JP7247469B2 - 複合シート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、本発明は、熱伝導性及び強度を両立可能な複合シートを効率的に製造し得る、複合シートの製造方法を提供することを目的とする。
なお、「粒子状炭素材料」とは、アスペクト比が10以下の炭素材料を意味する。また、「繊維状」とはアスペクト比が10超であることを意味する。さらにまた、繊維状炭素ナノ構造体の「比表面積」は、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
複合シートの密度は、実施例に記載した方法により測定することができる。
なお、粒子状炭素材料の「平均粒子径」は、レーザー回折法で測定された粒子径分布(体積基準)において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(D50)を表し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
なお、複合体の「応力緩和率」は、複合体に対して所定時間にわたって荷重を作用させた場合に、所定時間経過前後の荷重を比較して、所定時間の加圧により生じたひずみに起因する応力緩和率を指す。かかる応力緩和率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
また、本発明によれば、熱伝導性及び強度を両立可能な複合シートを効率的に製造し得る、複合シートの製造方法を提供することができる。
本発明の複合シートは、熱伝導性を有するため、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用することができる。即ち、本発明の複合シートは、放熱部材として、ヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体と共に放熱装置を構成することができる。
そして、本発明の複合シートは、粒子状炭素材料がシートの厚み方向に配列してなる構造を有するとともに、繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が400m2/g以上、粒子状炭素材料の含有質量Wp及び繊維状炭素ナノ構造体の含有質量Wtが、Wp/Wt<10を満たす限りにおいて特に限定されることなく、あらゆる製造方法に従って製造することができるが、後述する本発明の複合シートの製造方法に従って効率的に製造することができる。
本発明の複合シートは、粒子状炭素材料及び繊維状炭素ナノ構造体を含む。さらに、本発明の複合シートは、粒子状炭素材料が複合シートの厚み方向に配列してなる構造を有し、且つ、繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が400m2/g以上、粒子状炭素材料の含有質量Wp及び繊維状炭素ナノ構造体の含有質量Wtが、Wp/Wt<10を満たすことを特徴とする。本発明の複合シートでは、繊維状炭素ナノ構造体及びシートの厚み方向に配向した粒子状炭素材料により熱伝導パスが形成され、熱伝導性を呈し得るとともに、上記繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が400m2/g以上、粒子状炭素材料の含有質量Wp及び繊維状炭素ナノ構造体の含有質量Wtが、Wp/Wt<10を満たすので、シート内における粒子状炭素材料のシート厚み方向配列構造を良好に形成及び維持することができ、熱伝導性及び強度を両立することができる。
粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛を使用すれば、複合シートの熱伝導性を更に向上させることができるからである。
ここで、粒子状炭素材料として好適に使用し得る膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、市販の膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業株式会社製のEC-1500、EC-1000、EC-500、EC-300、EC-100、EC-50、EC-10(いずれも商品名)等が挙げられる。
繊維状炭素ナノ構造体としては、CNT及びカーボンナノファイバー等を挙げることができる。中でも、繊維状炭素ナノ構造体としては、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を好適に用いることができる。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、複合シートの熱伝導性及び形状保持能を一層向上させ得る。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)のみからなるものであってもよいし、多層カーボンナノチューブ(多層CNT)のみからなるものであってもよいし、単層CNTと多層CNTとの混合物であってもよいし、カーボンナノチューブ(CNT)と、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。中でも、単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体が好ましい。繊維状炭素ナノ構造体が単層CNTを含んでいれば、複合シートの熱伝導性及び形状保持能を一層高めることができる。
