JP7246630B2 - 防滑剤組成物、その付与方法及び防滑紙 - Google Patents
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Description
その中でも、梱包用紙は、物的流通の分野において、製品を梱包するために用いられている。
そして、梱包された梱包製品は、自動車、鉄道、航空機、船舶等の輸送用機器により搬送される。
このような梱包製品の横滑りを防止する対策の一つとして、梱包用紙に付与する防滑剤組成物が開発されている。
また、鎖状シリカと結着剤とを含有する防滑層形成用の塗料(防滑剤組成物)が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、基紙の少なくとも片面に塗工液が塗布され、 塗工液は、高分子化合物と、バインダと、防滑剤とを少なくとも含み、高分子化合物は、スルホン酸エステル化合物からなる特殊高分子化合物とポリエチレンワックスの水系乳化体であり、防滑剤(防滑剤組成物)は少なくともシリカを含む紙又は板紙が知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、ポリビニルアルコールおよび水の存在下で、ラジカル重合性の単官能性ビニルモノマーおよび多官能性ビニルモノマーを乳化重合して得られる水性樹脂を含有する防滑剤用樹脂(防滑剤組成物)が知られている(例えば、特許文献4参照)。
その上、ポリビニルアルコールを含む上記特許文献4の防滑剤組成物は、ポリビニルアルコールが水溶性であるため、雨等により流出する恐れがある。そのため、耐久性についても十分とはいえない。
また、(2)梱包用紙の抄紙工程で付与して用いられる防滑剤組成物であって、アルミナ微粒子と、湿潤剤と、結着剤と、分散安定化剤とを含有し、アルミナ微粒子の最大粒径が5~1000nmであり、湿潤剤が、分子内に水酸基を複数有する分子量2000以下の水溶性化合物であり、アルミナ微粒子1質量部に対する分散安定化剤の配合量が0.005~0.8質量部である防滑剤組成物に存する。
したがって、当該防滑剤組成物が付与された梱包用紙を用いた梱包製品は、搬送中における横滑りが抑制される。その結果、搬送中の荷崩れを抑制することができる。
このように、アルミナ微粒子が防滑性を大幅に向上させる理由については定かではないが、表面に付着したアルミナ微粒子が摩擦抵抗を増大させるためと考えられる。
そして、防滑剤組成物は、適量の結着剤も有しているので、アルミナ微粒子を、梱包用紙の内部に侵入した状態で結着させることができる。
これらのことにより、防滑剤組成物においては、雨等により、アルミナ粒子が流出することを抑制できる。
したがって、上記防滑剤組成物によれば、耐久性を向上させることができる。
なお、粉吹き現象が発生すると、梱包用紙においては、紙面が粉を吹いたように白くなる場合があり、抄紙機においては、それ自体が汚れの原因となる場合があり、スプレーのノズル口においては、ノズルの目詰まりの原因となる場合がある。
また、湿潤剤は、アルミナ微粒子の結着剤による梱包用紙への結着を補助する機能も有する。
これにより、梱包用紙に対して防滑剤組成物を付与した場合、アルミナ微粒子の分布がより均一となる。
本発明に係る防滑剤組成物は、後述する梱包用紙の抄紙工程において、梱包用紙に付与して用いられる。すなわち、防滑剤組成物は、梱包用紙の抄紙工程の過程で付与される。なお、抄紙工程における防滑剤組成物の付与方法の詳細については後述する。
本発明に係る防滑剤組成物においては、所定粒径のアルミナ微粒子を有効成分として含有するため、これを梱包用紙に付与することにより防滑性及び耐久性を向上させ、湿潤剤及び結着剤により梱包用紙に付与したアルミナ微粒子の耐久性を更に向上させている。
したがって、上記防滑剤組成物によれば、防滑性及び耐久性を向上させることができる。
かかるアルミナとしては、ギブサイト、バイヤライト、ノルドストランド石等のアルミナ三水和物、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物等が好適に用いられる。これらは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい
これらの中でも、アルミナ微粒子は、防滑効果の観点から、アルミナ一水和物であることが好ましく、汎用性の観点から、ベーマイトであることがより好ましい。
一方、最大粒径が1000nmを超えると、アルミナ微粒子が梱包用紙の表面から内部側に侵入しにくくなり、擦れただけで剥落する等、耐久性が低下する場合がある。
配合割合が、1質量%未満であると、配合割合が上記範囲内にある場合と比較して、防滑効果が不十分となる場合がある。なお、配合割合が増え過ぎると、防滑効果は維持されるが、余分なアルミナ微粒子が剥落し、汚れの原因となる場合がある。
これらの中でも、湿潤剤は、上記最大粒径のアルミナ微粒子を用いた場合における粉吹き現象抑制の観点から、ポリアルキレングリコール系又はポリオール系であることが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン又はポリグリセリンであることがより好ましい。
