JP2012007712A - 摺動面構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】線接触を伴う摺動機構にも適用でき、長寿命で安定した高い摩擦低減効果を発揮することのできる摺動面構造を提供する。
【解決手段】潤滑流体の介在下で相手部材と相対摺動を行う摺動面1に、相手部材2の摺動方向に対して傾斜する向きに伸び、かつ、緩斜面9を有する凹溝7からなる帯状領域4と、帯状領域4の間に、帯状領域4の伸展方向と同一方向に伸びる摺動平面3とを備え、緩斜面9には帯状領域4の伸展方向に対して傾斜して配置される複数の微小溝5が設けられる。
【選択図】図2

Description

本発明は、摺動面構造に関し、特に線接触を伴った摺動機構にも適用可能な摺動面構造に関する。
相対する部品間で摺動を行う摺動面構造およびこの摺動面構造に使用される摺動面には、その用途に応じて種々の形態が存在し、代表的なものに自動車等の動的機構に使用されるスラスト軸受や、工作機械の案内機構に代表される直動摺動面構造などがある。
これは、例えば下記特許文献1に示すように、潤滑流体の介在下において相対する平面間で摺動を行う摺動機構であって、その少なくとも一方の平面(摺動面)に、摩耗低減等の目的で、微細な溝状の凹部を形成したものである。具体的には、特許文献1には粘性流体の存在下で相対的に摺動する摺動部材であって、その少なくとも一方の摺動部材の摺動面に連続波形状の微細凹溝を形成した低摩擦摺動部材において、微細凹溝を、波形の伸延方向が摺動部材の摺動方向と一致するように形成したものが開示されている。
特開2007−321861号公報
上記特許文献1に開示された摺動部材は、摺動平面上に形成した微細な溝を通じて潤滑油等の粘性流体を摺動平面に供給することで摺動平面間の摩擦低減を図ったものであるが、これは十分な面積を有する平面摺動の場合にのみ有効となる。すなわち、工業上利用されている摺動部材には、カム面との摺動を行うバルブリフタ等のように、曲面との摺動を主とする摺動部材(摺動面)も存在する。この種の摺動部材においては、いわゆる線接触を伴った摺動を生じ、上記特許文献に開示の摺動部材を線接触摺動機構に適用した場合には、接触面積が小さいために摺動平面に十分な量の潤滑油等を供給することができず、潤滑油等が逃げ易い。そのため、必要な厚みを有する油膜等を摺動平面に形成することができず、所要の摩擦低減効果を得ることが難しい。また、線接触摺動機構では、面接触と比較して摺動部材同士の接触面積が小さく、接触面圧が大きい。このため、摺動面に微細凹溝の凹凸と同等の摩耗が生じると、微細凹溝が消失することから、線接触摺動機構における摩擦低減効果の寿命が短いという問題がある。
上記特許文献1に記載の摺動部材では、連続波形状の微細凹溝が、波形の伸延方向を摺動部材の摺動方向に沿わせた状態で形成されている。そのため、線接触する相手部材の一部は常に微細凹溝のない平面部と摺動することとなり、この部分で大きな摩擦を生じる可能性が高い。さらに、線接触の場合、連続波形状の凹溝では潤滑油に動圧が生じても凹溝を介して容易に油圧が解放されるため、摺動部(平面部)に油膜を形成する作用はほとんど期待できない。
以上の事情に鑑み、本明細書では、線接触を伴う摺動機構にも適用でき、長寿命で安定した高い摩擦低減効果を発揮することのできる摺動面構造を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
本発明は、潤滑流体の介在下で相手部材と相対摺動を行う摺動面に、前記相手部材の摺動方向に対して傾斜する向きに伸び、かつ、緩斜面を有する凹溝からなる帯状領域と、この帯状領域の間に、前記帯状領域の伸展方向と同一方向に伸びる摺動平面とを備え、前記緩斜面には前記帯状領域の伸展方向に対して傾斜して配置される複数の微小溝が設けられるものである。ここで緩斜面とは、緩やかな平面だけではなく、曲率の小さい曲面も含む。
このように、上記構成によれば、相手部材との相対摺動が進行するのに伴い、帯状領域と相手部材との摺動領域においては帯状領域に設けた微小溝による動圧作用が生じ、帯状領域に隣接する摺動平面上に流体圧を高めた潤滑流体が供給される。また、上記の向きに帯状領域を設けたので、摺動面に対する相手部材の相対位置が摺動方向の前方側に移動するにつれて、帯状領域と相手部材との摺動領域が摺動方向と異なる向きに移行していく。そのため、相手部材に、帯状領域(微小溝)を設けていない摺動平面とのみ摺動する部分が生じるのを避けることができる。これにより、その接触形態によらず、相手部材との摺動領域に漏れなく潤滑流体の膜を形成して、安定した高い摩擦低減効果を得ることができる。もちろん、焼付き防止効果も高まる。しかも、帯状領域は、緩斜面を有する凹溝にて構成されているため、相手部材の摺動により摺動面が摩耗しても、摺動面の表面の位置が凹溝の溝底の位置と同一になるまで微小溝が摺動面に残る。このように、凹溝を設けることにより、微小溝が消失するまでの許容摩耗量が増加し、摩擦低減効果の寿命を長くすることができる。
前記緩斜面は、斜度が1/250〜1/10とするのが好ましい。ここで斜度とは、緩斜面が平面状であれば、その傾きであり、凹溝の深さ寸法と、溝底から溝端までの溝幅の寸法との比をいう。また、緩斜面が曲面であれば、その接線の傾きのうち最大のものをいう。
