JP7251135B2 - モールド成形用離型フィルム及びモールド成形方法 - Google Patents
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Description
本発明者が、従来のモールド成形用離型フィルムを用いて、ハイブリッド成形法で半導体パッケージのモールド成形をすることを検討した結果、モールド成形用離型フィルムの追従性が低く、さらに、金型汚れが発生するという問題があることが判明した。
そこで、本発明は、モールド成形時に追従性が高く、金型汚れの発生を抑制できるモールド成形用離型フィルムを提供することを課題とする。
第1の樹脂組成物のモールド成形に用いられ、
第2の樹脂組成物によって構成される離型層が、第3の樹脂組成物によって構成される基材層の上に積層された積層構造を有するモールド成形用離型フィルムであって、
前記離型層は前記モールド成形用離型フィルムの少なくとも一方の面に配置され、
前記第3の樹脂組成物はポリブチレンテレフタレートを含み、
前記基材層中のカリウムの含有量は、前記基材層全体に対して、0.01ppm以上30ppm以下である、モールド成形用離型フィルムが提供される。
上記モールド成形用離型フィルムを用いたモールド成形方法であって、
該モールド成形用離型フィルムを金型に配置する配置工程と、
該モールド成形用離型フィルムが形成する成形空間に第1の樹脂組成物を導入する導入工程と、を含む、モールド成形方法が提供される。
本実施形態のモールド成形用離型フィルムは、第1の樹脂組成物のモールド成形に用いられるモールド成形用離型フィルムであって、第2の樹脂組成物によって構成される離型層が、第3の樹脂組成物によって構成される基材層の上に積層された積層構造を有しており、前記離型層は前記モールド成形用離型フィルムの少なくとも一方の面に配置され、前記第3の樹脂組成物はポリブチレンテレフタレートを含み、前記基材層中のカリウムの含有量は、前記基材層全体に対して、0.01ppm以上30ppm以下である。
このハイブリッド成形法は、まず、トランスファーモールド成形のように、流動状態の封止用樹脂組成物、すなわち、第1の樹脂組成物を金型中のモールド成形用離型フィルムが形成する成形空間に流し込み、次いで、第1の樹脂組成物が完全に硬化する前に金型のキャビティを稼働させ、コンプレッションモールド成形のように第1の樹脂組成物を加圧する方法である。これにより、流動状態の第1の樹脂組成物を加圧することができ、第1の樹脂組成物の充填性を向上することができる。ハイブリッド成形法は、低背位の半導体パッケージ、チップ-チップ間の隙間が小さい半導体パッケージなど封止の際に充填不良となりやすい半導体パッケージについて、歩留りを向上できるという観点で都合がよい。
これにより、第1の樹脂組成物が、モールド成形用離型フィルムと金型との間に浸入し、直接金型に第1の樹脂組成物が付着してしまうことで、金型汚れの原因となることがあった。
詳細なメカニズムは定かではないが、この理由は以下のように推測される。まず、従来のモールド成形用離型フィルムにおいて、カリウムは、ポリブチレンテレフタレートを含む基材層の成形時に、ポリブチレンテレフタレートの結晶核となる。この結晶核に由来する結晶の異方性によって、収縮の異方性が生じ、追従性が低下していると推測される。これにより、本実施形態に係るモールド成形用離型フィルムは、従来のモールド成形用離型フィルムと比べて、カリウムの含有量を低減することで、収縮の異方性を低減し、追従性を向上でき、さらに、金型汚れの発生を抑制できる。
以上より、本実施形態に係るモールド成形用離型フィルムは、モールド成形時に追従性が高く、金型汚れの発生を抑制できると推測される。
まず、基材層1について説明する。
まず、基材層1について説明する。基材層1は、第3の樹脂組成物によって構成されるフィルムである。
また、基材層1中のカリウムの含有量の下限値は、追従性を向上し、金型汚れの発生を抑制する観点から低ければ低いほどよいが、金型に対する離型性を得る観点から、基材層1全体に対して、0.001ppm以上であることが好ましい。
また、第3の樹脂組成物中に含まれる原料成分を好適に混練し、押出成形を行う観点から、押出成形のスクリューのホッパー側と、計量側との温度差の下限値は、例えば、40℃以上であることが好ましく、45℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましい。
基材層1の厚みの上限値は、例えば、100μm以下であり、95μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがさらに好ましく、55μm以下であることが一層好ましい。これにより、モールド成形用離型フィルム10の剛性が大きくなり過ぎることを抑制し、微細な金型形状にも追従することができる。
基材層1としては、例えば、延伸フィルムであることが好ましい。これにより、第2の樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の分子鎖を配向させることができる。したがって、モールド成形用離型フィルム10を金型に追従させる際にシワなどの物理的な変形が生じることを抑制できる。
また、第3の樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレートの他に、例えば、熱可塑性樹脂、無機充填材、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、着色剤、加水分解安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、結晶核剤をさらに含んでもよい。
以下、第3の樹脂組成物の含有成分について代表成分の詳細を説明する。
熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、テレフタル酸-イソフタル酸-エチレングリコール共重合体、テレフタル酸-エチレングリコール-1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合などのポリブチレンテレフタレート以外のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニルなどのポリビニル樹脂;ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)などのポリオレフィン樹脂;シンジオタクチック構造を有するポリスチレン樹脂などのポリスチレン樹脂;トリアセチルセルロース樹脂などのセルロース樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機充填材としては限定されず、具体的には、カーボンブラック;シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、ケイ藻土、ワラストナイトなどのケイ酸塩;酸化鉄、酸化チタン、アルミナなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩;炭化珪素などの炭化物;窒化珪素、窒化ホウ素などの窒化物などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノ-ル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびチオエ-テル系酸化防止剤から選択される1種以上を使用できる。
