以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。なお以下では、「水」及び「湯」との文言が用いられる。湯供給孔からの液体と水供給孔からの液体とを区別する観点から、必要に応じて、「湯」と「水」とが使い分けられる。一方、湯供給孔からの液体と水供給孔からの液体とを総称して「水」としている記載もある。
図1は、一実施形態に係る湯水混合栓10の斜視図である。湯水混合栓10は、水栓本体12、レバーハンドル14、吐出部16、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22を有する。吐出部16は、ヘッド24を有する。ヘッド24は、切替レバー26を有する。この切替レバー26の操作により、シャワー吐出と通常吐出との切り替えが可能である。湯水混合栓10は、例えば、キッチン、洗面台等で使用される。
ヘッド24は、切替ボタン28と表示部30と吐水口32とを有する。吐出部16には、浄水カートリッジ(図示されず)が内蔵されている。切替ボタン28により、浄水カートリッジを透過する流路と、浄水カートリッジを透過しない流路とが切り換えられる。浄水カートリッジを透過する流路に切り換えられると、浄水が吐出される。浄水カートリッジを透過しない流路に切り換えられると、原水が吐出される。表示部30は、吐水が浄水か原水かを表示する。
レバーハンドル14の前後回動(上下動)により、レバー前後位置が変化する。レバー前後位置により、吐出量の調整が可能である。本実施形態では、レバーハンドル14を上側に動かすほど吐出量が増加し、レバーハンドル14を下側に動かすほど吐出量が減少し、レバーハンドル14を最も下側にすると止水される。レバー左右位置に拘わらず、レバーハンドル14が最も下側にあるとき、止水状態となる。逆に、レバーハンドル14を下側に動かすほど吐出量が増加してもよい。レバーハンドル14の左右回動により、レバー左右位置が変化する。レバー左右位置により、湯と水との混合割合が変化する。レバー左右位置により、吐水温度の調整が可能である。
図2は、バルブ組立体38及びその近傍を示す縦断面図である。図3は、バルブ組立体38の分解斜視図である。湯水混合栓10において、バルブ組立体38は交換可能である。
水栓本体12は、側面壁部12aと、底面壁部12bとを有する。側面壁部12aと底面壁部12bとで、バルブ組立体38を収容する収容部13が形成されている。また水栓本体12は、バルブ組立体38を上側から押さえる上側部材12cを有する。上側部材12cは雄ネジ部を有しており、この雄ネジ部が側面壁部12aの内面に設けられた雌ネジ部とネジ結合されている。上側部材12cは、バルブ組立体38を上側から押さえることで、バルブ組立体38を収容部13に固定している。上側部材12cの押圧力は、インナーシール部材64(後述)を圧縮している
バルブ組立体38は、湯水混合栓10の本体12に内蔵されている。バルブ組立体38は、移動体40、上ケース42、回動体44、レバー46、レバー回転軸48、左右クリック用弾性部材50、左右クリック用当接体52、前後クリック用当接体56、前後クリック用弾性部材58、可動弁体60、固定弁体62、インナーシール部材64、固定弁シール部材66、下シール部材67、下ケース68及びリリーフ弁v1を有する。レバーハンドル14は、レバー46に固定されている。
前後クリック用当接体56及び前後クリック用弾性部材58は、移動体40に取り付けられている。前後クリック用当接体56は、前後クリック用弾性部材58(ねじりバネ)に付勢されつつ、レバー46の側面に設けられた前後クリック用係合部(図示されず)に当接している。この前後クリック用係合部は、凹凸を有している。この当接に起因して、レバー46の前後回動に伴うクリック感が生じる。
左右クリック用当接体52及び左右クリック用弾性部材50は、回動体44に取り付けられている。左右クリック用当接体52は、左右クリック用弾性部材50(板バネ)に付勢されつつ、左右クリック用係合部(図示されず)に当接しうる。左右クリック用係合部は、上ケース42の内面に設けられている。当接体52と左右クリック用係合部との当接に起因して、レバー46の左右回動に伴うクリック感が生じる。
下ケース68は、湯導入孔70、水導入孔72及び吐出孔74を有する。図示されないが、底面壁部12bには、これら湯導入孔70、水導入孔72及び吐出孔74のそれぞれに対応した開口が設けられており、これらの開口のそれぞれに、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22が接続されている。
インナーシール部材64は、湯孔シール部64aと、水孔シール部64bと、排出孔シール部64cとを有する。本実施形態では、湯孔シール部64a、水孔シール部64b及び排出孔シール部64cがそれぞれ独立している。湯孔シール部64a、水孔シール部64b及び排出孔シール部64cのそれぞれは、円筒状の部材である。本実施形態では、インナーシール部材64が、3つの部材によって構成されている。インナーシール部材64は、1つの部材によって構成されていてもよい。この場合、インナーシール部材64は、3つの環状部が一体化された部材とされうる。インナーシール部材64は、固定弁体62を下方から支持しつつ、固定弁体62を可動弁体60に押し付けている。インナーシール部材64は圧縮されて弾性変形しており、この弾性変形に伴う反力が、固定弁体62を可動弁体60に押し付けている。
固定弁体62は、下ケース68に収容されている。下ケース68は、上側に突出する外周壁部75と、固定弁体62を固定する弁体係合部76と、上ケース42を固定するための係合凸部77とを有する。外周壁部75が、固定弁体62の周囲を取り囲んでいる。外周壁部75の内周面75aが、固定弁体62の外周面110に対向している。外周壁部75の内周面75aが、固定弁体62の外周面110に、摺動可能に接している。固定弁体62の下面には、弁体係合部76と係合する係合凸部78(後述の図6参照)が設けられている。
固定弁体62は、湯供給孔80、水供給孔82及び排出孔84を有する。湯供給孔80は、固定弁体62を貫通している。湯供給孔80は、下ケース68の湯導入孔70に接続されている。この接続は、湯孔シール部64aでシールされている。水供給孔82は、固定弁体62を貫通している。水供給孔82は、下ケース68の水導入孔72に接続されている。この接続は、水孔シール部64bでシールされている。排出孔84は、固定弁体62を貫通している。排出孔84は、下ケース68の吐出孔74に接続されている。この接続は、排出孔シール部64cでシールされている。
