JP7238773B2 - ソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物及びビタミンa分離抑制方法 - Google Patents

ソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物及びビタミンa分離抑制方法 Download PDF

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Description

本発明は、ソフトコンタクトレンズ接触によるビタミンAの分離が抑制された眼科用組成物、及びソフトコンタクトレンズ接触によるビタミンAの分離抑制方法に関するものである。
近年、ソフトコンタクトレンズ装用者の割合は増加しているが、ソフトコンタクトレンズの眼表面に対する影響は少なくない。ソフトコンタクトレンズによる眼障害の一つとして、長時間装用等の角膜への負担や、レンズの汚れ等により、角膜上皮に傷がついたり、上皮細胞が剥がれたりすることが原因となって生じる角膜上皮障害がある。これら障害に対する有効な成分としてビタミンAが挙げられる。しかしながら、ビタミンAは酸化されやすく、特に水溶液中では極めて不安定であることが知られている。
ビタミンAの安定性を高める手段として、抗酸化剤であるジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を添加する方法(特許文献1:特開昭48-48617号公報)が効果的であるが、BHTはソフトコンタクトレンズへ吸着することが知られており(特許文献2:特開2011-116688号公報)、ソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物に配合することは好ましくない。残された効果の高いビタミンAを安定化する手段として、界面活性剤を低減(特許文献3:特開平6-247853号公報)する方法が知られている。
特開昭48-48617号公報 特開2011-116688号公報 特開平6-247853号公報
上記のような方法によりビタミンAの保存安定性を高めることができるものの、ソフトコンタクトレンズとの接触により、組成物からビタミンAが分離するという課題が新たに生じた。分離したビタミンAはソフトコンタクトレンズに接触することによるレンズへの不具合や、ぼやけ等により使用感が低下するおそれがある。ソフトコンタクトレンズ装着時には、角膜表面とソフトコンタクトレンズ間に入り込むことで、裸眼時よりも眼科用組成物が長く滞留する。したがって、澄明性の低い組成物や、組成物から分離した成分は、レンズに対する影響や、視野のぼやけなど使用性を低下させることとなる。
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ビタミンAの保存安定性と、ソフトコンタクトレンズ接触による組成物からのビタミンA分離を抑制することを両立でき、かつ外観澄明性に優れたソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物、及びソフトコンタクトレンズ接触による組成物からのビタミンA分離を抑制する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)ビタミンA、(B)ビタミンE及び(C)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む非イオン性界面活性剤を含有するソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物において、(A)成分、(B)成分の含有量、((A)+(B))/(C)で表される含有質量比、(C)成分中のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有割合、ジブチルヒドロキシトルエンの含有量をそれぞれ特定の範囲とすることで、上記課題を解決できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
従って、本発明は、下記ソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物及びビタミンA分離抑制方法を提供する。
[1].(A)ビタミンA、(B)ビタミンE、及び(C)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む非イオン性界面活性剤を含有するソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物であって、
(A)成分の含有量が組成物中0.005~0.06w/v%、
(B)成分の含有量が組成物中0.01~0.1w/v%、
((A)+(B))/(C)で表される含有質量比が、0.3≦((A)+(B))/(C)≦0.9、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル/(C)で表される、(C)非イオン性界面活性剤の全量に対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有質量比が0.25以上、及び
ジブチルヒドロキシトルエンの含有量が0.005w/v%以下であるソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物。
[2].さらに、(D)エデト酸又はその塩を含有する[1]記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物。
[3].(C)成分が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である[1]又は[2]記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物。
[4].(A)ビタミンA、(B)ビタミンE、及び(C)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む非イオン性界面活性剤を含有するソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物において、
(A)成分の含有量を組成物中0.005~0.06w/v%、
