JP2004204182A - 熱可塑性エラストマー組成物の製造方法 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物の製造方法 Download PDF

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Toru Nakajima
亨 中島
Hiroharu Nakabayashi
裕晴 中林
Taizo Aoyama
泰三 青山
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Abstract

【課題】圧縮永久歪み特性、引っ張り特性に優れた熱可塑性エラストマー組成物の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、及び架橋触媒(D)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、(A)、(B)及び(D)からなり可塑剤(E)を実質的に含有しない混合組成物の溶融混練時に(C)を添加し、(A)を動的に架橋することからなる製造方法。(A)、(B)及び(C)からなる混合組成物、又は(A)、(B)、(C)及び(E)からなる混合組成物の溶融混練時に、(E)で希釈した(D)を添加し、(A)を動的に架橋することからなる製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟性に富み、成形加工性、ゴム的特性、圧縮永久歪み特性、ガスバリア性、及び制振性に優れた熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、弾性を有する高分子材料としては、天然ゴムまたは合成ゴムなどのゴム類に架橋剤や補強剤などを配合して高温高圧下で架橋したものが汎用されている。しかしながらこの様なゴム類では、高温高圧下で長時間にわたって架橋及び成形を行う行程が必要であり、加工性に劣る。また架橋したゴムは熱可塑性を示さないため、熱可塑性樹脂のようにリサイクル成形が一般的に不可能である。そのため、通常の熱可塑性樹脂と同じように熱プレス成形、射出成形、及び押出し成形などの汎用の溶融成形技術を利用して成型品を簡単に製造することのできる熱可塑性エラストマーが近年種々開発されている。このような熱可塑性エラストマーには、現在、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、スチレン系、塩化ビニル系などの種々の形式のポリマーが開発され、市販されている。
【0003】
これらのうちで、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、耐熱性、耐寒性、耐候性等に優れている。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、架橋型と非架橋型に分けることができる。非架橋型熱可塑性エラストマーは、架橋反応を伴わないため品質のバラツキが少なくまた製造コストも安価である反面、性能面から両者を比較すると、引張強度や破断伸度、あるいはゴム的性質(たとえば永久伸び、圧縮永久歪)や耐熱性の点では、非架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマーに比べて架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマーの方が優れている。このことは、非特許文献1に詳細に記されているように、広く知られている。
【0004】
非架橋型あるいは部分架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマーについては、たとえば、特許文献1〜9などに記載されている。
【0005】
このように、オレフィン系熱可塑性エラストマーには、非架橋型熱可塑性エラストマーと架橋型熱可塑性エラストマーとがあるが、非架橋型熱可塑性エラストマーの場合には、従来公知の非架橋型熱可塑性エラストマーと比較して、引張強度、破断伸度、ゴム的性質(永久伸び、圧縮永久歪など)、耐熱性、低温特性などに優れた成形体を提供することができるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の出現が望まれており、また架橋型熱可塑性エラストマーの場合には、仮に架橋度を高めて圧縮永久歪みを改良したとしても、そのために柔軟性、耐熱性の低下や引張試験における破断強度や破断伸びの低下あるいは組成物表面への軟化剤のブリード等が起こり、物性バランスの優れたオレフィン系熱可塑性組成物を得ることは困難であった。
【0006】
この様に、通常の熱可塑性樹脂と同じように熱プレス成形、射出成形、及び押出し成形などの汎用の溶融成形技術を利用して成型品を簡単に製造でき、且つ物性バランスの優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の出現が望まれている。
【特許文献1】
特公昭53−21021号公報
【特許文献2】
特公昭55−18448号公報
【特許文献3】
特公昭56−15741号公報
【特許文献4】
特公昭56−15742号公報
【特許文献5】
特公昭58−46138号公報
【特許文献6】
特公昭58−56575号公報
【特許文献7】
特公昭59−30376号公報
【特許文献8】
特公昭62−938号公報
【特許文献9】
特公昭62−59139号公報
【非特許文献1】
Rubber Chemistry and Technology、A.Y.Coranら、53巻(1980年)、141ページ
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の従来技術の課題に鑑み、柔軟性に富み、ゴム的特性、圧縮永久歪み特性、ガスバリア性、及び制振性に優れ、特に成形加工性、硬度−引張り強度及び伸び特性バランスに優れた熱可塑性エラストマー組成物を得るための製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、及び架橋触媒(D)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、(A)、(B)及び(D)からなり可塑剤(E)を実質的に含有しない混合組成物の溶融混練時に(C)を添加し、(A)を動的に架橋する、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法である。架橋触媒(D)は有機溶剤によって5重量%以下に希釈されることが好ましく、更に、有機溶剤はその沸点が160℃以下であることが好ましい。
