以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
同図において、タイヤ子午線方向の断面は、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。また、タイヤ赤道面CLは、JATMAに規定されたタイヤ断面幅の測定点の中点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面として定義される。また、タイヤ幅方向は、タイヤ回転軸に平行な方向として定義され、タイヤ径方向は、タイヤ回転軸に垂直な方向として定義される。
また、車幅方向内側および車幅方向外側が、タイヤを車両に装着したときの車幅方向に対する向きとして定義される。また、タイヤ赤道面を境界とする左右の領域が、車幅方向外側領域および車幅方向内側領域としてそれぞれ定義される。また、空気入りタイヤが、車両に対するタイヤ装着方向を示す装着方向表示部(図示省略)を備える。装着方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸によって構成される。例えば、ECER30(欧州経済委員会規則第30条)が、車両装着状態にて車幅方向外側となるサイドウォール部に車両装着方向の表示部を設けることを義務付けている。
空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、80[deg]以上100[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
ベルト層14は、複数のベルトプライ141~143を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。ベルトプライ141~143は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを含む。
一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で15[deg]以上55[deg]以下のコード角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のコード角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。また、一対の交差ベルト141、142は、カーカス層13のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
ベルトカバー143は、スチールあるいは有機繊維材から成るベルトカバーコードをコートゴムで被覆して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のコード角度を有する。また、ベルトカバー143は、例えば、1本あるいは複数本のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して成るストリップ材であり、このストリップ材を交差ベルト141、142の外周面に対してタイヤ周方向に複数回かつ螺旋状に巻き付けて構成される。
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
[トレッドパターン]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、オールシーズン用タイヤのトレッド面を示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端であり、寸法記号TWは、タイヤ接地幅である。
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21~24と、これらの周方向主溝21~24に区画された複数の陸部31~35とをトレッド面に備える。
主溝は、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、7.4[mm]以上10.2[mm]以下の溝幅および8.1[mm]以上8.7[mm]以下の溝深さを有する。また、後述するラグ溝は、タイヤ幅方向に延在する横溝であり、タイヤ接地時に開口して溝として機能する。また、後述するサイプは、トレッド踏面に形成された切り込みであり、タイヤ接地時に閉塞する。
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における対向する溝壁間の距離として測定される。切欠部あるいは面取部が溝開口部に形成された構成では、溝幅方向かつ溝深さ方向の断面視におけるトレッド踏面の延長線と溝壁の延長線との交点を測定点として、溝幅が測定される。
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が規定内圧での最大負荷能力の88[%]である。
また、図2の構成では、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域が2本の周方向主溝21、22;23、24をそれぞれ有している。また、これらの周方向主溝21~24が、タイヤ赤道面CLを中心として、左右対称に配置されている。また、これらの周方向主溝21~24により、5列の陸部31~35が区画されている。また、1つの陸部33が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。
しかし、これに限らず、5本以上の周方向主溝が配置されても良いし、周方向主溝がタイヤ赤道面CLを中心として左右非対称に配置されても良い(図示省略)。また、1つの周方向主溝がタイヤ赤道面CL上に配置されることにより、陸部がタイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