前記複数の微小溝及び凹溝は、所定の溝断面形状となるようにエネルギー分布を制御した直線偏光のレーザをオーバーラップさせながら走査して同時に形成されたものとできる。レーザを用いた自己組織的な周期構造の形成方法を利用することで、機械加工では困難な1μm以下のオーダーの正確なピッチと溝深さを併せ持つ微小溝の群を容易に形成でき、それと同時に凹溝を形成できる。
前記微小溝は、前記摺動方向に対して平行もしくは90度未満の傾斜角をもって配置することもできる。平面同士が摺動する場合、微小溝の摺動方向に対する傾斜角は特に問題とならないが、線接触を伴って摺動する場合、潤滑流体の膜により支持される面積が非常に小さく、また相対摺動に伴い上記流体膜による相手部材の支持位置が速やかに移動する。これにより、前記のように微小溝を配置することで、常に相手部材との摺動領域よりも摺動方向の前方側に向けて流体圧を高めた潤滑流体が送り込まれる。よって、潤滑流体の膜を相手部材との間に途切れることなく形成することができる。
また、微小溝は、平面視した状態において、帯状領域の伸展方向から摺動方向に近づく向きを正とした場合、帯状領域の伸展方向に対して正の角度で傾斜しており、かつ摺動方向に対する傾斜角が90度未満となるように配置されていてもよい。このように構成することで、線接触を伴う相手部材との摺動状態を安定させることができる。すなわち、線接触している相手部材の摺動面上の任意の1点を見た場合、帯状領域上を相手部材が通過するのに伴い、帯状領域とその摺動方向前方側で隣接する摺動平面に向けて潤滑流体が流れ込むと共に、上記摺動平面と帯状領域との境界で潤滑流体の動圧が立ち上がる。これにより、相手部材が帯状領域を通過してその前方側に位置する新たな摺動平面と摺動を開始する点に常に流体圧を高めた潤滑流体が供給される。これにより、潤滑流体の膜を常に相手部材を支持するのに適した位置に形成して、相手部材を高精度かつ安定して支持することができる。
ところで、摺動平面が相手部材との間で相対回転摺動を生じる場合、帯状領域は、摺動平面の相対回転軸を中心として螺旋状に形成されていてもよい。このように構成することで、摺動平面に直交する軸まわりに当該平面と相手部材の曲面との一方が相対的に回転摺動する場合であっても、上記と同様、摺動平面上に潤滑流体の膜を均等に形成して、安定した高い摩擦低減効果を得ることができる。また、この場合、螺旋状に配列された帯状領域間のピッチを一定の間隔に設定することで、少なくとも帯状領域の伸展方向が摺動方向に対して成す角が一定になり、また、この場合、微小溝が帯状領域の伸展方向に対して成す角を容易に一定にできる。これにより、相手部材と摺動面との相対角度位置によらず安定した高い摩擦低減効果を得ることができる。
また、摺動平面と摺動する相手部材の摺動面上の任意の1点が、2ヶ所以上で帯状領域と交わるように、摺動方向に対する帯状領域の伸展方向が設定されていてもよい。このように構成することで、相対摺動時に相手部材の摺動面と相対する微小溝の数が、帯状領域を通過する数の分だけ増加するので、流体圧を高めて潤滑流体膜で支持できる機会が増える。また、帯状領域を通過する間隔も短くなるので、潤滑流体膜の破断等があった場合も、これを僅かな時間で修復できる。以上より、動摩擦係数の変動幅を小さくして高精度かつ安定した摺動案内を図ることができる。
複数の微小溝は、10μm以下のピッチで形成されていてもよい。金属同士の線接触状態における接触幅は、ヘルツの接触理論に基づけば、通常、101〜102μmオーダーである。そのため、微小溝間のピッチが上記接触幅より大きいと、一旦微小溝により流体圧を高めた潤滑流体が逃げ易くなり、所要の厚みの潤滑流体膜を形成し難くなる。これに対して、上記のように微小溝のピッチを設定すれば、その傾斜角の大小によらず微小溝間のピッチを上記接触幅よりも小さくすることができ、潤滑流体の逃げが抑制される。そのため、線接触時においても、潤滑流体膜の形成を効果的に図ることができる。
以上のように、本発明によれば、線接触を伴う摺動機構にも適用でき、長寿命で安定した高い摩擦低減効果を発揮することのできる摺動面構造を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る摺動面構造の斜視図である。 図1に示す摺動面構造の要部平面図である。 図2に示す摺動面構造のX−X線における表層部分の簡略図である。 図2に示す摺動面構造の要部拡大図であって、帯状領域を構成する微小溝の配列態様を示す拡大図である。 摺動面上を相手部材が直線的に摺動する場合の帯状領域の作用を概念的に説明するための平面図である。 本発明の第2実施形態に係る摺動面構造の要部平面図である。 摺動面上を相手部材が回転摺動する場合の帯状領域の作用を概念的に説明するための平面図である。 本発明の摺動面構造の変形例を示す要部拡大平面図である。 本発明の第2実施形態に係る摺動面構造の変形例を示す要部平面図である。 本発明の摺動面構造の変形例において、図2のX−X線における表層部分の簡略図である。 摺動実験の結果を示す図であって、摺動面構造のすべり速度と平均動摩擦係数との関係を示す図である。 摺動実験の結果を示す図であって、摺動面構造のすべり速度と動摩擦係数の標準偏差との関係を示す図である。 摺動実験の結果を示す図であって、摺動面構造のすべり速度と平均動摩擦係数との関係を示す図である。 摺動実験の結果を示す図であって、摺動面構造のすべり速度と平均動摩擦係数との関係を示す図である。
