以下、本開示を実施するための一形態について、図を参照しつつ詳しく説明する。図1に示すように、本実施形態のプラズマ装置10は、プラズマヘッド11、ロボット13、制御ボックス15を備えている。プラズマヘッド11は、ロボット13の先端部に着脱可能に取り付けられている。ロボット13は、例えば、シリアルリンク型ロボット(多関節型ロボットと呼ぶこともできる)である。プラズマヘッド11は、ロボット13の先端に取り付けられた状態でプラズマガスを照射可能となっている。プラズマヘッド11は、ロボット13の駆動に応じて移動させられ、向きを変更させられる等し、3次元的に移動可能となっている。
制御ボックス15は、コンピュータを主体として構成され、プラズマ装置10を統括的に制御する。制御ボックス15は、プラズマヘッド11に電力を供給する電源部15A及びプラズマヘッド11に処理ガスを供給するガス供給部15Bを有している。電源部15Aは、電力ケーブル16や制御ケーブル18を介してプラズマヘッド11と接続されている。電源部15Aは、制御ボックス15の制御に基づいて、プラズマヘッド11の電極33(図3参照)に印加する電圧を変更する制御や、後述するヒータ43(図4参照)の温度を制御する。
また、ガス供給部15Bは、複数(本実施形態では4本)のガス供給チューブ19を介してプラズマヘッド11と接続されている。ガス供給部15Bは、制御ボックス15の制御に基づいて、後述する反応ガス(処理ガスの一例)、キャリアガス(処理ガスの一例)、ヒートガス(処理ガスの一例)をプラズマヘッド11へ供給する。制御ボックス15は、ガス供給部15Bを制御し、ガス供給部15Bからプラズマヘッド11へ供給する処理ガスの量や流速などを制御する。そして、プラズマ装置10は、制御ボックス15の制御に基づいてロボット13を動作させ、テーブル17の上に載置された被処理物Wに対してプラズマヘッド11からプラズマガスを照射する。
また、制御ボックス15は、タッチパネルや各種スイッチを有する操作部15Cを備えている。制御ボックス15は、各種の設定画面や動作状態(例えば、ガス供給状態など)等を操作部15Cのタッチパネルに表示する。また、制御ボックス15は、操作部15Cに対する操作入力により各種の情報を受け付ける。
プラズマヘッド11は、ロボット13の先端に設けられた取付板13Aに対して着脱可能に設けられている。これにより、プラズマヘッド11は、種類の異なるプラズマヘッド11に交換可能となっている。図2に示すように、プラズマヘッド11は、プラズマ生成部21、ヒートガス供給部23、ノズル35等を備えている。プラズマ生成部21は、制御ボックス15のガス供給部15B(図1参照)から供給された処理ガスをプラズマ化して、プラズマガスを生成する。また、プラズマヘッド11は、内部に設けられたヒータ43(図4参照)によってガス供給部15Bから供給された処理ガスを加熱してヒートガスを生成する。ヒートガスの温度は、例えば、600℃から800℃である。本実施形態のプラズマヘッド11は、プラズマ生成部21において生成したプラズマガスを、加熱したヒートガスとともに、図1に示す被処理物Wへ噴出する。プラズマヘッド11には、図2に示す矢印の方向に上流側から下流側へと処理ガスが供給される。なお、プラズマヘッド11は、ヒートガスを加熱するヒータ43を備えない構成でも良い。即ち、本開示のプラズマ装置は、ヒートガスを用いない構成でも良い。
図2に示すように、プラズマヘッド11の接続面11Aには、電力ケーブル16を取り付ける取付部11Bが略中央部に設けられている。また、接続面11Aの一端には、制御ケーブル18を取り付ける取付部11Cが設けられている。また、取付部11Bを間に挟んで取付部11Cとは反対側には、ガス供給チューブ19を取り付ける取付部11Dが設けられている。取付部11Dは、例えば、ガス供給チューブ19の先端に設けられた取付部材25を接続される。取付部11D及び取付部材25は、例えば、所謂ワンタッチ継手であり、ガス供給チューブ19をプラズマヘッド11に対して着脱可能に装着する。
図3及び図4に示すように、プラズマ生成部21は、ヘッド本体部31、一対の電極33、ノズル35等を含む。尚、図3は、一対の電極33及び後述する複数の本体側プラズマ通路71の位置に合わせて切断した断面図であり、図4は、図3のA-A線における断面図である。ヘッド本体部31は、耐熱性の高いセラミックにより成形されており、そのヘッド本体部31の内部には、プラズマガスを発生させる反応室37が形成されている。一対の電極33の各々は、例えば、円柱形状をなしており、その先端部を反応室37に突出させた状態で固定されている。以下の説明では、一対の電極33を、単に電極33と称する場合がある。また、一対の電極33が並ぶ方向をX方向、円柱形状の電極33の軸方向をZ方向、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向と称して説明する。
