JP7249743B2 - スラストすべり軸受 - Google Patents

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Description

本発明は、スラストすべり軸受に関する。
軸と軸受とが潤滑油などの薄い膜を介して相対的にすべる軸受は、軸に直角にかかる荷重を支えるラジアルすべり軸受(ジャーナル軸受と呼ぶ場合がある。)と、軸に平行で軸受面に直角の力を受けるスラストすべり軸受とに分けられる。
スラストすべり軸受として、従来には図15に示す構成のものがある(特許文献1)。このスラストすべり軸受は、合成樹脂製の上部ケース51と、合成樹脂製の下部ケース52と、上下ケース51、52間に介在される合成樹脂製のスラスト軸受片53とを具備している。
上下ケース51、52及びスラスト軸受片53はそれぞれ扁平のリング形状体からなり、スラスト軸受片53の上下面には、それぞれ、図16に示すように、中心孔に沿って配設される環状溝55と、周方向に沿って所定ピッチで配設される複数本の径方向溝56とが形成されている。径方向溝56が、その内径端が環状溝55に連通され、その外径端がスラスト軸受片53の外周面に開口している。そして、環状溝55および径方向溝56にグリースG等が充填保持される。
特開2010-53908号公報
グリースGの基本成分は潤滑油(基油)、増ちょう剤及び添加剤である。このため、前記従来のものは、溝55,56にグリースGを溜めるだけのものであるので、基油分離、油分移動の促進作用がない。このように、基油分離、油分移動の促進作用がなければ、潤滑不足による摩擦増加や焼付きを生じることがある。
また、溝寸法と増ちょう剤の寸法との関係についての限定はなく、増ちょう剤の寸法に対して溝寸法が非常に大きくなっている。このように、溝寸法が非常に大きければ、溝は増ちょう剤に対する保持作用がない。
本発明は、上記課題に鑑みて、増ちょう剤由来の付着膜形成促進と基油の摺動部位への再流入性を向上させることで、潤滑不足による摩擦増加や焼き付きを防止できるスラストすべり軸受を提供する。
本発明のスラストすべり軸受は、ウレアグリース介在下で相対的に摺動する第1部材と第2部材とを備えたスラストすべり軸受であって、第1部材側に、凹溝を形成するとともに、この凹溝内にグレーティング状凹凸の周期構造を設け、前記グレーティング状凹凸の周期構造の形成領域が円周方向に間欠に配置された複数の放射状領域であり、前記放射状領域は、その内径端が、周期構造を有さない第2部材の摺動面の内径端よりも内径側に位置し、かつ、その外径端が、周期構造を有さない第2部材の摺動面の外径端よりも外径側に位置し、さらに、グレーティング状凹凸の周期構造の凸部高さを周期構造未加工部の高さよりも低くし、前記凹溝は、少なくとも摺動方向下流側の立上り側面が溝底から凹溝開口端に向かって浅くなるテーパ面であって、断面扁平台形形状とされているものである。
本発明のスラストすべり軸受によれば、ウレアグリース介在下で摺動する第1部材側と第2部材側との少なくともいずれかの間欠領域にグレーティング状凹凸の周期構造が設けられているので、周期構造のグリース保持と基油分離作用により、増ちょう剤であるウレア化合物由来の付着膜形成が促進され、境界潤滑膜として作用するとともに基油の再流入性が向上し、グリース潤滑特性を向上することができる。また、グレーティング状凹凸の周期構造の凸部高さ位置を未加工部の高さ位置よりも低く設定することで、基油分離作用を維持したままグリースの保持量を増加することができる。
また、前記凹溝は、少なくとも摺動方向下流側の立上り側面が溝底から凹溝開口端に向かって浅くなるテーパ面であるように設定できる。このように設定することによって、テーパ面(斜面)を介することで基油と増ちょう剤の未加工部への供給が促進され、付着膜形成作用と基油の再流入性を向上することができる。
前記グレーティング状凹凸の周期構造の形成領域が円周方向に間欠に配置された複数の放射状領域であるものであってもよい。このように構成することによって、周期構造に保持されたグリースが断続的に摺動面内に供給されるために、境界潤滑膜として作用する増ちょう剤由来の付着膜形成が促進されるとともに基油の再流入性を向上することができる。
前記グレーティング状凹凸の周期構造は、凸部頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化するものであるのが好ましい。このように設定することによって、周期構造の開口面積が大きくなり、グリースや基油を効率的に取り込むことができる。
