、「表面架橋剤溶液」と表記する。)を混合装置内で表面架橋前の吸水性樹脂と混合することで、加湿混合物を得る工程である。
(表面架橋剤)
本発明においては、上述した架橋剤(A)を単独で使用してもよく、該架橋剤(A)と共に他の表面架橋剤を使用してもよい。他の表面架橋剤として具体的には、米国特許第7183456号に記載された表面架橋剤が挙げられる。また、表面架橋剤の取り扱い性や吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、他の表面架橋剤としては、好ましくはカルボキシル基と反応する官能基を二つ以上有する表面架橋剤であって、共有結合が形成される有機化合物が選択される。該架橋剤(A)を表面架橋剤として用いることで、(粒子状)吸水剤又は吸水性樹脂の表面に該架橋剤(A)に由来する構造(後述する一般式(11)で表される構造)を局在させることができる。
また、下記「[3-7] 添加剤とその添加工程」で添加される各種の添加剤を、5質量部以下の範囲内で、前記表面架橋剤溶液に添加したり、混合工程で別途添加したりすることもできる。
前記表面架橋前の吸水性樹脂と前記表面架橋剤溶液との混合は、表面架橋剤溶液を予め作製しておき、当該溶液を表面架橋前の吸水性樹脂に対して、好ましくは噴霧または滴下して、より好ましくは噴霧して混合する方法が選択される。
前記混合を行う混合装置は、表面架橋前の吸水性樹脂と表面架橋剤とを均一かつ確実に混合するのに必要なトルクを有していることが好ましい。当該混合装置は、高速攪拌型混合機が好ましく、高速攪拌型連続混合機がより好ましい。尚、当該高速攪拌型混合機の回転数は、好ましくは100rpm以上、より好ましくは300rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
本工程に供給される表面架橋前の吸水性樹脂の温度は、表面架橋剤溶液との混合性や加湿混合物の凝集性の観点から、好ましくは35℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。また、混合時間は、好ましくは1秒間以上、より好ましくは5秒間以上であって、好ましくは1時間以下、より好ましくは10分間以下である。
本工程は、前記混合工程で得られた加湿混合物に熱を加えて、表面架橋前の吸水性樹脂の表面上で架橋反応させる工程である。
前記加湿混合物の熱処理は、当該加湿混合物を静置状態で加熱してもよく、攪拌等の動力を用いて流動状態で加熱してもよいが、加湿混合物全体を均等に加熱できる点において、攪拌下で加熱することが好ましい。前記熱処理を行う熱処理装置は、前記観点から、パドルドライヤー(パドル型混合加熱処理機)、マルチフィンプロセッサー、タワードドライヤー等が挙げられる。
本工程における加熱温度は、表面架橋剤の種類および量、並びに吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上であって、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。また、加熱時間は、好ましくは5分間以上、より好ましくは7分間以上である。
加熱温度と加熱時間とを前記範囲内に制御することにより、得られる吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能が向上するため、好ましい。
本工程は、前記熱処理工程の後に必要に応じて設けられる任意の工程である。本工程は、前記熱処理工程を終えた高温の表面架橋後の吸水性樹脂を所定の温度まで強制冷却し、表面架橋反応を速やかに終了させる工程である。
前記表面架橋後の吸水性樹脂の冷却は、静置状態で冷却してもよく、攪拌等の動力を用いて流動状態で冷却してもよいが、吸水性樹脂全体を均等に冷却できる点において、攪拌下で冷却することが好ましい。前記冷却を行う冷却装置は、前記観点から、パドルドライヤー、マルチフィンプロセッサー、タワードドライヤー等が挙げられる。尚、これら冷却装置は、熱処理工程で使用される熱処理装置と同じ仕様とすることもできる。熱処理装置の熱媒を冷媒に変更することで、冷却装置として使用できるからである。
本工程における冷却温度は、熱処理工程での加熱温度、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であって、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
ところで、表面架橋前の吸水性樹脂、及び表面架橋後の吸水性樹脂のいずれか1つ以上に対して、添加剤を添加してもよい。換言すれば、吸水剤は、吸水性樹脂の他に、添加剤を含有し得る。添加剤としては、通液性向上剤又は同成分剤、芳香性物質、その他の添加剤などが含まれ、これらは1種を用いてもよく2種以上を組み合わせてもよい。
[3-7-1] 通液性向上剤又は同成分剤
通液性向上剤としては、吸水剤又は吸水性樹脂の荷重または無荷重下のゲル床透過性(GBP)を向上する機能を有する添加剤が挙げられ、多価金属塩、カチオン性ポリマー、無機微粒子から選ばれる1種類以上の化合物を使用でき、必要に応じて2種類以上を併用できる。これらは通液性の向上を目的とせず、その他の機能、例えば、吸湿下のAnti-Caking剤、粉体の流れ制御剤、吸水性樹脂のバインダーなどとして添加してもよい。その他の機能を目的として添加される場合、同成分剤という。前記通液性向上剤又は同成分剤の添加量は、選択される化合物に応じて、適宜設定される。
[3-7-2] その他の添加剤
その他の添加剤としては、キレート剤、無機還元剤、有機還元剤、ヒドロキシカルボン酸化合物、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等が挙げられ、これらは1つ又は2つ以上を使用できる。その他の添加剤としては、キレート剤(特にアミノ多価カルボン酸またはアミノ多価燐酸)が好ましく、特開平11-060975号、国際公開第2007/004529号、国際公開第2011/126079号、国際公開第2012/023433号、特表2009-509722号、特開2005-097519号、特開2011-074401号、特開2013-076073号、特開2013-213083号、特開昭59-105448号、特開昭60-158861号、特開平11-241030号、特開平2-41155号などに記載のキレート剤が挙げられる。
