本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
本発明者が鋭意検討した結果、前述した先行技術文献1~6に記載の技術には、以下に示すように、さらなる改善の余地があることを見出した。
熱可塑性樹脂を含む熱可塑性エラストマー組成物の製造において、通常、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびスチレン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性樹脂はペレットとして使用される。従って、熱可塑性エラストマー組成物の原料としてアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体を用いる場合、本発明者は、取り扱いの観点から、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体もペレットであることが好ましいことに気づいた。しかしながら、前述した特許文献2~5に記載されているような比較的低分子量のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、ペレット状にすることができず、ベール状での取り扱いを要するものであった。本発明者は、前述した先行技術文献2~5に記載の技術では、熱可塑性エラストマー組成物の製造において、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体を投入するための特別の設備や方法が必要になることを独自に見出した。
特許文献1~5に記載の技術では、熱可塑性エラストマー組成物の製造において、2官能の重合開始剤を用いていたため、スチレン-イソブチレンブロック共重合体の末端に導入されるアリル基は、一分子あたり2個以下と低いものであった。本発明者は、更なる検討の結果、特許文献1~5に記載の技術のように、共重合体一分子当たりのアリル基数が低い場合、所望のゴム物性を有する組成物を得ることが困難であることも、独自に見出した。
特許文献6には、アリルシラン化合物よりも安価なアルケニル化合物を用いて製造された、アルケニル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体が開示されている。しかしながら、特許文献6では、当該共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物のゴム物性については検討されていなかった。特に、本発明者は、検討の結果、アルケニル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体を用いた場合、アルケニル基の反応性が十分でないため、当該共重合体を含む動的架橋組成物のゴム物性が不十分になる場合があることを独自に見出した。
特許文献6には、イソプレンをカチオン重合して得られる共重合体も開示されている。このような共重合体中では、イソプレンに由来する単量体単位は基本的に1,4-結合からなり、3置換の炭素-炭素二重結合構造をとっている。このような多置換炭素-炭素二重結合は一般的に反応性が十分ではない。すなわち、このような多置換炭素-炭素二重結合は、実質的に反応性を持たないと言える。本発明者は、(a)このような多置換炭素-炭素二重結合は、本発明の一実施形態で実施するヒドロシリル化反応に対する反応性も著しく低いこと、および(b)このような多置換炭素-炭素二重結合を有する共重合体を用いた組成物は、所望のゴム物性が得られない場合があること、を独自に見出した。
一般に、優れた圧縮永久歪、耐熱性、耐クリープ性、耐溶剤性といったゴム物性を得るためには、用いる共重合体(架橋性重合体)の分子量を小さくし、他の架橋性配合剤を加えるなどして、架橋密度を出来るだけ高める設計が好ましい。しかしながら、この場合、共重合体および当該共重合体を含む組成物の柔軟性および流動性が損なわれる場合が多い。これら諸物性のバランスに優れた共重合体および当該共重合体を含む組成物が求められていた。
優れたゴム物性のためには共重合体の末端にアリル基を導入する必要がある。しかしながら、従来技術では分子量が大きい共重合体の末端にはアリル基は導入できず、低分子量の共重合体しか得られなかった。一方、上述したように、低分子量の共重合体はペレット状にすることができない。すなわち、ペレット状に成型でき、かつ、ゴム物性に優れる組成物を提供できる共重合体を得ることは、技術的な困難性があった。ここで、発明者は、鋭意検討の結果、下記(a)および(b)を独自に見出し、本発明を完成させた:(a)共重合体の分子量を大きくすることにより、共重合体をペレット状に成形することが可能となること、および(b)共重合体の末端を構成する単量体(例えばスチレン)の消費率が一定の値に達する前にアリル化反応を行うことにより、分子量が大きい共重合体の末端に効率的にアリル基を導入できること。
〔1.アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体〕
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、分子鎖末端にアリル基を有し、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)とスチレンを主体とする重合体ブロック(b)とからなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)が30,000~130,000(g/mol)であり、分子量分布(Mw/Mn)が、1.10~2.00であり、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)の含有量が50~90重量%であり、分子鎖中に下記一般式(1)で示される基を有し、
(前記一般式(1)中、R
1およびR
2は、水素、または炭素数1~6の1価の炭化水素基を表す。R
1およびR
2は、同一であっても異なっていてもよい。また、複数存在するR
1およびR
2は、それぞれが同一の基であっても異なる基であってもよい。)
一分子中にアリル基を2.1個超3.0個以下有する。
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、上記構成を有するため、(a)取り扱いが容易であり、(b)優れたゴム物性を発現しうる組成物を提供できる、という利点を有する。ここで、取り扱いが容易であるとは、ペレット状に成型できることをいう。また、本明細書において、ゴム物性とは、柔軟性、圧縮永久歪、流動性、耐熱性、耐クリープ性、および耐溶剤性を意図する。
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体を、以下単に、共重合体とも称する。
共重合体は、重合体鎖の構造としては、直鎖状であってもよく、分岐した構造を有していてもよい。
共重合体における各重合体鎖は、それぞれイソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)とスチレンを主体とする重合体ブロック(b)から構成されている限り、その構造には特に制限はなく、例えば、直鎖状、分岐状、星状等の構造を有することができる。
各重合体鎖は、それぞれジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体等のいずれも選択可能である。
共重合体の好ましい構造としては、諸物性および成形加工性に優れることから、(i)分岐した構造を有し、(b)各重合体末端にスチレンを主体とする重合体ブロック(b)を有し、分岐点とスチレンを主体とする重合体ブロック(b)の間にイソブチレンを主体とする重合体ブロック主体(a)を有する構造が挙げられる。
<1-1.イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)>
イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)を、以下、重合体ブロック(a)とも称する。重合体ブロック(a)は実質的にイソブチレンのみからなる重合体ブロックであってもよいし、本発明の効果を損なわない範囲であれば、イソブチレン以外の単量体単位を含有していてもよい。本明細書において、イソブチレン以外の単量体単位とは、イソブチレン以外の単量体を重合して得られる単量体単位のことをいう。
イソブチレン以外の単量体としては、イソブチレンとカチオン重合可能な単量体であれば特に制限はないが、例えば、脂肪族オレフィン類、芳香族ビニル化合物、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、β-ピネン、およびアセナフチレン等の単量体が挙げられる。これらは1種類のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体ブロック(a)は、得られる共重合体の機械物性が優れることから、イソブチレンに由来する単量体単位を60重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことが更に好ましい。上記構成によると、共重合体のガスバリア性が低下しないという利点を有する。本明細書において、イソブチレンに由来する単量体単位とは、イソブチレン単量体を重合して得られる単量体単位のことをいう。
<1-2.スチレンを主体とする重合体ブロック(b)>
スチレンを主体とする重合体ブロック(b)を、以下、重合体ブロック(b)とも称する。重合体ブロック(b)は実質的にスチレンのみからなる重合体ブロックであってもよいし、本発明の効果を損なわない範囲であれば、スチレン以外の単量体単位を含有していてもよい。本明細書において、スチレン以外の単量体単位とは、スチレン以外の単量体を重合して得られる単量単位のことをいう。
スチレン以外の単量体としては、例えば、メチルスチレン(o-体、m-体またはp-体のいずれでも良い)、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2,6-ジメチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-メチル-o-メチルスチレン、α-メチル-m-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、β-メチル-o-メチルスチレン、β-メチル-m-メチルスチレン、β-メチル-p-メチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、α-メチル-2,6-ジメチルスチレン、α-メチル-2,4-ジメチルスチレン、β-メチル-2,6-ジメチルスチレン、β-メチル-2,4-ジメチルスチレン、o-、m-またはp-クロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、α-クロロ-o-クロロスチレン、α-クロロ-m-クロロスチレン、α-クロロ-p-クロロスチレン、β-クロロ-o-クロロスチレン、β-クロロ-m-クロロスチレン、β-クロロ-p-クロロスチレン、2,4,6-トリクロロスチレン、α-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、α-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,6-ジクロロスチレン、β-クロロ-2,4-ジクロロスチレン、t-ブチルスチレン(o-体、m-体またはp-体のいずれでも良い)、メトキシスチレン(o-体、m-体またはp-体のいずれでも良い)、クロロメチルスチレン(o-体、m-体またはp-体のいずれでも良い)、ブロモメチルスチレン(o-体、m-体またはp-体のいずれでも良い)、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、およびビニルナフタレン等が挙げられる。
スチレン以外の単量体の中でも、工業的な入手性、価格、および反応性に優れることから、メチルスチレン(o-体、m-体またはp-体のいずれでも良い)、α-メチルスチレン、インデン、および/または、これらの混合物が好ましい。
得られる共重合体の諸物性および単量体の反応性などに優れることから、スチレンを主体とする重合体ブロック(b)は、スチレンに由来するユニットを60重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことが更に好ましい。上記構成によると、製品コストが低く、優れた諸物性を有する共重合体を得られる。本明細書において、スチレンに由来する単量体単位とは、スチレン単量体を重合して得られる単量体単位のことをいう。
<1-3.共重合体中の特定構造基>
上述したように、共重合体は、前記一般式(1)で示される基を有する。これにより、反応性が高い共重合体を得られる。反応性が高い共重合体は、所望のゴム物性を有する組成物を提供できる。
前記一般式(1)で示される基の導入方法は特に制限は無いが、通常、重合開始剤と呼ばれる重合反応の起点となる原料が上記一般式(1)の構造を有している場合、当該重合開始剤の共存下に各種単量体単位を重合することで、前記一般式(1)で示される基を共重合体中に導入することができる。前記一般式(1)で示される基を有する共重合体は、重合体鎖の構造としては分岐した構造を有する。
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体では、前記一般式(1)におけるR1およびR2が、メチル基であることが、原料の入手性、および反応性の高い共重合体が得られることから好ましい。
上記一般式(1)で示される基を有する共重合体を得るために、重合開始剤として、下記一般式(2)で表される化合物を使用できる。
(R
1およびR
2は、水素、または炭素数1~6の1価の炭化水素基を表す。R
1およびR
2は、同一であっても異なっていてもよい。また、複数存在するR
1およびR
2は、それぞれが同一の基であっても異なる基であってもよい。Xは、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシル基および炭素数1~6のアシロキシル基からなる群より選択される1価の有機基を表す。)
上記ハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素、およびヨウ素等が挙げられる。上記炭素数1~6のアルコキシル基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-またはイソプロポキシ基等が挙げられる。上記炭素数1~6のアシロキシ基としては特に限定されず、例えば、アセチルオキシ基、およびプロピオニルオキシ基等が挙げられる。
