以下に、図1と図2を用いて、クレーン1について説明する。本願では、ラフテレーンクレーンについて説明を行うが、本願に開示する技術的思想は、オールテレーンクレーン、トラッククレーン、積載型トラッククレーン、高所作業車等にも適用できる。
クレーン1は、車両2とクレーン装置6で構成されている。
車両2は、左右一対の前輪3と後輪4を備えている。また、車両2は、荷物Wの搬送作業を行う際に接地させて安定を図るアウトリガ5を備えている。なお、車両2は、その上部にクレーン装置6を支持している。
クレーン装置6は、荷物Wをワイヤロープによって吊り上げる装置である。クレーン装置6は、旋回台8、ブーム9、メインフックブロック10、サブフックブロック11、メインウインチ13、メインワイヤロープ14、サブウインチ15、サブワイヤロープ16、キャビン17等を具備している。
旋回台8は、クレーン装置6を旋回可能に構成する構造体である。旋回台8は、円環状の軸受を介して車両2のフレーム上に設けられる。旋回台8には、アクチュエータである旋回用油圧モータ81が設けられている。旋回台8は、旋回用油圧モータ81によって左右方向に旋回可能に構成されている。
旋回用油圧モータ81は、電磁比例切換バルブである旋回用バルブ22によって回転操作される。旋回用バルブ22は、旋回用油圧モータ81に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。つまり、旋回台8は、旋回用バルブ22によって回転操作される旋回用油圧モータ81を介して任意の旋回速度に制御可能に構成されている。旋回台8には、旋回台8の旋回角度と旋回速度とを検出する旋回用センサ27が設けられている。
ブーム9は、荷物Wを吊り上げ可能に構成する構造体である。ブーム9は、その基端が旋回台8の略中央に揺動可能に設けられている。ブーム9には、アクチュエータである伸縮用油圧シリンダ91と起伏用油圧シリンダ92が設けられている。ブーム9は、伸縮用油圧シリンダ91によって長手方向に伸縮可能に構成されている。また、ブーム9は、起伏用油圧シリンダ92によって上下方向に起伏可能に構成されている。さらに、ブーム9には、ブームカメラ93が設けられている。
伸縮用油圧シリンダ91は、電磁比例切換バルブである伸縮用バルブ23によって伸縮操作される。伸縮用バルブ23は、伸縮用油圧シリンダ91に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。つまり、ブーム9は、伸縮用バルブ23によって伸縮操作される伸縮用油圧シリンダ91を介して任意の伸縮速度に制御可能に構成されている。ブーム9には、ブーム9のブーム長さと伸縮速度とを検出する伸縮用センサ28が設けられている。
起伏用油圧シリンダ92は、電磁比例切換バルブである起伏用バルブ24によって伸縮操作される。起伏用バルブ24は、起伏用油圧シリンダ92に供給される作動油の流量を任意の流量に制御することができる。つまり、ブーム9は、起伏用バルブ24によって伸縮操作される起伏用油圧シリンダ92を介して任意の起伏速度に制御可能に構成されている。ブーム9には、ブーム9の起伏角度と起伏速度とを検出する起伏用センサ29が設けられている。
ブームカメラ93は、荷物Wおよび地物Cの画像を取得する。ブームカメラ93は、ブーム9の先端部に設けられている。また、ブームカメラ93は、360°回転可能に構成され、ブーム9の先端部を中心とする全方位を撮影することができる。なお、ブームカメラ93は、後述する制御装置32に接続されている。
メインフックブロック10とサブフックブロック11は、荷物Wを吊り上げるための部材である。メインフックブロック10には、メインフック10aが設けられている。サブフックブロック11には、サブフック11aが設けられている。
メインウインチ13とメインワイヤロープ14は、メインフック10aに引っ掛けられた荷物Wを吊り上げるための機構である。また、サブウインチ15とサブワイヤロープ16は、サブフック11aに引っ掛けられた荷物Wを吊り上げるための機構である。メインウインチ13とサブウインチ15には、それぞれの回転量を検出する巻回用センサ26が設けられている。メインウインチ13は、電磁比例切換バルブであるメイン用バルブ25mによってメイン用油圧モータを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。同様に、サブウインチ15は、電磁比例切換バルブであるサブ用バルブ25sによってサブ用油圧モータを制御し、任意の繰り入れおよび繰り出し速度に操作可能に構成されている。
