車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が存在することを指す。また、本明細書では、寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念として用いている。以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置に組み付けられた状態での方向を表す。
以下の説明において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。ただし、下記において説明する減速装置3(減速装置3を構成する各遊星歯車機構)及び差動歯車装置4において、各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該装置或いは機構が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100は、回転電機2と、回転電機2と同軸上に配置されて、回転電機2の側から伝達される駆動力を一対の車輪500に分配する差動歯車装置4と、を備えている。回転電機2は、一対の車輪500(第1車輪501及び第2車輪502)の駆動力源である。本実施形態では、車両用駆動装置100は、回転電機2の回転を減速する減速装置3を備えており、差動歯車装置4は、減速装置3を介して伝達される回転電機2からの駆動力を第1車輪501と第2車輪502とに分配する。車両用駆動装置100は、例えば、内燃機関及び回転電機を第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源とするハイブリッド自動車や、回転電機を第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源とする電気自動車に搭載される駆動装置である。図1及び図2に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1車輪501及び第2車輪502の駆動力源として回転電機2のみを備えている。2輪駆動の4輪車の場合には、これによって電気自動車が実現できる。また、4輪駆動の4輪車の場合には、他の2輪を内燃機関の駆動力によって駆動することでハイブリッド車両が実現できる。当然ながら、4輪駆動の4輪車の場合には、本実施形態の車両用駆動装置100を他の2輪にも適用することで、4輪駆動の電気自動車を実現することもできる。
図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100が搭載される車両には、第1車輪501と一体的に回転するように連結される第1ドライブシャフト51と、第2車輪502と一体的に回転するように連結される第2ドライブシャフト52とが設けられる。そして、差動歯車装置4が備える2つの分配出力要素の一方(後述する第1サイドギヤB1)が、第1ドライブシャフト51と一体的に回転するように連結(本実施形態では、連結軸53を介して連結)されていると共に、当該2つの分配出力要素の他方(後述する第2サイドギヤB2)が、第2ドライブシャフト52と一体的に回転するように連結されている。よって、減速装置3を介して差動歯車装置4に伝達される回転電機2からの駆動力は、差動歯車装置4によって第1ドライブシャフト51と第2ドライブシャフト52とに分配されることで、第1車輪501と第2車輪502とに分配される。
減速装置3及び差動歯車装置4は、回転電機2と同軸に配置されている。本実施形態では、回転電機2、減速装置3、差動歯車装置4、第1ドライブシャフト51、第2ドライブシャフト52、及び連結軸53が、回転電機2のロータ軸27を基準として同軸配置されている。従って、回転電機2のロータ軸27の軸方向は、車両用駆動装置100の回転軸の軸方向と等価であり、回転電機2のロータ軸27の径方向は、車両用駆動装置100の径方向と等価であり、回転電機2のロータ軸27の周方向は、車両用駆動装置100の周方向と等価である。従って、回転電機2のロータ軸27の軸方向を車両用駆動装置100の軸方向Lと称し、回転電機2のロータ軸27の径方向を車両用駆動装置100の径方向Rと称する。また、以下の説明では、特に明記している場合を除き、周方向は、回転電機2のロータ軸27の周方向を意味する。減速装置3は、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置されている。そして、軸方向Lにおける差動歯車装置4に対して回転電機2が配置される側を軸方向第1側L1と称し、軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側を軸方向第2側L2と称する。図3に示すように、軸方向第1側L1は、軸方向Lにおける第2排出孔42に対して第1排出孔41が配置される側と一致する。第1排出孔41及び第2排出孔42については後述する。また、径方向Rにおいて、ロータ軸27とは反対側(すなわち、径方向Rの外側)を径方向外側R1と称し、ロータ軸27側(すなわち、径方向Rの内側)を径方向内側R2と称する。
図1に示すように、車両用駆動装置100は、回転電機2、減速装置3、及び差動歯車装置4を収容するケース1を備えている。本実施形態では、ケース1は、回転電機2、減速装置3、差動歯車装置4、第1ドライブシャフト51の一部(軸方向第2側L2の端部)、第2ドライブシャフト52の一部(軸方向第1側L1の端部)、及び連結軸53を内部に収容している。ケース1の内部において、軸方向第1側L1から順に、回転電機2、減速装置3、及び差動歯車装置4が配置されている。
本実施形態では、ケース1は、軸方向Lの両側が開口した筒状の第1ケース部11と、第1ケース部11の軸方向第2側L2の開口部を覆うように配置される有底筒状の第2ケース部12と、第1ケース部11の軸方向第1側L1の開口部を覆うように配置される円盤状の第3ケース部13と、を備えている。第1ケース部11と第2ケース部12とは、ボルト等の連結部材によって互いに連結され、第1ケース部11と第3ケース部13とは、ボルト等の連結部材によって互いに連結されている。そして、第1ケース部11を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、連結軸53が挿入され、第3ケース部13を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、第1ドライブシャフト51が挿入された状態で、連結軸53と第1ドライブシャフト51とが互いに連結されている。また、第2ケース部12を軸方向Lに貫通するように形成された貫通孔に、第2ドライブシャフト52が挿入されている。