前記グレーティング状凹凸の周期構造の凹凸が50nm以上10μm以下かつ周期ピッチが10μm以下であるように設定できる。このように設定することによって、基油の保持性、移動性を向上することができる。周期構造の凹凸が50nm未満では十分な量の増ちょう剤を担持できず、凹凸および周期ピッチが10μmを超えると増ちょう剤や基油がほとんど流出するおそれがある。
周期構造により油分離、油分移動が促進され、摩耗が低減される。周期構造に保持された増ちょう剤がさらに油分の保持性、移動性を向上する。また、増ちょう剤が境界膜を形成し、摩擦・摩耗が低減する。
本発明のスラストすべり軸受の簡略構成図である。 スラストすべり軸受の第1部材の要部簡略平面図である。 第1部材に設けられた周期構造を示し、(a)は拡大図であり、(b)は断面プロファイルである。 第1部材に設けられた凹溝の拡大断面図である。 スラストすべり軸受の他の第1部材を示し、(a)は要部簡略平面図であり、(b)は(a)のH部拡大図である。 周期構造を形成するためのレーザ表面加工装置の簡略図である。 親水性表面での接触角を示し、(a)が平坦面の場合の説明図であり、(b)が粗い面の場合の説明図である。 ディスク試験片を示し、(a)は周期構造が同心円に形成されている試験片の簡略平面図であり、(b)は周期構造が周方向に間欠に形成されている試験片の簡略平面図であり、(c)は周期構造が渦巻き状に形成されている試験片の簡略平面図である。 摩擦摩耗試験機(リング・オン・ディスク型)の簡略図である。 一定速摺動時の摩擦係数を示し、(a)は連続したグラフ図であり、(b)は所定時間毎のグラフ図である。 ディスク摺動面のレーザ顕微鏡画像である。 ディスク摺動面のSEM画像である。 ディスク摺動面の要部のSEM画像である。 ディスク摺動面のXPS分析図である。 従来のスラスト軸受の断面図である。 図15のスラスト軸受のスラスト軸受片の平面図である。
以下本発明の実施の形態を図1~図14に基づいて説明する。図1は本発明に係るスラストすべり軸受の構成図である。すなわち、スラストすべり軸受は、第1部材1の摺動面1aと第2部材2の摺動面2aとが潤滑剤で相対的に摺動するものである。この場合、第1部材1及び第2部材2は、炭素鋼、銅、アルミニウム、白金、超硬合金等であっても、炭化ケイ素や窒化ケイ素等のシリコン系セラミックスであっても、エンジニアプラスチック等であってもよい。第1部材1としては、図2に示すような円盤形状体(この場合、相対向する一対の切欠面3、3が形成されている)である。また、第2部材2はリング体としている。このため、第1部材1の上面が摺動面1aとなり、第2部材2の下面が摺動面2aとなる。
また、潤滑剤としては、ウレアグリースを用いる。ここで、ウレアグリースとは、ウレア基(-NH-CO-NH-)を2個以上有する有機化合物を増ちょう剤としたグリースである。また、ウレアグリースには、脂肪族ウレアと、脂環族ウレアと、芳香族ウレアとがある。
脂肪族ウレアは、長鎖アルキル基を両末端に用いると耐熱性がリチウム石けんグリース並となる点、短鎖アルキル基を用いると耐熱性が向上する点、脂環族および芳香族ウレアに比べ寿命が短い点の特徴を有する。脂環族ウレアは、増ちょう効果が優れている点、比較的耐熱性に優れている点、せん断安定性に優れている点、寿命が長い点の特徴を有する。芳香族ウレアは、増ちょう効果が脂肪族ウレアや脂環族ウレアよりも劣る点、耐熱性に優れている点、寿命が長い点の特徴を有する。
このため、本発明においては、脂肪族ウレアグリースと、脂環族ウレアグリースと、芳香族ウレアグリースとのいずれを用いてもよいが、この実施形態では、脂肪族ウレアグリースを用いた。
この場合、第1部材1の摺動面(上面)1aに、径方向の凹溝5が周方向に沿って所定ピッチで複数個が形成されている。この場合、各凹溝5の内径端にて形成される内径円6と、各凹溝5の外径端にて形成される外径円7とは、第1部材1の軸心を中心とする同心円であり、内径円6の径寸法D1aは、第2部材2の内径寸法D2aよりも小さく、外径円7の径寸法D1bは、第2部材2の外径寸法D2bよりも大きく設定される。