キャビン17は、操縦席を覆う構造体である。キャビン17の内部には、車両2を操作するための操作具やクレーン装置6を操作するための操作具が設けられている。旋回操作具18は、旋回用油圧モータ81を操作することができる。起伏操作具19は、起伏用油圧シリンダ92を操作することができる。伸縮操作具20は、伸縮用油圧シリンダ91を操作することができる。メインドラム操作具21mは、メイン用油圧モータを操作することができる。サブドラム操作具21sは、サブ用油圧モータを操作することができる。
GNSS受信機30は、衛星から測距電波を受信し、緯度、経度、標高を算出するものである。GNSS受信機30は、キャビン17に設けられている。従って、クレーン1は、キャビン17の位置座標を取得することができる。また、車両2を基準とする方位を取得することができる。なお、GNSS受信機30は、後述する制御装置32に接続されている。
データ通信機31は、外部のサーバコンピュータと通信を行う装置である。データ通信機31は、キャビン17に設けられている。データ通信機31は、外部のサーバコンピュータから後述する作業領域Awの空間情報および搬送作業に関する情報等を取得するように構成されている。なお、データ通信機31は、後述する制御装置32に接続されている。
制御装置32は、各種切換バルブ(旋回用バルブ22、伸縮用バルブ23、起伏用バルブ24、メイン用バルブ25mおよびサブ用バルブ25s)を制御するコンピュータである。制御装置32は、各種切換バルブ(22、23、24、25m、25s)を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。また、制御装置32は、各種センサ(巻回用センサ26、旋回用センサ27、伸縮用センサ28および起伏用センサ29)に接続されている。さらに、制御装置32は、各種操作具(旋回操作具18、起伏操作具19、伸縮操作具20、メインドラム操作具21mおよびサブドラム操作具21s)に接続されている。そのため、制御装置32は、各種操作具(18、19、20、21m、21s)の操作量に対応した制御信号を生成することができる。
このように構成されるクレーン1は、車両2を走行させることで任意の位置にクレーン装置6を移動させることができる。また、クレーン1は、ブーム9を起立させ、かつブーム9を伸長させることでクレーン装置6の揚程や作業半径を拡大することができる。そして、クレーン1は、ブーム9の旋回、起伏、伸縮およびワイヤロープ(メインワイヤロープ14、サブワイヤロープ16)の巻き上げ等の動きを単独または併用することによって荷物Wを移動させることができる。
次に、図3から図8を用いて、クレーン1の作業領域Awの作業可能範囲Ar内における荷物Wの搬送経路CRの自動生成について説明する。クレーン1は、建設現場等の作業領域Awに配置されているものとする。また、クレーン1は、生成された搬送経路CRに沿って自動でサブフック11aに吊り下げられた荷物Wを搬送するものとする。以下の説明で、位置情報とは、クレーン1の位置座標データである。機体情報とは、クレーン1の性能諸元データである。制御情報とは、クレーン1の作動状態、制御信号、各種センサの検出値等である。作業に関する情報とは、荷物Wの吊り上げ位置Ps、荷物Wの吊り下し位置Pe、荷物Wの重量Wg等に関する情報である。搬送経路情報とは、荷物Wの搬送経路CR、搬送速度等である。作業領域Awの空間情報とは、作業領域Aw内の地物C等の三次元情報である。
図3に示すように、クレーン1は、制御装置32において荷物Wの搬送経路CRを自動生成する。制御装置32は、作業可能範囲設定部32a、節点生成部32b、経路生成部32c、搬送経路決定部32d、搬送制御部32eを有する。