(B)成分の含有量を組成物中0.01~0.1w/v%、
((A)+(B))/(C)で表される含有質量比を、0.3≦((A)+(B))/(C)≦0.9、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル/(C)で表される、(C)非イオン性界面活性剤の全量に対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有質量比を0.25以上、及び
ジブチルヒドロキシトルエンの含有量を0.005w/v%以下
にする、ソフトコンタクトレンズ接触による上記組成物からの(A)ビタミンA分離を抑制する方法。
本発明によれば、ビタミンAの保存安定性と、ソフトコンタクトレンズ接触による組成物からのビタミンA分離を抑制することを両立でき、かつ外観澄明性に優れたソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物、及びソフトコンタクトレンズ接触によるビタミンA分離抑制方法を提供することができる。以下、「ソフトコンタクトレンズ接触による組成物からのビタミンA分離を抑制すること」を「ビタミンA分離抑制」と記載する場合がある。
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)ビタミンA]
ビタミンAとしては、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。中でも、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノイン酸が好ましい。レチノールパルミチン酸エステルは、通常100~180万国際単位/g(以下、I.U./gと略記する場合がある)のものが市販されており、具体的には、DSMニュートリションジャパン(株)製レチノールパルミチン酸エステル(174万I.U./g)、シグマアルドリッチ製パルミチン酸レチノール等が挙げられる。
(A)成分の含有量は組成物中0.005~0.06w/v%(質量/容量%、g/100mL)であり、0.01~0.04w/v%が好ましく、0.015~0.03w/v%がさらに好ましい。また、国際単位では、0.9万~10万単位/100mLが好ましく、2万~7万単位/100mLがより好ましく、2.5万~5万単位/100mLがさらに好ましい。0.005w/v%以上とすることで、ビタミンAの有効性、例えば、角結膜損傷治癒効果がより発揮され、0.06w/v%を超えると、ビタミンA分離抑制効果が不十分となる。
[(B)ビタミンE]
ビタミンEとしては、酢酸トコフェロール(酢酸d-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール)が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、酢酸d-α-トコフェロールが好ましい。
(B)成分の含有量は組成物中0.01~0.1w/v%であり、好ましくは0.035~0.05w/v%である。0.01w/v%未満だと(A)ビタミンAの含量が低下するおそれがあり、0.1w/v%を超えると、ソフトコンタクトレンズ接触によるビタミンA分離の抑制効果が不十分となる。さらに、ビタミンAの保存安定性の観点から、2種以上を適宜組み合わせて用いることが好ましい。
[(C)成分]
(C)成分は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む非イオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを必須成分とする。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル以外の非イオン性界面活性剤とを含むことが好ましく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等が挙げられ、中でも、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル以外の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。ビタミンAの保存安定性、外観澄明性の観点より、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と併用することが好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油)等が挙げられ、中でもポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油)が好ましい。
ポリオキシエチレンヒマシ油としては、ポリオキシエチレンヒマシ油3、ポリオキシエチレンヒマシ油10、ポリオキシエチレンヒマシ油20、ポリオキシエチレンヒマシ油35、ポリオキシエチレンヒマシ油40、ポリオキシエチレンヒマシ油50、ポリオキシエチレンヒマシ油60等(数値は酸化エチレンの平均付加モル数)が挙げられる。
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ポリエチレングリコール-25、ステアリン酸ポリエチレングリコール-40等が挙げられ、中でもステアリン酸ポリエチレングリコール-40が好ましい。
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーとしては、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコールが挙げられ、中でもポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコールが好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル/(C)で表される、(C)非イオン性界面活性剤の全量に対する、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有質量比はビタミンA分離抑制の観点からは、0.25以上であり、0.25~1が好ましく、0.4~1がより好ましく、0.6~1がさらに好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有質量比が0.25未満だと、ビタミンA分離抑制効果が不十分になる。ビタミンAの保存安定性の観点からは、非イオン界面活性剤の全量が上記比率を満たす場合、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有質量比は0.25以上であり、0.25~0.4が好ましい。ビタミンA分離抑制及びビタミンAの保存安定性の両観点からは、非イオン界面活性剤の全量が上記比率を満たす場合、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有質量比は0.25以上であり、0.25~0.4が好ましい。