分子量が2000を超えると、防滑剤組成物をスプレーで付与する場合に、湿潤剤自体がスプレーのノズルの目詰まりを引き起こす場合がある。
また、分子量が大きくなるため、アルミナ微粒子と共に梱包用紙の表面の内部側に侵入させることが困難となる。その結果、耐久性が十分に向上しない場合がある。
また、湿潤剤自体が抄紙機に付着することにより、いわゆるピッチ汚染の原因となる恐れもある。
湿潤剤の配合量が0.1質量部未満であると、アルミナ微粒子に十分に付着しないため、アルミナ微粒子よる粉吹き現象を十分に抑制できない場合があり、湿潤剤の配合量が10質量部を超えると、湿潤剤がアルミナ微粒子による防滑効果を阻害する恐れがある。
ちなみに、湿潤剤は上述したようにピッチ汚染の原因となる恐れがあるため、梱包用紙の抄紙工程で用いる場合は、極力少ないほうが好ましい。
かかる結着剤としては、アルミナ微粒子を繊維質に結着させることが可能であれば特に限定されないが、上記最大粒径のアルミナ微粒子を用いた場合、防滑性及び耐久性向上の観点から、酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、ウレタン共重合体及びウレタン-アクリル酸共重合からなる群より選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。
これらの中でも、結着剤は、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、アクリル酸エステル共重合体又はスチレン-アクリル酸共重合体であることが好ましく、アクリル酸共重合体又はスチレン-アクリル酸共重合体であることがより好ましい。
結着剤の配合量が0.01質量部未満であると、アルミナ微粒子を梱包用紙に十分に結着させることができず、耐久性が低下する恐れがあり、結着剤の配合量が3質量部を超えると、結着剤がアルミナ微粒子による防滑効果を阻害する恐れがある。
ちなみに、結着剤はピッチ汚染の原因となる恐れがあるため、梱包用紙の抄紙工程で用いる場合は、極力少ないほうが好ましい。
かかる分散安定化剤としては、アルミナ微粒子を分散可能であれば特に限定されないが、塩酸、硝酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸、界面活性剤等が挙げられる。
これらの中でも、分散安定化剤は、上記最大粒径のアルミナ微粒子の分散性の観点から、硝酸又は塩酸であることが好ましい。
分散安定化剤の配合量が0.005質量部未満であると、分散安定化剤の配合量が上記範囲内にある場合と比較して、アルミナ微粒子の分散が不十分となり、経時的に、アルミナ微粒子の沈殿が生じる場合がある。そうすると、付与する際に、アルミナ微粒子の濃度ムラが生じることになる。
一方、分散安定化剤の配合量が0.8質量部を超えると、分散安定化剤の配合量が上記範囲内にある場合と比較して、分散安定化剤が無機酸又は有機酸である場合は、pHが低くなり過ぎ、安全性に劣ると共に、抄紙機やスプレーを腐食させる恐れがある。また、分散安定化剤が界面活性剤である場合は、紙のサイズ性が低下する恐れがあり、分散安定剤が泡立ち易くなるため製造効率が低下すると共に、スプレーで付与する際に、分散安定化剤自体が乾燥してノズルの目詰まりを引き起こす恐れがある。
図1は、本発明に係る防滑剤組成物が用いられる抄紙工程を説明するための概略図である。
図1に示すように、抄紙工程は、水中にパルプが分散された液を抄紙用のワイヤーYに載せ、余分な水を自然落下させることにより、梱包用紙の湿紙XとするワイヤーパートYPと、湿紙Xを一対のプレスロールP間に通し、フェルトFを介してプレスロールPで押圧することにより、湿紙中の水分をフェルトFに移行させるプレスパートPPと、脱水した梱包用紙の紙X1を、加熱されたドライヤDに接触させて乾燥させ紙とするドライパートDPと、カレンダーロールR間に紙を通して表面の凹凸を平滑化するカレンダーパートCPと、紙を巻き取るリールパートRPとを備えている。
これにより、梱包用紙の表面の比較的内部側に均一にアルミナ微粒子を結着させることが可能となる。
なお、ワイヤーパートYPやプレスパートPPにおいて、防滑剤組成物を直接梱包用紙に付与すると、アルミナ微粒子が梱包用紙の内部に入り込み過ぎ、防滑効果が不十分となる場合がある。
これにより、梱包用紙表面の比較的内部側にアルミナ微粒子を結着させることが可能となる。
また、スプレーSのノズル形状としては、ノズルの目詰まり防止の観点から、均等扇型ノズル、広角扇型ノズル、片扇型ノズル、空円錐ノズル、充円錐型ノズル、充角錐型ノズル、直進ノズル等が好適に用いられる。
防滑剤組成物の付与量が0.3mg/m2未満であると、付着量が上記範囲にある場合と比較して、付着量が過少であるため、十分な防滑効果が得えられない場合があり、防滑剤組成物の付与量が900mg/m2を超えると、防滑効果の向上が認められなくなる傾向にある。
図2は、本発明に係る防滑紙を示す斜視図である。