フェノ-ル系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル}2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2-オクチルチオ-4,6-ジ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-s-トリアジン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチル-6-ブチルフェノール)、2,-2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4'-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-エチリデンビス(4-s-ブチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4-8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-ビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコ-ルビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、1,1'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(6-(1-メチルシクロヘキシル)-4-メチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス(2-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルプロピオニロキシ)1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)サルファイド、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-2-メチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルシクロヘキシル、スチレネイティッドフェノール、2,4-ビス((オクチルチオ)メチル)-5-メチルフェノール、などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルホスファイト)、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイト、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、ビス-(2,6-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ミックスドモノandジ-ノニルフェニルホスファイト)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシカルボニルエチル-フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-オクタデシルオキシカルボニルエチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
チオエ-テル系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ビス(2-メチル-4-(3-n-ドデシル)チオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル)スルフィド、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリル)チオプロピオネートなどが挙げられる。
着色剤としては限定されず、具体的には、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンなどを挙げることができる。着色剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
スリップ剤としては限定されず、具体的には、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のアミドなどが挙げられる。スリップ剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を配合することができる。
アンチブロッキング剤としては限定されず、具体的には、微粉シリカ、微粉酸化アルミニウム、微粉クレー、微粉シリコーン樹脂、液体シリコーン樹脂、微粉テトラフロロエチレン樹脂、微粉アクリル樹脂、微粉メタクリル樹脂などが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
帯電防止剤としては限定されず、具体的には、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機帯電防止剤;N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アルキルアミン、アルキルアリルスルホネート、アルキルスルファネートなどの有機帯電防止剤などが挙げられる。帯電防止剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
加水分解安定剤としては限定されず、具体的には、カルボジイミド基を含む化合物などが挙げられる。
カルボジイミド基を含む化合物としては、具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどのモノカルボジイミド化合物;ポリ(4,4'-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(N,N'-ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミドなどのポリカルボジイミド化合物などが挙げられる。加水分解安定剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、カルボジイミド化合物の市販品としては、具体的には、東京化成製のB2756;日清紡ケミカル社製のカルボジライトLA-1;ラインケミー社製のStabaxol P、Stabaxol P400、Stabaxol Iなどが挙げられる。
潤滑剤としては限定されず、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルなどの長鎖脂肪酸およびそのエステルなどが挙げられる。潤滑剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
結晶核剤としては限定されず、具体的には、ステアリン酸モノグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライドなどの脂肪酸エステル;12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドなどのヒドロキシ脂肪酸エステル;12-ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸モノアミド;エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミドなどの脂肪族ビスアミド;エチレンビス12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12-ヒドロキシステアリン酸アミドなどのヒドロキシ脂肪酸ビスアミド;12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム等のヒドロキシ脂肪酸金属塩などが挙げられる。結晶核剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
次に離型層2について説明する。
離型層2は、第2の樹脂組成物によって構成される薄膜である。