固定弁体62において、供給孔80,82は左右非対称に配置されている。レバー左右位置が正面位置にあるとき、水のみが吐出される。すなわち、レバー左右位置が正面位置にあるとき、水吐出状態が達成される。この構成は、湯の節約に寄与し、省エネルギー性を高める。供給孔80,82は左右対称に配置されていてもよい。
可動弁体60は、上側部材86と、下側部材88とを有する。上側部材86は、下側部材88に固定されている。この固定は、凸部90と凹部92との係合によって達成されている。本実施形態では、上側部材86と下側部材88とが互いに別部材である。別部材とすることで、上側部材86と下側部材88とのそれぞれにおいて、最適な材質及び製法が選択されうる。可動弁体60は全体として一体的に成形されていてもよい。
可動弁体60(下側部材88)の下面には、流路形成凹部94が形成されている(図2参照)。流路形成凹部94は、下方に向かって開口している。流路形成凹部94の上方は閉じている。
固定弁体62の上面には、第1摺動面PL1が設けられている(図4参照)。一方、下側部材88(可動弁体60)の下面には、第2摺動面PL2が設けられている。第1摺動面PL1と第2摺動面PL2との面接触により、水密状態が確保されている。
上側部材86の上面には、レバー46の下端95と係合するレバー係合凹部98が設けられている。レバー46の下端95は、このレバー係合凹部98に挿入されている(図2参照)。レバー46(レバーハンドル14)の動きに連動して、可動弁体60が固定弁体62の上を摺動する。レバーハンドル14の左右回動に連動して、可動弁体60は回転する。レバーハンドル14の前後回動に連動して、可動弁体60は移動し、可動弁体60の流路形成凹部94も移動する。
流路形成凹部94が湯供給孔80及び/又は水供給孔82と排出孔84とに重複することで、吐水状態が達成される。吐水状態は、混合吐出状態、湯吐出状態及び水吐出状態を含む。流路形成凹部94が湯供給孔80及び水供給孔82に重複しているとき、混合吐出状態が達成される。混合吐出状態では、湯供給孔80からの湯と水供給孔82からの水とが混合される。流路形成凹部94が、湯供給孔80のみに重複し、水供給孔82に重複していないとき、湯吐出状態が達成される。湯吐出状態では、湯供給孔80からの湯のみが吐出され、水供給孔82からの水は吐出されない。流路形成凹部94が、水供給孔82のみに重複し、湯供給孔80に重複していないとき、水吐出状態が達成される。水吐出状態では、水供給孔82からの水のみが吐出され、湯供給孔80からの湯は吐出されない。流路形成凹部94が湯供給孔80及び水供給孔82に重複していないとき、止水状態が達成される。
レバー46は、軸孔100を有する。この軸孔100に、レバー回転軸48が挿通されている。図2では、レバー回転軸48が省略されている。
回動体44は、基部102と上部104とを有する。上部104は、レバー挿入孔106と、軸孔108とを有する。基部102は、可動弁体60(の上側部材86)に、スライド可能に取り付けられている。
レバー46がレバー挿入孔106に挿入されており、このレバー46の軸孔100と、回動体44の軸孔108とが同軸で配置されている。これら軸孔100及び軸孔108に、レバー回転軸48が挿入されている。レバー回転軸48の挿入により、レバー46は、前後回動可能な状態で、回動体44に固定される。レバー挿入孔106の寸法は、レバー46の前後回動を許容しうるように設定されている。なお本願では、レバー回転軸48を回転軸とするレバー46の回動及びそれに伴うレバーハンドル14の回動が、「前後回動」とも称される。
移動体40は、回動体44に、上下移動が可能な状態で保持されている。移動体40は、回動体44に対して上下移動のみが可能であり、回動体44に対して相対回転することはできない。移動体40は、レバーハンドル14の左右回動に連動して回動体44と共に回転し、且つこの回転に連動して上下移動しうるように構成されている。この移動体40の上下移動は、移動体40と上ケース42との間で形成されたカム機構によって達成されている。移動体40の内面には、内面凸部(図示されず)が形成されている。このカム機構は、移動体40に形成された内面凸部と、上ケース42に設けられた溝112(図2及び図3参照)との係合によって構成されている。図3が示すように、この溝112は曲がって延在している。この溝112に沿って前記内面凹部が動くことで、移動体40は回転しながら上下移動する。移動体40が上側に移動すると、前後クリックに係る係合(当接体56と前後クリック用係合部との係合)が解除される。移動体40が下側に移動すると、この前後クリックに係る係合が達成される。
移動体40は、回動体44に対する相対回転が不能な状態で、回動体44に保持されている。移動体40は、回動体44とともに回転する。レバーハンドル14、レバー46、移動体40及び回動体44は、一緒に回転する。
図3が示すように、上ケース42は、小径円筒部120と、大径円筒部122と、連結部124とを有する。連結部124は、上ケース42の半径方向に延在している。小径円筒部120は、上方開口126を有する。大径円筒部122は、下方開口128を有する。前述の溝112は、小径円筒部120の外周面に設けられている。
大径円筒部122は、係合凹部130を有する。この係合凹部130が、下ケース68の係合凸部77と係合している。この係合により、上ケース42は、下ケース68に固定されている。
回動体44の上部104の円周面部の外径は、小径円筒部120の内径に略等しい。回動体44の上部104は、小径円筒部120に、回転可能な状態で保持されている。この回転では、上部104の外周面と、小径円筒部120の内周面とが摺動する。大径円筒部122は、回動体44の基部102、可動弁体60及び固定弁体62を収容している。
図4は固定弁体62を上側から見た斜視図であり、図5は固定弁体62の平面図であり、図6は、固定弁体62の底面図である。
前述の通り、固定弁体62は、湯供給孔80、水供給孔82及び排出孔84を有する。また、固定弁体62の上面は、第1摺動面PL1を有する。
