JP5022593B2 - 筆記具 - Google Patents
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Description
前記インキ組成物は、インキのpHを酸性乃至中性に調整して塩基性染料の発色性を良好にする試みがなされる反面、筆記先端部に金属製ペン先を設けた筆記具に適用すると、該ペン先にインキが広がって付着する傾向にあり、付着したインキが乾燥するとインキ中の染料がインキの付着した境界部分に残り易く、縁取りのような汚れを生じてペン先の見栄えを損なうことになる。
更には、前記有機酸をインキ組成物全量中0.5〜5重量%の範囲で添加してなること、前記有機酸がグルタル酸、アジピン酸、トリカルバリル酸から選ばれる有機酸であること、前記塩基性染料が還元剤により変色又は消色する染料であること等を要件とする。
前記有機酸は、水酸基を有する炭素数が4乃至6の有機酸、例えば、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、ロイシン酸では成し得ないペン先の汚れを防止する効果を奏する。
前記有機酸は、インキ組成物全量中0.5〜5重量%、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは2〜4重量%の範囲で添加される。
前記有機酸の添加量が0.5重量%未満では金属性ペン先の汚れを防止する効果に乏しく、また、5重量%を超えると、インキの耐乾燥性(キャップオフ性)に乏しくなる。
なお、前記有機酸としてはカルボキシル基を有し、且つ、水酸基を有しない炭素数が5又は6の有機酸、具体的にはグルタル酸、アジピン酸、トリカルバリル酸が好適である。
クリソイジン(C.I.11270)、
メチルバイオレットFN(C.I.42535)、
クリスタルバイオレット(C.I.42555)、
マラカイトグリーン(C.I.42000)、
ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、
ローダミンB(C.I.45170)、
アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、
メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
また、前記塩基性染料として、還元剤によって変色又は消色する染料を用いてもよく、メチン系染料、トリメチルメタン系染料、ジフェニルメタン系染料、トリフェニルメタン系染料、キサンテン系染料、シアニン系染料、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料等を使用することができる。
前記染料として具体的には、C.I.ベーシックブルー1、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー7、C.I.ベーシックブルー54、C.I.ベーシックブルー65、C.I.ベーシックブルー69、C.I.ベーシックオレンジ21、C.I.ベーシックオレンジ46、C.I.ベーシックレッド13、C.I.ベーシックレッド14、C.I.ベーシックレッド37、C.I.ベーシックレッド49、C.I.ベーシックグリーン1、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット10、C.I.ベーシックバイオレット15、C.I.ベーシックバイオレット27、C.I.ベーシックイエロー49を例示できる。
なお、インキ中で染料の発色性を良好なものとするためには、インキのpHを1〜7、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜5にする必要がある。
更に、前記還元剤によって変色又は消色する染料と共に、還元剤によって変色し難い染料や顔料を併用することによって、筆記時には前記染料の色調が混色となった筆跡が視認され、前記筆跡に変色液を付着させることにより、一方の染料が変色又は消色して異なる色調の筆跡を視認可能な構成とすることもできる。
尚、前記水溶性有機溶剤は1種又は2種以上を併用することもでき、2〜50重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられる。
前記水溶性樹脂は一種又は二種以上を併用することができ、インキ組成中1乃至30重量%の範囲で用いられる。
前記剪断減粘性付与剤は従来より公知のものから適宜選択することができ、具体例には、キサンタンガム、サクシノグリカン、ウェランガム、アルカシーガム、グァーガム、カラギーナン等の多糖類、ポリアクリル酸、架橋型アクリル酸、ポリビニルアセトアミド、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、会合性ウレタンエマルジョン等が挙げられる。
なお、インキ収容管内にインキを収容したレフィルを軸筒内に収容するタイプの筆記具は、キャップを装着する構成の筆記具の他、キャップを要しない前記レフィルを出没可能に構成した後端ノックやサイドノック等のノック式、又は、回転式の筆記具であってもよい。
前記金属製ペン先として具体的には、ステンレス板、金合金板等の金属板を先細テーパー状に裁断し、屈曲又は湾曲した万年筆型のペン先が挙げられる。尚、前記ペン体には中心にスリットを設けたり、先端に玉部を設けることもできる。
前記還元剤として具体的には、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸亜鉛、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩化錫、ハイドロサルファイト等を例示でき、変色又は消色性能の観点から亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸カリウムが好適に用いられる。
また、前記変色液には必要に応じて有機溶剤や各種添加剤を配合できる。
前記変色液を収容する変色用塗布具としては、収容した変色液を開口部から直接筆跡に付着させる簡易構造の塗布具、開口部に刷毛等の吸液体を設けたキャップを有し、キャップを嵌めた状態で前記吸液体が容器内の変色液を含浸する構成となし、筆跡上に吸液体を接触させて変色液を塗布する構造の塗布具を例示できる。