第2の樹脂組成物は、例えば、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、及び、オレフィン系樹脂からなる群より選択される1種以上を含む。以下、代表成分について説明する。
アクリル系樹脂としては、具体的には、ガラス転移温度の低いアクリルモノマーと、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトリル基といった離型性を向上できる官能基を備える官能基アクリルモノマーとの共重合体を用いることができる。
上記ガラス転移温度の低いアクリルモノマーとしては、具体的には、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、2-エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。
上記官能基アクリルモノマーとしては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。
上記アクリル用硬化剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物及びエポキシ化合物からなる群から選択される1種以上を含むものを用いることができる。これにより、アクリル系樹脂を架橋し、離型層を薄膜に成形することができる。なお、アクリル用硬化剤としては、例えば、2官能以上の多官能のものが好ましく、3官能以上の多官能のものがより好ましい。これにより、架橋による網目構造が緩やかに広がる。したがって、離型層の柔軟性が向上し、基材層の変形を妨げることが無くなる。以上より、追従性を向上できる。
フッ素系樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される共重合体を用いることができる。下記一般式(1)で表される共重合体を用いる場合、第2の樹脂組成物は、さらにフッ素系樹脂用硬化物を含む。これにより、離型層2は、下記一般式(1)で表される共重合体と、フッ素系樹脂用硬化剤とが架橋することで薄膜として形成される。すなわち、離型層2は、下記一般式(1)で表される共重合体と、フッ素系樹脂用硬化剤とが架橋してなる。
以下、下記一般式(1)で表される共重合体と、フッ素系樹脂用硬化剤とについて説明する。
上記一般式(1)で表される共重合体は、例えば、Aの構造単位を備えることで離型性を向上し、Bの構造単位を備えることで離型層2を形成することができる。具体的には、Bが含む基であるRBと、硬化剤とが反応し、架橋構造を形成することで、薄膜である離型層2を作製することができる。
また、Aの構造としては、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体などのテトラフルオロエチレンの共重合体;クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体などのトリフルオロエチレンの共重合体に由来する構造単位であってもよい。
また、Aの構造としては、上記具体例のうち、1種または2種以上の構造単位を組み合わせてよい。
上記一般式(A2)において、RAは、水素原子、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種または2種以上の原子によって形成される基である。
なお、共重合体中に含まれる複数のRAは、例えば、同一の構造でもよく、異なる構造でもよい。
ここで、硬化剤と反応する官能基としては、具体的には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。硬化剤と反応する官能基としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を含むことができる。なお、アミノ基としては、1級アミノ基または2級アミノ基であることが好ましい。
RBを構成する原子としては、具体的には、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、フッ素原子、塩素原子などが挙げられる。
RBとしては、例えば、ケイ素原子を含むものが好ましい。また、ケイ素原子を含む場合、例えば、シリコーン結合-Si-O-を備えていてもよい。シリコーン結合は、第1の樹脂組成物に対する離型性発現すると考えられる。したがって、Bの構造単位に、硬化剤と反応させる構造に加えて、さらに離型性を向上させる構造とを導入でき、離型層2の離型性を向上できる。
また、RBとしては、例えば、1価の有機基の水素原子を、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基によって置換したものであってもよい。なお、1価の有機基の1価とは、原子価のことを示す。このような、1価の有機基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などのアルキル基;アリル基、ペンテニル基、ビニル基などのアルケニル基;エチニル基などのアルキニル基;メチリデン基、エチリデン基などのアルキリデン基;トリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;アダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;トリル基、キシリル基などのアルカリル基などが挙げられる。
Aが上記式(A2)の構造単位を含み、Bが上記一般式(B1)の構造単位を含む共重合体を含むその他の市販品としては、具体的には、AGCコーテック社製のオブリガートSS0057、オブリガートSS0061、オブリガートPS291U-H、オブリガートSS0051、オブリガートPS309R、オブリガートPW501Uなどが挙げられる。なお、これらの市販品は、AGCコーテック社製のオブリガートPS306Rと同様に2官能以上のイソシアネート化合物を硬化剤としてさらに含む。
上記極性官能基としては、具体的には、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、ヒドロキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基などが挙げられる。極性官能基としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
極性官能基としては、上記具体例のうち、シラノール基または炭素数1以上10以下のアルコキシシラン基を含むことが好ましい。これにより、フッ素化合物の分子鎖同士が好適に結合できる。したがって、フッ素化合物中に極性基が残存し、エポキシ樹脂との離型性が低下することを抑制できる。
シラノール基または炭素数1以上10以下のアルコキシシラン基を含むフッ素化合物としては、例えば、下記一般式(3)で示されるものが好ましい。なお、下記一般式(3)においてAがヒドロキシ基の場合、フッ素化合物はシラノール基を含む。また、下記一般式(3)においてAがアルコキシ基の場合、フッ素化合物はアルコキシシラン基を含む。
Aのうち少なくとも1つがヒドロキシ基または炭素数1以上10以下のアルコキシ基であればよく、Aのうち2つ以上がヒドロキシ基または炭素数1以上10以下のアルコキシ基であることが好ましく、Aのうち3つがヒドロキシ基または炭素数1以上10以下のアルコキシ基であることがより好ましい。これにより、極性官能基を含むAと、基材層とが結合を形成することにより、プライマー層または基材層上に離型層を均一に形成することができる。これにより、離型層が、基材層の変形を妨げることが無くなり、モールド成形用離型フィルムの追従性を向上できる。
上記一般式(3)において、Aのうち2つ以上がヒドロキシ基または炭素数1以上10以下のアルコキシ基であることにより、フッ素化合物の分子鎖間でA同士が反応し、分子鎖がAを介して結合し、均一かつフッ素原子の密度が高い離型層を形成することができる。したがって、離型層を形成する分子鎖の欠陥が生じることを抑制でき、離型性をさらに向上することができる。
