JP6612053B2 - 摺動面構造 - Google Patents

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Description

本発明は、摺動面構造に関する。
表面テクスチャリングは流体潤滑領域の拡大や摩擦低減など、摺動特性の改善手法の一
つとなっている。サブミクロンの周期ピッチと溝深さをもつグレーティング状の周期構造
部はサブミクロンの油膜厚さにおいて、極めて高い負荷能力と剛性をもつことが知られて
おり、往復摺動や回転摺動に利用されている。
その代表的なものに動圧スラスト軸受や、工作機械の案内機構に代表される平面摺動機構がある。この場合、油膜圧力が発生する摺動面積が比較的広いため、容易に流体潤滑に必要な負荷容量を得ることができる。
この場合、油膜圧力が発生する摺動面積が比較的広いため、容易に流体潤滑に必要な負荷容量を得ることができる。しかし、ベーンやカム、ピストンリング等のような、いわゆる線接触摺動機構においては、接触面積が狭いため、低速・低粘度下での摺動時は動圧発生効果が小さく、摺動面間の油膜切れによる摩擦・摩耗の増大や焼き付きの発生が問題となっている。そのため、潤滑油の濡れ広がり性および保油性の高い摺動面構造が期待されている。
ところで、内燃機関(エンジン)において、ピストンリング(ファーストリング)のフリクションを低減するために、ピストンリングの摺動面(外周面)に多数のディンプルを施す(設ける)ことが知られている。そこで、従来には、ディンプル付きピストンリングにおいて、ピストンの上死点及び下死点付近でも、外周面に必要な油膜厚さを確保し、摩擦係数の増大を抑制することが可能なピストンリングが提案されている(特許文献1)。
この特許文献1に記載のものは、ピストンリング本体の外周面に形成される多数のディンプルを有するものであり、使用開始初期に被摺動面と摺接する初期摺接範囲外のディンプルの面積率が、初期摺接範囲内のディンプルの面積率よりも小さくなっている。
このようにディンプルを構成することにより、ピストンの上死点及び下死点付近においても、初期摺接範囲外のディンプルへの潤滑油の逃げが減り、ピストンリング本体の外周面に必要な油膜厚さを確保することができるものである。
特開2014−95425号公報
前記特許文献1に記載のものは、接触部および周縁にディンプルを配置するものである。そして、ディンプルの大きさや配設位置(配設ピッチ)等を設定している。しかしながら、この場合、ディンプルへの潤滑油供給作用がないため、固体接触が連続することになる。摩擦増大や焼き付きを生じるおそれがあった。これは、ディンプルが独立するため、保持している潤滑油を供出すると潤滑油切れとなり、また、ディンプルの潤滑油に対する濡れ性が周囲と同等のため、潤滑油保持効果が小さいことによる。
そこで、混合潤滑下で潤滑油の濡れ広がり性および保油性が高く、摺動面間の油膜切れによる摩擦・摩耗の増大や焼き付きの防止が可能な摺動面構造および摺動面構造の製造方法を提供する。
本発明の摺動面構造は、摺動面を有する第1部材と、前記第1部材の摺動面に対して直線状に延びる接触部を有する第2部材とが潤滑下で相対的に摺動する摺動面構造であって、第2部材は、第1部材の摺動面との間に接触部の短軸方向の両端側にくさび状すきまを形成する凸曲面乃至テーパ面からなる切欠面を有し、前記第2部材の接触部及びその接触部の少なくともいずれか一方側の切欠面に跨って潤滑油に対する濡れ広がり性機能を発揮するグレーティング状の周期構造からなる帯状の周期構造形成領域を、接触部の長手方向に沿って所定ピッチで設け、第1部材と第2部材との相対的な主要摺動方向を第2部材の接触部の短軸方向とし、前記グレーティング状の周期構造の凸部の高さを、周期構造成形前の高さ以下とするものである。
本発明の摺動面構造によれば、周期構造形成領域を形成することで、表面積が増加し、潤滑油の濡れ性が向上し、周期構造を介して接触部周縁から摺動面内に潤滑油を取り込むことができるとともに潤滑油の保持機能が向上する。なお、第1部材の摺動面としては、平面や円筒面(筒体の内径面や外径面、中実体の外径面)等である。