以下、本発明に係る摺動面構造の第1実施形態を図面に基づき説明する。この実施形態では、相手部材との間で線接触を伴って直線的に摺動する場合を例にとって説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る摺動面構造の斜視図を示している。また、図2は、図1に示す摺動面構造の要部平面図を示している。これらの図から分かるように、摺動面構造を構成する摺動面1は全体として平面状をなし、潤滑流体(例えば潤滑油)の介在下で相手部材2と摺動接触を行うための摺動平面3と、相手部材2の摺動方向(図1および図2中、2点鎖線の矢印d1で示す方向。以下、単に摺動方向d1と称する。)に対して傾斜した向きに伸びる1又は複数の帯状領域4とを備えている。この実施形態では、相手部材2は、図1に示すように、その下端に設けた曲面2aを摺動面1と線接触させた状態で、その線接触長手方向と直交する向きに摺動するようになっている。帯状領域4は摺動面1に一定の間隔で複数設けられ、その何れもが相手部材2の摺動方向に対して同一の傾斜角をもって並列に配置されている(図2を参照)。そのため、この実施形態では、平坦な摺動平面3は、帯状領域4の伸展方向と同一方向に伸びるとともに、隣接する帯状領域4の間に設けられることにより、個々の摺動平面3と帯状領域4とが交互に配列された形態をなしている(図1および図2を参照)。
図1に示すように、帯状領域4は複数の微小溝5が形成された凹溝7からなる。この凹溝7は、図3に示すように、一対の緩斜面(テーパ面)9a、9bにて形成されており、その断面形状が扁平V字状となっている。緩斜面9a、9bの斜度は、1/10〜1/250とするのが好ましい。ここで斜度とは、緩斜面9a、9bの傾きであり、凹溝7の深さ寸法hと、溝底8から溝端までの溝幅の寸法xとの比をいう。斜度が1/10よりも大きいと、凹溝7の深さが深くなって、後述する微小溝5による効果が得られにくくなり、1/250よりも小さいと、凹溝7の深さが浅くなって平面状とほとんど同じとなり、後述する凹溝7による効果が得られにくくなる。
緩斜面9a、9bには、帯状領域4の伸展方向に対して傾斜して配置される複数の微小溝5が設けられている。この微小溝5は、帯状領域4に所定ピッチで形成されており、これによって帯状領域4にグレーティング状の周期構造が構成されることになる。微小溝5は、帯状領域4上を相手部材2が通過するのに伴い、この相手部材2との間に介在する潤滑流体の動圧作用を生じさせることを目的とするものである。すなわち、この微小溝5が形成される帯状領域4では、微小溝5の凹部と凸部で摺動面間のすきまに差が生じ、すきまの小さくなる凸部では大きな流体圧力が生じる。この流体圧力により荷重が支持されるため、摩擦係数の低い流体潤滑状態を実現できる。この実施形態では、図4に示すように、複数の微小溝5は何れも直線形状をなし、所定のピッチで格子状に配置されると共に、帯状領域4の伸展方向(図4中、1点鎖線の矢印d2で示す方向。以下、単に伸展方向d2と称する。)に対して傾斜して配置されている。また、複数の微小溝5は全て同じ寸法(長手方向寸法、幅方向寸法)を有し、その両端部5a,5bを揃えた状態で互いに平行に配置されている。
また、この実施形態では、微小溝5は、摺動方向d1に対して平行もしくは90度未満の傾斜角をもって配置されている。上記の通り、この微小溝5は潤滑流体の動圧作用を生じさせることを目的とすることから、相手部材2の相対摺動に伴い、摺動方向d1に沿った潤滑流体の流れ成分が微小溝5に生じる必要がある。そのため、摺動方向d1に直交する向きに微小溝5を配置した場合、摺動方向d1に沿った潤滑流体の流れ成分が微小溝5に生じず、相手部材2を支持するための潤滑流体膜の形成にはほとんど寄与しない。以上の点から、微小溝5が摺動方向d1に直交する場合を除いて、すなわち、摺動方向d1に対して平行もしくは90度未満の角度で傾斜する向きに配置することで、摺動方向d1に沿った潤滑流体の流れ成分が微小溝5に生じ、これにより、微小溝5に所要の動圧作用を発揮させることができる。
さらに、微小溝5と、相手部材2の摺動方向d1および帯状領域4の伸展方向d2との配向関係について見ると、微小溝5は、この実施形態では、図4に示すように、摺動面1を平面視した状態では、伸展方向d2から摺動方向d1の側に近づく向きを正とした場合、伸展方向d2に対して正の角度で傾斜している。かつ、微小溝5は、摺動方向d1に対する傾斜角が90度未満となるように配置されている。詳細には、微小溝5の長手方向d3が帯状領域4の伸展方向d2に対して成す角θ1とし、伸展方向d2から摺動方向d1に近づく向きを正とした場合、傾斜角θ1は0度よりも大きい値をとるように設定されている。同様に、微小溝5の長手方向d3が相手部材2の摺動方向d1に対して成す角θ2とした場合、傾斜角θ2は90度よりも小さい値(0度以下を含む)をとるように設定されている。この場合、傾斜角θ1は傾斜角θ2より常に大きな値を示す。