湯供給孔80は、上開口線80aを有する。この上開口線80aは、第1摺動面PL1における湯供給孔80の輪郭線である。上開口線80aは、湯供給孔80の上開口の輪郭線である。
水供給孔82は、上開口線82aを有する。この上開口線82aは、第1摺動面PL1における水供給孔82の輪郭線である。上開口線82aは、水供給孔82の上開口の輪郭線である。
排出孔84は、上開口線84aを有する。この上開口線84aは、第1摺動面PL1における排出孔84の輪郭線である。上開口線84aは、排出孔84の上開口の輪郭線である。
固定弁体62は、回収溝140を有している。回収溝140は、第1摺動面PL1に設けられている。回収溝140は、固定弁体62の周方向の全体(360°)に亘って設けられている。回収溝140は、湯供給孔80の径方向外側に位置する。回収溝140は、水供給孔82の径方向外側に位置する。回収溝140は、排出孔84の径方向外側に位置する。回収溝140は、排出孔84のみに繋がっている。回収溝140は、湯供給孔80及び水供給孔82からの漏れ水を効果的に補足しうる。回収溝140は、補足した水を排出孔84に流す。
なお、固定弁体62において、周方向及び径方向は、次のように定義される。先ず、固定弁体62の最小包含円CL1が定義される。最小包含円CL1は、その内側に固定弁体62の全体を含む円のうち、半径が最小の円である。最小包含円CL1は、図5のような平面図において決定される。この平面図は、第1摺動面PL1と平行な平面への、固定弁体62の投影図である。本実施形態では、最小包含円CL1は、固定弁体62の外周面110の外径に等しい。本願における径方向とは、この最小包含円CL1の半径方向である。本願における周方向とは、この最小包含円CL1の周方向である。
図7は下ケース68の斜視図であり、図8は下ケース68の平面図であり、図9は下ケース68の底面図であり、図10は図8のA-A線に沿った断面図である。
前述の通り、下ケース68の湯導入孔70は、固定弁体62の湯供給孔80に接続されている。下ケース68の水導入孔72は、固定弁体62の水供給孔82に接続されている。下ケース68の吐出孔74は、固定弁体62の排出孔84に接続されている。これらの接続は、インナーシール部材64により達成されている(図3参照)。
下ケース68の上面は、インナーシール部材64に対応した形状を有する。図7及び図8が示すように、下ケース68の上面は、シール下当接部150を有する。シール下当接部150は、湯導入孔周囲部150aと、水導入孔周囲部150bと、吐出孔周囲部150cとを有する。湯導入孔周囲部150aは、湯導入孔70の周囲に形成されている。水導入孔周囲部150bは、水導入孔72の周囲に形成されている。吐出孔周囲部150cは、吐出孔74の周囲に形成されている。
湯導入孔周囲部150aは、底面152と側面154とを有する。底面152は、湯孔シール部64aの下端面に接触している。側面154は、湯孔シール部64aの側面に接触している。水導入孔周囲部150bは、底面156と側面158とを有する。底面156は、水孔シール部64bの下端面に接触している。側面158は、水孔シール部64bの側面に接触している。吐出孔周囲部150cは、底面160と側面162とを有する。底面160は、排出孔シール部64cの下端面に接触している。側面162は、排出孔シール部64cの側面に接触している。
固定弁体62の下面も、インナーシール部材64に対応した形状を有する。図6が示すように、固定弁体62の下面は、シール上当接部170を有する。シール上当接部170は、湯供給孔周囲部170aと、水供給孔周囲部170bと、排出孔周囲部170cとを有する。湯供給孔周囲部170aは、湯供給孔80の周囲に形成されている。水供給孔周囲部170bは、水供給孔82の周囲に形成されている。排出孔周囲部170cは、排出孔84の周囲に形成されている。
湯供給孔周囲部170aは、底面172と側面174とを有する。底面172は、湯孔シール部64aの上端面に接触している。側面174は、湯孔シール部64aの側面に接触している。水導入孔周囲部170bは、底面176と側面178とを有する。底面176は、水孔シール部64bの上端面に接触している。側面178は、水孔シール部64bの側面に接触している。吐出孔周囲部170cは、底面180と側面182とを有する。底面180は、排出孔シール部64cの上端面に接触している。側面182は、排出孔シール部64cの側面に接触している。
固定弁シール部材66は、固定弁体62の外周面に配置されている。固定弁シール部材66は、湯孔シール部64a、水孔シール部64b及び排出孔シール部64cの外側において隙間部g1をシールする環状のシール部材である。図4が示すように、固定弁体62には、固定弁シール部材66が装着される段差部184が設けられている。この段差部184は、固定弁体62の外周面の下部に設けられている。段差部184は、外周面110よりも半径が小さい円周面を構成している。この段差部184に固定弁シール部材66が装着されている(図2参照)。固定弁シール部材66は、固定弁体62と下ケース68との間をシールしている。固定弁シール部材66は、固定弁体62の段差部184と、下ケース68の外周壁部75の内周面75aとの間をシールしている。
図10が示すように、下ケース68は、排水路d1を有する。排水路d1は、貫通孔である。排水路d1は、入口186と出口188とを有する。排水路d1は、下ケース68を上下方向に貫通している。排水路d1の中心線は、上下方向に沿っている。
図3が示すように、下シール部材67は、外周シール部材190と、湯導入孔シール部材192と、水導入孔シール部材194とを有する。図2が示すように、外周シール部材190は、側面壁部12aと下ケース68との間をシールしている。湯導入孔シール部材192は、湯導入孔70の入口開口の周囲に設けられたシール配置部196に配置される(図9参照)。図示されないが、湯導入孔シール部材192は、水栓本体12の底面壁部12bに形成された湯孔と湯導入孔70との接続部をシールしている。水導入孔シール部材194は、水導入孔72の入口開口の周囲に設けられたシール配置部198に配置される(図9参照)。図示されないが、水導入孔シール部材194は、水栓本体12の底面壁部12bに形成された水孔と水導入孔72との接続部をシールしている。
