JP7253219B2 - 難水溶性物質の可溶化剤 - Google Patents
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Description
項1. 一般式(1)に示すベタイン誘導体、及び/又は一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩を含む、難水溶性物質の可溶化剤。
項2. 前記一般式(1)中、R1~R3は、同一又は異なって、n-ブチル基及び/又はn-ペンチル基である、項1に記載の可溶化剤。
項3. 前記一般式(2)中、R4~R7は、同一又は異なって、n-ブチル基及び/又はn-ペンチル基である、項1に記載の可溶化剤。
項4. 前記難水溶性物質が、難水溶性基質である、項1~3のいずれかに記載の可溶化剤。
項5. 前記難水溶性基質が、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、3,3’-ジアミノベンジジン、5-ブロモ-4-クロロ-2-インドリルホスフェート、及びニューフクシンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1~4のいずれかに記載の可溶化剤。
項6. 項1~5のいずれかに記載の可溶化剤と、難水溶性物質とを水性溶媒中で共存させる、難水溶性物質の可溶化方法。
項7. 項1~5のいずれかに記載の可溶化剤と、難水溶性基質とを含む、基質溶液。
本発明の可溶化剤は、難水溶性物質を水性溶媒に可溶化させるために使用される添加剤であり、一般式(1)に示すベタイン誘導体及び/又は一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩からなることを特徴とする。以下、本発明の可溶化剤について詳述する。
本発明の可溶化剤として、一般式(1)に示すベタイン誘導体又は一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩のいずれか一方のみを使用してもよく、また、これらを組み合わせて使用してもよい。また、一般式(1)に示すベタイン誘導体を使用する場合、一般式(1)に示すベタイン誘導体の内、1種の構造のものを単独で使用してもよく、また2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。また、一般式(1)に示すベタイン誘導体を使用する場合、一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩の内、1種の構造のものを単独で使用してもよく、また2種以上の構造のものを組み合わせて使用してもよい。
本発明の可溶化剤の可溶化対象は、難水溶性物質である。ここで、「難水溶性物質」とは、20℃において、1g又は1mLを溶かすに要する水の量10000mL以上である溶質を意味する。
本発明の可溶化剤は、難水溶性物質を可溶化させる水性溶媒に添加して使用される。
R1~R3が炭素数3のアルキル基である一般式(1)に示すベタイン誘導体の場合:通常1000mM以上、好ましくは1000~3000mM、更に好ましくは1000~2000mM。
R1~R3が炭素数4のアルキル基である一般式(1)に示すベタイン誘導体の場合:通常500mM以上、好ましくは500~3000mM、更に好ましくは500~2000mM。
R1~R3が炭素数5のアルキル基である一般式(1)に示すベタイン誘導体の場合:通常250mM以上、好ましくは250~3000mM、更に好ましくは250~2000mM。
R4~R7が炭素数3のアルキル基である一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩の場合:通常500mM以上、好ましくは500~3000mM、更に好ましくは500~2000mM。
R4~R7が炭素数4のアルキル基である一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩の場合:通常250mM以上、好ましくは250~3000mM、更に好ましくは250~2000mM。
R4~R7が炭素数5のアルキル基である一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩の場合:通常250mM以上、好ましくは250~3000mM、更に好ましくは250~2000mM。
TMBの場合:288nmの吸光度(1cmセルを使用した場合、吸光度1は10.3μg/mLの溶解度と換算される)として0.01~20000程度、好ましくは0.01~12000程度、更に好ましくは0.01~9000程度。
AECの場合:270nmの吸光度(1cmセルを使用した場合、吸光度1は11.4μg/mLの溶解度と換算される)として0.01~5000程度、好ましくは0.01~25000程度、更に好ましくは0.01~1500程度。
DABの場合:280nmの吸光度(1cmセルを使用した場合、吸光度1は14.1μg/mLの溶解度と換算される)として0.01~6000程度、好ましくは0.01~3000程度、更に好ましくは0.01~1600程度。
BCIPの場合:292nmの吸光度(1cmセルを使用した場合、吸光度1は75.8μg/mLの溶解度と換算される)として0.01~1500程度、好ましくは0.01~500程度、更に好ましくは0.01~240程度。