【0009】
更に本発明は、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、架橋触媒(D)及び可塑剤(E)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、(A)、(B)、及び(C)からなる混合組成物、又は(A)、(B)、(C)及び(E)からなる混合組成物の溶融混練時に、(E)で希釈した(D)を添加し、(A)を動的に架橋することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法である。可塑剤(E)はパラフィン系オイル及び/又はポリブテンであることが好ましい。
【0010】
この様にして製造される場合、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)100重量部に対し、10〜200重量部の熱可塑性樹脂(B)を含有することが好ましい。
【0011】
更に、熱可塑性樹脂(B)はオレフィン系樹脂(b−1)及び/又は芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(b−2)であることが好ましく、オレフィン系樹脂(b−1)は、ポリプロピレン系樹脂であることが更に好ましく、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(b−2)は、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体が更に好ましい。
【0012】
架橋剤(C)はヒドロシリル基含有化合物であることが好ましく、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)の数平均分子量が、1,000〜500,000であり、1分子あたり少なくとも0.2個のアルケニル基を末端に有する重合体であることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、及び架橋触媒(D)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関するものである。当該熱可塑性エラストマー組成物は可塑剤(E)を更に含有するものでもよい。
【0014】
上記組成物において、(A)を(D)の存在下(C)と反応せしめ動的に架橋するためには、(A)と(B)からなる溶融混練物中への(C)と(D)の分散性が、得られてくる組成物の物性を大きく変化させる。すなわち、(C)若しくは(D)のいずれか一方が局在した状況で架橋反応が進行すると、形成される(A)の架橋粒子が大きくなり、得られる組成物の引張り特性が大きく低下する。
【0015】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、(A)と(B)からなる溶融混練物中への(C)と(D)の分散性は、可塑剤(E)で希釈した(D)が最も良好であり、次いで(C)、(D)の順になることが判明した。これに鑑み、本発明では、より分散性の低い(D)を(A)及び(B)と溶融混合且つ分散させた後、より分散性の高い(C)を添加し、(A)を動的に架橋させる方法や、より分散性の低い(C)を(A)及び(B)と溶融混合且つ分散させた後、より分散性の高い(E)で希釈した(D)を添加し、(A)を動的に架橋させる方法が採られる。
【0016】
つまり、本発明の熱可塑性エラストマーの製造方法は、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、及び架橋触媒(D)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、(A)、(B)及び(D)からなり可塑剤(E)を実質的に含有しない混合組成物の溶融混練時に(C)を添加し、(A)を動的に架橋することを特徴とする製造方法である。更には末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、架橋触媒(D)、及び可塑剤(E)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、(A)、(B)及び(C)からなる混合組成物、又は(A)、(B)、(C)及び(E)からなる混合組成物の溶融混練時に、(E)で希釈した(D)を添加し、(A)を動的に架橋することを特徴とする製造方法である。
【0017】
前者の、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、及び架橋触媒(D)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、(A)、(B)及び(D)からなり可塑剤(E)を実質的に含有しない混合組成物の溶融混練時に(C)を添加し、(A)を動的に架橋することを特徴とする製造方法においては、更に(D)を有機溶剤で希釈することが好ましい。(D)を単独で(A)及び(B)と混練した場合、樹脂焼けが発生し、得られる組成物が茶褐色に変色してしまうおそれがあるためである。更にこの変色を抑えるためには架橋触媒(D)は有機溶剤によって5重量%以下に希釈されることが好ましい。
【0018】
上記有機溶剤としては特に制限はないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、アセトン、エタノール、ブタノール、ブチルクロライド、ピリジン等のヘテロ原子含有炭化水素等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。また、得られる熱可塑性エラストマー組成物中に有機溶剤が残存した場合、製品とした場合に有機溶剤がブリードするなどの不具合が生じるおそれがあるため、有機溶剤の沸点は160℃以下であることが好ましく、特に、溶融混練時に直ちに揮発せず、且つ架橋混練時にほぼ残存しないトルエン、及びキシレンが好ましい。
【0019】
「可塑剤(E)を実質的に含有しない」とは、混合組成物が(E)を含有しない場合と、混合組成物が(E)を含有するがその添加の効果が得られないほど含有量が少量である場合の両方のことをいう。具体的には、(A)の100重量部に対し、可塑剤(E)の配合部数が0.1重量部以下、好ましくは0.01重量部以下のことをいう。
【0020】