前記グレーティング状の周期構造の凸部頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化しているのが好ましい。周期構造形成領域の形成方向を摺動方向に対して傾斜させ、周期構造形成領域の周期構造を摺動方向と略平行もしくは摺動方向に対して周期構造形成領域の形成方向の傾斜方向と逆方向に形成した配向とするのが好ましい。前記グレーティング状の周期構造の周期ピッチが10μm以下としたりできる。
本発明では、摺動面内に潤滑油を取り込むことができるとともに、潤滑油の保持機能に優れる摺動面構造を提供できる。このため、摺動面と接触部との間の油膜切れによる摩擦・摩耗の増大や焼き付きを有効に防止できる。
前記グレーティング状の周期構造の凸部頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化すれば、周期構造の開口面積が大きくなり、潤滑油を効率的に取り込むことが可能となる。
周期構造形成領域の形成方向を摺動方向に対して傾斜させ、周期構造形成領域の周期構造を、摺動方向と略平行もしくは摺動方向に対して周期構造の形成方向の傾斜方向と逆方向に形成した配向とすれば、摺動面の広い領域に潤滑油を供給することができる。
前記グレーティング状の周期構造の凸部の高さを、周期構造成形前の高さ以下とすれば、接触部周縁から潤滑油を効率的に取り込むことが可能となる。
前記グレーティング状の周期構造の周期ピッチが10μm以下とすれば、毛細管現象による潤滑油の濡れ広がり性向上及びピン止め効果による潤滑油保持効果の向上を発揮することができる。
周期構造は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成したものでは、機械加工では困難な
サブミクロンの周期ピッチと凹凸深さを持つものを容易に形成できる。
本発明の実施形態を示す摺動面構造を示し、第1部材に対して第2部材を摺動させている状態の簡略斜視図である。 第2部材の接触部を示し、(a)は要部拡大断面図であり、(b)は断面扁平V字形状の凹部が形成されている拡大簡略図であり、(c)は断面円弧形状の凹部が形成されている拡大簡略図である。 第2部材の接触部の第1部材との摺動面との関係を示し、(a)は第2部材に凸曲面が設けられてなるくさび状すきまを有する摺動面構造の簡略図であり、(b)は第2部材にテーパ面が設けられてなるくさび状すきまを有する摺動面構造の簡略図である。 第2部材の接触部の簡略展開図である。 本発明の実施形態を示す摺動面構造の製造方法の工程を示す簡略ブロック図である。 周期構造を形成するためのレーザ表面加工装置の簡略図である。 実施例の周期構造を示し、(a)はプレート試験片の平面図であり、(b)はこのプレート試験片に形成される周期構造の拡大図である。 潤滑油滴下直後の油滴形状を示す平面図である。 油滴先端の推移を示し、(a)は滴下1分後の平面図であり、(b)は滴下2分後の平面図であり、(c)は滴下3分後の平面図であり、(d)は滴下4分後の平面図である。 周期構造形成領域終端の油滴断面プロファイル図である。 周期構造形成領域終端の油滴断面プロファイル図である。 周期構造形成領域終端の油滴3D画像図である。
以下本発明の実施の形態を図1〜図12に基づいて説明する。
本発明に係る摺動面構造は、図1に示すように、平面状の摺動面1aを有する第1部材1と、前記第1部材1の摺動面1aに対して直線状に延びる接触部2aを有する第2部材2とは潤滑下で相対的に摺動するものである。第1部材1及び第2部材2は、炭素鋼、銅、アルミニウム、白金、超硬合金等であっても、炭化ケイ素や窒化ケイ素等のシリコン系セラミックスであっても、エンジニアプラスチック等であってもよい。また、潤滑剤としても、水やアルコールであっても、さらにはエンジンオイル等の潤滑油等であってもよい。すなわち、第1・第2部材1、2の材質、使用する環境等に応じて種々の潤滑剤を用いることができる。