本実施形態では、ケース1は、支持部材14を更に有している。支持部材14は、軸方向Lにおける回転電機2と差動歯車装置4との間に配置されており、ケース1の内部に配置される部材を支持する。後述するように、支持部材14は、減速装置3が備える非回転要素(本実施形態では、後述する第1リングギヤR31及び第2リングギヤR32)をケース1に対して回転不能に支持するために用いられている。また、支持部材14は、回転電機2のロータ軸27を回転可能に支持するためや、第2キャリヤC32或いは差動ケースDを回転可能に支持するために用いられている。本例では、支持部材14は、第1リングギヤR31及びロータ軸27を支持する第1支持材141と、第2リングギヤR32及び第2キャリヤC32(或いは差動ケースD)を支持する第2支持材142とを、各別に備えている。そして、第1支持材141及び第2支持材142の一方(本例では、第1支持材141)が、ケース1(本例では、第1ケース部11)に一体的に固定されていると共に、第1支持材141と第2支持材142とが互いに一体的に固定されている。
回転電機2は、ステータ24と、ステータ24に対して回転可能に支持されるロータ21と、ロータコア22と、ロータコア22に連結されたロータ軸27と、を備える。本実施形態では、回転電機2は、インナロータ型の回転電機であり、ロータ21が備えるロータコア22は、ステータ24が備えるステータコア25に対して径方向内側R2であって径方向Rに沿った径方向視でステータコア25と重複するように配置されている。また、本実施形態では、回転電機2は、永久磁石型回転電機であり、ロータコア22の内部には永久磁石23が配置されている。ステータコア25にはコイルが巻装されており、ステータコア25から軸方向Lに突出するコイルの部分であるコイルエンド部26が、ステータコア25に対して軸方向Lの両側に形成されている。以下では、ステータコア25に対して軸方向第1側L1に形成されるコイルエンド部26を第1コイルエンド部26aとし、ステータコア25に対して軸方向第2側L2に形成されるコイルエンド部26を第2コイルエンド部26bとする。なお、本実施形態では、回転電機2は永久磁石型回転電機であるが、例えば誘導型回転電機など他の方式の回転電機であっても良い。
ロータ軸27は、軸方向Lに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されている。ここで、「筒状(円筒状)」とは、多少の異形部分を有していたとしてもその全体としての概略形状が筒(円筒)であることを意味する(本明細書において、形状等に関して「状」を付して用いる他の表現に関しても同趣旨である)。ロータ軸27は、ロータコア22の径方向内側R2を軸方向Lに貫通して配置されている。ロータ軸27は、ロータコア22と一体的に回転するように連結されている。図3に示すように、本実施形態では、ロータコア22は、一対のエンドプレート28により軸方向Lの両側から挟持された状態で、ロータ軸27に固定されている。以下では、ロータコア22に対して軸方向第1側L1に配置されるエンドプレート28を第1エンドプレート28aとし、ロータコア22に対して軸方向第2側L2に配置されるエンドプレート28を第2エンドプレート28bとする。ロータコア22は、ロータ軸27の外周面に固定されることで、ロータ軸27に熱伝達可能に接している。ロータ軸27におけるロータコア22に対して軸方向第1側L1に突出した部分は、第1軸受61を介して、ケース1の第1ケース部11に回転可能に支持されている。ロータ軸27におけるロータコア22に対して軸方向第2側L2に突出した部分は、第2軸受62を介して、支持部材14(本例では、第1支持材141)に回転可能に支持されている。
減速装置3は、回転電機2の回転を減速して差動歯車装置4に駆動力を伝達する。図1及び図2に示すように、本実施形態では、減速装置3は、第1遊星歯車機構31と、第2遊星歯車機構32とを有している。第1遊星歯車機構31は、動力伝達経路の順で、第2遊星歯車機構32よりも回転電機2の側に配置されている。第1遊星歯車機構31及び第2遊星歯車機構32はいずれも減速機構として構成され、第1遊星歯車機構31によって減速された回転電機2の回転が、第2遊星歯車機構32によって更に減速されて、差動歯車装置4に伝達される。
第1遊星歯車機構31は、回転電機2に駆動連結される回転要素(入力要素)と、第2遊星歯車機構32(第2遊星歯車機構32の入力要素)に駆動連結される回転要素(出力要素)とを有しており、入力要素に伝達される回転電機2の回転を減速して出力要素から第2遊星歯車機構32に伝達する。本実施形態では、第1遊星歯車機構31は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、第1サンギヤS31と、第1リングギヤR31と、第1キャリヤC31とを有している。第1サンギヤS31は、第1遊星歯車機構31の入力要素であり、回転電機2のロータ軸27と一体的に回転するように連結されている。第1リングギヤR31は、ケース1に対して回転不能に支持される非回転要素であり、支持部材14の第1支持材141に、周方向へ回転不能に支持されている。第1キャリヤC31は、第1遊星歯車機構31の出力要素である。
第2遊星歯車機構32は、軸方向Lにおいて、第1遊星歯車機構31に隣接し、第1遊星歯車機構31に対して回転電機2側とは反対側(すなわち、軸方向第2側L2)に配置されている。第2遊星歯車機構32は、第1遊星歯車機構31(第1遊星歯車機構31の出力要素)に駆動連結される回転要素(入力要素)と、差動歯車装置4に駆動連結される回転要素(出力要素)とを有しており、入力要素に伝達される回転(第1遊星歯車機構31により減速された回転電機2の回転)を減速して出力要素から差動歯車装置4に伝達する。本実施形態では、第2遊星歯車機構32は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、第2サンギヤS32と、第2リングギヤR32と、第2キャリヤC32とを有している。第2サンギヤS32は、第2遊星歯車機構32の入力要素であり、第1キャリヤC31と一体的に回転するように連結されている。第2リングギヤR32は、ケース1に対して回転不能に支持される非回転要素であり、支持部材14の第2支持材142に、周方向へ回転不能に支持されている。第2キャリヤC32は、第2遊星歯車機構32の出力要素である。
差動歯車装置4は、減速装置3(本実施形態では、第2キャリヤC32)に駆動連結される回転要素(入力要素)と、第1車輪501及び第2車輪502(第1ドライブシャフト51及び第2ドライブシャフト52)に駆動連結される2つの回転要素(分配出力要素)とを有しており、減速装置3から入力要素に伝達される回転を第1車輪501と第2車輪502とに(第1ドライブシャフト51と第2ドライブシャフト52とに)分配して伝達する。本実施形態では、差動歯車装置4は、傘歯車式の差動歯車機構を備えている。具体的には、差動歯車装置4は、入力要素としての差動ケースDと、差動ケースDに保持されたピニオンシャフトFと、ピニオンシャフトFに対して回転可能に支持されたピニオンギヤPと、分配出力要素としての第1サイドギヤB1及び第2サイドギヤB2とを有している。ピニオンギヤP、第1サイドギヤB1、及び第2サイドギヤB2は、いずれも傘歯車である。なお、差動歯車装置4が、傘歯車式の差動歯車機構に代えて、遊星歯車式の差動歯車機構を備える構成としても良い。