また、左右の最外周方向主溝21、24を境界としてタイヤ赤道面CL側にある領域をセンター領域として定義し、タイヤ接地端T側にある左右の領域をショルダー領域として定義する。
また、図2に示すタイヤの車両装着状態にて、車幅方向の最も外側にある周方向主溝21を外側ショルダー主溝として定義し、外側ショルダー主溝21に隣り合う周方向主溝22を外側センター主溝として定義する。また、車幅方向の最も内側にある周方向主溝24を内側ショルダー主溝として定義し、内側ショルダー主溝24に隣り合う周方向主溝23を内側センター主溝として定義する。
図2の構成では、タイヤ赤道面CLから外側および内側のショルダー主溝21、24の溝中心線までの距離Dg1、Dg4が、タイヤ接地幅TWの26[%]以上32[%]以下の範囲にある。また、タイヤ赤道面CLから外側および内側のセンター主溝22、23の溝中心線までの距離が、タイヤ接地幅TWの8[%]以上12[%]以下の範囲にある。
溝中心線は、左右の溝壁間の距離の中点を接続した仮想線として定義される。主溝の溝中心線がジグザグ形状あるいは波状形状を有する場合には、溝中心線の左右の最大振幅位置の中点を通りタイヤ周方向に平行な直線を測定点として、溝中心線までの距離が定義される。
タイヤ接地幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
また、図2において、外側ショルダー主溝21に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部31を外側ショルダー陸部として定義し、タイヤ幅方向内側の陸部32を外側セカンド陸部として定義する。また、内側ショルダー主溝24に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部34を内側ショルダー陸部35として定義し、タイヤ幅方向内側の陸部34を内側セカンド陸部として定義する。また、外側および内側のセカンド陸部32、34の間に配置された陸部33をセンター陸部として定義する。5本以上の周方向主溝を備える構成(図示省略)では、2列以上のセンター陸部が定義される。
[膨出プロファイル]
図3は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッドプロファイルを示す説明図である。同図は、陸部32~34の膨出した踏面を誇張して示している。
図3に示すように、トレッドプロファイル(図中の符号省略)がいわゆる膨出プロファイルであり、トレッド部センター領域にある陸部32~34が、タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッドプロファイルの基準輪郭線Pfからタイヤ径方向外側に部分的に膨出した踏面を有する。
トレッドプロファイルは、タイヤ子午線方向の断面視におけるトレッド面の輪郭線であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にてレーザープロファイラを用いて計測される。レーザープロファイラとしては、例えば、タイヤプロファイル測定装置(株式会社マツオ製)が使用される。
トレッドプロファイルの基準輪郭線は、トレッド部の接地領域にて連続して延在する滑らかな曲線として定義される。具体的には、2~3種類の曲率半径をもつ複数の円弧を組み合わせて成る曲線、または、楕円関数、サイクロイド関数、インボリュート関数、べき関数などの連続関数により、基準輪郭線が定義される。
上記の構成では、トレッド部センター領域の陸部32~34が上記膨出した踏面を有することにより、トレッド部センター領域の接地圧が増加する。これにより、ウェット路面の走行時における陸部32~34の踏面と路面との接地特性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する。
また、トレッド部センター領域にある陸部32~34の膨出した踏面の膨出量G2~G4のそれぞれが、各陸部32~34の幅Wr2~Wr4に対して0.003≦G2/Wr2≦0.020、0.003≦G3/Wr3≦0.020および0.003≦G4/Wr4≦0.020の関係を有する。また、踏面の膨出量G2~G4が、0.1[mm]以上0.5[mm]以下の範囲にあることが好ましく、0.2[mm]以上0.4[mm]以下の範囲にあることがより好ましい。上記下限により、膨出した踏面による陸部32~34の接地圧の増加作用が適正に確保される。また、上記上限により、陸部32~34の中央部とエッジ部との接地圧差が過大となることが抑制される。
踏面の膨出量は、トレッドプロファイルの基準輪郭線から陸部の踏面の最大膨出点までの最大距離として測定される。
陸部の幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、陸部を区画する左右の周方向主溝の溝幅の測定点のタイヤ幅方向の距離として測定される。
また、各陸部32~34の一方のエッジ部から踏面の最大膨出位置までの距離が、各陸部32~34の幅Wr2~Wr4に対して40%~60%の範囲にあることが好ましい。したがって、踏面の最大膨出位置が、陸部32~34の幅の中央部に配置される。
また、外側セカンド陸部32の膨出量G2が、内側セカンド陸部34の膨出量G4に対して0.90≦G2/G4≦1.10の関係を有することが好ましい。したがって、最外周方向主溝21、24に区画された左右のセカンド陸部32、34の膨出量G2、G4が、略等しいことが好ましい。
例えば、図3の構成では、トレッド部センター領域にあるすべての陸部32~34が上記膨出した踏面を有している。また、各陸部32~34の踏面が、各陸部32~34の幅方向の全域に渡って円弧状に膨出している。また、各陸部32~34の左右のエッジ部が、トレッドプロファイルの基準輪郭線Pf上にある。なお、切欠部あるいは面取部が陸部32~34のエッジ部に形成された構成では、陸部の踏面の延長線と主溝の溝壁の延長線との交点が陸部のエッジ部として定義される。
