JP7236850B2 - 操舵機能付ハブユニットおよびこれを備えた車両 - Google Patents
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Description
車両のジオメトリには、(1) 左右輪の切れ角度が同じである「パラレルジオメトリ」、(2) 旋回中心を1か所にするために旋回内輪車輪角度を旋回外輪車輪角度よりも大きく切る「アッカーマンジオメトリ」が知られている。
特許文献1では、ナックルアームとジョイントとの位置を相対的に変化させてステアリングジオメトリを変化させているが、このような部分で車両のジオメトリを変化させるほどの大きな力を得るモータアクチュエータを備えることは、空間の制約上、非常に困難である。また、このナックルアームとジョイントとの位置での変化による車輪角の変化が小さく、大きな効果を得るためには、ナックルアームとジョイントとの位置を大きく変化させる、つまり大きく動かす必要がある。
特許文献3は、4輪独立転舵の車両にしか適用できず、また転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行Gの発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。
また、転舵軸上に減速機を設けた場合、大きな動力が必要となる。このため、モータを大きくするが、モータを大きくすると車輪の内周部に全体を配置することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
また、キングピン軸と補助的な操舵機能を備えた機構の転舵軸が一致する場合は、構成要素部品がハブユニットの後方(車体側)に配置されるために全体のサイズが大きくなり重くなる。
操舵機能を備えた機構を車輪内の限られたスペースに収容するためには、小型化が必要であるが、各部の強度が不足する懸念がある。特に、路面からの大きな衝撃力を受け止める転舵軸は最も影響を受けやすく、強度および信頼性の確保が難しい。
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下の前記転舵軸部の転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記上下の前記転舵軸部の外周における少なくとも根元部に、表面硬化処理層が設けられている。
転舵軸部の外周の表面硬化処理層が例えばマルテンサイトになっていることで耐摩耗性の向上を図り、転舵軸部の内部の層は硬化しないことからじん性を維持し得る。表面硬化処理層には高い圧縮残留応力が存在するため、同時に疲労強度の向上も図れる。
また、転舵軸部には主に曲げ方向の力が作用し、表層の応力がより高くなることから、表面を硬化処理することは疲労強度を高めることに有効である。
したがって、操舵機能付ハブユニットの小型化を図って操舵機能付ハブユニットの一部を車輪内の限られたスペースに収容することが可能となり、また路面等からの大きな衝撃力に対する強度および信頼性を向上させた操舵機能付ハブユニットを得ることができる。
この場合、表面硬化処理を施す転舵軸部の材質として、高炭素鋼が適用される。また前記高周波焼入れにより、転舵軸部の外周における一部分のみに表面硬化処理層を容易に設けることができる。
この場合、表面硬化処理を施す転舵軸部の材質として、高炭素鋼が適用される。また前記レーザー焼入れにより、転舵軸部の外周における一部分のみに表面硬化処理層を容易に設けることができる。
そのため、この発明の操舵機能付ハブユニットにつき前述した各効果が得られる。前輪は一般的に操舵輪とされるが、操舵輪にこの発明の操舵機能付ハブユニットを適用した場合は、走行中におけるトー角調整に効果的である。また、後輪は一般的に非操舵輪とされるが、非操舵輪に適用した場合は、非操舵輪の若干の操舵によって低速走行時における最小回転半径の低減を図ることができる。
この発明の実施形態に係る操舵機能付ハブユニットを図1ないし図8と共に説明する。
<操舵機能付ハブユニットの概略構造>
図1に示すように、この操舵機能付ハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、操舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。このユニット支持部材3のインボード側に、操舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。操舵機能付ハブユニット1を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。なお、操舵機能付ハブユニット1を単に、ハブユニット1と言う場合がある。
この操舵機能付ハブユニット1は、この実施形態では操舵輪、具体的には図8に示すように、車両10の前輪9Fのステアリング装置11による操舵に付加して左右輪個別に微小な角度を操舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。
図1に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の操舵力受け部であるアーム部17(図3)とを備える。
図6に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図1)とを繋ぐ役目をしている。
図6および図7に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、テーパころ軸受が適用されている。転がり軸受は、転舵軸部16bの外周における一定径部16baに嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
図1に示すように、車両の通常走行時の縁石への乗り上げ等、タイヤ9bまたはホイール9aが路面上の障害物へ衝突した際、または過度な急旋回時に過大な衝撃力Fが発生する。この衝撃力Fのうち、特に、タイヤ9bの接地面に車両進行方向に対して横方向に作用する力は、車両の緩衝装置が吸収できないため、ハブユニット1に大きなモーメント力F1として伝達される。また、通常の走行時においても、旋回力F2または路面からの反力F3がハブユニット1に様々な方向から常用的に繰り返し入力される。