差動ケースDは、中空の部材であり、その内部に、ピニオンギヤPと、第1サイドギヤB1と、第2サイドギヤB2とが収容されている。すなわち、差動ケースDは、差動歯車装置4のギヤ機構Gを収容しており、本実施形態では、このギヤ機構Gは、ピニオンギヤPと、第1サイドギヤB1と、第2サイドギヤB2とを有している。本実施形態では、差動ケースDは、減速装置3における第2遊星歯車機構32の第2キャリヤC32と一体的に形成されており、第2キャリヤC32が差動ケースDの一部として構成されている。差動ケースDと第2キャリヤC32とは、例えば、鋳造(或いは、鋳造品の削り出し)による一体成形技術を用いて一体的に形成され、或いは、鍛造による一体成形技術を用いて一体的に形成される。
第1サイドギヤB1及び第2サイドギヤB2は、差動歯車装置4における分配後の回転要素である。第1サイドギヤB1と第2サイドギヤB2とは、軸方向Lに沿って互いに間隔を空けて、ピニオンシャフトFを挟んで対向するように設けられ、差動ケースDの内部空間においてそれぞれの周方向に回転するように構成されている。第1サイドギヤB1と第2サイドギヤB2とは、ピニオンギヤPに噛み合っている。第1サイドギヤB1の内周面には、第1サイドギヤB1を連結軸53に連結するためのスプラインが形成されている。第2サイドギヤB2の内周面には、第2サイドギヤB2を第2ドライブシャフト52に連結するためのスプラインが形成されている。
連結軸53は、差動歯車装置4によって分配された回転電機2からの駆動力を第1ドライブシャフト51に伝達する部材である。すなわち、連結軸53は、差動歯車装置4と一対の車輪500の一方(ここでは、第1車輪501)とを連結する軸部材である。連結軸53は、軸方向Lに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されている。連結軸53の外周面は、ロータ軸27の内周面よりも小径に形成されており、連結軸53は、ロータ軸27の径方向内側R2に、ロータ軸27を軸方向Lに貫通して配置されている。また、連結軸53は、減速装置3を軸方向Lに貫通して配置されている。連結軸53における軸方向第2側L2の端部の外周面には、連結軸53を差動歯車装置4の第1サイドギヤB1に連結するためのスプラインが形成されている。当該スプラインと第1サイドギヤB1の内周面のスプラインとが係合することにより、連結軸53と第1サイドギヤB1とが一体的に回転するように連結されている。連結軸53の軸方向第1側L1の端部には、連結軸53を第1ドライブシャフト51に連結するための連結部53aが形成されている。
連結部53aは、第1ケース部11の内部空間における回転電機2よりも軸方向第1側L1の部分から第3ケース部13の内部空間にかけて延在している。連結部53aは、連結軸53における連結部53a以外の部分と同軸の円筒状に形成されている。連結部53aは、連結軸53における連結部53a以外の部分の外径よりも大きい外径を有している。連結部53aは、第3軸受63を介して回転可能に第3ケース部13に支持されていると共に、第4軸受64を介して回転可能に第1ケース部11に支持されている。連結部53aの内周面には、連結軸53(連結部53a)を第1ドライブシャフト51に連結するためのスプラインが形成されている。当該スプラインと第1ドライブシャフト51の外周面とのスプラインとが係合することにより、連結軸53と第1ドライブシャフト51とが一体的に回転するように連結されている。
本実施形態では、連結軸53の軸方向第1側L1の端部に連結部53aが設けられ、第1ドライブシャフト51と連結軸53の連結部53aとがスプラインによって連結されている。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、連結軸53の軸方向第1側L1の端部に、連結部53aの代わりにフランジヨークが設けられ、当該フランジヨークと第1ドライブシャフト51とがボルトによって締結された構成であっても良い。
次に、本実施形態の車両用駆動装置100における回転電機2の冷却構造について説明する。以下に述べるように、この冷却構造は、ロータ軸27の内周面と連結軸53の外周面との間の軸内空間70に油を流通させることで、ロータコア22を径方向内側R2から冷却するように構成されている。また、この冷却構造は、第1排出孔41から排出される軸内空間70の油を第1コイルエンド部26aに供給して、第1コイルエンド部26aを冷却すると共に、第2排出孔42から排出される軸内空間70の油を第2コイルエンド部26bに供給して、第2コイルエンド部26bを冷却するように構成されている。
図3に示すように、ロータ軸27には、第1排出孔41と第2排出孔42とが、ロータ軸27を径方向Rに貫通して形成されている。すなわち、第1排出孔41及び第2排出孔42は、ロータ軸27の内周面と外周面とを連通するように形成されている。ここで、第1排出孔41は、軸内空間70の油をロータコア22に対して軸方向Lの一方側(ここでは、軸方向第1側L1)に排出する孔部であり、第2排出孔42は、軸内空間70の油をロータコア22に対して軸方向Lの他方側(ここでは、軸方向第2側L2)に排出する孔部である。すなわち、第1排出孔41は、ロータコア22に対して軸方向第1側L1においてロータ軸27の外周面に開口するように形成され、第2排出孔42は、ロータコア22に対して軸方向第2側L2においてロータ軸27の外周面に開口するように形成されている。本実施形態では、複数の第1排出孔41が、軸方向Lの同じ位置において周方向の互いに異なる位置に形成され、複数の第2排出孔42(ここでは、第1排出孔41と同数の第2排出孔42)が、軸方向Lの同じ位置において周方向の互いに異なる位置に形成されている。図3に示す例では、第1排出孔41及び第2排出孔42は、ロータ軸27を径方向Rに平行に貫通するように形成されている。