本発明で用いられる一般式(2)の化合物の例としては、1,3,5-トリス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン(別名:トリクミルクロリド)、1,3,5-トリス(1-ブロモ-1-メチルエチル)ベンゼン(別名:トリクミルブロミド)、1,3,5-トリス(1-ヨード-1-メチルエチル)ベンゼン(別名:トリクミルヨージド)、1,3,5-トリス(1-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、および1,3,5-トリス(1-アセチルオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン等が挙げられる。
<1-4.数平均分子量(Mn)>
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算分子量での数平均分子量(Mn)が、30,000~130,000(g/mol)であることが好ましく、40,000~120,000(g/mol)であることが更に好ましい。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーは、GPC(Gel permeation chromatography)測定、またはSEC(Size exclusion chromatography)測定とも言う。
前記数平均分子量が30,000(g/mol)未満の場合、得られる共重合体をペレット状に成形できない場合がある。さらに、得られる共重合体が提供する組成物は、ゴム物性が不十分であり、経済的に不利な場合がある。
一方、前記数平均分子量が130,000(g/mol)を超える場合、得られる共重合体は、流動性、および成形性の低下が大きく、取扱いが困難になる。また、この場合、共重合体へのアリル基の導入率が低下し、アリル基導入率の低い共重合体が得られる。そのため、当該共重合体を用いた場合、所望のゴム物性を有する組成物が得られにくい。従って、前記数平均分子量が30,000~130,000(g/mol)の範囲外であることは好ましくない。
<1-5.分子量分布(Mw/Mn)>
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の分子量分布(重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)で表される数)は、樹脂の溶融粘度を低粘度化でき、成形加工時の取り扱い易さに優れることから、1.10~2.00が好ましく、1.10~1.90がより好ましい。上記構成によると、共重合体間の分子量の均一性が高く、溶融状態または溶剤等を利用して成形するとき共重合体の粘度が高くなる傾向がない。そのため、作業性が良好であるという利点を有する。
<1-6.イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)の割合>
ゴム材料としての力学物性が優れた共重合体が得られることから、共重合体では、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)の含有量が50~90重量%であることが好ましく、60~80重量%であることが更に好ましい。イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)の含有量が90重量%以下である場合、共重合体がベール状となることがないため、加工時の取り扱い性が悪化することがなく、共重合体をペレット状に成形できる。そのため、取り扱いが容易となる。イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)の含有量が50重量%以上である場合、共重合体の硬度が高くなり過ぎず、柔軟性を有することからゴム材料としての性能を十分に発揮できるという利点がある。
<1-7.アリル基>
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体のアリル基は、Si-H基含有化合物とのヒドロシリル化反応に対して活性を持つ炭素‐炭素二重結合基を有する官能基でもある。
本明細書において、アリル基とは、主鎖に結合した官能基のうち、主鎖-CH2-CH=CH2の構造をもつ官能基を意図する。本明細書において、主鎖に結合した官能基のうち、主鎖-CH2-CH(X)-(CH2)m-CH=CH2の構造をもつ官能基はアルケニル基とし、アリル基としない(Xはハロゲン、mは0以上の整数)。なお、共重合体に官能基を導入するときジエン化合物を用いる場合、主鎖にアルケニル基が導入される。すなわち、本発明の一実施形態においては、共重合体に官能基を導入するときジエン化合物を用いないことが好ましい。
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、耐熱性、耐クリープ性および耐溶剤性、並びに、他の樹脂との相溶性改善効果および圧縮永久歪改善効果に優れることから、一分子中にアリル基を2.1個超3.0個以下有することが好ましい。共重合体における一分子中のアリル基の数は、複数の共重合体の平均値であってもよい。
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体では、分子鎖末端へのアリル基導入率が、好ましくは70%超であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
ここで、共重合体が前記一般式(1)で示される基を有さず、共重合体の構造が直鎖状である場合を考える。この場合、一分子あたりにアリル基を2個有するとき、アリル基導入率は100%となる。すなわち、アリル基導入率=一分子あたりのアリル基の数/2×100となる。
共重合体が前記一般式(1)で示される基を有し、共重合体が分岐した構造を有する場合を考える。この場合、一分子あたりにアリル基を3個有するとき、アリル基導入率が100%となる。すなわち、アリル基導入率=一分子あたりのアリル基の数/3×100となる。
スチレン-イソブチレンブロック共重合体へのアリル基の導入方法としては、特に制限は無いが、好適に実施できる方法としては次のような方法が例示できる。
(1)ルイス酸触媒の存在下にアリルシラン化合物と反応させる方法
(2)ルイス酸触媒の存在下にアリルフェニルエーテル化合物と反応させる方法
(3)ルイス酸触媒の存在下にフェノール化合物と反応させることで、ポリマー末端にフェノール基を導入し、続けてハロゲン化アリル化合物と反応させることで、段階的にアリルフェニルエーテル基を構築する方法。
これらの中でも、本発明の一実施形態においては、アリルシラン化合物をアリル化剤として使用し、共重合体末端のハロゲン基とアリルシラン化合物との置換反応によりアリル基を導入する方法が、アリル基導入効率および導入されたアリル基の反応性に優れることから好ましい。
本明細書において、特許文献6に記載のジエン化合物を使用して導入された置換基は、アルケニル基とする。すなわち、特許文献6には、アルケニル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体が開示されている。本発明者が検討した結果、特許文献6に開示されているアルケニル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、得られた共重合体の架橋反応に対する活性が不足する場合があるため好ましくないことが分かった。
<1-8.形状>
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、ペレット状であることが好ましい。換言すれば、共重合体はペレット状に成形できることが好ましい。上記構成によると、取り扱いが容易となるという利点を有する。
本明細書において、ペレット状とは、円柱状、球状、楕円柱状、多角柱(例えば三角柱、四角柱、五角柱、六角柱など)等の略一定の厚みを有する固形状を示す。共重合体がペレットである場合、その断面は円形状、楕円形状、多角形等であり、特に限定されない。共重合体がペレットである場合、共重合体の表面は凹凸があってもよい。
〔2.アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の製造方法は、スチレン単量体およびイソブチレン単量体を混合してスチレン-イソブチレンブロック共重合体を得る第1の工程と、前記スチレン単量体の消費率が90%に達するまでに、前記スチレン-イソブチレンブロック共重合体およびアリル化剤を混合する第2の工程とを有し、前記第1の工程では、重合開始剤として、下記一般式(2)で表される化合物を使用する。
(R
1およびR
2は、水素、または炭素数1~6の1価の炭化水素基を表す。R
1およびR
2は、同一であっても異なっていてもよい。また、複数存在するR
1およびR
2は、それぞれが同一の基であっても異なる基であってもよい。Xは、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシル基および炭素数1~6のアシロキシル基からなる群より選択される1価の有機基を表す。)
当該構成によると、(a)取り扱いが容易であり、(b)優れたゴム物性を発現しうる組成物を提供し得る、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体を得ることができる。
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の製造方法を、以下単に、共重合体の製造方法、とも称する。共重合体の製造方法は、〔1.アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体〕の項に記載の共重合体を得るために好適に用いられ得る。共重合体の製造方法における各成分、共重合体、共重合体の物性の説明としては、〔1.アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体〕の項の説明を適宜援用できる。
本発明のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、前記一般式(2)で表される化合物の存在下で、(i)イソブチレンを主体とする単量体を重合させて、分岐したイソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)を構築し、(ii)次にスチレンを主体とする単量体を重合させて、スチレンを主体とする重合体ブロック(b)を構築して共重合体を得、(iii)最後に共重合体およびアリル化剤を混合し、共重合体末端にアリル基を導入する方法が好適に用いられる。前記(i)および(ii)は、第1の工程であり、単量体を重合させているため、重合反応を行う工程ともいえる。前記(iii)は、第2の工程である。
第2の工程において、「前記スチレン単量体の消費率が90%に達するまでに、前記スチレン-イソブチレンブロック共重合体およびアリル化剤を混合する」とは、添加したスチレン単量体のうち、反応により消費された量が、投入量(仕込み量、添加量とも称する)の90%に達するまでに、共重合体とアリル化剤とを混合することである。なお、「消費率が90%に達するまで」とは、消費率は90%未満である。
本発明者は、スチレン単量体の消費率が90%に達するまでに、前記スチレン-イソブチレンブロック共重合体およびアリル化剤を混合することにより、アリル基の個数を2.1個超とできることを、初めて見出した。特に、重合開始剤として一般式(2)で示される化合物を使用した場合、スチレン単量体の消費率が90%以上に達した後、スチレン-イソブチレンブロック共重合体およびアリル化剤を混合したときには、アリル基の個数が2.1個以下となった。
ここで、本発明の効果を損なわない範囲であれば、共重合体の製造方法の第1の工程では、重合開始剤として、一般式(2)で示される化合物の他に、下記一般式(3)で示される別の化合物を混合して用いてもよい。
(CR1R2X)nY (3)
前記一般式(3)中、Xはハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基および炭素数1~6のアシロキシル基からなる群より選択される置換基を表す。R1及びR2は、それぞれ、水素原子または炭素数1~6の1価の炭化水素基を表す。R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよい。また、複数存在するR1およびR2は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。Yは、n個の置換基(CR1R2X)を有することができる多価の芳香族炭化水素基または多価の脂肪族炭化水素基を表す。nは、1~2または4~6の自然数を表す。
前記ハロゲン原子としては、塩素および臭素が挙げられる。上記炭素数1~6のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、およびエトキシ基等が挙げられる。上記炭素数1~6のアシロキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基が挙げられる。上記炭素数1~6の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-またはイソプロピル基等が挙げられる。
前記一般式(3)で表される化合物は重合開始剤であり、ルイス酸等の存在下で炭素陽イオンを生成し、重合反応、すなわちカチオン重合の開始点になると考えられる。
前記一般式(3)の化合物の例としては、(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン(別名:クミルクロリド)、1,4-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン(別名:p-ジクミルクロリド)、1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン(別名:m-ジクミルクロリド)、および、1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)-5-(tert-ブチル)ベンゼン等が挙げられる。
前記一般式(3)の化合物において好ましいものは、入手性および反応性の観点から、クミルクロリド、p-ジクミルクロリド、またはm-ジクミルクロリドである。
前記第1の工程(重合反応)、すなわち前記(i)および(ii)の工程は、一般にルイス酸触媒と重合開始剤との共存下で行われる。当該ルイス酸触媒としてはカチオン重合に使用できるものであれば特に限定されず、例えば、TiCl4、TiBr4、BCl3、BF3、BF3・OEt2、SnCl4、AlCl3、およびAlBr3等の金属ハロゲン化物;または、TiCl3(OiPr)、TiCl2(OiPr)2、およびTiCl(OiPr)3等の金属上にハロゲン原子とアルコキシド基との両方を有する金属化合物;Et2AlCl、EtAlCl2、Me2AlCl、MeAlCl2、Et1.5AlCl1.5、およびMe1.5AlCl1.5等の有機金属ハロゲン化物等が挙げられる。