繊維状炭素ナノ構造体の比表面積は、400m2/g以上である必要があり、550m2/g以上であることがより好ましく、2500m2/g以下であることが好ましく、1200m2/g以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が上記下限値以上であれば、複合シートの熱伝導性及び強度を両立することができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が上記上限値以下であれば、複合シートの熱伝導性を高めることができる。
複合シート中における、粒子状炭素材料の含有質量Wpと、繊維状炭素ナノ構造体の含有質量Wtとが、Wp/Wt<10を満たす必要がある。粒子状炭素材料と繊維状炭素ナノ構造体との間の質量比が、上記条件を満たしていれば、複合シートの熱伝導性及び強度を両立することができる。その理由は明らかではないが、粒子状炭素材料の含有質量が繊維状炭素ナノ構造体の含有質量の10倍未満である場合には、繊維状炭素ナノ構造体に対して粒子状炭素材料が吸着又は付着すること等により、シートの強度が高まるとともに、シート内において厚み方向に粒子状炭素材料が良好に配列することができるようになることで熱伝導性が高まることに起因すると推察される。なお、複合シート中に含まれる粒子状炭素材料と繊維状炭素ナノ構造体との質量比は、複合シートを熱重量測定し、両者の燃焼温度の差異に基づいて分析することで、検証することができる。
本発明の複合シートは、上述したような粒子状炭素材料が複合シートの厚み方向に配列してなる構造を有する。ここで、「粒子状炭素材料が複合シートの厚み方向に配列してなる」という構造により、複合シートの厚み方向における熱伝導率が、複合シートの主面内の所定の方向における熱伝導率よりも高くなる。なお、「主面内の所定の方向」とは、複合シートの主面について熱伝導率を測定した場合に熱伝導率が最も良好となる方向をX方向として、かかる方向に対して垂直な方向をY方向とした場合の、Y方向を意味する。複合シートが「粒子状炭素材料が複合シートの厚み方向に配列してなる」という構造を有するか否か、という点は、複合シートについて、実施例に記載したような方法に従って主面方向(X方向,Y方向)と厚み方向についてそれぞれ熱伝導率を測定し、厚み方向の熱伝導率がY方向の熱伝導率よりも有意に高いか否かを確認することによって判断することができる。なお、「厚み方向の熱伝導率がY方向の熱伝導率よりも有意に高い」とは、厚み方向の熱伝導率がY方向の熱伝導率の1.5倍以上であることを意味する。勿論、複合シートの厚み方向に沿う断面を、SEM等を用いて拡大観察することによっても、定性的に上記構造を有する点は判断することができるが、上記したような「Y方向」及び厚み方向における熱伝導率をそれぞれ測定することによって、上記構造の有無を定量的に判定することができる。
複合シートの密度は、0.60g/cm 3 以下であることが好ましく、0.55g/cm 3 以下であることがより好ましく、0.35g/cm 3 以下であることが更に好ましい。複合シートの密度が上記上限値以下であれば、複合シートが充分に軽量であり、軽量性が必要とされる種々の用途に好適に適用することができる。また、複合シートの密度の下限値は、通常、0.30g/cm 3 以上であり得る。
複合シートの厚みは、1.0mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であることがより好ましい。また、複合シートの厚みは、0.1mm以上であり得る。複合シートの厚みが上記上限値以下であれば、発熱体及び放熱体の間に複合シートを介在させる必要が生じた場合に、複合シートを介した発熱体及び放熱体の間の熱移動を容易とすることができる。また、複合シートの厚みが上記下限値以上であれば、シートの強度を高めて取り扱い性を高めることができる。
複合シートの熱伝導率は、厚み方向で、0.30W/m・K以上であることが好ましく、0.40W/m・K以上であることがより好ましい。厚み方向における熱伝導率が上記下限値以上であれば、熱伝導シートとして機能させることが可能である。
複合シートの主面方向における熱伝導率は、例えば、主面内にて最大熱伝導率を呈しうる方向であるX方向にて0.5W/m・K以上であり、X方向に対して垂直な方向であるY方向にて0.2W/m・K以上であり得る。なお、主面方向における熱伝導率の上限は特に限定されないが、例えば、X方向にて1.5W/m・K以下であり、Y方向にて0.6W/m・K以下でありうる。