次に、微小溝5の取り得る各種寸法について述べる。微小溝5の溝深さは、上記の通り潤滑流体の動圧作用を生じ得る限りにおいて特に制限はないが、相手部材2との間で線接触を伴う場合には、潤滑流体膜の破断を可及的に防止する観点から、上記溝深さを1μm以下、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは250nm以下に設定することも可能である。微小溝5の溝深さに関しては、微小溝5が形成される摺動面1の面粗さないし平面度との関係で規定することもでき、例えば潤滑流体膜の確保の観点からは、摺動面1(摺動平面3)の表面粗さRaないし平面度が微小溝5の溝深さの値を上回ることのないように溝深さを設定することもできる。
また、微小溝5間のピッチについても特に制限はないが、この実施形態のように、相手部材2と線接触を伴って摺動する場合、その摺動領域6の摺動方向幅(接触幅)を上回ることのないよう、例えば10μm以下、好ましくは1μm以下に設定することもできる。
上記複数の微小溝5については公知の溝形成手段を採用することができるが、上述のように規則的に並列したもの、特に1μm以下の溝深さを有するものを形成する場合には、例えば加工閾値近傍の照射強度で直線偏光のレーザを摺動面1(摺動平面3のうち帯状領域4を形成すべき部分)に照射し、照射部分をオーバーラップさせながら走査することで自己組織的に形成する手段が有効である。この手段によれば、照射するレーザに含まれる入射光の波長以下の周期(ピッチ)および溝深さで複数の微小溝5を形成することができる。この場合、凹溝7が所定の溝断面形状となるようにエネルギー分布を制御した直線偏光のレーザをオーバーラップさせながら走査することで、複数の微小溝5及び凹溝7を同時に形成することができる。
次に、上記構成の摺動面構造の作用について説明する。図5は、相対摺動時における摺動面構造の作用を概念的に説明するための要部平面図である。この図に示すように、相手部材2が一方向に(図4中上方から下方に向けて)摺動する場合、帯状領域4上を相手部材2が通過した領域では、当該通過領域を構成する微小溝5を潤滑流体が図5中実線矢印の向きに流れ、その摺動方向前方側の端部5aで流体圧が立ち上がる。この動圧作用により、端部5aに隣接する摺動平面3で潤滑流体の膜が形成され、この膜で相手部材2のうち上記摺動平面3に新たに侵入した部分が非接触支持される。
上記のようにして、相手部材2が所定の方向に摺動するのに伴って、帯状領域4(微小溝5)により潤滑流体膜が形成される位置、およびこの膜により相手部材2が支持される位置が順次幅方向に移行していく。図5に基づき説明すると、摺動平面3と摺動する相手部材2の摺動面(ここでは曲面2a)上の任意の1点Bが、帯状領域4上を通過することで、微小溝5の動圧作用が生じ、その摺動方向前方側の端部5aで潤滑流体の圧力が立ち上がる。そして、この動圧作用により、B点が新たに帯状領域4から摺動方向前方側に位置する摺動平面3に侵入する位置、言い換えると、上記微小溝5の摺動方向前方側の端部5aと隣接する摺動平面3に潤滑流体の膜が形成され、この膜によりB点で相手部材2が非接触支持される。そして、相手部材2がさらに2点鎖線で示す矢印の向きに摺動して図5中下側の2点鎖線位置に到達した段階では、B点と摺動方向d1と直交する向きに離隔した位置のC点が通過した帯状領域4の微小溝5により動圧作用が生じる。そして、C点が新たに帯状領域4からその摺動方向前方側に位置する摺動平面3に侵入する位置に潤滑流体膜が形成され、この膜によりC点で相手部材2が非接触支持される。
このように、相手部材2が図4中上側の2点鎖線で示す位置から下側の2点鎖線で示す位置まで摺動する間に、帯状領域4(微小溝5)により潤滑流体の膜が形成され、この膜で非接触支持される位置は、B点からC点へと摺動方向に直交する向きに移行する。図5でいえば、帯状領域4が下方に向かうにつれて右側に移動しているので、相手部材2の支持位置も図5中右側へと移行していく。よって、上記のように摺動面構造を構成することで、相手部材2の摺動面(ここでは曲面2a)に、帯状領域4(微小溝5)を設けていない摺動平面3とのみ摺動する部分が生じるのを避けることができる。これにより、相手部材2との相対摺動を通じて、相手部材2との摺動領域6(実際の接触領域)に漏れなく潤滑流体の膜を形成して、安定した高い摩擦低減効果を得ることができる。
このような相対摺動が繰り返し行われると、摺動面1には摩耗が生じる。帯状領域4は凹溝7にて構成されているため、相手部材2の摺動により摺動面1が摩耗しても、摺動面1の表面の位置が凹溝7の溝底8の位置と同一になるまで微小溝5が摺動面に残る。このように、凹溝7を設けることにより、微小溝5が消失するまでの許容摩耗量が増加し、摩擦低減効果の寿命を長くすることができる。
