特許法第30条第2項適用 (1)平成31年4月22日に日本フルハーフ株式会社が鴻池運輸株式会社に納入した。 (2)令和元年8月2日に日本フルハーフ株式会社が鴻池運輸株式会社に納入した。
以下、本発明を実施するための第一の形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、図1に示すように、後壁に開閉扉が設けられた後面開放型の車両荷室(収納庫)2に荷物搬出入構造1を設けた場合を例に挙げて説明する。なお、本実施形態において、前後左右の方向は、運転席に座った運転者を基準にした方向を示す。
図1乃至図3に示すように、第一実施形態に係る荷物搬出入構造1は、ローラコンベヤ10と搬送台20と第一移動手段60と第二移動手段70とを備えている。
ローラコンベヤ10は、車両荷室2の床部3に敷設されている。ローラコンベヤ10は、車両の前後方向に沿って延在している。本実施形態では、ローラコンベヤ10は、床部3の左右に一対ずつ設けられており、車両荷室2内で、荷物4が二列に収納されるようになっている(図1および図3参照)。荷物4は、パレット5に載置された状態で車両荷室2まで搬送され、そのままの状態で車両荷室2に収納される。なお、荷物4自体が一対のローラコンベヤ10,10上に掛け渡される形状であれば、パレット5を用いず、そのままローラコンベヤ10,10上に載置してもよい。
ローラコンベヤ10は、前後方向に延在する左右のフレーム11,11と、フレーム11間に回転可能に設けられた複数のローラ12,12・・とを備えている。ローラコンベヤ10は、昇降可能に形成されており、上部高さと下部高さとの間で昇降する。上部高さは、ローラ12の上端が床部3の床面3aより上方に位置する高さである。荷物4の搬出入時においては、ローラコンベヤ10はこの上部高さに配置される。下部高さは、ローラ12の上端が床部3の床面3a以下に位置する高さである。車両の走行時(収納庫の移動時)においては、ローラコンベヤ10はこの下部高さに配置される。
搬送台20は、車両荷室2の後部の搬出入部6に荷物4を移動させるものである。搬送台20は、一対のローラコンベヤ10,10間に配置されており、ローラコンベヤ10に沿って前後方向に移動可能である。搬送台20は、床部3の内部に設置されており、床面よりも低い底面(設置面)7上を走行する。図4乃至図7に示すように、搬送台20は、下段フレーム21と上段フレーム22と接続機構23と昇降機構24と係止部25とを備えている。
下段フレーム21は、底面7上を走行する台車部分であって、左右の板状フレーム26,26と、板状フレーム26,26間に回転可能に架設されたローラ27とを備えている。板状フレーム26は、前後方向に延在する長尺のプレート材からなる。板状フレーム26の適所には、左右の板状フレーム26,26を連結する連結プレート28a,28b,28cが設けられている。連結プレート28a,28b,28cの構成は後記する。ローラ27は、下段フレーム21の長手方向(前後方向)に所定の間隔をあけて複数設けられている。ローラ27の下端は、板状フレーム26,26の下縁部よりも下方に突出しており、底面7には、ローラ27のみが接地している。
上段フレーム22は、下段フレーム21上に設けられていて、下段フレーム21に対して昇降可能である。上段フレーム22は、上方位置(図5および図7参照)と下方位置(図4および図6参照)との間で昇降する。上段フレーム22は、左右の板状フレーム31,31を備えている。板状フレーム31は、板状フレーム26と同様に前後方向に延在する長尺のプレート材からなる。板状フレーム31の適所には、左右の板状フレーム31,31を連結する連結プレート32a,32bと連結軸33とが設けられている。連結プレート32a,32bおよび連結軸33の構成は後記する。
上段フレーム22の後端部には、パレット5または荷物4の前端位置を規制するストッパ34が設けられている。ストッパ34は、上段フレーム22から上方に突出しており、ローラコンベヤ10上を前方に移動してきたパレット5または荷物4と当接し、それ以上の前進を阻止する。
接続機構23は、下段フレーム21と上段フレーム22とを接続する機構であって、上段フレーム22を昇降可能に支持している。接続機構23は、下段フレーム21と上段フレーム22との間に掛け渡された直線リンク35を備えている。直線リンク35の下端部は、ローラ27の回転軸27aに回転可能に支持されている。直線リンク35の上端部は、左右の板状フレーム31,31間に掛け渡された連結軸33に回転可能に支持されている。連結軸33は、板状フレーム31に直行する方向に延在し、ローラ27の前側上方に配置されている。直線リンク35は、搬送台20の左右において、上下の板状フレーム26,31間にそれぞれ掛け渡されている。左右一対の直線リンク35,35は、前後方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。各直線リンク35は、上端部が前方に位置するように同じ角度で傾斜している。すなわち、平行に配置された複数の直線リンク35によって平行リンクが構成されている。これによって、上段フレーム22は、下段フレーム21に対して平行な状態を保ちながら昇降する。