また、各凹溝5は、図4に示すように、断面扁平台形形状とされ、摺動方向(図2に示すように、時計回り方向)の上流側及び下流側の立ち上がり側面5a、5がテーパ面T、Tに形成されている。この場合、テーパ面T、Tは、溝底から凹溝開口端に向かって浅くなるテーパ面である。また、各凹溝5の一対の溝開口端(テーパ面上端)は、第1部材1の軸心を中心として径方向に延びる径方向線上にある。このため、各凹溝5は扇状に広がっている。この場合、凹溝5の中心角θ1が1°とし、周方向に隣合う凹溝間の未加工部位の中心角θ2を3°としている。なお、図例では、図示の簡略化のために、周方向に沿って、15°ピッチで24個の径方向の凹溝5を記載している。
凹溝5には、図3に示すように、グレーティング状凹凸の周期構造10が設けられている。この場合、周期構造10は、摺動領域から摺動領域周縁に延び、かつ円周方向に間欠となる領域に設けられている。周期構造10の方向が周方向であり、図3に示すように、微小の凹部8と微小の凸部9とが交互に所定ピッチで配設されてなるものである。周期構造10の凹凸の高低差(凹部8の底部から凸部9の頂点までの高さ)が50nm以上10μm以下とするのが好ましい。また、周期構造10の周期ピッチを10μm以下とするのが好ましい。図3(a)は周期構造10の拡大図を示し、図3(b)は断面プロファイルを示している。このように、周期構造10は、凸部頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化するグレーティング状凹凸の周期構造10である。溝掘り下げ深さを1μm程度としている。
周期構造10は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成している。具体的には、図6に示すフェムト秒レーザ表面加工装置を使用する。レーザ発生器11(チタンサファイアフェムト秒レーザ発生器)で発生したレーザ(例えば、パルス幅:120fs、中心波長800nm、繰り返し周波数:1kHz、パルスエネルギー:0.25~400μJ/pulse)は、ミラー12により加工材料Wに向けて折り返され、メカニカルシャッタ13に導かれる。レーザ照射時はメカニカルシャッタ13を開放し、レーザ照射強度は1/2波長板14と偏光ビームスプリッタ16によって調整可能とし、1/2波長板15によって偏光方向を調整し、集光レンズ(焦点距離:150mm)17によって、XYθステージ19上の加工材料W表面に集光照射する。なお、フェムト秒レーザはフェムト秒(1000兆分の1秒)オーダーという極端に短い時間単位の中にエネルギーを圧縮した光源である。
この場合、グレーティング状凹凸の周期構造10の凸部高さ位置を未加工部の高さ位置よりも低く設定している。また、グレーティング状凹凸の周期構造10は、凸部頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化する。
ところで、固体表面に液滴が接触すると、接触角が形成される。そして、液体Sの濡れ性は、以下のWenzelの式(数1)で表される。ここで、θwは粗い面での接触角を示し、θeは同じ材質で平坦面(平滑面)での接触角を示す。rは表面積倍率(平面に対する粗面の面積比を示す。
Figure 0007249743000001
平坦面(平滑面)において、θe<90°であれば、粗い面ではθw<θeとなる。すなわち、表面積倍率rが大きいほど油の接触角が低減する。このため、表面粗さの導入により潤滑油の濡れ性向上が可能となる。
本発明のスラストすべり軸受によれば、ウレアグリース介在下で摺動する第1部材1側と第2部材2側との少なくともいずれかの間欠領域にグレーティング状凹凸の周期構造10が設けられていることで、周期構造10のグリース保持と基油分離作用により、増ちょう剤であるウレア化合物由来の付着膜形成が促進され、境界潤滑膜として作用するとともに基油の再流入性が向上し、グリース潤滑特性を向上することができる。また、グレーティング状凹凸の周期構造10の凸部高さ位置を未加工部の高さ位置よりも低く設定することで、基油分離作用を維持したままグリースの保持量を増加することができる。
このため、スラストすべり軸受では、周期構造10により油分離、油分移動が促進され、摩耗が低減される。周期構造10に保持された増ちょう剤がさらに油分の保持性、移動性を向上する。また、増ちょう剤が境界膜を形成し、摩擦・摩耗が低減する。
また、前記凹溝5は、少なくとも摺動方向下流側の立上り側面5bが溝底から凹溝開口端に向かって浅くなるテーパ面Tであるように設定できる。このように設定することによって、テーパ面(斜面)Tを介することで基油と増ちょう剤の未加工部への供給が促進され、付着膜形成作用と基油の再流入性を向上することができる。