また、この実施形態では、摺動平面3と摺動する相手部材2の曲面2a上の任意の1点が、摺動面1上を1方向に相対摺動する間に、摺動面1上の2ヶ所以上で帯状領域4を通過するように構成されている。言い換えると、上記のように相手部材2が帯状領域4を通過できるように、帯状領域4の伸展方向d2が摺動方向d1に対して成す角度(鋭角)が設定されている。このように構成すれば、相対摺動時に相手部材2の曲面2aと相対する微小溝5の数が、帯状領域4を通過する数の分だけ増加するので、流体圧ひいては潤滑流体膜の剛性を高める頻度を増やして、線接触により摺動領域6に荷重が集中して潤滑流体の膜が破断する事態を生じたとしても、これを僅かな時間で修復することができる。よって、動摩擦係数の変動幅を小さくすることでき、高精度かつ安定した摺動案内を実現することができる。
以上、本発明の第1実施形態を説明したが、本発明は上記例示の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において任意の形態を採ることができる。以下、本発明の他の実施形態(第2実施形態)を説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係る摺動面構造の要部平面図を示している。図6に示すように、この実施形態における摺動面構造は、相手部材12との間で相対回転摺動を生じるもので、この場合、帯状領域14は、摺動面11に直交する相手部材12の回転軸Oを中心として螺旋状に形成される。また、この実施形態では、帯状領域14は、図6に示す向きから平面視した状態では、その中心から時計回りに進むにつれて半径方向外側に拡がる向きに伸びる形態、言い換えると図6中右側に吹出した形態をなしている。また、中心部などを除き、螺旋状に形成された帯状領域14のピッチ(半径方向に隣り合う帯状領域14間の間隔)が一定の大きさに設定されている。これにより、帯状領域14の伸展方向d5が相手部材12の摺動方向d4に対してなす角(傾斜角)が、その円周方向又は半径方向位置によらず、一定の大きさに設定されている。
この帯状領域14は、第1実施形態と同様、複数の微小溝15が形成された凹溝17からなる。複数の微小溝15は何れも、帯状領域14の伸展方向d5(この場合、正確には各微小溝15の形成位置における帯状領域14の接線方向)に対して一定の傾斜角を有するように配列されている。また、この図示例では、帯状領域14の伸展方向d5(中心から時計回りに拡がっていく向き)に向かうにつれて外周側から内周側に伸びる向きに複数の微小溝15が配置されている。
次に、上記構成の摺動面構造の作用について説明する。図7は、相対回転摺動時における摺動面構造の作用を概念的に説明するための要部平面図である。この図7に示すように、相手部材12が一方向に(ここでは時計回りに)相対回転摺動する場合、帯状領域14上を相手部材12が通過した領域では、当該通過領域を構成する微小溝15を潤滑流体が図7中実線矢印の向きに流れ、その摺動方向前方側の端部15aで流体圧が立ち上がる。この動圧作用により、端部15aに隣接する摺動平面13で潤滑流体の膜が形成され、この膜で相手部材12のうち上記摺動平面13に新たに侵入した部分が非接触支持される。
上記のようにして、相手部材12が所定の方向に摺動するのに伴って、帯状領域14(微小溝15)により潤滑流体膜が形成される位置、およびこの膜により相手部材12が支持される位置が順次半径方向の外側(外周側)に移行していく。図7に基づき説明すると、摺動平面13と摺動する相手部材12の摺動面(ここでは摺動領域16を形成する曲面)上の任意の1点Dが帯状領域14上を通過することで、微小溝15の動圧作用が生じ、その摺動方向前方側の端部15aで潤滑流体の圧力が立ち上がる。そして、この動圧作用により、D点が新たに帯状領域14からその摺動方向前方側に位置する摺動平面13に侵入する位置、ここでは、帯状領域14の摺動方向前方側でかつ内周側の摺動平面13に潤滑流体の膜が形成され、この膜によりD点で相手部材12が非接触支持される。そして、相手部材12がさらに2点鎖線で示す矢印の向きに回転摺動して図7中下側の2点鎖線位置に到達した段階では、先の支持位置となるD点よりもさらに外周側の点Eが通過した帯状領域14の微小溝15により動圧作用が生じる。そして、E点が新たに帯状領域14からその摺動方向前方側に位置する摺動平面13に侵入する位置に潤滑流体の膜が形成され、この膜によりE点で相手部材12が非接触支持される。
このように、相手部材12が図7中上側の2点鎖線で示す位置から下側の2点鎖線で示す位置まで回転摺動する間に、帯状領域14(微小溝15)により潤滑流体の膜が形成され、この膜で非接触支持される位置は、D点からE点へと半径方向外側に移行する。図7でいえば、帯状領域14が下方に向かうにつれて右側に移動しているので、相手部材12の支持位置も図7中の右側へと移行していく。よって、上記のように摺動面構造を構成することで、回転軸Oまわりに摺動平面13と相手部材12とが相対回転摺動する場合であっても、上記と同様、摺動平面13上に潤滑流体の膜を漏れなく形成することができ、安定した高い摩擦低減効果を得ることができる。この場合も、帯状領域14は凹溝17にて構成されているため、微小溝15が消失するまでの許容摩耗量が増加し、摩擦低減効果の寿命を長くすることができる。また、この実施形態のように、螺旋状に配列された帯状領域14および微小溝15間のピッチをそれぞれ一定の間隔に設定することで、帯状領域14の伸展方向d5が相手部材12の摺動方向d4に対してなす角(傾斜角)が、その位置によらず、一定の大きさに設定されると共に、微小溝15の長手方向が相手部材12の摺動方向d4に対してなす角が、その位置によらず、一定の大きさに設定される。