また、筆記具の構造を有する変色用塗布具であってもよく、塗布部に繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、筆穂等を筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体に変色液を含浸させ、筆記先端部に変色液を供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状の液体流量調節部材や繊維束からなる液体流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量の変色液を供給する構造、軸筒内部に直接変色液を収容して、弁機構により筆記先端部に所定量の変色液を供給する構造のマーキングペンや筆ペン、軸筒に収容した繊維束からなる吸蔵体に変色液を含浸させ、ボールペンチップを装着した筆記先端部に変色液を供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状の液体流量調節部材や繊維束からなる液体流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量の変色液を供給する構造、軸筒内に変色液を充填した収容管を有し、該収容管はボールペンチップに連通しており、さらに変色液の後端には逆流防止用の液栓を配設した構造のボールペンを例示できる。
前記筆記具セットは、単一の筆記具と変色用塗布具により構成されていてもよいが、複数の色調の異なる筆記具や複数の筆跡幅の異なる筆記具と変色用塗布具を組み合わせた筆記具セットとすることにより、バリエーションに富む筆跡や絵柄を形成できると共に、前記筆跡や絵柄を変色又は消色可能な意外性を有する筆記具セットが得られる。
なお、実施例中の部は重量部を示す。
実施例1
インキ組成物の調製
緑色染料 1.0部
〔保土谷化学工業(株)製、商品名:ダイアモンドグリーンGH〕
グルタル酸 1.0部
石炭酸(防腐剤) 0.15部
水酸化ナトリウム 0.3部
ノニオン系界面活性剤 0.5部
〔日光ケミカルズ(株)製、商品名:ニッコールPBC34〕
グリセリン 8.0部
水(イオン交換水) 89.05部
なお、前記インキのpHは3.5であった。
インキ組成物の調製
緑色染料 1.0部
〔保土谷化学工業(株)製、商品名:ダイアモンドグリーンGH〕
アジピン酸 1.0部
石炭酸(防腐剤) 0.15部
水酸化ナトリウム 0.3部
ノニオン系界面活性剤 0.5部
〔日光ケミカルズ(株)製、商品名:ニッコールPBC34〕
グリセリン 8.0部
水(イオン交換水) 89.05部
なお、前記インキのpHは3.6であった。
インキ組成物の調製
緑色染料 1.0部
〔保土谷化学工業(株)製、商品名:ダイアモンドグリーンGH〕
トリカルバリル酸 1.0部
石炭酸(防腐剤) 0.15部
水酸化ナトリウム 0.3部
ノニオン系界面活性剤 0.5部
〔日光ケミカルズ(株)製、商品名:ニッコールPBC34〕
グリセリン 8.0部
水(イオン交換水) 89.05部
なお、前記インキのpHは3.2であった。
インキ組成物の調製
緑色染料 1.0部
〔保土谷化学工業(株)製、商品名:ダイアモンドグリーンGH〕
リンゴ酸 1.0部
石炭酸(防腐剤) 0.15部
水酸化ナトリウム 0.3部
ノニオン系界面活性剤 1.0部
〔日光ケミカルズ(株)製、商品名:ニッコールPBC34〕
グリセリン 8.0部
水(イオン交換水) 88.55部
なお、前記インキのpHは2.9であった。
インキ組成物の調製
緑色染料 1.0部
〔保土谷化学工業(株)製、商品名:ダイアモンドグリーンGH〕
クエン酸 1.0部
石炭酸(防腐剤) 0.15部
水酸化ナトリウム 0.3部
ノニオン系界面活性剤 1.0部
〔日光ケミカルズ(株)製、商品名:ニッコールPBC34〕
グリセリン 8.0部
水(イオン交換水) 88.55部
なお、前記インキのpHは2.9であった。
前記各インキを万年筆形態の金属製ペン先を有する筆記具(パイロットコーポレーション社製、SVP−20NS)のインキ貯蔵部に充填し、キャップを嵌合することで筆記具を作製した。
経時試験
前記各筆記具を室温下で6ケ月間放置した後、キャップを外してペン先の状態を目視により観察した。
以下の表に試験結果を示す。
経時試験
○:初期と比較してペン先に汚れはみられない。
×:ペン先に汚れ(染料による縁取りのような汚れ)がみられる。
変色液の調製
亜硫酸ナトリウム(還元剤) 10.0部
炭酸カリウム 1.0部
リン酸エステル系界面活性剤 0.2部
〔第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL〕
石炭酸(防腐剤) 0.1部
グリセリン 10.0部
水(イオン交換水) 78.7部
前記溶剤中に還元剤と各種添加剤を加えて攪拌して変色液を得た。
前記変色液を、ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体に含浸させて軸筒内に収容し、軸筒先端部にチゼル型繊維マーキングペンチップを取り付けてマーキングペン形態の変色用塗布具を得た。
なお、前記変色用塗布具には着脱自在のキャップを備えてなる。
前記実施例1で調製したインキを収容した筆記具と、変色性塗布具を組み合わせて筆記具セットを得た。
前記筆記具を用いて紙面上に筆記すると、緑色の筆跡が得られ、前記筆跡上から変色用塗布具を用いて変色液を塗布すると筆跡は消色した。
Claims (6)
- 筆記先端部に万年筆型金属製ペン先を配してなり、少なくとも塩基性染料と、水と、カルボキシル基を有し、且つ、水酸基を有しない炭素数が4乃至6の有機酸を含有してなり、インキのpHが1〜7の範囲にある筆記具用水性インキ組成物を収容した筆記具。
- 前記有機酸をインキ組成物全量中0.5〜5重量%の範囲で添加してなる請求項1記載の筆記具。
- 前記有機酸がグルタル酸、アジピン酸、トリカルバリル酸から選ばれる有機酸である請求項1又は2記載の筆記具。
- 前記塩基性染料が還元剤により変色又は消色する染料である請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具。
- 軸筒内に、内外圧の変化に応じてインキ貯蔵部のインキを一時的に溜めるペン芯を収容してなり、前記ペン芯の先端部に万年筆型金属製ペン先を配してなる請求項1記載の筆記具。
- 前記軸筒内にカートリッジ式のインキ貯蔵部を収容してなる請求項5記載の筆記具。
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