JP7247038B2 - 被覆導体およびその製造方法 - Google Patents
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図1は、直径Dの導線1に、幅Wの帯状の絶縁被覆材3を螺旋状に巻きつけた被覆導体の斜視図である。本発明の被覆導体は、導線1の延在方向(A-A線に沿った方向)と、絶縁被覆材3のコア層としての絶縁フィルムの分子配向軸pが(略)平行であることを1つの特徴とする。
帯状の被覆材3(以下、単に「絶縁テープ」とも記載する)を導線1の外周に螺旋状に巻きつけて、被覆導体を作製する。絶縁テープの巻きつけは、一般的な被覆導線の作製と同様の手順により実施すればよい。図1に示すように、螺旋のn周目の絶縁テープ31上の一部に、n+1周目の絶縁テープ32の一部が重なるように巻きつけることが好ましい。
Rp(%)=100×Q/W
πD×cosθ=W-Q=W×(1-Rp/100)
上記のように、絶縁被覆材(絶縁テープ)3は、絶縁フィルムを含み、好ましくは絶縁フィルムの少なくとも一方の面に接着層を備える。
絶縁フィルムとしては、種々のポリマー材料からなるフィルムを用いることができる。絶縁フィルムはフィラーを含んでいてもよい。フィラーの材料としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母等が挙げられる。
ポリイミドフィルムの作製方法は特に限定されないが、一般には、前駆体としてのポリアミド酸を膜状に形成した後、ポリアミド酸を脱水環化(イミド化)することにより得られる。ポリアミド酸は、通常、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物(以下、単に「酸二無水物」と記載する場合がある)とを、実質的に等モル量で有機溶媒中に溶解させ、重合することにより得られる。
ポリマーフィルムにおける分子の配向の程度を表す指標として、分子配向度(Molecular Orientation Ratio:MOR)がある。MORは、マイクロ波方式の分子配向計を用いて測定する。接着層を形成後の被覆材における絶縁フィルムの分子配向度を測定する場合は、接着層を除去して絶縁フィルム単体で測定を行う。
MOR_c=(tc/t)×(MOR-1)+1
tは試料の厚み、tcは基準厚みである。
絶縁被覆材の接着層の材料は、導線と絶縁フィルムとの接着性を向上できるものであれば特に限定されない。ヒートシールにより接着性を向上可能であることから、熱可塑性樹脂が好ましく、中でも、絶縁性および耐薬品性等の観点から、フッ素樹脂が好ましい。
被覆導体は、各種の電線やケーブル等に用いられる。本発明の被覆導体は、耐摩耗性に優れるため、航空宇宙用の電線・ケーブル等としても有用である。
<ポリイミドフィルムの分子配向軸および分子配向度>
マイクロ波方式分子配向計(王子計測機器製「MOA-6015」)を用いてポリイミドフィルムの分子配向度(MOR)および配向角(φ)を求めた。ポリイミドフィルムの厚みtと基準厚みtc=75μmから、下記式に基づいて、基準厚み75μmで規格化した分子配向度MOR_cを算出した。
MOR_c=(tc/t)(MOR-1)+1
スクレープ摩耗試験機(WELLMAN製「REPEATED SCRAPE ABRASION TESTER(CAT.158L238G1)」を用い、英国規格協会航空機部品仕様(British Standard Institution Aerospace Series)「BS EN3475-503」に則って、被覆導体の摩耗試験を実施した。5回の試験値の平均値を被覆導体の耐磨耗回数とした。
<ポリイミド前駆体の調製>
重合容器にジメチルホルムアミド(DMF)を326.0kg投入し、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP):14.7kg、4,4’-オキシジアニリン(ODA):6.6kg、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA):9.8kg、およびピロメリット酸二無水物(PMDA):6.9kgを順に添加した後、50分間攪拌して溶解させた。その後、パラフェニレンジアミン(PDA):7.5kg、およびPMDA:15.6kgを添加し、1時間攪拌して溶解させた。別途調整しておいたPMDAのDMF溶液(7wt%)を上記反応液に徐々に添加し、23℃における粘度が2400ポイズに達したところで添加を止め、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸溶液)を得た。
上記のポリイミド前駆体に、下記の量の無水酢酸(化学脱水剤)およびイソキノリン(触媒)を添加し、さらに、DMFを添加して固形分濃度10wt%のワニスを調製した。
無水酢酸:ポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して2.7モル
イソキノリン:ポリアミド酸のアミド酸ユニット1モルに対して0.6モル
