屡々、可動体(ボックス及び保持部材)を支持する支持体(固定具本体)は、その設置高さを調整することが可能であるように、その延設方向を鉛直方向に沿って配設することがある。このような場合、特許文献1のボックス固定具では、可動体が支持体にビスなどで確実に本固定されていないと、可動体が自重で鉛直方向に落下することが避けられず、作業性の低下を招くことが問題であった。特に、一般的な施工方法では、支持体が壁裏の構造物に設置され、可動体としてのボックスが支持体に固定された上で壁材が立設される。そして、ボックスが壁表に臨むように壁材の所定位置に透孔が形成される。しかし、壁材の開口位置とボックスの位置とがずれることが多々起こり得る。このような場合、可動体を支持体に固定するビスを緩め、可動体を支持体に沿ってスライドさせて、透孔に対して位置合わせした上で、再度、ビスを締め込んで本固定をすることが必要であった。そして、支持体が鉛直方向に沿って配置されていると、ビスを緩めると同時に、可動体が自重で支持体に沿って落下移動する虞があった。可動体が支持体の下端側に一旦落下すると、壁表から透孔を介して可動体を引き上げることが非常に困難であることから、落下を防ぐために、作業者が常に可動体を保持している必要があった。すなわち、従来の可動体支持装置(ボックス、保持部材及び固定具本体の組み合わせ)では、可動体を支持体の所定位置に設置する際、作業性の低下が著しいことが問題であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、可動体を自由移動させずにスライド可能に支持体に保持する可動体支持装置を提供することにある。さらには、本発明は、該可動体支持装置を構成する可動体及び保持具をも提供する。
本発明の一形態の可動体支持装置は、構造物に固定される基端部、及び、前記基端部から長手方向に延びる延設部を有する支持体と、
前記延設部によって長手方向に沿ってスライド移動可能に支持される可動体と、を備え、
前記可動体は、前記可動体が前記延設部によって支持された状態で前記延設部に圧接する圧接部を有し、前記圧接部が前記延設部に圧接することにより、前記可動体が前記延設部の長手方向の所定位置に維持されることを特徴とする。
本発明のさらなる形態の可動体支持装置は、上記形態の可動体支持装置において、前記圧接部は、前記延設部の長手方向に沿って延びる板バネからなることを特徴とする。
本発明のさらなる形態の可動体支持装置は、上記形態の可動体支持装置において、前記可動体は、可動体本体と、前記延設部を前記可動体本体の外面と挟み込むことで前記可動体本体を前記延設部に保持する保持具と、を備え、前記圧接部が前記保持具に設けられていることを特徴とする。
本発明のさらなる形態の可動体支持装置は、上記形態の可動体支持装置において、前記保持具は、前記可動体本体の外面に対向するとともに前記可動体本体の外面との間に前記延設部を介挿可能に延在する基部と、前記可動体本体の外面の連結孔を貫通するように前記基部から突出し、前記保持具に前記可動体本体を着脱可能に連結する保持部と、を備え、前記保持部は、前記連結孔を貫通する軸部と、前記可動体本体の内面に掛け止まる掛止部を有し、前記圧接部が前記基部に設けられていることを特徴とする。
本発明のさらなる形態の可動体支持装置は、上記形態の可動体支持装置において、前記保持部及び前記連結孔は、前記延設部の幅方向両端の外側に位置するように対でそれぞれ形成されていることを特徴とする。
本発明のさらなる形態の可動体支持装置は、上記形態の可動体支持装置において、前記延設部には、ビスを挿通可能に長手方向に沿って延びる挿通孔が形成され、前記可動体本体には、前記ビスを挿通可能なビス孔が形成され、前記保持具には、前記ビスが螺着される螺着部が形成されていることを特徴とする。
本発明のさらなる形態の可動体支持装置は、上記形態の可動体支持装置において、前記連結孔及び前記ビス孔は、同一円周上に配置されていることを特徴とする。
本発明のさらなる形態の可動体支持装置は、上記形態の可動体支持装置において、前記圧接部は、前記延設部の前記可動体本体側を向く面と反対側の面に圧接することを特徴とする。
本発明のさらなる形態の可動体支持装置は、上記形態の可動体支持装置において、前記圧接部は、前記延設部の長手方向を鉛直にしたときに、前記可動体の自重落下を規制する圧接力で前記延設部に圧接することを特徴とする。
本発明のさらなる形態の可動体支持装置は、上記形態の可動体支持装置において、前記延設部には、長手方向に沿って複数の係止部が形成され、前記圧接部には、前記係止部に係止される被係止部が形成されていることを特徴とする。
本発明の一形態の可動体は、支持体の長手方向に延びる延設部によって長手方向に沿ってスライド移動可能に支持される可動体であって、
前記可動体が前記延設部によって支持された状態で前記延設部に圧接する圧接部を有し、前記圧接部が前記延設部に圧接することにより、前記可動体が前記延設部の長手方向の所定位置に維持されることを特徴とする。
本発明の一形態の保持具は、可動体本体に取着され、前記可動体本体を支持体の長手方向に延びる延設部に保持するための保持具であって、
前記可動体本体への取着時に前記可動体本体の外面に対向するように延在する基部と、
前記可動体本体の外面の連結孔を貫通するように前記基部から突出して、前記保持具を前記可動体本体に着脱可能に連結するための保持部と、
前記可動体本体への取着時に前記可動体本体の外面に弾性的に圧接し、前記基部を前記可動体本体から離間させるように付勢する圧接部と、
を備えることを特徴とする。
本発明のさらなる形態の保持具は、上記形態の保持具において、前記保持部は、弾性的に縮径変形可能な軸部と、前記軸部の先端に形成された弾性変位可能な掛止爪とを備え、前記掛止爪は、前記連結孔の外面側からの前記軸部の挿入により弾性変位し、前記連結孔を通過した後で弾性復帰して前記可動体本体の内面側から前記連結孔の周縁に掛け止まるように構成され、前記圧接部が前記掛止爪を前記連結孔の周縁に付勢することを特徴とする。
本発明の一形態の可動体支持装置によれば、可動体が延設部によって支持された状態で、可動体に設けられた圧接部が延設部に圧接することによって、可動体を延設部の長手方向の所定位置に維持することが可能である。すなわち、本発明の可動体支持装置では、圧接による摩擦力によって、可動体が延設部に沿って自由にスライドすることが規制され、可動体が延設部上で不意に位置ずれすることが防止される。そして、圧接によって生じる摩擦力を越える力を可動体に加えることにより、可動体を無段階にスライド移動させて、支持体上の所定位置に微調整しながら移動させることが可能である。したがって、本発明の可動体支持装置は、摩擦力の作用の下で可動体を自由移動させずにスライド可能に支持体に保持することを可能とする。