前記ルイス酸触媒としては、触媒能および入手の容易さに優れることから、TiCl4、BCl3、SnCl4、TiCl3(OiPr)、TiCl2(OiPr)2、TiCl(OiPr)3、EtAlCl2、およびEt1.5AlCl1.5からなる群から選ばれる一種類以上のルイス酸触媒を用いることが好ましい。
前記ルイス酸触媒の使用量としては特に限定されず、使用する単量体の重合特性、重合濃度、所望する重合時間および重合反応中の発熱挙動等を鑑みて任意に設定することができる。好ましくは、前記一般式(2)で表される化合物1モルに対して、0.1~200モルの範囲で用いられ、より好ましくは0.2~100モルの範囲である。
前記第1の工程において、必要に応じて、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、および、金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等の電子供与体成分をさらに使用しても良い。当該電子供与体成分は、成長末端の炭素カチオン(Carbocation at growing chain end)を安定化させたり、ルイス酸に配位することでルイス酸性を調整したりする効果があると考えられている。そのため、電子供与体成分を用いた場合、分子量分布が狭く、かつ、構造が制御された重合体を得ることができる。
前記電子供与体成分としては、種々の化合物の電子供与体(エレクトロンドナー)として強さを表すパラメーターとして定義されるドナー数が15~60である化合物が好適に使用され得る。そのような化合物としては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ヘキサメチレンオキシド、チタン(IV)テトラメトキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、およびチタン(IV)テトラブトキシド等が挙げられる。
前記電子供与体成分としては、添加効果および入手の容易さに優れることから、2-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、およびチタン(IV)テトライソプロポキシドからなる群から選択される一種類以上の化合物がより好適に用いられ得る。
前記電子供与体成分は、通常、前記重合開始剤1モルに対して0.01~100モル用いられ得る。共重合体の製造方法では、電子供与体成分は、重合開始剤1モルに対して、好ましくは、0.1~50モルの範囲で用いられる。
前記第1の工程および第2の工程は、必要に応じて有機溶媒中で行うことができる。前記有機溶媒としては、カチオン重合で一般的に使用される溶媒であれば特に限定されず、ハロゲン化炭化水素からなる溶媒、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等の非ハロゲン系の溶媒またはこれらの混合物を用いることができる。
前記ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、塩化プロピル、塩化ブチル、塩化ペンチル、および塩化ヘキシル等が挙げられる。
前記脂肪族および/または芳香族系炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、およびトルエン等が挙げられる。
前記有機溶媒としては、溶解性および経済性に優れることから、塩化メチル、塩化ブチル、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、およびトルエンが特に好適に用いられる。これらは1種類のみ使用してもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いる場合は、溶解性、反応性および経済性の観点から、任意の割合で混合することができる。
溶液の粘度および除熱の容易さの観点から、得られる共重合体の溶液濃度は、1~50重量%となるように設定されるのが好ましく、3~35重量%となるように設定されるのがより好ましい。
共重合体の製造方法では、前記重合反応(リビングカチオン重合)を行う温度は、特に制限は無いが、例えば、-100℃以上50℃未満の温度で各成分を混合し、重合反応を行うことが好ましい。更に、エネルギーコストおよび重合反応の安定性に優れることから、-85℃~0℃がより好ましい。前記重合反応の温度が(a)-100℃以上である場合、単量体が析出することがなく、(b)50℃未満である場合、副反応の割合が減少し、目的とする共重合体を得やすいという利点を有する。
第2の工程で用いられ得るアリル化剤としては、ジアリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、ジアリルジフェニルシラン、トリアリルメチルシラン、およびテトラアリルシラン等が挙げられる。これらアリル化剤の中でも、工業的な入手性が良好であることから、ジアリルジメチルシランおよびアリルトリメチルシランがより好ましい。これらアリル化剤は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
〔3.アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物〕
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物は、(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体、および、(B)オレフィン系樹脂を(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体100重量部に対して、5~200重量部含有する。ここで、(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、〔1.アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合〕の項に記載のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体である。前記構成によると、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物は、優れたゴム物性を発現しうるという利点を有する。
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物を、以下単に、共重合体組成物とも称する。共重合体組成物は、熱可塑性エラストマー組成物でもあり得る。
<3-1.(B)オレフィン系樹脂>
共重合体組成物を製造する際には、(B)オレフィン系樹脂を使用する。
前記(B)オレフィン系樹脂としては特に制限は無いが、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系樹脂、およびポリアクリル系樹脂などが挙げられる。
前記ポリオレフィン系樹脂としては、(i)エチレン、(ii)炭素数3~20のα-オレフィンの含有量が50~100モル%であるα-オレフィン単独重合体またはα-オレフィン共重合体、および(iii)炭素数3~20の環状オレフィンの含有量が50~100モル%である環状オレフィンの単独重合体または環状オレフィンの共重合体が挙げられる。
前記ポリオレフィン系樹脂は、具体的に、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン等の環状オレフィンの(共)重合体、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)、およびスチレン-無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、具体的に、(i)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)およびスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、(ii)SBSおよびSISに水素を添加した、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、並びに(iii)スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、等が挙げられる。
前記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、および塩素化ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
前記ポリアクリル系樹脂としては、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル-ブタジエン-α-メチルスチレン(耐熱ABS)、ポリメチルメタクリレート、およびメチルメタクリレート-スチレン共重合体などが挙げられる。
前記(B)オレフィン系樹脂は、要求される特性に応じて使い分けることができる。例えば、耐熱性が要求される場合はポリプロピレンおよび環状オレフィン(共)重合体が好ましい。絶縁性などの電気特性が要求される場合はポリエチレンが好ましい。接着性などの極性が要求される場合は、エチレン-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-アクリル酸エチル共重合体などが好ましい。さらに、相溶性、経済性、およびゴム物性に優れることから、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
前記(B)オレフィン系樹脂としては、耐熱性、機械特性および経済性に優れることから、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィン(共)重合体、およびスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーの中でも特に耐熱性が要求される場合には、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、およびスチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)などの水素添加された共重合体、並びにスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)が好ましい。
共重合体組成物中、(B)オレフィン系樹脂の含有量(配合量)は、(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体100重量部に対して、5~200重量部であることが好ましく、10~150部であることが更に好ましい。(B)オレフィン系樹脂の前記含有量が、(i)200重量部以下である場合、柔軟性および他のゴム物性に優れ、(ii)5重量部以上である場合、得られる共重合体組成物は成形性に優れる。
<3-2.(C)可塑剤>
共重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、成形性および柔軟性を向上させることができるため、さらに(C)可塑剤を含有することが好ましい。
前記(C)可塑剤は特に限定されないが、通常、室温で液状である材料が好適に用いられる。また親水性および疎水性のいずれの可塑剤も使用できる。このような可塑剤としては各種ゴム用可塑剤、または樹脂用可塑剤が挙げられる。前記(C)可塑剤としては、鉱物油系可塑剤、植物油系可塑剤、および合成系可塑剤を挙げることができる。
前記鉱物油系可塑剤としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、および芳香族系の高沸点石油成分が挙げられる。好ましくは、架橋反応を阻害しないパラフィン系オイルである。
前記植物油系可塑剤としては、ひまし油、綿実油、あまみ油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう、パインオイル、およびオリーブ油などが挙げられる。
前記合成系可塑剤としては、ポリブテン、水添ポリブテン、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン、液状ポリα-オレフィン類などの液状合成油もしくは低分子量の合成油が挙げられる。また、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、およびアジピン酸ジブチル等の二塩基酸ジアルキルエステル等も用いられる。
取り扱いやすさ、経済性、および粘度特性に優れることから、(C)可塑剤は、パラフィン系オイルが好ましい。一方、相溶性およびガスバリア性に優れることから、(C)可塑剤は、ポリブテンオイルが好ましい。更に、抽出性が極めて低いため、衛生性に優れることから、数平均分子量が2,000以上のポリブテンが好ましい。
前記(C)可塑剤は所望の粘度および物性を得るために2種以上を任意の割合で組み合わせて使用することも可能である。
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物において、(C)可塑剤の含有量(配合量)は、(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体100重量部に対して、1~300重量部含有することが好ましい。(C)可塑剤の前記含有量が300重量部以下である場合、(i)組成物のタックが顕著にならないため、取り扱い易いこと、および(ii)好適な機械強度のバランスを維持することができるという利点がある。
本発明の一実施形態に係る(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、さらに酸化防止剤を含んでいてもよい。
<3-3.物性>
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物のゴム物性、具体的には、柔軟性、圧縮永久歪、流動性、耐熱性、耐クリープ性、および耐溶剤性について説明する。
共重合体組成物の柔軟性は、硬度を指標として評価することができる。硬度が10以上70以下であれば、共重合体組成物は柔軟性に優れることを意味する。
共重合体組成物の圧縮永久歪は、JIS K 6262に準拠して測定できる。具体的な測定方法は、下記実施例にて詳述する。共重合体組成物の圧縮永久歪は、40%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
共重合体組成物の流動性は、メルトフローレート(MFR)によって評価できる。MFRが大きいほど、流動性が高いことを意味する。共重合体組成物は、流動性が高いものほど、取り扱いやすい。共重合体組成物は、MFRが0.3g/10分以上であることが好ましく、1g/10分以上であることがより好ましく、3g/10分以上であることがさらに好ましく、5g/10分以上であることが特に好ましい。MFRの具体的な測定方法は、下記実施例にて詳述する。