ヒートガス供給部23は、ガス管41、ヒータ43、連結部45等を備えている。ガス管41及びヒータ43は、ヘッド本体部31の外周面に取り付けられ、図4に示すカバー47によって覆われている。ガス管41は、ガス供給チューブ19(図1参照)を介して、制御ボックス15のガス供給部15Bに接続されている。ガス管41には、ガス供給部15Bから加熱用ガス(例えば、空気)が供給される。ヒータ43は、ガス管41の途中に取り付けられている。ヒータ43は、ガス管41を流れる加熱用ガスを温めてヒートガスを生成する。また、ヒータ43には、ヒータ43の加熱温度を検出するための熱電対92(図5参照)が設けられている。
図4に示すように、連結部45は、ガス管41をノズル35に連結するものである。ノズル35がヘッド本体部31に取り付けられた状態では、連結部45は、一端部をガス管41に接続され、他端部をノズル35に形成されたヒートガス通路51に接続される。ヒートガス通路51には、ガス管41を介してヒートガスが供給される。
図3及び図4に示すように、電極33の一部の外周部は、セラミックス等の絶縁体で製造された電極カバー53によって覆われている。電極カバー53は、略中空筒状をなし、長手方向の両端部に開口が形成されている。電極カバー53の内周面と電極33の外周面との間の隙間は、ガス通路55として機能する。電極カバー53の下流側の開口は、反応室37に接続されている。電極33の下端は、電極カバー53の下流側の開口から突出している。
また、ヘッド本体部31の内部には、反応ガス流路61と、一対のキャリアガス流路63とが形成されている。反応ガス流路61は、ヘッド本体部31の略中央部に設けられ、ガス供給チューブ19(図1参照)を介してガス供給部15Bと接続され、ガス供給部15Bから供給される反応ガスを反応室37へ流入させる。また、一対のキャリアガス流路63は、X方向において反応ガス流路61を間に挟んだ位置に配置されている。一対のキャリアガス流路63の各々は、一対のガス供給チューブ19(図1参照)の各々を介してガス供給部15Bと接続され、ガス供給部15Bからキャリアガスが供給される。キャリアガス流路63は、ガス通路55を介してキャリアガスを反応室37へ流入させる。図1及び図2に示す4本のガス供給チューブ19は、例えば、一対のキャリアガス流路63のそれぞれにキャリアガスを供給する2本のガス供給チューブ19と、反応ガスを供給する1本のガス供給チューブ19と、ヒートガス(加熱する前の加熱用ガス)を供給するガス供給チューブ19である。
反応ガス(種ガス)としては、酸素(O2)を採用できる。ガス供給部15Bは、例えば、反応ガス流路61を介して、酸素と窒素(N2)との混合気体(例えば、乾燥空気(Air))を、反応室37の電極33の間に流入させる。以下、この混合気体を、便宜的に反応ガスと呼び、酸素を種ガスと呼ぶ場合がある。キャリアガスとしては、窒素を採用できる。ガス供給部15Bは、ガス通路55の各々から、一対の電極33の各々を取り巻くようにキャリアガスを流入させる。
一対の電極33には、制御ボックス15の電源部15Aから交流の電圧が印加される。電圧を印加することによって、例えば、図3に示すように、反応室37内において、一対の電極33の下端の間に、擬似アークAが発生する。この擬似アークAを反応ガスが通過する際に、反応ガスは、プラズマ化される。従って、一対の電極33は、擬似アークAの放電を発生させ、反応ガスをプラズマ化し、プラズマガスを発生させる。
また、ヘッド本体部31における反応室37の下流側の部分には、複数(本実施例においては、6本)の本体側プラズマ通路71が形成されている。複数の本体側プラズマ通路71の上流側の端部は、反応室37に開口しており、複数の本体側プラズマ通路71の下流側の端部は、ヘッド本体部31の下端面に開口している。
ノズル35は、例えば、耐熱性の高いセラミックにより成形されている。ノズル35は、ボルト80により、ヘッド本体部31の下面に固定されている。このため、ノズル35は、ヘッド本体部31に着脱可能とされており、種類の異なるノズルに変更することができる。ノズル35には、上端面に開口する一対の溝81が形成されている。一対の溝81の各々は、例えば、ヘッド本体部31の下端面に開口する3本の本体側プラズマ通路71が連通している。また、ノズル35には、Z方向に貫通する複数(本実施例においては、10本)のノズル側プラズマ通路82が形成されている。ノズル側プラズマ通路82の上端には、溝81(例えば、5本ずつ)が接続されている。尚、図3及び図4に示すノズル35の形状・構造は、一例である。
また、ノズル35には、ノズル側プラズマ通路82を取り囲むように、ヒートガス用通路95が形成されている。ヒートガス用通路95の上部は、ヒートガス通路51を介して、ヒートガス供給部23の連結部45に連結されている。ヒートガス用通路95の下端は、ノズル35の下面において開口している。