図3に油の流れを矢印で示すように、軸内空間70の油は、ロータ軸27の回転に伴う遠心力により、第1排出孔41及び第2排出孔42から排出される。詳細は後述するが、連結軸53が、軸内空間70に油を供給する供給部80を備えている。本実施形態では、第1排出孔41から排出される軸内空間70の油は、遠心力によって第1コイルエンド部26aに対して径方向内側R2から供給され、第2排出孔42から排出される軸内空間70の油は、遠心力によって第2コイルエンド部26bに対して径方向内側R2から供給される。なお、本実施形態では、第1排出孔41が、第1エンドプレート28aに対して軸方向第1側L1においてロータ軸27の外周面に開口するように形成されているが、第1排出孔41が、ロータ軸27の外周面における第1エンドプレート28aに対して径方向視で重複する領域において開口するように形成されていても良い。この場合、第1排出孔41から排出された油が、第1エンドプレート28aに形成される油路又は第1エンドプレート28aとロータコア22との間に形成される油路等を流通した後、第1コイルエンド部26aに対して径方向内側R2から供給される構成とすることができる。同様に、本実施形態では、第2排出孔42が、第2エンドプレート28bに対して軸方向第2側L2においてロータ軸27の外周面に開口するように形成されているが、第2排出孔42が、ロータ軸27の外周面における第2エンドプレート28bに対して径方向視で重複する領域において開口するように形成されていても良い。
上記のように第1排出孔41及び第2排出孔42から排出された油によって回転電機2(具体的には、コイルエンド部26)を冷却するため、回転電機2を軸方向Lの両側で適切に冷却するために、第1排出孔41及び第2排出孔42のそれぞれに対する油の供給流量の配分が適切に行えることが望ましい。以下、本実施形態の車両用駆動装置100における、第1排出孔41及び第2排出孔42のそれぞれに対する油の供給流量の配分を適切に行うための構成について説明する。
図3に示すように、ロータ軸27の内周面における径方向視でロータコア22と重複する領域に、径方向内側R2に突出すると共に周方向に連続して延びる突条部40が形成されている。突条部40は、周方向の全域に亘って連続して形成されている。すなわち、突条部40は、軸方向Lに沿った軸方向視で、ロータ軸27の内周面に沿った環状に形成されている。本実施形態では、突条部40は、軸方向Lにおけるロータコア22の中央部に対応する位置に形成されている。なお、図3に示す突条部40の形状は一例であり、ロータ軸27の内周面から径方向内側R2に突出する形状であれば、図3に示す形状とは異なる突条部40を採用することもできる。例えば、図3に示す例では、径方向内側R2に向かうに従って軸方向Lの幅が減少するように(ここでは、連続的に減少するように)突条部40が形成されているが、軸方向Lの幅が径方向Rに沿って均一となるように突条部40が形成されても良く、また、径方向内側R2に向かうに従って軸方向Lの幅が増大するように(例えば、連続的に増大するように)突条部40が形成されても良い。
連結軸53に備えられて軸内空間70に油を供給する供給部80は、第1供給孔81と第2供給孔82とを備えている。ここで、第1供給孔81は、軸方向Lにおける突条部40と第1排出孔41との間において連結軸53の外周面に開口するように形成される孔部であり、第2供給孔82は、軸方向Lにおける突条部40と第2排出孔42との間において連結軸53の外周面に開口するように形成される孔部である。よって、第1供給孔81から軸内空間70への油の供給は、軸内空間70における突条部40と第1排出孔41との軸方向Lの間の領域に対して行われ、第2供給孔82から軸内空間70への油の供給は、軸内空間70における突条部40と第2排出孔42との軸方向Lの間の領域に対して行われる。本実施形態では、複数の第1供給孔81が、軸方向Lの同じ位置において周方向の互いに異なる位置に形成され、複数の第2供給孔82(ここでは、第1供給孔81と同数の第2供給孔82)が、軸方向Lの同じ位置において周方向の互いに異なる位置に形成されている。第1供給孔81及び第2供給孔82は、連結軸53を径方向Rに貫通して形成されている。すなわち、第1供給孔81及び第2供給孔82は、連結軸53の内周面と外周面とを連通するように形成されている。図3に示す例では、第1供給孔81及び第2供給孔82は、連結軸53を径方向Rに平行に貫通するように形成されている。
上記のように、第1供給孔81から軸内空間70への油の供給は、軸内空間70における突条部40と第1排出孔41との軸方向Lの間の領域に対して行われ、第2供給孔82から軸内空間70への油の供給は、軸内空間70における突条部40と第2排出孔42との軸方向Lの間の領域に対して行われる。そして、ロータ軸27の内周面には上述した突条部40が形成されているため、ロータ軸27の回転に伴う遠心力によりロータ軸27の内周面側に寄せられる軸内空間70の油は、突条部40を乗り越えて軸方向Lに流動することが規制される。すなわち、第1供給孔81から軸内空間70に供給された油が、軸内空間70を軸方向第2側L2に流動して第2排出孔42に供給されることや、第2供給孔82から軸内空間70に供給された油が、軸内空間70を軸方向第1側L1に流動して第1排出孔41に供給されることを、突条部40によって規制することができる。これにより、第1供給孔81から軸内空間70に供給された油の全て又は大部分を第1排出孔41に供給し、第2供給孔82から軸内空間70に供給された油の全て又は大部分を第2排出孔42に供給すること、すなわち、第1排出孔41及び第2排出孔42のそれぞれに対する油の供給流量の配分を適切に行うことが可能となっている。
図3に示すように、第1供給孔81から軸内空間70に供給された油は、軸内空間70を第1排出孔41の側(すなわち、軸方向第1側L1)に向かって流動し、この際に行われる油とロータ軸27との熱交換によって、ロータコア22を冷却することができる。また、第2供給孔82から軸内空間70に供給された油は、軸内空間70を第2排出孔42の側(すなわち、軸方向第2側L2)に向かって流動し、この際に行われる油とロータ軸27との熱交換によって、ロータコア22を冷却することができる。このように軸内空間70の油がロータ軸27と熱交換する範囲を、軸方向Lに大きく確保するために、本実施形態では、第1供給孔81を、突条部40と第1排出孔41との間の軸方向Lの中央部よりも突条部40の側(すなわち、軸方向第2側L2)に配置し、第2供給孔82を、突条部40と第2排出孔42との間の軸方向Lの中央部よりも突条部40の側(すなわち、軸方向第1側L1)に配置している。
本実施形態では、第1供給孔81から軸内空間70に供給された油の全て又は大部分が第1排出孔41から排出されるように、ロータ軸27の内周面における第1排出孔41に対して軸方向第1側L1の領域に、軸方向第2側L2の部分に対して軸方向第1側L1の部分が小径となる第1段差部43を形成している。第1段差部43は、軸方向第2側L2を向く段差面(法線ベクトルが軸方向第2側L2の成分を有する面)を有する。本実施形態では、第1段差部43が有する段差面は、法線方向が軸方向Lに対して傾斜した傾斜面とされている。ロータ軸27の内周面に第1段差部43を設けることで、第1供給孔81から軸内空間70に供給された油が、第1排出孔41から排出されずに第1排出孔41に対して軸方向第1側L1に流出することを規制して、第1供給孔81から軸内空間70に供給された油の全て又は大部分を第1排出孔41から排出させることができる。図3に示す例では、ロータ軸27の内周面における第1段差部43に対して軸方向第1側L1に隣接する小径部分の径は、突条部40が形成されている領域(突条部40が最も径方向内側R2に突出している領域)でのロータ軸27の内周面の径と、同径に形成されている。