昇降機構24は、上段フレーム22を下段フレーム21に対して昇降させる機構である。昇降機構24は、下段フレーム21に設けられており、下段フレーム21の長手方向に所定の間隔をあけて複数配置されている。昇降機構24は、L字状の第一リンク37と直線状の第二リンク38と付勢手段39とを備えている。
第一リンク37は、前後方向に沿って延在するとともに、中央部が鈍角の屈曲角度で屈曲している。第一リンク37の中間の屈曲部は、ローラ27の回転軸27aに回転可能に支持されている。第一リンク37は、搬送台20の左右にそれぞれ設けられている。左右の第一リンク37,37の前端部同士は、連結ロッド41aによって連結されている。左右の第一リンク37,37の後端部同士は、連結ロッド41bによって連結されている。第一リンク37の後方の直線部37a(図4の(b)および図5の(b)参照)が横向きなると、前方の直線部37b(図4の(b)および図5の(b)参照)が前側上方の斜めに延在する。第一リンク37の前方の直線部37bが横向きになると、後方の直線部37aが後側上方の斜めに延在する。このとき、前方の直線部37bは、下段フレーム21の上端縁よりも下側に位置する。前方の直線部37bの上方には、上段フレーム22の連結プレート32aが配置されている。連結プレート32aは、断面コ字状を呈し、両端の平面部が各板状フレーム31,31に溶接されている。連結プレート32aの中間の水平板部は、上段フレーム22の下端縁と面一になっている。第一リンク37が回転して、前方の直線部37bが前側上方に突出すると、連結プレート32aが上方に押されて上段フレーム22が上昇する。
第二リンク38は、第一リンク37の後端部に接続されている。第二リンク38も第一リンク37と同様に、左右にそれぞれ設けられている、左右の第二リンク38,38の前端部は、第一リンク37の後端部の連結ロッド41bにそれぞれ回転可能に接続されている。左右の第二リンク38,38の後端部同士は、連結ロッド41cによって連結されている。連結ロッド41cは、第二リンク38の後端部に対して回転可能となっている。連結ロッド41cの両端部は、下段フレーム21の板状フレーム26,26に形成された長孔29に挿通されている。長孔29は、板状フレーム26の長手方向(前後方向)に沿って長い孔であって、第二リンク38の後端部が前後方向に移動するのを許容している。
このような構成によれば、図4および図6に示すように、上段フレーム22が下段フレーム21上に載置されたとき(下方位置にあるとき)は、第一リンク37の前方の直線部37bは横向きになり、後方の直線部37aは後側上方の斜めに傾斜している。そして、第二リンク38の前端部は、第一リンク37の後端部に追従して上方に持ち上げられている。これに伴って、第二リンク38の後端部は前方に引き寄せられており、長孔29の前部に位置している。このように上段フレーム22が下方位置にあるときが待機状態であり、荷物4を後方に引き寄せる係止状態以外は待機状態となっている。
この待機状態から係止状態にするには、図5および図7に示すように、搬送台20の後端部に位置する昇降機構24の第二リンク38の後端部を後方に引く。すると、第二リンク38の前端部が第一リンク37の後端部を前方に引っ張り、第一リンク37の後方の直線部37aと第二リンク38とが水平な直線状になる。これによって、第一リンク37の前方の直線部37bが前側上方に突出し、連結プレート32aが上方に押されて上段フレーム22が上昇する。ここで、上段フレーム22は、平行リンクで支持されているので、水平を保ちながら上昇する。また、上段フレーム22は、他の昇降機構24の後記する付勢手段39によって、上昇させる応力が付与されているので、上段フレーム22の後端部を押し上げるだけで、上段フレーム22の全体が上昇する。
付勢手段39は、上段フレーム22を上昇させる応力を補助的に付与する手段である。具体的には、付勢手段39は、第二リンク38の後端部を後方に付勢する手段である。付勢手段39は、ロッド部材45とバネ部材46とを備えている。
ロッド部材45は、連結ロッド41cから後方に向かって延在している。ロッド部材45の後端部は、連結ロッド41cの中間部の後方側面に接続されている。ロッド部材45の胴部は、左右の板状フレーム26,26を連結する連結プレート28cの中間部に挿通されている。連結プレート28cは、垂直に立てられた矩形板材からなり、左右両端部が左右の板状フレーム26,26にそれぞれ溶接されている。連結プレート28cは、長孔29の後方に設けられている。ロッド部材45の後端部には、鍔部47が設けられている。鍔部47は、ロッド部材45に装着されたナットとワッシャからなる。