NFの場合:554nmの吸光度(1cmセルを使用した場合、吸光度1は3.8μg/mLの溶解度と換算される)として0.01~50000程度、好ましくは0.01~35000程度、更に好ましくは0.01~17000程度。
本発明は、更に、前記可溶化剤と難水溶性基質を含む基質溶液を提供する。本発明の基質溶液は、前記可溶化剤によって難水溶性基質を高濃度に可溶化できるので、標識酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)の基質溶液として提供できる。また、本発明の基質溶液は、標識酵素を利用した測定キットの付属品として提供することもできる。
以下に示す構造のベタイン誘導体(ベタイン1~5)を準備した。ベタイン1は、市販のグリシンベタイン(型番023-10862、和光純薬工業製)を使用し、ベタイン2~5は特開2010-220607号公報等に記載の公知の合成方法を用いて合成した。
テトラアルキルアンモニウム塩は、市販のテトラメチルアンモニウムクロライド(型番T0136、東京化成工業製)、テトラエチルアンモニウムクロライド(型番T0095、東京化成工業製)、テトラプロピルアンモニウムクロライド(型番T2106、東京化成工業製)、テトラブチルアンモニウムクロライド(型番T0055、東京化成工業製)、テトラアミルアンモニウムクロライド(型番T1433、東京化成工業製)を使用した。本実験では対アニオンとしてクロライド(塩化物イオン)を用いた。
ベタイン誘導体水溶液に対する難水溶性物質の溶解挙動を調べるために次の実験を行った。難水溶性物質としては難水溶性基質であるTMB、AEC、及びDABを用い、ベタイン誘導体としてはベタイン5を用いた。
一般式(1)に示すベタイン誘導体が難水溶性物質を簡便、且つ高濃度で溶解させることができる効果を実証するために比較化合物を用いて溶解実験を行った。比較化合物としては、包接分散剤として使われるα-シクロデキストリン(α-CDx)、β-シクロデキストリン(β-CDx)、γ-シクロデキストリン(γ-CDx)、イオン性、非イオン性界面活性剤として難水溶性基質の可溶化にも使われるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化ベンザルコニウム(BKCl)、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンサルフェート(DDAP)、TritonX、ベタイン1、及びベタイン2を用いた。また、難水溶性物質としては難水溶性基質であるTMBを用いた。
一般式(1)に示すベタイン誘導体による難水溶性物質の溶解にどの程度の時間がかかるか検討するため、時間変化測定を行った。ベタイン誘導体としてはベタイン4及びベタイン5を1000mMの濃度で用い、難水溶性物質としては難水溶性基質であるTMBを用いた。
一般式(1)に示すベタイン誘導体の濃度が難水溶性物質の溶解性に及ぼす影響を評価するために、難水溶性物質の添加量は10mgに固定し、ベタイン誘導体水溶液におけるベタイン誘導体の濃度を100~2000mMに変化させ、難水溶性物質に対する溶解実験を行った。ベタイン誘導体としてはベタイン4及びベタイン5を用い、難水溶性物質としては難水溶性基質であるTMBを用いた。
一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩によって溶解可能になる難水溶性物質量を評価するために、難水溶性物質の添加量は10mgに固定し、テトラアルキルアンモニウム塩水溶液におけるテトラアルキルアンモニウム塩の濃度を100~2000mMに変化させ、難水溶性物質に対する溶解実験を行った。テトラアルキルアンモニウム塩としてはテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、又はテトラペンチルアンモニウムクロライドを100~2000mMの濃度で用い、難水溶性物質としては難水溶性基質であるTMBを用いた。
一般式(1)に示すベタイン誘導体によって溶解可能になる難水溶性物質量を評価するために、ベタイン誘導体水溶液におけるベタイン誘導体の濃度を固定し、難水溶性物質に対する溶解実験を行った。ベタイン誘導体としてはベタイン4、又はベタイン5を2000mMの濃度で用い、難水溶性物質としては難水溶性基質であるTMBを用いた。
一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩によって溶解可能になる難水溶性物質量を評価するために、テトラアルキルアンモニウム塩水溶液におけるテトラアルキルアンモニウム塩の濃度を固定し、難水溶性物質に対する溶解実験を行った。テトラアルキルアンモニウム塩としてはテトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、又はテトラペンチルアンモニウムクロライドを2000mMの濃度で用い、難水溶性物質としては難水溶性基質であるTMBを用いた。