オレフィン系樹脂としては、具体的には、エポキシ基またはオキセタニル基を含むノルボルネン骨格を有するモノマーに由来する第1の構造単位を含むものが挙げられる。オレフィン系樹脂として、第1の構造単位を含むものを用いる場合、さらに酸発生剤を含む。これにより、離型層2は、第1の構造単位を含むオレフィン系樹脂のエポキシ樹脂、オキセタニル基が開環し、架橋構造を形成することで、薄膜として形成される。
第1の構造単位の構造は、エポキシ基またはオキセタニル基を含むノルボルネン骨格を有するモノマーに由来すれば限定されるものではない。例えば、第1の構造単位は、下記一般式(4)で表されることが好ましい。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。アルカリル基としては、例えばスチリル基、トリル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
これらの中でもRX及びRYは、それぞれ独立して、アルキル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基であることが更に好ましい。これにより、立体障害を抑制し、ノルボルネン由来の構造単位の分子鎖を強固に束縛することができる。したがって、モールド成形用離型フィルム10の耐熱性を向上することができる。したがって、ハイブリッド成形法を用いたモールド成形時における追従性を向上し、金型汚れを抑制できる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。アルカリル基としては、例えばスチリル基、トリル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
ここで、第2の構造単位としては、具体的には、下記一般式(6)で示されるスチレン型モノマーに由来する構造単位、下記一般式(7)で示されるインデン型モノマーに由来する構造単位、下記一般式(8)で示されるマレイミド型モノマーに由来する構造単位、下記一般式(9)で示されるノルボルネン型モノマーに由来する構造単位などが挙げられる。
第2の構造単位としては、例えば、下記一般式(7)で示されるマレイミド型モノマーに由来する構造単位、または、下記一般式(9)で示されるノルボルネン型モノマーに由来する構造単位を含むことが好ましい。これにより、本実施形態に係るモールド成形用離型フィルム10の耐熱性を向上させることができる。したがって、ハイブリッド成形法を用いたモールド成形時における追従性を向上し、金型汚れを抑制できる。
また、上記一般式(6)中、mは、例えば、0以上5以下の整数であり、0以上3以下の整数であることが好ましく、0以上1以下の整数であることがより好ましい。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。アルカリル基としては、例えばスチリル基、トリル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
酸発生剤としては、具体的には、光により酸を発生する光酸発生剤、熱により酸を発生する熱酸発生剤などが挙げられる。これらの中でも、光酸発生剤を用いることが好ましい。これにより、ポリオレフィン系樹脂の架橋密度を向上することができる。したがって、モールド成形用離型フィルム10の耐熱性を向上することができる。
第2の樹脂組成物は、上述したアクリル系樹脂、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂の他に、モールド成形用離型フィルムの追従性を損なわない範囲でその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては限定されないが、溶媒、充填材、帯電防止剤、レベリング剤などが挙げられる。以下、代表成分について説明する。
第2の樹脂組成物は、離型層2の製造方法に応じて、例えば、溶媒を含んでもよい。第2の樹脂組成物が溶媒を含む場合、第2の樹脂組成物を溶媒に溶解し、塗工することで離型層2を作製することができる。
溶媒としては限定されず、具体的には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、キシレン、エチルベンゼンなどが挙げられる。溶媒としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を用いることができる。
第2の樹脂組成物は、例えば、充填材をさらに含んでいてもよい。
図2は、第2の樹脂組成物が充填材を含む場合のモールド成形用離型フィルムの一例である。図2に示されるように、充填材を含むことにより、離型層2の表面に凹凸を形成し、マット調とすることができる。これにより、離型性を向上し、さらに、モールド成形された第1の樹脂組成物、すなわち、成形物の表面に凹凸を転写できる。成形物の凹凸を転写することで、成形物の表面が平滑である場合と比べて、正反射光の強度が減少し、乱反射光の強度が増加すると推測される。これにより、正反射光に起因する光沢が、印字部分に生じにくくなると考えられる。したがって、成形物の表面が平滑である場合と比べて、成形物の表面に印字された文字の可読性を向上できる観点で好ましい。
無機充填材としては、具体的には、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、2次凝集シリカ、微粉シリカなどのシリカ;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの無機窒化物;アルミナ、酸化チタンなどの無機酸化物;炭化ケイ素などの無機炭化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機水酸化物;タルク、クレー、マイカなどの鉱物;ガラス繊維(石英ガラス)などが挙げられる。
有機充填材としては、例えば、アクリル樹脂粒子;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂粒子;オルガノシリコーンパウダーなどのシリコーン樹脂粒子;ポリスチレン樹脂粒子;ポリアクリロニトリル樹脂粒子;テトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂粒子などが挙げられる。
充填材としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。無機充填材としては、上記具体例のうち例えば、シリカを含むことが好ましい。また、有機充填材としては、上記具体例のうち例えば、アクリル樹脂粒子、オレフィン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子及びポリアクリロニトリル樹脂粒子からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、アクリル樹脂粒子を含むことがより好ましい。これにより、モールド成形用離型フィルムと、第1の樹脂組成物との離型性を向上できる。
また、上記ポリスチレン樹脂粒子の市販品としては、具体的には、綜研化学社製のSX-500Hなどが挙げられる。
また、上記ポリアクリロニトリル樹脂粒子の市販品としては、具体的には、東洋紡社製のタフチックASF-7などが挙げられる。
また、上記シリコーン樹脂粒子の市販品としては、具体的には、東レ・ダウコーニング社製のE606などが挙げられる。
第2の樹脂組成物は、例えば、帯電防止剤を更に含んでもよい。