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、圧接部を長手方向に延びる板バネとして、支持体の延設部に対して効果的に弾性圧接させることができる。すなわち、圧接部を圧接力の調整を要さない簡易な構成とすることが可能である。
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、可動体本体及び保持具で延設部を挟み込むことにより、保持具が可動体本体を延設部に対してしっかりと保持することが可能である。
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、保持具が可動体本体に対して保持部を介して着脱可能に連結することにより、保持部の連結を選択的に解除して保持具及び可動体本体を分離させて、可動体を支持体から容易に取り外すことが可能である。さらに、保持部の掛止部が可動体本体の内面側に配置され、且つ、圧接部が可動体本体の外面側に配置されていることから、圧接部が延設部に圧接したときに、掛止部を可動体本体の内面側に付勢し、可動体本体及び保持具の間のがたつきを抑えることができる。
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、保持部及び連結孔が延設部の幅方向外側に配置されていることにより、可動体の延設部上のスライドに干渉することなく、保持具及び可動体本体を効果的に連結することができる。
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、ビスの軸部を延設部の挿通孔及び可動体本体のビス孔に挿通した状態で、螺着部に螺着して締め付けることによって、延設部を可動体本体と基部とで挟持して、可動体を支持体に強固に固定することができる。また、ビスを緩めた状態では、可動体の延設部に沿ったスライド移動とともに、ビスが長手状の挿通孔内で移動可能である。つまり、ビス及び挿通孔が、可動体のスライド移動をガイドするように機能し、可動体を延設部に沿ってより滑らかにスライド移動させることが可能である。
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、連結孔及びビス孔は、同一円周上に配置されていることにより、同一円周上で安定した固定が可能となる。
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、圧接部が延設部の可動体本体側を向く面と反対側の面に圧接することにより、圧接部が延設部を可動体本体の外面に付勢し、部材間のがたつきを抑えることができる。
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、圧接部が所定の圧接力で延設部に圧接することにより、延設部の長手方向を鉛直に配置したときに、可動体の自重落下を規制しつつ、可動体を摩擦力の作用の下で無段階にスライド移動させて、支持体上の所定位置に微調整しながら鉛直方向に移動させることが可能である。
本発明のさらなる形態によれば、上記発明の効果に加えて、延設部の係止部が圧接部の被係止部を係止することによって、延設部に沿ってスライドする可動体が所定位置で制止される。すなわち、可動体が、所定の位置を越えて意図しない位置に自由移動し、例えば、延設部の先端から脱落することを抑えることができる。
本発明の一形態の可動体によれば、可動体が延設部によって支持された状態で、可動体に設けられた圧接部が延設部に圧接することによって、可動体を延設部の長手方向の所定位置に維持することが可能である。すなわち、本発明の可動体では、圧接による摩擦力によって、可動体が延設部に沿って自由にスライドすることが規制され、可動体が延設部上で不意に位置ずれすることが防止される。そして、圧接によって生じる摩擦力を越える力を可動体に加えることにより、可動体を無段階にスライド移動させて、支持体上の所定位置に微調整しながら移動させることが可能である。したがって、本発明の可動体は、摩擦力の作用の下で自由移動が規制された状態でスライド可能に支持体に保持され得る。
本発明の一形態の保持具によれば、保持具は保持部を介して可動体本体を支持体の延設部に保持することが可能である。また、可動体本体に保持具を取着したときに、圧接部が基部を可動体本体から離間させる方向に付勢することにより、保持具は可動体本体を部材間にがたつきを抑えた状態で一体的に保持可能である。そして、可動体本体が延設部によって支持された状態で、保持具に設けられた圧接部が延設部に圧接することによって、可動体本体を延設部の長手方向の所定位置に維持することが可能である。すなわち、本発明の保持具によれば、圧接による摩擦力によって、可動体本体が延設部に沿って自由にスライドすることが規制され、可動体本体が延設部上で不意に位置ずれすることを防止することができる。そして、圧接によって生じる摩擦力を越える力を可動体本体に加えることにより、可動体本体を無段階にスライド移動させて、支持体上の所定位置に微調整しながら移動させることが可能である。したがって、本発明の保持具は、摩擦力の作用の下で可動体本体の自由移動を規制した状態で可動体本体を支持体にスライド可能に保持することを可能とする。
本発明のさらなる形態によれば、保持部の掛止爪を弾性変位させて軸部を可動体本体の連結孔に挿入することにより、保持具で可動体本体を容易に保持することができる。また、保持具が可動体本体を保持した状態において、掛止爪が可動体本体の内面側から連結孔の周縁に掛け止まり、且つ、圧接部が掛止爪を連結孔の周縁に付勢するように作用することから、部材間のがたつきを抑えつつ可動体本体を保持することが可能である。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
図1は、本発明に係る一実施形態の可動体支持装置100の分解斜視図である。本実施形態では、可動体支持装置100は、壁裏の空間に設置され、スイッチやコンセント等の配線器具を壁表の所定位置に設置する用途に用いられる。しかしながら、当該用途は、例示にすぎず、本発明の可動体支持装置は種々の用途に用いられてもよい。