図2が示すように、固定弁体62と下ケース68との間に、隙間部g1が形成されている。隙間部g1は、固定弁体62と下ケース68との間に設けられている。隙間部g1は、固定弁体62の下面と下ケース68の上面との間に設けられている。図6が示すように、固定弁体62の下面は、平面PL4を有している。図7及び図8が示すように、下ケース68の上面は、平面PL5を有している。平面PL5は、平面PL4に対向している。隙間部g1は、平面PL4と平面PL5との間の空間を含む。排水路d1の入口186は、平面PL5に設けられている(図7参照)。入口186は、隙間部g1に面している。入口186において、排水路d1は、隙間部g1に繋がっている。
隙間部g1は、インナーシール部材64の存在に起因して形成されている。インナーシール部材64は、固定弁体62と下ケース68とに挟まれて圧縮されている。この圧縮は、弾性変形である。弾性変形に伴う反力により、隙間部g1が維持されている。
インナーシール部材64は、隙間部g1に面している。図2に示されるように、排出孔シール部64cは隙間部g1に面している。排出孔シール部64cの外面が、隙間部g1に面している。図2では示されていないが、湯孔シール部64aも隙間部g1に面しており、水孔シール部64bも隙間部g1に面している。湯孔シール部64aからの漏れ水は、隙間部g1に流れ込む。水孔シール部64bからの漏れ水は、隙間部g1に流れ込む。
排水路d1は、隙間部g1に繋がっている。排水路d1の入口186は、隙間部g1に面している。漏れ水は、隙間部g1から排水路d1へと流れうる。排水路d1の出口188は、吐出孔74に連通している(図9参照)。排水路d1は、吐出孔74から下流に延びる水路に繋がっている。出口188を出た漏れ水は、吐出孔74を出た水と同じく、吐出部16を経て吐水口32から排出される。
排水路d1には、リリーフ弁v1が設けられている(図2及び図3参照)。
図3がよく示すように、リリーフ弁v1は、弁軸200、シール部材202、弾性体204及び止め輪206を有する。弁軸200は、ピンである。シール部材202は、Oリングである。弾性体204は、コイルバネである。弁軸200には、止め輪206が装着されている。止め輪206は、C型止め輪である。
図2の拡大部がよく示すように、弁軸200は、頭部200aと、中間軸部200bと、周溝200cとを有する。頭部200aの上側に中間軸部200bが位置し、中間軸部200bの上側に周溝200cが位置する。頭部200aの外径は、中間軸部200bの外径よりも大きい。周溝200cに、止め輪206が装着されている。
図10が示すように、排水路d1は、小径部d11、中径部d12及び及び大径部d13を有する。小径部d11が、排水路d1の最も下側の部分を構成している。小径部d11の上側に中径部d12が形成されている。中径部d12の上側に大径部d13が形成されている。大径部d13は、排水路d1の最も上側の部分を構成している。小径部d11、中径部d12及び大径部d13は同軸である。小径部d11の内径は、中径部d12の内径よりも小さい。中径部d12の内径は、大径部d13の内径よりも小さい。小径部d11の内径は、中間軸部200bの外径よりも(若干)大きい。中径部d12の内径は、自然状態におけるコイルバネ204の外径よりも大きい。小径部d11と中径部d12との境界には、段差面208が形成されている。
図2の拡大部が示すように、弁軸200は、頭部200aを下側として、下側から排水路d1に挿入されている。排水路d1に挿入する前に、弁軸200に、シール部材202が装着される。シール部材202に中間軸部200bを挿通することで、弁軸200にシール部材202が装着される。この弁軸200を下側から排水路d1に挿入する。この挿入状態において、弾性体204が中間軸部200bに挿通され、更に止め輪206が周溝200cに装着される。このようにして、リリーフ弁v1が排水路d1に取り付けられる。なお、見やすさの観点から、図2の拡大部では、入口186の近傍の線が削除されている。
リリーフ弁v1では、シール部材202が、出口188の周囲の当接面210と頭部200aとの間に位置する。弾性体204は、段差面208と止め輪206との間に位置する。弾性体204の下端は段差面208に当接している。弾性体204の上端は止め輪206に当接している。弾性体204は、圧縮コイルバネである。弾性体204は、常時、止め輪206を上側に付勢している。すなわち、弾性体204は、常時、弁軸200を上側に付勢している。この付勢により、シール部材202は、当接面210と頭部200aとに押し付けられている。シール部材202は当接面210と頭部200aとに密着している。これらの密着により、リリーフ弁v1は閉じられている。
前述の通り、インナーシール部材64からの水漏れが生じうる。水漏れは、主として、内部水圧が高い湯孔シール部64a及び水孔シール部64bから生じる。固定弁シール部材66により、隙間部g1は密閉されている。隙間部g1に流出する漏れ水が増加すると、隙間部g1における圧力(水圧)は上昇する。隙間部g1における圧力(内圧)は、リリーフ弁v1の受圧面に作用する。本実施形態では、この受圧面は、弁軸200の先端部の表面である。この受圧面が受ける力(下方への力)が、弾性体204の付勢力(上方への力)を超えると、弁軸200が下方に移動し、シール部材202の上記密着が解除される。すなわち、リリーフ弁v1の受圧面が受ける力が、弾性体204の付勢力を超えると、リリーフ弁v1が開く。リリーフ弁v1が開くと、漏れ水が排水路d1を通過し、吐水口32から排出される。この排出により、隙間部g1内の圧力が下がると、再びリリーフ弁v1は閉じる。
図11(a)は固定弁シール部材66の斜視図であり、図11(b)は固定弁シール部材66の側面図であり、図11(c)は図11(b)のc-c線に沿った断面図である。
固定弁シール部材66は、環状である。本実施形態では、固定弁シール部材66は、リップパッキンである。隙間部g1からの水圧により、固定弁シール部材66は変形する。この変形により、シール性が高まる。
図12は、第2実施形態に係るバルブ組立体238及びその近傍を示す縦断面図である。図13は、バルブ組立体238の分解斜視図である。
