以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。なお以下では、「水」及び「湯」との文言が用いられる。湯供給孔からの液体と水供給孔からの液体とを区別する観点から、必要に応じて、「湯」と「水」とが使い分けられる。一方、湯供給孔からの液体と水供給孔からの液体とを総称して「水」としている記載もある。
本願では、実施形態における通常の使用状態を考慮して、「上」、「下」、「上側」、「下側」等の文言が用いられる。使用状態、水栓の仕様、水栓が取り付けられる設備の仕様等により、水栓の姿勢は変化しうる。この場合、上記文言は、水栓の当該姿勢に沿って適切に解釈される。
特に説明しない限り、本願において「径方向」とは、上ケースの径方向を意味する。特に説明しない限り、本願において「周方向」とは、上ケースの周方向を意味する。
図1は、一実施形態に係る湯水混合栓10の斜視図である。湯水混合栓10は、水栓本体12、レバーハンドル14、吐出部16、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22を有する。吐出部16は、ヘッド24を有する。ヘッド24は、切替レバー26を有する。この切替レバー26の操作により、シャワー吐出と通常吐出との切り替えが可能である。湯水混合栓10は、例えば、キッチン、洗面台等で使用される。
ヘッド24は、切替ボタン28と表示部30を有する。吐出部16には、浄水カートリッジ(図示されず)が内蔵されている。切替ボタン28により、浄水カートリッジにより浄化された水が通る浄水流路と、浄水カートリッジにより浄化されない水が通る原水流路とが切り換えられる。浄水流路に切り換えられると、浄水が吐出される。原水流路に切り換えられると、原水が吐出される。表示部30は、吐水が浄水か原水かを表示する。
レバーハンドル14の前後回動(上下回動)により、吐出量が調整される。本実施形態では、レバーハンドル14を上側に動かすほど吐出量が増加し、レバーハンドル14を最も下側にすると止水される。レバー左右位置に拘わらず、レバーハンドル14が最も下側にあるとき、止水状態となる。逆に、レバーハンドル14を下側に動かすほど吐出量が増加してもよい。レバーハンドル14の左右回動により、湯と水との混合割合が変化する。レバー左右位置により、吐水温度が調整される。なお、吐出量を調整するときのレバーハンドル14の動きは、前後回動というよりも上下回動である。ただし、このレバーハンドル14の回動に伴う傾斜レバー46の動きは前後回動である。このため、文言を統一して分かりやすくする観点から、本願では、レバーハンドル14の上記回動を前後回動と称する。
図2(a)及び図2(b)は、バルブ組立体38の斜視図である。図2(a)は止水状態における斜視図であり、図2(b)は吐水状態における斜視図である。図2(b)は、吐水量が最大の状態(最大吐水状態)を示している。図3(a)は止水状態におけるバルブ組立体38及びその近傍の側面図である。図3(b)は図3(a)のB-B線に沿った断面図である。図4(a)は吐水状態(最大吐水状態)におけるバルブ組立体38及びその近傍の側面図である。図4(b)は図4(a)のB-B線に沿った断面図である。
バルブ組立体38は、湯水混合栓10の水栓本体12に内蔵されている。水栓本体12は、側面壁部12aと、底部12bとを有する。側面壁部12aと底部12bとは、バルブ組立体38を収容する収容部13を形成している。また水栓本体12は、バルブ組立体38を上側から押さえるバルブ固定部材12cを有する。バルブ固定部材12cは雄ネジ部を有しており、この雄ネジ部が側面壁部12aの内面に設けられた雌ネジ部とネジ結合されている。バルブ固定部材12cは、バルブ組立体38を上側から押さえることで、バルブ組立体38を収容部13に固定している。
図5は、バルブ組立体38の分解斜視図である。図5が示すように、バルブ組立体38は、上シール部材40、上ケース42、回動体44、傾斜レバー46及びレバーシール部材48を有する。傾斜レバー46は、レバー軸46aと、レバーキャップ46bとを有する。レバー軸46aは、上部50、球面部52及び下部54を有する。球面部52は上部50と下部54との間に位置する。上部50には、レバーハンドル14が固定される。
傾斜レバー46に対するレバーハンドル14の固定には、止めネジ53が用いられている(図3(b)参照)。図示されないが、レバーハンドル14には傾斜レバー46の上部50に対応した形状のレバー挿入部とネジ孔とが設けられている。このレバー挿入部に傾斜レバー46(上部50)が挿入された状態で、前記ネジ孔に止めネジ53がねじ込まれている。本実施形態では、止めネジ53として、六角穴付き止めネジが採用されている。この止めネジ53の軸力F1により、止めネジ53の先端が傾斜レバー46を押圧している。この押圧により、レバーハンドル14が傾斜レバー46に固定されている。同時に、この止めネジ53の押圧は、レバー軸46aに対するレバーキャップ46bの固定にも寄与している。止めネジ53は、レバーキャップ46bを介してレバー軸46aを押圧している。この結果、止めネジ53が押圧する部分において、レバーキャップ46bがレバー軸46aに強く押し当てられている。結果として、レバー軸46aに対するレバーキャップ46bの固定力が高められている。
更に、バルブ組立体38は、弾性クリック体56を有する。弾性クリック体56は、上ケース42の上面(後述の小径円筒部120の上面)に載せられている。弾性クリック体56は、バルブ組立体38において露出している。後述の通り、弾性クリック体56はクリック音を生じさせる。クリック音がバルブ組立体38の内部で生ずる場合、クリック音は小さくなりやすい。これに対して、弾性クリック体56は露出している。この構成は、クリック音を大きくしうる。
更に、バルブ組立体38は、可動弁体60、固定弁体62、インナーシール部材64、下シール部材66及び下ケース68を有する。インナーシール部材64は、湯孔シール部64aと、水孔シール部64bと、排出孔シール部64cとを有する。本実施形態では、湯孔シール部64a、水孔シール部64b及び排出孔シール部64cが互いに分離している。湯孔シール部64a、水孔シール部64b及び排出孔シール部64cが繋がっていてもよい。この場合、インナーシール部材64は、3つの環状部を有する一体部材とされうる。
下ケース68は、湯導入孔70、水導入孔72及び吐出孔74を有する。下ケース68の下側に位置する前述の底部12bには、これら湯導入孔70、水導入孔72及び吐出孔74のそれぞれに対応した開口が設けられている。底部12bにおけるこれらの開口のそれぞれに、前述の湯導入管18、水導入管20及び吐出管22が接続されている。下シール部材66は、下ケース68の各孔70,72,74と、底部12bの各開口との接続部をシールしている。
固定弁体62は、下ケース68の上側に位置する。固定弁体62は、インナーシール部材64で下方から支持されつつ、このインナーシール部材64により可動弁体60に押し付けられている。下ケース68には、固定弁体62の回転を防止する係合凸部76と、上ケース42を下ケース68に固定するための係合凸部77とが設けられている。固定弁体62には、係合凸部76と係合する係合凹部78が設けられている。