一方で、トレッド部ショルダー領域にある陸部31、35が、上記膨出した踏面を有していない。具体的には、外側ショルダー陸部31および内側ショルダー陸部35の踏面の輪郭線が、トレッドプロファイルの基準輪郭線Pfに一致している。このため、これらの陸部31、35の踏面の膨出量G1、G5が、G1=G5=0[mm]である。しかし、これに限らず、外側ショルダー陸部31および内側ショルダー陸部35が基準輪郭線Pfから膨出した踏面を有しても良い(図示省略)。
[主溝の溝幅]
図3において、外側ショルダー主溝21の溝幅Wg1と、内側センター主溝23の溝幅Wg3と、内側ショルダー主溝24の溝幅Wg4とが、Wg3<Wg1<Wg4の関係を有する。したがって、内側センター主溝23の溝幅Wg3が、最も狭い。また、溝幅Wg1、Wg4が、0.01≦(Wg4-Wg1)/Wg3の関係を有することが好ましい。また、溝幅の比Wg1/Wg3が、1.05≦Wg1/Wg3≦1.25の関係を有することが好ましく、1.05≦Wg1/Wg3≦1.15の関係を有することがより好ましい。また、溝幅の比Wg4/Wg3が、1.10≦Wg4/Wg3≦1.30の関係を有することが好ましく、1.10≦Wg4/Wg3≦1.20の関係を有することがより好ましい。
上記の構成では、内側センター主溝23の溝幅Wg3が狭いので、タイヤ幅方向の内側領域における陸部33、34の剛性が確保されて、ドライ路面でのタイヤの操縦安定性能が向上する。一方で、内側ショルダー主溝24の溝幅Wg4が広く、且つ、内側セカンド陸部34が後述する周方向細溝341を備えることにより、タイヤ幅方向の内側領域における排水性が確保されて、タイヤのウェット性能が確保される。
また、外側センター主溝22の溝幅Wg2が、外側ショルダー主溝21の溝幅Wg1に対してWg1<Wg2の関係を有することが好ましい。また、溝幅Wg1、Wg2、Wg3が、0.01≦(Wg2-Wg1)/Wg3の関係を有することが好ましい。また、外側センター主溝22の溝幅Wg2が、内側センター主溝23の溝幅Wg3に対して1.05≦Wg2/Wg3の関係を有することが好ましく、1.06≦Wg2/Wg3≦1.25の関係を有することがより好ましい。かかる構成では、外側センター主溝22の溝幅Wg2が内側センター主溝23の溝幅Wg3よりも広い(Wg3<Wg2)ので、外側センター主溝22が幅狭構造を有する構成と比較して、車両の通過騒音が低減される。
上記の構成では、外側センター主溝22の溝幅Wg2が車幅方向の最外側にある外側ショルダー主溝21の溝幅Wg1よりも広く(Wg1<Wg2)、また、内側センター主溝23の溝幅Wg3よりも広い(Wg3<Wg2)ので、外側センター主溝22が幅狭構造を有する構成と比較して、車両の通過騒音が低減される。
さらに、外側センター主溝22の溝幅Wg2が、内側ショルダー主溝24の溝幅Wg4に対してWg4<Wg2の関係を有することが好ましい。すなわち、4本の主溝21~24の溝幅が、Wg3<Wg1<Wg4<Wg2の関係を有することが最も好ましい。したがって、内側センター主溝23の溝幅Wg3が最も狭く、外側センター主溝22の溝幅Wg2が最も広いことが好ましい。また、4本の主溝21~24の溝幅が相互に異なることが好ましい。しかし、これに限らず、少なくとも上記したWg3<Wg1<Wg4かつWg3<Wg1<Wg2の関係が満たされれば良い。
[トレッド部センター領域の陸部]
図4は、図2に記載した空気入りタイヤのトレッド部センター領域を示す拡大図である。図5は、図4に記載した内側セカンド陸部のタイヤ子午線方向の断面図である。
図4に示すように、外側セカンド陸部32は、タイヤ幅方向に分断されていない単一のリブであり、タイヤ周方向に連続した踏面を有する。また、外側セカンド陸部32が、第一および第二の外側セカンドラグ溝321、322を備える。
第一外側セカンドラグ溝321は、一方の端部にて外側ショルダー主溝21に開口すると共に他方の端部にて外側セカンド陸部32内で終端する。また、第一外側セカンドラグ溝321の溝幅W21が1.6[mm]以上3.0[mm]以下の範囲にあり、溝深さ(図中の寸法記号省略)が5.9[mm]以上6.5[mm]以下の範囲にある。また、第一外側セカンドラグ溝321のタイヤ周方向に対する傾斜角θ21が、55[deg]以上70[deg]以下の範囲にある。
ラグ溝の傾斜角は、ラグ溝の溝中心線とラグ溝の長手方向の両端部との交点を通る直線のタイヤ周方向に対する傾斜角として測定される。
また、外側セカンド陸部32のタイヤ幅方向外側のエッジ部から第一外側セカンドラグ溝321の終端部までの距離D21が、外側セカンド陸部32の幅Wr2に対して0.20≦D21/Wr2<0.50の関係を有することが好ましく、0.25≦D21/Wr2≦0.40の関係を有することがより好ましい。
陸部のエッジ部からラグ溝の終端部までの距離は、ラグ溝のタイヤ幅方向への延在長さの最大値として測定される。
第二外側セカンドラグ溝322は、一方の端部にて外側センター主溝22に開口すると共に他方の端部にて外側セカンド陸部32内で終端する。また、第二外側セカンドラグ溝322の溝幅W42が1.6[mm]以上3.0[mm]以下の範囲にあり、溝深さ(図中の寸法記号省略)が5.9[mm]以上6.5[mm]以下の範囲にある。また、第二外側セカンドラグ溝322の溝幅W22が、第一外側セカンドラグ溝321の溝幅W21に対して0.90≦W22/W21≦1.10の関係を有する。したがって、第一および第二の外側セカンドラグ溝321、322が、略同一の溝幅W21、W22を有する。
また、第二外側セカンドラグ溝322のタイヤ周方向に対する傾斜角θ22が、55[deg]以上70[deg]以下の範囲にある。また、また、第二外側セカンドラグ溝322の傾斜角θ22が、第一外側セカンドラグ溝321の傾斜角θ21に対して-10[deg]≦θ22-θ21≦10[deg]の関係を有する。したがって、第一および第二の外側セカンドラグ溝321、322が、略同一の傾斜角θ21、θ22を有し、また、タイヤ周方向に対して同一方向に傾斜する。