第2実施形態に係るバルブ組立体238は、第1実施形態のバルブ組立体38と同じく、水栓本体12に収容されている。排水路及びリリーフ弁の構成を除き、バルブ組立体238の構造は、バルブ組立体38と同じである。このため、バルブ組立体238の説明では、バルブ組立体38と同じ符号を付し、説明を適宜省略する。
バルブ組立体238は、湯水混合栓10の本体12に内蔵されている。バルブ組立体238は、移動体40、上ケース42、回動体44、レバー46、レバー回転軸48、左右クリック用弾性部材50、左右クリック用当接体52、前後クリック用当接体56、前後クリック用弾性部材58、可動弁体60、固定弁体62、インナーシール部材64、固定弁シール部材66、下シール部材67、下ケース268及びリリーフ弁v2を有する。レバーハンドル14は、レバー46に固定されている。
下ケース268は、湯導入孔70、水導入孔72及び吐出孔74を有する。図示されないが、底面壁部12bには、これら湯導入孔70、水導入孔72及び吐出孔74のそれぞれに対応した開口が設けられており、これらの開口のそれぞれに、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22が接続されている。
インナーシール部材64は、湯孔シール部64aと、水孔シール部64bと、排出孔シール部64cとを有する。本実施形態では、湯孔シール部64a、水孔シール部64b及び排出孔シール部64cがそれぞれ独立している。湯孔シール部64a、水孔シール部64b及び排出孔シール部64cのそれぞれは、円筒状の部材である。インナーシール部材64は、固定弁体62を下方から支持しつつ、固定弁体62を可動弁体60に押し付けている。インナーシール部材64は圧縮されて弾性変形しており、この弾性変形に伴う反力が、固定弁体62を可動弁体60に押し付けている。
固定弁体62は、下ケース268に収容されている。下ケース68は、固定弁体62の周囲に位置する外周壁部75と、固定弁体62を固定する弁体係合部76と、上ケース42を固定するための係合凸部77とを有する。外周壁部75の内周面75aが、固定弁体62の外周面110に、摺動可能に接している。固定弁体62の下面には、弁体係合部76と係合する係合凸部78が設けられている。
固定弁体62は、湯供給孔80、水供給孔82及び排出孔84を有する。湯供給孔80は、固定弁体62を貫通している。湯供給孔80は、下ケース268の湯導入孔70に接続されている。水供給孔82は、固定弁体62を貫通している。水供給孔82は、下ケース268の水導入孔72に接続されている。排出孔84は、固定弁体62を貫通している。排出孔84は、下ケース268の吐出孔74に接続されている。
可動弁体60は、上側部材86と、下側部材88とを有する。上側部材86は、下側部材88に固定されている。
可動弁体60の下面には、流路形成凹部94が形成されている。流路形成凹部94は、下方に向かって開口している。流路形成凹部94の上方は閉じている。
固定弁体62の上面には、第1摺動面PL1が設けられている。一方、下側部材88(可動弁体60)の下面には、第2摺動面PL2が設けられている。第1摺動面PL1と第2摺動面PL2との面接触により、水密状態が確保されている。
上側部材86の上面には、レバー46の下端95と係合するレバー係合凹部98が設けられている。レバー46の下端95は、このレバー係合凹部98に挿入されている。レバー46(レバーハンドル14)の動きに連動して、可動弁体60が固定弁体62の上を摺動する。レバーハンドル14の左右回動に連動して、可動弁体60は回転する。レバーハンドル14の前後回動に連動して、可動弁体60は移動し、可動弁体60の流路形成凹部94も移動する。
レバー46は、軸孔100を有する。この軸孔100に、レバー回転軸48が挿通されている。図12では、レバー回転軸48が省略されている。
回動体44は、基部102と上部104とを有する。上部104は、レバー挿入孔106と、軸孔108とを有する。基部102は、可動弁体60の上側部材86に、スライド可能に取り付けられている。
図14は固定弁体62の平面図であり、図15は、固定弁体62の底面図である。
前述の通り、固定弁体62は、湯供給孔80、水供給孔82及び排出孔84を有する。また、固定弁体62の上面は、第1摺動面PL1を有する。
湯供給孔80は、上開口線80aを有する。水供給孔82は、上開口線82aを有する。排出孔84は、上開口線84aを有する。
図16は下ケース268の斜視図であり、図17は下ケース268の平面図であり、図18は下ケース268の側面図であり、図19は図18のA-A線に沿った断面図である。
下ケース268の湯導入孔70は、固定弁体62の湯供給孔80に接続されている。下ケース268の水導入孔72は、固定弁体62の水供給孔82に接続されている。下ケース268の吐出孔74は、固定弁体62の排出孔84に接続されている。これらの接続は、インナーシール部材64により達成されている(図13参照)。
下ケース268の上面は、インナーシール部材64に対応した形状を有する。図16及び図17が示すように、下ケース268の上面は、シール下当接部150を有する。シール下当接部150は、湯導入孔周囲部150aと、水導入孔周囲部150bと、吐出孔周囲部150cとを有する。湯導入孔周囲部150aは、湯導入孔70の周囲に形成されている。水導入孔周囲部150bは、水導入孔72の周囲に形成されている。吐出孔周囲部150cは、吐出孔74の周囲に形成されている。
湯導入孔周囲部150aは、底面152と側面154とを有する。底面152は、湯孔シール部64aの下端面に接触している。側面154は、湯孔シール部64aの側面に接触している。水導入孔周囲部150bは、底面156と側面158とを有する。底面156は、水孔シール部64bの下端面に接触している。側面158は、水孔シール部64bの側面に接触している。吐出孔周囲部150cは、底面160と側面162とを有する。底面160は、排出孔シール部64cの下端面に接触している。側面162は、排出孔シール部64cの側面に接触している。
固定弁体62の下面も、インナーシール部材64に対応した形状を有する。図15が示すように、固定弁体62の下面は、シール上当接部170を有する。シール上当接部170は、湯供給孔周囲部170aと、水供給孔周囲部170bと、排出孔周囲部170cとを有する。湯供給孔周囲部170aは、湯供給孔80の周囲に形成されている。水供給孔周囲部170bは、水供給孔82の周囲に形成されている。排出孔周囲部170cは、排出孔84の周囲に形成されている。