このような構造により、反応室37で発生したプラズマガスは、キャリアガスとともに、本体側プラズマ通路71を経由して溝81の内部に噴出される。そして、プラズマガスは、溝81の内部において拡散し、複数のノズル側プラズマ通路82の各々を経由して、ノズル側プラズマ通路82の下端の開口82Aから噴出される。また、ガス管41からヒートガス通路51へ供給されたヒートガスは、ヒートガス用通路95を流れる。このヒートガスは、プラズマガスを保護するシールドガスとして機能するものである。ヒートガスは、ヒートガス用通路95を流れ、ヒートガス用通路95の下端の開口95Aからプラズマガスの噴出方向に沿って噴出される。この際、ヒートガスは、ノズル側プラズマ通路82の開口82Aから噴出されるプラズマガスの周囲を取り巻くように噴出される。このように、加熱したヒートガスをプラズマガスの周囲に噴出することで、プラズマガスの効能(濡れ性など)を高めることができる。
次に、制御ボックス15の詳細な構成について説明する。図5に示すように、制御ボックス15は、上記した電源部15A、ガス供給部15B、操作部15Cの他に、コントローラ100、駆動回路105、制御回路106、通信部107、漏電検出装置110、電流センサ111、記憶装置116などを備えている。コントローラ100は、不図示のCPU,ROM,RAM等を備えるコンピュータを主体として構成されている。コントローラ100は、CPUでプログラムを実行し、電源部15A、駆動回路105、ガス供給部15Bなどを制御することにより、プラズマヘッド11、ヒートガス供給部23などを制御する。尚、プログラムをCPUで実行するコントローラ100のことを、単に装置名で記載する場合がある。例えば、「コントローラ100が」という記載は、「プログラムをCPUで実行するコントローラ100が」ということを意味する場合がある。
また、コントローラ100は、制御回路106を介して、操作部15Cに接続されている。コントローラ100は、制御回路106を介して操作部15Cのタッチパネルの表示を変更する。また、コントローラ100は、制御回路106を介して操作部15Cに対する操作入力を受け付ける。また、記憶装置116は、例えば、ハードディスクドライブ、RAM、ROM等を組み合わせて構成されている。コントローラ100は、例えば、プラズマ装置10の状態に係わる状態情報118や、異常を検出した際のプラズマ装置10の状態に係わる異常状態情報119を記憶装置116に記憶する。また、コントローラ100は、プラズマ装置10の設定に係わる設定情報120、稼動時間情報121を記憶装置116に記憶する。状態情報118、異常状態情報119、設定情報120、稼動時間情報121の詳細については、後述する。
また、通信部107は、不図示のネットワークに接続する通信機器と通信を行う。通信の形態は特に限定されず、例えば、LAN、シリアル通信などである。尚、コントローラ100は、状態情報118、異常状態情報119、設定情報120、稼動時間情報121を制御ボックス15内の記憶装置116に記憶せずに、通信部107を介してネットワーク上のサーバ装置等へ記憶しても良い。
漏電検出装置110は、電源部15Aとプラズマヘッド11(電極33)を接続する電力ケーブル16の漏電電流を検出する装置である。漏電検出装置110の構成は、特に限定されない。例えば、漏電検出装置110は、電力ケーブル16をシールドする導電性のシールド部材と、シールド部材を地絡させるアースケーブルとを備え、アースケーブルに流れる漏電電流を検出する。漏電検出装置110は、検出した漏電電流の電流値をコントローラ100へ出力する。
図6に示すように、電源部15Aは、商用電源から電極33へ給電する高周波の交流電力を生成し、生成した交流電力を電極33へ給電する。電流センサ111は、電源部15Aから電極33へ電力を供給するための電力ケーブル16に流れる電流を検出する。詳しくは、電流センサ111は例えばカレントトランスを備え、カレントトランスにより検出された電力ケーブル16に流れる電流値に応じた検出電圧をAD変換し、電流値に応じたデジタル値をコントローラ100へ出力する。以下、電流値に応じたデジタル値を単に電流値と記載する場合がある。
また、ガス供給部15Bは、ガス発生装置109、複数のマスフローコントローラ112(図6中のF1~F5)、複数の圧力センサ113(図中の白色の四角)などを備えている。ガス発生装置109は、反応ガス、キャリアガス、加熱用ガスの各々を供給する供給源の装置である。ガス発生装置109は、例えば、窒素(N2)、酸素(O2)、空気(Air、乾燥空気など)を供給する。ガス発生装置109は、空気の供給源となるコンプレッサ、コンプレッサから供給される空気の湿気を取り除くためのドライヤ、乾燥空気から窒素や酸素を分離する分離装置等を備えている。尚、ガス発生装置109は、反応ガスの種ガスの酸素として、酸素を含む空気や乾燥空気を用いても良い。