また、外側セカンド陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部から第二外側セカンドラグ溝322の終端部までの距離D22が、外側セカンド陸部32の幅Wr2に対して0.20≦D22/Wr2<0.50の関係を有することが好ましく、0.25≦D22/Wr2≦0.40の関係を有することがより好ましい。また、第二外側セカンドラグ溝322の距離D22が、第一外側セカンドラグ溝321の距離D21に対して0.90≦D22/D21≦1.10の関係を有する。したがって、第一および第二の外側セカンドラグ溝321、322が、略同一の距離D21、D22を有する。
センター陸部33は、タイヤ幅方向に分断されていない単一のリブであり、タイヤ周方向に連続した踏面を有する。また、センター陸部33が、センターラグ溝331を備える。また、センター陸部33の車幅方向外側のエッジ部が、ラグ溝あるいはサイプに分断されていないプレーン構造を有する。
センターラグ溝331は、一方の端部にて内側センター主溝23に開口すると共に他方の端部にてセンター陸部33内で終端する。また、センターラグ溝331の溝幅W31が1.5[mm]以上2.8[mm]以下の範囲にあり、溝深さ(図中の寸法記号省略)が5.9[mm]以上6.5[mm]以下の範囲にある。また、センターラグ溝331のタイヤ周方向に対する傾斜角θ31が、50[deg]以上70[deg]以下の範囲にある。
また、センター陸部33の車幅方向内側のエッジ部からセンターラグ溝331の終端部までの距離D31が、センター陸部33の幅Wr3に対して0.25≦D31/Wr3<0.50の関係を有することが好ましく、0.30≦D31/Wr3≦0.40の関係を有することがより好ましい。
上記の構成では、トレッド部センター領域の陸部32~34のうちタイヤ赤道面CLから車幅方向外側にある陸部(外側セカンド陸部32およびセンター陸部33)が、タイヤ幅方向に分断されていない単一のリブであるため、ドライ路面での旋回走行時にて大きな荷重を受ける車幅方向外側の陸部32、33の剛性が確保される。これにより、タイヤの操縦安定性能が確保される。
内側セカンド陸部34は、周方向細溝341と、内側セカンドラグ溝342と、サイプあるいは細溝343とを備える。また、内側セカンド陸部34の車幅方向外側のエッジ部が、ラグ溝あるいはサイプに分断されていないプレーン構造を有する。
周方向細溝341は、タイヤ周方向に延在する細溝であり、図4の構成では、一定の溝幅をもつストレート形状を有している。また、周方向細溝341の溝幅W41が、1.0[mm]以上2.0[mm]以下の範囲にある。また、周方向細溝の溝幅W41が、内側セカンド陸部34の幅Wr4に対して0.03≦W41/Wr4≦0.10の関係を有することが好ましく、0.04≦W41/Wr4≦0.07の関係を有することがより好ましい。
また、周方向細溝341の溝深さH41(図5参照)が3.9[mm]以上4.3[mm]以下の範囲にある。周方向細溝341の溝深さH41が、内側ショルダー主溝24の溝深さHg4に対して0.40≦H41/Hg4≦0.60の関係を有する。
また、図4の構成では、周方向細溝341に区画された内側セカンド陸部34のタイヤ赤道面CL側の部分が、細リブ(図中の符号省略)であり、タイヤ周方向に連続した踏面を有している。また、この細リブの左右のエッジ部、すなわちセンター主溝23側のエッジ部および周方向細溝341側のエッジ部が、ラグ溝あるいはサイプの開口部を有さないプレーン構造を有している。
上記の構成では、トレッド部センター領域の車幅方向内側の陸部(内側セカンド陸部34)が陸部33をタイヤ幅方向に分断する周方向細溝341を備えることにより、ウェット路面での走行時にて排水性に大きく寄与する車幅方向の内側領域の溝面積が増加する。これにより、トレッド部センター領域の排水性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する。
また、内側セカンド陸部34のタイヤ赤道面CL側のエッジ部から周方向細溝341の溝中心線までの距離D41が、内側セカンド陸部34の幅Wr4に対して0.20≦D41/Wr4≦0.50の関係を有することが好ましく、0.25≦D41/Wr4≦0.35の関係を有することがより好ましい。したがって、周方向細溝341が、内側セカンド陸部34の中心線に対してタイヤ赤道面CL側に偏って配置される。
内側セカンドラグ溝342は、一方の端部にて内側ショルダー主溝24に開口すると共に他方の端部にて内側セカンド陸部34内で終端する。また、内側セカンドラグ溝342の溝幅W42が1.7[mm]以上3.4[mm]以下の範囲にある。また、内側セカンドラグ溝342の溝幅W42が、第一外側セカンドラグ溝321の溝幅W21に対して0.90≦W42/W21≦1.20の関係を有する。したがって、第一外側セカンドラグ溝321および内側セカンドラグ溝342が、略同一の溝幅W21、W42を有する。
また、内側セカンドラグ溝342の溝深さH42(図5参照)が5.9[mm]以上6.5[mm]以下の範囲にある。また、内側セカンドラグ溝342の溝深さH42が、周方向細溝341の溝深さH41に対して1.40≦H42/H41≦1.60の関係を有する。また、内側セカンドラグ溝342の溝深さH42が、内側ショルダー主溝24の溝深さHg4に対して0.65≦H42/Hg4≦0.80の関係を有する。したがって、内側セカンドラグ溝342が周方向細溝341よりも深く、内側ショルダー主溝24よりも浅い。