湯供給孔周囲部170aは、底面172と側面174とを有する。底面172は、湯孔シール部64aの上端面に接触している。側面174は、湯孔シール部64aの側面に接触している。水導入孔周囲部170bは、底面176と側面178とを有する。底面176は、水孔シール部64bの上端面に接触している。側面178は、水孔シール部64bの側面に接触している。吐出孔周囲部170cは、底面180と側面182とを有する。底面180は、排出孔シール部64cの上端面に接触している。側面182は、排出孔シール部64cの側面に接触している。
固定弁シール部材66は、固定弁体62の外周面に配置されている。図12が示すように、固定弁体62には、固定弁シール部材66が装着される段差部184が設けられている。この段差部184は、固定弁体62の外周面の下部に設けられている。段差部184は、外周面110よりも半径が小さい円周面を構成している。この段差部184に固定弁シール部材66が装着されている。固定弁シール部材66は、固定弁体62と下ケース268との間をシールしている。固定弁シール部材66は、固定弁体62の段差部184と、下ケース268の外周壁部75の内周面75aとの間をシールしている。
なお、下ケース268は、外周壁部75を有していなくても良い。この場合、例えば、固定弁シール部材66は、固定弁体62の下面に配置されうる。ただしこの場合、固定弁シール部材66とインナーシール部材64とでシール圧が分散し、シール部材64,66におけるシール性が減退しうる。また、外周壁部75を設けることで、固定弁シール部材66におけるシール圧を抑制することができ、押し上げ効果(後述)が維持される。これらの観点から、下ケース268が外周壁部75を有するのが好ましく、固定弁シール部材66が固定弁体62の側面と外周壁部75との間をシールしているのがより好ましい。
図19が示すように、下ケース268は、排水路d2を有する。排水路d2は、下ケース268を貫通する貫通孔である。排水路d2は、第1部分d21と、第2部分d22とを有する。第1部分d21は、上下方向に延びている。第2部分d22は、第1部分d21とは異なる向きに延びている。第2部分d22は、水平方向に延びている。
排水路d2は、入口286と出口288とを有する。入口286は、第1部分d21の上流側の端部に形成されている。出口288は、第2部分d22の下流側の端部に形成されている。入口286は、平面PL5に設けられている。入口286は、隙間部g1に面している(図12参照)。なお、見やすさの観点から、図12では、入口286の近傍の線が削除されている。
図13が示すように、下シール部材67は、外周シール部材190と、湯導入孔シール部材192と、水導入孔シール部材194とを有する。図12が示すように、外周シール部材190は、側面壁部12aと下ケース268との間をシールしている。湯導入孔シール部材192は、湯導入孔70の入口開口の周囲に配置される(図9参照)。水導入孔シール部材194は、水導入孔72の入口開口の周囲に配置される。
図12が示すように、固定弁体62と下ケース268との間に、隙間部g1が形成されている。隙間部g1は、固定弁体62の下面と下ケース268の上面との間に設けられている。図15が示すように、固定弁体62の下面は、平面PL4を有している。図16及び図17が示すように、下ケース268の上面は、平面PL5を有している。平面PL5は、平面PL4に対向している。隙間部g1は、平面PL4と平面PL5との間の空間を含む。排水路d2の入口286は、平面PL5に設けられている(図16参照)。入口286は、隙間部g1に面している。入口286において、排水路d2は、隙間部g1に繋がっている。
インナーシール部材64は、隙間部g1の形成に寄与している。インナーシール部材64は、固定弁体62と下ケース268とに挟まれて圧縮されている。この圧縮は、弾性変形である。この弾性変形に伴う反力は、隙間部g1を拡げる方向に作用している。
インナーシール部材64は、隙間部g1に面している。図12に示されるように、排出孔シール部64cは隙間部g1に面している。排出孔シール部64cの外面が、隙間部g1に面している。図12では示されていないが、湯孔シール部64aも隙間部g1に面しており、水孔シール部64bも隙間部g1に面している。湯孔シール部64aからの漏れ水は、隙間部g1に流れ込む。水孔シール部64bからの漏れ水は、隙間部g1に流れ込む。
排水路d2は、隙間部g1に繋がっている。漏れ水は、隙間部g1から排水路d2へと流れうる。排水路d2の出口288は、吐出孔74に連通している。排水路d2は、吐出孔74から下流に延びる水路に繋がっている。出口288を出た漏れ水は、吐出孔74を出た水と同じく、吐出部16を経て吐水口32から排出される。
排水路d2には、リリーフ弁v2が設けられている(図13参照)。
図13がよく示すように、リリーフ弁v2は、弁軸300、シール部材302及び弾性体304を有する。弁軸300は、ピンである。シール部材302は、Oリングである。弾性体304は、板バネである。
弁軸300は、頭部300aと、軸部300bとを有する。頭部300aの幅は、軸部300bの外径よりも大きい。
弁軸300は、第2部分d22に挿入されている。図19が示すように、第2部分d22のうち、出口288側の部分は、内径が大きくなっている。この部分に、弁軸300の軸部300bが挿入されている(図12参照)。
図12が示すように、弁軸300は、横向きに挿入されている。弁軸300は、その長手方向が水平な状態で配置されている。軸部300bの延在方向は、水平である。軸部300bの延在方向は、第2部分d22の延在方向に沿っている。頭部300aは、排水路d2に挿入されず、排水路d2の外側に位置する。
リリーフ弁v2では、シール部材302が、出口288の周囲の当接面310と頭部300aとの間に位置する。弾性体304は、頭部300aを出口288側に常時押圧している。弾性体304は、常時、弁軸300を挿入側に付勢している。この付勢により、シール部材302は、当接面310と頭部300aとに押し付けられている。シール部材302は当接面310及び頭部300aに密着している。この密着により、リリーフ弁v2は閉じられている。
