JP7239341B2 - 筆記具型の水性オーバーコート組成物用塗布具及びエアブラシユニット - Google Patents

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Description

本発明は、筆記具型の水性オーバーコート組成物用塗布具及びエアブラシユニットに関する。
従来、描画等の分野において、インクを飛散させて霧状になし、その霧状のインクを紙などに吹き付けることにより描画などを可能とするエアブラシが用いられている。空気噴射部材をエアブラシ本体に取り付けられることが従来行われていたが、かかるエアブラシは、インクの交換を円滑に行うことができないという問題や、インク詰まり等の問題を生じることがあった。
これに対し、このような問題を少なくとも部分的に解消しているエアブラシ、例えば筆記具を取付けて、そのペン先に空気を噴射して当てて、ペン先に滲出したインクを飛散させて霧状になし、その霧状のインクを紙などに吹き付けることにより描画などを可能とするエアブラシが種々提案されている。
特許文献1では、筆記具から絵の具やインク等の液体を供給することを特徴とするエアブラシが開示されている。
特許文献2では、加熱により消色する着色剤とビヒクルとからなるインキ組成物を軸筒内に収容し、筆記先端部に繊維又は合成樹脂ペン体を設けた筆記具と、筆記具を装着し、筆記先端部に高圧気体を噴出する吹き付け具とからなる吹き付け具セットが開示されている。
特許文献3では、モータと、回転運動を往復運動に変換するクランク等の装置を介してモータと接続する高圧空気発生装置と、高圧空気発生装置からエアーノズルへ高圧空気を送るチューブと、電池とをケースに内蔵するとともに、ペン先がエアーノズルの空気噴射口に近接するように筆記具を保持するペンホルダーをケースの外部に一体的に設けたことを特徴とする筆記具を利用したエアブラシが開示されている。
実開平6-057447号公報 登録実用新案第3173489号公報 特開平11-047644号公報
上記のとおり、引用文献1~3のように、エアブラシユニットに組み合わせて用いることができる筆記具が知られている。
一方、インクの表面に艶感を付与するため、オーバーコート剤を塗布することが行われている。オーバーコート剤は、通常筆記具等に充填されて流通しているものではないことから、オーバーコート剤は、エアブラシ本体のインクタンクに充填して用いる態様、スプレー缶に充填して用いる態様等の態様で用いられており、使用者の便宜を満足していない側面があった。
そこで、製品の流通の便宜、使用態様の多様性等も考慮すると、新規な形態のオーバーコート組成物用塗布具を提供することが望まれている。
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉筆記具型の水性オーバーコート組成物用塗布具であって、
前記塗布具は、水性オーバーコート組成物を含有しており、
前記水性オーバーコート組成物は、水、及び水溶性樹脂を含有している、
筆記具型の水性オーバーコート組成物用塗布具。
〈態様2〉前記水性オーバーコート組成物の25℃及び200msにおける動的表面張力が、50mN/m以下である、態様1に記載の塗布具。
〈態様3〉前記水性オーバーコート組成物の25℃及び200msにおける静的表面張力が、35mN/m以下である、態様1又は2に記載の塗布具。
〈態様4〉エアブラシ及び態様1~3のいずれか一項に記載の塗布具を具備しており、前記エアブラシから噴き出す空気を介して、前記水性オーバーコート組成物を噴射させる、エアブラシユニット。
本発明によれば、エアブラシと組み合わせて用いる従来の筆記具と容易に互換でき、その結果、使用の簡便さ及び商品の流通の便宜に関して優れた、新規な形態の筆記具型の水性オーバーコート組成物用塗布具を提供することができる。
図1は、本発明のエアブラシユニットの概略図である。
《筆記具型の水性オーバーコート組成物用塗布具》
本発明の筆記具型の水性オーバーコート組成物用塗布具は、
水性オーバーコート組成物を含有しており、
水性オーバーコート組成物は、水、及び水溶性樹脂を含有している。
本発明の筆記具型オーバーコート組成物用塗布具は、エアブラシと組み合わせて用いることができることから、エアブラシと組み合わせて用いる従来の筆記具と容易に互換でき、その結果、使用の簡便さ及び商品の流通の便宜に関して優れたものであると考えられる。
本発明の塗布具は、水性オーバーコート組成物を貯蔵するためのインク貯蔵部、水性オーバーコート組成物を塗布するための塗布部、及び手で保持することができる保持部を具備していてよく、この場合、インク貯蔵部には、水性オーバーコート組成物が貯蔵されていてよい。