バネ部材46は、ロッド部材45を後方に付勢するための部材である。バネ部材46は、ロッド部材を囲繞しており、連結プレート28cと鍔部47との間に圧縮状態で設けられている。つまり、バネ部材46は、伸長しようとするので、ロッド部材45を後方に移動させようとする。バネ部材46の付勢力は、第一リンク37が上段フレーム22を上昇させない程度の力である。バネ部材46の付勢力は、上段フレーム22の重量や昇降機構24の個数等から適宜算出される。このような付勢手段39を設けたことによって、ロッド部材45を小さい力で後方へ引っ張るだけで、上段フレーム22を上昇させることができる。また、ロッド部材45を後方へ引っ張らなければ、上段フレーム22は下段フレーム21に載置されたままで待機状態を維持できる。
なお、図6および図7に示すように、搬送台20の後端部に位置する昇降機構24のロッド部材45の後端には、固定部材48が設けられている。固定部材48には、搬送台20を後方に引っ張るワイヤ62(図8参照)が接続される。固定部材48は、リング形状を呈している。なお、固定部材48の形状はリング形状に限定されるものではなく、フック形状等の他の形状であってもよい。
係止部25は、搬送台20が後方に引っ張られるときに、上段フレーム22の上端縁から上方に突出してパレット5を前方から係止する部位である。図4乃至図7に示すように、係止部25は、上段フレーム22の上端縁から上方に出没可能に形成されている。係止部25は、平行リンクの上端部に設けられたアーム部材51の一部にて構成されている。アーム部材51は、平行リンクを構成する直線リンク35の上端部に回動可能に設けられている。
アーム部材51は、左右の側壁部52,52と、前端部の連結軸53と、後端部の連結板54とを備えている。側壁部52は、上段フレーム22の長手方向に沿って延在している。連結軸53は、側壁部52,52の前端部同士を連結する部材である。連結軸53は、連結板54よりも重い。連結板54は、側壁部52,52の後端部同士を連結する部材である。連結板54は、パレット5(荷物4)の前面に係止する際に垂直となるように、側壁部52の長手方向に対して傾斜している。これによって、連結板54は、パレット5(荷物4)の前面に面接触する。アーム部材51は、当該アーム部材51の重心から後方に偏心した位置(本実施形態では、前端部の連結軸53が後端部の連結板54より重いので、側壁部52の長手方向の略中間部位置)で、平行リンクの上端部に接続されている。具体的には、側壁部52に貫通孔が形成されており、その貫通孔に、直線リンク35の上端部の連結軸33が挿通されている。貫通孔の内径は、連結軸33の外径よりも大きく、アーム部材51は、連結軸33に対して回転可能になっている。
前記構成のアーム部材51は、図5の(a)および図7の左側部分に示すように、上段フレーム22が上方位置にある場合には、連結軸33に持ち上げられ、アーム部材51の前端部(重量側端部)が下方に回動するとともに後端部(軽量側端部)が上方に回動する。下方に回動したアーム部材51の前端部は、下段フレーム21の連結プレート28aの上に載置される。連結プレート28aは、矩形形状を呈し、下段フレーム21のローラ27の前方に設けられている。連結プレート28aは、板状フレーム26の上端部と下端部の上下二か所に設けられている。アーム部材51の前端部は、上側の連結プレート28aの上に載置される。以上のように、アーム部材51の前端部が下方に下がることで、後端部は上段フレーム22の上端縁から上方に突出してパレット5(荷物4)の前面に係止する。つまり、アーム部材51の後端部(軽量側端部)が係止部25となる。
なお、図5の(a)および図7の右側部分に示すように、アーム部材51の上部にパレット5が存在する場合には、アーム部材51の後端部は、パレット5によって上側から覆われるので、アーム部材51は回動せずに水平状態を保ったままとなり、係止部は上方に突出しない。
また、図4および図6に示すように、上段フレーム22が下方位置にある場合には、アーム部材51は、上段フレーム22の内側に位置し、上段フレーム22の長手方向に沿った状態となる。したがって、係止部25は、上段フレーム22内に収納されて、上方には突出しない。
第一移動手段60は、図8に示すように、搬送台20を車両荷室2の後端部の搬出入部側に移動させる手段である。第一移動手段60は、押込部材61とワイヤ62と複数の滑車63a,63bとを備えている。
押込部材61は、左右一対のローラコンベヤ10,10の間で、ローラコンベヤ10の後端部の搬出入部近傍に設けられている。押込部材61は、床部3の内部に設置されており、床面よりも低い底面7上を、ローラコンベヤ10に沿って移動可能に設けられている。押込部材61は、フォークリフトの爪8にて、車両荷室2の奥側(前方)に押し込まれる。押込部材61は、左右一対の当接部64,64と、当該当接部64,64を連結する連結部65とを備えている。