((A)+(B))/(C)で表される含有質量比は、0.3≦((A)+(B))/(C)≦0.9を満たす。上記比率が0.3未満だとビタミンAの保存安定性が不十分であり、0.9を超えると外観澄明性が不十分である。下限については、ビタミンAの保存安定性の点から、0.6≦((A)+(B))/(C)が好ましい。上限については、外観澄明性の点から、((A)+(B))/(C)≦0.75が好ましく、((A)+(B))/(C)≦0.50がより好ましく、((A)+(B))/(C)≦0.45がさらに好ましい。ビタミンA分離抑制効果の点からは、((A)+(B))/(C)≦0.85が好ましく、((A)+(B))/(C)≦0.65がより好ましい。総合的には、0.3≦((A)+(B))/(C)≦0.75が好ましく、0.3≦((A)+(B))/(C)≦0.65がより好ましく、0.3≦((A)+(B))/(C)≦0.5がさらに好ましい。なお、本発明において、「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル/(C)」及び「((A)+(B))/(C)」はw/v%比であるが、これは質量比と同じである。
(C)成分の含有量は上記比率を満たせば特に限定されないが、組成物中0.01~0.5w/v%が好ましく、0.05~0.3w/v%がより好ましい。
[(D)成分]
本発明の眼科用組成物には、ビタミンA分離抑制効果及びビタミンAの保存安定性を向上させる点から、エデト酸又はその塩を配合することが好ましい。ビタミンA分離抑制効果は、眼科用組成物の保存後により発揮される。エデト酸又はその塩としては、エデト酸、エデト酸ナトリウム及びその水和物、エデト酸四ナトリウム及びその水和物が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム二水和物が好ましい。
(D)成分の含有量は組成物中0.001w/v%以上が好ましく、0.005w/v%がより好ましく、0.01w/v%以上がさらに好ましい。この範囲でビタミンA分離抑制効果をより高めることができる。上限は特にないが、ソフトコンタクトレンズ用の点眼剤における眼刺激の観点から、組成物中0.5w/v%以下が好ましく、0.2w/v%以下がより好ましく、0.1w/v%以下がさらに好ましく、0.05w/v%以下が特に好ましい。
ジブチルヒドロキシトルエンはソフトコンタクトレンズに吸着し、ソフトコンタクトレンズ接触によるビタミンA分離を促進させるため、その含有量は組成物中0.005w/v%以下であり、眼科用組成物中0.005w/v%未満配合でき、0.001w/v%未満が好ましく、0.0007w/v%未満、0.0005w/v%未満、0.0004w/v%未満がより好ましく、0.0003w/v%未満がさらに好ましい。なお、ジブチルヒドロキシトルエン無配合(0w/v%)でもよい。
本発明の眼科用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を適量配合することができる。その他の成分としては、糖類、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、安定化剤、多価アルコール、粘稠剤、清涼化剤、薬物等が挙げられる。これらはそれぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、以下の含有量は配合する場合の量である。
糖類としては、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。糖類の含有量は、組成物中0.001~10w/v%が好ましく、0.005~5w/v%がより好ましく、0.01~0.3w/v%がさらに好ましい。
緩衝剤としては、例えば、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム等)、各種アミノ酸類(イプシロン-アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム)等が挙げられる。緩衝剤の含有量は、組成物中0.001~10w/v%が好ましく、0.001~5w/v%がより好ましく、0.01~3w/v%がさらに好ましい。
pH調整剤としては、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。例えば、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。組成物のpHは5.0~9.0が好ましく、5.5~8.0がより好ましい。なお、pHの測定は、25℃でpHメータ(例えば、HM-25R、東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン等が挙げられ、等張化されていることが好ましい。組成物の対生理食塩水の浸透圧比は、0.60~2.00が好ましく、0.60~1.55がより好ましい。なお、浸透圧の測定は、25℃で自動浸透圧計(A2O、アドバンスドインストルメンツ社)を用いて行う。
安定化剤としては、例えば、シクロデキストリン、亜硫酸塩等が挙げられる。安定化剤の含有量は、組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.01~3.0w/v%がより好ましく、0.01~2.0w/v%がさらに好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールの含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましい。
粘稠剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。粘稠剤の含有量は、組成物中0.003~3w/v%が好ましい。