第1部材1を例えば平板体とし、第2部材2を例えば薄肉状の矩形平板体からなる。第1部材1の平面状の上面が前記摺動面1aとなり、第2部材2の一方の短辺(下辺)が前記接触部2aとなる。第1部材1の摺動面1aに第2部材の接触部2aを接触させると、図3(a)(b)に示すように、くさび状すきま3、3が形成される。この場合、平面的に見て、第1部材1の幅方向(短手方向)に対して第2部材の厚さ方向が直交して、第1部材1から第2部材が垂直に延びる状態となっている。
図3(a)に示す第2部材2では下辺が凸曲面とされ、後述するように、第1部材1に対する第2部材2の摺動方向の往動方向X1及び復動方向X2にそれぞれくさび状すきま3、3が形成される。また、図3(b)に示す第2部材2では、下辺が直線状の平坦部5と、この平坦部5の摺動方向の往動方向X1及び復動方向X2にそれぞれテーパ面が形成されて、くさび状すきま3、3が形成される。すなわち、図3(a)では、凸曲面の切欠面6A、6Aが設けられ、図3(b)では、テーパ面の切欠面6B、6Bが設けられる。ところで、図3(a)では、第2部材2の下辺に一つの凸曲面を形成することによって、凸曲面の切欠面6A、6Aを設けているが、図3(b)に示すような平坦部と、この平坦部の両側に配設される凸曲面でもって切欠面6A、6Aを形成するようにしてもよい。
このため、図4に示すように、第2部材2の接触部2aが第1部材1の幅方向に沿って延びる直線部にて構成される。ここで、接触部2aは、短軸長をbとし、長軸長をaとしたときに、b/aが1/10以下であり、bを3mm以下とする。すなわち、この範囲を本願発明では、直線状に延びるとしている。
接触部2aには、図4に示すようなグレーティング状の周期構造形成領域7が接触部2aの長手方向に沿って所定ピッチで配設されている。すなわち、周期構造形成領域7と、周期構造8が形成されない未形成部とが交互に配設される。この周期構造形成領域7は、摺動方向に対して所定角度で傾斜している。この傾斜角度θとしては、例えば、5°≦θ≦60°とされる。
周期構造形成領域7は、グレーティング状の周期構造8で構成される。図2(a)に示すように、周期構造8は、微小の凹部9と微小の凸部10とが交互に所定ピッチで配設されてなるものである。周期構造8の凹凸ピッチを10μm以下とし、凹部9の深さT1を1μm以下とするのが好ましい。
また、グレーティング状の周期構造8の凸部10の高さを、周期構造成形前の高さ以下とする。すなわち、図2に示すように、接触部2aから周期構造8の凸部高さ位置Aまでの段差高さ(高低差)Tを有することになる。この高低差Tとしては、0μm〜5μm程度とされる。周期構造8の配向方向としては、摺動方向(図1の矢印X1,X2方向)とほぼ平行なものであってもよく、周期構造形成領域7の傾斜方向と逆方向であってもよい。
ところで、図2(b)(c)に示すように、周期構造形成領域7を形成する第2部材2の下辺に凹部20を形成し、この凹部20に周期構造8を設けることによって、周期構造形成領域7を形成するものであってもよい。図2(b)では断面扁平V字形状とされ、その傾斜面21、21に周期構造8を設けることになる。また、図2(c)では断面円弧形状とされ、その底面22に周期構造8を設けることになる。これらの場合も、グレーティング状の周期構造8の凸部10の高さを、周期構造成形前の高さ以下となる。
すなわち、図2(b)に示すように断面扁平V字形状の凹部20が形成される場合、傾斜面21、21に周期構造8を形成することになり、図2(c)に示すように断面円弧形状の凹部20が形成される場合、底面22に周期構造8を形成することになる。このため、グレーティング状の周期構造8の凸部10の高さを、周期構造成形前の高さ以下となる。