その他の添加剤(特にキレート剤)は、単量体または吸水性樹脂に対して、0.001質量%以上1質量%以下の範囲で添加または含有される。
[3-7-3] 添加剤の添加工程
前記添加剤は、上記の単量体水溶液の調製工程、重合工程、ゲル粉砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程から選ばれる1つ以上の工程の前、後またはその工程の途中で添加することができる。好ましくは重合工程以降のいずれかの工程の前、後またはその工程の途中で添加される。
添加剤を吸水性樹脂に添加する場合、該添加剤が液体又は水等の水性媒体の溶液の時には、該液体又は溶液を吸水性樹脂に対して噴霧し、十分なトルクをかけて吸水性樹脂と添加剤を均一かつ確実に混合することが好ましい。一方、前記添加剤が粉状等の固体状である場合には、吸水性樹脂とドライブレンドしてもよく、水等の水性液体をバインダーとして使用してもよい。
前記混合に使用する装置として具体的には、攪拌型混合機、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型ロータリーデスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機等が挙げられる。攪拌型混合機を用いる場合には、その回転数は、好ましくは5rpm以上、より好ましくは10rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
本発明においては、上述した工程以外に、造粒工程、整粒工程、微粉除去工程、微粉回収工程、微粉の再利用工程、除鉄工程等を、必要に応じて実施することができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等から選択される少なくとも1種類の工程をさらに含んでいてもよい。
尚、前記造粒工程は、微粉回収工程で得られた微粉の含水ゲル化工程などであってもよい。前記整粒工程は、表面架橋工程以降で微粉を分級して除去する工程;吸水性樹脂が凝集して所望の大きさを超えた場合に分級、粉砕を行う工程;などを含む。前記微粉の再利用工程は微粉をそのまま、または前記造粒工程で大きな含水ゲルにして、吸水性樹脂の製造工程の何れかの工程で原料である含水ゲル等に添加する工程であってもよい。
[4-1] 吸水性樹脂と吸水剤の関係
以上の様にして製造した表面架橋後の吸水性樹脂を最終製品として出荷可能な状態にすることで吸水剤が得られる。吸水剤が含む吸水性樹脂の量は、吸水剤全量に対して、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、特に好ましくは100質量%である。尚、100質量%とならない場合、残りの成分には、上記各種添加剤が含まれ得る。
本発明の吸水剤は、下記の特性について、好ましくは何れか1つ以上、より好ましくは何れか2つ以上、さらに好ましくは3つすべてを備えている。
吸水剤の無加圧下吸収倍率(CRC)は、好ましくは25g/g以上であって、好ましくは45g/g以下、より好ましくは43g/g以下、さらに好ましくは40g/g以下、特に好ましくは37g/g以下、最も好ましくは35g/g以下である。
前記無加圧下吸収倍率(CRC)が25g/g未満では、該吸水剤の吸収倍率が低下し、使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品の吸収体用途に適さないおそれがある。一方、前記無加圧下吸収倍率(CRC)が45g/gより高いと、ゲル強度が弱くなる恐れがある。本発明は、好ましい一実施形態として、無加圧下吸収倍率(CRC)が25g/gから35g/g未満である吸水剤であって、前記の一般式(11)で表される構造を有する(特に粒子状吸水剤の表面に局在する)ことで、加圧下吸収倍率(AAP)及びゲル床浸透性(GBP)が優れるものを含む。また、別の好ましい一実施形態として、無加圧下吸収倍率(CRC)が35g/g以上(好ましくは36g/g以上、より好ましくは37g/g以上)である吸水剤であって、前記の一般式(11)で表される構造を有する(特に粒子状吸水剤の表面に局在する)ことで、加圧下吸収倍率(AAP)が優れるものを含む。吸水剤の無加圧下吸収倍率(CRC)が高くなるほど加圧下吸収倍率(AAP)が低下することは、従来からの課題であったが、前記の一般式(11)で表される構造を有する(特に粒子状吸水剤の表面に局在する)ことで、無加圧下吸収倍率(CRC)を35g/g以上と高くしても、該CRCの値から予測されるほどの低い加圧下吸収倍率(AAP)にはならず、相対的に高い加圧下吸収倍率(AAP)を達成できる。この別の一実施形態においても、無加圧下吸収倍率(CRC)は、好ましくは45g/g以下であり、より好ましくは43g/g以下であり、より更に好ましくは42g/g以下である。
吸水剤の加圧下吸収倍率(AAP)は、好ましくは20g/g以上、より好ましくは21g/g以上、さらに好ましくは22g/g以上、特に好ましくは23g/g以上であって、好ましくは30g/g以下、より好ましくは28g/g以下である。
加圧下吸収倍率(AAP)を前記範囲内とすることで、吸収体に圧力が加わったときの液の戻り量が低減するため、使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品の吸収体用途に好適な吸水剤となる。
圧力0.3psi下での0.9質量%塩化ナトリウム水溶液のゲル床浸透性(GBP)は、好ましくは50×10-9cm2以上、より好ましくは60×10-9cm2以上、よりさらに好ましくは100×10-9cm2以上、特に好ましくは200×10-9cm2以上である。GBPが高いほど、膨潤ゲルの粒子間を流れる液の流れ性(通液性)がよくなって好ましい。
一方、他の物性とのバランスから、好ましくは400×10-9cm2以下、より好ましくは300×10-9cm2以下である。
本発明に係る吸水剤は、主に使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品の吸収体(吸収層)として使用されることが好ましく、吸収性物品1枚当たりの使用量が多い、吸収性物品の吸収体(吸収層)として使用されることがより好ましい。