固定弁体62は、湯供給孔80、水供給孔82及び排出孔84を有する。湯供給孔80は、固定弁体62を貫通している。湯供給孔80は、下ケース68の湯導入孔70に接続されている。インナーシール部材64(湯孔シール部64a)は、この接続のシール性を担保している。水供給孔82は、固定弁体62を貫通している。水供給孔82は、下ケース68の水導入孔72に接続されている。インナーシール部材64(水孔シール部64b)は、この接続のシール性を担保している。排出孔84は、固定弁体62を貫通している。排出孔84は、下ケース68の吐出孔74に接続されている。インナーシール部材64(排出孔シール部64c)は、この接続のシール性を担保している。
可動弁体60は、上側部材86と、下側部材88とを有する。上側部材86は、下側部材88に固定されている。この固定は、上側部材86の凸部90と、下側部材88の凹部92との係合によって達成されている。本実施形態では、上側部材86と下側部材88とが互いに別部材である。別部材とすることで、上側部材86と下側部材88とのそれぞれにおいて、最適な材質及び製法が選択されうる。可動弁体60は全体として一体的に成形されていてもよい。
図3(b)及び図4(b)が示すように、可動弁体60(下側部材88)の下面には、流路形成凹部94が形成されている。流路形成凹部94は、下方に向かって開口している。流路形成凹部94の上方は閉じている。なお、本実施形態では、下側部材88に形成された有底の凹部が流路形成凹部94であるが、この凹部に代えて貫通孔が設けられてもよい。例えば、この貫通孔の上側の開口がOリング等のパッキンを用いて別体で塞がれることで、流路形成凹部が構成されうる。
図3(b)及び図4(b)が示すように、固定弁体62の上面には、第1摺動面PL1が設けられている。第1摺動面PL1は、平面である。前述した口80、82及び84が存在していない部分に、第1摺動面PL1が形成されている。一方、下側部材88(可動弁体60)の下面には、第2摺動面PL2が設けられている。流路形成凹部94が形成されていない部分に、第2摺動面PL2が設けられている。第1摺動面PL1と第2摺動面PL2との面接触により、摺動合わせ面PL3が形成されている。この摺動合わせ面PL3は、水密性を発揮する。
図5が示すように、上側部材86の上面には、傾斜レバー46(レバー軸46a)の下部54と係合するレバー係合凹部98が設けられている。傾斜レバー46の下部54は、このレバー係合凹部98に挿入されている。前述の通り、レバーハンドル14は傾斜レバー46に固定されている。レバーハンドル14が前後回動すると、傾斜レバー46も前後回動する。この前後回動により、傾斜レバー46のレバー傾斜位置が変化する。レバーハンドル14が左右回動すると、傾斜レバー46も左右回動する。この左右回動により、傾斜レバー46のレバー左右位置が変化する。
傾斜レバー46の動きに連動して、可動弁体60が固定弁体62の上を摺動する。傾斜レバー46の左右回動に連動して、可動弁体60は回転する。傾斜レバー46の前後回動に連動して、可動弁体60は移動し、可動弁体60の流路形成凹部94も移動する。
流路形成凹部94が湯供給孔80及び/又は水供給孔82と排出孔84とに重複することで、吐水状態が達成される。吐水状態は、混合吐出状態、湯吐出状態及び水吐出状態を含む。流路形成凹部94が湯供給孔80及び水供給孔82に重複しているとき、混合吐出状態が達成される。混合吐出状態では、湯供給孔80からの湯と水供給孔82からの水とが混合されて吐出される。流路形成凹部94が、湯供給孔80のみに重複し、水供給孔82に重複していないとき、湯吐出状態が達成される。湯吐出状態では、湯供給孔80からの湯のみが吐出され、水供給孔82からの水は吐出されない。流路形成凹部94が、水供給孔82のみに重複し、湯供給孔80に重複していないとき、水吐出状態が達成される。水吐出状態では、水供給孔82からの水のみが吐出され、湯供給孔80からの湯は吐出されない。流路形成凹部94が湯供給孔80及び水供給孔82に重複していないとき、止水状態が達成される。
湯供給孔80は、固定弁体62の外縁に至る連通路を有していない。水供給孔82は、固定弁体62の外縁に至る連通路を有していない。排出孔84は、固定弁体62の外縁に至る連通路を有していない。湯水混合栓10は、ドライ摺動型である。一般に湯水混合栓は、水中摺動型とドライ摺動型とに分類される。水中摺動型は、摺動合わせ面を水没させて使用する湯水混合栓である。水中摺動型の湯水混合栓は、摺動合わせ面の周囲の空間に水を供給する水供給路を有している。前記連通路は、この水供給路の例である。湯水混合栓10は、摺動合わせ面PL3の周囲の空間に水を供給する水供給路を有さない。湯水混合栓10では、摺動合わせ面PL3により、摺動合わせ面PL3の周囲の空間への水漏れが規制されている。ドライ摺動型では、摺動合わせ面PL3を故意に水没させることはない。
図5が示すように、回動体44は、球面支持部102と、係合部104と、円周外面105とを有する。図3(b)及び図4(b)が示すように、球面支持部102は、球面の凹面であり、傾斜レバー46の球面部52と面接触している。係合部104は、可動弁体60(の上側部材86)のスライド係合部106に、スライド可能に取り付けられている。回動体44は、所定の角度範囲で回転可能な状態で、上ケース42に支持されている。回動体44は、上ケース42の内部に収容されている。回動体44の全体が、上ケース42の内側に位置する。
図3(b)及び図4(b)が示すように、レバーシール部材48は、回動体44の上端面108と上ケース42とに挟まれることで、固定されている。傾斜レバー46の球面部52は、レバーシール部材48に密着している。
レバーハンドル14の左右回動に伴い、傾斜レバー46が左右回動する。傾斜レバー46と共に回動体44が回転し、可動弁体60も回転する。傾斜レバー46の左右回動に伴い、レバーシール部材48も回転する。傾斜レバー46の左右回動において、レバーシール部材48は、球面部52と共に回転し、球面部52と摺動しない。なお、レバーシール部材48は、傾斜レバー46の左右回動に伴い回転しなくてもよい。あらゆるレバー左右位置において、球面部52はレバーシール部材48に密着している。
レバーハンドル14の前後回動に連動して、傾斜レバー46は前後回動する。傾斜レバー46の前後回動では、傾斜レバー46の傾きが変化する。傾斜レバー46の前後回動に伴い、可動弁体60は回動体44に対してスライド移動する。傾斜レバー46の前後回動に伴い、レバーシール部材48は球面部52と摺動する。
傾斜レバー46の前後回動より、傾斜レバー46の傾きが変化する。本願では、傾斜レバー46の傾きにより変化する傾斜レバー46の前後位置が、レバー傾斜位置とも称される。あらゆるレバー傾斜位置において、レバーシール部材48は球面部52に密着している。レバー傾斜位置は、止水位置と最大吐水位置とを有する。止水位置は、止水状態におけるレバー傾斜位置である。最大吐水位置は、吐水量が最大の状態におけるレバー傾斜位置である。
シール性の観点からは、レバーシール部材48に密着するシール面は球面部52であるのが好ましい。例えば追従性の高いシール部材を用いることで、シール面は球面部以外とされうる。