前記実施形態では、前記グレーティング状凹凸の周期構造10の形成領域が円周方向に間欠に配置された複数の放射状領域であるので、周期構造10に保持されたグリースが断続的に摺動面内に供給されるために、境界潤滑膜として作用する増ちょう剤由来の付着膜形成が促進されるとともに基油の再流入性を向上することができる。
前記グレーティング状凹凸の周期構造10は、凸部頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化するものであるので、周期構造の開口面積が大きくなり、グリースや基油を効率的に取り込むことができる。
前記グレーティング状凹凸の周期構造10の凹凸が50nm以上10μm以下かつ周期ピッチが10μm以下であるように設定できる。このように設定することによって、基油の保持性、移動性を向上することができる。周期構造の凹凸が50nm未満では十分な量の増ちょう剤を担持できず、凹凸および周期ピッチが10μmを超えると増ちょう剤や基油がほとんど流出するおそれがある。
ところで、図5(a)(b)は、第1部材1の他の実施形態を示し、この場合円盤体からなり、その摺動面1aに渦巻き形状の凹溝5が形成されている。この場合の凹溝5は、平面視において、中心から外周側へ向かって時計廻りにまわっている。そして、凹溝5には、グレーティング状凹凸の周期構造10が形成されている。
このため、図5(a)(b)では、摺動領域から摺動領域周縁に延び、かつ半径方向に間欠となる領域にグレーティング状凹凸の周期構造10を設けている。この場合の周期構造10は、幅寸法Δtを100μm程度とし、螺旋ピッチlを400μmとし、周期構造角度θを45°程度としている。
この場合も、少なくとも摺動方向下流側の立上り側面5bが溝底から凹溝開口端に向かって浅くなるテーパ面Tである。また、周期構造10は、凸部頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化するものであり、グレーティング状凹凸の周期構造10の凹凸が50nm以上10μm以下かつ周期ピッチが10μm以下である。また、溝掘り下げ深さを1μm程度としている。
図5(a)(b)に示すような周期構造を備えたものであっても、図2に示すような周期構造10を備えたものと同様の作用効果を奏する。しかも、グレーティング状凹凸の周期構造10の形成領域が渦巻状領域であるので、回転にともなう基油の再流入性を向上することができる。また、グレーティング状凹凸の周期構造10の配向方向が周期構造の形成領域を横切る方向であるのが好ましい。このように構成することによって、回転にともない周期構造10に保持されたグリースや基油の未加工部への供給が促進され、付着膜形成作用と基油の再流入性を向上することができる。
前記渦巻状領域が多渦巻状領域であってもよい。多渦巻とは、図5(a)に示す渦巻きに他の1乃至2以上の渦巻形状の凹溝5が形成され、各凹溝5にグレーティング状凹凸の周期構造が形成されている。このように構成することによって、回転にともなう基油の再流入性を一層向上することができる。
また、図5(a)に示すようなグレーティング状凹凸の周期構造10では、図5(b)に示すように、その配向方向が周期構造10の形成領域を横切る方向となっている。このように構成することによって、回転にともない周期構造に保持されたグリースや基油の未加工部への供給が促進され、付着膜形成作用と基油の再流入性を向上することができる。
本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では、周期構造10を第1部材1側に設けていたが、周期構造10を第2部材2側に形成してもよく、第1部材1及び第2部材2の両側に設けてもよい。また、第1部材1と第2部材2の形状としても、図例のものに限らず、他の種々の形状のものにて構成できる。また、凹溝5として、実施形態では、摺動方向の上流側及び下流側にテーパ面Tを形成していたが、少なくとも、下流側のみテーパ面Tを有すればよい。テーパ面Tの傾斜角度としては、摺動速度や使用するグリース等に応じて種々設定でき、例えば、0.5°~15°程度に設定できる。凹溝5の断面形状として、台形状であっても、三角形状であってもよい。
図2に示すように、周方向に間欠に周期構造10が形成される場合、凹溝5の中心角θ1として1°に限るものではなく、任意に変更でき、これに対応して凹溝間の未加工部位の中心角θ2も任意に変更できる。