上記複数の微小溝15についてもその形成手段は特に問わず、また、上記したレーザ照射による周期的な微小溝15の形成方法が採用できる。この場合も、凹溝17が所定の溝断面形状となるようにエネルギー分布を制御した直線偏光のレーザをオーバーラップさせながら走査することで、複数の微小溝15及び凹溝17を同時に形成することができる。また、走査態様を調整することで(例えば摺動面11を所定の角速度で回転させつつ、レーザを半径方向に沿って一定の速度で走査することで)、共に一定のピッチを有する複数の微小溝15および螺旋状の帯状領域14を形成することができる。
また、帯状領域4,14を構成する微小溝5,15の配置態様について、上記以外の形態をとることも可能である。図8は、第1実施形態の変形例を示している。すなわち、この図に示すように、伸展方向d2から摺動方向d1の側に近づく向きを正とした場合、傾斜角θ2は必ずしも正の値をとる必要は無く、負の値をとることも可能である。これは、伸展方向d2が摺動方向d1に対して成す角(鋭角)よりも傾斜角θ1およびθ2のほうが小さい場合を示している。このような配向関係にある場合でも、微小溝5はその動圧作用により摺動方向d1前方側の端部5aと隣接する摺動平面3に潤滑流体を供給することができるので、相手部材2が帯状領域4を通過して新たな摺動平面3との間で摺動を開始する点に向けて常に流体圧を高めた潤滑流体を供給できる。
帯状領域4の配置態様についても上記実施形態に限ることなく、種々の形態をとることが可能である。第1実施形態でいえば、必ずしも複数の帯状領域4を設ける必要は無く、例えば図1に示す複数の帯状領域4の端部同士を交互につなげて、互いに平行な複数の直線部と、これら直線部の両端を交互に連結する連結部とを一体に有する1本の帯状領域4とすることも可能である。逆に、図9に示すように、螺旋状を成す帯状領域14を2本もしくはそれ以上設けることも可能である。このように構成することで、摺動面11と回転摺動する相手部材12の摺動面上の任意の1点が、1回の相対回転摺動の間に第1の(1本目の)帯状領域14と、この帯状領域14と並んで螺旋状に配置された第2の(2本目の)帯状領域14’とを交互に通過することになる。そのため、第1の帯状領域14のみを配置した構成(図6を参照)と比べて、相手部材12が相対する微小溝15の数が倍増する。これにより、線接触により摺動領域16に荷重が集中して潤滑流体の膜が破断する事態を生じたとしても、これを僅かな時間で修復することができ、摩擦係数の変動幅を小さくして高精度かつ安定した摺動案内を図ることができる。
また、上記実施形態では、微小溝5,15が相手部材2,12の摺動方向d1,d4に対して傾斜した場合を例示したが、必ずしも傾斜している必要はない。例えば図2に示すように、微小溝5を有する帯状領域4の伸展方向d2が摺動方向d1に対して成す角が比較的大きい場合(例えば45度以上の場合)には、微小溝5が動圧作用を生じる限りにおいて、微小溝5の長手方向d3を摺動方向d1と一致させるように配置しても構わない。また、帯状領域4を構成する全ての微小溝5が同一の向きに揃っている必要はなく、配置態様に応じて適宜その一部の配向を異ならせても構わない。微小溝5の長手方向寸法についても同様に、全ての微小溝5の長手方向寸法が同一である必要はなく、配置態様に応じて適宜その長手方向寸法を異ならせても構わない。螺旋状の帯状領域14,14’を構成する微小溝15,15’についても同様のことがいえる。
もちろん、微小溝5の形状についても例示の態様に限定される必要はなく、例えば図示は省略するが、微小溝5を1以上の直線ないし曲線の任意の組合せにより形成するようにしても構わない。螺旋状の帯状領域14,14’を構成する微小溝15,15’についても同様のことがいえる。
凹溝27の形状としては、図10に示すような形状とすることもできる。この場合、緩斜面29a、29bは、下方に凸状となる曲率の小さい曲面にて形成されている。これにより、凹溝27は、その断面形状が扁平U字状となっている。そして、この曲面に、帯状領域の伸展方向に対して傾斜して配置される複数の微小溝5が設けられている。この場合、緩斜面29a、29bの斜度とは、その接線の傾きのうち最大のものをいい、図10では、曲面の摺動平面23側近傍の傾きである。この場合も緩斜面の斜度は、1/10〜1/250とするのが好ましい。なお、曲面は上方に凸状となっていてもよい。
以上の説明に係る摺動面構造は、線接触摺動を伴う機構にも問題なく適用できることから、例えば潤滑油等の粘性流体の介在下でカムと線接触摺動を行うバルブリフターなど、低摩擦状態が要求される種々の摺動部材に適用することができる。
もちろん、本発明に係る摺動面構造は、相手部材との間で線接触を伴う用途に限ることなく、面接触摺動や点接触摺動など他の摺動形態を有する摺動機構にも適用することができる。
また、上記以外の事項についても、本発明の技術的意義を没却しない限りにおいて他の具体的形態を採り得ることはもちろんである。
以下、本発明に係る摺動面構造の有効性を検証するための実験について述べる。