図5が示すように、レバーシール部材48は、無端の環状部材である。レバーシール部材48は、環状のパッキンである。レバーシール部材48は、内周面48aと、外周面48bとを有する。更に、レバーシール部材48は、上面48cと下面48dとを有する。外周面48bは、凹みを有している。外周面48bは小径円筒部120(上ケース42)の内面に密着している。内周面48aは、球面部52に密着している。上面48cは、上ケース42(シール支持部126)に密着している。下面48dは、回動体44に密着している。
シール性の観点から、球面部52は高い精度で成形されているのが好ましい。この観点から、球面部52は、レバー軸46aに形成されているのが好ましい。レバー軸46aの材質を金属とすることで、球面部52の材質を金属とすることができる。金属の場合、研磨によって高精度の球面を形成することができ、表面を鏡面とすることもできる。
レバーシール部材48は、傾斜レバー46に連動するレバー連動部と上ケース42との間をシールしている。本実施形態では、レバー連動部が球面部52である。レバーシール部材48にシールされるレバー連動部は球面部52に限定されない。このレバー連動部は、傾斜レバー46の一部であってもよいし、傾斜レバー46以外であってもよい。例えば、レバーシール部材48にシールされるレバー連動部は、回動体44であってもよい。すなわち、レバーシール部材48は、上ケース42と回動体44との間、及び、回動体44と上側部材86との間をシールしていてもよい。
図5が示すように、上ケース42は、小径円筒部120と、大径円筒部122と、連結部124とを有する。小径円筒部120は、上ケース42の上部を構成している。小径円筒部120は、大径円筒部122の上側に位置する。連結部124は、上ケース42の半径方向に延在している。連結部124は、小径円筒部120と大径円筒部122とを繋いでいる。連結部124は、上向き面を形成している。
前述の通り、バルブ固定部材12cは雄ネジ部12dを有しており、この雄ネジ部が側面壁部12aの内面に設けられた雌ネジ部12eとネジ結合されている(図3(b)及び図4(b)参照)。前記締め付け方向はネジ結合を締め付ける方向であり、前記緩み方向は前記ネジ結合を緩める方向である。バルブ固定部材12cを締め付け方向に回転させると、バルブ固定部材12cが下方に移動し、バルブ組立体38への押圧力が高まる。バルブ固定部材12cを緩み方向に回転させると、バルブ固定部材12cは、上方に移動し、取り外されうる。
上ケース42は、シール支持部126を有する。シール支持部126は、小径円筒部120に設けられている。小径円筒部120は環状である。シール支持部126は、小径円筒部120の内面から、小径円筒部120の半径方向内側に向かって突出している。シール支持部126の下面にレバーシール部材48の上面48cが接触している。
大径円筒部122は、シール配置部128を有する。シール配置部128は、周溝である。シール配置部128は、大径円筒部122の外周面に設けられている。シール配置部128は、大径円筒部122の上部に設けられている。シール配置部128に、上シール部材40が配置される。
大径円筒部122は、係合孔130を有する。この係合孔130が、下ケース68の係合凸部77と係合している。この係合により、上ケース42は、下ケース68に固定されている。
レバーキャップ46bは、レバー軸46aに取り付けられて用いられる。レバーキャップ46bの内部は空洞である。図3(b)及び図4(b)が示すように、レバーキャップ46bの内部に、レバー軸46a(上部50)が挿入されている。
レバーキャップ46bはレバー軸46aを覆っている。レバーキャップ46bの内面の断面形状は、レバーキャップ46bに挿入される部分におけるレバー軸46aの断面形状に対応している。レバーキャップ46bの内面の寸法は、レバーキャップ46bに挿入される部分におけるレバー軸46aの寸法よりも(僅かに)小さい。レバー軸46aは、レバーキャップ46bに圧入されている。レバー軸46aはレバーキャップ46bの内側に嵌め込まれている。この嵌め込みにより、レバーキャップ46bはレバー軸46aに固定されている。更に前述の通り、止めネジ53により、当該固定が一層強固とされている。止めネジ53とレバーキャップ46bとにより、レバー軸46aに対するレバーハンドル14の固定が確実とされている。
バルブ組立体38は、外れ防止部材140を有する(図5参照)。外れ防止部材140は、平板を切り抜いた形態を呈している。外れ防止部材140は、平面に沿った形態を呈している。外れ防止部材140は、小径円筒部120に設けられたスリット142に差し込まれている。外れ防止部材140の一部は、クリック体収容部190(後述)の内側に突出している。外れ防止部材140は、弾性クリック体56の上側への移動を阻止している。外れ防止部材140は、弾性クリック体56が上ケース42(小径円筒部120)から外れるのを防止している。
図6(a)は弾性クリック体56を斜め上方から見た斜視図であり、図6(b)は弾性クリック体56の側面図であり、図6(c)は弾性クリック体56を斜め下方から見た斜視図である。図7(a)は弾性クリック体56を上方から見た平面図であり、図7(b)は弾性クリック体56の背面図であり、図7(c)は弾性クリック体56を下方から見た底面図である。
弾性クリック体56は、弾性変形しうる材質により形成されている。本実施形態では、弾性クリック体56は、樹脂により形成されている。
弾性クリック体56は、基部150と、上方延在部152とを有する。図7(a)が示すように、弾性クリック体56は面対称な形状を有する。弾性クリック体56は、対称面Psを有する(図7(a)参照)。
基部150は、曲がって延在する有端の部分である。基部150は、有端の環状部である。基部150は、その周方向の一部が途切れている。基部150は、C字状である。基部150は、平面に沿って延びている。基部150は、円に沿って延びている。
基部150は、第1端150aと、第2端150bとを有する。第1端150aと第2端150bとの間で、基部150は途切れている。基部150は、外面150cと底面150dとを有している。本実施形態では、外面150cは基部150の外周面である。
弾性クリック体56(基部150)は、係止部151を有している。係止部151は、基部150に形成されている。係止部151は、凹部である。係止部151は、例えば、凸部であってもよい。係止部151は、対称面Ps上に位置する。係止部151を中心として、弾性クリック体56は揺動しうる。この弾性クリック体56の動きの詳細は後述される。
基部150は、第1部分E1と第2部分E2とを有する。第1部分E1は、係止部151から第1端150aまでの部分である。第2部分E2は、係止部151から第2端150bまでの部分である。第1部分E1は、基部150の第1位置P1を含む。第2部分E2は、基部150の第2位置P2を含む。
上方延在部152は、基部150と繋がっている。上方延在部152は、基部150よりも上側に延びている。上方延在部152は、基部150の第1位置P1と第2位置P2とを繋いでいる。上方延在部152は、第1位置P1と第2位置P2との間に延びる架橋部154を形成している。弾性クリック体56は、基部150と、基部150の第1位置P1と第2位置P2とを繋ぐ架橋部154とを有している。