本発明の塗布具は、マーキングペン型であることが、エアブラシによる水性オーバーコート組成物の良好な噴射性を確保する観点から好ましい。
ここで、本明細書において「マーキングペン」とは、インク貯蔵部に貯蔵されているインク等を、毛細管現象により樹脂製の筆記部に供給する機構を有するペンを意味するものであり、当業者により「サインペン」として言及されるペンも含まれる。
特に、本発明の塗布具は、インク貯蔵部と塗布部との間にバルブを更に有するバルブ式塗布具であることが、水性オーバーコート組成物の良好な流出性を得る観点から好ましい。
以下では、本発明の筆記具型の水性オーバーコート組成物用塗布具の各構成要素について説明する。
〈水性オーバーコート組成物〉
水性オーバーコート組成物は、水、及び水溶性樹脂を含有している組成物である。また、水性オーバーコート組成物は、界面活性剤、及び種々の添加剤、例えば、防腐剤、PH調整剤、ノンドライ剤等を含有していてもよい。特に、水性オーバーコート組成物に界面活性剤を含有させることにより、水性オーバーコート組成物の動的表面張力及び静的表面張力を良好に低減させることができる。
水性オーバーコート組成物の25℃及び100msにおける動的表面張力は、55mN/m以下であることが、エアブラシで水性オーバーコート組成物を噴射させた際に生じるミストをより緻密にし、その結果、ムラを更に生じにくくする観点から好ましい。この動的表面張力は、50mN/m以下、45mN/m以下、又は40mN/m以下であってよく、また25mN/m以上、30mN/m以上、又は35mN/m以上であってよい。この動的表面張力は、界面活性剤や水溶性有機溶剤等によって調節させることができる。
水性オーバーコート組成物の25℃における静的表面張力は、50mN/m以下、45mN/m以下、40mN/m以下、35mN/m以下、又は30mN/m以下であってよく、また20mN/m以上、又は25mN/m以上であってよい。この静的表面張力は、界面活性剤や水溶性有機溶剤等によって調節させることができる。
上記の動的表面張力及び静的表面張力は、例えば表面張力計を用いて測定することができる。
(水)
水は、イオン交換水、蒸留水等であることができる。
(水溶性樹脂)
水溶性樹脂は、水に溶解可能な樹脂を意味するものであり、水中にエマルションの形態で分散する樹脂を含むものではない。水性オーバーコート組成物が水溶性樹脂を含有していることにより、エアブラシを用いて水性オーバーコート組成物を塗布した際の塗膜ムラを抑制することができる。かかる水溶性樹脂は、水に溶解された状態で商業的に販売されている樹脂であってよい。水溶性樹脂としては、例えばスチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル酸、アルキド樹脂、変性ポリアミド等であってよく、これらを単独で用いてもよく、又は混合させて用いてもよい。
水性オーバーコート組成物の水溶性樹脂の含有率は、水性オーバーコート組成物の質量全体を基準として、固形分質量で、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、また50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
(水溶性有機溶剤)
水溶性有機溶剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロプレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が好ましく使用できる。
(増粘剤)
増粘剤としては、例えば多糖類等の天然高分子、合成高分子を用いることができる。
多糖類としては、例えばアラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩を用いることができる。
合成高分子としては、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニル-ポリビニルピロリドン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体及びその塩、イソブチレン無水マレイン酸共重合体及びその塩を用いることができる。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、随意の界面活性剤を用いることができるが、フッ素系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種の界面活性剤を用いることが、水性オーバーコート組成物の動的表面張力をより良好に低減させる観点から好ましい。これらの界面活性剤としては、以下の実施例で言及するように、これらの界面活性剤を特定するものとして商業的に入手可能である物を用いることができる。