共重合体組成物の耐熱性は、貯蔵弾性率から算出される保持率によって評価できる。保持率とは、23℃における貯蔵弾性率に対する、130℃または140℃における貯蔵弾性率の比である。保持率が大きいほど、耐熱性に優れることを意味する。共重合体組成物の130℃における保持率は、測定条件100Hzの場合20%以上であることが好ましく、測定条件10Hzの場合23%以上であることが好ましく、測定条件1Hzの場合23%以上であることが好ましい。共重合体組成物の140℃における保持率は、測定条件100Hzの場合12%以上であることが好ましく、測定条件10Hzの場合13%以上であることが好ましく、測定条件1Hzの場合13%以上であることが好ましい。貯蔵弾性率の具体的な測定方法は、下記実施例にて詳述する。
共重合体組成物の耐クリープ性は、クリープ率によって評価できる。クリープ率が低いほど、耐クリープ性に優れることを意味する。クリープ率の具体的な測定方法は、下記実施例にて詳述する。共重合体組成物のクリープ率は、測定条件0分(荷重直後)の場合200%以下であることが好ましく、測定条件50分後の場合225%以下であることが好ましく、測定条件100分後の場合260%以下であることが好ましく、測定条件150分後の場合270%以下であることが好ましく、測定条件200分後の場合275%以下であることが好ましい。クリープ率の具体的な測定方法は、下記実施例にて詳述する。
共重合体組成物の耐溶剤性は、トルエンに一定時間浸したときの膨潤率によって評価できる。膨潤率が小さいほど、耐溶剤性に優れることを意味する。共重合体組成物は、30分後の膨潤率が60%未満、および/または、90分後の膨潤率が145%未満であることが好ましい。膨潤率の具体的な測定方法は、下記実施例にて詳述する。
〔4.アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物の製造方法は、前記(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体と前記(B)オレフィン系樹脂とを溶融混練する工程を有し、前記溶融混練する工程では、前記アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体同士を動的架橋反応させるものである。前記構成によると、優れたゴム物性を発現しうるアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物を提供できる。本発明の一実施形態に係るアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物の製造方法を、以下単に共重合体組成物の製造方法とも称する。
前記動的架橋反応は、溶融混練しながら樹脂の架橋反応を行うこと表す。当該溶融混練方法を用いることで、架橋させたゴム成分を含み、熱可塑性を有する組成物を製造することができる。その結果、前記ゴム物性、成形性および経済性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を製造することができる。
(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体を架橋する手段としては従来公知の方法を用いることができ、特に制限は無いが、例えば、加熱による熱架橋、および架橋剤による架橋を行うことができる。
これらの中でも、反応速度および架橋効率の面で、架橋剤としてSi-H結合含有化合物を用いることが好ましい。すなわち、共重合体組成物の製造方法では、動的架橋反応がヒドロシリル化反応であることが好ましい。
一般に、加硫および樹脂架橋などの前記動的架橋反応は、架橋剤および架橋触媒等の多様な副原料を必要とするだけでなく、当該副原料がゴム材料から経時的に溶出(ブリード)する場合があり、このようなブリードが嫌われる用途では使用が制限さるという課題があった。
一方、前記ヒドロシリル化反応は、架橋剤および架橋触媒が極めて少量で済むだけでなく、これら成分のブリードも非常に少ないことが利点であり、本発明において好適に用いることができる。
本発明で使用しうるSi-H結合含有化合物としては特に制限はなく、一般に、アルキルハイドロジェンシリコーンと呼ばれる化合物を好適に使用可能である。当該アルキルハイドロジェンシリコーンについては、特許文献4の開示を参照することができる。
本発明の(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体と、前記アルキルハイドロジェンシリコーンとを動的架橋反応させる際に、触媒として種々の遷移金属触媒が好適に使用できる。当該遷移金属触媒において、特に、中心金属として白金原子を有する化合物が好ましく、配位子としてオレフィン化合物が配位した白金錯体が更に好ましい。前記遷移金属触媒については、特許文献4の開示を参照することができる。
本発明における熱可塑性エラストマー組成物の溶融混練の方法は特に限定されない。前記溶融混練方法としては、(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体、(B)オレフィン系樹脂および、(C)可塑剤などの各種成分が均一に加熱混合され得る方法であればよく、当業界で知られる、いずれの方法でもよい。
本発明の(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、室温において固体であり、ペレット、クラムおよび粉体などの形状として取り扱うことができる。したがって、本発明の(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体を押出機に投入する際は、一般的な供給装置を用いることができる。
本発明の(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体を押出機に投入する方法は、以下に例示する方法によって好ましく行うことができる。例えば、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、およびロール等のような密閉式または開放式のバッチ型混練装置を用いて製造する場合、架橋剤および架橋触媒以外の全ての成分を予め混合し均一になるまで溶融混練する。次いでそれに架橋剤および架橋触媒を添加して、架橋反応を十分に進行させた後で溶融混練を停止する方法を採用することができる。
また、単軸押出機および二軸押出機等のように連続型の溶融混練装置を用いて製造する場合、架橋剤および架橋触媒以外の全ての組成物を予め押出機などの溶融混練装置によって均一になるまで溶融混練した後ペレット状に成形する。次に当該ペレット状の(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体に架橋剤をドライブレンドした後、押出機などの溶融混練装置で溶融混練して、組成物を動的に架橋する方法がある。もしくは、架橋剤および架橋触媒以外の全ての組成物を押出機などの溶融混練装置によって溶融混練し、そこに押出機のシリンダーの途中から架橋剤および架橋触媒を添加して、更に溶融混練し、組成物を動的に架橋する方法などを採用することができる。
上述した溶融混練法における混練温度としては、140~250℃が好ましい。前記構成によると、(B)オレフィン系樹脂を十分に溶融でき、均一に混練することができる。さらに、(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体、および、(B)オレフィン系樹脂の熱分解が進行しないという利点を有する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂に対して一般に採用される成型方法および成形装置を用いて溶融成形できる。例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、およびブロー成形などである。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ゴム物性のバランスに優れているため、パッキング材、シール材、ガスケット、栓体などの密封用材料、ダンパー、自動車、車両、家電製品向けの制振材、防振材、自動車内装材、クッション材、日用品、電気部品、電子部品、スポーツ部材、グリップ材または緩衝材、電線被覆材、包装材、各種容器、文具部品として好適に使用することができる。
〔1〕分子鎖末端にアリル基を有し、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)とスチレンを主体とする重合体ブロック(b)とからなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)が30,000~130,000(g/mol)であり、分子量分布(Mw/Mn)が、1.10~2.00であり、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)の含有量が50~90重量%であり、分子鎖中に下記一般式(1)で示される基を有し、
(前記一般式(1)中、R
1およびR
2は、水素、または炭素数1~6の1価の炭化水素基を表す。R
1およびR
2は、同一であっても異なっていてもよい。また、複数存在するR
1およびR
2は、それぞれが同一の基であっても異なる基であってもよい。)一分子中にアリル基を2.1個超3.0個以下有することを特徴とするアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体。
〔2〕前記一般式(1)におけるR1およびR2が、メチル基であることを特徴とする〔1〕に記載のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体。
〔3〕前記イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)が、イソブチレンに由来するユニットを80重量%以上含むことを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体。
〔4〕前記スチレンを主体とする重合体ブロック(b)が、スチレンに由来するユニットを80重量%以上含むことを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体。
〔5〕前記アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体は、ペレット状であることを特徴とする、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体。
〔6〕スチレン単量体およびイソブチレン単量体を混合してスチレン-イソブチレンブロック共重合体を得る第1の工程と、前記スチレン単量体の消費率が90%に達するまでに、前記スチレン-イソブチレンブロック共重合体およびアリル化剤を混合する第2の工程とを有し、前記第1の工程では、重合開始剤として、下記一般式(2)で表される化合物を使用する〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の製造方法。
(R
1およびR
2は、水素、または炭素数1~6の1価の炭化水素基を表す。R
1およびR
2は、同一であっても異なっていてもよい。また、複数存在するR
1およびR
2は、それぞれが同一の基であっても異なる基であってもよい。Xは、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシル基および炭素数1~6のアシロキシル基からなる群より選択される1価の有機基を表す。)
〔7〕(A)〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体、および、(B)オレフィン系樹脂を前記(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体100重量部に対して、5~200重量部含有する、ことを特徴とするアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物。
〔8〕前記(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体100重量部に対して、更に(C)可塑剤を1~300重量部含有することを特徴とする〔7〕に記載のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物。
〔9〕前記(A)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体と前記(B)オレフィン系樹脂とを溶融混練する工程を有し、前記溶融混練する工程では、前記アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体同士を動的架橋反応させることを特徴とする〔7〕または〔8〕に記載のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物の製造方法。
〔10〕前記動的架橋反応がヒドロシリル化反応であることを特徴とする〔9〕に記載のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物の製造方法。
以下、実施例にて本発明を更に詳しく説明するが、これら実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
(1.分子量測定)
下記実施例中、得られた共重合体の「数平均分子量(Mn)」、「重量平均分子量(Mw)」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比、Mw/Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。
測定装置としては、Waters社製GPCシステムを用いた。測定条件は以下の通りである。
移動相:クロロホルム
カラム温度:35℃
試料溶液のポリマー濃度:4mg/mL。
(2.アリル基導入数)
得られた共重合体をプロトンNMRスペクトル(測定装置:Bruker社製AVANCEシリーズ、400MHz核磁気共鳴装置、測定溶媒:重クロロホルム)に供して、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の積分値と、アリル基の積分値とを得た。得られた積分値の比から、アリル基の数を求めた。以下に手順を示す。
(i)H1.1ppm=(使用したイソブチレンのモル数)/(使用した重合開始剤のモル数)×6
上記式により、1.1ppmに現れる、イソブチレンに由来する単量体単位中の二つのメチル基の積分値として設定すべき値H1.1ppmを計算した。
(ii)NMRスペクトル中、1.1ppmに現れるピークを検出し、当該ピークの積分値を、上記(i)にて計算して求めた値H1.1ppmと設定した。
(iii)この時、NMRスペクトル中、5.5ppmと4.8ppmに現れるアリル基由来の二つのピークを検出し、その積分値を求めた。それぞれをH5.5ppmとH4.8ppmとする。
(iv)アリル基の数=(H5.5ppm+H4.8ppm/2)/2