ポリイミドフィルムの両面に、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)の水性ディスパージョンを塗布し、150℃で65秒乾燥した後、410℃で15秒間焼成して、ポリイミドフィルムの両面のそれぞれに、厚み約2μmのFEP層が設けられた積層体を得た。この積層体を、幅5.0mmの帯状にスリットして、絶縁テープを得た。
直径0.8mmの導線(Phelps doges製「High performance conductor Nickel coated copper」(AWG:20、CONST:19/32))に、絶縁テープの重なり幅Qが2.5mm、重なり率Rpが50%(2重巻き)となるように、巻きつけ角度θ=28°で上記の絶縁テープを螺旋状に巻きつけて、被覆導体を作製した。導線の延在方向とポリイミドフィルムの分子配向軸とのなす角度ωは4°であった。
ポリイミドフィルムの作製において、ゲルフィルムを20℃から100℃の範囲で段階的に加熱しながら搬送する際の左右のテンターの走行速度差を表1に示すように変更した。さらに、テープのスリット幅W、および巻きつけ角度θを表1に示すように変更した。比較例4では、ポリイミドフィルムの作製において、ダイスからのワニスの吐出量を実施例1の60%に低減して厚みを調整し、被覆導体の作製において、絶縁テープの重なり率Rpが66.7%(3重巻き)となるように、巻きつけ角度θを調整した。これらの変更点以外は実施例1と同様にして被覆導体を作製した。
ポリイミドフィルムの作製において、ゲルフィルムを20℃から100℃の範囲で段階的に加熱しながら搬送する際に、左右のテンターの走行速度差を表1に示すように変更するとともに、左右のテンター間の距離を4%縮めた。さらに、テープのスリット幅W、および巻きつけ角度θを表1に示すように変更した。実施例7では、ポリイミドフィルムの作製において、ダイスからのワニスの吐出量を実施例1の70%に低減して厚みを調整し、被覆導体の作製において、絶縁テープの重なり率Rpが66.7%(3重巻き)となるように、巻きつけ角度θを調整した。これらの変更点以外は実施例1と同様にして被覆導体を作製した。
ポリイミドフィルムの作製において、ゲルフィルムを20℃から100℃の範囲で段階的に加熱しながら搬送する際に、左右のテンターの走行速度差を設けず、左右のテンター間の距離を18%拡げて、幅方向に延伸した。それ以外は実施例1と同様にして被覆導体を作製した。
上記の実施例および比較例におけるポリイミドフィルム(ゲルフィルム)の延伸条件、ポリイミドフィルムの特性、被覆導体の作製条件、および耐摩耗性の評価結果を、表1に示す。
3 絶縁被覆材(絶縁テープ)
Claims (8)
- 第一方向に延在する導線の外周に帯状の絶縁被覆材を螺旋状に巻きつけた被覆導体であって、
前記絶縁被覆材は絶縁フィルムを含み、
前記絶縁フィルムの分子配向軸と前記絶縁被覆材の長手方向とのなす角度φが10°~80°であり、前記絶縁フィルムの分子配向軸と前記第一方向とのなす角度ωが10°以下である、被覆導体。 - 前記絶縁フィルムがポリイミドを含む、請求項1に記載の被覆導体。
- 前記絶縁フィルムの基準厚み75μmで規格化した分子配向度MOR_cが、1.3以上である、請求項1または2に記載の被覆導体。
- 前記絶縁被覆材は、前記絶縁フィルムの少なくとも一方の主面上に接着層を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の被覆導体。
- 前記接着層がフッ素樹脂を含む、請求項4に記載の被覆導体。
- 第一方向に延在する導線の外周に帯状の絶縁被覆材を螺旋状に巻きつける被覆導体の製造方法であって、
前記絶縁被覆材は絶縁フィルムを含み、前記絶縁フィルムの分子配向軸と前記絶縁被覆材の長手方向とのなす角度φが10°~80°であり、
前記絶縁フィルムの分子配向軸と前記第一方向とのなす角度ωが10°以下となるように、前記導線の外周に前記絶縁被覆材を巻きつける、被覆導体の製造方法。 - 前記絶縁被覆材の前記絶縁フィルムは、搬送方向と分子配向軸とのなす角度が10°~80°である斜め延伸フィルムを、搬送方向と平行にスリットしたものである、請求項6に記載の被覆導体の製造方法。
- 前記絶縁被覆材の前記絶縁フィルムは、搬送方向と平行または直交する方向に分子配向軸を有するフィルムを、搬送方向に対して10°~80°の方向に沿ってスリットしたものである、請求項6に記載の被覆導体の製造方法。
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JP2014199270A (ja) | 2013-03-29 | 2014-10-23 | コニカミノルタ株式会社 | 光学フィルムの製造方法 |
WO2014192733A1 (ja) | 2013-05-31 | 2014-12-04 | 株式会社カネカ | 絶縁被覆材料及びその利用 |
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