また、周期構造10を設ける範囲として、摺動領域から摺動領域周縁に延びるものであればよく、図2に示すように、円周方向に間欠的に配設される場合、前記実施形態では、内径円6の径寸法D1aを第2部材2の内径寸法D2aより小さく、外径円7の径寸法D1bを第2部材2の外径寸法D2bよりも大きく、すなわち、D1a<D2aかつD1b>D2bに設定していたが、D1a≒D2aとしたり、D1b≒D2bとしたりできる。また、図5に示すような渦巻き形状のものでは、第2部材2の外径面よりも渦巻きの外径端部を外径側に配置したり、渦巻きの外径端部を第2部材2の外径面のほぼ同一位置に配置したりできる。
周期構造10が図5に示すような渦巻き形状の場合、前記実施形態では、中心から外周側へ向かって時計廻りに回っているものを示したが、中心から外周側へ向かって反時計廻りに回っているものであってもよい。
第1部材1と第2部材2の相対的な摺動運動は、第1部材1を固定して第2部材2を摺動(例えば、図2の矢印A方向又は矢印Aと反対方向に回転)させるものであっても、逆に第2部材2側を固定して、第1部材側を摺動(回転)させるものであってもよい。すなわち、周期構造10が形成されている方を摺動させても、周期構造10が形成されない方を摺動(回転)させてもよい。また、第1部材1と第2部材2の双方を摺動(回転)させるものであってもよい。周期構造10を形成する際に、前記実施形態では、パルスレーザであるフェムト秒レーザを用いたが、フェムト秒レーザ以外のピコ秒レーザやナノ秒レーザといったパルスレーザを使用することもできる。
第1部材1の摺動面にグレーティング状の周期構造10を形成し、グリース潤滑下におけるスラスト平面軸受の摩擦係数に及ぼす影響について検証した。第2部材2としてのリング試験片を回転側試験片、第1部材1としてのディスク試験片を固定側試験片とし、グリース潤滑下でリングオンディスク試験を行った。図9に示すリングオンディスク試験器を用いた。
第2部材2としてのリング試験片をSiCリング(外径16mm、内径10mm、Ra0.02μm)で構成し、第1部材1としてのディスク試験片を超硬ディスク(直径20mm、Ra0.05μm)で構成した。グリースには脂肪族ウレアグリース(増ちょう剤量13%、基油PAO6、ちょう度282)を使用した。ディスク試験片には超短パルスレーザを加工しきい値近傍のエネルギー密度で照射し、グレーティング状の周期構造10(ピッチ約900nm、深さ約250nm)をφ8mm~φ18mmの領域に形成した。周期構造パターンは図8(a)に示す同心円(3重円)、(b)に示す間欠(図2に示す本発明に係る軸受の第1部材に対応)、および(c)に示す螺旋(渦巻き)(図5に示す本発明の第1部材に対応)の3種類とした。比較のため、未加工のディスク試験片も用いた。以下、ディスク試験片を鏡面ディスクと呼び、周期構造パターンが同心円ものものを同心円ディスクと呼び、周期構造パターンが間欠のものを間欠ディスクと呼び、周期構造パターンが螺旋(渦巻き)のものを螺旋ディスクと呼ぶ。
図8(a)の同心円ディスクでは、リング全面が周期構造と接触する。図8(b)の間欠ディスクは90分割(加工幅1°、未加工幅3°)とした。周期構造の方向は同心円ディスクと同一とした。図8(c)の螺旋ディスクは螺旋領域(溝幅Δt:100μm、溝ピッチl: 400μm)に周期構造を形成した。螺旋の方向は右回り(平面視において、中心から外周側へ向かって時計廻りにまわっている螺旋)とした。図8(c)のディスク試験片では、周期構造10の方向はリング試験片が右回転時に潤滑剤を外周側から内周側に引き込む方向のスパイラル状とした。摺動方向に対する周期構造の傾斜角θ=45°(図5(b)参照)とした。図8(b)(c)のディスク試験片では、グリースの保持量増加のため、周期構造の凸部位置が未加工部より斜面を介して1μm掘り下がった構造とした。すなわち、凹溝5を形成し、この凹溝5内に周期構造10を成形した。