一分子中のアリル基の数を求めた。
(3.アリル基導入率)
得られた共重合体のアリル基導入率は、次式に従い算出した。
アリル基導入率=(アリル基の数)/(Xの数)×100
ただし、Xの数とは、共重合体の製造に用いた重合開始剤中のハロゲン原子(X)の数を意図する。重合開始剤として、一般式(2)で示される化合物(例えば1,3,5-トリクミルクロリド)を用いた場合、Xは3となる。また、重合開始剤として一般式(3)で示される別の化合物(例えばp-ジクミルクロリド)を用いた場合、Xは2となる。
(4.引張強度:Tb)
JIS K 6251に準拠して、得られたシート状組成物の引張強度を求めた。2mm厚のシート状組成物をダンベルで7号型に打抜いて得られたダンベル片を試験片とし、当該試験片を測定に使用した。引張速度は500mm/分とした。
(5.引張伸び:Eb)
JIS K 6251に準拠して、得られたシート状組成物の引張伸びを求めた。2mm厚のシート状組成物をダンベルで7号型に打抜いて得られたダンベル片を試験片とし、当該試験片を測定に使用した。引張速度は500mm/分とした。
(6.硬度)
JIS K 6253に準拠して、スプリング式のタイプAデュロメータ(高分子計器社製、型式CL-150)を使用して、得られたシート状組成物の硬度を測定した。2mm厚のシート状組成物をダンベルで7号型に打抜いて得られたダンベル片を試験片とし、当該試験片を測定に使用した。前記硬度は測定直後の数値を採用した。
(7.圧縮永久歪)
JIS K 6262に準拠して、以下の条件で測定した。試験片として、12.0mm厚の円柱状に成形した組成物を使用した。
温度:70℃
時間:22時間
変形率:25%。
(8.流動性)
JIS K 7210、A法に準拠して、以下の測定条件でMFR(メルトフローレート)を測定した。
温度:190℃
荷重:2.16kgf。
(9.耐熱性)
JIS K 6394に準拠して、得られたシート状組成物の耐熱性を求めた。シート状組成物から、6mm×5mm×2mmのサンプル片を切り出して、試験片とした。そして、動的粘弾性測定装置DVA-200(アイティー計測制御社製)を用いて、測定周波数100Hz、10Hz、1Hzでの貯蔵弾性率を、23℃、130℃、140℃において測定した。次に、23℃における貯蔵弾性率に対する、130℃または140℃における貯蔵弾性率の比を求め、当該比を保持率(%)とした。保持率を耐熱性の基準とした。
(10.耐クリープ性)
2mm厚のシート状組成物をダンベルで7号型に打抜いて得られたダンベル片を試験片とし、ダンベル片のくびれ部位に10mm間隔で標線を2本記入した。次に当該ダンベル片の片方を固定し、もう片方に23℃、50%RH下で1kgfの荷重をかけ、標線間距離の経時変化を測定することで、耐クリープ性を評価した。ここで、ある時間での標線間距離をZとして、次式によりクリープ率(%)を計算した。
クリープ率(%)=(Z-10)/10×100。
(11.耐溶剤性)
シート状組成物から、20mm×37mm×2mmのサンプル片を切り出して、試験片とした。当該試験片を約200gのトルエンに室温で浸した。一定時間経過後に、試験片を取り出し、表面に付着したトルエンをふき取り、試験片における重量の変化を測定した。ここで、初期の試験片重量をY1、ある時間での重量をYtとして、次式により膨潤率(%)を計算した。膨潤率(%)=(Yt-Y1)/Y1×100。
(実施例1)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(A-1)
200Lのリアクター内を窒素置換した後、塩化ブチル90kg及びヘキサン7.5kgを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、得られた混合物にイソブチレン19.5kg(348mol)、トリクミルクロリド154g(0.502mol)及び2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)32.7g(0.351mmol)を加えた。得られた混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン429g(2.26mol)を加えて重合を開始した。重合開始から60分間撹拌を行った後、ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を求めたところ、消費率が98.9%に達していることを確認した。
なお、イソブチレンの消費率は、具体的には、イソブチレン単量体の量をGCにより測定し、得られた結果を用いて次式により算出した:
イソブチレンの消費率(%)=(使用したイソブチレン単量体の量-GCにより測定された未反応のイソブチレン単量体の量)/使用したイソブチレン単量体の量×100
すなわち、イソブチレンの消費率は、使用したイソブチレン単量体のうち、重合体の生成に使用されたイソブチレン単量体の割合を示す。
その後、反応混合物にスチレン6.27kg(60.2mol)を添加した。GCによってスチレンの消費量を経時的に測定し、添加量(仕込量)の80%が消費された時点で、アリルトリメチルシラン229g(2.01mol)と、四塩化チタン381g(2.01mol)とを反応混合物に加えた。
なお、スチレンの消費率は、具体的には、スチレン単量体の量をGCにより測定し、得られた結果を用いて次式により算出した:
スチレンの消費率(%)=(使用したスチレン単量体の量-GCにより測定された未反応のスチレン単量体の量)/使用したスチレン単量体の量×100
すなわち、スチレンの消費率は、使用したスチレン単量体のうち、共重合体の生成に使用されたスチレン単量体の割合を示す。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに3時間撹拌を続けた後、反応終了とした。この時、スチレンは全量消費されていることをGCにより確認した。次に、50℃に加熱している、純水75kgと48%水酸化ナトリウム水溶液2.32kgとの混合物に、反応混合物を注いだ。更に、重合に使用したリアクター内を塩化ブチルとヘキサンとの混合溶媒(混合比9:1、v/v)113kgで洗浄し、この洗浄液も上記反応混合物と混合した。得られた反応混合物の内温が50℃に到達したことを確認した。その後、メカニカルスターラーで60分間激しく撹拌を行った。60分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。次に、有機相に純水72kgを加えて、同様に55℃で30分間激しく攪拌することで有機相を水洗した。30分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)繰り返した。このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上の様にして、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(A-1)を得た。
得られた共重合体(A-1)の数平均分子量は48,041、分子量分布は1.55であった。また、共重合体(A-1)中、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は76重量%であった。共重合体(A-1)の一分子中に導入されたアリル基数は2.3個であり、分子鎖末端へのアリル基導入率は77%であった。得られた共重合体(A-1)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
得られた共重合体(A-1)を株式会社モリヤマ社製造粒機2TR-50A(ヘッド温度110℃)を用いて造粒し、ペレット形状に成形できることを確認した。
このように、共重合体の分子量、および/またはイソブチレンを主体とする重合体ブロックの含有量を適切に選択することにより、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体をペレット形状に成形でき、取り扱い易い共重合体が得られることがわかる。
(実施例2)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(A-2)
1Lのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、注射器を用いて塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)361mLおよびヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)40mLを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、得られた混合物にイソブチレン137.5mL(1.46mol)、トリクミルクロリド0.645g(2.10mmol)及び2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)0.126ml(1.28mmol)を加えた。混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン0.83mL(7.55mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から67分間撹拌を行った後、ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を求めたところ、消費率が99.8%に達していることを確認した。なお、イソブチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物にスチレン32.1ml(279mmol)を添加した。GCによってスチレンの消費量を経時的に測定し、添加量(仕込量)の83%が消費された時点で、ジアリルジメチルシラン1.72mL(9.43mmol)と、四塩化チタン0.83mL(7.55mmol)とを反応混合物に加えた。なお、スチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに3時間撹拌を続けた後、反応終了とした。この時、スチレンは全量消費されていることをGCにより確認した。次に、55℃に加熱している、純水185mLと48%水酸化ナトリウム水溶液13.9gとの混合物に注いだ。更に、セパラブルフラスコを塩化ブチルとヘキサンの混合溶媒(混合比9:1、v/v)90gで洗浄し、上記反応混合物と混合した。得られた反応混合物の内温が50℃に達したことを確認した。その後、メカニカルスターラーで60分間激しく撹拌を行った。60分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。次に、有機相に純水190mLを加えて、同様に55℃で30分間激しく攪拌することで有機相を水洗した。30分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)繰り返した。このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上の様にして、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(A-2)を得た。
得られた共重合体(A-2)の数平均分子量は63,916、分子量分布は1.36であった。また、共重合体(A-2)中、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は74重量%であった。共重合体(A-2)の一分子中に導入されたアリル基数は2.5個であり、分子鎖末端へのアリル基導入率は83%であった。得られた共重合体(A-2)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
(実施例3)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(A-3)
2Lのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、注射器を用いて塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)1072mL及びヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)119mLを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、得られた混合物にイソブチレン300mL(3.16mol)、トリクミルクロリド1.90g(6.18mmol)及び2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)0.366ml(3.71mmol)を加えた。得られた混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン2.37mL(21.6mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から75分後に、ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を求めたところ、消費率が98.5%に達していることを確認した。なお、イソブチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物にスチレン94.6ml(821mmol)を添加した。GCによってスチレンの消費量を経時的に測定し、添加量(仕込量)の82%が消費された時点で、ジアリルジメチルシラン6.75mL(37.1mmol)と、四塩化チタン6.23mL(56.8mmol)とを反応混合物に加えた。なお、スチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに3時間撹拌を続けた後、反応終了とした。この時、スチレンは全量消費されていることをGCにより確認した。次に、55℃に加熱している、純水560mLと48%水酸化ナトリウム水溶液45gとの混合物に、反応混合物を注いだ。更に、重合に使用したセパラブルフラスコを塩化ブチルとヘキサンとの混合溶媒(混合比9:1、v/v)300gで洗浄し、上記反応混合物と混合した。得られた反応混合物の内温が50℃に到達したことを確認した。その後、メカニカルスターラーで60分間激しく撹拌行った。60分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。次に、有機相に純水600mLを加えて、同様に55℃で30分間激しく攪拌することで有機相を水洗した。30分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)繰り返した。このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上の様にして、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(A-3)を得た。