また、内側セカンドラグ溝342のタイヤ周方向に対する傾斜角θ42が、60[deg]以上80[deg]以下の範囲にある。また、また、内側セカンドラグ溝342の傾斜角θ22が、第一外側セカンドラグ溝321の傾斜角θ21に対して0[deg]≦θ42-θ21≦20[deg]の関係を有することが好ましく、5[deg]≦θ42-θ21≦15[deg]の関係を有することがより好ましい。また、内側セカンドラグ溝342の傾斜角θ22が、第一外側セカンドラグ溝321の傾斜角θ21よりも大きく(θ21<θ41)、また、タイヤ周方向に対して同一方向に傾斜する。
また、内側セカンド陸部34のタイヤ幅方向外側のエッジ部から内側セカンドラグ溝342の終端部までの距離D42が、内側セカンド陸部34の幅Wr4に対して0.30≦D42/Wr4≦0.50の関係を有することが好ましく、0.30≦D42/Wr4≦0.40の関係を有することがより好ましい。したがって、内側セカンドラグ溝342が、周方向細溝341に対して交差しない。
また、第一外側セカンドラグ溝321の距離D21と内側セカンドラグ溝342の距離D42とが1.01≦D42/D21≦1.20の関係を有することが好ましく、1.02≦D42/D21≦1.10の関係を有することがより好ましい。したがって、内側セカンドラグ溝342の距離D42が、第一外側セカンドラグ溝321の距離D21よりも大きい(D21<D41)ことが好ましい。
また、第二外側セカンドラグ溝322の距離D22と内側セカンドラグ溝342の距離D42とが1.01≦D42/D22≦1.20の関係を有することが好ましく、1.02≦D42/D22≦1.10の関係を有することがより好ましい。したがって、内側セカンドラグ溝342の距離D42が、第二外側セカンドラグ溝322の距離D22よりも大きい(D22<D41)ことが好ましい。
上記の構成では、内側セカンド陸部34が周方向細溝341および内側ショルダー主溝24を備えるので、車幅方向の内側領域における排水性が向上する。また、外側セカンド陸部32が左右のエッジ部にラグ溝321、322をそれぞれ備えるので、車幅方向の外側領域における排水性が向上する。そして、各陸部32、34のラグ溝321、322、342が陸部内で終端するクローズド構造を有することにより、各陸部32、34の剛性が確保される。これらにより、タイヤのウェット性能およびドライ操縦安定性能が両立する。
サイプあるいは細溝343は、内側セカンドラグ溝342から延在して周方向細溝341に開口することにより、これらの溝341、342を接続する。図4の構成では、サイプあるいは細溝343が、内側セカンドラグ溝342の溝中心線の延長線に沿って延在して周方向細溝341に開口している。かかる構成では、サイプあるいは細溝343が周方向細溝341と内側セカンドラグ溝342とを接続することにより、タイヤ転動時における周方向細溝341から内側セカンドラグ溝342への排水作用が効果的に得られる。これにより、車幅方向の内側領域における排水性が向上する。
また、サイプあるいは細溝343の幅W43(図中の寸法記号省略)が、0.4[mm]以上0.8[mm]以下の範囲にある。また、サイプあるいは細溝343の深さH43(図5参照)が、周方向細溝341の溝深さH41に対して0.90≦H43/H41≦1.10の関係を有する。したがって、サイプあるいは細溝343が周方向細溝341に対して同一の深さを有する。
サイプ幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面におけるサイプの最大開口幅として測定される。
サイプ深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面からサイプの最大深さ位置までの距離として測定される。また、サイプが部分的な凹凸部を溝底に有する構成では、これらを除外してサイプ深さが測定される。
また、図2において、外側セカンド陸部32およびセンター陸部33の車幅方向内側のエッジ部に開口するラグ溝322、331が、内側セカンド陸部34のラグ溝342の延長線上に配置される。これにより、トレッド部センター領域の排水性が高められる。一方で、外側セカンド陸部32の車幅方向外側のエッジ部に開口するラグ溝321が、車幅方向内側のエッジ部に開口するラグ溝322に対してタイヤ周方向にオフセットして配置される。これにより、外側セカンド陸部32のタイヤ周方向の剛性分布が均一化されて陸部の偏摩耗が抑制され、また、ラグ溝321、322の配置に起因するパターンノイズが低減される。
しかし、これに限らず、外側セカンド陸部32およびセンター陸部33のラグ溝322、331が、内側セカンド陸部34のラグ溝342の延長線からオフセットして配置されても良い(図示省略)。また、双方のラグ溝322、331が、内側セカンド陸部34のラグ溝342の延長線に対してタイヤ周方向で同一方向にオフセットすることが好ましい。
また、外側セカンド陸部32の幅Wr2、センター陸部33の幅Wr3および内側セカンド陸部34の幅Wr4が、略同一であることが好ましい。具体的には、幅Wr2~Wr4の比が95[%]以上105[%]以下の範囲にあることが好ましい。特に、センター陸部33の幅Wr3が、外側セカンド陸部32の幅Wr2および内側セカンド陸部34の幅Wr4に対して95[%]以上105[%]以下の範囲にある。これにより、トレッド部センター領域の陸部32~34の剛性が均一化されて、タイヤの耐偏摩耗性およびユニフォミティが向上する。
[トレッド部ショルダー領域の陸部]
図2において、外側ショルダー陸部31が、外側ショルダーラグ溝311を備える。外側ショルダーラグ溝311は、一方の端部にて外側ショルダー陸部31の内部で終端し、タイヤ接地端Tを越えてタイヤ幅方向に延在する。また、外側ショルダーラグ溝311の溝幅(図中の寸法記号省略)が1.5[mm]以上4.0[mm]以下の範囲にあり、溝深さ(図中の寸法記号省略)が5.9[mm]以上6.5[mm]以下の範囲にある。