周期構造形成領域7は、第2部材2の接触部2a及びその接触部2aの両側の凸曲面乃至テーパ面からなる切欠面6A、6A、6B、6Bに跨る帯状である。図4では、各周期構造形成領域7では、第2部材2の両面2b、2cに達しないものであったが、周期構造形成領域7として、第2部材2の肉厚、切欠面6A、6Aの曲率半径、切欠面6B、6Bの傾斜角度等に応じて第2部材2の両面2b、2cに達するものであってもよい。
次に、図5を用いて本発明に係る摺動構造の製造方法を説明する。まず、第2部材の一方の短辺に、図3(a)に示すような凸曲面を形成したり、図3(b)に示すようなテーパ面を形成したりすることによって切欠面6、6を形成する。これによって、第1部材1の摺動面1aとの間に接触部2aの短軸方向の両端側にくさび状すきま3を形成する切欠面形成工程S1を行うことになる。その後、接触部2a乃至切欠面6,6に周期構造形成領域7を形成する(周期構造形成領域形成工程S2)。
周期構造形成領域7の周期構造8は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成している。具体的には、図6に示すフェムト秒レーザ表面加工装置を使用する。レーザ発生器11(チタンサファイアフェムト秒レーザ発生器)で発生したレーザ(例えば、パルス幅:120fs、中心波長800nm、繰り返し周波数:1kHz、パルスエネルギー:0.25〜400μJ/pulse)は、ミラー12により加工材料Wに向けて折り返され、メカニカルシャッタ13に導かれる。レーザ照射時はメカニカルシャッタ13を開放し、レーザ照射強度は1/2波長板14と偏光ビームスプリッタ16によって調整可能とし、1/2波長板15によって偏光方向を調整し、集光レンズ(焦点距離:150mm)17によって、XYθステージ19上の加工材料W表面に集光照射する。なお、フェムト秒レーザはフェムト秒(1000兆分の1秒)オーダーという極端に短い時間単位の中にエネルギーを圧縮した光源である。
すなわち、アブレーション閾値近傍のフルエンスで直線偏光のレーザをワーク(加工材料)Wに照射した場合、入射光と加工材料Wの表面に沿った散乱光またはプラズマ波の干渉により、波長オーダのピッチと溝深さを持つグレーティング状の周期構造を偏光方向に直交して自己組織的に形成する。このとき、フェムト秒レーザをオーバラップさせながら走査させることで、周期構造を広範囲に拡張することができる。
この場合、周期構造8としては、ピッチを300nm〜10μmとし、溝深さを20n m〜1μmとすることができ、また、周期構造形成領域7の幅寸法を20μm〜5mm 程度とすることができる。周期構造形成領域7の配設ピッチとしても、30μm〜10 mm程度とすることができ、周構造形成領域7の傾斜角度θとしては、5°≦θ≦60 °程度とすることができる。
周期構造形成領域7の形成工程S2が終了してなる摺動面構造は、図1に示すように、第1部材1の摺動面1a上に、第2部材2を立設されるように配置する。この場合、平面的に見て、第1部材1の幅方向(短手方向)に対して第2部材の厚さ方向が直交して、第1部材1から第2部材2が垂直に延びる状態となっている。
この状態で、第1部材1に対して、第2部材2を矢印X1、X2のように往復動(摺動)させることになる。この矢印X1、X2は、第1部材1の長手方向である。
このように、第1部材1に対して第2部材2を図1等に示すように矢印X1,X2方向に摺動させれば、周期構造形成領域7において、摺動方向X1、X2に沿った潤滑流体の流れ成分が凹部9に生じ、すきまの小さくなる周期構造未形成部との境界では大きな流体圧力が生じる。この流体圧力により油膜の形成および荷重が支持されるため、摩擦係数の低減を実現できる。
摺動方向X1,X2に直交する向きに周期構造8の凹部9を配置した場合、摺動方向X1,X2に沿った潤滑流体の流れ成分が凹部9に生じず、荷重を支持するための潤滑流体膜の形成にはほとんど寄与しない。このため、本願発明では、周期構造形成領域7の形成方向を摺動方向に対して傾斜させ、周期構造形成領域7の周期構造8を摺動方向と略平行もしくは摺動方向に対して周期構造形成領域7の形成方向の傾斜方向と逆方向に形成した配向としている。これにより、所要の動圧作用を発揮させることができる。