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール等が挙げられる。d体、l体又はdl体のいずれでもよい。清涼化剤の含有量は、組成物中0.0001~0.2w/v%が好ましい。
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去成分(例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、エフェドリン塩酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩等)、消炎・収斂剤(例えば、ネオスチグミンメチル硫酸塩、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩等)、抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩等)、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等)、アミノ酸類(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム等)、サルファ剤等が挙げられる。薬物を配合する場合、薬物の含有量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルアミノエチルグリシン、クロルヘキシジングルコン酸、パラオシキ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等が挙げられる。これらは、組成物中に0.1w/v%以下が好ましく、0.01w/v%以下がより好ましく、0.001w/v%以下がさらに好ましく、0.0001w/v%以下が最も好ましく、配合しなくてもよい。
なお、水の含有量は残部とすることができ、例えば、組成物中90.0~99.5w/v%から適宜選択される。
[眼科用組成物]
本発明の組成物は目への適応を容易にする点から液体が好ましく、20℃における粘度は、1~30mPa・sが好ましい。なお、粘度の測定方法はコーンプレート型粘度計(DV2T、英弘精機(株))を用いて行う。
組成物の透過率、具体的には分光光度計(UV-1800、(株)島津製作所)を用いて測定した波長600nmの透過率が85~100%が好ましく、90~100%がより好ましく、95~100%がより好ましい。なお、測定温度は室温である。
[製造方法]
本発明の眼科用組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、(A)、(B)及び(C)成分等の混合溶液を、水性成分を含む水溶液と混合して乳化し、pH調整後、総体積を水により調整することにより得ることができる。各液体の混合方法は、一般的な方法でよく、パルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われるが、回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。各液体の混合温度は特に限定しないが、(A)、(B)及び(C)の融解温度以上であることが好ましく、具体的には20~95℃の範囲から適宜選定される。その後、適当な容器、例えばポリエチレンテレフタレート製の容器等に無菌充填することができる。
[ソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物]
本発明の眼科用組成物の使用形態としては、具体的には、ソフトコンタクトレンズ用点眼剤、ソフトコンタクトレンズ用装着液、ソフトコンタクトレンズ取り外し液等が挙げられるが、特に、コンタクトレンズ装着中に使用できるソフトコンタクトレンズ用点眼剤として好適に使用できる。ソフトコンタクトレンズ用点眼剤として使用する場合、本発明の効果をより発揮する点から、1回につき10~100μLを1~3滴1日につき1~6回点眼することが好ましく、1回につき10~50μLを1~3滴1日につき1~6回点眼することがより好ましく、1回につき10~30μLを1~3滴1日につき1~6回点眼することがさらに好ましい。
ソフトコンタクトレンズの種類としては特に限定されないが、FDA(米国食品医薬品局)の基準によって、グループI~IVに分けられるいずれのソフトコンタクトレンズにおいても、ソフトコンタクトレンズ接触による組成物からのビタミンA分離を抑制できる。中でも、本発明の眼科用組成物は、グループIIIのものに対して大きな効果を示す。
・グループI:例えば、メダリストプラス(構成モノマー:2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ボシュロム・ジャパン株式会社
・グループII:例えば、メダリストII(構成モノマー:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン)、ボシュロム・ジャパン株式会社
・グループIII:例えば、フレッシュフィットコンフォートモイスト(構成モノマー:トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルビニルカーバメート、N-ビニル-2-ピロリドン)、ボシュロム・ジャパン株式会社
・グループIV:例えば、アキュビュー(構成モノマー:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート)
[眼科用製品]
本発明の眼科用組成物は、眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有する眼科用製品とすることができる。さらに、(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器又は(4)酸素吸収能を有する包囲体等にすることもできる。なお、包囲体は容器を密封できるものが好ましい。
容器としては、プラスチック製容器が好ましく、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、塩化ビニル等の材質またはこれら材質の複合体からなるもの等を用いることができる。特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。容器の酸素透過係数は、10cc/m2・24hr・atm以上が好ましい。