ガス発生装置109は、反応ガス(酸素、窒素)、キャリアガス(窒素)、加熱用ガス(空気)のそれぞれを処理ガスとして供給する。複数のマスフローコントローラ112は、例えば、各処理ガスの各々に対応して設けられ、各処理ガスの流量を、コントローラ100の制御に基づいて制御する。各マスフローコントローラ112は、調整した後の実際に供給する流量の値(測定値)をコントローラ100に出力する。
また、複数の圧力センサ113は、各マスフローコントローラ112によって流量を調整された処理ガスの圧力値を検出する。また、圧力センサ113は、反応ガス(酸素、窒素)を混合器115で混合した混合気体の圧力値を検出する。従って、圧力センサ113は、反応ガス(種ガス)である酸素(O2)、酸素に混合する窒素(N2)、混合した後の混合気体(乾燥空気)のそれぞれの圧力を検出する。また、圧力センサ113は、一対のキャリアガス流路63の各々に接続されたガス供給チューブ19を流れるキャリアガスの圧力を、個別に検出する。また、圧力センサ113は、ガス管41へ供給する加熱用ガス(加熱する前の空気)の圧力値を検出する。各圧力センサ113は、検出した圧力値をコントローラ100に出力する。
また、図5に示すように、駆動回路105には、ヒータ43、及びヒータ43付近に取り付けられた熱電対92が電気的に接続されている。駆動回路105は、熱電対92の出力値に応じた温度をコントローラ100へ出力する。駆動回路105は、コントローラ100に指示された目標温度となるように、熱電対92の出力値に基づき、ヒータ43の加熱温度を制御する。温度センサ114は、例えば、プラズマヘッド11内に設けられている。温度センサ114は、例えば熱電対を有し、プラズマガスの温度を検出し、検出した温度をコントローラ100へ出力する。
次に、本実施形態のコントローラ100が実行する記憶処理について説明する。コントローラ100は、例えば、操作部15Cのタッチパネルを介してプラズマ処理の開始の指示を受け付けると、プラズマ発生制御を開始する。プラズマ発生制御において、コントローラ100は、電源部15Aに所定の電力を電極33に給電する制御を開始させ、ガス供給部15Bに処理ガス(キャリアガス、反応ガス、加熱用ガス)の供給を開始させる。ガス供給部15Bは、設定情報120等に基づいて、所定のガス流量及びガス圧で、処理ガスの供給を開始する。また、コントローラ100は、駆動回路105を制御して、所定の温度になるようにヒータ43の加熱温度を制御する。
また、コントローラ100は、プラズマ発生制御を開始すると、所定時間毎に、プラズマ装置10の状態に係わる状態情報118を記憶装置116に記憶する。図7は、状態情報118、異常状態情報119、設定情報120、稼動時間情報121を記憶する処理の時系列を示している。コントローラ100は、例えば、プラズマ発生制御を開始すると、1S(秒)ごとに状態情報118を記憶する。コントローラ100は、例えば、状態情報118として、漏電検出装置110で検出した漏電電流の電流値、電流センサ111から出力される電流値、ガス供給部15Bから出力される流量値、圧力センサ113から出力される圧力値、駆動回路105及び温度センサ114から出力される温度等を、1秒ごとの時刻に対応付けて記憶装置116に記憶する。コントローラ100は、例えば、1秒ごとに状態情報118を記憶し、10秒(10回)の期間T1だけ状態情報118を記憶すると、最も古い状態情報118を新たな状態情報118で上書きする。これにより、コントローラ100は、最新の10秒(期間T1)の状態情報118を履歴として残すことができる。尚、上記した状態情報118を記憶する所定時間(1秒)や、状態情報118を記憶する期間T1(10秒)は、一例である。
また、図7に示すように、コントローラ100は、プラズマ装置10に何らかの異状を検出すると、その異状を検出した際のプラズマ装置10の状態情報を異常状態情報119として記憶する。また、コントローラ100は、異常を検出した際の設定情報120や、異常を検出する時点までの稼動時間(稼動時間情報121)を記憶する。そして、コントローラ100は、異常を検出すると、異常を検出する時点から(又は直前の)10回分の状態情報118、即ち、最新の状態情報118を、異常状態情報119、設定情報120、及び稼動時間情報121に関連付けて記憶装置116に記憶する。
従って、本実施形態のコントローラ100は、漏電検出装置110等の検出値により異常を検出したことに基づいて、状態情報118と異常状態情報119とを関連付けて記憶する。コントローラ100は、異常を検出した時点から一定時間だけ前までの期間(10秒の期間T1を含む期間)に含まれる状態情報118を記憶する。