当接部64,64は、フォークリフトの二本の爪8に相当する幅に配置されている。当接部64,64は左右のローラコンベヤ10,10の内側近傍にそれぞれ配置されている。当接部64の下面には、図示しない車輪が設けられており、押込部材61は底面7上を走行する。当接部64には、後記する固定フレーム67に当接するストッパ66が取り付けられている。ストッパ66は、押込部材61が車両荷室2の後端部に位置した際に、固定フレーム67に当接し、押込部材61の後端位置を規制している。
連結部65は、当接部64,64間に架設されている。連結部65には、前後方向に貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。貫通孔には、ワイヤ62が挿通されている。ワイヤ62の前端は、搬送台20の後端部に位置する昇降機構24のロッド部材45の後端の固定部材48(図6および図7参照)に接続されている。ワイヤ62の後端は、搬出入部に設けられた固定フレーム67に固定されている。滑車は、二つ設けられている。一方の滑車は、連結部65に固定された動滑車63aであり、他方の滑車は、固定フレーム67に固定された定滑車63bである。ワイヤ62は、固定部材48から後方に延在して、貫通孔を通過し、固定フレーム67に固定された定滑車63bを介して前方に折り返されて前方に延在し、その後、連結部65に固定された動滑車63aを介して後方に折り返されて後方に延在し、固定フレーム67に固定されている。すなわち、ワイヤ62は、平面視S字形状に配置されている。
搬送台20が車両荷室2の奥側(前方)の待機位置(図1の車両右側(図中上側)参照)にある場合は、図8の(a)に示すように、押込部材61は、車両荷室2の後端部の搬出入部に位置している。このとき、ワイヤ62の前方への折り返し部分(後方の定滑車63bと前方の動滑車63aの間の部分)と、後方への折り返し部分(動滑車63aと固定フレーム67との間の部分)は距離が短くなっており、その他の部分のワイヤ62が長いため、搬送台20は、押込部材61から離れた前方に位置している。
前記状態から、図8の(b)に示すように、フォークリフトの爪8で押込部材61を前方に押し込むと、連結部65とともに前方の動滑車63aが前方に移動し、ワイヤ62の前方への折り返し部分(定滑車63bと動滑車63aの間の部分)と、後方への折り返し部分(動滑車63aと固定フレーム67との間の部分)は距離が長くなる。これによって、ワイヤ62の前端部が後方に引っ張られて、搬送台20が後方に引き寄せられる。このとき、ワイヤ62の前方への折り返し部分と後方への折り返し部分とは、それぞれが爪8で押した距離の分長くなるので、搬送台20は、爪8で押した距離の略2倍の距離を移動する。
第二移動手段70は、図9に示すように、搬送台20を車両荷室2の奥側(前方)の待機位置に移動させる手段である。第二移動手段70は、ワイヤ71と複数の滑車72a,72b,72c,72d,72e,72fと付勢手段73とを備えている。
ワイヤ71は、搬送台20の前端と車両荷室2とを連結している。ワイヤ71の後側端部は、搬送台20の前端に固定されている。ワイヤ71の前側端部は、車両荷室2の前端部の固定部材74に固定されている。固定部材74は、床部3の内部に設けられており、床面よりも低い底面7上に固定されている。
滑車は、六つ設けられている。六つの滑車のうちの二つは、動滑車72c,72fであり、残りの四つは、定滑車72a,72b,72d,72eである。滑車は、ワイヤ71の後側端部(搬送台20の前端と固定された側)から順に、第一定滑車72aと第二定滑車72bと、第一動滑車72cと第三定滑車72dと第四定滑車72eと第二動滑車72fが設けられている。第一定滑車は、搬送台20の前方に位置し、搬送台20から前方に延在するワイヤ71を、右側に折り返す。第二定滑車72bは、第一定滑車72aの右側に位置し、ワイヤ71を後方に折り返す。第一動滑車72cは、第二定滑車72bの後方に位置し、ワイヤ71を前方に折り返す。第三定滑車72dは、第一動滑車72cの前方に位置し、ワイヤ71を左側に折り返す。第四定滑車72eは、第三定滑車72dの左側に位置し、ワイヤ71を前方に折り返す。第二動滑車72fは、第四定滑車72eの後方に位置し、ワイヤ71を前方に折り返す。
付勢手段73は、前方に移動した第一動滑車72cと第二動滑車72fを後方に引き寄せる手段である。付勢手段73は、バネ部材からなる。一方の付勢手段73は、第一動滑車72cとその後方の固定部材75との間に、伸長状態で配置されている。他方の付勢手段73は、第二動滑車72fとその後方の固定部材75との間に、伸長状態で配置されている。各バネ部材は、前後方向に沿って延在している。固定部材75は、床部3の内部に設けられており、床面よりも低い底面7上に固定されている。