包囲体としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、セロファン、ポリ塩化ビニルフィルム、アルミ箔、アルミニウムを蒸着したポリビニルアルコール系・ポリアミド系フィルム、ポリ塩化ビニリデンをコートしたフィルムまたはラミネートフィルム等、これらの複合、多層フィルム等が挙げられる。包囲体の酸素透過係数は、10cc/m2・24hr・atm以下(即ち、0~10cc/m2・24hr・atm)の酸素非透過性包囲体が好ましい。
(1)包囲体内への不活性ガス注入
不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられる。中でも窒素ガスが好ましい。不活性ガスの濃度は、包囲体とプラスチック製容器との間に形成された空間容積中、好ましくは50容積%以上、より好ましくは80容積%以上、さらに好ましくは90容積%以上である。上限は特に限定されず、100容積%以下である。このような濃度にするためには、包囲体とプラスチック製容器との間に形成された空間を、不活性ガスで置換すればよい。
(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、
具体的には三菱ガス化学(株)製のエージレス(登録商標)(FX、SP、SS、SPE、ZP、Z-PT、Z-PKC、GLS、GL-M、Z-20PKヤ)、ファーマキープ、(株)常盤産業製のバイタロン、(株)博洋製のサンソレス、パウダーテック(株)製のワンダーキープ、アイリス・ファインプロダクツ(株)製のサンソカット等を用いることができる。
(3)酸素吸収能を有する容器
東洋製罐(株)製のオキシブロック、三菱ガス化学(株)製のオキシヴァニッシュ等を用いることができる。
(4)酸素吸収能を有する包囲体
共同印刷(株)製のオキシキャッチ(登録商標)ICA、シールドエアー社製のCryovac(登録商標)OSフィルム、スタープラスチック工業(株)製のハイスターO2、三菱ガス化学(株)製のエージレスオーマック、東洋製罐(株)製のオキシデック等を用いることができる。
本発明の方法は、
(A)ビタミンA、(B)ビタミンE、及び(C)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む非イオン性界面活性剤を含有するソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物において、
(A)成分の含有量を組成物中0.005~0.06w/v%、
(B)成分の含有量を組成物中0.01~0.1w/v%、
((A)+(B))/(C)で表される含有質量比を、0.3≦((A)+(B))/(C)≦0.9、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル/(C)で表される、(C)非イオン性界面活性剤の全量に対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有質量比を0.25以上、及び
ジブチルヒドロキシトルエンの含有量を0.005w/v%以下
にする、ソフトコンタクトレンズ接触による上記組成物からの(A)ビタミンAの分離を抑制する方法である。好適な成分、含有量、比等は上記眼科用組成物と同様である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」はw/v%、比率はw/v%比(質量比と同じ)を示す。
[実施例、比較例]
下記表に示す組成の眼科用組成物を下記方法により調製した。
(A)及び(B)成分と(C)成分等との混合溶液を、水性成分を含む水溶液と混合して75~90℃で乳化し、pH調整後、総体積を水により調整した。なお、各実施例の粘度は1.0~2.0mPa・s(20℃)の範囲であった。
得られた眼科用組成物について、下記評価を行った。結果を表中に併記する。なお、表中の「-」は未評価を示す。
[製造直後の外観]
製造直後の眼科用組成物を分光光度計UV1800((株)島津製作所)を用いて、波長600nmにおける透過率(%)を室温で測定した。結果を下記評価基準で示す。本発明においては「△」以上を合格とする。
〈外観評価基準〉
◎:透過率95%以上
○:透過率90%以上95%未満
△:透過率85%以上90%未満
×:透過率85%未満
[ソフトコンタクトレンズとの接触によるビタミンA分離確認試験]
眼科用組成物5mLを20mLバイアル瓶に入れた後、ソフトコンタクトレンズ1枚を浸漬し、37℃・120rpmの条件で一晩振とうした。眼科用組成物の液面の干渉光を観察し、下記評価基準に基づき、眼科用組成物からのビタミンA分離を評価した。ビタミンA分離の評価が「△」以上であれば、ソフトコンタクトレンズ吸着への影響は少ない。
[ビタミンA分離の評価基準]
◎:ビタミンAの干渉光が全く観察されない。
○:ビタミンAの干渉光が極少量観察される(バイアル瓶液面の3割未満)。
△:ビタミンAの干渉光が少量観察される(バイアル瓶液面の3割以上5割未満)。
×:ビタミンAの干渉光が十分に観察される(バイアル瓶液面の5割以上)。
[ビタミンAの保存安定性]
得られた眼科用組成物をポリエチレンテレフタレート製の点眼剤容器に充填した後、酸素吸収剤(エージレス:Z-15P、三菱ガス化学株式会社製)を同梱したフィルム包装を施した。
眼科用組成物中のビタミンA(レチノールパルミチン酸エステル)含量を、製造直後及び50℃・75%RHで2ヶ月保存後(苛酷試験)に測定した。測定は高速液体クロマトグラフ法を用いた。得られたレチノールパルミチン酸エステル含量から下記式に基づき、レチノールパルミチン酸エステル残存率(%)を算出した。
レチノールパルミチン酸エステル残存率(%)=[保存後のレチノールパルミチン酸エステル含量/製造直後のレチノールパルミチン酸エステル含量]×100
使用したソフトコンタクトレンズを下記に示す。
グループI:ボシュロムメダリストプラス(構成モノマー:2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ボシュロム・ジャパン株式会社
グループII:ボシュロムメダリストII(構成モノマー:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン)、ボシュロム・ジャパン株式会社