また、本実施形態では、第2供給孔82から軸内空間70に供給された油の全て又は大部分が第2排出孔42から排出されるように、ロータ軸27の内周面における第2排出孔42に対して軸方向第2側L2の領域に、軸方向第1側L1の部分に対して軸方向第2側L2の部分が小径となる第2段差部44を形成している。第2段差部44は、軸方向第1側L1を向く段差面(法線ベクトルが軸方向第1側L1の成分を有する面)を有する。本実施形態では、第2段差部44が有する段差面は、法線方向が軸方向Lに対して傾斜した傾斜面とされている。ロータ軸27の内周面に第2段差部44を設けることで、第2供給孔82から軸内空間70に供給された油が、第2排出孔42から排出されずに第2排出孔42に対して軸方向第2側L2に流出することを規制して、第2供給孔82から軸内空間70に供給された油の全て又は大部分を第2排出孔42から排出させることができる。図3に示す例では、ロータ軸27の内周面における第2段差部44に対して軸方向第2側L2に隣接する小径部分の径は、突条部40が形成されている領域(突条部40が最も径方向内側R2に突出している領域)でのロータ軸27の内周面の径と、同径に形成されている。
連結軸53の内周面によって囲まれて軸方向Lに延びる空間によって、油の供給元5から供給された油を第1供給孔81及び第2供給孔82に供給する供給油路54が形成されている。図1に示すように、連結軸53は、油の供給元5からの油の供給を受ける被供給部55を備えており、供給油路54は、被供給部55に供給された油を第1供給孔81及び第2供給孔82に供給する。被供給部55は、第1供給孔81及び第2供給孔82に対して軸方向第1側L1に設けられており、被供給部55に供給された油は、供給油路54を軸方向第2側L2に向かって流動して、第1供給孔81及び第2供給孔82に供給される(図3参照)。本実施形態では、油の供給元5は、ケース1の内部に貯留された油を吸引して油圧を発生させる油圧ポンプである。供給元5から供給される油は、ケース1に形成された導入油路6を介して、被供給部55に供給される。連結軸53は、連結軸53の外周面と供給油路54とを連通する連通油路57を備えており、連通油路57の連結軸53の外周面における開口部が、被供給部55を構成している。よって、供給元5から供給された油は、導入油路6及び連通油路57を順に流通して、供給油路54に供給される。本実施形態では、複数の連通油路57が、軸方向Lの同じ位置において周方向の互いに異なる位置に形成されている。
本実施形態では、供給元5から油が供給されている状態において、供給油路54の内部が油で満たされるように構成されている。すなわち、供給元5としての油圧ポンプの吐出圧に応じた圧の油によって、供給油路54の内部が満たされるように構成されている。これにより、共通の供給油路54から第1供給孔81及び第2供給孔82の双方に油を供給する場合であっても、第1供給孔81の径に応じた流量の油を第1供給孔81から軸内空間70に供給し、第2供給孔82の径に応じた流量の油を第2供給孔82から軸内空間70に供給することが可能となっている。
本実施形態では、第1排出孔41から排出される油の流量が、第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積に応じた流量となるように、第1排出孔41のロータ軸27の外周面における開口面積を設定している。具体的には、第1排出孔41のロータ軸27の外周面における開口面積を、第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積よりも大きくしている。なお、本明細書では、異なる孔部の間での開口面積の比較は、比較対象の孔部が複数形成されている場合には、複数の孔部の開口面積の総和によって行う。本実施形態では、第1排出孔41及び第1供給孔81の双方が複数形成されているため、第1排出孔41のロータ軸27の外周面における開口面積が、第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積よりも大きいとは、複数の第1排出孔41のロータ軸27の外周面における開口面積の総和が、複数の第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積の総和よりも大きいことを意味する。このように、第1排出孔41のロータ軸27の外周面における開口面積を、第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積よりも大きくすることで、第1排出孔41から排出される油の流量を、第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積によって調整することができる。
また、本実施形態では、第2排出孔42から排出される油の流量が、第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積に応じた流量となるように、第2排出孔42のロータ軸27の外周面における開口面積を設定している。具体的には、第2排出孔42のロータ軸27の外周面における開口面積を、第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積よりも大きくしている。本実施形態では、第2排出孔42及び第2供給孔82の双方が複数形成されているため、第2排出孔42のロータ軸27の外周面における開口面積が、第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積よりも大きいとは、複数の第2排出孔42のロータ軸27の外周面における開口面積の総和が、複数の第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積の総和よりも大きいことを意味する。このように、第2排出孔42のロータ軸27の外周面における開口面積を、第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積よりも大きくすることで、第2排出孔42から排出される油の流量を、第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積によって調整することができる。