(A)、(B)及び(D)からなり(E)を実質的に含有しない混合組成物の溶融混練時に(C)を添加する方法では、(E)を実質的に含有しない熱可塑性エラストマーを得ることができるが、(A)の架橋後に(E)を別途添加して(E)を含有する熱可塑性エラストマーを得ることもできる。
【0021】
一方、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、架橋触媒(D)及び可塑剤(E)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法においては、(A)、(B)、及び(C)からなる混合組成物の溶融混練時に、(E)で希釈した(D)を添加し、(A)を動的に架橋することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法と、(A)、(B)、(C)及び(E)からなる混合組成物の溶融混練時に、(E)で希釈した(D)を添加し、(A)を動的に架橋することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法が採用される。
【0022】
末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、架橋触媒(D)及び可塑剤(E)を含有する熱可塑性エラストマー組成物においては、求められる組成物の物性に応じそれぞれの配合部数を変化させることができるが、(E)の配合量に応じ、上記2種の製造方法を採ることができる。すなわち、(E)の配合部数が少量の場合は、(A)、(B)、及び(C)からなる混合組成物の溶融混練時に(E)で希釈した(D)を添加する方法が好ましく、(E)の配合部数が多量の場合は、(A)、(B)、(C)及び(E)からなる混合組成物の溶融混練時に(E)で希釈した(D)を添加する方法が好ましい。これは、(E)を多量に用いた場合、前者の(A)、(B)、及び(C)からなる混合組成物の溶融混練時に(E)で希釈した(D)を添加する方法では、(D)の希釈割合が高く架橋反応が遅延するためである。
【0023】
可塑剤(E)を含有する場合、どちらの方法を採用するかは特に制限されないが、(A)の100重量部に対し(E)の配合部数が0.1〜40重量部の場合は、(A)、(B)、及び(C)からなる混合組成物の溶融混練時に(E)で希釈した(D)を添加する方法が好ましく、(A)の100重量部に対し(E)の配合部数が10重量部以上の場合は、(A)、(B)、(C)及び(E)からなる混合組成物の溶融混練時に(E)で希釈した(D)を添加する方法が好ましく、10〜40重量部の場合は、両方法を採用することができる。また可塑剤(E)は、アルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)の架橋後に更に添加することもできる。可塑剤(E)を含有する場合には、(A)の100重量部に対する(E)の配合部数として0.1重量部〜500重量部が好ましい。下限は1重量部以上がより好ましい。上限は250重量部以下がより好ましい。
【0024】
可塑剤(E)は特に制限されないが、例えば、ゴムの加工の際に用いられる鉱物油、または液状もしくは低分子量の合成軟化剤が挙げられ、これらは1種以上を用いることができる。
【0025】
鉱物油としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、及び芳香族系の高沸点石油成分が挙げられる。液状もしくは低分子量の合成軟化剤としては、特に制限はないが、ポリブテン、水添ポリブテン、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン、ポリα−オレフィン類等が挙げられる。これらの可塑剤は1種以上を用いることができる。このなかでも架橋反応を阻害しないパラフィン系オイル及び/又はポリブテンが好ましい。可塑剤の配合量は、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系重合体(A)100重量部に対し、10〜300重量部であることが好ましい。配合量が300重量部を越えると、機械的強度の低下や成形性に問題が生じるおそれがある。
【0026】
本発明の製造方法によって製造される熱可塑性エラストマー組成物に含有される末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)とは、イソブチレンがモノマー総量のうち50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占める重合体のことをいう。イソブチレン系重合体(A)中の、イソブチレン以外の単量体は、カチオン重合可能な単量体成分であれば特に限定されないが、芳香族ビニル類、脂肪族オレフィン類、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン等のジエン類、ビニルエーテル類、β−ピネン等の単量体が例示できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
イソブチレン系重合体(A)の数平均分子量に特に制限はないが、1,000から500,000が好ましい。下限は5,000以上がより好ましい。上限は200,000以下がより好ましい。数平均分子量が1,000未満の場合、機械的な特性等が十分に発現されないおそれがあり、また、500,000を超える場合、成形性等の低下が大きくなるおそれがある。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0028】
本発明におけるアルケニル基とは、本発明の目的を達成するための(A)成分の架橋反応に対して活性のある炭素−炭素二重結合を含む基であれば特に制限されるものではない。具体例としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基を挙げることができる。
【0029】
イソブチレン系重合体(A)の末端へのアルケニル基の導入方法としては特開平3−152164号公報や特開平7−304909号公報に開示されているような、水酸基などの官能基を有する重合体に不飽和基を有する化合物を反応させて重合体に不飽和基を導入する方法が挙げられる。またハロゲン原子を有する重合体に不飽和基を導入するためにはアルケニルフェニルエーテルとのフリーデルクラフツ反応を行う方法、ルイス酸存在下アリルトリメチルシラン等との置換反応を行う方法、種々のフェノール類とのフリーデルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上でさらに前記のアルケニル基導入反応を行う方法などが挙げられる。さらに米国特許第4316973号、特開昭63−105005号公報、特開平4−288309号公報に開示されているように単量体の重合時に不飽和基を導入することも可能である。この中でもアリルトリメチルシランと塩素の置換反応により末端にアリル基を導入したものが、確実性の点から好ましい。