グループIII:メダリストフレッシュフィットコンフォートモイスト:(構成モノマー:トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルビニルカーバメート、N-ビニル-2-ピロリドン)、ボシュロム・ジャパン株式会社
グループIV:アキュビュー(構成モノマー:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート)、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
Figure 0007238773000001
Figure 0007238773000002
Figure 0007238773000003
Figure 0007238773000004
Figure 0007238773000005
Figure 0007238773000006
Figure 0007238773000007
Figure 0007238773000008
実施例4と実施例5について、上記ビタミンAの保存安定性と同様の方法(50℃・75%RHで2ヶ月保存後(苛酷試験))で保存した後、上記[ソフトコンタクトレンズとの接触によるビタミンA分離確認試験]と同様の試験を行った。
実施例4では「○」であったのに対し、実施例5では「◎」であった。また、ビタミンAの保存安定性の結果においては、実施例4は71.1%、実施例5は74.2%であった。以上のことから、(C)成分による、保存後におけるソフトコンタクトレンズとの接触によるビタミンA分離抑制効果及びビタミンAの保存安定性向上効果が確認された。
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
レチノールパルミチン酸エステル(DSMニュートリションジャパン(株)製、レチノールパルミチン酸エステル、174万単位/g)
酢酸d-α-トコフェロール(理研Eアセテートα、理研ビタミン(株)製)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO60、日本サーファクタント工業(株)製)
モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(レオドールTW-O120V、花王(株)製)
ポリオキシエチレンヒマシ油35(ユニオックスC35、日油(株)製)
ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(LutrolF127、BASFジャパン(株)製)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール-40(MYS-40MV、日光ケミカルズ(株)製)

Claims (4)

  1. (A)ビタミンA、
    (B)ビタミンE、及び
    (C)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油及びポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる1種以上とを含む非イオン性界面活性剤
    を含有するソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物であって、
    (A)成分の含有量が組成物中0.005~0.04w/v%、
    (B)成分の含有量が組成物中0.01~0.1w/v%、
    ((A)+(B))/(C)で表される含有質量比が、0.3≦((A)+(B))/(C)≦0.9、
    ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル/(C)で表される、(C)非イオン性界面活性剤の全量に対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有質量比が0.25以上、及び
    ジブチルヒドロキシトルエンの含有量が0.0004w/v%以下であるソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物(但し、ブチルヒドロキシアニソールを含むものを除く。)。
  2. さらに、(D)エデト酸又はその塩を含有する請求項1記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物。
  3. (C)成分が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である請求項1又は2記載のソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物。
  4. (A)ビタミンA、(B)ビタミンE、及び(C)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む非イオン性界面活性剤を含有するソフトコンタクトレンズ用眼科用組成物(但し、ブチルヒドロキシアニソールを含むものを除く。)において、
    (A)成分の含有量を組成物中0.005~0.04w/v%、
    (B)成分の含有量を組成物中0.01~0.1w/v%、
    ((A)+(B))/(C)で表される含有質量比を、0.3≦((A)+(B))/(C)≦0.9、
    (C)成分が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油及びポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる1種以上とを含む非イオン性界面活性剤であり、
    ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル/(C)で表される、(C)非イオン性界面活性剤の全量に対するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有質量比を0.25以上、及び
    ジブチルヒドロキシトルエンの含有量を0.0004w/v%以下
    にする、ソフトコンタクトレンズ接触による上記組成物からの(A)ビタミンAの分離を抑制する方法。
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