これによれば、コントローラ100は、異常を検出すると、異常時の異常状態情報119に状態情報118を関連付けて記憶する。コントローラ100は、その状態情報118として、異常を検出した時点から一定時間前までの状態情報118を記憶する。これにより、異常が発生する前に装置がどのような状態であったのかを記憶でき、異常発生時の装置の状態をより正確に把握することができる。
尚、コントローラ100が異常状態情報119と関連付けて記憶する状態情報118は、異常発生前の情報に限らない。例えば、図8に示すように、コントローラ100は、異常を検出した時点を挟む10秒間の状態情報118を、異常状態情報119に関連付けて記憶しても良い。あるいは、コントローラ100は、異常が発生した後の10秒(10回分)の状態情報118を異常状態情報119に関連付けて記憶しても良い。
また、コントローラ100は、プラズマ装置10の設定に係わる設定情報120で、且つ異常を検出した際の設定情報120を、異常状態情報119に関連付けて記憶する。プラズマガスの発生状態を判定するための閾値や処理ガスの流量など、作業者がどのような設定でプラズマ装置10を使用していたのかは、異常の原因を判断する上で重要な情報となる。このような、ユーザ側で変更可能な設定情報で、且つ異常発生時の設定情報120(図11参照)を、異常状態情報119と関連付けて記憶する。これにより、異常発生時の装置の状態をより正確に把握することができる。
コントローラ100は、例えば、装置の異常を検出すると、電極33への給電を停止し、処理ガスの供給を停止し、ヒートガス供給部23の動作を停止させ、プラズマ発生制御を終了する。これにより、プラズマ装置10のプラズマ発生は停止される。コントローラ100は、異常を検出しプラズマ発生制御を終了すると、操作部15Cの画面に検出した異常の情報を表示させる。
図9は、異常の情報を表示した操作部15Cの表示画面の一例を示している。図9に示すように、コントローラ100は、操作部15Cの表示画面141(タッチパネル)に、項目欄143、状態表示欄145、代表異常一覧147、バックボタン149、及びスクロールボタン151を表示する。項目欄143は、表示画面141に表示した画面のタイトルを示すものである。コントローラ100は、代表異常一覧147を表示する画面のタイトルとして「アラーム詳細」の文字を表示する。
また、コントローラ100は、プラズマ装置10の現在の状態を状態表示欄145に表示する。状態表示欄145に表示される状態は、例えば、起動中、初期化中、待機中、プラズマ処理中などの各種の状態である。バックボタン149は、一つ前の表示状態に戻すためのボタンである。
代表異常一覧147は、検出した異常を時系列に表示するための表示欄である。コントローラ100は、例えば、プラズマ装置10が備える各種のセンサ(漏電検出装置110、電流センサ111、マスフローコントローラ112、圧力センサ113、温度センサ114、熱電対92など)の少なくとも1つのセンサの検出値で異常を検出すると、プラズマ装置10に異常が発生したと判断する。コントローラ100は、例えば、ガス供給部15Bから供給する反応ガス、キャリアガス、加熱用ガスの流量、電源部15Aから電極33に印加する電圧値、電極33に流す電流値の少なくとも一つの値が異常を示す値になると、異常が発生したと判断する。図9及び後述する図12に示すように、コントローラ100は、例えば、プラズマ漏電異常、ガス圧力上昇異常、ガス圧力センサ異常、低電流異常、MAIN(GAS1)流量異常などを異常として検出する。プラズマ装置10が検出する異常の種類は、特に限定されない。例えば、コントローラ100は、漏電検出装置110で検出した漏電電流の電流値が、設定情報120の閾値を超えた場合、プラズマ漏電異常として判断する。また、例えば、コントローラ100は、圧力センサ113等で検出した処理ガスの圧力値が、設定情報120の閾値を超えた場合、ガス圧力センサ異常として判断する。
また、コントローラ100は、異常が発生した日時が時間順となるように代表異常一覧147に表示する。コントローラ100は、例えば、最新の異常の表示名を代表異常一覧147の最も上に表示し、代表異常一覧147の上から下に順番により古い異常の表示名を表示する。コントローラ100は、各表示名の左に、新しい異常から順番に、1,2,・・と番号を表示する。コントローラ100は、スクロールボタン151に対する操作入力に基づいて、代表異常一覧147に表示しきれない異常の表示名等を表示する。