【0030】
イソブチレン系重合体(A)の末端のアルケニル基の量は、必要とする特性によって任意に選ぶことができるが、架橋後の特性の観点から、1分子あたり少なくとも0.2個のアルケニル基を末端に有する重合体であることが好ましい。0.2個未満であると架橋による改善効果が十分に得られない場合がある。
【0031】
本発明の製造方法によって製造される熱可塑性エラストマー組成物に含有される熱可塑性樹脂(B)としては特に限定されず、例えば、プラスチック類、ゴム類、及び熱可塑性エラストマー類よりなる群から選択される少なくとも1種が使用できる。プラスチック類としては、例えば、ポリプロピレン及びポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ABS、MBS、アクリル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。ゴム類としては、例えば、ポリエーテル、ポリブタジエン、天然ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム等が挙げられる。
【0032】
熱可塑性エラストマー類としては、例えば、ポリスチレンブロック等とポリブタジエンやポリイソプレンブロック等からなるブロック共重合体であるスチレン系(芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー)、ポリプロピレン等のポリオレフィン成分とエチレン−プロピレンゴム等のゴム成分からなるオレフィン系、結晶性及び非結晶性ポリ塩化ビニルからなる塩化ビニル系、ポリウレタンブロックとポリエーテルブロック等からなるブロック共重合体であるウレタン系、ポリエステルブロックとポリエーテルブロック等からなるブロック共重合体であるポリエステル系、及び、ポリアミドブロックとポリエーテルブロック等からなるブロック共重合体であるアミド系等が挙げられる。
【0033】
これらの熱可塑性樹脂はプラスチック類、ゴム類、及び熱可塑性エラストマー類の分類に関わらず、少なくとも1種が使用できる。
【0034】
上記熱可塑性樹脂のうち、加工性、柔軟性、及び強度の点で、ポリプロピレン及びポリエチレン等のオレフィン系樹脂、及び/又は芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーが好ましい。更に、オレフィン系樹脂としてはポリプロピレンが好ましく、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体が好ましい。
【0035】
芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック中の芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。上記化合物の中でもコストと物性及び生産性のバランスからスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデンが好ましく、その中から2種以上選んでもよい。「芳香族ビニル系化合物を主体とする」とは、重合体ブロックのモノマー総量に対して、芳香族ビニル系化合物が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上であることをいう。
【0036】
ブロック共重合体の構造としては特に制限はないが、AB型あるいはABA型が好ましい。すなわち、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)が好ましい。
【0037】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーにおける各ブロックの割合に関しては、特に制限はないが、物性と加工性のバランスから、イソブチレン系重合体ブロックが95〜20重量部、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックが5〜80重量部であることが好ましい。イソブチレン系重合体ブロックは90重量部以下、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックは10重量部以上がより好ましい。また、イソブチレン系重合体ブロックは60重量部以上、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックは40重量部以下がより好ましい。
【0038】
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーの数平均分子量にも特に制限はないが、15,000から500,000が好ましい。下限は40,000以上がより好ましい。上限は400,000以下がより好ましい。数平均分子量が15,000未満の場合、機械的な特性等が十分に発現されない場合があり、また、500,000を超える場合、成形性等の低下が大きくなるおそれがある。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0039】
上記熱可塑性樹脂(B)の添加量は末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)100重量部に対し、10〜200重量部が好ましい。下限は20重量部以上がより好ましい。上限は100重量部以下がより好ましい。熱可塑性樹脂(B)の配合量が200重量部を越えると、圧縮永久歪み特性が悪化する傾向にある。また10重量部を下回ると引っ張り特性の改善効果が乏しくなる傾向にある。
【0040】
また、熱可塑性樹脂(B)の添加を行う方法としては、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)の架橋前である(A)との溶融混合時以外にも添加できる。すなわち、架橋後に更に添加することもできる。
【0041】