前述の通り、インナーシール部材64からの水漏れが生じうる。水漏れは、主として、内部水圧が高い湯孔シール部64a及び水孔シール部64bから生じる。固定弁シール部材66により、隙間部g1は密閉されている。隙間部g1に流出する漏れ水が増加すると、隙間部g1における圧力(水圧)は上昇する。隙間部g1における圧力は、リリーフ弁v2の受圧面に作用する。本実施形態では、この受圧面は、弁軸300の先端部の表面である。この受圧面が受ける力(引き抜き方向の力)が、弾性体304の付勢力(挿入方向の力)を超えると、弁軸300が引き抜き方向(図12における左側)に移動し、シール部材302における上記密着が解除される。すなわち、リリーフ弁v2の受圧面が受ける力が、弾性体304の付勢力を超えると、リリーフ弁v2が開く。リリーフ弁v2が開くと、漏れ水が排水路d2を通過し、吐水口32から排出される。この排出により、隙間部g1内の圧力が下がると、再びリリーフ弁v2は閉じる。
図20(a)は固定弁シール部材66の斜視図であり、図20(b)は固定弁シール部材66の側面図であり、図20(c)は図20(b)のc-c線に沿った断面図である。
固定弁シール部材66は、環状である。本実施形態では、固定弁シール部材66は、リップパッキンである。隙間部g1からの水圧により、固定弁シール部材66は変形する。この変形により、シール性が高まる。
以上に説明されたように、第1実施形態及び第2実施形態では、固定弁シール部材66が下ケース68,268と固定弁体62との間をシールしている。このシールにより、隙間部g1は、排水路の入口以外は、密閉されている。更に、排水路にリリーフ弁が設けられ、このリリーフ弁が閉じることで、隙間部g1は密閉された状態となる。
インナーシール部材64は隙間部g1に面しており、インナーシール部材64からの漏れ水は隙間部g1に流れ込む。隙間部g1の内圧がリリーフ弁を開放しうる値まで上昇すると、リリーフ弁が開く。漏れ水は、排水路を通って吐水口32から排出される。漏れ水は、排水路に流入し、吐水口32から排出される。漏れ水が、レバーハンドルの下側から水栓の外部に溢れ出し、水栓根元部に溜まる事態は生じない。よって漏れ水が水栓根元部を腐食させることがない。
隙間部g1の内圧が所定値以下になると、リリーフ弁が閉じる。リリーフ弁は、所定の限界値まで隙間部g1の内圧を上昇させる。この内圧の上昇により、後述の内圧押し上げ効果及び圧力差低減効果が奏される。リリーフ弁は逆止弁としても機能し、吐出孔からの逆流を防止する。
インナーシール部材64は、固定弁体62と下ケース68,268とで挟まれて圧縮されている。隙間部g1を設けることで、インナーシール部材64と固定弁体62との間の接触圧、及び、インナーシール部材64と下ケース68,268との間の接触圧が増大されうる。よって、インナーシール部材64からの水漏れが抑制される。
インナーシール部材64は、固定弁体62と下ケース68,268とで挟まれて圧縮されている。この圧縮の反力は、固定弁体62を上側に押し上げている。この押し上げより、固定弁体62と可動弁体60との間の接触圧が高まる。すなわち、第1摺動面PL1と第2摺動面PL2との間の接触圧が高まる。よって、摺動合わせ面からの水漏れが抑制される(押し上げ効果)。
隙間部g1の内圧は、固定弁体62を上方に押し上げる。この押し上げより、固定弁体62と可動弁体60との間の接触圧が高まる。よって、摺動合わせ面からの水漏れが抑制される(内圧押し上げ効果)。
隙間部g1の内圧が過大となると、固定弁体62を押し上げる力が過大となり、固定弁体62と可動弁体60との間の摺動抵抗が増大する。この場合、レバーハンドル14の操作抵抗が増大し、リンギングも起こりやすくなる。リリーフ弁を設けて隙間部g1の内圧を制御することで、固定弁体62を押し上げる力が過大となることが防止される。
隙間部g1は、インナーシール部材64の外側の空間である。隙間部g1の内圧は、インナーシール部材64の外側での圧力である。隙間部g1の内圧が高くなると、インナーシール部材64の内圧(水圧)と外圧との間の差が小さくなる。このため、インナーシール部材64からの水漏れが抑制される(圧力差低減効果)。
隙間部g1の内圧は、リリーフ弁によって制御されている。すなわち、隙間部g1の内圧が所定値を超えると、リリーフ弁v1,v2が開く。隙間部g1の内圧の上限値は限定されている。このため、固定弁シール部材66のシール性を低く設定することができる。結果として、固定弁シール部材66の選択の自由度が高まり、固定弁シール部材66としてリップパッキンを用いることも可能となる。
固定弁シール部材66に高いシール性が要求される場合、固定弁シール部材66には高いシール圧が付与される。例えば、固定弁シール部材66がOリングとされ、このOリングの圧縮変形量が大きくされる。しかしこの高いシール圧は、固定弁体62への押し上げ力を減少させ、上記押し上げ効果を減退させる。しかし、固定弁シール部材66におけるシール圧を低く設定することができるので、上記押し上げ効果が維持される。
第1実施形態のバルブ組立体38では、排水路d1が一方向に延在しているので、排水路d1の成形が容易であるとの利点がある(図10参照)。
これに対して、第2実施形態のバルブ組立体238では、第1部分d21と第2部分d22とが設けられているので、入口286及び出口288の位置の自由度が高い。特に、入口286の位置の自由度が高いことは効果的である。下ケース268の上面において、入口286を設けることができる領域は限定されている(図16参照)。この限られた領域に入口286を設けることができる。第2実施形態では、入口286が下ケース268の中央に位置する。この場合、入口286は、湯孔シール部64a、水孔シール部64b及び排出孔シール部64cのいずれからも近い。このため、隙間部g1における漏れ水の滞留が抑制され、漏れ水の排出が円滑になされうる。
第2実施形態のバルブ組立体238では、第1部分d21と第2部分d22とが設けられており、第2部分d22にリリーフ弁v2が設置されている。この構成では、第1部分d21の延在方向に拘束されずに、第2部分d22の延在方向が決定されうる。また、第1部分d21とは別に第2部分d22を設けることで、入口286の位置に拘束されずに、出口288の位置を設定できる。第2部分d22の設計自由度が高いため、第2部分d22に配置されるリリーフ弁v2の設計自由度も高まる。例えば、リリーフ弁v2の寸法の自由度が高まり、受圧面積の調整も容易となる。