図1に示すとおり、本発明の一実施形態の可動体支持装置100は、造営材、梁材、床材、天井材などの構造物に固定される支持体110と、該支持体110にスライド移動可能に支持される可動体とを備える。ここで、可動体は、ボックス130及び保持具150のアセンブリ(組立体)を意味する。図1に示すように、支持体110、ボックス130及び保持具150が組み合わさることによって、支持対象である可動体を所定位置に支持する可動体支持装置100が構成される。本実施形態の可動体支持装置100又は可動体(ボックス)設置構造では、支持体110が鉛直方向に延在するように配置され、可動体が鉛直方向にスライド移動可能に支持される。以下、図2乃至図8を参照して、各構成要素について説明する。
まず、図2及び図3を参照して、支持体110について説明する。図2(a),(b)は、支持体110の正面及び背面から見た斜視図である。図3(a)~(d)は、当該支持体110の平面図、正面図、背面図及び側面図である。
支持体110は、図2及び3に示すとおり、その基端から先端まで延びる平面視L字形状の長板である。支持体110は、その基端に位置し、構造物に固定される基端部111と、当該基端部111からその先端に向けて長手状に延設された延設部112とからなる。換言すると、当該支持体110はL字形状に屈曲しており、短片状の基端部111と長片状の延設部112とが略直角に連結されている。本実施形態では、支持体110は、金属材料を屈曲及び穿設加工することにより得られたが、合成樹脂等の他の材料で形成されてもよい。
当該支持体110の基端部111には、2つの長孔が穿設されており、当該長孔を介して構造物にビスで該支持体110を固定可能である。他方、支持体110の延設部112は、ボックス130が配置される側の前面、及び、保持具150が配置される側の後面を有する板状体である。また、延設部112には、ボックス130をビス170で固定するための挿通孔113が長手方向に沿って穿設されている。この挿通孔113は、延設部112の幅方向中央に所定幅で形成されている。挿通孔113の幅は、後述するとおり、内挿するビス170のスライド移動を許容するように、ビス170の軸部の径よりも大きく定められることが好ましい。
また、延設部112の幅方向の端縁がその後面側に折れ曲がって一対の端縁部114が形成されている。この端縁部114は、後述する保持具150の弾性片153(圧接部)が圧接する被圧接部を形成する。被圧接部は長手方向に連続して延びている。さらに、端縁部114には、複数(本実施形態では3つ)の係止部115が設けられている。複数の係止部115は、可動体の多段階の制止位置(又は強制停止位置)を定める。係止部115は、半円形状の切り欠きであり、幅方向外側に開放されている。後述するとおり、各係止部115に対して、保持具150の弾性係止爪154が係合して、可動体の自由移動を多段階的に規制するように機能する。
そして、延設部112の前面には、その長手方向に沿って、所定の基準点から支持物品であるボックス130のセンター位置までの相対的な離間距離を表示する表示部117が形成されている。本実施形態では、基準点を基端部111(又は延設部112基端)と定めた。基準点は、構造物や延設部の特定地点に定められてもよい。表示部117は、複数(本実施形態では4つ)の表示を有する。表示部117は、各表示にボックス130の輪郭を合わせたときに、ボックス130のセンター位置の基準点からの離間距離を表示するように構成されている。つまり、表示部117によって表示された離間距離は、各表示における基端部111からの実際の距離とは相違する。換言すると、表示部117が、ボックス130(支持物品)の輪郭とセンター位置との延設方向における距離の差分(つまり、輪郭とセンター位置との間隔)だけ、基準点からずれた相対的な離間距離を表示している。本実施形態では、各表示は、図3(b)の上から、(基準点として定められた)基端部111とセンター位置との離間距離が、300mm、250mm、200mm、150mmであることをそれぞれ示している。また、各表示は、鋼鉄製ボックス用表示117a及び樹脂製ボックス用表示117bの両方の情報を含んでいる。樹脂製ボックスの壁部の厚みと鋼鉄製ボックスの壁部の厚みの差分、鋼鉄製ボックス用表示117a及び樹脂製ボックス用表示117bがずれている。図面では、表示部117において文字や数字の表記が省略されているが、例えば、離間距離が文字、数字、記号の組み合わせで表されてもよい。さらに、延設部112の前面及び後面には、その長手方向に沿って、基端部111から目視する地点までの実際の距離を連続的に表示する目盛部118が形成されている。目盛部118が表示する情報は、構造物の特定位置から目視する地点までの実際の距離であってもよい。延設部112の前面では、表示部117及び目盛部118が挿通孔113の両側にそれぞれ併設されている。つまり、表示部117が基準点からのボックス130のセンター位置までの離間距離を示し、目盛部が基端部111(又は構造物)までの実際の距離を示していることから、両方の目盛が長手方向にずれて表示されている。なお、目盛部118は、ボックス130とともに、又は、ボックス130を付けずに管などの他の物品を保持させる際に使用されてもよい。
次に、図4及び図5を参照して、ボックス130について説明する。図4は、本実施形態のボックス130の斜視図である。図5(a),(b)は、当該ボックス130の正面図及び側面図である。
ボックス130は、図4及び図5に示すとおり、底壁131及び側壁132からなる周壁を有する中空筺体である。当該ボックス130の正面(前面)には、側壁132先端に縁取られた前面開口部が形成されている。前面開口部には、配線器具を取り付けるための器具取付部135が形成されている。本実施形態では、ボックス130は鋼鉄製の配線ボックスからなる。また、本実施形態では、ボックス130のセンター位置は、底壁131の中心(対角線の交点)として定められる。あるいは、センター位置は、ボックス130の側壁132のうちスライド方向(延設部112の延設方向)に対向する側壁132の内面間の中間位置又は所定位置でもある。そして、図示しないが、底壁131及び側壁132には、ケーブル等を挿通するための孔を打ち抜き可能とする複数のノックアウト部が設けられている。しかしながら、ボックスは、樹脂製の配線ボックス等であってもよい。
ボックス130の底壁131には、保持具150を連結するための連結孔133、及び、該ボックス130をビス170で支持体110に本固定するためのビス孔134が設けられている。図5において、ボックス130の縦方向の中央で左右に並んだ一対の孔が連結孔133として使用される。他方、ボックス130の横方向の中央で上下に並んだ孔の少なくとも1つがビス孔134として使用される。ビス孔134の径は、ビス170が螺着する大きさであってもよく、又は、ビス170の軸部よりも大きくてもよい。また、連結孔133及びビス孔134は同一円周上に配置されている。