末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)を架橋する手段は特に制限はないが、副生成物の発生がなく、また不要な副反応を起こさない等の利点から、架橋剤(C)としてヒドロシリル基含有化合物を用いて架橋することが好ましい。
【0042】
架橋剤(C)としてのヒドロシリル基含有化合物は特に制限はなく、各種のものを用いることができる。すなわち、一般式(I)または(II)で表される鎖状ポリシロキサン;
SiO−[Si(RO]−[Si(H)(R)O]−[Si(R)(R)O]−SiR (I)
HR SiO−[Si(RO]−[Si(H)(R)O]−[Si(R)(R)O]−SiR H (II)
(式中、RおよびRは炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、または、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜20)を示す。aは0≦a≦100、bは2≦b≦100、cは0≦c≦100を満たす整数を示す。)
【0043】
一般式(III)で表される環状シロキサン;
【0044】
【化1】
Figure 2004204182
【0045】
(式中、RおよびRは炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、または、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜20)を示す。dは0≦d≦8、eは2≦e≦10、fは0≦f≦8の整数を表し、かつ3≦d+e+f≦10を満たす。)等の化合物を用いることができる。さらに上記のヒドロシリル基(Si−H基)を有する化合物のうち、相溶性が良いという点から、特に下記の一般式(IV)で表されるものが好ましい。
【0046】
【化2】
Figure 2004204182
【0047】
(式中、g、hは整数であり2≦g+h≦50、2≦g、0≦hである。Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜20の炭化水素基で1つ以上の芳香環を有していても良い。iは0≦i≦5の整数である。)
【0048】
末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)とヒドロシリル基含有化合物は任意の割合で混合することができるが、硬化性の面から、アルケニル基とヒドロシリル基のモル比が5〜0.05の範囲にあることが好ましく、さらに、2.5〜0.1であることが特に好ましい。モル比が5を超えると硬化が不十分でべとつきのある強度の小さい硬化物しか得られないおそれがあり、また、0.05より小さいと、硬化後も硬化物中に活性なヒドロシリル基が大量に残る場合があるので、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のある硬化物が得られない傾向にある。
【0049】
架橋触媒(D)としては特に制限はないが、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤、および遷移金属触媒が挙げられる。
【0050】
ラジカル開始剤としては特に限定されず、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなアシルペルオキシド、過安息香酸−t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタール等を挙げることができる。
【0051】
また、遷移金属触媒としても特に限定されず、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジアルケニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh,RhCl,RuCl,IrCl,FeCl,AlCl,PdCl・HO,NiCl,TiCl等が挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもかまわない。触媒量としては特に制限はないが、(A)成分のアルケニル基1molに対し、10−1〜10−8molの範囲で用いるのが良く、好ましくは10−3〜10−6molの範囲で用いるのがよい。10−8molより少ないと硬化が十分に進行しない場合がある。またヒドロシリル化触媒は高価であるので10−1mol以上用いないのが好ましい。これらのうち、相溶性、架橋効率、スコーチ安定性の点で、白金ビニルシロキサンが最も好ましい。
【0052】
また本発明の組成物には、さらには、各用途に合わせた要求特性に応じて、物性を損なわない範囲で補強剤、充填剤、ヒンダードフェノール系やヒンダードアミン系の酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、界面活性剤、難燃剤、抗菌剤、滑剤、シリコンオイル等を適宜配合することができる。
【0053】
本発明の製造方法によって製造される熱可塑性エラストマー組成物の最も好ましい組成としては、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)の架橋物100重量部に対し、熱可塑性樹脂(B)20〜100重量部であり、可塑剤を含有する場合は、更に可塑剤(E)10〜300重量部である。
【0054】
末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)の溶融混合時に、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)を動的に架橋し、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造する手段としては特に制限は無いが、以下に例示する方法によって好ましく行うことができる。
【0055】
例えば、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式混練装置またはバッチ式混練装置を用いて製造する手段、また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置を用いて製造する手段が採用され、溶融混練時の設定温度は、160〜210℃の温度が好ましい。
【0056】