図21は、第3実施形態に係るバルブ組立体338の断面図である。このバルブ組立体338では、リリーフ弁v2が設けられていない。リリーフ弁v2が設けられていないことを除き、バルブ組立体338はバルブ組立体238と同じである。
バルブ組立体338では、排水路d2が開放されている。隙間部g1は、排水路d2の入口286以外では、密封されている。インナーシール部材64からの漏れ水は、隙間部g1から排水路d2に流れ、吐水口32から排出される。よって、上記漏れ水排出効果が奏される。
このバルブ組立体338では、リリーフ弁を設けないので、排水路の設計自由度が高い。入口286及び出口288の位置、排水路の形状、排水路の経路などの設計自由度が高い。
第1実施形態及び第2実施形態では、リリーフ弁が設けられている。リリーフ弁の構造は、上述したリリーフ弁v1及びリリーフ弁v2の構造に限定されない。リリーフ弁の他の構造として、排水路の出口に板バネを直接当接させる構造が例示される。この構造では、板バネが出口を塞いでおり、隙間部g1の内圧が板バネの付勢力を超えると、出口が開放される。この板バネにOリング等のシール部材が装着され、このシール部材を排水路の出口に当接させる構造であってもよい。
上述の通り、固定弁シール部材66は、環状である。固定弁シール部材66の種類は限定されない。固定弁シール部材66として、スクイーズパッキン及びリップパッキンが例示される。スクイーズパッキンとして、Oリング、角リング、Dリング、Xリング、Tリング等が挙げられる。リップパッキンとして、Uパッキン、Vパッキン、Yパッキン、Lパッキン、Jパッキン等が挙げられる。なお、固定弁シール部材66は、リップパッキンとして例示された上記種類のいずれにも該当しないが、その技術思想はUパッキンに近い。
図11及び図20が示すように、固定弁シール部材66の外周面は、外周斜面部66aを有する。固定弁シール部材66の内周面は、内周斜面部66bを有する。外周斜面部66aは、固定弁シール部材66の軸方向における一方側にいくにつれて拡径している。内周斜面部66bは、固定弁シール部材66の軸方向における一方側にいくにつれて拡径している。図2及び図12が示すように、固定弁シール部材66は、前記一方側が下側となるように配置されている。固定弁シール部材66は、内周斜面部66bが下向きとなるように配置されている。固定弁シール部材66は、内周斜面部66bが隙間部g1に面するように配置されている。
隙間部g1の内圧が高まると、内周斜面部66bが受圧する。この受圧により、固定弁シール部材66が変形し、外周斜面部66aが径方向外側へと膨らむ。この変形により、固定弁シール部材66におけるシール面積が増大し、シール圧も増大する。結果として、固定弁シール部材66によるシール性が高まる。
このように、受圧により変形してシール性を高めうる環状のシール部材が、リップパッキンと称されている。固定弁シール部材66として、リップパッキンが好ましい。このリップパッキンは、隙間部g1の内圧により変形してシール性が高まるように配置されるのが好ましい。
リップパッキンは、シール圧が小さい。このため、リップパッキンは、シール圧が高いパッキンに比べて、固定弁体62の押し上げを阻害しない。固定弁シール部材66がリップパッキンとされることで、上述の押し上げ効果が維持されうる。
インナーシール部材64の材質として、樹脂及びゴム(弾性ゴム)が例示される。シール性の観点から、ゴムが好ましい。上記実施形態では、ゴムが用いられた。
下ケース68,268の材質として、樹脂(繊維強化樹脂を含む)及び金属が例示される。インナーシール部材64におけるシール性の観点から、剛性及び強度に優れた材質が好ましい。この観点から、繊維強化樹脂が好ましく、ガラス繊維強化樹脂がより好ましい。上記実施形態では、ガラス繊維強化PPS樹脂が用いられた。
上述した実施形態に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
湯供給孔、水供給孔及び排出孔を有する固定弁体と、
流路形成凹部を有しており、前記固定弁体上を摺動する可動弁体と、
前記固定弁体の下側に配置され、湯導入孔、水導入孔及び吐出孔を有する下ケースと、
前記固定弁体と前記下ケースとの間において、前記湯供給孔と前記湯導入孔との間、前記水供給孔と前記水導入孔との間、及び、前記排出孔と前記吐出孔との間をシールするインナーシール部材と、
前記固定弁体と前記下ケースとの間に形成された隙間部と、
前記固定弁体と前記下ケースとの間をシールする固定弁シール部材と、
を備えており、
前記下ケースが、前記隙間部と前記吐出孔との間を連通する排水路を有している湯水混合栓。
[付記2]
前記隙間部の圧力が所定値以下であると前記排水路を閉塞し、前記隙間部の圧力が所定値を超えると前記排水路を解放するリリーフ弁が更に設けられている付記1に記載の湯水混合栓。
[付記3]
前記排水路が、前記下ケースを上下方向に貫通しており、
前記リリーフ弁が、前記排水路の延在方向に沿って上下方向に動くように設けられている付記2に記載の湯水混合栓。
[付記4]
前記排水路が、前記隙間部に面する入口と、前記入口から延びる第1部分と、前記第1部分とは異なる向きに延びる第2部分とを有しており、
前記リリーフ弁が、前記第2部分の延在方向に沿って動くように設けられている付記2に記載の湯水混合栓。
[付記5]
前記固定弁シール部材がリップパッキンである付記1から4のいずれか1項に記載の湯水混合栓。
[付記6]
湯供給孔、水供給孔及び排出孔を有する固定弁体と、
流路形成凹部を有しており、前記固定弁体上を摺動する可動弁体と、
前記固定弁体の下側に配置され、湯導入孔、水導入孔及び吐出孔を有する下ケースと、
前記固定弁体と前記下ケースとの間において、前記湯供給孔と前記湯導入孔との間、前記水供給孔と前記水導入孔との間、及び、前記排出孔と前記吐出孔との間をシールするインナーシール部材と、
前記固定弁体と前記下ケースとの間に形成された隙間部と、
前記固定弁体と前記下ケースとの間をシールするリップパッキンと、
を備えている湯水混合栓。
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明に含まれない他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。