また、内側ショルダー陸部35が、周方向細溝351と、内側ショルダーラグ溝352とを備える。周方向細溝351は、タイヤ周方向に延在するストレート形状の細溝であり、内側ショルダー陸部35の接地面の中心線に対してタイヤ赤道面CL側に偏って配置される。また、周方向細溝351の溝幅(図中の寸法記号省略)が1.0[mm]以上2.0[mm]以下の範囲にあり、溝深さ(図中の寸法記号省略)が3.9[mm]以上4.3[mm]以下の範囲にある。内側ショルダーラグ溝352は、一方の端部にて内側ショルダー陸部35の内部で終端し、タイヤ接地端Tを越えてタイヤ幅方向に延在する。また、内側ショルダーラグ溝352の溝幅(図中の寸法記号省略)が1.5[mm]以上4.0[mm]以下の範囲にあり、溝深さ(図中の寸法記号省略)が5.9[mm]以上6.5[mm]以下の範囲にある。
[変形例]
図6は、図2に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、トレッド部の車幅方向内側領域の平面図を示している。
図2の構成では、図4に示すように、外側ショルダー陸部31の外側ショルダー主溝21側のエッジ部が、ラグ溝あるいはサイプに分断されていないプレーン構造を有する。かかる構成では、外側ショルダー陸部31の剛性が高まり、タイヤの旋回性能が向上する点で好ましい。
これに対して、図6の構成では、外側ショルダー陸部31が、上記した外側ショルダーラグ溝311と、第二の外側ショルダーラグ溝312と、サイプ313とを備える。
第二の外側ショルダーラグ溝312は、外側ショルダー主溝21側のエッジ部に形成され、一方の端部にて外側ショルダー陸部31内で終端すると共に他方の端部にて外側ショルダー主溝21に開口する。また、第一の外側ショルダーラグ溝311と第二の外側ショルダーラグ溝312とが、タイヤ周方向に交互に配置される。また、第二の外側ショルダーラグ溝312が、外側セカンド陸部32の第一の外側セカンドラグ溝321の溝中心線の延長線(図示省略)上に配置される。このため、第二の外側ショルダーラグ溝312が、第一の外側セカンドラグ溝321と同一方向に傾斜する。
また、第二の外側ショルダーラグ溝312の溝幅W12(図6参照)が、第一の外側ショルダーラグ溝311の溝幅W11に対して0.95≦W12/W11≦1.05の関係を有することが好ましい。また、第二の外側ショルダーラグ溝312の溝深さH12(図示省略)が、第一の外側ショルダーラグ溝311の溝深さH11に対して0.95≦H12/H11≦1.05の関係を有することが好ましい。したがって、第一および第二のショルダーラグ溝311、312が略同一の溝幅および溝深さを有する。
また、外側ショルダー陸部31の外側ショルダー主溝21側のエッジ部から第二の外側ショルダーラグ溝312の終端部までの距離D12が、外側ショルダー陸部31の幅Wr1に対して0.15≦D12/Wr1≦0.25の関係を有することが好ましく、0.18≦D12/Wr1≦0.20の関係を有することがより好ましい。また、第一および第二のショルダーラグ溝311、312がタイヤ幅方向に相互にオーバーラップしても良いし(図6参照)、オーバーラップしなくとも良い(図示省略)。
さらに、外側ショルダー陸部31が、第二の外側ショルダーラグ溝312の終端部からタイヤ幅方向に延在するサイプ313を備える。例えば、図6の構成では、サイプ313が、第二の外側ショルダーラグ溝312の溝中心線に沿って延在して、第二の外側ショルダーラグ溝312を延長している。これにより、タイヤのウェット性能が向上する。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向の指定を有する(図1および図2参照)。また、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する外側ショルダー主溝21、外側センター主溝22、内側センター主溝23および内側ショルダー主溝24と、これらの主溝21~24に区画されて成る外側ショルダー陸部31、外側セカンド陸部32、センター陸部33、内側セカンド陸部34および内側ショルダー陸部35とを備える。また、外側セカンド陸部32、センター陸部33および内側セカンド陸部34が、タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッドプロファイルの基準輪郭線Pfからタイヤ径方向外側に部分的に膨出した踏面を有する(図3参照)。また、外側セカンド陸部32およびセンター陸部33が、タイヤ幅方向に分断されていない単一のリブである(図4参照)。また、内側セカンド陸部34が、内側セカンド陸部34をタイヤ幅方向に分断する周方向細溝341を備える。
かかる構成では、(1)トレッド部センター領域の陸部32~34が上記膨出した踏面を備えることにより、トレッド部センター領域の接地圧が増加する。これにより、ウェット路面での走行時における陸部32~34の踏面と路面との接地特性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。
また、(2)トレッド部センター領域の陸部32~34のうちタイヤ赤道面CLから車幅方向外側にある陸部(外側セカンド陸部32およびセンター陸部33)がタイヤ幅方向に分断されていない単一のリブであるため、ドライ路面での旋回走行時にて大きな荷重を受ける車幅方向外側の陸部32、33の剛性が確保される。これにより、タイヤの操縦安定性能が確保される利点がある。特に、陸部32、33が上記膨出した踏面を備える構成では、上記のように陸部32、33の踏面の接地圧が増加する。したがって、これらの陸部32、33がリブ構造を有することにより、タイヤの操縦安定性能が効果的に確保される利点がある。