制御装置32の作業可能範囲設定部32aは、搬送する荷物Wの重量Wgから作業可能範囲Arを仮想空間上に設定する。作業可能範囲設定部32aは、データ通信機31を介して外部のサーバコンピュータ等から作業に関する情報として吊り上げ位置Ps、吊り下し位置Pe、荷物Wの重量Wgと作業領域Aw(図4参照)の空間情報とを取得する。作業可能範囲設定部32aは、クレーン1の機体情報、荷物Wの重量Wgからクレーン1が荷物Wを搬送することができる空間である作業可能範囲Ar(図4参照)を算出する。
図4(A)に示すように、作業可能範囲設定部32a(図3参照)は、取得した吊り上げ位置Psから吊り下し位置Peまでのブーム9の一方向(例えば反時計回り)の旋回角度と他方向(例えば時計回り)の旋回角度とのうち、小さい方の一方向の旋回角度幅θy(r)の範囲に作業可能範囲Ar(薄墨部分)を限定する。つまり、作業可能範囲設定部32aは、ブーム9の旋回中心から吊り上げ位置Psまでを結ぶ基準線とブーム9の旋回中心から吊り下し位置Peまでを結ぶ基準線とが成す旋回範囲のうち、吊り上げ位置Psから吊り下し位置Peまでの最短経路が含まれない範囲を作業可能範囲Arから除外する。
さらに、作業可能範囲設定部32aは、取得した作業領域Awの空間情報から作業可能範囲Ar内に存在する地物Cが占める空間を除外した空間に作業可能範囲Arを限定する。つまり、作業可能範囲設定部32aは、地物Cがあることで荷物Wが通過できない空間を作業可能範囲Arから除外する。この際、作業可能範囲設定部32aは、地物Cと荷物Wとの干渉を回避するため、荷物Wの自転時の最大半径分だけ地物Cの表面を外側にオフセットした空間を作業可能範囲Arから更に除外する構成でもよい。
図4(B)に示すように、作業可能範囲設定部32aは、所定の条件の一つとしてブーム9の起伏、伸縮によって荷物Wが移動することができる範囲に作業可能範囲Arを限定する。つまり、作業可能範囲設定部32aは、ブーム9の起伏角度、伸縮長さの範囲が限定されることで荷物Wが通過できない空間を作業可能範囲Arから除外する。ブーム9の起伏可能範囲が起伏角度0°からの起伏角度幅θz(r)の範囲に設定されている場合、作業可能範囲設定部32aは、ブーム9の起伏角度0°から起伏角度θz(r)までの起立によって荷物Wが移動する範囲に作業可能範囲Ar(薄墨部分)を限定する。
このように、作業可能範囲設定部32aは、荷物Wの重量Wgから算出された作業可能範囲Arにおいて、地物Cの形状、ブーム9の稼働範囲、吊り上げ位置Psから吊り下し位置Peまでの最短経路を考慮して、荷物Wを搬送するために必要な空間を作業可能範囲Arとして設定する。
図5に示すように、制御装置32の節点生成部32b(図3参照)は、作業可能範囲Ar内において荷物Wが通過可能な全ての節点P(n)を生成する。節点P(n)は、三次元座標で表される。
節点生成部32bは、ブーム9の旋回中心を原点とする極座標系において、作業可能範囲Ar内にブーム9の任意のブーム長さLx(n)、任意の旋回角度θy(n)および任意の起伏角度θz(n)を所定の任意のブーム長さ刻み毎、かつ任意の旋回角度刻み毎、かつ任意の起伏角度刻み毎に、それぞれ変更させる場合に荷物Wが通過可能な節点P(n)を仮想空間内に生成する(nは任意の自然数)。
節点生成部32bは、車両2の進行方向を基準として時計回り方向の任意の旋回角度θy(n)(図5(A)参照)、水平方向を基準として任意の起伏角度θz(n)の位置にあるブーム9を伸縮可能なブーム長さLx(n)の全範囲において(図5(B)参照)、任意のブーム長さ刻み毎に伸縮させる場合の節点P(n)を生成する。次に、節点生成部32bは、任意の旋回角度刻みだけ異なる任意の旋回角度θy(n+1)、任意の起伏角度θz(n)の位置にあるブーム9を任意のブーム長さ刻み毎に伸縮させる場合の節点P(n)を、伸縮可能なブーム長さLx(n)の全範囲において生成する。このように、節点生成部32bは、作業可能範囲Arを構成する吊り上げ位置Psから吊り下し位置Peまでの旋回角度幅θy(r)の全範囲において任意の旋回角度刻み毎に、任意の起伏角度θz(n)の位置にあるブーム9を伸縮させる場合の節点P(n)を生成する。