次いで、図6乃至図8を参照して、保持具150について説明する。図6(a),(b)は、保持具150の正面及び背面から見た斜視図である。図7(a)~(e)は、当該保持具150の平面図、正面図、底面図、背面図及び側面図である。図8(a)~(c)は、保持具150のA-A,B-B,C-C断面図である。
保持具150は、図6乃至図8に示すとおり、延設部112の後面側に配置され、板状に延在する基部151と、該基部151に形成され、ボックス130を支持体110に対して保持する保持部152と、該基部151に圧接部及び被係止部として形成された弾性片153及び弾性係止爪154と、延設部112に対して補助的に弾性当接する補助弾性片156とを備える。
基部151は、前面及び後面を有する板状体である。より具体的には、基部151は、その上端側で左右方向に延びる横板と、その横方向の中央で上下方向に延びる細幅の縦板とを組み合わせてなる。なお、可動体支持装置100の組立形態において、基部151の左右方向が延設部112の幅方向に対応し、上下方向が延設部112の長手方向に対応する。
基部151は、その前面がボックス130の底壁131外面に対向するとともに該底壁131外面との間に延設部112を介挿可能に延在するように構成されている。基部151の幅方向の両端には、一対の側壁部155が前面側に立設している。側壁部155の前端面は、ボックス130の底壁131に当接し、基部151前面と底壁131外面との間に延設部112をスライド式に収容するための収容空間を形成するための当接部として機能する。また、一対の側壁部155は、可動体支持装置100の組立形態において、延設部112の幅方向両端の外側に位置するようにそれぞれ形成されている。そして、基部151は、図7(c)に示す平面視において、延設部112を一対の側壁部155の間で相対スライド可能に保持するように上下方向に開放されている。一対の側壁部155の間隔は、延設部112をがたつきなく収容するために延設部112の幅とほぼ等しいことが好ましい。さらに、基部151の縦板の下端の隅には、鋭利な切断エッジ151aが形成されている。当該切断エッジ151aは、出荷時のボックス130の孔を封止するテープを切断することなどに用いられる。
一対の保持部152は、一対の側壁部155に一体的に形成され、該基部151の前面から略垂直に突出している。一対の保持部152は、協働して、ボックス130を延設部112に対して保持するように構成されている。特には、各保持部152は、所定の高さで延伸する軸部152aを有する。軸部152aは、ボックス130の連結孔133を貫通し、その先端側の一部が底壁131の内面側に突出する長さを有する。軸部152aは、その径の中央で上下方向に延びるスリットによって分断されていることから、幅方向に縮径するように弾性変形可能である。また、軸部152aの突出方向の中間部分には、第1の掛止部としての外側掛止爪152bが幅方向外側に張り出し形成され、軸部152aの先端には、第2の掛止部としての内側掛止爪152cが幅方向内側に張り出し形成されている。軸部152aの縮径方向の弾性変形によって、外側掛止爪152b及び内側掛止爪152cが径方向(軸方向に直交する方向)に変位可能である。そして、軸部152aが弾性的に縮径変形したときにボックス130の連結孔133を通過可能となる。他方、軸部152aの当初形態では、軸部152aの連結孔133への通過が規制される。なお、外側掛止爪152bは、鋼鉄製ボックス用に設計されており、比較的薄肉の鋼鉄製のボックス130の底壁131内面に掛止可能である。他方、内側掛止爪152cは、樹脂製ボックス用に設計されており、比較的厚肉の樹脂製ボックス(図示せず)の底壁内面に掛止可能である。
弾性片153が圧接部として基部151に一体的に形成されている。弾性片153は、基部151の上端の幅方向両端部分から対となるように上方に延在している。各弾性片153は、上下方向(延設部112の長手方向に対応する方向)に沿って延在する板バネからなる。この板バネは、圧接力の調整を要さない簡易な構成を有する。弾性片153は、基部151の前面側に傾斜して延びる基端部位と、該基端部位から「へ字」状に折れ曲がって延びる先端部位とからなり、基端部位と先端部位との間の折曲部位が基部151前面から最も前方にせり出している。折曲部位のせり出し量は、側壁部155の突出高さとほぼ等しい。換言すると、この折曲部位の前面は、側壁部155の前端面に対して(基部151平面と平行な)ほぼ同一平面状に位置する。また、弾性片153は、基部151上端縁と基端部位との間の境界を軸として前後に回動するように弾性変形可能である。そして、各弾性片153の折曲部位には、その前面側に突出する弾性係止爪154が形成されている。弾性係止爪154は、支持体110の係止部115によって長手方向に係止される被係止部として機能する。
一対の弾性係止爪154は、延設部112の幅方向両端の端縁部114に圧接するとともに、係止部115に係合可能に一対の弾性片153にそれぞれ形成されている。各弾性係止爪154は、側壁部155先端面よりも前面側に突出している。そして、弾性係止爪154は、端縁部114に当接する際、弾性片153が後面側に弾性変形し、その弾性復帰力が端縁部114後面に対して作用するように構成されている。
一対の補助弾性片156は、延設部112の幅方向の両側端面に当接するように、側壁部155から下方に延在するように形成されている。補助弾性片156の先端には、幅方向内側に延びる当接部156aが設けられている。そして、延設部112を一対の側壁部155の間に配置したときに、補助弾性片156が幅方向外側に弾性変形し、一対の補助弾性片156が延設部112の端縁部114を幅方向外側から弾性的に挟持する。この補助弾性片156は、基部151及び延設部112が互いに対して捻れるように変位することを抑えるように機能する。また、補助弾性片156は、延設部112の幅方向外側から係止部115に係合することも可能であることから、圧接部及び弾性係止部としても補助的に機能し得る。本実施形態では、補助弾性片156は係止部115のないところでは延設部112を挟持するが、この補助弾性片156の挟持は、圧接部(弾性片153)の圧接力よりも小さく、単独で実質的に可動体の自重落下を規制することができない。他方、補助弾性片156の当接部156aが、延設部112の係止部115に入り込むことで、圧接力よりも強い移動規制力が発生する。
また、基部151には、ビス170が螺着するための螺着部157が設けられている。螺着部157は、ビス170の軸部先端が螺着可能な大きさを有する孔である。また、螺着部157は、可動体支持装置100の組立形態において、延設部112の挿通孔113及びボックス130のビス孔134と連通するように、基部151の幅方向中間に形成されている。