帯電防止剤としては限定されず、具体的には、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アミノ基といったカチオン性基を有するカチオン性帯電防止剤;スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、スルホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン系帯電防止剤;アミノ酸、アミノ硫酸エステルなどの両性帯電防止剤;アミノアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどのノニオン性帯電防止剤などが挙げられる。また、帯電防止剤としては、上記具体例のものを高分子量化したものを用いてもよい。帯電防止剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
第2の樹脂組成物は、例えば、レベリング剤を更に含んでもよい。これにより、第2の樹脂組成物を、基材層1の上に均一に塗工することができる。
レベリング剤としては限定されず、具体的には、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などのフッ素系レベリング剤;ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、シリコーン変性アクリル化合物などのシリコーン系レベリング剤;アクリル系レベリング剤などが挙げられる。レベリング剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
次に、モールド成形用離型フィルム10の製造方法について説明する。
本実施形態に係るモールド成形用離型フィルム10の製造方法は、例えば、まず、第3の樹脂組成物によって構成される基材層1を準備する準備工程と、ワニスに調製した第2の樹脂組成物を塗工し、第2の樹脂組成物を架橋反応させ、離型層2を作製する塗工工程と、を含む。
また、モールド成形用離型フィルム10の製造方法としては、例えば、塗工工程の後、モールド成形用離型フィルム10を巻回体とする巻回工程を含んでもよい。
以下、各工程の詳細について説明する。
まず、準備工程では、基材層1を準備する。
本実施形態において、基材層1を製造する方法は、第3の樹脂組成物により構成されるフィルムを作製する方法であれば限定されず、第3の樹脂組成物が含む成分に応じて公知の方法を用いることができる。基材層1を製造する方法としては限定されず、具体的には、インフレーション押出法、Tダイ押出法などが挙げられる。
塗工工程では、基材層1の上に、ワニスに調製した第2の樹脂組成物を塗工する。次いで、第2の樹脂組成物の成分に応じて、硬化反応、架橋反応を起こし、離型層2を作製する。
巻回工程では、モールド成形用離型フィルム10を巻回体とする。
ここで、巻回体の形状としては限定されず、例えば、ロール形状、すなわち、円柱形状であってもよく、枚葉形状のモールド成形用離型フィルム10を積層した矩形形状であってもよい。
次に、本実施形態に係るモールド成形用離型フィルム10について説明する。
モールド成形用離型フィルム10は、離型層2が、基材層1の上に積層された積層構造を有している。そして、モールド成形用離型フィルム10は、最外層に離型層2を有している。
モールド成形用離型フィルム10は、第1の樹脂組成物のモールド成形に用いられる際、最外層に配された離型層2が、第1の樹脂組成物と接するように使用される。
モールド成形用離型フィルム10は、2層以上の基材層1を含んでもよいし、2層以上の離型層2を含んでもよい。
本実施形態に係るモールド成形用離型フィルム10の積層構造として、具体的には、離型層、基材層がこの順で積層された積層構造でもよく、離型層、第1の基材層、第2の基材層がこの順で積層された積層構造でもよく、離型層、第1の基材層、第2の基材層、第3の基材層がこの順で積層された積層構造でもよく、第1の離型層、基材層、第2の離型層がこの順で積層された積層構造でもよく、第1の離型層、第1の基材層、第2の基材層、第2の離型層がこの順で積層された積層構造などが挙げられる。
また、モールド成形用離型フィルム10の厚みの下限値は、例えば、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましく、35μm以上であることが殊更好ましい。これにより、モールド成形用離型フィルム10が不必要に変形し、シワなどが生じることを抑制できる。したがって、追従性を向上できる。
なお、本実施形態において、モールド成形用離型フィルム10の長手方向とは、モールド成形用離型フィルム10の基材層1が作成されるときに押出される方向である。また、短手方向とは、モールド成形用離型フィルム10の面内方向のうち、長手方向と垂直な方向を示す。
本実施形態に係るモールド成形用離型フィルムは、第1の樹脂組成物のモールド成形に用いられる。
モールド成形の方法としては、例えば、モールド成形用離型フィルムを金型に配置する配置工程と、次いで、モールド成形用離型フィルムが形成する成形空間に第1の樹脂組成物を導入する導入工程とを含む。
配置工程では、モールド成形用離型フィルムを金型に配置する。
モールド成形用離型フィルムを配置する位置については限定されないが、例えば、後述の導入工程において、第1の樹脂組成物と金型とが接しないように、モールド成形用離型フィルムを、金型が形成する成形空間に配置する。これにより、モールド成形用離型フィルムは、金型が形成する成形空間内部に、モールド成形用離型フィルムの成形空間を形成する。なお、金型全面をモールド成形用離型フィルムで覆ってもよいが、金型の押出ピンなどが存在する場合など、成形方法に応じて、適宜金型が露出していてもよい。したがって、モールド成形用離型フィルムの成形空間は、モールド成形用離型フィルムのみではなく、金型及びモールド成形用離型フィルムによって形成されてもよい。
モールド成形用離型フィルムの基材層及び離型層が配置される位置については限定されないが、後述の導入工程において、モールド成形用離型フィルムの成形空間に第1の樹脂組成物を導入することから、離型層がモールド成形用離型フィルムの成形空間を形成するように配置されることが好ましい。すなわち、モールド成形用離型フィルムが最外層に備える離型層側に第1の樹脂組成物導入され、モールド成形用離型フィルムの成形空間を形成することが好ましい。例えば、モールド成形用離型フィルムが、離型層、基材層をこの順で積層した積層構造からなる場合、離型層成形空間を形成し、基材層が金型と接するよう配置することが好ましい。
モールド成形用離型フィルムを金型内に追従させる方法として、例えば、金型のキャビティに気体を吸引する孔部を設け、孔部から大気を吸引する方法が挙げられる。
電子素子としては、限定されるものではないが、例えば、半導体素子が好ましい。半導体素子としては、限定されるものではないが、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子が挙げられる。
導入工程では、モールド成形用離型フィルムが形成する成形空間に第1の樹脂組成物を導入する。
第1の樹脂組成物を導入する方法としては限定されるものではないが、例えば、液体状の第1の樹脂組成物を導入する方法、顆粒状の第1の樹脂組成物を導入する方法、シート状の第1の樹脂組成物を導入する方法などが挙げられる。具体的には、射出成形による液体状の第1の樹脂組成物の導入、圧縮成形による顆粒状の第1の樹脂組成物の導入などを従来公知の方法で行うことができる。
次いで、第1の樹脂組成物を硬化させることで、電子素子を第1の樹脂組成物でモールド成形し、電子装置を作製することができる。すなわち、モールド成形用離型フィルムが形成する成形空間と略同一の形状に、電子素子を含む第1の樹脂組成物を成形することができる。
半導体装置の種類としては、限定されるものではないが、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FCBGA(Flip Chip BGA)、MAPBGA(Molded Array Process BGA)、EWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、FOWLP (Fan Out Wafer Level Package)などのタイプが挙げられる。