同様にして、節点生成部32bは、任意の旋回角度刻みだけ異なる任意の起伏角度θz(n+1)の位置にあるブーム9を任意のブーム長さ刻み毎に伸縮させる場合の節点P(n)を、旋回角度幅θy(r)の全範囲において任意の旋回角度刻み毎に生成する。このように、節点生成部32bは、旋回角度幅θy(r)の全範囲における任意の旋回角度刻み毎、かつブーム9の起伏可能範囲である起伏角度幅θz(r)の全範囲における任意の起伏角度刻み毎、かつ伸縮可能なブーム長さLx(n)の全範囲における任意のブーム長さ刻み毎に節点P(n)を生成する。この結果、作業可能範囲Ar内には、ブーム9の任意のブーム長さLx(n)、任意の旋回角度θy(n)および任意の起伏角度θz(n)における節点P(n)が任意の旋回角度刻み毎、任意の起伏角度刻み毎、任意のブーム長さ刻み毎に生成されている。この際、地物Cが占有している空間は、作業可能範囲Arに含まれていないので、節点生成部32bによって節点P(n)が生成されない。
本実施形態において、節点生成部32bは、ブーム9の旋回中心を原点とする極座標系において、任意の起伏角度刻み毎、および任意の旋回角度刻み毎に節点P(n)を生成しているが別実施形態として、節点P(n)を生成する周方向の間隔を変更して節点P(n)を生成してもよい。例えば、図6に示すように、節点生成部32bは、起伏半径および旋回半径の大きさに関わらず、節点P(n)の周方向の間隔が一定の範囲に収まるように節点P(n)を生成してもよい。節点生成部32bは、基準となる密度で節点P(n)が生成されている旋回半径D1および起伏半径D2よりも内側の範囲に基準となる密度で節点P(n)を生成する。つまり、節点生成部32bは、基準となる密度よりも密に節点P(n)を生成することがない。また、節点生成部32bは、基準となる密度で節点P(n)が生成されている起伏半径D1および旋回半径D2よりも外側の範囲に基準となる密度で節点P(n)を生成する。つまり、節点生成部32bは、基準となる密度よりも疎に節点P(n)を生成することがない。これにより、節点生成部32bは、節点P(n)の密度が一定の範囲に収まるように節点P(n)を生成するので、荷物Wの到達精度と計算量とのバランスを適切に保つことができる。
図7に示すように、制御装置32の経路生成部32c(図3参照)は、作業可能範囲Ar内において荷物Wが通過可能な全ての経路R(n)を生成する。経路R(n)は、例えばサブワイヤロープ16を最も巻き上げた状態で吊り下げられた荷物Wが通過可能な複数の節点P(n)間を繋いだものである。経路R(n)は、繋がれている節点P(n)の三次元座標で表される。なお、ジブの起伏、メインウインチ13およびサブウインチ15による巻き上げ、巻き下げによって荷物Wを搬送してもよい。
経路生成部32cは、作業可能範囲Ar内において、生成した節点P(n)のうち、隣り合う位置にある節点P(n)間を繋ぐことで節点P(n)間の経路R(n)を生成する(図5参照)。
経路生成部32cは、任意の一の節点P(n)と隣り合う複数の他の節点P(n+1)、P(n+2)・・を一の節点P(n)から荷物Wを移動可能な節点として特定する。経路生成部32cは、一の節点P(n)から隣り合う複数の他の節点P(n+1)、P(n+2)・・までの経路R(n)、R(n+1)・・をそれぞれ生成する。経路生成部32cは、全ての節点P(n)間に経路R(n)を生成することで、作業可能範囲Ar内の空間をカバーする経路網を生成する。
図7(A)に示すように、経路生成部32cは、任意の旋回角度θy(n)において(図5(A)参照)、起伏角度θz(n)のブーム9を任意のブーム長さ刻み毎に縮小させる順に生成した節点P(n)、節点P(n+1)と、起伏角度θz(n+1)のブーム9を任意のブーム長さ刻み毎に縮小させて順に生成した荷物Wの節点P(n+2)、節点P(n+3)をそれぞれ繋いだ経路を生成する。節点P(n)と節点P(n+1)を繋ぐ経路R(n+1)は、ブーム9の伸縮によって荷物Wが通過する経路である。節点P(n)と節点P(n+2)を繋ぐ経路R(n+2)は、ブーム9の起伏によって荷物Wが通過する経路である。節点P(n)と節点P(n+3)を繋ぐ経路R(n+3)は、ブーム9の伸縮かつ起伏によって荷物Wが通過する経路である。