搬送台20が車両荷室2の奥側(前方)の待機位置(図1の車両右側(図中上側)参照)にある場合は、図9の(a)に示すように、動滑車72c,72fは、後部位置s1に位置している。このとき、ワイヤ71の後方への第一折り返し部分(前方の定滑車72bと後方の動滑車72cの間の部分)と、前方への第二折り返し部分(動滑車72cと前方の定滑車72dとの間の部分)と、後方への第三折り返し部分(前方の定滑車72eと後方の動滑車72fの間の部分)と、前方への第四折り返し部分(動滑車72fと固定部材74の間の部分)とは距離が長くなっており、その他の部分(搬送台20と第一定滑車72aの間の部分)のワイヤ71が短いため、搬送台20は、前方の待機位置に位置している。
前記状態から、フォークリフトの爪8の押し込みによって、搬送台20が後方に引っ張られると、図9の(b)に示すように、ワイヤ71の第一乃至第四折り返し部分以外の部分の距離が長くなり、ワイヤ71の第一乃至第四折り返し部分の距離が短くなる。このとき、動滑車72c,72fが前方に引き寄せられて、バネ部材(付勢手段73)は伸長する。この状態では、バネ部材は、元の長さに縮退しようとするので、動滑車72c,72fには、後方に向かう付勢力が作用している。
なお、本実施形態では、バネ部材は動滑車72c,72fと後方の固定部材75間に掛け渡されており、バネ部材を伸長させて、元の長さに縮退させようとすることで、バネ力を発生させているが、これに限定されるものではない。たとえば、バネ部材を、動滑車と前方に設けた固定部材間に掛け渡し、バネ部材を縮退させて、元の長さに伸長させようとすることで、バネ力を発生させてもよい。
このような構成の第二移動手段70によれば、フォークリフトの爪8を後方に下げて、押し込みを解除すると、図10の(a)に示すように、バネ部材(付勢手段73)によって、動滑車72c,72fは、後部位置s1に戻されて、搬送台20が前方の待機位置に戻される。
次に、図10を参照しながら、搬送台20の各部の高さと、ローラコンベヤ10の高さと、床面の高さとの関係を説明する。
荷物4の搬出入時において、搬送台20でパレット5を後方に引き寄せる際には、図10の(a)に示すように、ローラコンベヤ10は上部高さにあり、ローラ12の上端が床部3の床面3aよりも上方に位置している。パレット5はローラコンベヤ10上に載置され、床面3aと離間しているので、ローラコンベヤ10上を移動可能になっている。搬送台20は、後方に引き寄せられ、上段フレーム22は上方位置にある。ここで、上段フレーム22の上端は、ローラコンベヤ10の上端と略同等の高さである。パレット5よりも前方に位置するアーム部材51は、前端部(重量側端部)が下方に回動するとともに後端部(軽量側端部)が上方に回動する。アーム部材51の後端部(係止部)は上段フレーム22の上端縁から上方に突出してパレット5(荷物4)の前面に係止する。
なお、上部にパレット5が存在する位置のアーム部材51の後端部は、パレット5によって上側から覆われるので、アーム部材51は回動せずに水平状態を保ったままとなり、係止部は上方に突出しない。
搬送台20が前方に移動する際には、図10の(b)に示すように、ローラコンベヤ10はパレット5の引き寄せ時と同様に上部高さにあり、ローラ12の上端が床部3の床面3aよりも上方に位置している。搬送台20は、昇降機構24が後方に引っ張られないので、上段フレーム22は下方位置にある。したがって、搬送台20は、パレット5の下面に干渉せずに前方に移動できる。
車両の走行時には、図10の(c)に示すように、ローラコンベヤ10は下部高さにあり、ローラ12の上端が床部3の床面3aと同じ高さ或いは床面3aよりも下方に位置している。搬送台20の上段フレーム22は下方位置にあり、搬送台20の上端(上段フレーム22の上端)は、床部3の床面3aよりも下方に位置している。よって、走行時には、パレット5は、床面3a上に載置され、前後に移動しない。
このような構成の荷物搬出入構造1および搬送台20によれば、搬送台20の上段フレーム22が上方位置になることで係止部25が自動的に突出するので、搬送台20の設置面(底面7)に高低差を設ける必要はない。したがって、装置全体の高さを抑えることができるとともに、設置面の施工手間を軽減できる。特に、寸法が規制されている車両荷室2においては、荷物搬出入構造1の高さを抑えることで、車両荷室2の容積を大きくできるので非常に有効である。
また、ローラコンベヤ10が下部高さにあるときに、ローラ12の上端部は、床面3aの高さ以下になる。さらに、搬送台の上段フレームを下方位置にしておけば、パレット5または荷物4は床面3aに載置されることになる。したがって、車両の走行時に荷物が移動しない。