また、コントローラ100は、複数の種類の異常を同時に検出した場合、複数の種類の異常のうち、一種類の異常を代表異常として選択して代表異常一覧147に表示する。具体的には、コントローラ100は、例えば、状態情報118を記憶する1秒のサイクルよりも短い監視サイクルで、各種センサの検出値を判定する。コントローラ100は、同一の監視サイクルで検出した複数の検出値から複数の異常を検出した場合、それらの異常を同時に発生した異常として処理する。コントローラ100は、同時に発生(検出)した複数の異常から代表異常を選択し、選択した代表異常を代表異常一覧147に表示する。また、コントローラ100は、後述する図12の表示画面167で代表異常を含む同時に発生した複数の異常をまとめて表示する。コントローラ100は、代表異常一覧147において、異なる時間に発生した代表異常の表示名を、時系列順に表示する。これによれば、複数の種類の異常が同時に発生した場合に、複数の種類の異常から代表的な異常を選択して代表異常一覧147に表示することができる。尚、本開示の同時に検出された異常とは、上記したように、2つ以上の異常を同一時間(同一タイミング)に検出したものだけでなく、例えば、1秒などの短い時間の間に連続的に検出された異常も、同時に検出された異常として取り扱っても良い。
また、複数の種類の異常から代表異常を選択する方法は、特に限定されない。例えば、プラズマ装置10のベンダー側で異常の発生頻度の統計を取り、発生頻度がより多い異常を代表異常として表示するように、プラズマ装置10に予め設定しても良い。あるいは、コントローラ100は、生産ラインなどでプラズマ装置10の実際の使用が開始されてから、その使用環境で発生した異常の種類の統計を取り、より発生頻度の高い異常、あるいは発生頻度の低い異常を代表異常として選択しても良い。また、コントローラ100は、例えば、複数の種類の異常のうち、電流の異常、ガス、熱、などの異常の種類を分け、発生した数の多い種類から代表異常を選択しても良い。
コントローラ100は、図9に示すように、表示画面141に代表異常一覧147を表示する状態で、代表異常一覧147に表示した代表異常のうち、任意の一つをタッチ操作されると、図10に示す表示画面153を操作部15Cに表示する。コントローラ100は、表示画面153の項目欄143として図9の表示画面141で選択された代表異常の番号を表示する。図10の項目欄143は、一例として、代表異常一覧147の一番目(プラズマ漏電異常)を選択した場合(アラーム1を選択した場合)を示している。
また、コントローラ100は、表示画面153に、図9で選択された代表異常(この場合はアラーム1のプラズマ漏電異常)を検出した際の異常状態情報119及び状態情報118をまとめて一覧として異常一覧部155に表示する。図10に示すように、異常一覧部155には、複数の行列で区画して異常状態情報119及び状態情報118が表示されている。
異常一覧部155の一番上には、各列の説明となる項目名が表示されている。異常一覧部155の一番上には、例えば、Time、MG1(FR)、MG2(FR)、S1(FR)、S2(FR)、H(FR)、・・・・と、複数の項目名が表示される。本実施形態では、例えば、17個の項目名が異常一覧部155に設定されている。図10には、17個の項目名のうち、6個の項目名だけが異常一覧部155に表示されている。コントローラ100は、異常一覧部155の右側のスクロールボタン157が操作されることに基づいて、表示されていない右側の項目名を表示する。
項目名がTimeの列は、一番上に異常状態情報119が表示され、その下に状態情報118の情報が表示されている。状態情報118は、異常が発生した時点の最新の10秒の情報が表示される。状態情報118は、上から順番に、最新の情報(Timeの1)、次に新しい情報(Timeの2)・・・・の順に、即ち、下に行くに従って1sごとに古い情報が表示されている。図10は、10個の状態情報118のうち、4個の状態情報118だけが異常一覧部155に表示されている。コントローラ100は、異常一覧部155の下のスクロールボタン159が操作されることに基づいて、表示されていない状態情報118(5S以前)を表示する。
また、MG1(FR)以降の項目(列)は、異常状態情報119及び状態情報118として記憶した情報を示している。MG1(FR)は、反応ガス(種ガス)の酸素(O2)に混合する窒素(N2)の流量をガス供給部15Bのマスフローコントローラ112で検出した値である。MG2(FR)は、反応ガス(種ガス)の酸素(O2)の流量をマスフローコントローラ112で検出した値である。S1(FR)は、一対のキャリアガス流路63(ガス供給チューブ19)の一方に供給するキャリアガス(窒素(N2))の流量を検出した値であり、S2(FR)は、一対のキャリアガス流路63の他方に供給するキャリアガス(窒素(N2))の流量を検出した値である。H(FR)は、ヒートガスとして用いる加熱用ガス(空気)の流量を検出した値である。