加圧は0.32MPaとし、一定速連続摺動(26.2mm/s)で摩擦係数を測定した。一定速連続摺動時の摩擦係数を図10に示す。鏡面ディスクは摩擦係数が高く、変動幅も大きくなった。これは、潤滑剤が面外に排出され、潤滑不足になったと考えられる。同心円ディスクは摩擦係数のベースラインが鏡面ディスクに対して半減したが、急激な摩擦係数の変動が見られた。同心円の周期構造は基油分離と油分移動性およびグリースの保持性を有することから摩擦低減効果が現れたと考えられる。しかし、周期構造が摺動面外と連通しておらず、基油の再流入性が劣るため、急激な摩擦係数の変動につながったと考えられる。間欠ディスクは摩擦係数のベースラインが鏡面ディスクの1/6まで低下し、極めて安定した摩擦係数を示した。これは、周期構造による基油分離と油分移動性向上に加えて、凸部位置を1μm掘り下げたことでグリース保持量の増加、基油の再流入性向上により優れた摺動特性が得られたものと考えられる。螺旋ディスクは摩擦係数のベースラインが鏡面ディスクに対して半減以下まで低下し、摩擦係数の変動も抑制された。しかし、螺旋ディスクの場合、摺動面外との連通がリング内外周側に各一か所しかなく、基油の再流入性は間欠ディスクほど高くない。このため、間欠ディスクと比較して摩擦低減効果が小さくなったと考えられる。
超音波洗浄したディスク摺動面のレーザ顕微鏡図を図11に示し、SEM画像を図12および図13に示す。図11(a)および図12(a)は鏡面ディスクを示し、図11(b)および図12(b)は同心円ディスクを示し、図11(c)および図12(c)は螺旋(渦巻き)ディスクを示し、図11(d)および図12(d)は間欠ディスクを示している。図13(a)は螺旋(渦巻き)ディスクを示し、図13(b)は間欠ディスクを示し、図13(a)(b)は、図12(c)(d)と倍率を相違させている。
鏡面ディスクではグリースの付着は認められなかった。同心円ディスク、螺旋(渦巻き)ディスク、及び間欠ディスクの周期構造では黒い担持物が認められた。特に間欠ディスクでは鏡面部分にも付着膜の形成が認められた。また、図13(a)(b)でわかるように、周期構造下流終端部に高密度で担持物があった。付着物はグリースの増ちょう剤であるウレア化合物由来と考え、ディスク摺動面のXPS分析を行った。ディスク摺動面のN1sスペクトルを図14に示す。鏡面ディスクの摺動部は未摺動部と大きな変化がないが、同心円ディスクの摺動部にはウレア化合物由来のNHのピークが若干認められた。また、間欠ディスクでは明瞭なNHのピークが認められた。間欠ディスクのグリース潤滑特性の向上は、周期構造のグリース保持と基油分離作用により境界潤滑膜として作用する増ちょう剤由来の付着膜形成が促進されるとともに基油の再流入性が向上したことが要因と考えられる。
グリース潤滑下におけるスラスト軸受の摩擦係数に及ぼす周期構造の影響について検証した結果を次のように得た。
1.間欠ディスクは顕著な摩擦低減効果と極めて安定した摩擦係数を示した。
2.周期構造を形成したディスクには増ちょう剤であるウレア化合物由来のNHのピークが認められる。
3.間欠ディスクの摩擦係数は起動直後を除いて停止期間の影響を受けない。
4.間欠ディスク、螺旋ディスクは高速摺動時に摩擦係数と摩擦変動が増加する。
1a 摺動面
2a 摺動面
5 凹溝
5a、5b 立上り側面
10 周期構造
T テーパ面

Claims (3)

  1. ウレアグリース介在下で相対的に摺動する第1部材と第2部材とを備えたスラストすべり軸受であって、
    第1部材側に、凹溝を形成するとともに、この凹溝内にグレーティング状凹凸の周期構造を設け、前記グレーティング状凹凸の周期構造の形成領域が円周方向に間欠に配置された複数の放射状領域であり、前記放射状領域は、その内径端が、周期構造を有さない第2部材の摺動面の内径端よりも内径側に位置し、かつ、その外径端が、周期構造を有さない第2部材の摺動面の外径端よりも外径側に位置し、さらに、グレーティング状凹凸の周期構造の凸部高さを周期構造未加工部の高さよりも低くし、前記凹溝は、少なくとも摺動方向下流側の立上り側面が溝底から凹溝開口端に向かって浅くなるテーパ面であって、断面扁平台形形状とされていることを特徴とするスラストすべり軸受。
  2. 前記グレーティング状凹凸の周期構造は、凸部頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化するものであることを特徴とする請求項1に記載のスラストすべり軸受。
  3. 前記グレーティング状凹凸の周期構造の凹凸が50nm以上10μm以下かつ周期ピッチが10μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスラストすべり軸受。
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