水性オーバーコート組成物が界面活性剤を含有している場合、界面活性剤の含有率は、水性オーバーコート組成物の質量全体を基準として、0.05質量%以上、又は0.10質量%以上であり、かつ5.0質量%以下、3.0質量%以下、又は2.0質量%以下であることが、良好な静的表面張力及び動的表面張力を得る観点から好ましい。
〈インク貯蔵部〉
インク貯蔵部には、上記の水性オーバーコート組成物が貯蔵されている。
インク貯蔵部は、水性オーバーコート組成物を貯蔵し、かつ塗布部に水性オーバーコート組成物を供給することができる物であれば、任意の物を用いることができる。
特に、塗布具がマーキングペン型である場合には、インク貯蔵部は、中空の空間で形成されていることが、水性オーバーコート組成物の目詰まりを抑制する観点から好ましい。また、この場合、インク貯蔵部には、撹拌子が封入されていてよい。
〈塗布部〉
塗布部は、塗布具の用途に応じ、随意の材料で構成されていてよい。本発明の塗布具がサインペンである場合、塗布部としては、例えば繊維芯及びプラスチック芯等が挙げられる。
樹脂製の塗布部としては、例えば焼結芯、繊維芯が挙げられる。
繊維芯は、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組合せからなる平行繊維束、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した芯である。
〈保持部〉
保持部は、塗布具を手で保持することを可能とする部分であってよく、インク貯蔵部を収納できる中空構造を有していてよい。保持部は、例えば円筒状、多角筒状等の形状を有していてよい。
《エアブラシユニット》
図1に示すように、本発明のエアブラシユニット100は、エアブラシ10及び上記の塗布具20を具備しており、エアブラシ10から噴き出す空気を介して、水性オーバーコート組成物を噴射させる、エアブラシユニットである。
本発明のエアブラシユニット100は、エアブラシ10と塗布具20を連結させる随意の連結部材30を具備していてよい。
本発明のエアブラシユニット100は、例えば、図1の白抜き矢印で示すように、ノズル12から塗布具20の塗布部22に向かう方向へと空気を噴射することにより、塗布部22に付着している水性オーバーコート組成物を、図1の5本の矢印で示すように、塗布部22から広がるようにして噴射させることができる。
〈エアブラシ〉
図1に示すように、エアブラシ10は、ノズル12及びガス供給部材14を具備していてよい。ノズル12とガス供給部材14とは、一体として形成されていてもよく、又はホース等の中空部材を介して互いに接続されていてもよい。
ノズルは、塗布具の塗布部に高圧ガスを噴射できるノズルであれば、特に限定されない。
ガス供給部材は、ノズルに高圧ガスを供給できる部材であれば、特に限定されない。ガス供給部材は、人間が口から空気を吹き込んで噴射させる部材、ブロアーポンプの弾性体部分を手で圧縮変形させて高圧ガスを生じさせる部材、ピストンとシリンダーとからなるポンプのピストンを手で往復運動させる部材、液化ガスを充填したスプレー缶を用いる部材、電気的に圧縮空気を発生させる部材、例えば、モータと、回転運動を往復運動に変換する機構を介してモータと接続するダイヤフラム等の高圧ガス発生装置とからなり、高圧空気発生装置から噴射口へ高圧ガスを送る部材であってよい。
〈連結部材〉
連結部材は、エアブラシと塗布具とを連結させる随意の部材である。連結部材は、エアブラシと塗布具とを物理的に連結させる部材であれば、特に限定されない。
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
《塗布具の作製》
〈実施例1〉
(水性オーバーコート組成物の作製)
水溶性樹脂としてのスチレンアクリル樹脂(ジョンクリル63、BASF Japan社、固形分30%)60質量部、アセチレングリコール系界面活性剤(オルフィン4036、日信化学工業社)3質量部、フッ素系界面活性剤(キャップストーンFS-10、DuPont社)0.3質量部、pH調整剤としてのトリエタノールアミン2質量部、防腐剤(バイオデンS、大和化学工業社)、水溶性有機溶剤としてのプロピレングリコール10質量部及び、及びイオン交換水24.4質量部を混合攪拌して、水性オーバーコート組成物を100質量部作製した。
作製した水性オーバーコート組成物に関し、動的表面張力をBUBBLE PRESURE TENSIOMETER BP2(三洋貿易社)を用いて測定し、静的表面張力を、CBVP-A3(協和界面科学社)を用いて測定した。