コントローラ100は、上記した情報の他に、例えば、熱電対92で検出したヒータ43の加熱温度を異常状態情報119及び状態情報118として記憶する。同様に、コントローラ100は、温度センサ114で検出したプラズマガスの温度を記憶する。また、コントローラ100は、プラズマガスを発生させる擬似アークAが消灯した(切れた)電流欠け回数を記憶する。コントローラ100は、例えば、電源部15Aから電極33に流れる電流値(電流センサ111で検出した電流値)が所定の値以上となり、擬似アークAが発生した後、電流値が所定の判定値以下になると、擬似アークAが消灯したと判断し、電流欠け回数を1つ増やす。コントローラ100は、例えば、プラズマガス発生制御を開始するごとに、電流欠け回数をリセットし、新たに電流欠け回数を計測し、状態情報118や異常状態情報119として記憶する。尚、コントローラ100は、プラズマ発生制御ごとに電流欠け回数をリセットせず、累積させて計測しても良い。
また、コントローラ100は、混合した後の反応ガス(窒素+酸素)の圧力、キャリアガス(ガス供給チューブ19ごと)の圧力、加熱用ガスの圧力を、状態情報118や異常状態情報119として記憶する。コントローラ100は、これらの圧力を圧力センサ113により検出することができる。
また、コントローラ100は、漏電検出装置110で検出した漏電電流の電流値を記憶する。例えば、電力ケーブル16のシールド部材からアースに流れる漏電電流は、プラズマを発生させるための電力供給時の電磁誘導等により流れる、即ち、電力ケーブル16に断線等が起きていない正常な電力供給において一定の電流値が流れる。そこで、コントローラ100は、正常な電力供給時の基準とする基準値、その基準値から一定の幅を有する上限値及び下限値を記憶しても良い。この上限値及び下限値は、漏電異常を判定するためのものである。尚、上記したTime、MG1(FR)から上限値、下限値までの17個の項目名は、一例であり、プラズマ装置10の構成に応じて適宜変更できる。
従って、本実施形態のコントローラ100は、図10に示すように、操作部15Cに対する操作入力(代表異常一覧147のタッチ操作)に基づいて、代表異常を検出した際の異常状態情報119及び状態情報118を行列にまとめて操作部15Cに表示する。これによれば、ユーザは、操作部15Cを操作することで、代表異常の異常状態情報119と状態情報118をまとめて表示させ確認できる。異常時の異常状態情報119や状態情報118を、時系列順に比較して異常な値がないかなど、状態の確認を容易に行うことができる。
コントローラ100は、図10に示すように、表示画面153に異常一覧部155を表示する状態で、異常一覧部155の下の装置情報ボタン161をタッチ操作されると、図11に示す表示画面163を操作部15Cに表示する。コントローラ100は、表示画面163の項目欄143として図9の表示画面141で選択された代表異常の時間情報を表示する。
また、コントローラ100は、設定情報120及び稼動時間情報121を表示画面163に表示する。図11に示すように、コントローラ100は、例えば、コントローラ100のCPUが実行するプログラム(プラズマ発生制御に用いる制御プログラム)のバージョン(Control ver.)、オペレーティングのバーション(System ver.)、を設定情報120として記憶し、表示画面163に表示する。同様に、コントローラ100は、ノズル35の着脱によるガス圧(反応ガスの圧力など)の変化を判定するための閾値であるガス圧(kPa)、プラズマガスの目標圧力(プラズマ圧力)、ヒータ43による暖機の完了を判断するための暖機完了圧力などを、設定情報120として記憶し表示する。これらの判定するための閾値や目標圧力は、ユーザによって変更可能である一方、異常の原因を判断する上で重要な情報となる。このため、コントローラ100は、異常時の閾値等を設定情報120として記憶し、表示画面163に表示する。
また、コントローラ100は、例えば、プラズマヘッド11、電極33、ノズル35、制御ボックス15の稼動時間を稼動時間情報121として記憶し、表示画面163に表示する。従って、稼動時間情報121としては、プラズマ装置10自体の稼動時間や、プラズマ装置10が備える各機器の稼動時間など、プラズマ装置10に係わる様々な稼動時間を記憶する情報として採用することができる。コントローラ100は、各機器等の稼動時間を継続して計測し、異常を検出するとそれまでの稼動時間を、稼動時間情報121として記憶装置116に記憶する。コントローラ100は、稼動時間情報121を異常状態情報119等に関連付けて記憶し、その後、表示画面163に表示する。尚、図11に示すように、コントローラ100は、プラズマヘッド11の定期的な清掃を通知する通知時間の残り時間を稼動時間情報121として表示しても良い。