モールド成形の方法としては、具体的には、トランスファーモールド成形法、コンプレッションモールド成形法(圧縮成形法)、トランスファーモールド成形法及びコンプレッションモールド成形法のハイブリッド成形法などが挙げられる。
本実施形態に係るモールド成形用離型フィルムは、ハイブリッド成形法によるモールド成形においても好適な追従性を発現でき、金型汚染を抑制できるという観点で好ましい。なお、本実施形態に係るモールド成形用離型フィルムは、トランスファーモールド成形法、コンプレッションモールド成形法を用いた場合でも、好適な追従性を発現し、金型汚染を抑制できるものである。
まず、金型内を真空引きしながら、モールド成形用離型フィルムを該金型の上型に追従させる。次に、下型に電子素子または電子素子を搭載した基板を配置して固定する。次いで、上型と下型とを締めてから金型内部に流動状態にある第1の樹脂組成物を注入した後、該第1の樹脂組成物を硬化させる。その後、上型と下型とを開くことにより、成形品とモールド成形用離型フィルムとを離型する。
なお、本実施形態に係るモールド成形用離型フィルムを上述したトランスファーモールド成形法に適用する場合、使用する第1の樹脂組成物の形状は、タブレット状であることが好ましい。
まず、金型内を真空引きしながら、モールド成形用離型フィルムを該金型内の上型に追従させる。次に、下型に電子素子または電子素子を搭載した基板を配置して固定する。次いで、減圧下、金型の上型と下型の間隔を狭めながら、樹脂材料供給容器の底面を構成するシャッター等の樹脂材料供給機構により、秤量された第1の樹脂組成物を下型が備える下型キャビティ内へ供給する。そして、第1の樹脂組成物は、下型キャビティ内で所定温度に加熱され、流動状態となる。次いで、金型の上型と下型を結合させることにより、流動状態にある第1の樹脂組成物を下型に固定された成形対象物に対して押し当てた後、金型の上型と下型を結合させた状態を保持しながら、第1の樹脂組成物を硬化させる。その後、上型と下型とを開くことにより、成形品とモールド成形用離型フィルムとを離型する。
なお、本実施形態に係るモールド成形用離型フィルムを上述したコンプレッションモールド成形法(圧縮成形法)に適用する場合、使用する第1の樹脂組成物の形状は、タブレット状、顆粒状、封粒状またはシート状に加工されたものであることが好ましい。
まず、金型内を真空引きしながら、モールド成形用離型フィルムを該金型内における上型に追従させる。次に、下型に電子素子または電子素子を搭載した基板を配置して固定する。次いで、上型と下型とを締めてから金型内部に流動状態にある第1の樹脂組成物を注入する。次いで、金型のキャビティを移動させ、注入された第1の樹脂組成物を加圧し、次いで、第1の樹脂組成物を硬化させる。その後、上型と下型とを開くことにより、成形品とモールド成形用離型フィルムとを離型する。
ハイブリッド成形法を用いる場合、第1の樹脂組成物の形状としては、限定されず、あらゆる形状の樹脂を流動状態とすることで用いることができる。
また、モールド成形温度の上限値は、例えば、240℃以下としてもよく、200℃以下としてもよく、185℃以下としてもよい。
本実施形態に係る第1の樹脂組成物は限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂組成物または熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。本実施形態に係るモールド成形用離型フィルムはエポキシ樹脂を含む第1の樹脂組成物のモールド成形に好適に用いられる。
エポキシ樹脂としては、その分子量、分子構造に関係なく、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を使用することが可能である。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂;N,N,N',N'-テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類や、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物から選択される一種または二種以上を含むことができる。
硬化剤としては、具体的には、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤の3タイプが挙げられる。
フェノール樹脂系硬化剤としては、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量、分子構造は限定されない。
硬化剤として用いられるフェノール樹脂系硬化剤は、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;トリフェニルメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、等のビスフェノール化合物などが挙げられる。フェノール樹脂系硬化剤としては、上記具体例の中から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
無機充填材としては、例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;アルミナ;チタンホワイト;水酸化アルミニウム;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維等が挙げられる。
以下に代表成分について説明する。
熱硬化性樹脂組成物には、硬化促進剤をさらに含有させてもよい。この硬化促進剤は、エポキシ基と硬化剤との硬化反応を促進させるものであればよい。
上記硬化促進剤としては、具体的には、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物;2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ベンゾキノンをアダクトしたトリフェニルホスフィン等が挙げられる。硬化促進剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱硬化性樹脂組成物には、カップリング剤をさらに含有させてもよい。
カップリング剤としては、具体的には、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤、γ-アミノプロピルトリエトキシシランカップリング剤、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランカップリング剤、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤などのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤などが挙げられる。カップリング剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱硬化性樹脂組成物には、離型剤をさらに含有させてもよい。
離型剤としては、具体的には、カルナバワックスなどの天然ワックス;モンタン酸エステル等の合成ワックス;高級脂肪酸もしくはその金属塩類;パラフィン;酸化ポリエチレン等が挙げられる。離型剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱硬化性樹脂組成物には、難燃剤をさらに含有させてもよい。
難燃剤としては、具体的には、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼンなどが挙げられる。難燃剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱硬化性樹脂組成物には、着色剤をさらに含有させてもよい。