本実験は、試験片の線接触摺動を容易に実現できるバーベル試験装置を用いて行った。固定側のディスク状試験片にはSiCを使用した。回転側のバーベル状試験片にはSUJ2を使用した。固定側試験片の摺動面(正確には摺動平面)を表面粗さRa0.02μm以下、平面度0.1μm以下に仕上げた。バーベル状試験片の直径を10mm、長手方向寸法16mm、長手方向の中央に設けた逃げ部の長手方向寸法を6mmとし、摺動面は鏡面とした。ディスク状試験片には、何れもバーベル状試験片の摺動面を全て受けることができる大きさの摺動面を有し、かつ摺動面が(1)鏡面、(2)1重螺旋の帯状領域、(3)2重螺旋の帯状領域、の3種類を用意した。螺旋状の帯状領域は何れも摺動面を平面視した状態では、時計回りに外径側に拡がる形態(いわゆる右吹き出し型)をなすように形成した。帯状領域の螺旋ピッチは(2)1重螺旋の場合、205μmとした。(3)2重螺旋の場合、各帯状領域のピッチを410μmとし、かつ2本の帯状領域を等間隔に配置することで、見かけ上の螺旋ピッチを205μmとした。微小溝は、バーベル状試験片が上記時計回りに回転摺動した際、潤滑油を外周側から内周側に引き込む向き(いわゆる右吸い込み型)に形成した。これら微小溝は、約700nmのピッチで格子状に並列配置した。また、帯状領域の幅が何れも100μmとなるように長手方向寸法(約140μm)、および帯状領域の伸展方向に対する傾斜角(約45度)を設定した。微小溝の溝深さは約150nmとした。これら複数の微小溝は、直線偏光で波長800nmのフェムト秒レーザを加工閾値近傍の照射強度でディスク状試験片の摺動面に照射し、その照射部をオーバーラップさせながら走査することで、自己組織的に形成した。潤滑油(粘度グレード:VG32)を予め摺動面上に400mg供給しておき、実験中は無給油とした。
バーベル試験は、荷重を所定の値(50.5N)に固定し、静止状態からすべり速度0.54m/sで起動させた後、5分ごとにすべり速度を0.14m/sまで段階的に低下させていき、各段階における摺動トルクを測定した。すべり速度は、バーベル状試験片の平均直径(13mm)での値とした。そして測定した摺動トルクから動摩擦係数を算出した。上記試験は、(1)鏡面、(2)1重螺旋の帯状領域、(3)2重螺旋の帯状領域、の3種類全ての試験片に対して同様に実施した。
以下、実験結果について述べる。図11は、すべり速度の変動に伴う平均動摩擦係数の変化を示している。平均動摩擦係数は、所定時間の各すべり速度段階(0.14m/sから0.54m/sまでの間の各段階)における動摩擦係数の測定結果の平均値をとったもので、縦軸は平均動摩擦係数、横軸はすべり速度[m/s]をそれぞれ示している。また、同図中白ヌキ丸で示すプロットは(1)鏡面の場合の平均動摩擦係数を示し、白ヌキ四角で示すプロットは(2)1重螺旋の場合の平均動摩擦係数、白ヌキ三角で示すプロットは(3)2重螺旋の場合の平均動摩擦係数をそれぞれ示している。この図に示す実験結果を見ると、(2)1重螺旋の場合、(3)2重螺旋の場合の何れも、(1)鏡面の場合と比べて平均動摩擦係数が23%〜38%低減していることがわかる。また、(3)2重螺旋の場合に、(2)1重螺旋の場合に比べて若干大きな摩擦低減効果が見られるものの、見かけ上のピッチが共に等しいことから、動圧の発生効果に大差はなく、平均動摩擦係数にも大きな違いは見られないものと考えられる。
図12は、各すべり速度段階における(2)1重螺旋と(3)2重螺旋の場合における動摩擦係数の標準偏差の比較結果を示している。この標準偏差は、各すべり速度段階における動摩擦係数の測定結果の標準偏差をとったものである。図12中の縦軸は動摩擦係数の標準偏差、横軸はすべり速度[m/s]をそれぞれ示している。また、同図中白ヌキ四角で示すプロットは(2)1重螺旋の場合の動摩擦係数の標準偏差、白ヌキ三角で示すプロットは(3)2重螺旋の場合の動摩擦係数の標準偏差をそれぞれ示している。この図に示す実験結果を見ると、すべり速度の大きさに関らず、1重螺旋の場合に比べて2重螺旋の場合における動摩擦係数のばらつきが小さくなっている。数値的には約23%〜36%低くなっている。また、すべり速度が小さい場合にその差がより大きくなっていることがわかる。
次に、螺旋状の帯状領域を設けた場合に螺旋ピッチの違いが動摩擦係数に与える影響を、実施例1と同様の摺動試験(バーベル試験)により検証した。ここでは、摺動面が(1)鏡面であるものの他、摺動面に1重螺旋の帯状領域が設けられ、その螺旋ピッチが(2)205μm、(3)410μm、(4)820μmの4種類を用意して行った。その他の条件は全て実施例1と同様である。
以下、実験結果について述べる。図13は、バーベル試験の結果から得たもので、すべり速度の変動に伴う平均動摩擦係数の変化を示している。ここで、図13中の縦軸は平均動摩擦係数、横軸はすべり速度[m/s]をそれぞれ示している。また、図中白ヌキ丸で示すプロットは(1)鏡面の場合の平均動摩擦係数を示し、白ヌキ四角で示すプロットは(2)螺旋ピッチが205μmの場合の平均動摩擦係数、白ヌキ三角で示すプロットは(3)螺旋ピッチが410μmの場合の平均動摩擦係数、罰印で示すプロットは(4)螺旋ピッチが820μmの場合の平均動摩擦係数をそれぞれ示している。この図に示す実験結果を見ると、螺旋ピッチの大きさによらず、螺旋状の帯状領域を設けた(2)〜(4)の何れの場合においても、(1)鏡面の場合と比べて平均動摩擦係数が低減しているものの、その摩擦低減効果には相応の差があることがわかる。すなわち、全てのすべり速度段階において、螺旋ピッチが小さいほど摩擦低減効果が高まることが判明した。