本発明の複合シートは、本発明の複合シートが奏すべき効果を損なわず、且つ、粒子状炭素材料が複合シートの厚み方向に配列してなる構造を維持し得る限りにおいて特に限定されることなく、他の無機材料等の成分を含んでいても良い。他の無機材料としては、特に限定されることなく、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び酸化チタン等が挙げられる。これらは一種を単独で、或いは複数種を混合して用いることができる。
また、本発明の複合シートは、本発明の複合シートが備えるべき必須の属性を損なわない限りにおいて、当該複合シートに対して所望の属性を付与するための任意の添加剤を含有していても良い。
本発明の複合シートの製造方法は、分散媒中に粒子状炭素材料及び繊維状炭素ナノ構造体が所定割合で配合されてなる分散液を得る分散液調製工程と、得られた分散液をろ過してろ過物を得るろ過工程と、得られたろ過物から分散媒を除去して複合体を得る除去工程と、得られた複合体を高さ方向に対して45°以下の角度でスライスして複合シートを得るスライス工程と、を含むことを特徴とする。かかる本発明の複合シートの製造方法によれば、熱伝導性及び強度を両立可能な複合シートを効率的に製造することができる。さらに、本発明の複合シートの製造方法において、分散液調製工程の前に、繊維状炭素ナノ構造体を繊維分散用分散媒に対して分散して繊維分散液を得る予備分散工程を行っても良い。
以下、各工程について詳述する。
予備分散工程では、分散液調製工程に先立って、繊維状炭素ナノ構造体を繊維分散用分散媒に対して分散して繊維分散液を得る。なお、繊維分散液を調製するに当たり、任意の添加剤を添加しても良い。分散方法は特に限定されないが、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高める観点から、溶媒に対して繊維状炭素ナノ構造体を添加して成る粗分散液を、キャビテーション効果が得られる分散処理又は解砕効果が得られる分散処理に供することにより、繊維分散液とすることが好ましい(例えば、特開2017-183679号公報参照)。
分散液調製工程では、粒子状炭素材料をWp質量部と、比表面積が400m2/g以上である繊維状炭素ナノ構造体をWt質量部と、分散媒とを含む分散液を調製する。ここで、Wp及びWtが、Wp/Wt<10を満たすことを必要とする。分散液を調製するに当たり、繊維状炭素ナノ構造体として、上記予備分散工程にて調製した繊維分散液中に含有される繊維状炭素ナノ構造体を添加しても良いし、乾燥状態の繊維状炭素ナノ構造体を直接添加しても良い。好ましくは、上記予備分散工程にて調製した繊維分散液中に含有される繊維状炭素ナノ構造体を添加する。
ろ過工程では、分散液を、ろ材により隔てられた一次領域側から二次領域側に通過させて、ろ材のろ過面上にろ過物を堆積させる。ろ過物は、ろ材のろ過面に沿う底面を有するとともに、該底面の法線方向を高さ方向とする形状を有する。ろ材としては、特に限定されることなく、ろ紙、メソポーラスシリカシート及び金属メッシュ等の既知のろ材を挙げることができる。なお、「一次領域側」とは、分散液をろ材に対して供給する側であり、「二次領域側」とは、ろ材を通過したろ過液が移行する側である。そして、ろ過物は一次領域側から二次領域側に向かう方向であるろ過方向に沿って、ろ材のろ材面上に堆積する。なお、ろ過方向は、通常、ろ材の主面であるろ過面の法線方向に一致する方向であり得る。
除去工程では、ろ過工程で得られたろ過物から分散媒を除去して複合体を得る。除去方法としては、特に限定されることなく、自然乾燥、減圧乾燥、及び加熱乾燥等が挙げられる。例えば、乾燥条件は、40℃以上200℃以下、乾燥時間は1分以上3日以内とすることができる。
スライス工程では、複合体を、高さ方向に対して45°以下の角度でスライスし、複合シートを得る。なお、複合体の高さ方向は、ろ過物の高さ方向に一致し、複合体の底面は、ろ過物の底面に一致する。複合体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、マルチワイヤーソー法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、複合シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、複合体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、例えば、複合体を押圧して固定するための金属板等の固定具と、両刃の切断刃を有するスライス部材と、を備え、固定具により複合体を押圧状態としつつ切断方向に切断刃を動かすことで複合体をスライスする、スライサーを用いることができる。
そして、実施例及び比較例において、分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径、複合シートの厚み、複合体の応力緩和率、複合体のアスカーC硬度は、下記のようにして測定した。また、実施例及び比較例に従って得られた複合シートの密度、形状保持能、熱伝導率、及び強度は、下記のようにして測定又は評価した。