一方で、(3)トレッド部センター領域の車幅方向内側の陸部(内側セカンド陸部34)が陸部33をタイヤ幅方向に分断する周方向細溝341を備えることにより、ウェット路面での走行時にて排水性に大きく寄与する車幅方向の内側領域の溝面積が増加する。これにより、トレッド部センター領域の排水性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。特に、陸部34が上記膨出した踏面を備える構成では、上記のように陸部32、33の踏面の接地圧が増加する。したがって、陸部34が周方向細溝341を備えることにより、タイヤのウェット性能が効果的に向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、外側ショルダー主溝21の溝幅Wg1と、内側センター主溝23の溝幅Wg3と、内側ショルダー主溝24の溝幅Wg4とが、Wg3<Wg1<Wg4、1.05≦Wg1/Wg3≦1.25および1.10≦Wg4/Wg3≦1.30の関係を有する(図3参照)。上記の構成では、(1)内側センター主溝23の溝幅Wg3が狭いので、タイヤ幅方向の内側領域における陸部33、34の剛性が確保されて、ドライ路面でのタイヤの操縦安定性能が向上する利点がある。一方で、(2)内側ショルダー主溝24の溝幅Wg4が広く、且つ、内側セカンド陸部34が周方向細溝341を備えることにより、タイヤ幅方向の内側領域における排水性が確保されて、タイヤのウェット性能が確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、外側センター主溝22の溝幅Wg2が、外側ショルダー主溝21の溝幅Wg1および内側センター主溝23の溝幅Wg3に対してWg1<Wg2および0.01≦(Wg2-Wg1)/Wg3の関係を有する(図3参照)。上記の構成では、外側センター主溝22の溝幅Wg2が車幅方向の最外側にある外側ショルダー主溝21の溝幅Wg1よりも広い(Wg1<Wg2)ので、外側センター主溝22が幅狭構造を有する構成と比較して、車両通過騒音が低減される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、内側セカンド陸部34のタイヤ赤道面CL側のエッジ部から周方向細溝341の溝中心線までの距離D41が、内側セカンド陸部34の幅Wr4に対して0.20≦D41/Wr4≦0.50の関係を有する(図4参照)。かかる構成では、周方向細溝341が内側セカンド陸部34の中心線に対してタイヤ赤道面CL側に偏って配置されるので、周方向細溝が高い接地圧をもつ陸部の中心線上に配置される構成(図示省略)と比較して、周方向細溝の排水作用が向上する利点がある。また、周方向細溝341が内側セカンド陸部34の中心線からタイヤ幅方向外側に配置される構成と比較して、タイヤ幅方向への接地外力が作用したときの周方向細溝341の溝幅の減少が抑制されて、周方向細溝341の排水作用が確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、周方向細溝341の溝幅W41が、内側セカンド陸部34の幅Wr4に対して0.03≦W41/Wr4≦0.10の関係を有する(図4参照)。上記下限により、周方向細溝341の溝幅W41が確保されて、周方向細溝341の排水作用が確保される利点がある。また、上記上限により、周方向細溝341の配置に起因する陸部34の剛性低下が抑制される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、周方向細溝341に区画された内側セカンド陸部34のタイヤ赤道面CL側の部分が、タイヤ周方向に連続した踏面を有する細リブ(図中の符号省略)である(図4参照)。かかる構成では、周方向細溝341に区画された上記部分がラグ溝あるいはサイプによりタイヤ周方向に分断されたブロック列である構成と比較して、内側セカンド陸部34の剛性が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、内側セカンド陸部34が、一方の端部にて内側ショルダー主溝24に開口すると共に他方の端部にて内側セカンド陸部34内で終端する内側セカンドラグ溝342を備える(図4参照)。また、外側セカンド陸部32が、一方の端部にて外側ショルダー主溝21に開口すると共に他方の端部にて外側セカンド陸部32内で終端する第一外側セカンドラグ溝321と、一方の端部にて外側センター主溝22に開口すると共に他方の端部にて外側セカンド陸部32内で終端する第二外側セカンドラグ溝322とを備える。かかる構成では、内側セカンド陸部34が周方向細溝341および内側ショルダー主溝24を備えるので、車幅方向の内側領域における排水性が向上する。また、外側セカンド陸部32が左右のエッジ部にラグ溝321、322をそれぞれ備えるので、車幅方向の外側領域における排水性が向上する。そして、各陸部32、34のラグ溝321、322、342が陸部内で終端するクローズド構造を有することにより、各陸部32、34の剛性が確保される。これらにより、タイヤのウェット性能およびドライ操縦安定性能が両立する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、内側セカンド陸部34のタイヤ幅方向外側のエッジ部から内側セカンドラグ溝342の終端部までの距離D42が、内側セカンド陸部34の幅Wr4に対して0.30≦D42/Wr4≦0.50の関係を有する(図4参照)。これにより、内側セカンドラグ溝342の延在長さが適正化される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、外側セカンド陸部32のタイヤ幅方向外側のエッジ部から第一外側セカンドラグ溝321の終端部までの距離D21が、外側セカンド陸部32の幅Wr2に対してD21/Wr2<0.50の関係を有する(図2参照)。これにより、第一外側セカンドラグ溝321の延在長さが適正化される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、第一外側セカンドラグ溝321の距離D21が、内側セカンドラグ溝342の距離D42に対して1.01≦D42/D21≦1.20の関係を有する(図4参照)。