図2に示すように、防滑紙1は、一定の厚みがあるシート状となっている。なお、図2では上面視で矩形状となっているが、形状はこれに限定されない。
防滑剤組成物の固形分の付与量が0.3mg/m2未満であると、付与量が上記範囲内にある場合と比較して、付着量が上記範囲にある場合と比較して、付着量が過少であるため、十分な防滑効果が得えられない場合があり、防滑剤組成物の固形分の付与量が900mg/m2を超えると、付与量が上記範囲内にある場合と比較して、紙面に粉吹きが生じ、加工中に防滑剤組成物の固形分が脱落する恐れがある。
また、防滑剤組成物を付与するために、例えば、カレンダーパートCPとリールパートRPとの間に、薬液付与パートを積極的に設けてもよい。
また、付与するパートは、ドライパートDPからリールパートRPまでの間を示しているが、この領域に限定されない。例えば、ワイヤーパートYP又はプレスパートPPで防滑剤組成物を付与してもよい。
下記表1に示す配合量で実施例及び比較例のサンプルを作製した。
すなわち、有効成分(及び分散安定化剤)を水に分散させた後、これに湿潤剤、結着剤を添加して、全量を10質量部とした。
また、「PEG」はポリエチレングリコールを示し、「PPG」はポリプロピレングリコールを示し、「Gly」はグリセリンを示し、「PGly」はポリグリセリンを示す。
また、「塩酸水」は、12Mの塩酸水溶液である。
鉄板(5×25cm)を複数準備し、実施例及び比較例で得られたサンプルを、付与量が30mg/m2となるように別々の鉄板にそれぞれ付与した。
次に、各鉄板上のサンプルを100℃のホットプレートで5分加熱し乾燥させた。
そして、各鉄板を50℃にし、鉄板のサイズに合わせて裁断したクラフト用紙を、各鉄板のサンプル上のそれぞれ載せ、ロール型プレス機0.4MPaの圧力で押圧した。なお、このときのロール型プレス機の回転速度は10cm/秒とした。
こうして、クラフト用紙にサンプルを付与した。
そして、短片を錘に貼り、長片を台の上に載置し、サンプルが付着した面が互いに向かい合うように、錘を、貼り付けた短片を介して、長片の上に載置した。
この状態から、錘を5m/分のスピードで引っ張り、その際の静止摩擦力(N)を測定した。
表1中、「静止摩擦相対値」は、比較例1で得られた静止摩擦力を100とし、それに対する相対値(%)で示している。すなわち、この値が大きいほど防滑性が優れているといえる。
また、「低下率」は、上述した静止摩擦力の評価を、同じサンプルで10回ずつ実施し、1回目の試験で得られた静止摩擦力と10回目の試験で得られた静止摩擦力との差を、1回目の試験で得られた静止摩擦力で割った値を割合で示したものである。かかる低下率は、小さいほど耐久性が優れているといえる。
これに加え、実施例のサンプルは、低下率も20%以下であることがわかった。このことから、本発明の防滑剤組成物は、耐久性に優れることが確認された。
本発明の防滑剤組成物、その付与方法及び防滑紙によれば、防滑性及び耐久性をより向上させることができる。
CP・・・カレンダーパート
D・・・ドライヤ
DP・・・ドライパート
F・・・フェルト
P・・・プレスロール
PP・・・プレスパート
R・・・カレンダーロール
RP・・・リールパート
S・・・スプレー
X・・・湿紙
X1・・・紙(梱包用紙)
Y・・・ワイヤー
YP・・・ワイヤーパート
Claims (5)
- 梱包用紙の抄紙工程で付与して用いられる防滑剤組成物であって、
アルミナ微粒子と、湿潤剤と、結着剤とを含有し、
前記アルミナ微粒子が、最大粒径が5~1000nmのアルミナ一水和物であり、
前記湿潤剤が、分子内に水酸基を複数有する分子量2000以下のポリアルキレングリコール系又はポリオール系であり、
前記結着剤が酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、ウレタン共重合体及びウレタン-アクリル酸共重合からなる群より選ばれる少なくとも1種である防滑剤組成物。 - 梱包用紙の抄紙工程で付与して用いられる防滑剤組成物であって、
アルミナ微粒子と、湿潤剤と、結着剤と、分散安定化剤とを含有し、
前記アルミナ微粒子の最大粒径が5~1000nmであり、
前記湿潤剤が、分子内に水酸基を複数有する分子量2000以下の水溶性化合物であり、
前記アルミナ微粒子1質量部に対する前記分散安定化剤の配合量が0.005~0.8質量部である防滑剤組成物。 - 前記アルミナ微粒子1質量部に対する前記湿潤剤の配合量が0.1~10質量部であり、
前記アルミナ微粒子1質量部に対する前記結着剤の配合量が0.01~3質量部である請求項1又は2記載の防滑剤組成物。 - 請求項1~3のいずれか1項に記載の防滑剤組成物を、前記梱包用紙の少なくとも一方の面に付与する防滑剤組成物の付与方法。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の防滑剤組成物を、前記梱包用紙の少なくとも一方の面に付与して形成されたものであり、
前記防滑剤組成物の固形分の付与量が、0.3~900mg/m2である防滑紙。
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