本発明の製造方法によって得られた熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂組成物に対して一般に採用される成型方法及び成形装置を用いて成形でき、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、ブロー成形などによって溶融成形できる。また、本発明の製造方法によって得られた熱可塑性エラストマー組成物は、成形性、圧縮永久歪み特性に優れているため、パッキング材、シール材、ガスケット、栓体などの密封用材、CDダンパー、建築用ダンパー、自動車、車両、家電製品向け制振材等の制振材、防振材、自動車内装材、クッション材、日用品、電気部品、電子部品、スポーツ部材、グリップまたは緩衝材、電線被覆材、包装材、各種容器、文具部品として有効に使用することができる。
【0057】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
尚、実施例に先立ち各種測定法、評価法、実施例について説明する。
【0058】
(圧縮永久歪み)JIS K 6262に準拠し、試験片は12.5mm厚さプレスシートを使用した。100℃×22時間、25%変形の条件にて測定した。
【0059】
(硬度)JIS K 6252に準拠し、試験片は12.0mm圧プレスシートを用いた。
【0060】
(引張最大強度)JIS K 6251に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
【0061】
(引張破断伸び)JIS K 6251に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
【0062】
また、以下の実施例及び比較例で用いた材料の略号とその具体的な内容は、次のとおりである。
(実施例等記載成分の内容)
APIB1:末端にアリル基が導入されたポリイソブチレン、鐘淵化学社製(商品名「エピオンEP600A」)
APIB2:末端にアリル基が導入されたポリイソブチレン(製造例1)
PP:ポリプロピレン、グランドポリマー社製(商品名「グランドポリプロJ215W」)
SIBS:スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(製造例2)
可塑剤:パラフィン系プロセスオイル、JOMO社製(商品名「P−500」)
架橋剤(ヒドロシリル基含有化合物):鎖状ポリシロキサン、GE東芝シリコーン社製(商品名「TSF−484」)
架橋触媒:0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジアルケニルジシロキサン錯体、3重量%キシレン溶液
【0063】
混練製造方法No.1:本発明の製造方法であり、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、及び架橋触媒(D)からなり可塑剤(E)を実質的に含有しない混合組成物の溶融混練時に架橋剤(C)を添加し、(A)を動的に架橋する、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【0064】
混練製造方法No.2:本発明の製造方法であり、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、及び架橋剤(C)からなる混合組成物の溶融混練時に可塑剤(E)で希釈した架橋触媒(D)を添加し、(A)を動的に架橋する、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【0065】
混練製造方法No.3:本発明の製造方法であり、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、及び可塑剤(E)からなる混合組成物の溶融混練時に可塑剤(E)で希釈した架橋触媒(D)を添加し、(A)を動的に架橋する、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【0066】
混練製造方法No.4:本発明の製造方法であり、No.2と同様に末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、及び架橋剤(C)からなる混合組成物の溶融混練時に可塑剤(E)で希釈した架橋触媒(D)を添加し、(A)を動的に架橋した後、更に可塑剤(E)を添加する、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【0067】
混練製造方法No.5:本発明の製造方法ではなく、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、及び架橋剤(C)からなる混合組成物の溶融混練時に架橋触媒(D)を添加し、(A)を動的に架橋する、可塑剤を含有しない熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【0068】
混練製造方法No.6:本発明の製造方法ではなく、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋触媒(D)、及び可塑剤(E)からなる混合組成物の溶融混練時に架橋剤(C)を添加し、(A)を動的に架橋する、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法
【0069】
(製造例1)[末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系共重合体(APIB2)の製造]
2Lセパラブルフラスコに三方コック、および熱電対、攪拌シールをつけ、窒素置換を行った。窒素置換後、三方コックを用いて窒素をフローした。これにシリンジを用いてトルエン785ml、エチルシクロヘキサン265mlを加えた。溶剤添加後、カールフィッシャー水分計にて水分量を測定した。測定後、−70℃程度まで冷却した。イソブチレンモノマー277ml(2933mmol)を加えた。再度−70℃程度まで冷却後、p−ジクミルクロライド0.85g(3.7mmol)およびピコリン0.68g(7.4mmol)をトルエン10mlに溶解して加えた。反応系の内温が−74℃となり安定した時点で四塩化チタン19.3ml(175.6mmol)を加え重合を開始した。重合反応が終了した時点(90分)で、75%アリルトリメチルシラン/トルエン溶液1.68g(11.0mmol)を添加し、さらに2時間反応させた。その後、50℃程度に加熱した純水で失活し、さらに有機層を純水(70℃〜80℃)で3回洗浄し、有機溶剤を減圧下80℃にて除去しAPIB2を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。Mnが45500、Mw/Mnは1.10、含有アリル基が一分子あたり平均2.0個である重合体が得られた。この平均個数は、NMRでの積分値と上記分子量より求めた。