着色剤としては、具体的には、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンなどを挙げることができる。着色剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
熱硬化性樹脂組成物には、イオン捕捉剤をさらに含有させてもよい。
イオン捕捉剤としては、具体的には、ハイドロタルサイト;ゼオライト;マグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物などを挙げることができる。イオン捕捉剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱硬化性樹脂組成物には、低応力剤をさらに含有させてもよい。
低応力剤としては、具体的には、ポリブタジエン化合物、アクリロニトリルブタジエン共重合化合物、シリコーンオイル、シリコーンゴム等のシリコーン化合物などが挙げられる。低応力剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
まず、基材層を構成する第3の樹脂組成物として、ポリブチレンテレフタレート(三菱エンプラ社製、ノバデュラン5020)を準備した。次いで、Tダイ押出機(スクリュー径:φ40mm、L/D:28)を用いて、基材層を押出成形した。ここで、Tダイ押出機のスクリューのホッパー側の温度を200℃とし、計量側の温度を250℃と設定した。すなわち、Tダイ押出機のスクリューのホッパー側と、計量側との温度差は50℃であった。これにより、第3の樹脂組成物を押出成形することで、厚み50μmの基材層を作製した。基材層は、両面が平滑なフィルムであった。
次いで、基材層の表面に、ワニスに調製した第2の樹脂組成物を塗工することで、離型層2を形成した。第2の樹脂組成物としては、AGCコーテック社製のオブリガートPS306Rの主剤13重量部及び硬化剤1重量部を、メチルエチルケトン28重量部に溶解させて用いた。ここで、AGCコーテック社製のオブリガートPS306Rの主剤は、本実施形態の項で述べた、一般式(1)で表され、Aとして上記式(A2)の構造単位を含み、Bとして上記一般式(B1)の構造単位を含む共重合体を含む。また、AGCコーテック社製のオブリガートPS306Rの硬化剤は、2官能のイソシアネート化合物を含む。なお、第2の樹脂組成物の塗工は、グラビアロール塗工法を用いて行った。塗工後、温度120℃、20分間の条件で第2の樹脂組成物を十分に架橋反応させ、基材層の上に離型層2を形成することで、実施例1のモールド成形用離型フィルム10を得た。なお、離型層2のドライ厚みは1.0μmであった。
実施例2のモールド成形用離型フィルムとして、基材層を変更した以外は実施例1のモールド成形用離型フィルムと同様の方法で作製した。以下、変更した部分について詳細を説明する。
基材層を押出成形する際のTダイ押出機のスクリューのホッパー側の温度を200℃とし、計量側の温度を255℃と設定し、Tダイ押出機のスクリューのホッパー側と、計量側との温度差が55℃となるようにした以外は、実施例1のモールド成形用離型フィルムと同様の方法で実施例2のモールド成形用離型フィルムを作製した。
実施例3のモールド成形用離型フィルムとして、基材層を変更した以外は実施例1のモールド成形用離型フィルムと同様の方法で作製した。以下、変更した部分について詳細を説明する。
基材層を押出成形する際のTダイ押出機のスクリューのホッパー側の温度を200℃とし、計量側の温度を260℃と設定し、Tダイ押出機のスクリューのホッパー側と、計量側との温度差が60℃となるようにした以外は、実施例1のモールド成形用離型フィルムと同様の方法で実施例3のモールド成形用離型フィルムを作製した。
実施例4のモールド成形用離型フィルムとして、離型層を変更した以外は実施例1のモールド成形用離型フィルムと同様の方法で作製した。以下、変更した部分について詳細を説明する。
アクリル系樹脂(帝国化学産業社製、WS-023)100重量部と、アクリル用硬化剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)10重量部と、充填材としてシリカ(球形状、最大粒径20μm、最小粒径3μm)10重量部とをトルエン中に分散させ、離型層を形成する第2の樹脂組成物を作製した。次いで、基材層の表面に、ワニスに調製した第2の樹脂組成物を塗工することで、離型層を形成した。なお、第2の樹脂組成物の塗工は、ロールコーター塗工法を用いて行った。塗工後、アクリル系樹脂を乾燥しながら十分に硬化反応させた。これにより、実施例1のモールド成形用離型フィルムを得た。なお、離型層のドライ厚みは9μmであり、表面はマット調であった。
実施例5のモールド成形用離型フィルムとして、離型層を変更した以外は実施例1のモールド成形用離型フィルムと同様の方法で作製した。以下、変更した部分について詳細を説明する。
まず、離型層に用いるポリオレフィン系樹脂として共重合体1を合成した。はじめに、反応容器をグローブボックス内に移し、酢酸エチル917g、シクロヘキサン917g、デシルノルボルネン192g(0.82モル)およびメチルグリシジルエーテルノルボルネン62g(0.34モル)をこの反応容器に加えた。この反応容器をグローブボックスから取り外して、窒素バブリングを実施することにより、系内の溶存酸素を除去した。一方、グローブボックスの内部で、9.36g(19.5ミリモル)のビス(トルエン)ビス(ペルフルオロフェニル)ニッケルを15mLのトルエンに溶解し、25mLの注射器に取り込んで、このグローブボックスから取り出して、反応器中に注入した。この反応物を20℃で5時間撹拌した。その後、過酢酸(ニッケル触媒‐975ミリモルに基づく50モル当量)の溶液(約750mLの脱イオン水で希釈された氷酢酸および約250mLの脱イオン水で希釈された30重量%の過酸化水素の33g)を添加し、さらに18時間撹拌した。撹拌後、水層と溶媒層とを分離させ、水層を除去した後、1リットルの蒸留水を加えた。20分間撹拌の後、水層を分離除去した。更にこの操作を3回実施した。次いで大過剰のメタノールに再沈殿し、さらに乾燥させることで、下記式(A)で示した構造を有する共重合体1を得た。なお得られた共重合体1の重量平均分子量(Mw)は115370であり、分散度(Mw/Mn)は2.43であった。
次いで、2-ヘプタノンン100重量部に対して、上記共重合体1の100重量部を溶解させ、さらに、酸発生剤2重量部、2-ヘプタノン78重量部、PGMEA20重量部を加えて拡販することでワニスである第2の樹脂組成物を調整した。
次いで、基材層の表面に、第2の樹脂組成物を塗工した。なお、第2の樹脂組成物の塗工は、バーコーターを用いて行った。塗工後、乾燥した第2の樹脂組成物の表面にUV照射をし、酸発生剤を反応させた。次いで、温度160℃で熱処理することで、離型層から溶媒を完全に除去した。なお、離型層のドライ厚みは1.0μmであった。これにより、実施例5に係るモールド成形用離型フィルムを得た。
比較例1のモールド成形用離型フィルムとして、基材層を変更した以外は実施例1のモールド成形用離型フィルムと同様の方法で作製した。以下、変更した部分について詳細を説明する。
基材層を押出成形する際のTダイ押出機のスクリューのホッパー側の温度を200℃とし、計量側の温度を280℃と設定し、Tダイ押出機のスクリューのホッパー側と、計量側との温度差が80℃となるようにした以外は、実施例1のモールド成形用離型フィルムと同様の方法で比較例1のモールド成形用離型フィルムを作製した。
比較例2のモールド成形用離型フィルムとして、基材層を変更した以外は実施例1のモールド成形用離型フィルムと同様の方法で作製した。以下、変更した部分について詳細を説明する。