上記の向きに帯状領域を設けたので、第1部材1の摺動面1aと、第2部材2の接触部2aとの相対位置が摺動方向の前方側に移動するにつれて、周期構造形成領域7と摺動面1aとの摺動領域が摺動方向と異なる向きに移行していく。そのため、摺動面1aに、周期構造形成領域7の周期構造8を設けていない平面とのみ摺動する部分が生じるのを避けることができる。これにより、その接触形態によらず、漏れなく潤滑流体の膜を形成して、安定した高い摩擦低減効果を得ることができる。
本発明の摺動面構造によれば、周期構造形成領域7の周期構造8を形成することで、表面積が増加し、潤滑油の濡れ性が向上し、周期構造8を介して接触部2a周縁から摺動面1a内に潤滑油を取り込むことができるとともに潤滑油の保持機能が向上する。
本発明では、摺動面1a内に潤滑油を取り込むことができるとともに、潤滑油の保持機能に優れる摺動面構造を提供できる。このため、摺動面1aと接触部2a間の油膜切れによる摩擦・摩耗の増大や焼き付きを有効に防止できる。
前記グレーティング状の周期構造8の凸部10頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化すれば、周期構造8の開口面積が大きくなり、潤滑油を効率的に取り込むことが可能となる。
周期構造8の形成方向を摺動方向に対して傾斜させ、周期構造8を摺動方向と略平行もしくは摺動方向に対して周期構造形成領域7の形成方向の傾斜方向と逆方向に形成した配向とすれば、摺動面1aの広い領域に潤滑油を供給することができる。
前記グレーティング状の周期構造8の周期ピッチを10μm以下とすれば、毛細感現象による潤滑油の濡れ広がり性向上及びピン止め効果による潤滑油保持効果の向上を発揮することができる。
周期構造8は、加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを照射し、その照射部分をオーバラップさせながら走査して、自己組織的に形成したものでは、機械加工では困難なサブミクロンの周期ピッチと凹凸深さを持つものを容易に形成できる。
周期構造形成領域7が凹部20に設けていれば、第1部材1aの相手部材の摺動により摺動面が摩耗しても、摺動面1aの表面の位置が凹部20の底の位置と同一になるまで周期構造8が残る。このように、凹部20を設けることにより、周期構造8が消失するまでの許容摩耗量が増加し、摩擦低減効果の寿命を長くする
本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、周期構造形成領域7として、第2部材2の肉厚、切欠面6A、6Aの曲率半径、切欠面6B、6Bの傾斜角度等は任意に設定できる。また、周期構造形成領域7の幅寸法、長さ寸法、配設ピッチ等は任意に設定でき、周期構造形成領域7の傾斜角度θとしては、任意に設定でき、傾斜しないものであってもよい。
ところで、前記実施形態では、周期構造形成領域7は、第2部材2の接触部2a及びその接触部2aの両側の凸曲面乃至テーパ面からなる切欠面6A、6A、6B、6Bに跨る帯状であったが、いずれか一方の切欠面6A、6Bにのみ跨るものであってもよい。
周期構造形成に使用するレーザとしては、フェムト秒レーザ、ピコ秒レーザ、及びナノ秒レーザといったパルスレーザを使用することができる。また、摺動面構造の摺動方法としては、第1部材1側を固定して第2部材2を第1部材1に対して摺動させても、逆に、第2部材2側を固定して第1部材1を第2部材2に対して摺動させても、第1部材1と第2部材2とを摺動させてもよい。
また、図2(b)(c)に示すように、周期構造形成領域7を形成するために、凹部20を設けた場合、図2(b)の傾斜面の傾斜角度αとしては、0.2°〜6°程度に設定でき、図2(c)に示すように、曲率半径Rとしては、0.1mm〜1000mm程度に設定できる。なお、図2(c)に示す円弧形状とは、半円形、半長円、又は半楕円形状であってもよい。