このように、本実施形態では、第1排出孔41から排出される油の流量は、第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積によって調整することができ、第2排出孔42から排出される油の流量は、第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積によって調整することができる。すなわち、第1排出孔41から排出される油の流量と、第2排出孔42から排出される油の流量とを、互いに独立に調整することが可能となっている。本実施形態では、第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積と、第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積とが等しくなるように、第1供給孔81及び第2供給孔82が形成されている。本実施形態では、第1供給孔81及び第2供給孔82の双方が複数形成されているため、第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積と、第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積とが等しいとは、複数の第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積の総和と、複数の第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積の総和とが等しいことを意味する。このように、第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積と、第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積とを等しくすることで、第1排出孔41から排出される油の流量と、第2排出孔42から排出される油の流量とを、同程度の流量として、回転電機2を軸方向Lの両側でバランス良く冷却することが容易となっている。
また、本実施形態の車両用駆動装置100は、供給油路54から軸内空間70に供給されなかった油を、差動歯車装置4のギヤ機構Gに供給して当該ギヤ機構Gを潤滑するように構成されている。具体的には、図1に示すように、被供給部55と差動歯車装置4とは、第1排出孔41及び第2排出孔42(図3参照)に対して軸方向Lの互いに反対側に配置されている。そして、供給油路54における、第1排出孔41及び第2排出孔42に対して軸方向Lにおける差動歯車装置4の側(ここでは、軸方向第2側L2)の部分に、絞り部56が設けられ、絞り部56を通過した油が差動歯車装置4のギヤ機構Gに供給されるように構成されている。
絞り部56は、軸方向第2側L2へ流動する油の流量を、所定値(許容流量)以下に制限するように設けられる。すなわち、絞り部56の配設位置では、当該配設位置よりも軸方向第1側L1の部分に比べて、供給油路54の流路断面積(軸方向Lに直交する断面の面積)が小さくされる。このような絞り部56を設けて差動歯車装置4の側への油の流通を制限することで、供給油路54の内部を油で満たした状態として第1供給孔81及び第2供給孔82から軸内空間70に適切な量の油を供給しつつ、差動歯車装置4のギヤ機構Gに潤滑のための油を供給することが可能となっている。なお、本実施形態では、連結軸53の中空部分に対して軸方向第2側L2から挿入されたプラグによって、絞り部56が構成されている。詳細は省略するが、本実施形態では、連結軸53には、減速装置3に対して径方向内側R2から油を供給するための孔部が、連結軸53を径方向Rに貫通して形成されており、供給油路54から軸内空間70に供給されなかった油を減速装置3に供給して、減速装置3のギヤ機構を潤滑するように構成されている。
ところで、ロータ軸27と連結軸53との間に、軸方向Lのガタツキが生じる場合がある。このようなガタツキは、例えば、ロータ軸27を支持する第1軸受61又は第2軸受62に存在するクリアランスや、連結軸53を支持する第3軸受63又は第4軸受64に存在するクリアランス等の、車両用駆動装置100の各部に存在するクリアランスによって生じ得る。このようなガタツキが生じる場合、ロータ軸27が連結軸53に対して軸方向第1側L1に最大限移動した場合であっても、第1供給孔81が突条部40に対して軸方向第1側L1において開口し、ロータ軸27が連結軸53に対して軸方向第2側L2に最大限移動した場合であっても、第2供給孔82が突条部40に対して軸方向第2側L2において開口するように、第1供給孔81と第2供給孔82との軸方向Lの間隔をガタツキの大きさを考慮して設定することで、上述したように、第1排出孔41及び第2排出孔42のそれぞれに対する油の供給流量の配分を適切に行うことができる。
〔その他の実施形態〕
次に、車両用駆動装置のその他の実施形態について説明する。
(1)上記の実施形態では、第1排出孔41から排出される軸内空間70の油が第1コイルエンド部26aに供給され、第2排出孔42から排出される軸内空間70の油が第2コイルエンド部26bに供給される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1排出孔41から排出される軸内空間70の油が第2コイルエンド部26bに供給され、第2排出孔42から排出される軸内空間70の油が第1コイルエンド部26aに供給される構成とすることもできる。例えば、ロータコア22の内部に、ロータコア22を軸方向Lに貫通するコア内油路を設けると共に、第1排出孔41とコア内油路の軸方向第1側L1の開口部とが、第1エンドプレート28aに形成される油路又は第1エンドプレート28aとロータコア22との間に形成される油路等を介して連通する構成とすることで、第1排出孔41から排出された油が、コア内油路を軸方向第2側L2に向かって流動した後、コア内油路の軸方向第2側L2の開口部から第2コイルエンド部26bに供給される構成とすることができる。同様に、第2排出孔42から排出された油が、コア内油路を軸方向第1側L1に向かって流動した後、コア内油路の軸方向第1側L1の開口部から第1コイルエンド部26aに供給される構成とすることができる。
(2)上記の実施形態では、第1供給孔81の連結軸53の外周面における開口面積(以下、「第1開口面積」という)と、第2供給孔82の連結軸53の外周面における開口面積(以下、「第2開口面積」という)とが等しい構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1開口面積と第2開口面積とが異なる構成とすることもできる。例えば、回転電機2のケース1内の放熱環境等に起因して、コイルエンド部26の油による冷却必要性が第1コイルエンド部26aと第2コイルエンド部26bとで異なる場合がある。このような場合には、冷却必要性が高い方のコイルエンド部26に対する油の供給流量が、冷却必要性が低い方のコイルエンド部26に対する油の供給流量よりも多くなるように、第1開口面積と第2開口面積とを異ならせると好適である。例えば、第1開口面積を第2開口面積よりも大きくすることで、第1コイルエンド部26aに対する油の供給流量を、第2コイルエンド部26bに対する油の供給流量よりも多くすることができる。