図7(a)が示すように、第1位置P1は、対称面Psに対して一方側(図7(a)において右側)に位置し、第2位置P2は対称面Psに対して他方側(図7(a)において左側)に位置する。第1端150aは、対称面Psに対して一方側(図7(a)において右側)に位置し、第2端150bは対称面Psに対して他方側(図7(a)において左側)に位置する。
第1位置P1は、係止部151に対して一方側に位置し、第2位置P2は係止部151に対して他方側に位置する。第1端150aは、係止部151に対して一方側に位置し、第2端150bは係止部151に対して他方側に位置する。
上方延在部152(架橋部154)は、基部150の第1位置P1から上側に延びる第1立ち上がり部156と、基部150の第2位置P2から上側に延びる第2立ち上がり部158とを有する。更に、上方延在部152(架橋部154)は、第1立ち上がり部156と第2立ち上がり部158とを繋ぐ連結部160を有する。
連結部160は、第1湾曲部162と、第2湾曲部164と、横延在部166とを有する。第1湾曲部162は、第1上方延在部156の上端から湾曲して延びている。第2湾曲部164は、第2立ち上がり部158の上端から湾曲して延びている。横延在部166は、第1湾曲部162と第2湾曲部164とを繋いでいる。横延在部166は水平に延びている。
第1湾曲部162は、斜め下方に向かいつつ、横延在部166の第1端に繋がっている。第2湾曲部164は、斜め下方に向かいつつ、横延在部166の第2端に繋がっている。第1湾曲部162及び第2湾曲部164は、横延在部166に設けられた第1クリック係合部170の突出方向を調整する役割を果たしている。また、第1湾曲部162及び第2湾曲部164は、上方延在部152(架橋部154)の弾性変形を促進している。
弾性クリック体56は、底面凸部168を有する。図6(c)等が示すように、底面凸部168は、弾性クリック体56の底面に設けられている。底面凸部168は、基部150の底面150dに設けられている。複数(4つ)の底面凸部168が設けられている。底面凸部168は、下方に突出している。水平面に弾性クリック体56を載置すると、当該水平面に接触するのは底面凸部168のみである。複数の底面凸部168により、弾性クリック体56は水平面上に安定して載置される。底面凸部168は、凸曲面である。底面凸部168は、球面である。弾性クリック体56は平面上に載置されており、固定されていない。よって、弾性クリック体56は動きの自由度が高い。この動きの自由度は、明瞭なクリックの発現に寄与する。この動きの詳細は、後述される。
弾性クリック体56は、クリック係合部170を有する。図6(b)が示すように、本実施形態では、クリック係合部170は、斜め下方に突出している。本実施形態では、クリック係合部170は、凸部である。クリック係合部170は、例えば、凹部であってもよい。本願において、弾性クリック体56に設けられたクリック係合部170は、第1クリック係合部とも称される。
クリック係合部170は、上方延在部152に設けられている。クリック係合部170は、架橋部154に設けられている。クリック係合部170は、連結部160に設けられている。クリック係合部170は、横延在部166に設けられている。
この第1クリック係合部170と係合するのは、第2クリック係合部180である。第2クリック係合部180は、傾斜レバー46に設けられている。第2クリック係合部180は、レバー軸46aに設けられている。第2クリック係合部180は、球面部52に設けられている。第2クリック係合部180は、レバーシール部材48よりも上側に設けられている。あらゆるレバー傾斜位置において、第2クリック係合部180はレバーシール部材48に当たらない。あらゆるレバー左右位置において、第2クリック係合部180はレバーシール部材48に当たらない。第2クリック係合部180は、レバーシール部材48と球面部52との間の密着を阻害しない位置にある。
本実施形態では、第2クリック係合部180は突起である。第2クリック係合部180は、筋状の突起である。第2クリック係合部180は、全てのレバー傾斜位置において第1クリック係合部170と係合しうるように延在している。第2クリック係合部180と第1クリック係合部170との係合により、クリックが生ずる。このクリックは、レバーハンドル14(傾斜レバー46)の左右回動に伴って生ずる左右クリックである。傾斜レバー46のレバー傾斜位置に拘わらず、左右クリックが生ずる。最大吐水位置でも、左右クリックが生ずる。止水位置でも、左右クリックが生ずる。
傾斜レバー46が左右回動すると、第2クリック係合部180も左右回動する。一方、傾斜レバー46が左右回動しても、弾性クリック体56は左右回動しない。図2(a)及び図2(b)が示すように、傾斜レバー46の左右回動において、回動する第2クリック係合部180が弾性クリック体56の第1クリック係合部170に係合する。更に、傾斜レバー46の左右回動が進行すると、第1クリック係合部170が第2クリック係合部180を乗り越えて、係合が解除される。この係合が解除される瞬間に、クリックが生ずる。
弾性クリック体56は、レバーハンドル14の前後回動に連動しない。弾性クリック体56は、レバーハンドル14の左右回動に連動しない。弾性クリック体56は、レバーハンドル14の左右回動に連動して回動しない。レバーハンドル14の操作に拘わらず、弾性クリック体56の位置及び姿勢は、実質的に変わらない。よって、第1クリック係合部170の位置は一定であり、クリック係合が生じるときのレバー位置も一定である。所望のレバー位置でクリック係合を発生させることができる。ただし後述の通り、弾性クリック体56は微細に動く。
[弾性クリック体を用いたクリック係合]
以下、クリック係合の詳細が説明される。図8は、弾性クリック体56及び上ケース42を示す斜視図である。上ケース42は、クリック体収容部190を有する。クリック体収容部190は、上ケース42の小径円筒部120に設けられている。クリック体収容部190は、底面192と側面194とを有する。
底面192は、前述したシール支持部126の上面である。底面192は、平面である。底面192は環状面である。底面192の内側には開口が形成されており、この開口に傾斜レバー46(球面部52)が挿通されている。弾性クリック体56は、底面192に載せられている。弾性クリック体56は底面192上を滑って動きうる。
側面194は、小径円筒部120が形成する円周壁の内面である。側面194は、円周内面である。側面194は、弾性クリック体56の基部150の外面150cに対向している。
図9は、上ケース42のクリック体収容部190における弾性クリック体56の配置を示す平面図である。クリック体収容部190は上方に開放されており、弾性クリック体56は上方からクリック体収容部190に配置される。クリック体収容部190における弾性クリック体56の配置を明確に示すため、図9では、クリック体収容部190に配置された弾性クリック体56が黒塗りで示されている。