【0070】
(製造例2)[スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)456.1mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)656.5mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー232mL(2871mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(R)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.647g(2.8mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド1.22g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン8.67mL(79.1mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー77.9g(748mmol)、n−ヘキサン23.9mLおよび塩化ブチル34.3mLの混合溶液を重合容器内に添加した。該混合溶液を添加してから45分後に、約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。
【0071】
反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。スチレン添加前のイソブチレン重合体のMnが50,000、Mw/Mnは1.40であり、スチレン重合後のブロック共重合体のMnが67,000、Mw/Mnが1.50であるブロック共重合体が得られた。
【0072】
(実施例1)
可塑剤を含有せず、APIB2、SIBS、架橋触媒を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し、混練製造方法No.1に従い動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引っ張り特性を上記方法に従って測定した結果を表1に示す。
【0073】
(比較例1)
可塑剤を含有せず、APIB2、SIBS、架橋剤を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋触媒を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し、混練製造方法No.5に従い動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引っ張り特性を上記方法に従って測定した結果を表1に示す。
【0074】
(実施例2)
APIB1、PP、架橋剤を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで可塑剤10重量部で希釈した架橋触媒を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し、混練製造方法No.2に従い動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引っ張り特性を上記方法に従って測定した結果を表1に示す。
【0075】
(比較例2)
APIB1、PP、可塑剤、架橋触媒を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し、混練製造方法No.6に従い動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引っ張り特性を上記方法に従って測定した結果を表1に示す。
【0076】
(実施例3)
APIB2、PP、架橋剤を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで可塑剤10重量部で希釈した架橋触媒を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し、混練製造方法No.2に従い動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引っ張り特性を上記方法に従って測定した結果を表1に示す。
【0077】
(比較例3)
APIB2、PP、可塑剤、架橋触媒を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し、混練製造方法No.6に従い動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引っ張り特性を上記方法に従って測定した結果を表1に示す。
【0078】
(実施例4)
APIB2、SIBS、架橋剤、可塑剤30重量部を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで可塑剤10重量部で希釈した架橋触媒を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し、混練製造方法No.3に従い動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引っ張り特性を上記方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0079】
(比較例4)
APIB2、SIBS、可塑剤、架橋触媒を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し、混練製造方法No.6に従い動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引っ張り特性を上記方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0080】
(実施例5)
APIB2、PP、架橋剤、可塑剤60重量部を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで可塑剤10重量部で希釈した架橋触媒を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し、混練製造方法No.3に従い動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引っ張り特性を上記方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0081】