そして、基部151には、一対の表示窓158が穿設されている。表示窓158は、可動体支持装置100の組立形態において、延設部112後面に形成された目盛部118を外部に露出可能な位置に形成されている。具体的には、左右一対の表示窓158が基部151の幅方向に沿って延びている。また、表示窓158は、ボックス130に保持具150が取着された状態において、基部151の上下方向(長手方向)におけるボックス130(支持物品)のセンター位置に対応する位置に配置されている。すなわち、ユーザーは、表示窓158を介して、基部151の外側から目盛部118を延設部112の後面から視認することにより、ボックス130のセンター位置の基端部111からの実際の距離を読み取ることができる。
さらに、基部151の上端縁には、取り外し可能なワッシャー159が形成されている。ワッシャー159は、使用時に基部151から切り離され、ビス170の頭部とボックス130の底壁131内面との間に配置される。ワッシャー159は、ビス170先端の突出量を調整するために任意に用いられる。例えば、ボックス130を支持体110にビス170で本固定するときに、ビス170先端が延設部112後面側の壁などの構造物に干渉する虞がある場合、ワッシャー159を介すると、ビス170と構造物との干渉を避けることができる。
次に、各構成要素の説明を踏まえつつ、図9乃至図11を参照して、保持具150がボックス130に装着された可動体について説明する。図9(a),(b)は、可動体の正面及び背面から見た斜視図である。図7(a)~(e)は、当該可動体の平面図、正面図、底面図、背面図及び側面図である。図8(a),(b)は、保持具150のD-D,E-E断面図である。
本発明の一実施形態の可動体は、支持物品又は可動体本体としても表されるボックス130と、該ボックス130に取着された保持具150とを備えてなる。すなわち、保持具150がボックス130に装着されることによって、支持体110上をスライドする可動体が構成される。
保持具150は、図9乃至図11に示すとおり、ボックス130の底壁131外面からボックス130に抜け止め状態で連結されている。保持具150は、保持部152を介して底壁131に連結され、基部151が底壁131の外面に対向するように延在している。基部151は、底壁131外面から離隔するように配置され、基部151前面と底壁131外面との間には、支持体110の延設部112をスライド式に挿通する上下(延設部112の長手方向)に開放された収容空間が設けられている。
より詳細には、図11に示すように、一対の保持部152の軸部152aが底壁131の一対の連結孔133をそれぞれ貫通し、外側掛止爪152bが底壁131の内面側に配置されている。各軸部152aは、径方向に少なくとも部分的に弾性復帰した状態にある。そして、一対の外側掛止爪152bが底壁131内面の連結孔133周縁に掛け止まるように配置されている。また、一対の側壁部155の先端面が底壁131外面にほとんど当接するように配置されている。すなわち、外側掛止爪152b及び側壁部155が協働的に保持具150のボックス130に対する軸部152aの軸方向への移動を規制して、基部151前面側に延設部112の収容空間を維持している。
また、弾性片153(弾性係止爪154)がボックス130の底壁131外面に当接している(図11(b)参照)。このとき、弾性片153は、基部151の外面側に傾動するように弾性変形している。特には、弾性係止爪154の突出量の分で弾性片153が弾性的に傾動している。弾性片153がその弾性復帰力で底壁131外面を押圧し、これに伴って、基部151が底壁131外面から離隔する方向に付勢されている。その結果、保持部152の外側掛止爪152bが底壁131内面に付勢状態で係合し、保持具150及びボックス130間のがたつきが効果的に抑えられる。また、上下方向における弾性係止爪154と補助弾性片156の当接部156aとの間に、ボックス130のセンター位置が挟まれるように配置されている。これにより、可動体支持装置100において、いずれか係止部115に近い弾性係止部154,156aが延設部112の係止部115に係止され、位置ズレを少なくすることができる。
さらに、保持具150の螺着部157がボックス130のビス孔134に連通するように配置されている。これにより、ボックス130の内面側からビス170を挿入して螺着部157に螺着することが可能である。また、保持具150の表示窓158が、ボックス130のセンター位置に上下方向において合致するように配置されている。これにより、表示窓158を介して延設部112後面の目盛部118を視認して、ボックス130の延設部112上のセンター位置を確認することが可能である。特には、保持具150の基部151が板状であることから、ボックス130の奥方に位置する底壁131を通して目視するよりも表示窓158を介して目盛を視認することが容易である。
本実施形態の可動体を構築するには、ボックス130の底壁131外面に対して保持具150の基部151前面を向けて、一対の保持部152の軸部152aを一対の連結孔133に挿入する。軸部152aの先端がテーパー状になっていることから、軸部152aを連結孔133に押し込むにつれて、軸部152aが弾性的に縮径変形する。内側掛止爪152c及び外側掛止爪152bが連結孔133を順次通過するまで、保持具150をボックス130外面に押し付ける。外側掛止爪152bがボックス130の内面側に移動すると、軸部152aが弾性復帰して拡径変形する。これにより、外側掛止爪152bが底壁131内面の連結孔133周縁に掛け止め可能に配置される。以上の工程により、可動体が構築され得る。なお、ボックス130の開口側から軸部152aを縮径変形させ、底壁131の外面側に押し込むことによって、掛止爪152b、cを連結孔133に通過させて、保持具150をボックス130から離脱させることができる。
続いて、本発明の一実施形態の可動体支持装置100及びその設置構造について説明する。図12(a),(b)は、可動体支持装置100の正面及び背面から見た斜視図である。図13(a),(b)は、当該可動体支持装置100の平面図及び背面図である。図14(a),(b)は、当該可動体支持装置100の平面図及び側面図である。図15乃至図18は、当該可動体支持装置100のF-F,G-G,H-H,I-I断面図である。