図9が示すように、上ケース42は、弾性クリック体56の係止部151に係合するクリック支持部200を有する。クリック支持部200は、クリック体収容部190に形成されている。クリック支持部200は、凸部である。クリック支持部200は、底面192から上側に突出する凸部である。クリック支持部200は、クリック体収容部190から径方向内側に向かって突出する凸部である。
クリック支持部200の形状は、係止部151の形状に対応している。クリック支持部200は、係止部151に係合している。凸部であるクリック支持部200が、凹部である係止部151に係合している。この係合により、弾性クリック体56は、回転できない。ただし、後述の通り、弾性クリック体56は、揺動可能である。
図10は、図9の下側の図を拡大した図である。図10では、黒塗りのクリック体56と、クリック体収容部190の側面194(内周面)とが示されている。クリック体収容部190と弾性クリック体56との間には、遊びがある。この遊びに起因して、弾性クリック体56は、クリック体収容部190内で動きうる。図10が示すように、弾性クリック体56において、側面194の直径は、基部150の外径よりも僅かに大きい。平面視において、基部150の外面150cは円に沿っている。この円の直径が、基部150の外径である。基部150の外面150cと側面194との間には隙間gpがある。隙間gpは、弾性クリック体56がクリック体収容部190内で動くことを許容する。弾性変形していない基部150と側面194との間に隙間gpが存在する。
図11及び図12は、図10と同様の拡大平面図である。図10と同じく、図11及び図12では、黒塗りのクリック体56と、クリック体収容部190の側面194(内周面)とが示されている。図10では、弾性クリック体56は、揺動の振れ幅の中央に位置する。図11は、弾性クリック体56が最も一方側(図面左側)に振れた状態を示す。図12は、弾性クリック体56が最も他方側(図面右側)に振れた状態を示す。この揺動の中心は、クリック支持部200である。揺動の中心は、揺動中に若干ズレるが、クリック支持部200の近傍にある。
傾斜レバー46の左右回動により、傾斜レバー46の第2クリック係合部180が回動し、この第2クリック係合部180が、弾性クリック体56の第1クリック係合部170と係合する(図2(a)、図2(b)及び図6(a)参照)。この係合は、凸部同士の係合である。この係合により、第1クリック係合部170は、上向きの力を受けると共に、水平方向の力を受ける。水平方向の力の向きは、レバーハンドル14(傾斜レバー46)の左右回動の向きによって相違する。
ここでは、第1クリック係合部170が受けた水平方向の力Fが、図11上で左向きである場合を考える。これはレバーハンドル14を左側(湯側)に回動させたときの力の向きである。この力Fは、第1クリック係合部170が設けられている架橋部154(上方延在部152)に作用する。この力Fは、弾性クリック体56に、クリック支持部200回りの回転モーメントを与える。この結果、図11に示すように、弾性クリック体56は、基部150の第2部分E2が側面194に当接するまで揺動する。更に、この力Fにより、第1部分E1が第2部分E2に近づくように、基部150が弾性変形する(図11の2点鎖線参照)。この弾性変形により、弾性クリック体56は弾性変形を回復する力(変形回復力)を溜め込む。
やがて、第1クリック係合部170が第2クリック係合部180を乗り越え、両者の係合が解除される。この解除により、上記力Fは無くなり、上記弾性変形は一気に回復する。すなわち、上記変形回復力が一気に発現する。このとき、第2部分E2に近づく方向への第1部分E1の変形が元に戻ると共に、弾性クリック体56は、力Fによる揺動とは逆方向に揺動する。この結果、図12に示すように、今度は第1部分E1が側面194に当たる。弾性変形は一気に回復するため、第1部分E1は勢いよく側面194に当たる。第1部分E1は側面194を叩く。第1部分E1が側面194に当たることで、音が生ずる。この音がクリック音である。音と共に、振動も生ずる。
図11及び図12には、平面視における弾性クリック体56の中心線CLが一点鎖線で示されている。揺動振幅角がθ(°)とすると、上記力Fにより、揺動中心CL1に対して一方側にθ/2(°)の角度まで揺動する。このときの中心線CLが、CL2である(図11参照)。上記力Fが無くなると、揺動中心CL1に対して他方側にθ/2(°)の角度まで揺動し、クリック音が生ずる。このときの中心線CLが、CL3である(図12参照)。隙間gpは微小であり、揺動振幅角θも小さい。しかし、小さな揺動振幅角θであっても、クリック音を大きくするのに有効である。
クリック音を大きくするには、揺動振幅角θが大きすぎても小さすぎても好ましくない。クリック音を大きくする観点から、揺動振幅角θは、1.5°以上が好ましく、2.0°以上がより好ましく、2.5°以上がより好ましい。クリック音を大きくする観点から、揺動振幅角θは、4.0°以下が好ましく、3.5°以下がより好ましく、3.0°以下がより好ましい。実施形態では、θが2.8°とされた。
以上では、レバーハンドル14が左側(湯側)に回動される場合について説明したが、レバーハンドル14が右側(水側)に回動されるときも同じクリックが生ずる。この場合、力F(図11)の向きが逆になり、弾性クリック体56の揺動の方向も逆となる。
このように、本実施形態では、弾性クリック体56とクリック体収容部190との間に、弾性クリック体56の揺動を許容する係合部210が設けられている。本実施形態では、係合部210は、係止部151及びクリック支持部200である。
第2クリック係合部180が第1クリック係合部170に係合すると、弾性クリック体56は上側に押し上げられる。しかし、基部150は、外れ防止部材140に押さえられている(図2(b)参照)。基部150の上側への移動は、外れ防止部材140により阻止されている。結果として、弾性クリック体56では、第1クリック係合部170が上側に移動するように架橋部154(上方延在部152)が変形する。この変形に伴う回復力は、クリック係合の係合力を高め、前述した力Fを増大させる。
上述の通り、弾性クリック体56は底面192に載せられている。弾性クリック体56において、底面192に接しているのは、底面凸部168である(図6(b)及び図6(c)参照)。底面凸部168のみが、底面192に接している。底面凸部168により、弾性クリック体56と底面192との接触面積が小さくされている。このため、弾性クリック体56は底面192上を摺動しやすい。底面凸部168は、クリック音を大きくするのに寄与している。
本実施形態では、弾性クリック体56とクリック体収容部190との間に隙間gpが設けられている。この隙間gpは、弾性クリック体56の揺動の振幅を増大させうる。隙間gpは、弾性クリック体56の衝突速度を高めうる。隙間gpは、クリック音を大きくするのに寄与する。
隙間gpは、無くてもよい。隙間gpがなくても、クリック音は生じうる。弾性変形していない弾性クリック体56とクリック体収容部190との間に隙間gpが無い場合でも、弾性クリック体56の弾性変形により、一時的に、当該隙間が形成されうる。そして、この弾性変形が回復するときに、当該隙間が無くなると同時に、弾性クリック体56がクリック体収容部190の表面を叩くことができる。よって、自然状態の弾性クリック体56とクリック体収容部190との間に隙間gpが無くても、クリック音は発生しうる。