得られた共重合体(A-3)の数平均分子量は47,223、分子量分布は1.82であった。また、共重合体(A-3)中、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は67重量%であった。共重合体(A-3)の一分子中に導入されたアリル基数は2.9個であり、分子鎖末端へのアリル基導入率は97%であった。得られた共重合体(A-3)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
(実施例4)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(A-4)
500mLのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、注射器を用いて塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)270mL及びヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)30mLを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、得られた混合物にイソブチレン87.8mL(0.930mol)、トリクミルクロリド0.200g(0.650mmol)および2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)0.128ml(1.30mmol)を加えた。得られた混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン1.00mL(9.10mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から55分後に、ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を求めたところ、消費率が99.6%に達していることを確認した。なお、イソブチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物にスチレン20.2ml(176mmol)を添加した。GCによってスチレンの消費量を経時的に測定し、添加量(仕込量)の89%が消費された時点で、ジアリルジメチルシラン0.71mL(3.90mmol)と、四塩化チタン1.00mL(9.10mmol)とを反応混合物に加えた。なお、スチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに3時間撹拌を続けた後、反応終了とした。この時、スチレンは全量消費されていることをGCにより確認した。次に、55℃に加熱している、純水495mLと48%水酸化ナトリウム水溶液10gとの混合物に、反応混合物を注いだ。更に、重合に使用したセパラブルフラスコを塩化ブチルとヘキサンとの混合溶媒(混合比9:1、v/v)412gで洗浄し、この洗浄液も上記反応混合物と混合した。得られた反応混合物の内温が50℃に到達したことを確認した。その後、メカニカルスターラーで60分間激しく撹拌を行った。60分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相を分離させて、分離した水相とを払い出した。次に、有機相に純水500mLを加えて、同様に55℃で30分間激しく攪拌することで有機相を水洗した。30分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上の様にして、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(A-4)を得た。
得られた共重合体(A-4)の数平均分子量は103,919、分子量分布は1.39、であった。また、共重合体(A-4)中、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は73重量%であった。共重合体(A-4)の一分子中に導入されたアリル基数は2.2個であり、分子鎖末端へのアリル基導入率は73%であった。得られた共重合体(A-4)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
(実施例5)
実施例1で得られた共重合体(A-1)、オレフィン系樹脂(株式会社プライムポリマー社製ポリプロピレン「J215W」)、および可塑剤(出光興産株式会社製ポリブテンオイル「100R」)を表2に示す重量部の割合で用意し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋製機社製)を用いてそれらを3分間溶融混練した。次に、架橋剤(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン社製メチルハイドロジェンシリコーン「TSF484」)を表2に示す割合で溶融混練物に添加し、更に、架橋触媒(エヌ・イー ケムキャット株式会社製「Pt-VTSC-3.0X」)を溶融混練物に添加した。その後、混練トルクが最高値を示すまで170℃で混練を継続し、動的架橋を行った。以上のようにしてアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体組成物を得た。得られた組成物(動的架橋組成物)は、加圧プレス(神藤金属工業社製、設定温度220℃)にて容易にシート状に成形することができたことから、熱可塑性エラストマー組成物であることを確認した。得られたシート状組成物の諸物性を前記方法に従って測定した。結果を表2に示す。
(実施例6)
用いた可塑剤の量を変更したこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表2に示す。
(実施例7)
実施例2で得られた共重合体(A-2)を用いたこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表2に示す。
(実施例8)
実施例3で得られた共重合体(A-3)を用いたこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表2に示す。
(実施例9~16)
オレフィン系樹脂、可塑剤、架橋剤、および/または架橋触媒の量を表2に示す通りに用いたこと以外は実施例8と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表2に示す。
(実施例17)
実施例4で得られた共重合体(A-4)を用いたこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表2に示す。
実施例1で示すように、本発明のアリル基を有するスチレン-イソブチレンブロック共重合体は、ペレットとして扱うことが可能な重合体であり、かつ、表2に示すように、これらブロック共重合体を含む熱可塑性エラストマーは、圧縮永久歪、柔軟性に優れることが分かる。
(実施例18)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(A-18)
1Lのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、注射器を用いて塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)340mL及びヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)40mLを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、得られた混合物にイソブチレン100mL(1.06mol)、トリクミルクロリド0.66g(2.15mmol)及び2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)0.117ml(1.18mmol)を加えた。得られた混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン0.75mL(6.86mmol)を加えて重合を開始した。ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を経時的に測定し、消費率が99.8%に達していることを確認した。なお、イソブチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物にスチレン24.7ml(215mmol)を添加した。GCによってスチレンの消費量を経時的に測定し、添加量(仕込量)の80%が消費された時点で、ジアリルジメチルシラン1.70mL(10.7mmol)と、四塩化チタン1.41mL(12.9mmol)とを反応混合物に加えた。なお、スチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに3時間撹拌を続けた後、反応終了とした。この時、スチレンは全量消費されていることをGCにより確認した。次に、55℃に加熱している、純水270mLと48%水酸化ナトリウム水溶液10.7gとの混合物に、反応混合物を注いだ。更に、重合に使用したセパラブルフラスコを塩化ブチルとヘキサンとの混合溶媒(混合比9:1、v/v)180gで洗浄し、この洗浄液も上記反応混合物と混合した。得られた反応混合物の内温が50℃に到達したことを確認した。その後、メカニカルスターラーで60分間激しく撹拌を行った。60分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相を分離させて、分離した水相を払い出した。次に、有機相に純水250mLを加えて、同様に55℃で30分間激しく攪拌することで有機相を水洗した。30分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)繰り返した。このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上の様にして、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(A-18)を得た。
得られた共重合体(A-18)の数平均分子量は37,000、分子量分布は1.60、であった。また、共重合体(A-18)中、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は76重量%であった。共重合体(A-18)の一分子中に導入されたアリル基数は2.3個であり、分子鎖末端へのアリル基導入率は77%であった。得られた共重合体(A-18)に関して、表1に数平均分子量等を示した。得られた共重合体(A-18)を用いたこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表2に示す。
(比較例1)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(X-1)
2Lのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、注射器を用いて塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)656mLおよびヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)456mLを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、得られた混合物にイソブチレン200mL(2.13mol)、p-ジクミルクロリド2.60g(11.2mmol)およびN,N-ジメチルアセトアミド1.22g(14.0mmol)を加えた。得られた混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン9.90mL(90.3mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から90分間撹拌を行った後、ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を求めたところ、消費率が99.8%に達していることを確認した。なお、イソブチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物にスチレン52g(499mmol)を添加した。GCによってスチレンの消費量を共時的に測定し、添加量(仕込量)の80%が消費された時点で、アリルトリメチルシラン12.0mL(10.0mmol)を反応混合物に加えた。なお、スチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに1時間撹拌を続けた後、40mlのメタノールを加え、反応を終了させた。反応溶液から溶剤等の揮発成分を留去した後、得られたポリマーをトルエンに溶解させ、トルエンと同じ体積の純水で同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)繰り返した。このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上の様にしてアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(X-1)を得た。
得られた共重合体(X-1)の数平均分子量は15,000、分子量分布は1.50であった。また、共重合体(X-1)中、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は73重量%であった。共重合体(X-1)の一分子中に導入されたアリル基数は1.53個であり、分子末端へのアリル器導入率は51%であった。得られた共重合体(X-1)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
また、得られた共重合体(X-1)は低強度のものであり、伸張させると塑性変形の後に直ぐに破断した。破断した試料片同士を押し付けると、強く互着することからベール状であり、ペレット形状に成形することは困難であった。
このように、従来公知のブロック共重合では成形性に劣り、取り扱い難い場合があり、樹脂の物性と取り扱い易さの両立が強く求められていた。
(比較例2)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(X-2)
500mLのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、注射器を用いて塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)254mL及びヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)28mLを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、得られた混合物にイソブチレン100mL(1.06mol)、トリクミルクロリド0.470g(1.53mmol)および2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)0.0868g(0.932mmol)を加えた。得られた混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン0.60mL(5.50mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から60分間撹拌を行った後、ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を求めたところ、消費率が99.0%に達していることを確認した。なお、イソブチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物にスチレン19.5ml(170mmol)を添加した。GCによってスチレンの消費量を経時的に測定し、添加量(仕込量)の85%が消費された時点で、ジアリルジメチルシラン0.42mL(2.29mmol)を反応混合物に加えた。なお、スチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに3時間撹拌を続けた後、反応終了とした。この時、スチレンは全量消費されていることをGCにより確認した。次に、55℃に加熱している、純水500mLと48%水酸化ナトリウム水溶液3.1gとの混合物に、反応混合物を注いだ。更に、重合に使用したセパラブルフラスコを塩化ブチルとヘキサンの混合溶媒(混合比9:1、v/v)400gで洗浄し、この洗浄液も上記反応混合物と混合した。得られた反応混合物の内温が50℃に到達したことを確認した。その後、メカニカルスターラー60分間激しく撹拌を行った。60分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。次に、有機相に純水500mLを加えて、同様に55℃で30分間激しく攪拌することで有機相を水洗した。30分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)繰り返した。このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上のようにして、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(X-2)を得た。
得られた共重合体(X-2)の数平均分子量は43,806、分子量分布は1.52であった。また、共重合体(X-2)中、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は77重量%であった。共重合体(X-2)の一分子中に導入されたアリル基数は0.9個であり、分子鎖末端へのアリル基導入率は30%であった。得られた共重合体(X-2)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
得られた共重合体(X-2)を用いたこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表3に示す。
表1~3より、共重合体(X-2)を用いて作成された熱可塑性エラストマー組成物は、圧縮永久歪特性に劣ることがわかる。共重合体(X-2)は、数平均分子量(Mn)が30,000~130,000(g/mol)であるが、一分子中のアリル基が2.1個以下である。
(比較例3)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(X-3)
1Lのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、注射器を用いて塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)463mLおよびヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)51mLを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、イソブチレン100mL(1.06mol)、トリクミルクロリド0.112g(0.364mmol)および2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)0.72ml(7.28mmol)を得られた混合物に加えた。得られた混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン2.28mL(20.7mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から60分間撹拌を行った後、ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を求めたところ、消費率が99.4%に達していることを確認した。なお、イソブチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物にスチレン21.0ml(182mmol)を添加した。GCによってスチレンの消費量を経時的に測定し、添加量(仕込量)の85.4%が消費された時点で、アリルトリメチルシラン0.23mL(1.46mmol)を反応混合物に加えた。なお、スチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに3時間撹拌を続け、反応終了とした。この時、スチレンは全量消費されていることをGCにより確認した。次に、55℃に加熱している、純水800mLと48%水酸化ナトリウム水溶液14.0gとの混合物に、反応混合物を注いだ。更に、重合に使用したセパラブルフラスコを塩化ブチルとヘキサンとの混合溶媒(混合比9:1、v/v)300gで洗浄し、この洗浄液も上記反応混合物と混合した。得られた反応混合物の内温が50℃に到達したことを確認した。その後、メカニカルスターラーで60分間激しく撹拌を行った。60分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。次に、有機相に純水800mLを加えて、同様に55℃で30分間激しく攪拌することで有機相を水洗した。30分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)繰り返した。このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上の様にして、アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(X-3)を得た。
得られた共重合体(X-3)の数平均分子量は135,185、分子量分布は1.36であった。また、共重合体(X-3)中、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は76重量%であった。共重合体(X-3)の一分子中に導入されたアリル基数は0.7個であり、分子鎖末端へのアリル基導入率は23%であった。得られた共重合体(X-3)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
共重合体(X-3)のように、共重合体の数平均分子量が大きくなると、反応点の濃度が低下し、アリル基の導入が困難になる場合がある。
得られた共重合体(X-3)を用いたこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表3に示す。
表1~表3に示すように、数平均分子量が大きいため一分子中のアリル基が2.1個以下となった共重合体(X-3)を用いて作成した熱可塑性エラストマー組成物は、圧縮永久歪特性に劣ることが分かる。
(比較例4)アルケニル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(X-4)
500mLのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、注射器を用いて塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)260mLおよびヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)29mLを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、イソブチレン100mL(1.06mol)、トリクミルクロリド0.470g(1.53mmol)および2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)0.0868g(0.932mmol)を得られた混合物に加えた。得られた混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン0.60mL(5.50mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から67分間撹拌を行った後、ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を求めたところ、消費率が99.9%に達していることを確認した。なお、イソブチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物にスチレン19.5ml(170mmol)を添加した。GCによってスチレンの消費量を経時的に測定し、添加量(仕込量)の78%が消費された時点で、1,7-オクタジエン3.46mL(22.9mmol)を加え、続けて四塩化チタン0.60mL(5.50mmol)を反応混合物に加えた。なお、スチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに3時間撹拌を続け、反応終了とした。この時、スチレンは全量消費されていることをGCにより確認した。次に、55℃に加熱している、純水500mLと48%水酸化ナトリウム水溶液5.7gとの混合物に反応混合物を注いだ。更に、重合に使用したセパラブルフラスコを塩化ブチルとヘキサンとの混合溶媒(混合比9:1、v/v)400gで洗浄し、この洗浄液も上記反応混合物と混合した。得られた反応混合物の内温が50℃に到達したことを確認した。その後、メカニカルスターラーで60分間激しく撹拌を行った。60分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。次に、有機相に純水500mLを加えて、同様に55℃で30分間激しく攪拌することで有機相を水洗した。30分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)繰り返した。このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上の様にしてアルケニル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(X-4)を得た。
得られた共重合体(X-4)の数平均分子量は45,833、分子量分布は1.62であった。共重合体(X-4)中イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は77重量%であった。共重合体(X-4)の一分子中に導入されたアルケニル基数は2.5個であった。得られた共重合体(X-4)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
得られた共重合体(X-4)を用いたこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表3に示す。
表3に示すように、比較例4で得られた熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪は45%と不十分な結果であった。共重合体(X-4)は一分子中にアリル基を2.5個有するにも係わらず、圧縮永久歪特性が不十分であるのは、ポリマー末端近傍構造が架橋反応に影響を及ぼしている可能性が考えられる。このメカニズムは必ずしも明らかではないが、ジエン化合物を用いたアルケニル基導入反応は、オレフィンへの付加反応で進行するため、ポリマー末端の塩素原子はオレフィン炭素上に残ることになる。この残存塩素原子が何らかの様式で架橋反応を阻害するように作用することで、得られた熱可塑性エラストマー組成物のゴム的特性が損なわれるものと推察される。
一方、本発明のアリル基末端ブロック共重合体は、アリル基近傍にハロゲン原子を有しないため、効率的な架橋反応が進行するものと考えられる。
(比較例5)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(X-5)
200Lのリアクター内を窒素置換した後、塩化ブチル90kg及びヘキサン7.5kgを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、イソブチレン19.5kg(348mol)、トリクミルクロリド154g(0.502mol)および2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)32.7g(0.351mmol)を得られた混合物に加えた。得られた混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン429g(2.26mol)を加えて重合を開始した。重合開始から60分間撹拌を行った後、ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を求めたところ、消費率が98.9%に達していることを確認した。なお、イソブチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物にスチレン6.27kg(60.2mol)を添加した。GCによってスチレンの消費量を経時的に測定し、添加量(仕込量)の95%が消費された時点で、アリルトリメチルシラン229g(2.01mol)と、四塩化チタン381g(2.01mol)とを反応混合物に加えた。なお、スチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに3時間撹拌を続けた後、反応終了とした。この時、スチレンは全量消費されていることをGCにより確認した。次に、50℃に加熱している、純水75kgと48%水酸化ナトリウム水溶液2.32kgとの混合物に、反応混合物を注いだ。更に、重合に使用したリアクター内を塩化ブチルとヘキサンの混合溶媒(混合比9:1、v/v)113kgで洗浄し、この洗浄液も上記反応混合物と混合した。得られた反応混合物の内温が50℃に到達したことを確認した。その後、60分間激しく撹拌を行った。60分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相を分離させて、分離した水相を払い出した。次に、有機相に純水72kgを加えて、同様に55℃で30分間激しく攪拌することで有機相を水洗した。30分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)繰り返した。このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上の様にしてアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(X-5)を得た。