搬送台20の上段フレーム22と下段フレーム21とは、平行リンクにて接続されているので、上段フレーム22の後端部のみを上昇させるだけで、全体が上昇する。このとき、各昇降機構24の付勢手段39で上段フレーム22を上方に付勢しているので、上段フレームを上昇させる際に昇降機構24を後方に引く力を小さくすることができる。さらに、後端部の昇降機構24のみを後方に軽く引っ張るだけで、上段フレーム22の全体を上昇させることができる。
また、係止部25は、回動可能なアーム部材51にて構成されているので、上段フレーム22が上昇すると係止部25が自動的に突出する。上にパレット5または荷物4があるときは、アーム部材51は上から押さえられて回動しないので、係止部25は突出しない。つまり、係止部25が必要となる、パレット5または荷物4がない部分のみで係止部25が突出させることができる。
本実施形態の荷物搬出入構造1では、フォークリフトの爪8で前方に押し込む第一移動手段60を設けたことによって、別途の移動機構を設けることなく、フォークリフトで搬送台20を移動させることができる。また、第一移動手段60は、動滑車63aと定滑車63bを備えて構成されているので、爪8の押込み長さに対して、搬送台20を長い距離移動させることができる。
さらに、本実施形態の荷物搬出入構造1では、第二移動手段70を設けているので、別途の移動機構を設けたり、搬送台20の設置面(底面7)に傾斜を設けたりすることなく、搬送台20を車両荷室2の前方(奥側)の待機位置に移動させることができる。さらに、第二移動手段70は、動滑車72c,72fと定滑車72a,72b,72d,72eとを備えて構成されているので、搬送台20の移動距離に対して、バネ部材(付勢手段73)の長さを小さくすることができ、第二移動手段70の小型化を達成できる。また、バネ部材の復元力を小さくすることができる。
次に、図11乃至図14を参照しながら、第二実施形態に係る荷物搬出入構造101について説明する。第二実施形態に係る荷物搬出入構造101は、搬送台120の構成、特に上段フレーム122を昇降させる構造が第一実施形態と異なる。搬送台120は、下段フレーム121と上段フレーム122と接続機構123と昇降機構124と係止部125とを備えている。
図11乃至図14に示すように、第二実施形態では、下段フレーム121は、断面U字状の溝形フレームにて構成されており、溝形断面の開口部が上側となるように配置されている(図13および図14参照)。下段フレーム121には、フレームを走行させるためのローラ126が設けられている。ローラ126は、下段フレーム121の幅方向両側の側板間に回転可能に架設されている。ローラ126の下端部は、下段フレーム121の下端部に形成された開口部127から下方に向かって突出しており、床面よりも低い底面(設置面)7上に接地している。ローラ126は、下段フレーム121の長手方向に沿って所定間隔をあけて複数設けられている。下段フレーム121の長手方向端部には、断面の端部を塞ぐ蓋プレート128が溶接されている。蓋プレート128には、下段フレーム121を引っ張って移動させるための係止部材129が取り付けられている。係止部材129の後端部はリング状に形成されており、係止部材129の後端部には、搬送台20を後方に引っ張るワイヤ62(図8参照)が接続される。
上段フレーム122は、断面U字状の溝形フレームにて構成されており、溝形断面の開口部が下側となるように配置されている(図13および図14参照)。上段フレーム122の長手方向端部には、断面の端部を塞ぐ蓋プレート128が溶接されている。
接続機構123は、下段フレーム121と上段フレーム122とを接続する機構であって、上段フレーム122を昇降可能に支持している。接続機構123は、下段フレーム21と上段フレーム122との間に掛け渡された一対の直線リンク130,130を備えている。一対の直線リンク130,130は、下段フレーム121および上段フレーム122の幅方向両側の側板の内側に配置されている。各直線リンク130の下端部は、下段フレーム121の側面間に掛け渡された回転軸132aに回転可能に支持されている。各直線リンク130の上端部は、上段フレーム122の側面間に掛け渡された回転軸132bに回転可能に支持されている。回転軸132a,132bは、下段フレーム121および上段フレーム122の幅方向に沿って延在しており、各側面に対して直交している。下段フレーム121に設けられた回転軸132aは、上段フレーム122に設けられた回転軸132bよりも前方に位置している。つまり、下側の回転軸132aは、上側の回転軸132bの下側斜め前方に配置されている。
一対の直線リンク130,130は、上下の連結板131a,131bを介して連結されている。下側の連結板131aは、直線リンク130から下側に張り出したブラケットの下端部から連続して直角に屈曲している。連結板131aは、上端フレーム122が下方位置にあるときに、略水平となる。上側の連結板131bは、直線リンク130の上端縁から連続して直角に屈曲している。上下の連結板131a,131bを設けたことで、接続機構123は、断面箱型となり剛性が強くなる。