隙間gpがあることで、弾性変形が解除されるときに、弾性クリック体56は底面192上を動きうる。この動きは、クリック体収容部190に対する弾性クリック体56の衝突速度を高めうる。隙間gpは、クリック音を大きくするのに寄与する。本実施形態では、弾性クリック体56の動きが、揺動である。弾性クリック体56の動きは、揺動以外であってもよい。また、弾性クリック体56の動きは、底面192上での動きに限られない。弾性クリック体56の弾性変形の反動で弾性クリック体56がクリック体収容部190の表面に当たるときにクリック音が発生するような動きであればよい。揺動の場合、弾性クリック体56の回動及び移動を係合部210によって阻止でき、第1クリック係合部170の位置を一定とできる点で好ましい。
図6(a)~(c)及び図7(a)~(c)で示されるような、弾性クリック体56の立体的な構造は、クリック係合に好適である。基部150は、クリック体収容部190における安定した載置状態をもたらし、弾性クリック体56の安定した動きに寄与する。上方延在部152(架橋部154)は、第1クリック係合部170の位置及び向きを設定する自由度を高める。また、上方延在部152(架橋部154)は、クリック係合の際における上下方向の変形に伴い水平方向の力Fを確実に生じさせ、この水平方向の力Fを基部150に伝達して、基部150を変形させうる。架橋部154は、基部150の第1位置P1と第2位置P2とを結んでいるので、基部150を効率よく変形させうる。クリック係合による架橋部154の変形は、第1位置P1と第2位置P2とを互いに近づける変形を基部150に与える。なお、基部150では、係止部151として形成された凹部において剛性が低い。このため、この係止部151を挟んだ2つの位置に繋がる架橋部154は、効果的に基部150を変形させうる。
上記実施形態でのクリックは、傾斜レバー46(レバーハンドル14)の左右回動の際に生ずる左右クリックである。クリックは、傾斜レバー46(レバーハンドル14)の前後回動の際に生ずる前後クリックであってもよい。また、上記実施形態では、あらゆるレバー傾斜位置において前記左右クリックが生ずる。図5の拡大部が示す通り、第2クリック係合部180は縦方向に長くされている。この第2クリック係合部180は、あらゆるレバー傾斜位置でクリック係合が生ずるように延在している。この点は、図2(a)及び図2(b)からも理解できる。図2(a)が示すように止水状態でもクリック係合が生じ、且つ、図2(b)が示すように、最大吐水位置を含む全ての吐水状態でもクリック係合が生ずる。クリックが前後クリックとされる場合も、あらゆるレバー左右位置でクリック係合が生ずるのが好ましい。この場合、例えば、球面部52において、第2クリック係合部180を横方向に延在させることができる。
クリックは、音であってもよいし、レバーハンドル14を持つ手に伝わる感覚(振動、回動抵抗等)であってもよい。好ましくは、このクリックは、音(クリック音)及び手に伝わる感覚を含む。
上記実施形態では、左右クリックが生ずる。左右クリックが生じるときのレバー左右位置は限定されない。上記実施形態では、左右クリックが生じるときのレバー左右位置は、正面位置よりも若干(10°未満)湯側の位置である。この左右クリックは、湯の混合の有無を使用者に告知しうる。
[弾性クリック体が当たる隣接部]
上記実施形態では、クリック係合が解除されたときに、弾性クリック体56がクリック体収容部190の側面194に当たる。弾性クリック体56が当たるのは、側面194でなくてもよい。弾性クリック体56が隣接部に当たることで、クリックが生ずる。隣接部とは、弾性クリック体56に隣接する部分である。隣接部は、弾性クリック体56以外の部分である。隣接部は、傾斜レバー46以外の部分である。好ましい隣接部の一例は、上ケース42である。より好ましい隣接部の一例は、クリック体収容部190の表面である。弾性クリック体56が隣接部に当たることで、クリック係合で蓄積された弾性回復力を瞬間的に衝突エネルギーに変換でき、大きな音を発生させることができる。
[密閉構造]
図3(b)及び図4(b)が示すように、バルブ組立体38は、弁体周囲空間S1を有する。この湯水混合栓10では、弁体周囲空間S1が密閉空間とされている。弁体周囲空間S1は、複数のシール部材によって密閉されている。弁体周囲空間S1は、摺動合わせ面PL3の周囲の空間を含む。弁体周囲空間S1は、インナーシール部材64の周囲の空間を含む。弁体周囲空間S1は、バルブ組立体38と収容部13との間の空間を含む。これらの空間は、部材間の隙間によって繋がっている。弁体周囲空間S1は、摺動合わせ面PL3及びインナーシール部材64から漏れた漏れ水が貯留されうる空間である。
弁体周囲空間S1の上側は、レバーシール部材48と上シール部材40とで密閉されている。上シール部材40は、上ケース42と水栓本体12との間をシールしている。本実施形態では、上シール部材40は、上ケース42(大径円筒部122)と側面壁部12aとの間をシールしている。レバーシール部材48は、レバー連動部(球面部52)と上ケース42との間をシールしている。上シール部材40及びレバーシール部材48は、摺動合わせ面PL3よりも上側に位置している。バルブ組立体38の内側に位置するレバーシール部材48と、バルブ組立体38の外側に位置する上シール部材40とで、弁体周囲空間S1の上側の密閉が実現されている。あらゆるレバー左右位置において、レバーシール部材48は、レバー連動部(球面部52)に密着している。あらゆるレバー傾斜位置において、レバーシール部材48は、レバー連動部(球面部52)に密着
弁体周囲空間S1の下側は、インナーシール部材64及び下シール部材66で密閉されている。インナーシール部材64は、固定弁体62と下ケース68との間をシールしている。下シール部材66は、下ケース68と水栓本体12との間をシールしている。本実施形態では、下シール部材66は、下ケース68と底部12bとの間をシールしている。インナーシール部材64及び下シール部材66は、摺動合わせ面PL3よりも下側に位置している。バルブ組立体38の内側に位置するインナーシール部材64と、バルブ組立体38の外側に位置する下シール部材66とで、弁体周囲空間S1の下側の密閉が実現されている。
このように、バルブ組立体38と水栓本体12の収容部13との間は、上側では上シール部材40でシールされ、下側では下シール部材66でシールされている。更に、レバー連動部は、レバーシール部材48でシールされている。また、固定弁体62と下ケース68との間は、インナーシール部材64でシールされている。これらのシール部材により、弁体周囲空間S1は密閉されている。
ドライ摺動型の湯水混合栓10では、摺動合わせ面PL3からの水の流出は望まれていない。しかし、摩耗やグリースの流出などの影響で、摺動合わせ面PL3からの水漏れは生じうる。また、劣化により、各シール部からの水漏れが生じる。通常のドライ摺動側の湯水混合栓では、弁体周囲空間S1は密閉されていない。このため、漏れ水は、弁体周囲空間S1を満たした後、水栓本体12の外部に溢れ出す。溢れ出した漏れ水は、湯水混合栓10の外壁を伝って流れ落ち、水栓根元部に溜まる。水栓根元部とは、水栓本体12と水栓設置部(流し台など)との境界部を意味する。溜まった水は、この水栓根元部を腐食させる。