可動体支持装置100は、支持体110の所定位置に可動体を支持するように構成されている。以下に説明する実施形態では、支持体110の延設部112の長手方向が鉛直になるように基端部111が構造体に固定されることによって、可動体支持装置100によるボックス設置構造が構築される。しかしながら、可動体支持装置100が、延設部112を水平方向や傾斜方向に配置するようにして使用されてもよいことはいうまでもない。
可動体支持装置100は、図12乃至図14に示すとおり、支持体110の延設部112が保持具150の基部151前面とボックス130の外面との間に形成された収容空間を長手方向に貫通するように構成されている。該可動体支持装置100において、可動体は、基端部111に対して近接及び離隔するように延設部112に沿ってスライド移動可能に支持体110に支持されている。
可動体支持装置100では、図15に示すように、ビス170の軸部がボックス130のビス孔134及び支持体110の挿通孔113を貫通し、保持具150の螺着部157に螺着している。ここでは、可動体は、ビス170を緩めた形態で支持体110に仮固定されている。この仮固定の形態では、可動体は、弾性片153の圧接により延設部112に沿った自由移動が規制された状態で延設部112の所定位置に保持され得る。ここで、自由移動とは、例えば、自重による自由落下や、がたつきやビス170の緩み等による意図的でない(又は非強制的な)力の付加によって可動体が支持体110に対して抵抗なく移動することを意味する。他方、可動体に強制的(又は人為的)な力を付加することにより、可動体を延設部112に沿って強制的にスライド移動させて、可動体の位置調整を行うことが可能である。このとき、ビス170の軸部が長手方向に延びる挿通孔113内を移動することにより、可動体の直線移動が滑らかにガイドされる。そして、可動体は、長手方向に位置調整された後、ビス170の締結によって支持体110の延設部112の所定位置にスライド移動不能に本固定され得る。なお、連結孔133及びビス孔134は、同一円周上に配置されていることにより、可動体が支持体110に安定的に本固定され得る。
より詳細には、図17に示す横断面のように、支持体110の延設部112が保持具150の一対の保持部152(側壁部155)の間で、ボックス130の底壁131外面と基部151前面に挟まれて保持されている。保持部152及び側壁部155は、延設部112の端縁部114に幅方向外側から摺接するように位置している。また、一対の補助弾性片156の当接部156aが延設部112の幅方向の端面に弾性的に当接している。これにより、保持具150が延設部112に対して捻れることが抑えられる。そして、収容空間は、延設部112の長手方向(鉛直方向)に開放されているとともに幅方向に閉塞されていることから、可動体の延設部112上の長手方向のスライド移動のみが許容される。
図16及び図18に示すように、一対の弾性片153の前面が延設部112の後面に当接し、延設部112の前面が底壁131外面に当接している。弾性片153は、基部151の後面側に弾性変形し、その弾性復帰力によって延設部112後面に圧接している。より具体的には、図18に示すように、弾性係止爪154の前面が端縁部114の後面に圧接している。可動体の収容空間に延設部112が介挿されることにより、弾性片153の前面が底壁131外面から離隔して、弾性復帰力が当初よりも増大している。また、弾性片153は、延設部112のボックス130側を向く面と反対側の面に圧接することから、ボックス130のスライド移動に干渉することはない。そして、延設部112が底壁131外面及び弾性片153によって挟圧されることにより、可動体のスライド移動に際する摩擦抵抗が発生又は増大する。この摩擦力によって、可動体が延設部112の所定位置に自由移動が規制された状態で保持される。本実施形態では、弾性片153は、延設部112の長手方向を鉛直にしたときに、摩擦力がボックス130及び保持具150の自重に抗するように、可動体の自重落下を規制する圧接力で延設部112に圧接している。この圧接手段による可動体の保持又は仮固定は、支持体110の延設部112上で常時的に長手方向に連続して発揮される。当該圧接手段によって、当該摩擦力を超える適度な強度の力でもって可動体を操作することにより、圧接状態を維持しつつ、可動体を無段階式に強制スライドさせて可動体の緻密な位置調整を行うことが可能となる。これにより、ユーザーは、可動体を落下させることなく操作し、可動体の位置を容易に調整することができる。なお、可動体を延設部112の先端を越えてスライドさせることにより、可動体を支持体110から容易に分離させることも可能である。あるいは、可動体が支持体110に支持された状態で、保持具150及びボックス130を分離させることによって、可動体を支持体110の延設部112先端にスライドさせることなく、支持体110から可動体を容易に取り外すことができる。
また、可動体支持装置100は、支持体110の係止部115が保持具150の弾性係止爪154(弾性係止部、被係止部)を係止して、可動体のスライド移動を規制するように構成されている。この係止手段は、圧接による無段階式の規制に抗って可動体が不意にスライド移動したときに複数の係止部115で有段階式に可動体の制止するように機能する。本実施形態では、係止部115が保持具150を係止しない位置で、ボックス130を(移動不可に)本固定するように定められる。つまり、係止部115は、可動体の位置合わせに用いられるのでなく、可動体の過度の移動を制限することを意図している。好ましくは、少なくとも1つの係止部115が、想定される本固定位置にある保持具150(弾性係止爪154)よりも下方に配置される。ただし、本発明において、延設部上の取着位置に応じて、係止部が位置合わせ用として使われてもよい。以下、図19乃至図21を参照して、当該係止手段についてより詳細に説明する。図19(a),(b)は、当該可動体支持装置100において、可動体が不意に降下し、可動体が支持体110の係止部115によって係止された状態を示す背面図及び側面図である。図20及び図21は、そのJ-J,K-K断面図である。
図20及び図21に示すように、可動体が係止手段によって係止された状態では、保持具150の一対の弾性係止爪154が延設部112の幅方向両縁に凹状に切り欠かれた係止部115に弾性的に係合している。このとき弾性片153が基端部111の後面側に弾性変形し、弾性復帰力により弾性係止爪154が係止部115内に付勢されている。そして、一対の弾性係止爪154が係止部115の切り欠き端面に長手方向に直接当接することによって、可動体が長手方向に制止される。弾性係止爪154及び係止部115の係合の解除は、弾性係止爪154を基部151の後面側にさらに弾性変形させる力でもって、可動体を延設部112に沿って強制的にスライド移動させることによって可能である。この規制を弾性的に解除することに必要な力の強度は、圧接手段による摩擦力の下で可動体を無段階式に強制スライドさせることに必要な強度よりも有意に大きい。