実施例、比較例において、予備分散工程で調製した繊維分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径は、動的光散乱法を用いたレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、「LA-960」)を用いて測定された粒子径分布(体積基準)において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(D50)とした。
実施例、比較例で作製した複合シートの厚みは、膜厚計(ミツトヨ社製、製品名「デジマチックインジケーター ID-C112XBS」)を用いて測定した。そして、各シート表面上の任意の箇所5点について測定し、測定値の平均値を各シートの厚み(mm)とした。
プローブタック試験機(レスカ社製、「TAC1000」)を使用して、複合体の応力緩和率を測定した。直径10mmのフラットな形状のプローブ先端を複合体の表面(底面に対向する対向面(上面))に押付け、徐々に荷重を増加させ、荷重が0.5N(50gf)の荷重になった時点で荷重の増加を停止し、10秒間保持した。押付けた際の最大荷重をA、10秒間保持した後の荷重をBとした時、下記式(II)で緩和率を求めた。
応力緩和率[%]=(A-B)/A×100 ・・・(II)
<複合体のアスカーC硬度>
複合体のアスカーC硬度を日本ゴム協会規格(SRIS)のアスカーC法に準拠し、硬度計(高分子計器社製、商品名「ASKER CL-150LJ」を使用して温度23℃で測定した。
具体的には、複合体を23℃で保たれた恒温室に48時間以上静置したものを試料としてアスカーC硬度を測定した。そして、指針が95~98となるようにダンパー高さを調整し、試料の真上方向からダンパーを落とし、試料とダンパーとが衝突してから20秒後の硬度を5回測定して、その平均値を試料のアスカーC硬度とした。なお、「試料の真上方向」とは複合体の上面の法線方向に一致する方向である。
実施例、比較例で調製した複合シートについて、自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER-H」)を用いて密度(g/cm3)を測定した。
<形状保持能>
実施例、比較例で作製した複合シートを目視で確認し、下記に従い形状を判定した。複合体が過度に剛直である場合(即ち、上記の方法に従って測定される応力緩和率の値が大きい場合等)、或いは複合体の強度が不十分である場合等には、複合体をスライスして得られた複合シートにて条片に由来する裂けが発生することがある。尚、裂けとは亀裂が背面まで達した状態のことを指し、背面に達しない(即ち、複合シートの主面を貫通しない)欠損は、裂けとは定義しないものとする。
A:複合シートの面内に1mm以上の裂けが存在しない。
B:複合シートの面内に1mm以上2mm以下の裂けが存在する。
C:複合シートの面内に2mm超の裂けが存在する。
<熱伝導率>
実施例、比較例で作製した複合シートの主面内のX方向及びY方向、並びに厚み方向(以下、「Z方向」とも称する)について、それぞれ、熱拡散率α(m2/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)及び比重ρ(g/m3)を以下の方法で測定した。主面内における測定方向であるX方向及びY方向を定めるに当たり、実施例1~5、及び比較例4では、スライス工程に処する前の複合体の高さ方向に一致する方向を「Y方向」とし、かかるY方向に対して垂直な方向を「X方向」とした。
また、比較例1の複合シートについては、直交する任意の2つの方向をそれぞれX方向及びY方向とした。
[熱拡散率]
熱物性測定装置(株式会社ベテル製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用してX方向、Y方向、及びZ方向の熱拡散率を測定した。
[定圧比熱]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下における比熱を測定した。
[比重]
<複合シートの密度>の欄に記載した方法で測定した密度(比重)の値を用いた。
そして、得られた測定値を用いて下記式(I):
λ=α×Cp×ρ ・・・(I)
に代入し、複合シートのX方向、Y方向、及びZ方向の熱伝導率λ(W/m・K)を求めた。
<複合シートの強度>
実施例、比較例で作製した複合シートを10mm×30mmの長方形サイズで打ち抜き、試験体を得た。この時、長方形の短辺がスライス前の複合体の高さ方向に一致するような向きとした。得られた試験体について、小型卓上試験機(日本電産シンポ社製、型番「FGS-500TV」、デジタルフォースゲージとしてFGP-50を使用)を用い、引張り方向を長方形の長軸方向、引張り速度を500mm/分、チャック間距離を15mmとして、引張り試験を行った。試験により得られた最大引張り強度の値(単位:N)を、試験体の短軸方向の断面積(単位:mm2)で除した値を、複合シートの強度(N/mm2=MPa)として算出した。