本開示の湯水混合栓10では、弁体周囲空間S1が密閉されている。このため、漏れ水が外部に流出しない。
上記密閉により、弁体周囲空間S1が外部から遮断される。このため、湯水混合栓10を洗浄する際に用いられる洗浄水が弁体周囲空間S1の内部に侵入することが防止される。また、洗剤の侵入が防止される。この結果、グリースの流出が抑制される。
吐水の温度が高い場合、弁体周囲空間S1内の空気及びその周辺部材が暖められて膨張する。この膨張に起因する高い空気圧は、可動弁体60を押し下げる。この結果、吐水時における、摺動合わせ面PL3からの水漏れが抑制される。
漏れ水が増加するにつれて、密閉された弁体周囲空間S1内の圧力が上昇する。この圧力により、シール部材の内側と外側との圧力差が小さくなり、水漏れが抑制される。また、この圧力がシール部材の内側の圧力と同じになると、シール部材の内側と外側との圧力差がなくなり、水漏れが生じない。また、弁体周囲空間S1内の圧力が上昇すると、シール部材は内側と外側とから押圧されて薄くなり、上下方向に延びようとするので、シール圧が高まる。摺動合わせ面PL3からの水漏れについても、弁体周囲空間S1の圧力が漏れ水圧と同じになれば、水漏れが防止される。このように、弁体周囲空間S1が密閉された構造は、内圧の上昇によって漏れ水を抑制しうる。
弾性クリック体56は、密封された弁体周囲空間S1の外側に設けられている。弁体周囲空間S1の内部で発生したクリック音は、聞こえにくい。弁体周囲空間S1の外側に弾性クリック体56が配置されることで、クリック音は聞こえやすい。第2クリック係合部180も、弁体周囲空間S1の外側に配置されている。この第2クリック係合部180は、弁体周囲空間S1の外側において弾性クリック体56の第1クリック係合部170と係合する。
上シール部材40の形状は限定されない。上記実施形態のように、側面壁部12aの内周面と上ケース42の外周面との間をシールする場合、上シール部材40は環状であるのが好ましい。この環状シールとして、Oリング及びリップパッキンが例示される。上記実施形態では、Oリングが用いられている。
レバーシール部材48の形状は限定されない。上記実施形態のように、傾斜レバー46の球面部52をシールする場合、レバーシール部材48は環状であるのが好ましい。
インナーシール部材64の形状は限定されない。前述の通り、インナーシール部材64は、上記実施形態のように3つの環状シールであってもよいし、3つの環状部を有して一体化されていてもよい。分離した3つの環状シールが用いられる場合、各環状シールは円筒形状であってもよい。上記実施形態でも、湯孔シール部64a、水孔シール部64b及び排出孔シール部64cは円筒形状である(図5参照)。インナーシール部材64は、固定弁体62と下ケース68との間で圧縮されて用いられる。インナーシール部材64の存在に起因して、固定弁体62と下ケース68との間には隙間が確保されている。インナーシール部材64は、この隙間を維持しつつ、固定弁体62を上側(可動弁体60側)に押圧している。この押圧力は、摺動合わせ面PL3における接触圧を高め、摺動合わせ面PL3からの漏れ水を抑制している。
下シール部材66の形状は限定されない。下シール部材66は、3つの環状シールであってもよいし、上記実施形態のように、3つの環状部を有して一体化されていてもよい。
[水栓構造の自由度が高いクリック機構]
上記実施形態では、傾斜レバー46の設けられた第2クリック係合部180が、弾性クリック体56と係合する。回動する傾斜レバー46が直接弾性クリック体56に係合してクリックが生ずる。したがって、回動体44によって弾性クリック体56を回転させる必要がない。回動体44を上側に露出させる必要がないので、バルブ組立体38の設計自由度が向上する。この結果、上記密封構造が可能となる。また、弾性クリック体56を回転させる必要がないため、弾性クリック体56を載置したクリック構造が可能となる。
図3(b)及び図4(b)が示すように、回動体44は、レバーシール部材48の下側に位置する。バルブ組立体38において回動体44は露出していない。回動体44は密閉された部分の内側に位置する。上述の通り、本実施形態では、傾斜レバー46が回動して弾性クリック体56に係合する。このため、弾性クリック体56を回転させる必要がない。よって、回動体44を露出させる必要がなく、密閉構造が容易に構成されうる。
[露出した弾性クリック体]
クリック機構がバルブ組立体38の内側に位置すると、クリック音が聞こえにくくなる。これに対して、弾性クリック体56は、バルブ組立体38において露出している。すなわち、図2(a)及び図2(b)が示すように、バルブ組立体38では、クリック機構を構成する弾性クリック体56が露出している。このため、耳に届くクリック音が大きくなり、左右クリックの明瞭性が高まる。
上記密閉構造は、遮音性が高い。この密閉構造の中にクリック機構を設けても、クリック音が遮蔽されてしまい、クリック音が小さくなる。上記実施形態では、密閉構造を採用しつつ、クリック機構を露出させている。このためクリック音を大きくすることができる。
上記実施形態では、弾性クリック体56を露出させることができ、弾性クリック体56が動く構成が容易に達成されうる。
[全てのレバー位置におけるクリックの発生]
上述の通り、第2クリック係合部180を所定の長さ及び方向に延在させることで、クリック係合が生ずる範囲を容易に設定することができる。このため、全てのレバー傾斜位置で左右クリックを発生させることができる。また、全てのレバー左右位置で前後クリックを発生させることができる。
[傾斜レバーに設けられたクリック係合部]
傾斜レバー46に第2クリック係合部180を設けることで、弾性クリック体56を回転させる必要がなくなり、密閉構造が達成されうる。しかし、傾斜レバー46の傾きはレバー傾斜位置によって変化するため、レバー傾斜位置によって第2クリック係合部180の位置が変化しうる。このため、全てのレバー傾斜位置でクリック係合するのが困難となりうる。上記実施形態では、第2クリック係合部180を延在させることで、全てのレバー傾斜位置でクリック係合が発現する。また、全てのレバー傾斜位置で、第2クリック係合部180と第1クリック係合部170との係合状態は同一である。第2クリック係合部180が球面部52上に設けられることで、この係合状態の同一性が容易に達成されている。
上ケースの材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。バルブ固定部材による押圧力に耐える観点から、剛性及び強度が高い材質が好ましい。この観点から、PPS樹脂が特に好ましい。PPS樹脂とは、ポリフェニレンスルフィド樹脂である。
レバーキャップ46bの材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)及び金属が例示される。薄肉部に対する成形性の観点から、樹脂が好ましく、PP(ポリプロピレン)が特に好ましい。上記実施形態では、PPが用いられた。