接続機構123は、前後方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。一対の直線リンク130,130は、上端部が後方に位置するように同じ角度で傾斜している。すなわち、平行に配置された複数の直線リンク130によって平行リンクが構成されている。これによって、上段フレーム122は、下段フレーム121に対して平行な状態を保ちながら昇降する。
昇降機構124は、上段フレーム122を下段フレーム121に対して昇降させる機構である。昇降機構124は、凸部135とガイド部材136とを備えている。凸部135は、上段フレーム122および下段フレーム121の幅方向側方に位置する搬送台120の底面7に設置されている。凸部135は、底面7から立ち上がっており、凸部135の上端部は、下段フレーム121の上面よりも上方に突出している。凸部135の上端部には、ローラ137が回転可能に設けられている。ローラ137は、回転軸芯が上段フレーム122および下段フレーム121の幅方向に延在するように構成されている。
凸部135は、上段フレーム122および下段フレーム121の幅方向両側に設けられている。すなわち、左右一対の凸部135,135が、下段フレーム121を挟むように配置されている。下段フレーム121の配置位置の後端部には、左右一対の凸部135,135が、前後方向に所定の間隔をあけて二組設けられている。下段フレーム121の配置位置の前端部にも、左右一対の凸部135,135が、前後方向に所定の間隔をあけて二組設けられている。後端部の前後二組の凸部135,135は、後方の凸部135,135が、下段フレーム121の配置位置の後端の近い位置に配置されている。前端部の前後二組の凸部135,135は、前方の凸部135,135が、下段フレーム121の配置位置の前端部から所定長さ(ガイド部材136の前後長さ)後方にずれた位置に配置されている。
ガイド部材136は、上段フレーム122の側部に設けられ、上段フレーム122の移動に伴って凸部に乗り上げる。具体的には、ガイド部材136は、上段フレーム122の長手方向に沿って延在する板材にて構成されている。ガイド部材136は、水平部138と傾斜部と139を備えている。水平部138は、ガイド部材136の大部分を占め、傾斜部139は、ガイド部材136の後端部の一部分を構成している。水平部138は、上段フレーム122の側面の下端部に溶接されており、側面から幅方向外側に張り出している。水平部138は、上段フレーム122が上昇したときに、凸部135のローラ137上に載置された状態となる。傾斜部139は、水平部138の後端に連続しており、後方に向かうに連れて高くなっている。つまり、傾斜部139は、斜め上方に向かって傾斜している。傾斜部139は、上段フレーム122の幅方向両側にそれぞれ設けられている。傾斜部139の下面は、凸部135のローラ137の外周面に当接しており、下段フレーム121および上段フレーム122が後方に移動すると、傾斜部139がローラ137に乗り上げて、上段フレーム122が上昇する。
ガイド部材136は、上段フレーム122の左右両側部にそれぞれ設けられている。左右一対のガイド部材136,136は、上段フレーム122の後端部と前端部にそれぞれ設けられている。後部のガイド部材136の長さは、下段フレーム121の後端側において前後に設けられた凸部135,135の離間距離より若干長く設定されている。すなわち、上段フレーム122は、後端位置まで移動したときに、後部のガイド部材136が後端側に配置された前後の凸部135,135上に掛け渡されることとなり、安定した状態で保持される。これと同様に、前部のガイド部材136の長さは、下段フレーム121の前端側において前後に設けられた凸部135,135の離間距離より若干長く設定されている。すなわち、上段フレーム122は、後端位置まで移動したときに、前部のガイド部材136が前端側に配置された前後の凸部135,135上に掛け渡されることとなり、安定した状態で保持される。
係止部125は、搬送台120が後方に引っ張られるときに、上段フレーム122の上端縁から上方に突出してパレット5を前方から係止する部位である。係止部125は、上段フレーム122の上端縁から出没可能に形成されている。係止部125は、平行リンクの上端部に設けられたアーム部材151の一部にて構成されている。