(3)上記の実施形態では、供給油路54における、第1排出孔41及び第2排出孔42に対して軸方向Lにおける差動歯車装置4の側の部分に、絞り部56が設けられ、絞り部56を通過した油が差動歯車装置4のギヤ機構Gに供給される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、供給油路54における、第1排出孔41及び第2排出孔42に対して軸方向Lにおける差動歯車装置4の側の部分に、絞り部56が設けられない構成とすることや、供給油路54における、第1排出孔41及び第2排出孔42に対して軸方向Lにおける差動歯車装置4の側の部分が閉塞された構成とすることもできる。
(4)上記の実施形態では、供給元5から油が供給されている状態において、供給油路54の内部が油で満たされる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、供給元5から油が供給されている状態において、供給油路54の内部が油で満たされず、供給油路54の内部の油が、連結軸53の回転に伴う遠心力によって連結軸53の内周面側に寄せられた状態で、軸方向Lに流動する構成とすることもできる。
(5)上記の実施形態では、ロータ軸27の内周面に第1段差部43及び第2段差部44が形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ロータ軸27の内周面に第1段差部43及び第2段差部44の少なくとも一方が形成されない構成とすることもできる。例えば、第1供給孔81から軸内空間70に供給された油の一部を、他部材の潤滑等のために第1排出孔41に対して軸方向第1側L1に流出させる場合に、ロータ軸27の内周面に第1段差部43が形成されない構成とすることができる。また、例えば、第2供給孔82から軸内空間70に供給された油の一部を、他部材の潤滑等のために第2排出孔42に対して軸方向第2側L2に流出させる場合に、ロータ軸27の内周面に第2段差部44が形成されない構成とすることができる。或いは、ロータ軸27に取り付けた別部材によって、第1段差部43又は第2段差部44と同等の機能を有する段差部を形成する構成としてもよい。
(6)上記の実施形態では、突条部40が、軸方向Lにおけるロータコア22の中央部に対応する位置に形成される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、突条部40が、軸方向Lにおけるロータコア22の中央部に対応する位置(以下、「対応位置」という)に対して、軸方向Lのいずれか一方側にずれた位置に形成される構成とすることもできる。例えば、回転電機2のケース1内の放熱環境等に起因して、コイルエンド部26の油による冷却必要性が第1コイルエンド部26aと第2コイルエンド部26bとで異なる場合に、冷却必要性が高い方のコイルエンド部26に対して供給される油の温度が、冷却必要性が低い方のコイルエンド部26に対して供給される油の温度よりも低くなるように、突条部40の軸方向Lの形成位置を、上記対応位置に対して冷却必要性が高いコイルエンド部26の側にずらした構成とすることができる。
(7)上記の実施形態では、第1供給孔81が、突条部40と第1排出孔41との間の軸方向Lの中央部よりも突条部40の側に配置され、第2供給孔82が、突条部40と第2排出孔42との間の軸方向Lの中央部よりも突条部40の側に配置される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1供給孔81が、突条部40と第1排出孔41との間の軸方向Lの中央部に配置される構成や、第1供給孔81が、突条部40と第1排出孔41との間の軸方向Lの中央部よりも第1排出孔41の側に配置される構成とすることもできる。また、第2供給孔82が、突条部40と第2排出孔42との間の軸方向Lの中央部に配置される構成や、第2供給孔82が、突条部40と第2排出孔42との間の軸方向Lの中央部よりも第2排出孔42の側に配置される構成とすることもできる。
(8)上記の実施形態では、減速装置3が2つの遊星歯車機構(第1遊星歯車機構31及び第2遊星歯車機構32)を有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、減速装置3が、1つ又は3つ以上の遊星歯車機構を有する構成とすることもできる。また、上記の実施形態では、車両用駆動装置100が減速装置3を備える構成を例として説明したが、車両用駆動装置100が減速装置3を備えない構成とすることもできる。
(9)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置の概要について説明する。
回転電機(2)と、前記回転電機(2)と同軸上に配置されて、前記回転電機(2)の側から伝達される駆動力を一対の車輪(500)に分配する差動歯車装置(4)と、を備えた車両用駆動装置(100)であって、前記回転電機(2)は、ロータコア(22)と、前記ロータコア(22)に連結されたロータ軸(27)と、を備え、前記ロータ軸(27)は、軸方向(L)に延びる筒状に形成されると共に、前記ロータコア(22)の径方向(R)の内側を前記軸方向(L)に貫通して配置され、前記ロータ軸(27)の前記径方向(R)の内側に、前記差動歯車装置(4)と一対の前記車輪(500)の一方とを連結する連結軸(53)が、前記ロータ軸(27)を前記軸方向(L)に貫通して配置され、前記連結軸(53)は、前記ロータ軸(27)の内周面と前記連結軸(53)の外周面との間の軸内空間(70)に油を供給する供給部(80)を備え、前記軸内空間(70)の油を前記ロータコア(22)に対して前記軸方向(L)の一方側に排出する第1排出孔(41)と、前記軸内空間(70)の油を前記ロータコア(22)に対して前記軸方向(L)の他方側に排出する第2排出孔(42)とが、前記ロータ軸(27)を前記径方向(R)に貫通して形成され、前記ロータ軸(27)の内周面における前記径方向(R)に沿った径方向視で前記ロータコア(22)と重複する領域に、前記径方向(R)の内側に突出すると共に周方向に連続して延びる突条部(40)が形成され、前記供給部(80)は、前記軸方向(L)における前記突条部(40)と前記第1排出孔(41)との間において前記連結軸(53)の外周面に開口するように形成された第1供給孔(81)と、前記軸方向(L)における前記突条部(40)と前記第2排出孔(42)との間において前記連結軸(53)の外周面に開口するように形成された第2供給孔(82)とを備えている。
この構成によれば、回転電機(2)と、回転電機(2)と同軸上に配置される差動歯車装置(4)と、を備える車両用駆動装置(100)において、ロータ軸(27)の内周面と、差動歯車装置(4)と一対の車輪(500)の一方とを連結する連結軸(53)の外周面との間の軸内空間(70)に、連結軸(53)に設けられた供給部(80)から油を供給することで、ロータコア(22)に対して軸方向(L)の両側に油を排出するための第1排出孔(41)及び第2排出孔(42)のそれぞれに対する油の供給流量の配分を適切に行うことができる。