前記吸収体は、粒子状吸水剤をシート状や繊維状、筒状などに成形したものを意味し、好ましくはシート状に成形されて吸収層となる。本発明に係る吸水剤の他に、パルプ繊維等の吸収性材料や接着剤や不織布などを成形に併用することもできる。この場合、吸収体(吸収層)中の吸水剤の量(以下、「コア濃度」と表記する)は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であって、上限として好ましくは100質量%である。
コア濃度を前記範囲内とすることで、前記吸収体(吸収層)を吸収性物品に用いると、尿を吸収して吸水剤がゲル化しても、ゲル粒子間に適度な空間を作ることができる。
本発明に係る吸収性物品は、前記吸収体(吸収層)を含み、通常、液透過性を有する表面シートおよび液不透過性を有する背面シートを備える。吸収性物品として、使い捨てオムツや生理用ナプキン等が挙げられる。
吸収性物品が例えば使い捨てオムツである場合には、装着したときに人の肌に触れる側に位置する液透過性のトップシートと、装着したときに外側に位置する液不透過性のバックシートとの間に、本発明の吸水剤を含む吸収体を挟持することにより、当該使い捨てオムツが作製される。尚、使い捨てオムツには、装着後の使い捨てオムツを固定するための粘着テープ等の、当業者にとって公知の部材がさらに設けられている。
尚、本発明に係る吸水剤は、前記使い捨てオムツや生理用ナプキン以外に、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤等の用途にも、好適に利用することができる。
以下、本発明に係る吸水剤の諸物性の測定方法に関して説明する。尚、測定対象が吸水剤以外の対象物である場合、「吸水剤」を測定の対象物に読み替えて適用する。例えば、測定の対象物が「表面架橋前の吸水性樹脂」である場合には、測定方法における「吸水剤」を「表面架橋前の吸水性樹脂」に読み替えて適用する。
吸水剤のCRCは、EDANA法WSP241.3(10)に準拠して測定した。
(b)加圧下吸収倍率(AAP)
吸水剤のAAPは、EDANA法WSP242.3(10)に準拠して測定した。
圧力0.3psi下での0.9質量%塩化ナトリウム水溶液のGBP(Gel Bed Permeability)を、国際公開第2005/016393号に開示されたGBP試験方法に準じて測定した。
1000mL容量セパラブルフラスコにグリセリン200g(2.2モル)、触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯体0.3gを仕込み、加熱攪拌し、これにエピクロロヒドリン442g(4.8モル)を滴下し、撹拌した。さらにジメチルアミンの50%水溶液69g(0.8モル)を加え、攪拌した。その後48.5%液体苛性ソーダ62gを滴下して、引き続き、12時間の熟成を行った。得られた反応物をメタノールに溶解した後、ろ過を行い、ろ液に48.5%液体苛性ソーダ168gを加え、攪拌し、ろ過を行った。ろ液中のメタノールを留去した後、蒸留水を加えて濃縮残渣を溶解し、98%硫酸20gを加えて、12時間攪拌した。
アクリル酸、アクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)5.2gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.3g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1~4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmの金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(a)を得た。
製造例2で得られた表面架橋前の吸水性樹脂(a)100質量部に、製造例1で得られた架橋剤(A)を含む水溶液(固形分44wt%)0.06質量部、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオールともいう)0.5質量部と、水2質量部とからなる表面架橋剤水溶液2.86質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で45分間加熱処理して表面架橋後の吸水性樹脂(1)を得た。その後、目開き850μmのJIS標準篩を用いて整粒させることで、吸水剤(1)を得た。吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、及びゲル床透過性(GBP)を表1に示した。
製造例2で得られた表面架橋前の吸水性樹脂(a)100質量部に、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部と、水2質量部とからなる表面架橋剤水溶液2.8質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で45分間加熱処理して表面架橋後の吸水性樹脂(2)を得た。その後。目開き850μmのJIS標準篩を用いて整粒させることで、吸水剤(2)を得た。吸水剤(2)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、及びゲル床透過性(GBP)を表1に示した。
アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液105重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.570重量部、0.1重量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液15.9重量部、脱イオン水322重量部からなる単量体水溶液を作成した。次に、38℃に調温した上記単量体水溶液を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液109重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液の液温は80℃まで上昇した。更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液11.3重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲルを得た。得られた帯状の含水ゲルを重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲルを得た。得られた含水ゲルを、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕した。次に、上記粒子状含水ゲルをゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲルの温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体を得た。熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であった。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター 6162で測定した。次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、吸水性樹脂(固形分95質量%)である吸水性樹脂粉末(b)を得た。吸水性樹脂粉末(b)は、CRC50.6[g/g]であった。
製造例3で得られた表面架橋前の吸水性樹脂(b)100質量部に、製造例1で得られた架橋剤(A)を含む水溶液(固形分44wt%)0.05質量部、1,4-ブタンジオール0.2質量部、プロピレングリコール0.3質量部と、水2質量部とからなる表面架橋剤水溶液2.55質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で37分間加熱処理して表面架橋後の吸水性樹脂(3)を得た。その後、目開き850μmのJIS標準篩を用いて整粒させることで、吸水剤(3)を得た。吸水剤(3)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率を表2に示した。
製造例3で得られた表面架橋前の吸水性樹脂(b)100質量部に、1,4-ブタンジオール0.2質量部、プロピレングリコール0.3質量部と、水2質量部とからなる表面架橋剤水溶液2.5質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で40分間加熱処理して表面架橋後の吸水性樹脂(4)を得た。その後、目開き850μmのJIS標準篩を用いて整粒させることで、吸水剤(4)を得た。吸水剤(4)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率を表2に示した。
アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液122重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.288重量部、0.1重量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液18.2重量部、脱イオン水288重量部からなる単量体水溶液を作成した。次に、38℃に調温した上記単量体水溶液を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液128重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液の液温は80℃まで上昇した。更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲルを得た。得られた帯状の含水ゲルを重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲルを得た。得られた含水ゲルを、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕した。次に、上記粒子状含水ゲルをゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲルの温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体を得た。熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であった。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター 6162で測定した。次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、吸水性樹脂(固形分95質量%)である吸水性樹脂粉末(c)を得た。吸水性樹脂粉末(c)は、CRC54.1[g/g]であった。
製造例4で得られた表面架橋前の吸水性樹脂(c)100質量部に、製造例1で得られた架橋剤(A)を含む水溶液(固形分44wt%)0.05質量部、エチレングリコール0.2質量部、プロピレングリコール0.4質量部と、水2質量部とからなる表面架橋剤水溶液2.65質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で33分間加熱処理して表面架橋後の吸水性樹脂(5)を得た。その後、目開き850μmのJIS標準篩を用いて整粒させることで、吸水剤(5)を得た。吸水剤(5)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率を表3に示した。
製造例4で得られた表面架橋前の吸水性樹脂(c)100質量部に、エチレングリコール0.2質量部、プロピレングリコール0.4質量部と、水2質量部とからなる表面架橋剤水溶液2.6質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で37分間加熱処理して表面架橋後の吸水性樹脂(6)を得た。その後。目開き850μmのJIS標準篩を用いて整粒させることで、吸水剤(6)を得た。吸水剤(6)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率を表3に示した。