次に、帯状領域を構成する凹溝の緩斜面の斜度が動摩擦係数に与える影響を、実施例1と同様の摺動試験(バーベル試験)により検証した。ここでは、摺動面が(1)鏡面、(2)螺旋の帯状領域(線幅100μm、螺旋ピッチ205μm)、(3)平均斜度が1/50の緩斜面からなる凹溝が形成された螺旋の帯状領域(線幅100μm、螺旋ピッチ205μm、溝底までの深さ1μm)、(4)平均斜度が1/10の緩斜面からなる凹溝が形成された螺旋の帯状領域、(5)平均斜度が1/250の緩斜面からなる凹溝が形成された螺旋の帯状領域を有する5種類を用意した。その他の条件は全て実施例1と同様である。
以下、実験結果について述べる。図14は、バーベル試験の結果から得たもので、すべり速度の変動に伴う平均動摩擦係数の変化を示している。ここで、図14中の縦軸は平均動摩擦係数、横軸はすべり速度[m/s]をそれぞれ示している。また、図中白ヌキ丸で示すプロットは(1)鏡面の場合の平均動摩擦係数を示し、白ヌキ四角で示すプロットは(2)螺旋の帯状領域が形成された場合の平均動摩擦係数を示し、白ヌキ三角で示すプロットは(3)平均斜度が1/50の緩斜面からなる凹溝が形成された螺旋の帯状領域が形成された場合の平均動摩擦係数をそれぞれ示している。この図に示す実験結果を見ると、平均斜度が0の場合、すなわち(2)螺旋の帯状領域が形成されている場合、(1)鏡面のディスク試験片より平均摩擦係数が25〜38%低減した。(3)平均斜度が1/50の緩斜面からなる凹溝が形成されている場合、(1)鏡面のディスク試験片より平均摩擦係数が6〜11%低減した。さらに、図示しないが、(4)平均斜度が1/10の緩斜面からなる凹溝が形成されている場合では、ほとんど摩擦低減効果が得られず、(5)平均斜度が1/250の緩斜面からなる凹溝が形成されている場合では、(2)平均斜度0とほぼ同等の摩擦低減効果があった。
(2)平均斜度が0の場合や、(5)平均斜度が1/250の緩斜面からなる凹溝が形成されている場合では、摩擦低減の初期特性は優れているが、摺動面が微小溝の深さだけ摩耗すると微小溝が消滅するため、低摩擦化の効果が消失する。また、(4)平均斜度が1/10の緩斜面からなる凹溝が形成されている場合では、凹溝が深くなって、微小溝を設けたことによる効果がほとんど見られなくなる。このため、緩斜面の斜度を1/250〜1/10の範囲で決定することにより、微小溝が消失するまでの許容摩耗量が増加し、摩擦低減効果の寿命が長くなることが判明した。
1,11,11’ 摺動面
2,12 相手部材
3,13,23 摺動平面
4,14,14’ 帯状領域
5,15,15’ 微小溝
6,16 摺動領域
7,17,27 凹溝
9,29 緩斜面
1,d4 相手部材の摺動方向
2,d5 帯状領域の伸展方向
3 微小溝の長手方向
θ1 微小溝の長手方向が帯状領域の伸展方向に対して成す角度
θ2 微小溝の長手方向が相手部材の摺動方向に対して成す角度

Claims (8)

  1. 潤滑流体の介在下で相手部材と相対摺動を行う摺動面に、
    前記相手部材の摺動方向に対して傾斜する向きに伸び、かつ、緩斜面を有する凹溝からなる帯状領域と、この帯状領域の間に、前記帯状領域の伸展方向と同一方向に伸びる摺動平面とを備え、前記緩斜面には前記帯状領域の伸展方向に対して傾斜して配置される複数の微小溝が設けられる摺動面構造。
  2. 前記緩斜面は、斜度が1/250〜1/10である請求項1の摺動面構造。
  3. 前記複数の微小溝及び凹溝は、所定の溝断面形状となるようにエネルギー分布を制御した直線偏光のレーザをオーバーラップさせながら走査して同時に形成されたものである請求項1又は請求項2の摺動面構造。
  4. 前記微小溝は、前記摺動方向に対して平行もしくは90度未満の傾斜角をもって配置されている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の摺動面構造。
  5. 前記微小溝は、平面視した状態において、前記帯状領域の伸展方向から前記摺動方向に近づく向きを正とした場合、前記帯状領域の伸展方向に対して正の角度で傾斜しており、かつ前記摺動方向に対する傾斜角が90度未満となるように配置されている請求項1〜4の何れか1項に記載の摺動面構造。
  6. 前記摺動平面は前記相手部材との間で相対回転摺動を生じ、この場合、前記帯状領域は、前記摺動平面の相対回転軸を中心として螺旋状に形成されている請求項1〜5の何れか1項に記載の摺動面構造。
  7. 前記摺動平面と摺動する前記相手部材の摺動面上の任意の1点が、2ヶ所以上で前記帯状領域と交わるように、前記摺動方向に対する前記帯状領域の伸展方向が設定されている請求項1〜6の何れか1項に記載の摺動面構造。
  8. 前記複数の微小溝は、10μm以下のピッチで形成されている請求項1〜7の何れかに記載の摺動面構造。
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