また、可動体支持装置100による可動体(ボックス)設置構造において、延設部112が鉛直方向に沿って配置され、且つ、可動体が所定の取着位置に設置されたとき、係止部115の少なくとも1つが弾性係止爪154よりも鉛直方向下方に位置していることが好ましい。一般に、可動体は、その自重によって鉛直方向上方よりも下方に移動し易い。それ故、係止部115が弾性係止爪154の下方に位置することにより、可動体が係止部115を越えて降下することを効果的に規制することができる。さらには、弾性係止爪154の鉛直下方に補助弾性片156の当接部156aが位置している。つまり、係止部115に係合可能な弾性係止爪154及び補助弾性片156が上下2段に配置されていることから、一方が外れても次で係止されるため、より確実に可動体の自由落下を規制することができる。
さらに、本実施形態の可動体支持装置100及び可動体設置構造では、図19に示すように、取着位置にあるボックス130の開口と、ボックス130が係止部115の少なくとも1つに係止された位置にあるボックス130の開口とが、鉛直方向において部分的に重合するように、係止部115の位置及びボックス130の寸法が設計されている。一般に、可動体設置構造において、ボックス130の前面に壁材が立設され、壁材に穿設された透孔を介してボックス130が壁表に臨むように設置される。本実施形態の可動体支持装置100において、係止部115の位置及びボックス130の寸法を上記のように設定したことにより、誤ってボックス130が落下して係止部115によって係止された場合に、ユーザーが壁表から透孔を介して、ボックス130を係止部115の上方に復帰させることが容易となる。
また、本実施形態の可動体支持装置100は、延設部112の前後面に形成された表示部117及び目盛部118の少なくとも一方によって、可動体の位置を視覚的に確認しつつ調整することができる。表示部117は、所定の基準点とボックス130のセンター位置との離間距離を前面側から視認可能且つ読み取り可能な形式で表示する。本実施形態では、図22(a)に示すように、ボックス130の外周縁(輪郭)が、最上段の鋼鉄製ボックス用表示117aに合致するように可動体の位置合わせがなされている。すなわち、表示部117上のボックス130の長手方向の端縁との境界に、ボックス130のセンター位置の基準点からの離間距離が読み取り可能に表示されている。例示では、最上段の鋼鉄製ボックス用表示117aは、ボックス130のセンター位置が基端部111から300mm離隔していることを表示する。他方、図22(b)に示すように、保持具150に形成された表示窓158を介して、ボックス130のセンター位置に対応する位置に配置された目盛部118を視認することによっても、ボックス130のセンター位置の基準点からの離間距離を把握することができる。例示では、表示窓158を介して、ボックス130のセンター位置が基準点から300mm離隔していることが表示されている。すなわち、本実施形態の可動体支持装置100では、支持体110の前面及び後面の両方から可動体の位置を視覚的に把握し、可動体を所定の取着位置へと位置調整することが可能である。なお、本実施形態では、設定されやすい数字が付されているが、目的の距離がそれ以外の場合でも、その近くまでボックス130を大まかに配置できる。
次に、可動体支持装置100による可動体設置構造を構築する方法を説明する。まず、上述したように、保持具150をボックス130に装着して可動体を組み立てる。また、支持体110の基端部111を壁裏の構造体にビス等によって固定する。本実施形態では、延設部112が鉛直方向に延在するように、支持体110を設置する。このとき、壁裏空間の前後両方に壁材が未だ立設されていないことが好ましい。次いで、支持体110の延設部112の先端を可動体のボックス130及び保持具150の間の収容空間に差し込むように、可動体を鉛直下方に延設部112に対して近接移動させる。延設部112が収容空間に配置されると、弾性片153(弾性係止爪154)が延設部112後面に圧接し、可動体の自由移動が規制される。つまり、ユーザーがボックス130から手を離しても、可動体が自由落下せずに延設部112に維持される。
そして、可動体を所定の取着位置に移動させるべく、圧接手段による摩擦力を越える力で可動体を強制的にスライドさせる。所定の取着位置は、基準点(基端部111、構造物又は延設部112の特定地点)からボックス130のセンター位置までの相対的な離間距離によって適宜定められる。なお、係止部115を乗り越えて位置合わせする必要がある場合には、係止を解除するためにより強い力を付加して可動体を強制的にスライドさせる。なお、ボックス130の前面側(壁表)から作業する場合、延設部112前面に表記された表示部117からセンター位置の離間距離を読み取って、ボックス130の上側の外周縁を表示部117の選択された鋼鉄製ボックス用表示117aに合わせるように、可動体を延設部112上で移動させて位置合わせを行う。他方、ボックス130の後面側から作業する場合、基部151後面側の表示窓158から読み取れる目盛部118の表記に基づいて、可動体を延設部112上で移動させて位置合わせを行う。位置合わせの前後において、ビス170をボックス130の前面側からビス孔134に挿入し、挿通孔113を介して螺着部157に螺着して可動体を延設部112に仮固定する。必要に応じて、ビス170が緩い状態で可動体位置を長手方向に沿って微調整することができる。可動体を所定の取着位置に配置後、ビス170を締めることにより、可動体を支持体110に対して本固定することができる。なお、ビス170なしでも、圧接部よる圧接力の下で精密な位置調整を行うことが可能である。この場合、可動体を位置調整した後に、本固定のためにビス170が用いられる。
追加的に、可動体支持装置100の前後両方に壁材を立設して、壁裏空間を閉塞する。そして、ボックス130の開口を前面の壁表に臨ませるように、ボックス130の位置を壁表側から探知して、ホルソーなどによって壁材に所定径の透孔を形成する。ボックス130の位置の探知は、磁石などを利用した従来の技術によって実施可能である。透孔の穿設後、透孔の中心とボックス130のセンター位置が合致していれば、可動体設置構造の完成である。