製造例4で得られた表面架橋前の吸水性樹脂(c)100質量部に、製造例1で得られた架橋剤(A)を含む水溶液(固形分44wt%)0.05質量部、1,3-プロパンジオール0.2質量部、プロピレングリコール0.4質量部と、水2質量部とからなる表面架橋剤水溶液2.65質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で31分間加熱処理して表面架橋後の吸水性樹脂(7)を得た。その後、目開き850μmのJIS標準篩を用いて整粒させることで、吸水剤(7)を得た。吸水剤(7)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率を表4に示した。
製造例4で得られた表面架橋前の吸水性樹脂(c)100質量部に、1,3-プロパンジオール0.2質量部、プロピレングリコール0.4質量部と、水2質量部とからなる表面架橋剤水溶液2.6質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で35分間加熱処理して表面架橋後の吸水性樹脂(8)を得た。その後。目開き850μmのJIS標準篩を用いて整粒させることで、吸水剤(8)を得た。吸水剤(8)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率を表4に示した。
表5の通り、CRCが35g/g未満の吸水剤について、加圧下吸収倍率(AAP)及びゲル床浸透性(GBP)の評価結果を示す。
実施例2~4及び比較例2~4における無加圧下吸収倍率(CRC)と加圧下吸収倍率(AAP)との関係を図1に示す。
Claims (10)
- ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を下記一般式(1):
Bは下記一般式(2):
R1は炭素数1~6の炭化水素基を表し、
R2は水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表し、
Xは4級アンモニウム基の対イオンであって塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、又は水酸化物イオンを表し、
m、nはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、同じ置換基Aに結合しているm、nは0≦m+n≦4を満たし、
lは1~6であり、
kは1以上の整数である。)
で示される化合物を含む表面架橋剤で処理することを特徴とする、吸水剤の製造方法。 - 前記R1がメチル基である請求項1に記載の製造方法。
- 前記m、nが0≦m+n≦1を満たす請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記表面架橋剤が式(1)で示される化合物と、多価アルコール化合物及びアルキレンカーボネート化合物とを含む請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
- 表面架橋剤の使用量が、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部である請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記表面架橋剤を水溶液にし、該水溶液を表面架橋前の吸水性樹脂に噴霧又は滴下する請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
- 吸水剤が下記の特性について、何れか1つ以上を満たす請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
・無加圧下吸収倍率(CRC)が25g/g以上、40g/g以下である
・加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上である
・圧力0.3psi下でのゲル床透過性(GBP)が50×10-9cm2以上である - ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と下記一般式(1):
Bは下記一般式(2):
R1は炭素数1~6の炭化水素基を表し、
R2は水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表し、
Xは4級アンモニウム基の対イオンであって塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、又は水酸化物イオンを表し、
m、nはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、同じ置換基Aに結合しているm、nは0≦m+n≦4を満たし、
lは1~6であり、
kは1以上の整数である。)
で示される化合物とを含むことを特徴とする吸水性樹脂組成物。 - 下記一般式(11):
、Bは下記一般式(12):
R1は炭素数1~6の炭化水素基を表し、
R2は水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表し、
Xは4級アンモニウム基の対イオンであって塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、又は水酸化物イオンを表し、
m、nはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、同じ置換基Aに結合しているm、nは0≦m+n≦4を満たし、
lは1~6であり、
kは1以上の整数である。)
で示される構造を有することを特徴とするポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。 - 前記一般式(11)における前記m+nが、1≦m+n≦4である請求項9に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
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