アーム部材151は、上段フレーム122の左右の側面間に回転可能に設けられている。具体的には、アーム部材151は、上段フレーム122の幅方向に延在する回転軸152に支持されている。回転軸152は、上段フレーム122の左右の側面間に掛け渡されている。アーム部材151は、下方に向かって開口する箱型形状を呈している。アーム部材151の長手方向(前後方向)中間部に、回転軸152が挿通している。アーム部材151の前端側には、重量プレート153が取り付けられている。これによって、アーム部材151の重心が長手方向中間部よりも前方にずれる。そして、アーム部材151の前端側が後端側よりも重い重量側端部となり、後端側が軽量側端部となっている。軽量側端部の後端面154は、係止部125が立ち上がってパレット5(荷物4)の前面に係止する際に垂直となるように、アーム部材151の長手方向に対して傾斜している。これによって、アーム部材151の後端面154は、パレット5の前面に面接触する。アーム部材151は、当該アーム部材151の重心から後方に偏心した位置(本実施形態では、前端部に重量プレート153が取り付けられているので、アーム部材151の長手方向の中間部の位置)で、回転軸152に接続されている。具体的には、アーム部材151の側面に貫通孔が形成されており、その貫通孔に、回転軸152が挿通されている。貫通孔の内径は、回転軸152の外径よりも大きく、アーム部材151は、回転軸152に対して回転可能になっている。
アーム部材151の下方の下段フレーム121には、支持プレート155が設けられている。支持プレート155は、アーム部材151の前端部(重量側端部)の下方に配置されており、アーム部材151が回転して係止部125が立ち上がったときに、重量側端部を支持する。支持プレート155は、矩形形状を呈しており、下段フレーム121の上端部で、左右の側面間に掛け渡されている。重量側端部が支持プレート155上に支持された状態で、軽量側端部の後端面154が垂直になり、パレット5の前面に面接触する。
前記構成のアーム部材151は、図12の左側部分および図14に示すように、上段フレーム122が上方位置にある場合には、回転軸152に持ち上げられ、アーム部材151の前端部(重量側端部)が下方に回動するとともに後端部(軽量側端部)が上方に回動する。下方に回動したアーム部材151の前端部は、下段フレーム121の支持プレート155の上に載置される。以上のように、アーム部材151の前端部が下方に下がることで、後端部は上段フレーム122の上面に形成された開口部140から上方に突出してパレット5の前面に係止する。つまり、アーム部材151の後端部(軽量側端部)が係止部125となる。
なお、図12の右側部分に示すように、アーム部材151の上部にパレット5が存在する場合には、アーム部材151の後端部は、パレット5によって上側から覆われるので、アーム部材151は回動せずに水平状態を保ったままとなり、係止部125は上方に突出しない。
また、図11および図13に示すように、上段フレーム122が下方位置にある場合には、アーム部材151は、支持プレート155上に載置され、上段フレーム122の内側に位置するので、上段フレーム122の長手方向に沿った状態となる。したがって、係止部125は、上段フレーム122内に収納されて、上方には突出しない。
前記構成の搬送台120によれば、下段フレーム121および上段フレーム122を移動させると、ガイド部材136が凸部135に乗り上がり上段フレーム122を上昇させることができる。ガイド部材136の傾斜部139が、凸部135のローラ137に乗り上がるので、上段フレーム122が円滑に上昇できる。また、平行リンクによって、上段フレーム122は、水平状態を保持しながら全体が上昇する。
また、アーム部材151が上段フレーム122に回動可能に設けられているので、上段フレーム122が上昇すると係止部125が自動的に突出する。上にパレット5があるときは、アーム部材151は回動しないので、係止部125は突出せず、アーム部材151が変形することはない。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、荷物搬出入構造1は、車両荷室2の一層の床部3の左右二か所に設けられているが、これに限定されるものではない。たとえば、床部が二層以上設けられた車両荷室において、各層の左右二か所ずつにそれぞれ荷物搬出入構造を設けてもよい。
また、前記実施形態では、アーム部材51の連結軸53を連結板54よりも重くするとともに、側壁部52の長手方向の略中間位置を支持することで、アーム部材51の接続位置を重心から後方に偏心させているが、これに限定されるものではない。たとえば、連結軸と連結板を同等の重さとして、接続位置を側壁部の長手方向の中間部よりも後方に偏心させるようにしてもよい。
また、前記実施形態では、車両荷室2に荷物搬出入構造1を設けた場合を例に挙げて説明したが、荷物搬出入構造1および搬送台20を適用できるのは、車両荷室2に限定されるものではない。たとえば、コンテナ等の車両荷室以外の収納庫に荷物搬出入構造を適用することもできる。この場合も、コンテナ等の荷物収納スペースを確保することができる。コンテナの場合は、コンテナの運搬時や吊下げ時に、ローラコンベヤ10を下部高さにして、パレット5または荷物4を、床面3a上に載置する。