かかる構成では、車幅方向の内側領域にあるラグ溝342の延在長さが外側領域にあるラグ溝321の溝長さよりも大きいので、タイヤのウェット性能の向上作用が効果的に得られる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、外側セカンド陸部32のタイヤ赤道面CL側のエッジ部から第二外側セカンドラグ溝322の終端部までの距離D22が、外側セカンド陸部32の幅Wr2に対してD22/Wr2<0.50の関係を有する(図4参照)。これにより、第二外側セカンドラグ溝322の延在長さが適正化される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、第二外側セカンドラグ溝322の距離D22と内側セカンドラグ溝342の距離D42とが、1.01≦D42/D22≦1.20の関係を有する(図4参照)。かかる構成では、車幅方向の内側領域にあるラグ溝342の延在長さが外側領域にあるラグ溝322の溝長さよりも大きいので、タイヤのウェット性能の向上作用が効果的に得られる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、内側セカンド陸部34が、内側セカンドラグ溝342から延在して周方向細溝341に開口するサイプあるいは細溝343を備える(図4参照)。かかる構成では、サイプあるいは細溝343が周方向細溝341と内側セカンドラグ溝342とを接続することにより、タイヤ転動時における周方向細溝341から内側セカンドラグ溝342への排水作用が効果的に得られる。これにより、車幅方向の内側領域における排水性が向上して、タイヤのウェット性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、外側ショルダー陸部31および内側ショルダー陸部35が、前記膨出した踏面を有さない(図3参照)。かかる構成では、トレッド部センター領域の陸部32~34が上記膨出した踏面を有する一方でトレッドショルダー領域の陸部31、35が上記膨出した踏面を有さないことにより、コーナリング時に荷重の掛かるトレッド部ショルダー領域とセンター領域との接地圧差が均一化される。これにより、コーナリング時のドライ操縦安定性が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、センター陸部33が、一方の端部にて内側センター主溝23に開口すると共に他方の端部にてセンター陸部33内で終端するセンターラグ溝331を備える。また、センター陸部33の幅Wr3が、外側セカンド陸部32の幅Wr2および内側セカンド陸部34の幅Wr4に対して95[%]以上105[%]以下の範囲にある。これにより、トレッド部センター領域の陸部32~34の剛性が均一化されて、タイヤの耐偏摩耗性およびユニフォミティが向上する利点がある。
図7は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)ウェット制動性能および(2)ドライ操縦安定性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ225/65R17 102Hの試験タイヤがリムサイズ17×6.5Jのリムに組み付けられ、この試験タイヤに230[kPa]の内圧およびJATMAの規定荷重が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である排気量2000[cc]かつFF(Front engine Front drive)方式のCUV(Crossover Utility Vehicle)の総輪に装着される。
(1)ウェット制動性能に関する評価では、試験車両が水深1[mm]で散水したアスファルト路を走行し、初速度100[km/h]からの制動距離が測定される。そして、測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。評価は、その数値が大きいほど好ましい。
(2)操縦安定性能に関する評価では、試験車両が平坦な周回路を有するドライ路面のテストコースを60[km/h]~100[km/h]で走行する。そして、テストドライバーがレーンチェンジ時およびコーナリング時における操舵性ならびに直進時における安定性について官能評価を行う。この評価は従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
実施例の試験タイヤは、図1~図3の構成を備え、主溝21~24の溝深さが8.1[mm]であり、最も狭い主溝23の溝幅Wg3が8.2[mm]である。また、トレッド部センター領域の陸部32~34がトレッドプロファイルの基準輪郭線Pfから膨出した踏面を有し、その膨出量G2~G4が0.3[mm]である。また、外側セカンド陸部32が第一および第二の外側セカンドラグ溝321、322を有し、センター陸部33がセンターラグ溝331を有し、内側セカンド陸部34が周方向細溝341、内側セカンドラグ溝342およびサイプ343を有する。また、トレッド部センター領域の陸部32~34の幅Wr2、Wr3、Wr4が、23.0[mm]である。また、周方向細溝341の溝深さH41が4.0[mm]である。
従来例の試験タイヤは、特許第5790876号公報と同様なトレッドパターンを有し、実施例1の試験タイヤと比較して、(1)外側ショルダーラグ溝511が外側ショルダー陸部31を貫通している点、(2)外側セカンド陸部32が第一外側セカンドラグ溝321を有していない点、(3)内側セカンド陸部34が周方向細溝341およびサイプ343を有していない点、および、(4)内側ショルダー陸部35が周方向細溝351を備えていない点で、相異する。
試験結果が示すように、実施例1~20の試験タイヤでは、タイヤのウェット制動性能およびドライ操縦安定性能が向上することが分かる。