しかしながら、壁材を立設する際の振動などによって可動体が動いて、ボックス130のセンター位置と透孔の中心とがずれる場合が多々ある。このような場合、壁表からビス170を緩めるように操作し、可動体を軸方向に移動させて位置調整することが必要となる。本実施形態の可動体設置構造では、ビス170を緩めたとしても、圧接手段によって、可動体が自重落下することが規制され、その場に保持される。また、ユーザーが可動体に過度の鉛直下方向の力を加えて、可動体が延設部112を滑るように下降したとしても、係止部115が保持具150を係止し、可動体が意図しない領域(例えば、ボックス130が透孔から見えなくなる位置)まで移動することを防ぐことができる。そして、ユーザーが、ボックス130のセンター位置と透孔の中心とを合わせるように、透孔を介して、ビス170を緩めた状態で可動体を操作して移動させた上で、ビス170を締結することによって可動体設置構造が完成する。ボックス130には、壁表側から配線器具などが取着され得る。なお、本発明の配設体設置方法は、上記工程順序に限定されず、必要に応じて相互に入れ替え、又は、不要な工程を省略することが可能である。
以下、本発明に係る一実施形態の可動体支持装置100における作用効果について説明する。
本実施形態の可動体支持装置100によれば、可動体が延設部112によって支持された状態で、可動体に設けられた弾性片153が延設部112に弾性的に圧接することによって、可動体を延設部112の長手方向の所定位置に維持することが可能である。すなわち、本実施形態の可動体支持装置100では、圧接による摩擦力によって、可動体が延設部112に沿って自由にスライドすることが規制され、可動体が延設部112上で不意に位置ずれすることが防止される。そして、圧接によって生じる摩擦力を越える力を可動体に加えることにより、可動体を無段階にスライド移動させて、支持体110上の所定位置に微調整しながら移動させることが可能である。したがって、本実施形態の可動体支持装置100は、摩擦力の作用の下で、可動体を自由移動させずにスライド可能に支持体110に保持することを可能とする。
さらに、本実施形態の可動体支持装置100は、支持体110の長手方向に沿って連続的に発揮される圧接手段と、非連続的に発揮される係止手段とを組み合わせて採用したことにより、可動体の意図しない移動(自重落下を含む)を2重で防止するものである。また、可動体の本固定による所定の取着位置は、係止部115が保持具150を係止する位置ではなく、係止部115以外の圧接手段が作用する領域(具体的には、弾性係止爪154が係止部115から長手方向に離隔した位置)上に設定される。すなわち、可動体支持装置100では、隣接する係止部115間には、圧接手段による摩擦抵抗の下で緻密な可動体位置の微調整が容易な無段階移動域が長手方向に連続して形成される。圧接手段とは対照的に、各係止部115は、無段階移動より相対的に強い力を付加することで係止を解除可能である、可動体の有段階式のスライドを許容する。その結果として、可動体の(意図しない領域への)過度な移動が段階的に適切に規制され得る。
[変形例]
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。なお、各変形例において、三桁で示される構成要素において下二桁が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
(1)本発明の可動体支持装置の保持具は、上記実施形態に限定されない。図23(a)の保持具250は、上記実施形態から弾性片及び弾性係止爪を省略したものである。当該保持具250では、補助弾性片256が延設部の幅方向の側端面に圧接する圧接部となり得る。また、補助弾性片256の当接部256aが延設部の幅方向両端縁に切り欠かれた係止部に係合することによって、弾性係止部としても機能し得る。他方、図23(b)の保持具350は、上記実施形態から補助弾性片を省略したものである。すなわち、本発明の圧接部は、弾性片153の形態に限定されず、可動体を支持体に保持することが可能な限り、種々の形態を取り得る。
(2)上記実施形態では、可動体は別体である保持具及びボックスを組み合わせたものであるが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、本発明において、保持具及び可動体本体(ボックス)を一体的に形成してもよい。また、上記実施形態では、保持部は、軸部及び掛止爪からなる保持部によって可動体本体を物理的に保持するが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、保持部は、可動体本体を磁着して保持する磁石であってもよい。あるいは、保持部は、可動体本体をビスで連結する形態をとってもよい。さらに、本発明の可動体本体はボックスの形態に限定されず、その用途に応じた種々の支持物品から選択され得る。
(3)上記実施形態の可動体支持装置の支持体は、延設部に対して略直角に屈折した基端部を介して支持体が片持ち状態で構造物に固定されるが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、支持体は、基端部を介して構造物に固定可能であればよく、L字屈曲させずに平面視直線状の形態とすることも可能である。あるいは、図24に示す可動体支持装置400のように、支持体410の基端部411及び先端部411’の両端を延設部412に対して直角に折り曲げて、支持体410を2本の造営材(構造物)の間に水平に両持ち状態で固定するようにしてもよい。さらに、支持体から表示部や目盛部が省略されてもよい。すなわち、当業者であれば、支持体の形状及び寸法を任意に設計することが可能である。
(4)上記実施形態の可動体支持装置は、圧接手段及び係止手段の両方を備えたが、係止手段が省略されてもよい。すなわち、図25に示す可動体支持装置500では、支持体510の延設部512から係止部が省略され、保持具550の弾性片553から弾性係止爪が省略されている。本変形例においても、圧接部が可動体を延設部512の所定位置に維持するように機能することから、可動体支持装置500は、可動体を自由移動させずにスライド可能に支持体510に保持することが可能である。
(5)上記実施形態の可動体支持装置では、圧接部である弾性片が支持体の延設部の端縁部に圧接するが、延設部の平坦面に圧接するように構成されてもよい。また、支持体の延設部の被圧接部の表面をざらつかせて、摩擦抵抗を増大させてもよい。
(6)本発明の基本的な形態において、可動体支持装置から保持具が省略されてもよい。この場合、可動体(ボックス)に圧接部や被係止部が一体的に形成され、可動体がビスなどによって直接的に支持体に支持される。
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。