すなわち、軸内空間(70)の油は、ロータ軸(27)の回転に伴う遠心力によりロータ軸(27)の内周面側に寄せられるため、突条部(40)を乗り越えて軸方向(L)に流動することは規制される。つまり、第1供給孔(81)から軸内空間(70)に供給された油は、第2排出孔(42)側への流動が規制されるため、第1排出孔(41)に供給される。第2供給孔(82)から軸内空間(70)に供給された油は、第1排出孔(41)側への流動が規制されるため、第2排出孔(42)に供給される。これにより、第1排出孔(41)及び第2排出孔(42)のそれぞれに対する油の供給流量の配分を適切に行うことができる。
ここで、前記第1供給孔(81)は、前記突条部(40)と前記第1排出孔(41)との間の前記軸方向(L)の中央部よりも前記突条部(40)の側に配置され、前記第2供給孔(82)は、前記突条部(40)と前記第2排出孔(42)との間の前記軸方向(L)の中央部よりも前記突条部(40)の側に配置されていると好適である。
この構成によれば、第1供給孔(81)が、突条部(40)と第1排出孔(41)との間の軸方向(L)の中央部よりも第1排出孔(41)の側に配置される場合に比べて、第1供給孔(81)と第1排出孔(41)との軸方向(L)の距離を長く確保して、第1供給孔(81)から軸内空間(70)に供給された油がロータ軸(27)と熱交換する範囲を軸方向(L)に大きく確保することができる。同様に、第2供給孔(82)から軸内空間(70)に供給された油がロータ軸(27)と熱交換する範囲を軸方向(L)に大きく確保することができる。この結果、ロータ軸(27)の径方向(R)の外側に連結されたロータコア(22)の冷却性能の向上を図ることができる。
また、前記突条部(40)は、前記軸方向(L)における前記ロータコア(22)の中央部に対応する位置に形成されていると好適である。
この構成によれば、軸内空間(70)における油の軸方向(L)の温度分布を、軸方向(L)におけるロータコア(22)の中央部に対して対称に近い温度分布とすることができ、また、第1排出孔(41)から排出される油の温度と第2排出孔(42)から排出される油の温度とを近づけることもできる。よって、回転電機(2)を軸方向(L)の両側でバランス良く冷却することが容易となる。
また、前記第1供給孔(81)の前記連結軸(53)の外周面における開口面積と、前記第2供給孔(82)の前記連結軸(53)の外周面における開口面積とが等しいと好適である。
この構成によれば、第1排出孔(41)及び第2排出孔(42)のそれぞれに対して、互いに同程度の流量の油を供給することができる。よって、回転電機(2)を軸方向(L)の両側でバランス良く冷却することが容易となる。
また、前記連結軸(53)は、前記軸方向(L)に延びる筒状に形成され、前記連結軸(53)の内周面によって囲まれて前記軸方向(L)に延びる空間によって、油の供給元(5)から供給された油を前記第1供給孔(81)及び前記第2供給孔(82)に供給する供給油路(54)が形成され、前記供給元(5)から油が供給されている状態において、前記供給油路(54)の内部が油で満たされるように構成されていると好適である。
この構成によれば、共通の供給油路(54)から第1供給孔(81)及び第2供給孔(82)の双方に油を供給する場合であっても、供給油路(54)の内部が油で満たされた状態とすることで、第1供給孔(81)の径に応じた流量の油を第1供給孔(81)から軸内空間(70)に供給し、第2供給孔(82)の径に応じた流量の油を第2供給孔(82)から軸内空間(70)に供給することができる。この結果、第1排出孔(41)及び第2排出孔(42)のそれぞれに対する油の供給流量の配分を適切に行うことができる。
また、前記軸方向(L)における前記第2排出孔(42)に対して前記第1排出孔(41)が配置される側を軸方向第1側(L1)とし、前記軸方向(L)における前記軸方向第1側(L1)とは反対側を軸方向第2側(L2)として、前記ロータ軸(27)の内周面における前記第1排出孔(41)に対して前記軸方向第1側(L1)の領域に、前記軸方向第2側(L2)の部分に対して前記軸方向第1側(L1)の部分が小径となる第1段差部(43)が形成され、前記ロータ軸(27)の内周面における前記第2排出孔(42)に対して前記軸方向第2側(L2)の領域に、前記軸方向第1側(L1)の部分に対して前記軸方向第2側(L2)の部分が小径となる第2段差部(44)が形成されていると好適である。
この構成によれば、第1供給孔(81)から軸内空間(70)に供給された油が、第1排出孔(41)から排出されずに第1排出孔(41)に対して軸方向第1側(L1)に流出することを、第1段差部(43)によって規制することができる。また、第2供給孔(82)から軸内空間(70)に供給された油が、第2排出孔(42)から排出されずに第2排出孔(42)に対して軸方向第2側(L2)に流出することを、第2段差部(44)によって規制することができる。よって、第1供給孔(81)から軸内空間(70)への油の供給流量に応じた流量の油を、第1排出孔(41)から排出させ、第2供給孔(82)から軸内空間(70)への油の供給流量に応じた流量の油を、第2排出孔(42)から排出させることが容易となる。
また、前記連結軸(53)は、前記軸方向(L)に延びる筒状に形成され、油の供給元(5)からの油の供給を受ける被供給部(55)を備え、前記連結軸(53)の内周面によって囲まれて前記軸方向(L)に延びる空間によって、前記被供給部(55)に供給された油を前記第1供給孔(81)及び前記第2供給孔(82)に供給する供給油路(54)が形成され、前記被供給部(55)と前記差動歯車装置(4)とは、前記第1排出孔(41)及び前記第2排出孔(42)に対して前記軸方向(L)の互いに反対側に配置され、前記供給油路(54)における、前記第1排出孔(41)及び前記第2排出孔(42)に対して前記軸方向(L)における前記差動歯車装置(4)の側の部分に、絞り部(56)が設けられ、前記絞り部(56)を通過した油が前記差動歯車装置(4)のギヤ機構(G)に供給されるように構成されていると好適である。
この構成によれば、共通の供給油路(54)から第1供給孔(81)及び第2供給孔(82)の双方に油を供給することができると共に、供給油路(54)から軸内空間(70)に供給されなかった油を、差動歯車装置(4)のギヤ機構(G)に供給して当該ギヤ機構(G)を潤滑することができる。この際、供給油路(54)における、第1排出孔(41)及び第2排出孔(42)に対して軸方向(L)における差動歯車装置(4)の側の部分に、絞り部(56)が設けられるため、絞り部(56)における油の流通を制限することで、第1供給孔(81)及び第2供給孔(82)から軸内空間(70)に適切な量の油を供給することができる。
本開示に係る車両用駆動装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。