比較例2に係る基材層を押出成形する際のTダイ押出機のスクリューのホッパー側の温度を200℃とし、計量側の温度を230℃と設定した。すなわち、Tダイ押出機のスクリューのホッパー側と、計量側との温度差が30℃になるようにして基材層の押出成形を試みた。しかしながら、スクリューで第3の樹脂組成物を混練することができず、押出成形するとTダイ押出機が損傷する恐れがあったため、基材層を成形できなかった。
得られた離型フィルムから基材層を剥離し、剥離した基材層を粉砕機で粉砕することで粉末を得た。得られた粉末を酸雰囲気下で加熱加圧分解した後、分解液をICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置、メーカー:Agilent Technology、グレード:7500型)に導入して、元素(カリウム)の定量分析を行った。
追従性、金型汚れの評価に用いる第1の樹脂組成物として、熱硬化性樹脂組成物のタブレットを作製した。その作製方法について詳細を説明する。
熱硬化性樹脂組成物の原料として、以下のものを用いた。
・エポキシ樹脂1:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC-3000)
・エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YL6677)
・硬化剤1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(日本化薬社製、GPH-65)
・硬化剤2:ホルムアルデヒドで変性したトリフェニルメタン型フェノール樹脂(エア・ウォーター社製、HE910-20)
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィン(北興化学工業社製、TPP)
・無機充填材:溶融球状シリカ(電気化学工業社製、FB-950FC)
・着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製、MA-600)
・カップリング剤:N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM-573)
・離型剤:カルナバワックス(日興ファイン社製、ニッコウカルナバ)
トランスファーモールド成形及びコンプレッションモールド成形のハイブリッド成形用成形機として、アサヒエンジニアリング社製のCOSMO-TFlex Seriesを用いて、各実施例、比較例1のモールド成形用離型フィルムの追従性を評価した。
まず、各実施例、比較例1のモールド成形用離型フィルムをセットした後、成型機が備える金型の内部空間を真空引きすることにより、該離型フィルムを金型に追従させた。次に、熱硬化性樹脂組成物のタブレットを所定の位置に配置した。その後、成型機が備える金型をクランプ圧力300kg/cm2の条件で締めてから、溶融させた状態にある上記熱硬化性樹脂組成物を射出圧力80kg/cm2の条件で成型機が備える金型の内部空間に流し込んだ。次いで、金型のキャビティを移動させることで、熱硬化性樹脂組成物を6kg/cm2の圧力で加圧しながら175℃で2分間成形した。その後、上型と下型とを開くことにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物とモールド成形用離型フィルムとを離型した。次いで、硬化物を観察し、以下の評価基準でモールド成形用離型フィルムの追従性を評価した。
◎:熱硬化性樹脂組成物の硬化物には、モールド成形用離型フィルムのシワが転写されることなく、優れた平滑性を有していた。
○:熱硬化性樹脂組成物の硬化物には、モールド成形用離型フィルムのシワが転写されていたが、実用上問題のない範囲であった。
×:熱硬化性樹脂組成物の硬化物には、モールド成形用離型フィルムのシワが転写されており、実用上問題があった。
また、上記追従性の評価と同じ方法で、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を連続して50回成形した。50回の成形後、金型を目視で観察し、以下の評価基準で金型汚れが発生するかを評価した。
○:金型に熱硬化性樹脂組成物が付着していなかった。
×:金型に熱硬化性樹脂組成物が付着していた。
各実施例、比較例1のモールド成形用離型フィルムをモールド成形した時の熱収縮率の異方性を確認した。以下に詳細を説明する。
ヒーターを用いて、温度180℃で2分間熱処理した際のモールド成形用離型フィルムの長手方向の熱収縮率をX[%]とし、当該モールド成形用離型フィルムの短手方向の熱収縮率をY[%]とし、X/Yを算出した。なお、モールド成形用離型フィルムの長手方向とは、モールド成形用離型フィルムの基材層が作成したときに押出された方向である。また、短手方向とは、モールド成形用離型フィルムの面内方向のうち、長手方向と垂直な方向である。算出したX/Yを下記表1に示す。
2 離型層
10 モールド成形用離型フィルム
Claims (8)
- 第1の樹脂組成物のモールド成形に用いられ、
第2の樹脂組成物によって構成される離型層が、第3の樹脂組成物によって構成される基材層の上に積層された積層構造を有するモールド成形用離型フィルムであって、
前記離型層は前記モールド成形用離型フィルムの少なくとも一方の面に配置され、
前記第3の樹脂組成物はポリブチレンテレフタレートを含み、
前記基材層中のカリウムの含有量は、前記基材層全体に対して、0.01ppm以上30ppm以下である、モールド成形用離型フィルム。 - 請求項1に記載のモールド成形用離型フィルムであって、
当該モールド成形用離型フィルムについて、温度180℃で2分間熱処理した際の当該モールド成形用離型フィルムの長手方向の熱収縮率をX[%]とし、当該モールド成形用離型フィルムの短手方向の熱収縮率をY[%]としたときのX/Yが、95以上115以下である、モールド成形用離型フィルム。 - 請求項1または2に記載のモールド成形用離型フィルムであって、
前記第2の樹脂組成物は、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、及び、オレフィン系樹脂からなる群より選択される1種以上を含む、モールド成形用離型フィルム。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載のモールド成形用離型フィルムであって、
前記モールド成形の方法は、トランスファーモールド成形法またはコンプレッションモールド成形法である、モールド成形用離型フィルム。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載のモールド成形用離型フィルムであって、
前記モールド成形の方法は、トランスファーモールド成形法及びコンプレッションモールド成形法のハイブリッド成形法である、モールド成形用離型フィルム。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載のモールド成形用離型フィルムであって、
前記第1の樹脂組成物は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物である、モールド成形用離型フィルム。 - 請求項1から6のいずれか1項に記載のモールド成形用離型フィルムであって、
前記モールド成形の温度は、120℃以上240℃以下である、モールド成形用離型フィルム。 - 請求項1から7のいずれか1項に記載のモールド成形用離型フィルムを用いたモールド成形方法であって、
該モールド成形用離型フィルムを金型に配置する配置工程と、
該モールド成形用離型フィルムが形成する成形空間に前記第1の樹脂組成物を導入する導入工程と、を含む、モールド成形方法。
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