<単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の調製>
国際公開第2006/011655号の記載に従って、スーパーグロース法によってCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を得た。以下、かかるCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体をSGCNTと称する。
得られた繊維状炭素ナノ構造体はBET比表面積が600m2/gであった。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に選択した100本の繊維状炭素ナノ構造体の長さ及び直径を測定し、アスペクト比が10超であることを確認した。また、得られた繊維状炭素ナノ構造体は、主に単層CNTにより構成されていた。なお、BET比表面積は、「BELSORP(登録商標)-mini」(日本ベル社製)を用いて測定した。
<予備分散工程>
500mg(0.5g)のSGCNTを繊維分散用分散媒としてのメチルエチルケトン2L中に投入し、ホモジナイザーにより2分間撹拌して粗分散液を調製した。
次に、得られた粗分散液を、直径0.5mmの細管流路を備えた湿式ジェットミル(株式会社常光製、JN20)に100MPaの圧力で2サイクル通過させ、SGCNTをメチルエチルケトン中に分散させて濃度0.25質量%のSGCNT分散液(繊維分散液)を得た。なお、上記に従って繊維状炭素ナノ構造体としてのSGCNTの平均粒子径を測定したところ、60μmであった。
<分散液調製工程>
予備分散工程で得られた繊維分散液に対し、粒子状炭素材料として膨張化黒鉛(伊藤黒鉛社製、「EC‐100」、平均粒子径:150~200μm、アスペクト比:10以下)を2g添加し、ホモジナイザーにより2分間撹拌して、粒子状炭素材料の含有質量Wpと繊維状炭素ナノ構造体の含有質量Wtとが、Wp/Wt=4を満たす分散液を得た。
<ろ過工程>
分散液調製工程で得られた分散液400gをろ過装置としてのキリヤマ漏斗(桐山製作所製)、及びろ材としてのキリヤマろ紙(No.5A、直径3cm)を用いて減圧ろ過し、ろ過物を得た。
<除去工程>
ろ過工程で得られたろ過物を、温度80℃の雰囲気下で60分間乾燥させて円柱状の複合体を得た。
<スライス工程>
その後、スライスに必要な長さを残して、得られた円柱状の複合体の上面の全体を金属板で押え、複合体の高さ方向に(即ち、上から)0.1MPaの圧力をかけて、複合体を固定した。なお、複合体の側面、背面の固定は行わなかった。このとき、複合体の温度は25℃であった。
次いで、サーボプレス機(放電精密加工研究所製)のプレス部分に、図1に示す形状の切断刃10(両刃、刃角:20°、刃部の最大厚み:3.5mm、材質:超鋼、ロックウェル硬度:91.5、刃面のシリコン加工:なし、全長:200mm)を取り付け、スライス速度200mm/秒、スライス幅100μmの条件で複合体の高さ方向(換言すれば、底面の法線に一致する方向に)にスライスして、縦30mm×横20mm×厚み0.50mmの複合シート30を得た。なお、スライス時の切断刃の姿勢は、図1に示す角度αが10°になり、刃面11の延在方向が複合体20のスライス面21と平行な方向になる姿勢とした。なお、図1に概略図示する複合体40は、複合体の高さ方向に対して交差する方向に配向した繊維状炭素ナノ構造体41と、図示しないが繊維状炭素ナノ構造体41と同様の方向に沿って配向した粒子状炭素材料を含んでなる。なお、図1にて、繊維状炭素ナノ構造体41は明瞭のために概略的に示したに過ぎず、実際の複合体内における分布態様等は、図示の態様に全く限定されるものではない。
上記に従って得られた複合シートについて、上記に従って各種評価及び測定等を行った。結果を表1に示す。
<分散液調製工程>において、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛社製、「EC‐100」、平均粒子径:150~200μm)の配合量を1gに変更した以外は実施例1と同様にして複合シートを得て、各種評価及び測定等を行った。結果を表1に示す。
<分散液調製工程>において、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛社製、「EC‐100」、平均粒子径:150~200μm)の配合量を3gに変更した以外は実施例1と同様にして複合シートを得て、各種評価及び測定等を行った。結果を表1に示す。
<分散液調製工程>において、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛を(伊藤黒鉛社製、「EC‐300」、平均粒子径:50μm、アスペクト比:10以下)に変更した以外は実施例1と同様にして複合シートを得て、各種評価及び測定等を行った。結果を表1に示す。