レバー軸46aの材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)、金属及びセラミックが例示される。操作力に対する強度の観点から、金属が好ましい。レバー軸は水がかかる位置にあることから、錆をも考慮すると、ステンレス鋼がより好ましい。上記実施形態では、SUS304が用いられた。
弾性クリック体56の材質として、樹脂及び金属が例示される。安価で生産性に優れる点及び弾性の観点から樹脂が好ましい。成形性の観点から、熱可塑性樹脂がより好ましい。熱可塑性樹脂として、PP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、POM(ポリアセタール)等が例示される。耐摩耗性の観点から、摩擦抵抗の少ない材質が好ましく、この観点からPOMが好ましい。上記実施形態では、POMが用いられた。
上記実施形態では、弾性クリック体56は、全体として一体成形されている。弾性クリック体56は、複数の部材を組み合わせて形成されてもよい。弾性クリック体56の弾性に起因するクリック性能の観点からは、弾性クリック体56は全体として一体成形されているのが好ましい。
レバーシール部材48の材質として、樹脂及びゴム(弾性ゴム)が例示される。球面部52に対する密着性の観点から、ゴムが好ましい。好ましいゴムとして、シリコーンゴム、ニトリルゴム(NBR)及びエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が挙げられる、上記実施形態では、ゴム(EPDM)が用いられた。
上シール部材40の材質として、樹脂及びゴム(弾性ゴム)が例示される。シール性の観点から、ゴムが好ましい。上記実施形態では、ゴムが用いられた。
インナーシール部材64の材質として、樹脂及びゴム(弾性ゴム)が例示される。シール性の観点から、ゴムが好ましい。上記実施形態では、ゴムが用いられた。
下シール部材66の材質として、樹脂及びゴム材(加硫ゴム)が例示される。シール性の観点から、ゴムが好ましい。上記実施形態では、ゴムが用いられた。
上述した実施形態に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
水栓本体と、
前後回動し且つ左右回動するレバーハンドルと、
前記水栓本体の内部に収容されるバルブ組立体とを備えており、
前記バルブ組立体が、
湯供給孔、水供給孔及び排出孔を有する固定弁体と、
流路形成凹部を有しており、前記固定弁体上で動く可動弁体と、
前記レバーハンドルに連動し、前後回動してレバー傾斜位置が変化すると共に左右回動してレバー左右位置が変化する傾斜レバーと、
前記固定弁体の下側に配置され、湯導入孔、水導入孔及び吐出孔を有する下ケースと、
前記下ケースに固定されており、前記下ケースと共に前記バルブ組立体の外面を構成する上ケースと、
前記下ケースと前記水栓本体との間をシールする下シール部材と、
前記固定弁体と前記下ケースとの間において、前記湯供給孔と前記湯導入孔との間、前記水供給孔と前記水導入孔との間、及び、前記排出孔と前記吐出孔との間をシールするインナーシール部材と、
前記レバーハンドルの前後回動に連動せず且つ前記レバーハンドルの左右回動に連動しない弾性クリック体と、
を有しており、
前記弾性クリック体が、第1クリック係合部を有しており、
前記傾斜レバーが、第2クリック係合部を有しており、
前記第1クリック係合部と前記第2クリック係合部とのクリック係合により前記弾性クリック体に弾性変形が生じ、
前記クリック係合が解除され前記弾性変形が解消するときに前記弾性クリック体が隣接部に当たることでクリックが生ずる湯水混合栓。
[付記2]
前記上ケースが、前記弾性クリック体を収容するクリック体収容部を有しており、
前記隣接部が、前記クリック体収容部の表面である付記1に記載の湯水混合栓。
[付記3]
前記弾性クリック体が前記クリック体収容部の底面の上に載置されている付記2に記載の湯水混合栓。
[付記4]
前記弾性クリック体と前記クリック体収容部との間に、前記弾性クリック体の動きを許容する隙間が設けられており、
前記クリック係合が解除されるときに前記弾性クリック体が動く付記2又は3に記載の湯水混合栓。
[付記5]
前記弾性クリック体の前記動きが、揺動であり、
前記弾性クリック体と前記クリック体収容部との間に、前記揺動を許容しつつ前記弾性クリック体の回転を阻止する係合部が設けられている付記4に記載の湯水混合栓。
[付記6]
前記上ケースと前記水栓本体との間をシールする上シール部材と、
前記傾斜レバーに連動するレバー連動部と前記上ケースとの間をシールするレバーシール部材とを更に有する付記1から5に記載の湯水混合栓。
[付記7]
前記傾斜レバーが、球面部を有しており、
前記レバーシール部材が、前記球面部と前記上ケースとの間をシールしている付記6に記載の湯水混合栓。
[付記8]
水栓本体と、
前後回動し且つ左右回動するレバーハンドルと、
前記水栓本体の内部に収容されるバルブ組立体とを備えており、
前記バルブ組立体が、
湯供給孔、水供給孔及び排出孔を有する固定弁体と、
流路形成凹部を有しており、前記固定弁体上で動く可動弁体と、
前記レバーハンドルに連動し、前後回動してレバー傾斜位置が変化すると共に左右回動してレバー左右位置が変化する傾斜レバーと、
前記固定弁体の下側に配置され、湯導入孔、水導入孔及び吐出孔を有する下ケースと、
前記下ケースに固定されており、前記下ケースと共に前記バルブ組立体の外面を構成する上ケースと、
前記下ケースと前記水栓本体との間をシールする下シール部材と、
前記固定弁体と前記下ケースとの間において、前記湯供給孔と前記湯導入孔との間、前記水供給孔と前記水導入孔との間、及び、前記排出孔と前記吐出孔との間をシールするインナーシール部材と、
前記上ケースと前記水栓本体との間をシールする上シール部材と、
前記傾斜レバーに連動するレバー連動部と前記上ケースとの間をシールするレバーシール部材と、
前記レバーハンドルの前後回動に連動せず且つ前記レバーハンドルの左右回動に連動しない弾性クリック体と、
を有しており、
前記弾性クリック体が、第1クリック係合部を有しており、
前記傾斜レバーが、第2クリック係合部を有しており、
前記第1クリック係合部と前記第2クリック係合部とのクリック係合に起因してクリックが生ずる湯水混合栓。
[付記9]
前記傾斜レバーが、球面部を有しており、
前記レバーシール部材が、前記球面部と前記上ケースとの間をシールしている付記8に記載の湯水混合栓。
[付記10]
前記クリック係合が解除され前記弾性変形が解消するときに前記弾性クリック体が隣接部に当たることでクリックが生ずる付記8又は9に記載の湯水混合栓。
[付記11]
前記クリックが、前記傾斜レバーの左右回動の際に生ずる左右クリックである付記1から10のいずれか1項に記載の湯水混合栓。
[付記12]
全てのレバー傾斜位置において前記左右クリックが生ずる付記11に記載の湯水混合栓。
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明に含まれない他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。