また、図11に示す設定情報120及び稼動時間情報121は、一例である。コントローラ100は、例えば、ノズル35の種類を示す情報、キャリアガス等の設定流量、ヒータ43の加熱温度の設定値等を記憶し表示しても良い。コントローラ100は、表示画面163に表示しきれなかった設定情報120及び稼動時間情報121を、表示画面163の下部に表示したOKボタン165をタッチ操作されるごとに表示する。
従って、本実施形態のコントローラ100は、プラズマ装置10の設定に係わる設定情報120で、且つ代表異常を検出した際の設定情報120と、代表異常を検出した際の稼動時間情報121を記憶する。コントローラ100は、操作部15Cに対する装置情報ボタン161のタッチ操作に基づいて、設定情報120及び稼動時間情報121を操作部15Cに表示する。これによれば、ユーザは、操作部15Cを操作することで、代表異常を検出した際の設定情報120や稼動時間情報121を確認できる。異常時の装置の状態を容易にまとめて確認することができる。
そして、コントローラ100は、例えば、OKボタン165をタッチ操作されるごとに切り替えた最終画面として、図12に示す表示画面167を表示する。図11及び図12に示す例では、コントローラ100は、例えば、OKボタン165をタッチ操作されるごとに、表示画面の上の数字を、1/3、2/3、3/3と順番に増やして、3/3で表示画面167を表示する。コントローラ100は、異常一覧169を、表示画面167に表示する。コントローラ100は、例えば、図9の代表異常一覧147で選択された代表異常を異常一覧169の一番上(発生アラームの項目の下)に表示し、代表異常の下にその代表異常と同時に検出された他の異常の種類を順番に表示する(図12の低電流異常、MAIN(GS1)流量異常など)。また、コントローラ100は、同時に検出した異常の種類をすべて異常一覧169に表示できない場合、異常一覧169の右側に表示したスクロールボタン171に対するタッチ操作に応じて、表示できない他の異常の種類を表示する。コントローラ100は、表示画面167のOKボタン165をタッチ操作されると、例えば、図9に示す表示画面141を表示する。
従って、本実施形態のコントローラ100は、操作部15Cに対するOKボタン165のタッチ操作に基づいて、同時に発生した複数の種類の異常をまとめて操作部15Cに表示する。これによれば、ユーザは、操作部15Cを操作することで、代表異常の他にどのような種類の異常が同時に発生したのかを一つの表示内容で確認できる。複数の異常が同時に発生した場合に、画面表示により全ての種類の異常を容易に確認できる。また、図9~図12に示すように、ユーザは、操作部15Cを操作することで、自身が選択した代表異常に係わる情報を順番に確認でき、異常に関するあらゆる情報を、簡単な操作で確認できる。換言すれば、本実施形態のプラズマ装置10は、異常に関する様々な情報を、一元的に管理し表示することができる。
尚、上記した図9~図12に示す表示形式は、一例である。例えば、コントローラ100は、図10に示す異常状態情報119や状態情報118の値を、時間軸を横にしてグラフにより表示しても良い。
因みに、操作部15Cは、表示装置、受付装置の一例である。コントローラ100は、制御装置、異常検出装置の一例である。電源部15A、ガス供給部15B、漏電検出装置110、電流センサ111、マスフローコントローラ112、圧力センサ113、温度センサ114、及び熱電対92は、異常検出装置の一例である。
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施例の一態様では、コントローラ100は、プラズマ装置10の状態に係わる状態情報118を、所定時間ごとに記憶し、状態情報118とは別に、異常を検出した際の異常状態情報119を記憶する。これによれば、装置の状態に係わる状態情報118を所定時間ごとに記憶した情報に加え、異常を検出した際の装置の異常状態情報119を記憶することができる。これにより、異常時の状態を異常状態情報119により把握でき、異常前における状態を状態情報118により把握できる。従って、異常発生時の装置の状態をより正確に判断できる。尚、コントローラ100は、図8に示すように、異常の前後の状態情報118や異常後の状態情報118を記憶しても良い。
また、本開示の内容は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、コントローラ100は、状態情報118、異常状態情報119、設定情報120、稼動時間情報121を関連付けずに記憶しても良い。この場合、ユーザは、操作部15Cを操作して記憶装置116に記憶された別々の情報を個別に確認できる。
また、操作部15Cは、表示装置と受付装置の両方の機能を備えるタッチパネルを備えたが、表示装置と、受付装置とを別々に備えても良い。
また、上記実施形態におけるガス供給チューブ19で供給する処理ガスの種類は、一例である。例えば、処理ガスとして、酸素、窒素以外の気体を用いても良い。