(実施例6)
APIB2、PP、架橋剤、を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで可塑剤10重量部で希釈した架橋触媒を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し動的架橋を行い、更に可塑剤60重量部を添加し、混練製造方法No.4に従い組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引っ張り特性を上記方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0082】
(比較例5)
APIB2、PP、可塑剤、架橋触媒を表1に示した割合で合計40gになるように配合し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し、混練製造方法No.6に従い動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は190℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引っ張り特性を上記方法に従って測定した結果を表2に示す。
【0083】
【表1】
Figure 2004204182
【0084】
【表2】
Figure 2004204182
【0085】
本発明の製造方法によって得られた熱可塑性エラストマー組成物、すなわち実施例1〜6は、本発明とは添加順序が異なる比較例に対し、引張り特性が優れている。更に実施例1〜6の組成物は、圧縮永久歪み特性と引張り特性バランスに優れた熱可塑性エラストマー組成物である。
【0086】
【発明の効果】
このように、本発明の製造方法によって製造された熱可塑性エラストマー組成物は、良好な圧縮永久歪み特性を保持したまま、引っ張り特性に優れた新規な熱可塑性エラストマー組成物である。

Claims (13)

  1. 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、及び架橋触媒(D)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、(A)、(B)及び(D)からなり可塑剤(E)を実質的に含有しない混合組成物の溶融混練時に(C)を添加し、(A)を動的に架橋することを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  2. 有機溶剤によって5重量%以下に希釈された架橋触媒(D)を用いることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  3. 有機溶剤の沸点が160℃以下である請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  4. 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、架橋触媒(D)及び可塑剤(E)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、(A)、(B)、及び(C)からなる混合組成物の溶融混練時に、(E)で希釈した(D)を添加し、(A)を動的に架橋することを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  5. 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、架橋剤(C)、架橋触媒(D)及び可塑剤(E)を含有する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、(A)、(B)、(C)及び(E)からなる混合組成物の溶融混練時に、(E)で希釈した(D)を添加し、(A)を動的に架橋することを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  6. 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)100重量部に対し、10〜200重量部の熱可塑性樹脂(B)を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  7. 熱可塑性樹脂(B)がオレフィン系樹脂(b−1)及び/又は芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(b−2)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  8. オレフィン系樹脂(b−1)が、ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項7記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  9. 芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(b−2)が、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項7記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  10. 架橋剤(C)がヒドロシリル基含有化合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  11. 可塑剤(E)がパラフィン系オイル及び/又はポリブテンであることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  12. 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)の数平均分子量が、1,000〜500,000であり、1分子あたり少なくとも0.2個のアルケニル基を末端に有する重合体であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法で得られた熱可塑性エラストマー組成物。
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