難水溶性物質の内、酸化反応を触媒する標識酵素に使用される難水溶性基質は、保存中に空気酸化等を受けると基質としての機能を失ってしまう。そこで、一般式(1)に示すベタイン誘導体が難水溶性基質をどの程度酸化等から保護しながら長期間安定に保存できるか検討した。ベタイン誘導体としてはベタイン5を1000mMの濃度で用い、難水溶性基質としてはTMBを用いた。また、比較として、蒸留水のみにTMBを懸濁させたもの、及び一般的なTMB溶液の調製法である酢酸緩衝溶液にTMBを溶解させたものを用いた。
試験例8において長期的な保存安定性が確認された長期保存TMB溶液(1000mMのベタイン5及びTMBを含む水溶液の1年間保存後のもの)が、酵素反応の基質溶液として使用可能かどうかを評価するため、グルコースオキシダーゼ(GOD、和光純薬工業製、カタログ番号:074-02401)と西洋わさび由来ペルオキシダーゼ(HRP、和光純薬工業製、カタログ番号:165-10793)を利用したグルコースの定量における検量線を作成した。比較例として、新しく調製した同組成のTMB溶液を使用した。
一般式(1)に示すベタイン誘導体は、低濃度では標識酵素の活性化にも寄与することが明らかとなっている(特開2012-100654号公報)。そこで、難水溶性の基質溶液に含まれるベタイン誘導体が、最終的に酵素反応溶液に添加され、希釈された際に酵素反応の促進にも寄与するか評価するために、西洋わさび由来ペルオキシダーゼ(HRP、和光純薬工業製、カタログ番号:165-10793)の過酸化水素濃度に対する検出限界を比較した。基質溶液としては1.0mg/mLのTMB及び1000mMのベタイン4を含むTMB溶液を使用した。また、比較例として、酢酸緩衝溶液にTMBを溶解させたTMB溶液(組成及び調製法は、試験例6に記載の通り)についても基質溶液として使用した。
界面活性剤を利用した可溶化では、溶液の泡立ちや粘性が生じ、溶液をはかりとる際には取り扱いに注意が必要となる。一方で、本発明で使用されるベタイン誘導体は、界面活性が低く、粘度も低い。そこで、最も高い溶解性を示したベタイン5水溶液(1000mM)と界面活性剤として、SDS水溶液(1000mM)を調製し、その溶液の粘度を比較した。各溶液の粘度は、音叉型振動式粘度計(エーアンドディー社、SV-10)を用い、溶液を20℃に恒温して測定した。その結果、ベタイン5水溶液の粘度は6.56mPa・sであったのに対し、SDS水溶液では、その3倍高い21.0mPa・sとなった。基質溶液とした際に、本発明で使用されるベタイン誘導体水溶液の方が扱い易いことが示された。
試験例1~11で示したように、一般式(1)に示すベタイン誘導体は難水溶性基質に対して高い溶解性を示した。標識酵素として汎用されるペルオキシダーゼでは、難水溶性の発色基質として、TMB、AEC、及びDABが広く使用されており、標識酵素として汎用されるアルカリホスファターゼでは、難水溶性の発色基質として、BCIP、及びNFが広く使用されている。これらの難水溶性の発色基質は、難水溶性の点で共通性質があるが、構造上の類似性は見当たらない。TMBについては、試験例1~11において、一般式(1)に示すベタイン誘導体、及び一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩による溶解性の向上効果を示したので、本試験例では、AEC、DAB、BCIP、及びNFについて、一般式(1)に示すベタイン誘導体、及び一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩による溶解性の向上効果を評価した。ベタイン誘導体としてはベタイン5を、テトラアルキルアンモニウム塩としてはテトラペンチルアンモニウムクロライドを使用し、それぞれ1000mMの濃度で使用した。
試験例1~12で示したように、一般式(1)に示すベタイン誘導体、及び一般式(2)に示すテトラアルキルアンモニウム塩は、難水溶性物質に対して高い溶解性を示した。本発明に従って調製される基質溶液が実際の免疫染色についても有効に機能しうることを確かめるために、マウスの切片を使った免疫染色実験を行った。染色対象としたのは、ミトコンドリア内に局在するMn SOD(Mnスーパーオキシドディスムターゼ)である。一次抗体として、抗Mn SOD抗体(rabbit)(StressMarq Biosciences製、カタログ番号:SPC-117)をブロッキングワン(ナカライテスク製、カタログ番号:03953-95)で40倍に希釈したものを用い、二次抗体として、HRP標識抗rabbit抗体(American Qualex製、カタログ番号:A102PS)を超純水で2000倍に希釈したものを用いた。
Claims (4)
- 前記難水溶性基質が、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール、3,3’-ジアミノベンジジン、5-ブロモ-4-クロロ-2-インドリルホスフェート、及びニューフクシンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の可溶化剤。
- 請求項1又は2のいずれかに記載の可溶化剤と、難水溶性基質とを水性溶媒(但し、緩衝剤を含む場合を除く)中で共存させる、難水溶性物質の可溶化方法。
- 請求項1又は2のいずれかに記載の可溶化剤と、難水溶性基質とを含み、緩衝剤を含まない、基質溶液。
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