また、図7(B)に示すように、経路生成部32cは、任意のブーム長さLx(n)において(図5(B)参照)、旋回角度θy(n)のブーム9を任意の起伏角度刻み毎に起立させて生成した荷物Wの節点P(n+4)、節点P(n+5)と、旋回角度θy(n+1)のブーム9を任意の起伏角度刻み毎に起立させて生成した荷物Wの節点P(n+6)、節点P(n+7)をそれぞれ繋いだ経路を生成する。節点P(n+4)と節点P(n+5)を繋ぐ経路R(n+5)は、ブーム9の起伏によって荷物Wが通過する経路である。節点P(n+4)と節点P(n+6)を繋ぐ経路R(n+6)は、ブーム9の旋回によって荷物Wが通過する経路である。節点P(n+4)と節点P(n+7)を繋ぐ経路R(n+7)は、ブーム9の旋回かつ起伏によって荷物Wが通過する経路である。
また、図7(C)に示すように、経路生成部32cは、任意の起伏角度θz(n)において(図5(B)参照)、ブーム長さLx(n)のブーム9を任意の旋回角度刻み毎に時計回り方向へ旋回させて生成した荷物Wの節点P(n+8)、節点P(n+9)と、ブーム長さLx(n+1)のブーム9を任意の旋回角度刻み毎に時計回り方向へ旋回させて生成した荷物Wの節点P(n+10)、節点P(n+11)とをそれぞれ繋いだ経路を生成する。節点P(n+8)と節点P(n+9)を繋ぐ経路R(n+9)は、ブーム9の旋回によって荷物Wが通過する経路である。節点P(n+8)と節点P(n+10)を繋ぐ経路R(n+10)は、ブーム9の伸縮によって荷物Wが通過する経路である。節点P(n+8)と節点P(n+11)を繋ぐ経路R(n+11)は、ブーム9の旋回かつ伸縮によって荷物Wが通過する経路である。なお、経路R(n+10)、経路R(n+11)において、ブーム9の伸縮による高さ方向の変動は、サブワイヤロープ16の巻き上げ、巻き下げによって生じないように制御されているものとする。
このように生成される複数の経路R(n)は、ブーム9の伸縮、起伏または旋回のそれぞれ単独の動きによって搬送される荷物Wの経路と、伸縮、起伏および旋回のうち、複数の動きの併用によって搬送される荷物Wの経路とから構成されている。また、複数の経路R(n)は、旋回角度幅θy(r)の範囲、かつ起伏角度幅θz(r)の範囲であって、地物Cが占める空間を除いた範囲に形成されている(図5参照)。つまり、経路生成部32cは、吊り上げ位置Psから吊り下し位置Peまで荷物Wを搬送する際に、荷物Wを搬送可能な範囲であって、最短の搬送経路CRを決定するために必要な範囲のみに複数の経路R(n)を生成している。
制御装置32の搬送経路決定部32d(図3参照)は、アクチュエータを作動させる優先順位および所定の条件を満たす荷物Wの搬送経路CRを決定する。アクチュエータを作動させる優先順位は、ブーム9を旋回させる旋回用油圧モータ81、ブーム9を起伏させる起伏用油圧シリンダ92、ブーム9を伸縮させる図示しない伸縮用油圧シリンダ91とする。また、本実施形態の所定の条件である第一の条件は、各アクチュエータの単独作動による荷物Wの搬送時間を最小にする経路を選択することとする。さらに、所定の条件である第二の条件は、荷物Wの搬送時の旋回半径を小さくする経路を選択することとする。なお、本実施形態において、搬送経路決定部32dによる搬送経路CRの決定は、荷物Wの高さ方向が一定である平面上の経路において実施するものとする。
図8に示すように、経路生成部32cで生成された経路は、任意の旋回半径RAの円周上に等しい間隔で生成されている節点P(A1)、節点P(A2)、・・節点P(A6)と、任意の旋回半径RBの円周上に等しい間隔で生成されている節点P(B1)、節点P(B2)、・・節点P(B6)を互いに繋いで生成されている。節点P(A1)から節点P(A6)を繋ぐ経路を経路R(n+1)、経路R(n+2)、・・経路R(n+6)とする。節点P(B1)から節点P(B6)を繋ぐ経路を経路R(n+7)、経路R(n+8)、・・経路R(n+12)とする。また、節点P(A1)と節点P(B1)とを繋ぐ経路をR(n+13)とする。節点P(A3)と節点P(B3)とを繋ぐ経路をR(n+14)とする。経路R(n+1)から経路R(n+12)は、ブーム9の旋回によって荷物Wが搬送される経路である。経路R(n+13)と経路R(n+14)は、ブーム9の起伏または伸縮によって荷物Wが搬送される経路である。