バルブ式マーキングペン(ポスカ銀色、三菱鉛筆社)のインク貯蔵部に、作製した水性オーバーコート組成物を充填して、実施例1の塗布具を作製した。
〈実施例2~8及び比較例1~4〉
水性オーバーコート組成物の成分を、表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2~8及び比較例1~4の塗布具を作製した。なお、表1で言及している他の材料としては、以下のものを用いた:
スチレンマレイン酸樹脂:アラスター703S、荒川化学工業社、固形分30%
水溶性ポリウレタン:ユリアーノW321、荒川化学工業社、固形分30%
ポリアクリル酸:watersol S-744、DIC社、固形分40%
アルキド樹脂:watersol S-311、DIC社、固形分50%
変性ポリアミド:AQナイロンA-90、東レ社、固形分100%
アクリルエマルション:ジョンクリル77、BASF Japan社、固形分45.5%
ポリウレタンエマルション:パーマリンUA-4000、三洋化成、固形分38%
アクリル酸エマルション:ボンコート-8400、DIC社、固形分50%
《エアブラシユニットの作製》
作製した塗布具を、エアブラシに接続して、エアブラシユニットを作製した。
《塗工性の評価》
直径8mm、高さ8cmの筒状のポリカーボネート製の被塗工体を高さ方向が鉛直となるように配置し、作製したエアブラシユニットを用いて、被塗工体の全周を塗工するようにして水性オーバーコート組成物を噴射させて、この被塗工体を目視で観察して、外観を評価した。
別途、作製したエアブラシユニットを用いて、PPC用紙に水性オーバーコート組成物を噴射させて、噴射時の水性オーバーコート組成物の吐出性を目視により評価した。
〈艶感〉
艶感の評価基準は以下のとおりである:
A:艶が十分に確認できる。
B:艶がやや確認できる。
C:艶が殆ど確認できない。
〈塗膜ムラ〉
塗膜ムラの評価基準は以下のとおりである:
A:ムラがなく、均一な塗膜が形成されている。
B:ムラがやや見られるが、均一な塗膜が形成されている。
C:ムラが多く、塗膜の外観が損なわれている。
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。なお、表1の「水溶性樹脂」及び「エマルション」の含有量は、固形分及び液体成分の合計を示している。
Figure 0007239341000001
表1から、水性オーバーコート組成物が水溶性樹脂を含有している、実施例1~8の塗布具は、エアブラシの塗工性が良好であったことが理解できよう。
これに対し、水性オーバーコート組成物が艶出し剤を含有していない、比較例1の塗布具、及び水性オーバーコート組成物がエマルションを含有している、比較例2~4の塗布具は、エアブラシの塗工性が良好ではなかったことが理解できよう。
10 エアブラシ
12 ノズル
14 ガス供給部材
20 塗布具
22 塗布部
30 連結部材
100 エアブラシユニット

Claims (6)

  1. 筆記具型の水性オーバーコート組成物用塗布具であって、
    前記塗布具は、水性オーバーコート組成物を含有しており、
    前記水性オーバーコート組成物は、水、及び水溶性樹脂を含有しており、かつ
    前記水性オーバーコート組成物の25℃及び200msにおける動的表面張力が、35mN/m以上である、
    筆記具型の水性オーバーコート組成物用塗布具。
  2. 前記水性オーバーコート組成物の25℃及び200msにおける動的表面張力が、50mN/m以下である、請求項1に記載の塗布具。
  3. 前記水性オーバーコート組成物の25℃及び200msにおける静的表面張力が、35mN/m以下である、請求項1又は2に記載の塗布具。
  4. 前記水性オーバーコート組成物の25℃及び200msにおける静的表面張力が、25mN/m以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の塗布具。
  5. 前記水溶性樹脂が、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ポリウレタン、ポリアクリル酸、アルキド樹脂、変性ポリアミドからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の塗布具。
  6. エアブラシ及び請求項1~5のいずれか一項に記載の塗布具を具備しており、前記エアブラシから噴き出す空気を介して、前記水性オーバーコート組成物を噴射させる、エアブラシユニット。
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