得られた共重合体(X-5)の数平均分子量は49,172、分子量分布は1.54であった。また共重合体(X-5)中、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は76重量%、導入されたアリル基数は1.5個であり、分子鎖末端へのアリル基導入率は50%であった。得られた共重合体(X-5)に関するこれらの諸物性については、表3に示した。得られた共重合体(X-5)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
実施例1と同様にして、ブロック共重合体(X-5)はペレット形状に成形できることを確認した。
得られた共重合体(X-5)を用いたこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表3に示す。表3に示すように、比較例5で得られた熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪が45%であり不満足な結果であった。この結果は、熱可塑性エラストマー組成物の製造に、一分子中のアリル基数が1.5個と低い共重合体(X-5)を用いたことが原因であると考えられる。
(比較例6)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(X-6)
500mLのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、注射器を用いて塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)210mLおよびヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)18mLを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、イソブチレン85mL(0.904mol)、p-ジクミルクロリド0.142g(0.61mmol)および2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)0.117g(1.25mmol)を得られた混合物に加えた。得られた混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン0.96mL(8.76mmol)を加えて重合を開始した。ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を求めたところ、消費率が99.9%に達していることを確認した。なお、イソブチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物にスチレン13.2ml(114mmol)を添加し、40分間反応させた後、アリルトリメチルシラン0.39mL(2.46mmol)を添加した。さらに1分後、四塩化チタン1.50mL(13.7mmol)を反応混合物に加えた。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに4時間撹拌を続け、反応終了とした。次に、55℃に加熱している、純水300mLと48%水酸化ナトリウム水溶液11gとの混合物に反応混合物を注いだ。更に、重合に使用したセパラブルフラスコを塩化ブチルとヘキサンとの混合溶媒(混合比9:1、v/v)100gで洗浄し、この洗浄液も上記反応混合物と混合した。得られた反応混合物の内温が50℃に到達したことを確認した。その後、メカニカルスターラーで60分間激しく撹拌を行った。60分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。次に、有機相に純水300mLを加えて、同様に55℃で30分間激しく攪拌することで有機相を水洗した。30分間の攪拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)繰り返した。このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上の様にしてアルケニル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(X-6)を得た。
得られた共重合体(X-6)の数平均分子量は96,594、分子量分布は1.31であった。共重合体(X-6)中イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は80重量%であった。共重合体(X-6)の一分子中に導入されたアリル基数は1.10個であった。得られた共重合体(X-6)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
得られた共重合体(X-6)を用いたこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表3に示す。
表3に示すように、比較例6で得られた熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪は53%であり不十分な結果であった。共重合体(X-6)の製造において、重合開始剤(ジクミルクロリド)1当量に対して、アリル化剤(アリルトリメチルシラン)を4.0当量使用したにもかかわらず、上述したように得られた共重合体の1分子中のアリル基数は不十分であった。それ故、得られた熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪も不十分であった。
(比較例7)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(X-7)
上記比較例6のアリルトリメチルシラン0.39mol(2.46mmol)を0.98mol(6.14mmol)に変更した以外は、比較例6(X-6)と同様の方法でアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(X-7)を得た。
得られた共重合体(X-7)の数平均分子量は95,637、分子量分布は1.33であった。共重合体(X-7)中イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は80重量%であった。共重合体(X-7)の一分子中に導入されたアリル基数は1.30個であった。得られた共重合体(X-7)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
得られた共重合体(X-7)を用いたこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。結果を表3に示す。
表3に示すように、比較例7で得られた熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪は52%であり不十分な結果であった。
比較例6および7より、数平均分子量が本発明の範囲内であっても、一分子中のアリル基が2.1個以下である共重合体を用いて作製された熱可塑性エラストマー組成物は、ゴム物性に劣ることがわかる。
(比較例8)アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体の合成(X-8)
500mLのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、注射器を用いて塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)224mL及びヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)25mLを加え、得られた混合物を約-70℃まで冷却した。次に、得られた混合物にイソブチレン85mL(0.901mol)、ジクミルクロリド0.300g(1.30mmol)および2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)0.0726g(0.779mmol)を加えた。得られた混合物の内温が-70℃以下であることを確認した後、当該混合物に四塩化チタン0.50mL(4.57mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から67分間撹拌を行った後、ガスクロマトグラフィー(GC)によりイソブチレンの消費率を求めたところ、消費率が99.4%に達していることを確認した。なお、イソブチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物にスチレン19.9ml(173mmol)を添加した。GCによってスチレンの消費量を経時的に測定し、添加量(仕込量)の80%が消費された時点で、ジアリルジメチルシラン0.710mL(3.89mmol)と、四塩化チタン0.50mL(4.57mmol)とを反応混合物に加えた。なお、スチレンの消費率は、前記実施例1と同様の方法で測定し、算出した。
その後、反応混合物を-70℃以下に保ったまま、さらに3時間撹拌を続けた後、反応終了とした。この時、スチレンは全量消費されていることをGCにより確認した。次に、55℃に加熱している、純水500mLと48%水酸化ナトリウム水溶液20.0gとの混合物に注いだ。更に、重合に使用したセパラブルフラスコを塩化ブチルとヘキサンとの混合溶媒(混合比9:1、v/v)400gで洗浄し、この洗浄液も前記反応混合物と混合した。得られた反応混合物の内温が50℃に到達したことを確認した。その後、メカニカルスターラーで60分間激しく撹拌を行った。60分間の撹拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。次に、有機相に純水500mLを加えて、同様に55℃で30分間激しく攪拌することで有機相を水洗した。30分間の撹拌後、攪拌を止め、有機相と水相とを分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作をさらに2回(合計3回)繰り返した。このようにして得られた有機相を分け取り、有機相中の溶媒などの揮発分を、加熱真空下に留去し、乾燥させた。以上の様にして、直鎖型アリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体(X-8)を得た。
得られた共重合体(X-8)の数平均分子量は47,917、分子量分布は1.67であった。また、共重合体(X-8)中、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)(具体的にはイソブチレンブロック)の含有量は74重量%であった。共重合体(X-8)の一分子中に導入されたアリル基数は1.7個であり、分子鎖末端へのアリル基導入率は85%であった。また、得られた共重合体(X-8)は、ペレット形状に成型することができた。得られた共重合体(X-8)に関して、表1に数平均分子量等を示した。
得られた共重合体(X-8)を用いたこと以外は実施例5と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を作成し、諸物性を評価した。得られた共重合体(X-8)に関するこれらの諸物性については、表3に示した。表1~3に示すように、一般式(1)で示される基を有さない共重合体であっても、アリル基導入数が2.1個超でなければ、ゴム的性質が損なわれることが分かる。
次に、上記一般式(1)で示される基を有する共重合体(実施例5)と、上記一般式(1)で示される基を有さない共重合体(比較例8)とについて、さらにゴム物性を検討した。
実施例5で用いられている共重合体(実施例1で得られた共重合体であり、共重合体(A-1))と比較例8で用いられている共重合体(X-8)のMFRを測定した結果、共重合体(A-1)のMFRは5.37g/10minであり、共重合体(X-8)のMFRは0.275g/10minであった。
共重合体(A-1)と共重合体(X-8)とは互いに似通った数平均分子量および分子量分布を有しているにもかかわらず、MFRの値には非常に大きな差異があることが判明した。この差異は、本発明の共重合体(A-1)が有する一般式(1)で示される基に由来すると考えられる。このことより、一般式(1)で示される基を有する共重合体は取り扱い易さに優れた重合体であることが分かる。
次に、実施例5および比較例8で得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、耐熱性を評価した。結果を表4に示す。
表4より、本発明の一実施形態に係る熱可塑性エラストマー組成物は、耐熱性に優れることが分かる。一般に動的架橋組成物中のゴム成分はマトリックス樹脂中に微分散していることが知られており、熱可塑性エラストマー組成物のマクロな熱的特性はマトリックス樹脂に異存すると考えられる。
しかしながら、本発明の分岐構造を導入した重合体を用いることで、熱可塑性エラストマー組成物自体の耐熱性までをも向上させうることが分かった。
次に、実施例5および比較例8で得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、耐クリープ性を評価した。結果を表5に示す。
表1~5に示す結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、低モジュラスでありながら、優れた耐クリープ性を示すことがわかる。
通常、変形に対する復元力は、ゴム材料のモジュラスに依存することが期待され、耐クリープ性を改善するには高モジュラスな組成物の設計にすることが一般的であった。しかしながら、本発明の熱可塑性エラストマー組成物によれば、ゴム材料の柔軟性と耐クリープ性を両立させうることが分かる。
次に、実施例5および比較例8で得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、耐溶剤性を評価した。結果を表6に示す。
表6に示すように、一般式(1)で示される基を有する共重合体を含む組成物は耐溶剤性に優れることがわかる。
以上より、本発明のアリル基末端スチレン-イソブチレンブロック共重合体によれば、従来公知のものと比較し、柔軟性、圧縮永久歪、流動性、耐熱性、耐クリープ性、耐溶剤性に優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供できることが分かる。