搬送経路決定部32dは、第一の条件を満たす経路R(n)を選択するために搬送時間に関する重みを各経路R(n)に設定する。搬送経路決定部32dは、搬送速度が最も速いブーム9の旋回によって荷物Wが搬送される経路R(n+1)から経路R(n+12)に重み1を設定する(図8における囲み数字)。同様に、搬送経路決定部32dは、搬送速度が旋回の次に速いブーム9の起伏、または搬送速度が最も遅いブーム9の伸縮によって荷物Wが搬送される経路R(n+13)と経路R(n+14)に、起伏による搬送時の重み2と伸縮による搬送時の重み3を設定する(図6における囲み数字)。つまり、複数の経路R(n)の組み合わせから構成される搬送経路CRは、重みの合計が小さいほど搬送時間が短くなる。
図9(A)に示すように、節点P(A1)を吊り上げ位置Psとし、節点P(A3)を吊り下し位置Peとした場合、搬送経路決定部32dは、ダイクストラ法等を用いて、節点P(A1)と節点P(A3)とを繋ぐ経路の重みが最小である経路を決定する。節点P(A1)から節点P(A3)までの経路は、優先順位の高いブーム9の旋回によって荷物Wが搬送される経路R(n+1)および経路R(n+2)を繋いだ搬送経路CR1(白塗矢印)と、経路R(n+6)、経路R(n+5)、経路R(n+4)および経路R(n+3)を繋いだ搬送経路CR2(黒塗矢印)がある。搬送経路CR1の旋回半径と搬送経路CR2の旋回半径とは、同一であるのでどちらの搬送経路CRでも第二の条件を満たす。搬送経路決定部32dは、重みの合計2の搬送経路CR1と重みの合計4の搬送経路CR2とのうち、経路の重みの合計が小さい搬送経路CR1を第一の条件を満たす搬送経路CRとして選択する。
図9(B)に示すように、節点P(A1)を吊り上げ位置Psとし、節点P(B3)を吊り下し位置Peとした場合、節点P(A1)から節点P(B3)までの経路は、優先順位の高いブーム9の旋回とブーム9の起伏によって荷物Wが搬送される経路R(n+1)、経路R(n+2)および経路R(n+14)を繋いだ旋回半径RAの搬送経路CR3(黒塗矢印)と、経路R(n+13)、経路R(n+7)および経路R(n+8)を繋ぐ旋回半径RBの搬送経路CR4(白塗矢印)がある。搬送経路決定部32dは、経路R(n+13)と経路R(n+14)に起伏による重み2を設定する。搬送経路CR3の重みの合計と搬送経路CR4の重みの合計とは、共に4であるのでどちらの搬送経路CRでも第一の条件を満たす。搬送経路決定部32dは、小さい旋回半径RBの搬送経路CR4を第二の条件を満たす搬送経路CRとして選択する。
制御装置32の搬送制御部32e(図3参照)は、アクチュエータの優先順位に基づいて決定された搬送経路CRに沿って荷物Wを搬送するようにクレーン装置6の各種切換バルブに制御信号Mdを送信する(図3参照)。荷物Wを搬送経路CR4で搬送する場合、搬送制御部32eは、吊り上げ位置Psである節点P(A1)からブーム9を起伏させて節点P(B1)に荷物Wを搬送させる。続けて、搬送制御部32eは、荷物Wが節点P(B1)に到達すると、ブーム9を旋回させて節点P(B2)を介して吊り下し位置Peである節点P(B3)に荷物Wを搬送させる。
このように構成することで、クレーン1は、荷物Wの重量Wgによって定まる作業可能範囲Ar内(図4参照)のみに節点P(n)とそれらを繋ぐ経路R(n)を生成することで、経路生成のためのコストを削減することができる。また、クレーン1は、アクチュエータの荷物Wの搬送に優先順位の高いアクチュエータを用いて荷物Wが最短時間で吊り上げ位置Psから吊り下し位置Peまで搬送される搬送経路CRと、搬送経路CRで荷物Wを搬送する際に用いるアクチュエータの組み合わせが決定される。つまり、クレーン1は、その特性や作業可能範囲Arの状態等から定めたアクチュエータの優先順位に基づいて、第一の条件および第二の条件を満たすアクチュエータの組み合わせを選択する。これにより、アクチュエータの作動条件を考慮した最適な搬送経路CRで荷物Wを搬送することができる。