そこで、図7(図1のVII部の拡大図)に示すように、転舵軸部16bの外周における一定径部16ba、拡径部16bb、および円環部16aの外周面における根元部Nmの周辺部Prに渡って、表面硬化処理層Sfを設けている。根元部Nmは、転舵軸部16bの拡径部16bbと、この拡径部16bbに繋がる一定径部16baにおける基端から先端側に定められた距離離れた範囲を含む。前記周辺部Prは、具体的には、拡径部16bbの外径側縁部から、円環部16aにおける外周面のOリング溝28の直前までの範囲である。
図3に示すように、操舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図1)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図2に示すように、アクチュエータ本体7は、モータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
以上説明した操舵機能付ハブユニット1によれば、車輪9を支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、アクチュエータ本体7の駆動により、転舵軸心A回りに自由に回転させることができる。つまり、ハブユニット本体2は、操舵用アクチュエータ5の直動出力部25aをモータ26の駆動により進退させることで、直動出力部25aに連結されたアーム部17を介して回転させられる。
さらに直線走行時にも、それぞれの場面に合わせてトー角度の量を調整することで、走行抵抗を下げ燃費を悪化させることなく、走行安定性を確保するなど調整が可能である。
転舵軸部16bの外周の表面硬化処理層Sfが例えばマルテンサイトになっていることで耐摩耗性の向上を図り、転舵軸部16bの内部の層は硬化しないことからじん性を維持し得る。表面硬化処理層Sfには高い圧縮残留応力が存在するため、同時に疲労強度の向上も図れる。
また、転舵軸部16bには主に曲げ方向の力が作用し、表層の応力がより高くなることから、表面を硬化処理することは疲労強度を高めることに有効である。
したがって、操舵機能付ハブユニット1の小型化を図って操舵機能付ハブユニット1の一部を車輪9内の限られたスペースに収容することが可能となり、また路面等からの大きな衝撃力に対する強度および信頼性を向上させた操舵機能付ハブユニット1を得ることができる。
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
円環部16aと外輪19とが同一材料から一体に形成されたものであってもよい。この場合、外輪19に対する表面硬化処理と共に、転舵軸部16bの表面硬化処理を同時に行うことができるため、作業工数の低減を図れる。
ユニット支持部材3を、足回りフレーム部品に別体に構成し、この足回りフレーム部品にユニット支持部材3を着脱自在に設けてもよい。
操舵機能付ハブユニット1は、非操舵輪に対して用いてもよい。例えば、図9に示すように、前輪操舵の車両において、後輪9Rを支持する懸架装置12Rの車輪用軸受設置部となる足回りフレーム部品6Rに設定し、後輪操舵に用いてもよい。
その他図10に示すように、操舵機能付ハブユニット1を、操舵輪である左右の前輪9F,9Fおよび非操舵輪である左右の後輪9R,9Rにそれぞれ用いてもよい。
図3に示すように、この操舵システムは、いずれかの実施形態に係る操舵機能付ハブユニット1と、この操舵機能付ハブユニット1の操舵用アクチュエータ5を制御する制御装置29とを備える。制御装置29は、操舵制御部30と、アクチュエータ駆動制御部31とを有する。操舵制御部30は、上位制御部32から与えられた補助操舵角指令信号(操舵角指令信号)に応じた電流指令信号を出力する。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
Claims (9)
- 車輪を支持するハブベアリングおよびこのハブベアリングの固定輪の外周から上下にそれぞれ突出する転舵軸部を有するハブユニット本体と、
懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下の前記転舵軸部の転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる操舵用アクチュエータと、を備え、
前記上下の前記転舵軸部の外周における少なくとも根元部に、表面硬化処理層が設けられ、前記転舵軸部は、基端が前記固定輪の外周面側に向かうに従って大径となるテーパ状に拡径した拡径部で構成され、前記根元部は、前記拡径部を含む操舵機能付ハブユニット。 - 請求項1に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記表面硬化処理層は、前記固定輪の外周面における前記転舵軸部の前記根元部の周辺部に渡って設けられている操舵機能付ハブユニット。
- 請求項1または請求項2に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記ハブユニット本体は、前記固定輪の外周面に設けられた円環部と、この円環部の外周から上下にそれぞれ突出する前記転舵軸部とを有する操舵機能付ハブユニット。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記表面硬化処理層は、前記各転舵軸部の外周に浸炭焼入れが施された層である操舵機能付ハブユニット。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記表面硬化処理層は、前記各転舵軸部の外周における定められた箇所に高周波焼入れが施された層である操舵機能付ハブユニット。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記表面硬化処理層は、前記各転舵軸部の外周における定められた箇所にレーザー焼入れが施された層である操舵機能付ハブユニット。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記表面硬化処理層は、前記各転舵軸部の外周にガス軟窒化処理または塩浴軟窒化処理が施された層である操舵機能付ハブユニット。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の操舵機能付ハブユニットにおいて、前記表面硬化処理層は、前記各転舵軸部の外周にショットピーニングが施された層を含む操舵機能付ハブユニット。
- 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の操舵機能付ハブユニットを用いて前輪および後輪のいずれか一方または両方が支持された車両。
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