<分散液調製工程>において、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛を(伊藤黒鉛社製、「EC‐1500」、平均粒子径:7μm、アスペクト比:10以下)に変更した以外は実施例1と同様にして複合シートを得て、各種評価及び測定等を行った。結果を表1に示す。
<ろ過工程>においてろ過する分散液の量を12gに変更して、実施例1と同条件で除去工程まで実施し、高さ0.5mmの複合体(直径約3cm)を得た。かかるシート状の複合体を用いて、実施例1と同様にして、形状保持能以外について各種評価及び測定等を行った。結果を表1に示す。
<分散液調製工程>において、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛を(伊藤黒鉛社製、「EC‐1500」、平均粒子径:7μm)に変更し、更に、配合量を5gに変更した以外は実施例1と同条件で除去工程まで実施し、複合体を得た。得られた複合体について、実施例1と同条件でのスライス工程を実施することを試みたが、スライス時にばらばらになり、複合シートを形成することができなかった。
<予備分散工程>にて、SGCNTの代わりに比表面積の小さな多層CNT(MWCNT、KUMHO PETROCHEMICAL社製、商品名「K-NANO」、平均繊維径:13nm、平均繊維長:30μm、BET比表面積:266m2/g、アスペクト比:10超)を用い、且つ、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛社製、「EC‐100」、平均粒子径:150~200μm)の配合量を1gに変更した以外は、実施例1と同様にして、除去工程まで実施した。しかし、除去工程において、ろ過物が大幅に収縮してしまい、円柱形状の複合体を得ることができなかった。従って、スライス工程以降の工程を実施することができず、複合シートを得ることが出来なかった。
<分散液調製工程>において、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛社製、「EC‐100」、平均粒子径:150~200μm)の配合量を5gに変更した以外は実施例1と同様にして複合シートを得て、各種評価及び測定等を行った。結果を表1に示す。
また、本発明によれば、熱伝導性及び強度を両立可能な複合シートを効率的に製造し得る、複合シートの製造方法を提供することができる。
11 刃面
20 複合体
21 スライス面
30 複合シート
40 複合体
41 繊維状炭素ナノ構造体
Claims (5)
- 粒子状炭素材料及び繊維状炭素ナノ構造体からなる複合シートであって(ただし、樹脂を含有する場合を除く)、
前記粒子状炭素材料が前記複合シートの厚み方向に配列してなり、
前記繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が、400m2/g以上であり、
前記粒子状炭素材料の含有質量Wp及び前記繊維状炭素ナノ構造体の含有質量Wtが、Wp/Wt<10を満たし、
前記粒子状炭素材料の平均粒子径が7μm以上200μm以下であり、
前記複合シートの密度が0.60g/cm3以下である、
複合シート。 - 粒子状炭素材料及び繊維状炭素ナノ構造体からなる、密度が0.60g/cm3以下である複合シート(ただし、樹脂を含有する場合を除く)の製造方法であって、
平均粒子径が7μm以上200μm以下である粒子状炭素材料をWp質量部と、比表面積が400m2/g以上である繊維状炭素ナノ構造体をWt質量部と、分散媒とを含む分散液を調製する分散液調製工程であって、前記Wp及びWtが、Wp/Wt<10を満たす、分散液調製工程と、
前記分散液を、ろ材により隔てられた一次領域側から二次領域側に通過させて、前記ろ材のろ過面上に、前記ろ過面に沿う底面を有するとともに、該底面の法線方向を高さ方向とするろ過物を得るろ過工程と、
前記ろ過物から前記分散媒を除去して、複合体を得る除去工程と、
前記複合体を高さ方向に対して45°以下の角度でスライスして複合シートを得るスライス工程と、
を含む、複合シートの製造方法。 - 前記分散液調製工程の前に、前記繊維状炭素ナノ構造体を繊維分散用分散媒に対して分散して繊維分散液を得る予備分散工程を更に含み、
前記予備分散工程にて、前記繊維分散液中における前記繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径を10μm以上90μm以下とする、
請求項2に記載の複合シートの製造方法。 - 前記複合体の応力緩和率が90%以上99%以下である、請求項2又は3に記載の複合シートの製造方法。
- 前記複合体のアスカーC硬度が55以上90以下である、請求項2~4の何れかに記載の複合シートの製造方法。
Priority Applications (1)
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