第1部材1の摺動面1aとしては、平面や円筒面(筒体の内径面や外径面、中実体の外径面)等で構成できる。このため、本発明に係る摺動面構造は、ベーンやカム、ピストンリング等のような線接触摺動機構に用いることができる。
サブミクロンの周期間隔と凹凸深さをもつ周期構造を形成し、潤滑油に対する濡れ広がり性および潤滑油保持効果に及ぼす影響を検証した。まず、試験片を形成した。この場合SUS304基板の表面にフェムト秒レーザを加工しきい値近傍のエネルギー密度で照射し、グレーテイング状の周期構造8(ピッチ約700nm、深さ約200nm)を帯状領域(周期構造形成領域7)(幅0.8mm、長さ15mm)に形成した。周期構造8の配向方向は帯状領域の長手方向とした。図7(a)に周期構造形成領域7を形成したプレート試験片50の平面図を示し、図7(b)にこの周期構造形成領域7の周期構造8の拡大平面図を示す。
そして、周期構造8を形成した帯状領域中央部(周期構造形成領域7の中央部)に潤滑油を0.2μl滴下し、潤滑油の濡れ広がりをレーザ顕微鏡を用いて観察した。潤滑油にはPA06〔51.9cP (25℃)〕を使用した。
潤滑油滴下直後の油滴の様子を図8に示す。滴下直後に油滴が周期構造形成領域(周期構造形成領域7)に濡れ広がっていることが確認できる。油滴は時間経過とともに周期構造形成領域7に沿って進展した。図9に油滴先端の推移を示す。これらから、油滴は周期構造形成領域のみを進展し、周期構造未形成部には広がっていないことがわかる。
図10に周期構造形成領域終端まで濡れ広がった油滴の断面プロファイルを示し、図10に周期構造形成領域終端まで濡れ広がった油滴の3D画像を示す。これらから、油滴は周期構造領域に保持されていることがわかる。すなわち、周期構造8を形成することで、表面積が増加し、潤滑油の濡れ性が向上するとともに、周期構造8の溝部(凹部9)に潤滑油が進入することで、毛細管現象による濡れ広がり性の向上およびピン止め効果による潤滑油保持効果が向上したと考えられる。また、PA06より粘度の低いPA02〔8.3cP(25℃)〕ではさらに早い濡れ広がりが認められた。
1 第1部材
1a 摺動面
2 第2部材
2a 接触部
3 くさび状すきま
6A、6B 切欠面
7 周期構造形成領域
8 周期構造
S1 切欠面形成工程
S2 周期構造形成領域形成工程

Claims (4)

  1. 摺動面を有する第1部材と、前記第1部材の摺動面に対して直線状に延びる接触部を有する第2部材とが潤滑下で相対的に摺動する摺動面構造であって、
    第2部材は、第1部材の摺動面との間に接触部の短軸方向の両端側にくさび状すきまを形成する凸曲面乃至テーパ面からなる切欠面を有し、前記第2部材の接触部及びその接触部の少なくともいずれか一方側の切欠面に跨って潤滑油に対する濡れ広がり性機能を発揮するグレーティング状の周期構造からなる帯状の周期構造形成領域を、接触部の長手方向に沿って所定ピッチで設け、第1部材と第2部材との相対的な主要摺動方向を第2部材の接触部の短軸方向とし、前記グレーティング状の周期構造の凸部の高さを、周期構造成形前の高さ以下とすることを特徴とする摺動面構造。
  2. 前記グレーティング状の周期構造の凸部頂点が非平坦面となって連続的に高さが変化していることを特徴とする請求項1に記載に記載の摺動面構造。
  3. 前記周期構造形成領域の形成方向を摺動方向に対して傾斜させ、周期構造形成領域の周期構造を摺動方向と略平行もしくは摺動方向に対して周期構造形成領域の形成方向の傾斜方向と逆方向に形成した配向としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の摺動面構造
  4. 前記グレーティング状の周期構造の周期ピッチが10μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の摺動面構造。
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