また、搬送経路決定部32dは、各アクチュエータの単独作動における経路の選択を第一の条件としているが、各アクチュエータの併用作動による経路R(n)の選択を第一の条件にしてもよい。このように構成することで、クレーン1は、複数のアクチュエータの作動タイミングに応じた搬送経路CRが決定される。これにより、アクチュエータの作動条件を考慮した最適な搬送経路CRで荷物Wを搬送することができる。なお、節点P(n)は、メインウインチ13およびサブウインチ15の繰り入れおよび繰り出し、ジブのチルトおよび伸縮において、任意の刻み毎に生成することができる。つまり、クレーン1は、経路R(n)および搬送経路RCをメインウインチ13およびサブウインチ15の繰り入れおよび繰り出し、ジブのチルトおよび伸縮に基づいて生成することができる。
本実施形態において、クレーン1は、外部のサーバコンピュータ等から作業領域Awの空間情報および作業に関する情報等を取得し、制御装置32において荷物Wの搬送経路CRを自動生成するが、外部のサーバコンピュータ35に構成されている経路生成システム33において生成された荷物Wの搬送経路CRを取得する構成でもよい。
図10に示すように、経路生成システム33は、クレーン1による荷物Wの搬送経路CRを自動生成する。経路生成システム33は、サーバコンピュータ側通信機34を有するサーバコンピュータ35に構成されており、クレーン1の制御装置32とデータ通信機31を介して接続されている。経路生成システム33は、情報通信部33a、作業可能範囲設定部32a、節点生成部32b、経路生成部32c、搬送経路決定部32dを有する。なお、以下の経路生成システム33は、クレーン1に替えて適用されるものとして、その説明で用いた名称、図番、符号を用いることで、同じものを指すこととし、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
情報通信部33aは、クレーン1から各種情報を取得し、各種情報をクレーン1に伝達する。情報通信部33aは、サーバコンピュータ側通信機34を用いて、クレーン1の位置情報、クレーン1の機体情報、作業に関する情報等をクレーン1の制御装置32から取得する。また、情報通信部33aは、搬送経路決定部32dで決定した搬送経路CRをクレーン1に伝達する。
作業可能範囲設定部32aは、情報通信部33aが取得した搬送する荷物Wの重量Wgから作業可能範囲Arをサーバコンピュータ35内の仮想空間上に設定する。さらに、作業可能範囲設定部32aは、情報通信部33aが取得した作業に関する情報である吊り上げ位置Ps、吊り下し位置Pe、荷物Wの重量Wgと作業領域Aw(図4参照)の空間情報とを取得する。作業可能範囲設定部32aは、クレーン1の機体情報、荷物Wの重量Wgからクレーン1が荷物Wを搬送することができる空間である作業可能範囲Ar(図4参照)を算出する。
節点生成部32bは、作業可能範囲Ar内において荷物Wが通過可能な全ての節点P(n)を生成する(図5参照)。節点P(n)は、三次元座標で表される。この際、地物Cが占有している空間は、作業可能範囲Arに含まれていないので、節点生成部32bによって節点P(n)が生成されない。
経路生成部32cは、作業可能範囲Ar内において荷物Wが通過可能な全ての経路R(n)を生成する(図7参照)。経路R(n)は、例えばサブワイヤロープ16を最も巻き上げた状態で吊り下げられた荷物Wが通過可能な複数の節点P(n)間を繋いだものである。そして、搬送経路決定部32dは、アクチュエータを作動させる優先順位および所定の条件を満たす荷物Wの搬送経路CRを決定する。
経路生成システム33は、サーバコンピュータ35の仮想空間内で算出した搬送経路CRを、サーバコンピュータ側通信機34を用いてクレーン1の制御装置32に送信する。制御装置32は、経路生成システム33から取得した搬送経路CRの情報に基づいて、クレーン1の各アクチュエータを制御する。このように構成することで、経路生成システム33は、クレーン1の位置情報、クレーン1の機体情報、作業に関する情報を取得し、十分な計算能力を有するサーバコンピュータ35を用いて搬送経路CRを算出する。これにより、経路生成システム33は、計算能力に制限があるクレーン1の制御装置32の計算量を抑制することができる。
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。